(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】有機物含有廃棄物から非鉄金属、特に黒銅及び/または粗銅を回収する方法
(51)【国際特許分類】
C22B 15/00 20060101AFI20240816BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20240816BHJP
F27B 1/10 20060101ALI20240816BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20240816BHJP
B09B 3/40 20220101ALN20240816BHJP
B09B 5/00 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
C22B15/00
C22B7/00 Z
F27B1/10
F27D17/00 104G
B09B3/40
B09B5/00 M
(21)【出願番号】P 2023501567
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2021066456
(87)【国際公開番号】W WO2022012851
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】102020208774.1
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】デーゲル・ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ルクス・ティム
(72)【発明者】
【氏名】カウセン・フランク・マーリン
(72)【発明者】
【氏名】ボロフスキ・ニコラウス・ペーター・クルト
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-528322(JP,A)
【文献】特開2005-030662(JP,A)
【文献】米国特許第04740240(US,A)
【文献】米国特許第04606760(US,A)
【文献】特開平10-015519(JP,A)
【文献】特開2001-040431(JP,A)
【文献】特開2002-168417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有廃棄物(8)から非鉄金
属を回収するにあたり、有機物含有廃棄物(8)を含む混合物が、少なくとも10重量%の有機物含有率を有する方法であって、次のステップ:
i)融解反応器(2)を提供し、この際、この融解反応器(2)は、少なくとも一つの融解領域(5)、燃焼領域(6)及び熱分解領域(7)を含むように構成されているステップ、
ii)有機物含有廃棄物(8)を含む混合物を融解反応器(2)に投入し、この際、この混合物は、融解領域(5)に到達する前に、先ず熱分解領域(7)及び燃焼領域(6)に通し、そして少なくとも部分的に予備的熱分解及び/または燃焼し、その結果、エネルギー含有ガス流(9)が形成されるステップ、
iii)エネルギー含有ガス流(9)を熱的後燃焼チャンバ(3)中に移し、そこで、エネルギー含有ガス流(9)は完全に燃焼され、そしてこの燃焼の際に放出される熱エネルギーは、エネルギー回収ユニット(11)を介して排出されるステップ、及び
iv)少なくとも部分的に予備的熱分解及び/または燃焼された有機物含有廃棄物(8)を融解するステップ、
を含む、前記方法。
【請求項2】
不活性ガスを燃焼及び/または融解領域(5、6)に供給することによって融解物を冷却し、そしてエネルギーが付与された不活性ガス流(14)を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エネルギー含有ガス流(9)を、前記エネルギーが付与された不活性ガス流(14)を用いて熱的後燃焼チャンバ(3)中に移送する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
有機物含有廃棄物(8)を、前記エネルギーが付与された不活性ガス流(14)に対して向流で融解反応器(2)に供給する、請求項
2または3に記載の方法。
【請求項5】
熱分解領域(7)が、少なくとも180℃の温
度を有する、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
有機物含有廃棄物(8)を、ステップii)において、細断された形態で供給する、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
