IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シーボンの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】乳化型クレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20240816BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240816BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240816BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240816BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/06
A61Q19/10
A61K8/31
A61K8/37
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020067291
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021161095
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】397063833
【氏名又は名称】株式会社シーボン
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】稲川 大地
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081895(JP,A)
【文献】特開平08-143420(JP,A)
【文献】特開2020-050638(JP,A)
【文献】特開2020-040918(JP,A)
【文献】特開2016-069442(JP,A)
【文献】特開2015-168629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が12~22の飽和脂肪酸を疎水基に持ち、HLBが5以上11.5以下となる、3.0重量%~5.0重量%のショ糖脂肪酸エステルと、
非極性液状油と、
極性液状油と、を含有し、
(1)前記ショ糖脂肪酸エステルが1種類のショ糖脂肪酸エステルからなる、(2)前記ショ糖脂肪酸エステルが2種類以上のショ糖脂肪酸エステルを含有し、各ショ糖脂肪酸エステルは炭素数が13~22の飽和脂肪酸を疎水基に持つ、又は(3)前記ショ糖脂肪酸エステルが、炭素数が12の飽和脂肪酸からなるショ糖脂肪酸エステルと、炭素数が13以上17以下の飽和脂肪酸からなるショ糖脂肪酸エステルとを含有し、
前記非極性液状油は前記非極性液状油及び前記極性液状油の合計量に対して、25/65~50/65の割合で含有され
油溶性カミツレ抽出物及びレシチンを含有しない、乳化型クレンジング化粧料。
【請求項2】
ポリグリセリルアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン脂肪酸エステルのいずれか1つ以上を0重量%超過1.5重量%以下で含有する請求項1に記載の乳化型クレンジング化粧料。
【請求項3】
0.2重量%~0.75重量%のポリグリセリルアルキルエーテル又は0.75重量%~1.25重量%の脂肪酸が直鎖飽和脂肪酸からなるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する請求項2に記載の乳化型クレンジング化粧料。
【請求項4】
0重量%超過2.5重量%以下のモノグリセリン脂肪酸エステルを含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の乳化型クレンジング化粧料。
【請求項5】
前記モノグリセリン脂肪酸エステルのエステル結合する脂肪酸が分岐脂肪酸からなり、当該モノグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.75重量%以上2.5重量%以下である請求項4に記載の乳化型クレンジング化粧料。
【請求項6】
0.1重量%~0.75重量%のフィトステロールズを含有する請求項1乃至5に記載の乳化型クレンジング化粧料。
【請求項7】
前記非極性液状油は前記非極性液状油及び前記極性液状油の合計量に対して、25/65~45/65の割合で含有される請求項1乃至6のいずれか1項に記載の乳化型クレンジング化粧料。
【請求項8】
前記ショ糖脂肪酸エステルの疎水基は炭素数が12~18の飽和脂肪酸である請求項1乃至のいずれか1項に記載の乳化型クレンジング化粧料。
【請求項9】
前記ショ糖脂肪酸エステルは3.0重量%~4.5重量%で含有される請求項1乃至のいずれか1項に記載の乳化型クレンジング化粧料。
【請求項10】
前記非極性液状油は、スクワラン、シリコーン油、流動イソパラフィン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、水添ポリオレフィン、水添ポリイソブテン又は水添ポリデセンであり、
前記極性液状油は、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン又はジカプリリルエーテルである請求項1乃至9のいずれか1項に記載の乳化型クレンジング化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化型クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮脂汚れやメイクアップ化粧料の除去に用いられるクレンジング化粧料は、オイル状、ローション状、ジェル状、ミルク状、クリーム状、バーム状等の様々なタイプがある。その中でも、乳化型クレンジング化粧料は、O/W型(水を連続相とする水中油滴型)とW/O型(油を連続相とする油中水滴型)とに大別される。
【0003】
一般にO/W型の乳化型クレンジング化粧料の場合は、肌の上で塗り広げる際にクリームからの水分蒸発や、物理的刺激を与えることで乳化破壊(転相)が起こり、油状に変化しメイク馴染みが良くなるという特徴がある。その後、タオル等で拭き取るか、水で洗い流すことでメイク汚れや皮脂汚れが除去される。
【0004】
