(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】回転位置信号を生成するための位置決めデバイス、およびリゾルバの励磁信号を生成するための励磁デバイス
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020018544
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2023-02-06
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505462622
【氏名又は名称】ダンフォス アクチ-セルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ティアイネン,リスト
(72)【発明者】
【氏名】イスカニウス,マッティ
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0238409(US,A1)
【文献】特開2004-301806(JP,A)
【文献】特開2000-292205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 ~ 5/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リゾルバの回転位置を示す位置信号を生成するための位置決めデバイス(101)であって、
- 第1の交流信号(V_cos)および第2の交流信号(V_sin)を受信するための信号インターフェース(102)であって、前記第1および第2の交流信号の振幅は、前記第1および第2の交流信号の包絡線が相互の位相シフトを有するように前記リゾルバの回転位置に依拠する、信号インターフェース(102)と、
- 前記第1および第2の交流信号の振幅、ならびに前記リゾルバの励磁信号の
パルスにおける極性を示す極性情報に基づき位置信号を発生させるための処理システム(103)と
を備え、
前記位置決めデバイス(101)は、前記処理システムが、
- 少なくとも前記第1の交流信号の波形における極性インジケータを認識することと、
- 認識された前記極性インジケータに基づき前記極性情報を判定することと
を行うように構成され
、
前記処理システムは、前記第1の交流信号の局所的な位相変化または局所的な周波数変化を認識し、認識された前記位相変化または認識された前記周波数変化に基づき、前記極性情報を判定するように構成される、位置決めデバイス(101)。
【請求項2】
前記処理システムは、前記位相変化または前記周波数変化を認識するために、前記第1の交流信号の波形におけるゼロ交差を認識するためのゼロ交差検出器を形成するように構成される、請求項
1の記載の位置決めデバイス。
【請求項3】
リゾルバの回転位置を示す位置信号を生成するための位置決めデバイス(101)であって、
- 第1の交流信号(V_cos)および第2の交流信号(V_sin)を受信するための信号インターフェース(102)であって、前記第1および第2の交流信号の振幅は、前記第1および第2の交流信号の包絡線が相互の位相シフトを有するように前記リゾルバの回転位置に依拠する、信号インターフェース(102)と、
- 前記第1および第2の交流信号の振幅、ならびに前記リゾルバの励磁信号のパルスにおける極性を示す極性情報に基づき位置信号を発生させるための処理システム(103)と
を備え、
前記位置決めデバイス(101)は、前記処理システムが、
- 少なくとも前記第1の交流信号の波形における極性インジケータを認識することと、
- 認識された前記極性インジケータに基づき前記極性情報を判定することと
を行うように構成され、
前記処理システムは、前記第1の交流信号の波形を
局所的に振幅が増大する所定の波形パターンと比較し、前記第1の交流信号の前記波形と前記所定の波形パターンとの適合に応答して、前記所定の波形パターンと適合する前記第1の交流信号の一部に基づき、前記極性情報を判定するように構成される
、位置決めデバイス。
【請求項4】
前記処理システムは、前記第1の交流信号の前記波形および前記第2の交流信号の波形の両方における極性インジケータを認識するように構成される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の位置決めデバイス。
【請求項5】
電気機械の巻線システムの電圧を制御するための変換器(108、109)であって、前記電気機械の回転子に接続されたリゾルバの回転位置を示す位置信号を生成するための、請求項1~
4のいずれか一項に記載の位置決めデバイス(101、151)を備える、変換器(108、109)。
【請求項6】