熱的後燃焼チャンバ(3)において形成される排ガス流(15)がフィルタデバイス(4)に供給される、請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
ステップii)が、酸素含有ガスの選択的吹き込みによって支援される、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
有機物含有廃棄物(8)から非鉄金
属を回収するための装置(1)において、有機物含有廃棄物(8)が少なくとも10重量%の有機物含有率を有する装置(1)であって、
i)少なくとも一つの融解領域(5)、燃焼領域(6)及び熱分解領域(7)を含むように構成された、融解反応器(2)
、但し、これらの少なくとも一つの融解領域(5)、燃焼領域(6)及び熱分解領域(7)は、前記有機物含有廃棄物(8)が、融解領域(5)に到達する前に、先ず熱分解領域(7)及び燃焼領域(6)に通され、そして少なくとも部分的に予備的熱分解及び/または燃焼されるように、融解反応器(2)中に配置されている;
ii)エネルギー含有ガス流(9)を完全燃焼できる、熱的後燃焼チャンバ(3);及びiii)燃焼の際に放出される熱エネルギーを排出できる、エネルギー回収ユニット(11);
を含む、前記装置
(1)。
【請求項10】
酸素含有ガス及び/または不活性ガスを供給するための、少なくとも一つのインジェクタ(12、13)を更に含む、請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記インジェクタ(12、13)が、不活性ガスを燃焼及び/または融解領域(5、6)に供給することにより融解物を冷却して、エネルギーが付与された不活性ガス流(14)を形成するように適合されている、請求項10に記載の装置(1)。
【請求項12】
フィルターデバイス(4)を更に含む、請求項9
~11のいずれか一つに記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物含有廃棄物から、非鉄金属、特に黒銅及び/または粗銅を回収するための方法並びに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有価値の材料の回収のためのこのような方法は、原則的に従来技術において既知である。
【0003】
例えば、欧州特許出願公開第EP1609877A1(特許文献1)は、特に電子廃棄物などの金属含有残渣を回転式反応器中でバッチ式に処理する方法を開示している。供給原料、すなわち特に電子廃棄物は、本質的に、操業中の連続的な充填を可能とするようなサイズの断片からなる。反応器内では、材料は融解され、その結果、供給原料の元の有機部分が融解中に燃焼されるので本質的に有機物質を含まない、選別された材料が生じる。
【0004】
更に、EP0070819B1(特許文献2)は、有機物を高い割合で含む金属含有廃棄物、例えばケーブル廃棄物及び電子機器からの廃棄物を、価値のある金属を簡単に回収できる製品に変換する方法を開示している。この目的のためには、廃棄物を、回転式反応器タンク中に装入し、次いで加熱して、有機成分を可燃性ガスの形で追い出し、これを次いで、反応器タンクの外側で燃焼させる。
【0005】
Gerardoら、“ISASMELTTM for the Recycling of E-Scrap and Copper in the US Case Study Example of a New Compact Recycling Plant”(新規小型リサイルプラントの米国事例研究例におけるEスクラップ及び銅のリサイクルのためのISASMELTTM),The Minerals,Metals&Materials Society,DOI 10.1007/s11837-014-0905-3(非特許文献1)は、銅含有電子廃棄物のリサイクルのための更に別の方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】EP1609877A1
【文献】EP0070819B1
【非特許文献】
【0007】
【文献】Gerardo et al.,“SASMELTTM for the Recycling of E-Scrap and Copper in the US Case Study Example of a New Compact Recycling Plant”,The Minerals,Metals & Materials Society,DOI 10.1007/s11837-014-0905-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような背景から、本発明は、有機物含有廃棄物から非鉄金属、特に黒銅及び/または粗銅を回収するための、従来技術よりも改善された方法並びに改善された装置を提供するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従い、前記課題は、請求項1に記載の特徴を備えた方法、並びに請求項10の特徴を備えた装置によって解消される。
