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  • 特許-体位保持補助具 図1
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  • 特許-体位保持補助具 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】体位保持補助具
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/04 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
A61B6/04 505
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020049872
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021145968
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390015521
【氏名又は名称】オリオン・ラドセーフメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆行
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05871457(US,A)
【文献】特開2018-027268(JP,A)
【文献】特開2017-006398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0093673(US,A1)
【文献】特開平07-194569(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0199072(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/055
A47C 16/00 -16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の膝関節の後部に対向配置される後部対向部を有する体位保持補助具であっ
て、
前記後部対向部は、前記膝関節の後部に位置する筋肉である後部部位への前記後部
対向部による押圧を緩和する面取り部を有し、
前記関節に連続する下腿部、大腿部を延在方向に沿って収容する収容部を有し、
前記収容部は、前記膝関節に連続する下腿部、大腿部のそれぞれを収容する第1収
容部および第2収容部からなり、
膝蓋骨軸位のX線画像を撮影するための補助具であること
を特徴とする体位保持補助具。
【請求項2】
前記膝関節に連続する下腿部、大腿部の延在方向を含む面を対称面とする対称形状
からなり左右両用である、請求項1に記載の体位保持補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体位保持補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被検者の第1部位のX線検査時に前記被検者を第1姿勢にするためにベッド上に設置される第1補助具と、前記被検者の第2部位のX線検査時に前記被検者を第2姿勢にするために前記ベッド上に設置される第2補助具と、前記第1補助具と前記第2補助具とを結合するための結合部材と、を含み、前記第1部位のX線検査時には、前記第1補助具を単体で使用する第1単体使用方式、又は、前記第1補助具に対して前記第2補助具を付加的に結合することにより構成された第1結合体を使用する第1結合体使用方式、が選択される、ことを特徴とするX線検査用補助具セットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-88256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、被検者への負担が少なく、かつ撮影者に高い技能を求めることなく、撮影位置関係の再現性を高めることが可能な体位保持補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
(1)被検者の関節の後部に対向配置される後部対向部を有する体位保持補助具であって、前記後部対向部は、前記関節の後部に位置する筋肉である後部部位への前記後部対向部による押圧を緩和する面取り部を有することを特徴とする体位保持補助具。
(2)前記関節に連続する肢部の一部を前記肢部の延在方向に沿って収容する収容部を有する、上記(1)に記載の体位保持補助具。
(3)前記関節は膝または肘であり、前記収容部は、前記関節に連続する2つの腕部または腿部のそれぞれを収容する第1収容部および第2収容部からなる、上記(2)に記載の体位保持補助具。面取り部は、第1収容部と第2収容部との間に位置する。
(4)前記肢部の延在方向を含む面を対称面とする対称形状からなり左右両用である、上記(2)または上記(3)に記載の体位保持補助具。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る体位保持補助具では、関節の後部対向部に面取り部を有するため、X線画像を撮影中に関節の後部が体位保持補助具に当接し続けたことによる痛みが生じにくい。痛みが生じると被検者は撮影開始時の姿勢を維持することが困難となるため、結果、膝蓋骨の関節面など目的の部位を適切に撮影できず、さらに撮影時間が長くなってしまうこともある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る膝蓋骨測定用の体位保持補助具の説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る体位保持補助具を用いた膝蓋骨のX線画像の撮影方法の説明図である。
図3】膝蓋骨を測定する際の角度設定の説明図である。
図4】(a)本発明の一実施形態に係る体位保持補助具を用いて撮影された膝蓋骨軸位のX線画像を示す図、(b)従来技術に基づき撮影された膝蓋骨軸位のX線画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る膝蓋骨測定用の体位保持補助具の説明図である。図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る膝蓋骨測定用の体位保持補助具100は、概形が、底面51、52が不等辺6角形である角柱である。角柱の側面の1つが鉛直方向下側(Z1-Z2方向Z2側)を向く載置面30を構成し、角柱の6つの側面のうち、鉛直方向上側(Z1-Z2方向Z1側)を向く2つの側面が、下腿と対向するための第1面10および大腿と対向するための第2面20を構成する。
【0010】
体位保持補助具100では、第1面10と載置面30との間には角柱の側面が1つ位置し、第2面20と載置面30との間には角柱の側面が2つ位置する。