- 第1の交流信号および第2の交流信号を、リゾルバから受信するステップであって、前記第1および第2の交流信号の振幅は、前記第1および第2の交流信号の包絡線が相互の位相シフトを有するように前記リゾルバの回転位置に依拠する、受信するステップ(301)と、
- 前記第1および第2の交流信号の振幅、ならびに前記リゾルバの励磁信号の
パルスにおける極性を示す極性情報に基づき、前記リゾルバの回転位置を示す位置信号を発生させるステップ(304)と
を含む方法であって、
- 少なくとも前記第1の交流信号の波形における極性インジケータを認識するステップ(302)と、
- 認識された前記極性インジケータに基づき前記極性情報を判定するステップ(303)と
を含
み、
前記極性インジケータを認識するステップ(302)は、前記第1の交流信号の局所的な位相変化または局所的な周波数変化を認識することを含み、
前記極性情報を判定するステップ(303)は、認識された前記位相変化または認識された前記周波数変化に基づき、前記極性情報を判定することを含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
- 第1の交流信号および第2の交流信号を、リゾルバから受信するステップであって、前記第1および第2の交流信号の振幅は、前記第1および第2の交流信号の包絡線が相互の位相シフトを有するように前記リゾルバの回転位置に依拠する、受信するステップ(301)と、
- 前記第1および第2の交流信号の振幅、ならびに前記リゾルバの励磁信号の
パルスにおける極性を示す極性情報に基づき、前記リゾルバの回転位置を示す位置信号を発生させるステップ(304)と
を含む方法であって、
- 少なくとも前記第1の交流信号の波形における極性インジケータを認識するステップ(302)と、
- 認識された前記極性インジケータに基づき前記極性情報を判定するステップ(303)と
を含
み、
前記極性インジケータを認識するステップ(302)は、前記第1の交流信号の波形を局所的に振幅が増大する所定の波形パターンと比較することを含み、
前記極性情報を判定するステップ(303)は、前記第1の交流信号の前記波形と前記所定の波形パターンとの適合に応答して、前記所定の波形パターンと適合する前記第1の交流信号の一部に基づき、前記極性情報を判定することを含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リゾルバの回転位置を示す位置信号を生成するための位置決めデバイスに関する。さらに本開示は、リゾルバの励磁信号を生成するための励磁デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、電気駆動システムは、アクチュエータを駆動するための電気機械、および電気機械を制御するための変換器を備える。例えばアクチュエータは、移動機械のホイールもしくはチェーン軌道、または非移動機械のツールであり得る。例えば変換器は、周波数変換器であり得る。多くの場合、電気駆動システムは、電気機械の回転子の回転位置を検出するためのリゾルバを備え、変換器は、検出された回転子の回転位置に少なくとも部分的に基づき、電気機械のオペレーションを制御するように構成される。例えばリゾルバは、交流励磁信号を受信して第1および第2の交流信号を生成する、可変リラクタンス「VR」リゾルバであり得る。第1および第2の交流信号の振幅は、第1および第2の交流信号の包絡線が相互の位相シフトを有するようにリゾルバの回転位置に依拠する。可変リラクタンス・リゾルバは、リゾルバの回転子に巻線が必要ないという点で有利である。しかし、リゾルバは、励磁信号をリゾルバの回転子の巻線に伝達するためのブラシまたは回転変圧器を備える、巻線型回転子リゾルバであることも可能である。変換器は、励磁信号をリゾルバへ送信し、上述の第1および第2の交流信号をリゾルバから受信し、第1および第2の交流信号の振幅と上述のリゾルバの励磁信号の極性とに基づき、回転位置を示す位置信号を発生させるように構成される。
【0003】
多くの電気駆動システムにおいて、電気機械は、各々に別個の変換器が供給された2つ以上の巻線システムを備える多巻線機械である。例えば電気機械は、2つの三相固定子巻線のそれぞれの磁軸の間が30°の電気角度となるよう、2つ三相固定子巻線を備えてよい。上述の種類の電気駆動システムにおいて、変換器の各々は、電気機械の回転子の回転位置を示す情報を必要とする。通常、例えば周波数変換器などの変換器は、励磁信号をリゾルバへ送信するため、およびリゾルバから交流信号を受信するための信号伝達インターフェースを備える。この交流信号の振幅は、この交流信号の包絡線が相互の位相シフトを有するようにリゾルバの回転位置に依拠する。直接のアプローチは、存在する変換器と同じ数のリゾルバを使用することであるが、全ての変換器のために単一のリゾルバを使用するほうが、コスト効率がよい。