【0010】
本発明の更に別の有利な形態は、引用形式の請求項に記載されている。引用形式の請求項に個別に記載された特徴は、科学技術的に意味のあるように互いに組み合わせることができ、そして本発明の更に別の形態を定義付けすることができる。更に、請求項に記載の特徴は、発明の詳細な説明中により詳しく規定、説明され、そこでは、本発明の更に別の好ましい形態が記載されている。
【0011】
有機物含有廃棄物から非鉄金属、特に黒銅及び/または粗銅を回収するための本発明による方法は、次のステップ:
i)融解反応器を提供し、この際、この融解反応器は、少なくとも一つの融解領域、燃焼領域及び熱分解領域を含むように構成されるステップ、
ii)有機物含有廃棄物を含む混合物を融解反応器中に投入し、この際、この混合物は、融解領域に到達する前に、先ず熱分解領域及び燃焼領域に通し、そして少なくとも部分的に予備的熱分解及び/または燃焼し、その結果、エネルギー含有ガス流が形成されるステップ、
iii)エネルギー含有ガス流を熱的後燃焼チャンバ中に移し、そこで、エネルギー含有ガス流は完全に燃焼され、そしてこの燃焼の際に放出される熱エネルギーは、エネルギー回収ユニットを介して排出するステップ、及び
iv)少なくとも部分的に予備的熱分解及び/または燃焼された有機物含有廃棄物を融解するステップ、
を含む。
【0012】
本発明は、高割合の有機物を特徴とする高エネルギー廃棄物を融解すると、融解反応器またはプラントを強く攻撃し、高められた摩耗を招きそして大部分が利用されない状態で排ガスと共に出る非常に高いエネルギー入力が融解プロセスに導入されるという知見に基づく。本発明による特定の方法の方策によって、未使用のエネルギー過剰分は的確に回収されそしてリサイクルプロセス全体がエネルギー技術的に最適化される。更に、融解反応器またはプラントの摩耗が低減する。
【0013】
本発明によれば、有機物含有廃棄物を含む混合物が融解反応器に装入されるが、この際、前記混合物を、融解領域に到達する前に、先ず熱分解領域及び燃焼領域に通し、そして少なくとも部分的に予備的熱分解及び/または燃焼する。この時に生じるエネルギー含有ガス流は、次いで、熱的後燃焼チャンバ中に直接移送し、そしてそこで完全に燃焼する。それによって、より少ないエネルギー入力が融解物に達し、これは融解プロセスの調節に有利に作用する。後燃焼で放出される熱エネルギーは、(好ましくは蒸発器または熱交換器を含む)エネルギー回収ユニットを介して排出され、そして例えば、飽和蒸気またはCO2ニュートラル電気エネルギーを生成するために利用することができる。
【0014】
熱分解領域における温度は、少なくとも180℃、好ましくは少なくとも420℃、更に好ましくは少なくとも800℃、最も好ましくは少なくとも900℃を有する。低すぎる温度は、目的とする熱分解プロセスに対して不利に作用する、というのも、この場合、使用された廃棄物の有機成分のうちで熱分解される分の割合が少なくなり過ぎ、それ故、融解物に達する有機物の割合が多くなり過ぎるからである。しかし、温度は最大温度を超えはならない、というのも、リサイクルプロセスをエネルギー技術的に最適な範囲で進めることができるようにするためには、燃料としての有機成分の特定の割合が融解物のために必要であるからである。加えて、融解反応器の特性の故に温度はあまり高すぎてはならない、というのも、このような温度は、融解反応器の望ましくない摩耗を招くであろうからである。それ故、有利には、最大温度は、1500℃、好ましくは1400℃、より好ましくは1300℃、最も好ましくは1200℃である。
【0015】
有利には、有機物含有廃棄物は、エネルギーが付与された不活性ガス流に対して向流で融解反応器に供給される。それによって、個々の粒子がガス流によって囲まれるので、これらの粒子の落下速度が遅くなる。原則的には、個々の粒子の観測では、熱分解ガスを容易に放出できるように、これらの粒子は比較的簡単に加熱できるべきである。例えば、短すぎる滞留時間は、目的とする熱分解プロセスに対して不利に作用する、というのも、この場合、有機成分のうちで熱分解される分の割合が少なくなり過ぎ、それ故、融解物に達する有機物の割合が多くなり過ぎるからである。他方で、滞留時間は最大時間を超えはならない、というのも、リサイクルプロセスをエネルギー技術的に最適な範囲で進めることができるようにするためには、燃焼剤としての有機成分の特定の割合が融解物のために必要であるからである。