【0011】
第1面10および第2面20には、それぞれ、第1面10と第2面20との稜線15と直交する向き(Y1-Y2方向)に延びる切り欠きが設けられている。第1面10に設けられた切り欠きは、下腿の延在方向(X1-X2方向)の一部(腓腹筋の一部)を収容する第1収容部11を構成する。第2面20に設けられた切り欠きは、大腿の延在方向(X1-X2方向)の一部(大腿屈筋群の一部)を収容する第2収容部21を構成する。
【0012】
腓腹筋の一方の端部に位置する腱は大腿骨に接続するように設けられているため、腓腹筋の内側頭および外側頭は、膝の後部に位置する部分を有する。この部分との接触緩和するために、体位保持補助具100には、第1面10と第2面20との稜線15の近傍に、面取り部40が設けられている。
【0013】
すなわち、体位保持補助具100は、被検者の関節(膝)の後部に対向配置される後部対向部35(図1では破線の楕円で示される部分)を有し、後部対向部35は、関節(膝)の後部に位置する筋肉である後部部位(具体的には腓腹筋の内側頭および外側頭)への後部対向部35による押圧を緩和する面取り部40を有する。これにより、後部部位(腓腹筋の内側頭および外側頭)の体位保持補助具100への接触が緩和され、被検者は痛みを感じにくくなる。
【0014】
被検者が後部部位(腓腹筋の内側頭および外側頭)に痛みを感じると、被検者は痛みを避けるために膝の位置を変更してしまい、膝蓋骨の関節面を適切に測定することが困難となる。
【0015】
第1収容部11、第2収容部21および面取り部40は、肢部である下腿および大腿の延在方向を含む面(YZ面)を対称面とする対称形状からなり左右両用である。このように体位保持補助具100が左右両用であることは、左右別様である場合よりも取り扱い性に優れ、例えば補助具を効率的に保管することが実現される。
【0016】
図2は、本実施形態に係る体位保持補助具を用いた膝蓋骨のX線画像の撮影方法の説明図である。図2に示されるように、使用の際に、体位保持補助具100は、基台BPの上にその載置面30が対向するように配置され、被検者200は基台BP上に仰向けになり、大腿210が第2面20に対向し、下腿220が第1面10に対向し、膝裏(膕)232が第1面10と第2面との稜線15に対向するように、体位保持補助具100の上に脚を載せる。
【0017】
体位保持補助具100では、大腿210の一部(大腿屈筋群の一部211)を受ける第2収容部21および下腿220の一部(腓腹筋の一部221)を受ける第1収容部11を有するため、大腿210および下腿220の体位保持補助具100に対する相対位置が安定しやすい。その結果、大腿210および下腿220の間に位置する膝230の体位保持補助具100に対する相対位置も安定化し、膝蓋骨231の関節面の撮影の繰り返し再現性が高まる。
【0018】
ただし、このように収容部を設けると第1面10と第2面との稜線15に膝裏(膕)232が相対的に強く押しつけられるため、撮影中に膝裏(膕)232が痛くなってしまうことが懸念される。被検者200が痛みを避けるために無意識的に膝230の位置をずらすと、1回の撮影中に膝230の位置が変化して、結果、膝蓋骨231の関節面の撮影の繰り返し再現性が低下する。体位保持補助具100は第1面10と第2面との稜線15に対向する筋肉(腓腹筋の一部232)を受容する面取り部40を有するため、稜線15に筋肉(腓腹筋の一部232)が接触し続けることに基づく不具合の発生が安定的に回避され、膝蓋骨231の関節面の撮影の繰り返し再現性がより安定的に高まる。
【0019】
膝蓋骨231を撮影するためのX線光源300は足先(Y1-Y2方向Y1側)に位置し、図2において破線の矢印で示される照射光軸Axが膝230に向くように設定される。照射光軸Axの水平面に対する角度である照射角θxは例えば10度である。ここで、体位保持補助具100の第1面10と載置面30との間に位置する側面の長さ(Z1-Z2方向長さ)は、足指がX線の照射範囲に位置しなように、ある程度の長さに設定される。このように、足指の干渉が適切に排除されるようにすることで、照射角θxを設定しやすくなる。なお、図示しないが、Y1-Y2方向からみたときに、照射光軸Axは脛骨粗面と膝蓋骨の中央とを通るように設定される。
【0020】
膝230を挟んでX線光源300とは反対側(Y1-Y2方向Y2側)に、X線フィルムまたはX線撮像素子からなる撮像部材が入っているX線検出器320が鉛直方向(Z1-Z2方向)に延びる支持ロッド310により支持されている。
【0021】
図3(a)は、膝蓋骨を測定する際の角度設定の説明図である。図4(a)は、本発明の一実施形態に係る体位保持補助具を用いて撮影された膝蓋骨軸位のX線画像を示す図である。図4(b)は、従来技術に基づき撮影された膝蓋骨軸位のX線画像を示す図である。
【0022】
膝蓋骨231の関節面と大腿骨212の膝蓋面との隙間は狭く、この隙間をX線により撮影するためには、X線光源300の照射光軸Axを膝蓋骨231の関節面の角度に合わせる必要がある。具体的には、図3に示されるように、X1-X2方向からみて、膝蓋骨231の関節面(図3には関節面を延長してYZ面に投影した投影線Sを示した。)が水平面に作る角度である傾斜角θsに、照射角θxを正確に合わせることが必要となる。
【0023】
図3に示されるように傾斜角θsと照射角θxとが揃っている(具体的には、いずれも10度)場合には、図4(a)に示されるように膝蓋骨231の関節面233と大腿骨222の膝蓋面223との隙間を適切に観察可能なX線画像が得られる。これに対し、従来技術に基づき撮影すると、図4(b)に示されるように、大腿骨222の脛骨粗面224の一部224Aが関節内に入り込んでしまい、膝蓋骨231の関節面を適切に観察することができない。
【0024】
上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の構成例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【符号の説明】
【0025】
100 :体位保持補助具
10 :第1面
11 :第1収容部
15 :稜線
20 :第2面
21 :第2収容部
30 :載置面
35 :後部対向部
40 :面取り部
51 :底面
52 :底面
200 :被検者
210 :大腿
211 :大腿屈筋群の一部
212 :大腿骨
220 :下腿
221 :腓腹筋の一部
222 :大腿骨
223 :大腿骨の膝蓋面
224 :脛骨粗面
224A:関節内に入り込んだ脛骨粗面
230 :膝
231 :膝蓋骨
232 :膝裏に位置する腓腹筋の一部
233 :膝蓋骨の関節面
300 :X線光源
310 :支持ロッド
320 :X線検出器
Ax :照射光軸
BP :基台
S :投影線
θs :傾斜角
θx :照射角
図1
図2
図3
図4