さらに、プロダクト・ポートフォリオ・マネージメントの観点から、電気機械の様々な巻線システムのために、相互に類似の変換器を使用できることは有利である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下では、本発明の様々な実施形態におけるいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化した概要を提示する。概要は、本発明の広範囲にわたる総覧ではない。概要は、本発明の鍵または重要な要素を特定することも、本発明の範囲を明確化することも意図されない。以下の概要は、単に、例示する実施形態のより詳細な説明への前段として、本発明のいくつかの概念を簡略化した形態で提示するにすぎない。
【0005】
本発明によると、リゾルバの回転位置を示す位置信号を生成するための新しい位置決めデバイスが提供される。本発明による位置決めデバイスは、
- 第1の交流信号および第2の交流信号を受信するための信号インターフェースであって、第1および第2の交流信号の振幅は、第1および第2の交流信号の包絡線が相互の位相シフトを有するようにリゾルバの回転位置に依拠する、信号インターフェースと、
- 第1および第2の交流信号の振幅、ならびにリゾルバの励磁信号の極性を示す極性情報に基づき位置信号を発生させるための処理システムと
を備える。
【0006】
位置決めデバイスの処理システムは、
- 例えば周波数変化または位相変化などの、第1の交流信号の波形および/または第2の交流信号の波形における極性インジケータを認識することと、
- 認識された極性インジケータに基づき極性情報を判定することと
を行うように構成される。
【0007】
励磁信号の極性を表わす極性情報が、第1および第2の交流信号に含まれるので、極性情報を位置決めデバイスに伝達するための別個の信号チャネルは必要ない。
【0008】
本発明によると、リゾルバの励磁信号を生成するための新しい励磁デバイスも提供される。本発明による励磁デバイスは、
- 励磁信号を発生させるための信号発生器と、
- 励磁信号をリゾルバへ送信するための信号インターフェースと、
- 未知の符号を有するゲインによって増加された励磁信号である信号において、極性インジケータが検出された場合、励磁信号の極性を表わす極性インジケータを含むよう、励磁信号の波形を調整するための変調器と
を備える。
【0009】
本発明によると、電気機械の巻線システムの電圧を制御するための新しい変換器も提供される。例えばこの変換器を、周波数変換器とすることができる。本発明による変換器は、本発明による位置決めデバイスおよび/または本発明による励磁デバイスを備える。
【0010】
本発明によると、1つまたは複数の電気機械における2つ以上の巻線システムの電圧を制御するために、本発明による2つ以上の変換器を備える新しい変換器システムも提供される。
【0011】
例示的かつ非限定の実施形態による変換器システムにおいて、各変換器は、本発明による位置決めデバイス、および本発明による励磁デバイスを備える。この例示的なケースにおいて、変換器のうちの1つは、電気機械に接続されたリゾルバへ励磁信号を送信するように構成され、全ての変換器は、交流信号の包絡線が相互の位相シフトを有するように、振幅がリゾルバの回転位置に依拠する交流信号を、リゾルバから受信するように構成される。したがって、リゾルバは1つのみ必要となる。さらに、変換器は互いに同様のものであってよい。
【0012】
本発明によると、新しい電気駆動システムも提供され、この電気駆動システムは、
- 2つ以上の巻線システムを備える1つまたは複数の電気機械と、
- 1つまたは複数の電気機械の回転位置を検出するためのリゾルバと、
- 1つまたは複数の電気機械を制御するための、本発明による変換器システムと
を備える。
【0013】
例えば電気駆動システムは、巻線システムのそれぞれの磁軸の方向が互いに異なるよう、少なくとも2つの巻線システムを有する電気機械を備えてよい。例えば電気機械は、2つの三相固定子巻線の各々の磁軸の間が30°の電気角度となるよう、2つ三相固定子巻線を備えてよい。しかし、2つ以上の電気機械の存在も可能であり、それによって、シャフトの回転位置が互いに結合されるよう、2つ以上の電気機械のシャフトが機械的に直接相互接続されるか、またはギアによって相互接続される。
【0014】
本発明によると、リゾルバの回転位置を示す位置信号を生成するための、新しい方法が提供される。本発明による方法は、
- 第1の交流信号および第2の交流信号を、リゾルバから受信するステップであって、第1および第2の交流信号の振幅は、第1および第2の交流信号の包絡線が相互の位相シフトを有するようにリゾルバの回転位置に依拠する、受信するステップと、