【0016】
特に有利な実施形態の一つでは、融解物は、不活性ガスの供給、好ましくは窒素の供給によって、燃焼-及び/または融解領域において的確に冷却され、そしてエネルギーが付与された不活性ガス流が形成される。これに関して、このエネルギーが付与された不活性ガス流は、融解反応器の上部で形成されたエネルギー含有ガス流を熱的後燃焼チャンバ中に移送することが特に有利に企図される。それによって、一方では、融解プロセスを最適に調整及び調節することができる。他方では、融解プロセスで放出される熱エネルギーはほぼ完全に回収される。
【0017】
的確な冷却のために窒素が不活性ガスとして使用される場合は、融解反応器内の温度に応じて、NOx化合物が生じる場合がある。NOX化合物の形成を減少させるためには、融解反応器内の温度を、熱分解領域が、最大で1200℃の温度を超えないように調節することができる。代替的に、NOX化合物は、例えば後燃焼チャンバの下流に接続される触媒SCRユニット内で還元することができる。
【0018】
本発明による方法は、有機物含有廃棄物の熱分解冶金的加工のために企図される。有機物含有廃棄物としては、本発明の意味では、有機成分を含む全ての廃棄物のことと理解される。好ましい有機物含有廃棄物は、電子廃棄物、自動車シュレッダー廃棄物及び/または変圧器シュレッダー廃棄物、特にシュレッダー軽質画分、及び/またはこれらの混合物を含む系列から選択される。
【0019】
「電子廃棄物」という用語は、本発明の意味では、EU指令2002/96/EGに従って定義される電子廃棄機器のことと解される。この指令の対象となる機器カテゴリは、完全に及び/または(部分的に)解体された大型家電製品;小型家電製品;IT-及び電気通信機器;娯楽家電機器;照明器具;電気及び電子工具(定置型工業用大型工具は除く);電気玩具並びにスポーツ及びレジャー用品;医療機器(全ての移植及び感染製品は除く);監視用及び制御用機器;並びに自動ディスペンサーに関する。対応する機器カテゴリに分類される個々の製品に関しては、指令の付録IBを参照されたい。
【0020】
このような電子廃棄物は、本質的に、炭化水素含有成分、例えば特にプラスチック、並びに金属成分、例えば特に銅、ニッケル、鉛、錫、亜鉛、金、銀、アンチモン、パラジウム、インジウム、ガリウム、レニウム、チタン、アルミニウム及び/またはイットリウムを含む系列から選択される元素を含む。
【0021】
この際、混合物の電子廃棄物は、これが、好ましくは少なくとも0.1重量%のアルミニウム含有率、より好ましくは少なくとも0.5重量%のアルミニウム含有率、更により好ましくは少なくとも1.0重量%のアルミニウム含有率、最も好ましくは少なくとも3.0重量%のアルミニウム含有率を有するように構成される。電子廃棄物は最大含有率に関して制限される、なぜならば、あまりに多いアルミニウム含有率は、スラグ相の粘度に、それ故流動性に不利に作用し、更には、金属相とスラグ相との間の分離挙動にも不利に作用するからである。それ故、電子廃棄物は、好ましくは最大で20重量%のアルミニウム、更に好ましくは最大で15重量%のアルミニウム、更により好ましくは最大で11重量%のアルミニウム、最も好ましくは最大で8重量%のアルミニウムを含む。
【0022】
融解反応器中への仕込み、それ故、エネルギー入力は、異なる粒度、特に大きすぎる粒度によって不均一となり、その結果、融解過程中に望ましくない状態が発生する虞がある。それ故、電子廃棄物は好ましくは細断された形で供給される。有利には、電子廃棄物は、20.0インチ未満の粒度、より好ましくは15.0インチ未満の粒度、更により好ましくは12.0インチ未満の粒度、更に好ましくは10.0インチ未満の粒度、更に好ましくは5.0インチ未満の粒度、特に好ましくは2.0インチ未満の粒度に細断される。しかし、0.1インチの粒度、好ましくは0.5インチの粒度、更に好ましくは1.5インチの粒度を超えるべきではない。
【0023】
有機物含有廃棄物を含む混合物は、規定の有機物含有率を含むことができる。しかし、炭化水素含有成分の含有率は少なすぎてはならない、というのも、さもなくば、十分な熱分解反応及び/または燃焼反応が起こらないからである。それ故、炭化水素含有成分の割合は、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、最も好ましくは少なくとも20重量%である。混合物の有機物含有廃棄物は最大含有率に関して制限され、それ故、これは、好ましくは最大98重量%、より好ましくは最大90重量%、更により好ましくは最大80重量%、更により好ましくは最大70重量%、最も好ましくは最大60重量%である。
【0024】