- 第1の交流信号の波形および/または第2の交流信号の波形における極性インジケータを認識するステップと、
- 認識された極性インジケータに基づき、リゾルバの励磁信号の極性を示す極性情報を判定するステップと、
- 第1および第2の交流信号の振幅、および極性情報に基づき、位置信号を発生させるステップと
を含む。
【0015】
様々な例示的かつ非限定の実施形態が、添付の従属請求項に説明される。
【0016】
オペレーションの構築および方法の両方についての、例示的かつ非限定の実施形態は、追加の目的およびその利点と共に、添付の図面と共に読むことで、特定の例示的かつ非限定の実施形態の以下の説明から最良に理解されよう。
【0017】
用語「備える」および「含む」は、本明細書では列挙されない特徴の存在を排除も必要ともしない、排他的ではない限定として使用される。従属請求項で列挙される特徴は、別途明記しない限り、相互に自由に組み合わせることができる。さらに、単数形の「a」または「an」の使用は、本明細書を通して複数を排除しないことを理解されたい。
【0018】
例示的かつ非限定の実施形態、およびそれらの利点を、添付の図面を参照して、以下で例としてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】例示的かつ非限定の実施形態による位置決めデバイス、および例示的かつ非限定の実施形態による励磁デバイスを備える、電気駆動システムの概略図である。
【
図2a】例示的かつ非限定の実施形態による励磁デバイスによって発生された励磁信号の例示的な波形、およびリゾルバによって生成された交流信号の、対応する例示的な波形を示す図である。
【
図2b】例示的かつ非限定の実施形態による励磁デバイスによって発生された励磁信号の例示的な波形、およびリゾルバによって生成された交流信号の、対応する例示的な波形を示す図である。
【
図2c】例示的かつ非限定の実施形態による励磁デバイスによって発生された励磁信号の例示的な波形、およびリゾルバによって生成された交流信号の、対応する例示的な波形を示す図である。
【
図3】リゾルバの回転位置を示す位置信号を生成するための、例示的かつ非限定の実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明で提供される特定の例は、添付の特許請求の範囲および/または適用可能性を限定するものと解釈すべきではない。説明に提供される例のリストおよびグループは、別途明記しない限り、網羅的なものではない。
【0021】
図1は、例示的かつ非限定の実施形態による電気駆動システム100の概略図である。電気駆動システムは、2つの巻線システムを有する電気機械110を備える。この例示的なケースにおいて、電気機械は、2つの三相固定子巻線のそれぞれの磁軸の間が30°の電気角度となるよう、2つ三相固定子巻線を備える。例えば電気機械110は、必ずではないが、永久磁石同期機、電気的に励起された同期機、誘導機、または同期リラクタンス機とすることができる。電気機械110は、アクチュエータ111を駆動するように配置される。例えばアクチュエータ111は、必ずではないが、ホイール、チェーン軌道、液圧ポンプ、ウッドチッピング機のカッター、または他のアクチュエータとすることができる。
【0022】
電気駆動システム100は、電気機械110における回転子の回転位置を検出するためのリゾルバ112を備える。例えばリゾルバ112は、可変リラクタンス「VR」リゾルバとすることができる。しかしリゾルバが、励磁信号をリゾルバの回転子の巻線に伝達するためのブラシまたは回転変圧器を備える、巻線型回転子リゾルバであることも可能である。リゾルバ112は、交流励磁信号V_excを受信し、第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinを生成する。第1および第2の交流信号の振幅は、第1および第2の交流信号の包絡線が相互の位相シフトを有するようにリゾルバの回転位置112に依拠する。励磁信号V_exc、ならびに第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinを、以下の式を用いてモデル化することができる。
V_exc=V(t)sin(φ(t))、
V_sin=V(t)sin(φ(t)+φc)×TRsin(Θ) 式1
V_cos=V(t)sin(φ(t)+φc)×TRcos(Θ)
ここで、tは時間、Vは励磁信号V_excの振幅、TRはリゾルバ112の励磁巻線とリゾルバ112の出力巻線との間の最大変電比、φは励磁信号V_excの経時位相、φcはリゾルバ112における鉄および銅の損失によって生じた位相シフト、およびΘはリゾルバ112の回転子の電気回転角度である。励磁信号V_excの周波数(dφ/dt)/2πは、経時的または一定とすることができる。したがって、励磁信号V_excの振幅Vは、一定または経時的とすることができる。式1によって示された例示的なケースにおいて、第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinの包絡線間の上述の位相シフトは、90°の電気角度Θである。
【0023】
電気駆動システム100は、電気機械110における2つの巻線システムの電圧を制御するための変換器システムを備える。変換器システムは、第1の巻線システムの電圧を制御するための変換器108、および第2の巻線システムの電圧を制御するための変換器109を備える。この例示的なケースにおいて、変換器の各々は周波数変換器である。
【0024】
変換器108は、制御可能な交流電圧を生成するためのインバータ・ステージ115、変換器108に供給された交流電圧を整流するための整流ステージ113、および整流ステージ113とインバータ・ステージ115との間の中間回路114を備える。変換器108は、リゾルバ112の励磁信号V_excを生成するための励磁デバイス104をさらに備える。励磁デバイス104は、励磁信号V_excを発生させるための信号発生器105、および励磁信号V_excをリゾルバ112へ送信するための信号インターフェース106を備える。励磁デバイス104は、未知の符号を有するゲインによって増加された励磁信号V_excである信号において極性インジケータが検出された場合、励磁信号V_excの極性を表わすことができる極性インジケータを含むよう、励磁信号V_excの波形を調整するための変調器107をさらに備える。未知の符号を有するゲインは、上記の式1に表わされたTRcos(Θ)またはTRsin(Θ)である。
【0025】
変換器108は、リゾルバ112の回転位置を示す第1の位置信号を生成するための位置決めデバイス151を備える。変換器108のインバータ・ステージ115は、第1の位置信号と、例えば電気機械110の測定もしくは推定された回転速度、電気機械110によって発生されて測定もしくは推定されたトルク、基準速度、基準トルク、および/または1つまたは複数の制御量などの他の制御量と、に基づいて、電気機械110の第1の巻線システム供給された電圧を制御するための制御システムを含む。
【0026】
変換器108の位置決めデバイス151は、第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinを受信するための信号インターフェース152と、第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinの振幅、ならびに励磁信号V_excの極性に基づき、上述の第1の位置信号を発生させるための処理システム153と、を備える。式1に示されたcos(Θ)がプラスであるかマイナスであるか、およびsin(Θ)がプラスであるかマイナスであるかを見出すために、所与の瞬間における励磁信号V_excの極性、すなわち符号は、この瞬間における第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinの極性と比較される。式1に示された位相シフトφcを、リゾルバ112の回転位置を判定するときに考慮に入れることを可能である。φcの値を、処理システム103に修正パラメータとして与えられ得る、経験的に判定された値とすることができる。
【0027】
変換器109は、インバータ・ステージ、整流ステージ、および整流ステージとインバータ・ステージとの間の中間回路を備える。変換器109は、リゾルバ112の回転位置を示す第2の位置信号を生成するための位置決めデバイス101を備える。変換器109のインバータ・ステージは、第2の位置信号および1つまたは複数の制御量に基づき、電気機械110の第2の巻線システムに供給された電圧を制御する。
【0028】
変換器109の位置決めデバイス101は、第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinを受信するための信号インターフェース102を備える。位置決めデバイス101は、第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinの振幅、ならびに励磁信号V_excの極性を示す極性情報に基づき、上述の第2の位置信号を発生させるための処理システム103をさらに備える。処理システム103は、第1の交流信号V_cosの波形および/または第2の交流信号V_sinの波形における極性インジケータを認識するように構成される。処理システム103は、認識された極性インジケータに基づき極性情報を判定するように構成される。励磁信号V_excの極性を示す極性情報が、第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinに含まれるので、極性情報を位置決めデバイス101に伝達するための別個の信号チャネルは必要ない。