有利には、本発明による方法のステップii)は、酸素含有ガスの選択的な吹き込みによって支援される。従って、反応は、炭化水素からのCO2及びH2Oへの完全な燃焼は起こらず、CO、H2の含分もプロセスガス中に形成されるように調節される。それによって、有機成分の燃焼は的確に調整することができ、この場合、この際放出される熱エネルギーが当該プロセスのステップiv)を支援する。
【0025】
熱的後燃焼チャンバ内で形成される排ガス流は、次いで、触媒SCRユニット及び/またはフィルターデバイスに供給される。
【0026】
加えて、他の観点の一つでは、本発明は、有機物含有廃棄物から非鉄金属、特に黒銅及び/または粗銅を回収するための装置に関する。該装置は、
i)融解反応器、この際、この融解反応器は、これが、少なくとも一つの融解領域、燃焼領域及び熱分解領域を含むように構成される;
ii)熱的後燃焼チャンバ、このチャンバでは、エネルギー含有ガス流を完全に燃焼可能である;及び
iii)エネルギー回収ユニット、このユニットを介して、燃焼の際に放出される熱エネルギーを排出可能である;
を含む。
【0027】
融解反応器としては好ましくは冶金用容器が企図され、例えば、高炉、床型融解反応器、パース-スミス転炉、または傾斜可能な回転式転炉、特にいわゆる上吹回転式転炉(Top Blowing Rotary Converter)(TBRC)、または傾斜可能なスタンドコンバータ(Standkonverter)が企図される。有利な実施形態の一つでは、該冶金用容器は、金属相をタップするための第一のタップ口及び/またはスラグ相をタップするための第二のタップ口を含む。この際、金属相をタップするためのタップ口は、有利には、然るべき融解反応器の底に及び/または側壁に配置され、その結果、金属相を、タップ口を介して取り出すことできる。
【0028】
酸素含有ガス及び/または不活性ガス、好ましくは窒素を供給するためには、融解反応器は、好ましくは、少なくとも一つまたは複数のインジェクタを含み、これは、燃焼領域及び/または融解領域の高さに配置される。
【0029】
更に、該装置は、有利には、後燃焼チャンバの下流に配置された触媒SCRユニット及び/またはフィルターデバイスを含む。
【0030】
本発明並びに技術的環境を以下に図面及び例に基づいてより詳しく説明する。本発明は、示された実施例に限定されるものではない点を指摘しておく。特に、明示的に他に記載がなければ、図面に説明された状況の部分的な観点を抽出すること、及び本明細書及び/または図面からの他の構成要素及び知見と組み合わせることも可能である。特に、図面及び特に示された寸法比は、概略的なものに過ぎない点を指摘しておく。同じ符号は、同じ物を指し示し、それ故、場合により、他の図からの説明も補完的に援用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明による方法の説明となる、本発明による装置の一実施形態を非常に簡略化した概略図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
装置1は、有機物含有廃棄物から黒銅及び/または粗銅を回収するために企図された、本発明による方法を実施するために設計されており、この際、同様に、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)の含分を得ることができる。
【0033】
装置1は、融解反応器2、熱的後燃焼チャンバ3及びフィルターデバイス4を含む。融解反応器2は、この例では、高炉の形に設計され、融解領域5、燃焼領域6及び熱分解領域7を有する。
【0034】
第一のプロセスステップでは、先ず、シュレッダー軽質画分(SLF)の有機物含有廃棄物8 100重量%からなる細断した混合物を、上方の開口(図示せず)を介して融解反応器2中に供給する。この場合、細断した有機物含有廃棄物8は、1.0から5.0インチまでの中央径を有し、この際、プロセスに起因するより小さな粒度及び/またはダストは不可避であり、そのため、一緒に含まれ得る。
【0035】
融解反応器2に供給された有機物含有廃棄物8は、先ず、熱分解領域7及び燃焼領域6を通過する。熱分解領域7では、900°から1200℃までの範囲の温度が優勢である。融解反応器に加えられた有機物含有廃棄物8から、熱分解領域7において、10~50重量%の割合の有機成分が熱分解されそしてエネルギー含有ガス流9が形成する。
図1に示されるように、これは次いで熱的後燃焼チャンバ3に供給され、そしてバーナー10を使用して完全に燃焼され、この際、燃焼の際に放出された熱エネルギーは、蒸発器を含むエネルギー回収ユニット11を介して排出される。バーナー10のための燃料としては、有利には、再生可能なエネルギー資源から製造された水素(いわゆるグリーン水素)が使用される。
【0036】