【0029】
図1に示された例示的な変換器システムにおいて、変換器109は、信号発生器155、信号発生器155を制御するための変調器157、および生成された励磁信号を送信するための信号インターフェース156を有する、励磁デバイス154を備える。
図1に示された例示的な状況において、変換器109の励磁デバイス154は使用されておらず、変換器108の位置決めデバイス151が、励磁信号V_excを変換器108の励磁デバイス104から直接受信するように配置される。位置決めデバイス151が位置決めデバイス101と類似である例示的なケースにおいて、位置決めデバイス151が励磁デバイス104から励磁信号V_excを直接受信させる装置は必要ない。励磁デバイス104および154は、有利には互いに類似し、位置決めデバイス101および151は、有利には互いに類似する。この例示的なケースにおいて、変換器108および109は互いに類似するものであってよい。
【0030】
位置決めデバイス101の処理システム103、ならびに位置決めデバイス151の処理システム153は、1つまたは複数のプロセッサ回路を用いて実現させることができる。これらの1つまたは複数のプロセッサの各々は、適切なソフトウェアが提供されたプログラム可能プロセッサ回路か、例えば特定用途向け集積回路「ASIC」などの専用ハードウェア・プロセッサか、または例えばフィールド・プログラマブル・ゲートアレイ「FPGA」などの構成可能なバードウェア・プロセッサとすることができる。さらに、処理システム103ならびに処理システム153は、例えばランダムアクセス・メモリ「RAM」などの1つまたは複数のメモリ・デバイスを備えてよい。したがって、変調器107ならびに変調器157は、1つまたは複数のプロセッサ回路および1つまたは複数のメモリ・デバイスを備えてよい。
【0031】
図2aは、例示的かつ非限定の実施形態による、励磁デバイスによって発生された励磁信号V_excの例示的な波形を示す。さらに
図2aは、
図1に示されたリゾルバ112によって生成された第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinの対応する例示的な波形を示す。この例示的なケースにおいて、
図1に示された変調器107は、周波数の各変化が生じる瞬間における所定の極性を有するように周波数変化を含むよう、励磁信号V_excの波形を調整するように構成される。したがって、励磁信号V_excの周波数(dφ/dt)/2πは変化する。
図2aに示された例示的なケースにおいて、周波数の各変化後の第1のパルスはプラスである。
図2aは、周波数の2つの変化を示し、それらの周波数変化後の第1のパルスは、参照番号221および222で示される。
図2aに示された例示的なケースにおいて、励磁信号V_excの周波数は、2つの考えられる値、すなわち
図1に示された信号発生器105が、0101・・・である周波数偏位キーイング「FSK」にしたがって制御される。2つより多い周波数値を使用することも可能である。
【0032】
例示的かつ非限定の実施形態による位置決めデバイスにおいて、
図1に示された処理システム103は、第1の交流信号V_cosの周波数変化および/または第2の交流信号V_sinの周波数変化を認識するよう、および認識された周波数変化に基づき励磁信号V_excの極性を判定するように構成される。
図2aに示されるように、励磁信号V_excのパルス221および222に対応する第1の交流信号V_cosのパルスはマイナスである。したがって、処理システム103は、式1に示されたcos(Θ)は、t2からt4の時間の間はマイナスである。
図2aに示されるように、励磁信号V_excのパルス221に対応する第2の交流信号V_sinのパルスはプラスであり、励磁信号V_excのパルス222に対応する第2の交流信号V_sinのパルスはマイナスである。したがって処理システム103は、式1に示されたsin(Θ)はt1からt3の時間の間はプラスであり、t3から第2の交流信号V_sinの振幅がゼロになる次の瞬間までの間はマイナスである、と判定することができる。
【0033】
図2bは、例示的かつ非限定の実施形態による励磁デバイスによって発生された励磁信号V_excの例示的な波形を示す。さらに
図2bは、
図1に示されたリゾルバ112によって生成された第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinの対応する例示的な波形を示す。この例示的なケースにおいて、
図1に示された変調器107は、励磁信号V_excが、位相の各変化が生じる瞬間における所定の極性を有するように位相変化を含むよう、励磁信号V_excの波形を調整するように構成される。
図2bに示された例示的なケースにおいて、これらの位相変化後の第1のパルスはプラスである。
図2bは、2つの位相変化を示し、それらの位相変化後の第1のパルスは、参照番号223および224で示される。
図2bに示された例示的なケースにおいて、励磁信号V_excの位相は、多くの考えられる値を有する。すなわち
図1に示された信号発生器105は、位相偏位キーイング「PSK」にしたがって制御される。
【0034】
例示的かつ非限定の実施形態による位置決めデバイスにおいて、
図1に示された処理システム103は、第1の交流信号V_cosの位相変化および/または第2の交流信号V_sinの位相変化を認識するよう、および認識された周波数変化に基づき励磁信号V_excの極性を判定するように構成される。
図2bに示されるように、励磁信号V_excのパルス223および224に対応する第1の交流信号V_cosのパルスはマイナスである。したがって処理システム103は、式1に示されたcos(Θ)はt2からt4の時間の間はマイナスである、と判定することができる。
図2bに示されるように、励磁信号V_excのパルス223に対応する第2の交流信号V_sinのパルスはプラスであり、励磁信号V_excのパルス224に対応する第2の交流信号V_sinのパルスはマイナスである。したがって処理システム103は、式1に示されたsin(Θ)はt1からt3の時間の間はプラスであり、t3から第2の交流信号V_sinの振幅がゼロになる次の瞬間までの間はマイナスである、と判定することができる。
【0035】
例示的かつ非限定の実施形態による位置決めデバイスにおいて、
図1に示された処理システム103は、第1の交流信号V_cosの波形のゼロ交差および/または第2の交流信号V_sinの波形のゼロ交差を認識するための、ゼロ交差検出器を形成するように構成され、上述の周波数変化または上述の位相変化を認識する。
【0036】
図2cは、例示的かつ非限定の実施形態による励磁デバイスによって発生された励磁信号V_excの例示的な波形を示す。さらに
図2cは、
図1に示されたリゾルバ112によって生成された第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinの対応する例示的な波形を示す。この例示的なケースにおいて、
図1に示された変調器107は、励磁信号V_excが各所定の波形パターンが生じる瞬間における所定の極性を有するように所定の波形パターンを含むよう、励磁信号V_excの波形を調整するように構成される。
図2cに示された例示的なケースにおいて、所定の波形パターンは、励磁信号V_excのプラスのパルスおよびその後のマイナスのパルスを備え、そのため、これらのパルスの振幅は、励磁信号V_excの隣接するパルスの振幅よりも大きい。
図2cは、2つの波形パターン225および226を示す。
図2cに示された例示的なケースにおいて、信号発生器105は、振幅調整によって制御される。所定の波形パターンを形成するプラスおよびマイナスのパルスの振幅は、d(sin(Θ))/dtまたはd(cos(Θ))/dtがその最大絶対値に到達した状態においても、所定の波形パターンが第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinの波形において認識可能となるほど、高い必要がある。
【0037】
例示的かつ非限定の実施形態による位置決めデバイスにおいて、
図1に示された処理システム103は、第1の交流信号V_cosの波形および/または第2の交流信号V_sinの波形を、上述の所定の波形パターンと比較し、上記で提示された比較の適合に応答して、所定の波形パターンと適合する第1の交流信号の一部および/または第2の交流信号の一部に基づき、励磁信号V_excの極性を判定するように構成される。例えば、処理システム103を、V_cosまたはV_sinの連続したプラスのパルスの振幅を互いに比較し、連続したマイナスのパルスの振幅を互いに比較して、反対の極性を伴う連続したパルスが隣接するパルスの振幅よりも大きい振幅を有する状況を認識するように構成することができる。
図2cに示されるように、励磁信号V_excの波形パターン225および226に対応する第1の交流信号V_cosのパルスは、励磁信号V_excの波形パターン225および226の対応するパルスに対して反対の極性を有する。したがって処理システム103は、式1に示されたcos(Θ)は、t2からt4の時間の間はマイナスである、と判定することができる。