次いで、少なくとも部分的に予備的熱分解及び/または燃焼された有機物含有廃棄物8は、融解反応器2中で融解される。この場合、燃焼反応は、酸素インジェクタ12を介して融解反応器2に供給された酸素を添加して的確に調整することができる。酸素の体積流は、融解物の表面において常に還元性雰囲気が行き渡っており、そして有機含有物からのCO2及びH2Oへの完全な燃焼が行われず、特定の含有率のCO及びH2がプロセスガス中に存在するように適合され、これらのCO及びH2は、同様に熱的後燃焼チャンバ3に供給されそして燃焼される。
【0037】
更に、インジェクタ12を介して、不活性ガス、例えば窒素を、燃焼及び/または融解領域5、6に的確に導入することができる。それによって、融解物が冷却され、そしてエネルギーが付与された不活性ガス流14が形成される。概略図から示されるように、このエネルギーが付与された不活性ガス流14は、融解反応器2の上部で形成されたエネルギー含有ガス流9を熱的後燃焼チャンバ3中に移送する。熱的後燃焼チャンバ3中に形成された排ガス流15は次いでフィルターデバイス4に供給される。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. 有機物含有廃棄物(8)から非鉄金属、特に黒銅及び/または粗銅を回収する方法であって、次のステップ:
i)融解反応器(2)を提供し、この際、この融解反応器(2)は、少なくとも一つの融解領域(5)、燃焼領域(6)及び熱分解領域(7)を含むように構成されているステップ、
ii)有機物含有廃棄物(8)を含む混合物を融解反応器(2)に投入し、この際、この混合物は、融解領域(5)に到達する前に、先ず熱分解領域(7)及び燃焼領域(6)に通し、そして少なくとも部分的に予備的熱分解及び/または燃焼し、その結果、エネルギー含有ガス流(9)が形成されるステップ、
iii)エネルギー含有ガス流(9)を熱的後燃焼チャンバ(3)中に移し、そこで、エネルギー含有ガス流(9)は完全に燃焼され、そしてこの燃焼の際に放出される熱エネルギーは、エネルギー回収ユニット(11)を介して排出されるステップ、及び
iv)少なくとも部分的に予備的熱分解及び/または燃焼された有機物含有廃棄物(8)を融解するステップ、
を含む、前記方法。
2. 不活性ガスを燃焼及び/または融解領域(5、6)に供給することによって融解物を冷却し、そしてエネルギーが付与された不活性ガス流(14)を形成する、前記1.に記載の方法。
3. エネルギー含有ガス流(9)を、前記エネルギーが付与された不活性ガス流(14)を用いて熱的後燃焼チャンバ(3)中に移送する、前記2.に記載の方法。
4. 有機物含有廃棄物(8)を、前記エネルギーが付与された不活性ガス流(14)に対して向流で融解反応器(2)に供給する、前記1.~3.のいずれか一つに記載の方法。
5. 熱分解領域(7)が、少なくとも180℃の温度、好ましくは少なくとも420℃の温度、より好ましくは少なくとも800℃の温度、及び最も好ましくは少なくとも900℃の温度を有する、前記1.~4.のいずれか一つに記載の方法。
6. 有機物含有廃棄物(8)を、ステップii)において、細断された形態で供給する、前記1.~5.のいずれか一つに記載の方法。
7. 有機物含有廃棄物(8)を含む混合物が、少なくとも10重量%の有機物含有率を有する、前記1.~6.のいずれか一つに記載の方法。
8. 熱的後燃焼チャンバ(3)において形成される排ガス流(15)がフィルタデバイス(4)に供給される、前記1.~7.のいずれか一つに記載の方法。
9. ステップii)が、酸素含有ガスの選択的吹き込みによって支援される、前記1.~8.のいずれか一つに記載の方法。
10. 有機物含有廃棄物(8)から非鉄金属、特に黒銅及び/または粗銅を回収するための装置(1)であって、
i)少なくとも一つの融解領域(5)、燃焼領域(6)及び熱分解領域(7)を含むように構成された、融解反応器(2);
ii)エネルギー含有ガス流(9)を完全燃焼できる、熱的後燃焼チャンバ(3);及びiii)燃焼の際に放出される熱エネルギーを排出できる、エネルギー回収ユニット(11);
を含む、前記装置。
11. 酸素含有ガス及び/または不活性ガスを供給するための、少なくとも一つのインジェクタ(12、13)を更に含む、前記10.に記載の装置(1)。
12. フィルターデバイス(4)を更に含む、前記10.または11.に記載の装置(1)。
【符号の説明】
【0038】
1 装置
2 融解反応器
3 熱的後燃焼チャンバ
4 フィルターデバイス
5 融解領域
6 燃焼領域
7 熱分解領域
8 電子廃棄物
9 エネルギー含有ガス流
10 バーナー
11 熱交換器
12 インジェクタ
13 不活性ガス流
14 排ガス
15 排ガス流