図2cに示されるように、励磁信号V_excの波形パターン225に対応する第2の交流信号V_sinのパルスは、励磁信号V_excの波形パターン225の対応するパルスと同じ極性を有し、励磁信号V_excの波形パターン226に対応する第2の交流信号V_sinのパルスは、波形パターン226の対応するパルスの反対の極性を有する。したがって、処理システム103は、式1に示されたsin(Θ)はt1からt3の時間の間はプラスであり、t3から第2の交流信号V_sinの振幅がゼロになる次の瞬間までの間はマイナスである、と判定することができる。
【0038】
例示的かつ非限定の実施形態による励磁デバイスにおいて、
図1に示された変調器107は、第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinを受信するよう、ならびに第1および第2の交流信号V_cosおよびV_sinの包絡線のゼロ交差において励磁信号V_excの周波数を変化させるように構成される。例えば励磁信号V_excの周波数は、4つの考えられる周波数値f1、f2、f3、およびf4を有してよく、それによって励磁信号の周波数は、式1に示されたcos(Θ)およびsin(Θ)の両方がプラスであるときはf1、cos(Θ)≦0かつsin(Θ)>0であるときはf2、cos(Θ)>0かつsin(Θ)≦0であるときはf3、ならびにcos(Θ)≦0かつsin(Θ)≦0であるときはf4となる。この例示的なケースにおいて、励磁信号V_excの周波数は、cos(Θ)およびsin(Θ)の符号を直接示す。励磁信号V_excの周波数は、極性インジケータとして間接的に働く。それによると、励磁信号V_excの極性は、例えば周波数がf1またはf3の場合に第1の交流信号V_cosの極性であり、周波数がf2またはf4の場合に第1の交流信号V_cosの極性の反対である。例示的かつ非限定の実施形態による位置決めデバイスにおいて、
図1に示された処理システム103は、第1の交流信号V_cosの周波数および/または第2の交流信号V_sinの周波数を認識するように構成され、認識された周波数は、cos(Θ)およびsin(Θ)の符号を示し、上述の方法で、励磁信号の極性を示す極性情報を提示する。
【0039】
図3は、リゾルバの回転位置を示す位置信号を生成するための、例示的かつ非限定の実施形態による方法のフローチャートである。この方法は、以下のアクションすなわち、
- アクション301:第1の交流信号および第2の交流信号を、リゾルバから受信するステップであって、第1および第2の交流信号の振幅は、第1および第2の交流信号の包絡線が相互の位相シフトを有するようにリゾルバの回転位置に依拠する、受信するステップと、
- アクション302:第1の交流信号の波形および/または第2の交流信号の波形における極性インジケータを認識するステップと、
- アクション303:認識された極性インジケータに基づき、リゾルバの励磁信号の極性を示す極性情報を判定するステップと、
- アクション304:第1および第2の交流信号の振幅、ならびに極性情報に基づき、リゾルバの回転位置を示す位置信号を発生させるステップと
を含む。
【0040】
例示的かつ非限定の実施形態による方法において、極性インジケータを認識することは、第1の交流信号の位相変化もしくは周波数変化、および/または第2の交流信号の位相変化もしくは周波数変化を認識することを含む。この例示的かつ非限定の実施形態による方法において、極性情報は、認識された位相変化または認識された周波数変化に基づき判定される。
【0041】
例示的かつ非限定の実施形態による方法において、極性インジケータを認識することは、第1の交流信号の波形および/または第2の交流信号の波形を、所定の波形パターンと比較することを含む。この例示的かつ非限定の実施形態による方法において、極性情報は、所定の波形パターンと適合する、第1の交流信号の一部および/または第2の交流信号の一部に基づき判定される。
【0042】
上記の説明で提供された特定の例は、添付の特許請求の範囲および/または適用可能性を限定するものと解釈すべきではない。上記の説明に提供された例のリストおよびグループは、別途明記しない限り、網羅的なものではない。
【符号の説明】
【0043】
100 電気駆動システム
101 位置決めデバイス
102 信号インターフェース
103 処理システム
104 励磁デバイス
105 信号発生器
106 信号インターフェース
107 変調器
108 変換器
109 変換器
110 電気機械
111 アクチュエータ
112 リゾルバ
113 整流ステージ
114 中間回路
115 インバータ・ステージ
151 位置決めデバイス
152 信号インターフェース
153 処理システム
154 励磁デバイス
155 信号発生器
156 信号インターフェース
157 変調器
221 V_excのパルス
222 V_excのパルス
223 V_excのパルス
224 V_excのパルス
225 V_excの波形パターン
226 V_excの波形パターン