しかし、O/W型の乳化型クレンジング化粧料は、熱力学的に不安定でありクレンジング効果に十分な油性成分を配合して保存安定性を確保することが困難であった。また、使用時には、転相までの時間が長い、あるいは転相する際にダマ状の凝集の発生や粘度増加等による使用性の低下、さらにはメイクとの馴染みが不十分、水で洗い流した後に油性感が残る等の課題があった。
【0005】
これまでに、転相までの適度な時間を有する水中油型乳化化粧料に関する技術(特許文献1)や、べたつきがなく洗い流せるクレンジングクリームに関する技術(特許文献2)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-185927号公報
【文献】特許第6036188号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、保存安定性、マッサージ性、メイクとの馴染み、洗い流し後の肌感触等のいずれかの特性において良好な乳化型クレンジング化粧料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による乳化型クレンジング化粧料は、
炭素数が12~22の飽和脂肪酸を疎水基に持ち、HLBが5以上11.5以下となる、3.0重量%~5.0重量%のショ糖脂肪酸エステルと、
非極性液状油と、
極性液状油と、を含有し、
(1)前記ショ糖脂肪酸エステルが1種類のショ糖脂肪酸エステルからなる、(2)前記ショ糖脂肪酸エステルが2種類以上のショ糖脂肪酸エステルを含有し、各ショ糖脂肪酸エステルは炭素数が13~22の飽和脂肪酸を疎水基に持つ、又は(3)前記ショ糖脂肪酸エステルが、炭素数が12の飽和脂肪酸からなるショ糖脂肪酸エステルと、炭素数が13以上17以下の飽和脂肪酸からなるショ糖脂肪酸エステルとを含有し、
前記非極性液状油は前記非極性液状油及び前記極性液状油の合計量に対して、25/65~50/65の割合で含有されてもよい。
【0009】
本発明による乳化型クレンジング化粧料は、
ポリグリセリルアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン脂肪酸エステルのいずれか1つ以上を0重量%超過1.5重量%以下で含有してもよい。
【0010】
本発明による乳化型クレンジング化粧料は、
0.2重量%~0.75重量%のポリグリセリルアルキルエーテル又は0.75重量%~1.25重量%の脂肪酸が直鎖飽和脂肪酸からなるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有してもよい。
【0011】
本発明による乳化型クレンジング化粧料は、
0重量%超過2.5重量%以下のモノグリセリン脂肪酸エステルを含有してもよい。
【0012】
本発明による乳化型クレンジング化粧料において、
前記モノグリセリン脂肪酸エステルのエステル結合する脂肪酸が分岐脂肪酸からなり、当該モノグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.75重量%以上2.5重量%以下であってもよい。
【0013】
本発明による乳化型クレンジング化粧料は、
0.1重量%~0.75重量%のフィトステロールズを含有してもよい。
【0014】
本発明による乳化型クレンジング化粧料において、
前記非極性液状油は前記非極性液状油及び前記極性液状油の合計量に対して、25/65~45/65の割合で含有されてもよい。
【0015】
本発明による乳化型クレンジング化粧料において、
前記ショ糖脂肪酸エステルはHLBが7以上11.5以下からなってもよい。
【0016】
本発明による乳化型クレンジング化粧料において、
前記ショ糖脂肪酸エステルの疎水基は炭素数が12~18の飽和脂肪酸であってもよい。
【0017】
本発明による乳化型クレンジング化粧料において、
前記ショ糖脂肪酸エステルは3.0重量%~4.5重量%で含有されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、保存安定性、マッサージ性、メイクとの馴染み、洗い流し後の肌感触等のいずれかの特性において良好な乳化型クレンジング化粧料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施の形態では、本発明による乳化型クレンジング化粧料の一例について説明する。後述する態様は一例であり、本実施の形態の乳化型クレンジング化粧料は液状、ジェル状、クリーム状、ペースト状、固体状のいずれであってもよく、例えばその粘度は限定されない。本実施の形態の乳化型クレンジング化粧料は典型的にはO/W型(水中油滴型)であるが、これに限られることはなく、W/O型(油中水滴型)であってもよい。
【0020】
本実施の形態の乳化型クレンジング化粧料は、炭素数が12~22の飽和脂肪酸を疎水基に持ち、HLBが5以上11.5以下となる、3.0重量%~5.0重量%のショ糖脂肪酸エステルと、非極性液状油と、極性液状油とを含有してもよい。非極性液状油は、非極性液状油及び極性液状油の合計量に対して25/65~50/65の割合で含有されてもよい。
【0021】
(1)ショ糖脂肪酸エステルは1種類のショ糖脂肪酸エステルからなる、
(2)ショ糖脂肪酸エステルは2種類以上のショ糖脂肪酸エステルを含有し、各ショ糖脂肪酸エステルは炭素数が13~22の飽和脂肪酸を疎水基に持つ、又は
(3)ショ糖脂肪酸エステルは、炭素数が12の飽和脂肪酸からなるショ糖脂肪酸エステルと、炭素数が13以上17以下の飽和脂肪酸からなるショ糖脂肪酸エステルとを含有してもよい。
【0022】
HLBとは、界面活性剤等の親水性/疎水性バランスを示す値である。2種類の界面活性剤を組み合わせた際の混合HLBは、その界面活性剤の重量分率と各界面活性剤の固有のHLBより以下の計算により算出する。
混合HLBm,n=(HLBm・X+HLBn・Y)/(X+Y)
上記の計算式において、HLBm、HLBnはそれぞれ界面活性剤M及びNの固有HLB値を、X、Yは界面活性剤M及びNの混合量(g)を表す。
【0023】
なお、3種類の界面活性剤を組み合わせた際の混合HLBは、その界面活性剤の重量分率と各界面活性剤の固有のHLBより以下の計算により算出する。
混合HLBm,n,o=(HLBm・X+HLBn・Y+HLBo・Z)/(X+Y+Z)
上記の計算式において、HLBm、HLBn、HLBoはそれぞれ界面活性剤M、N及びOの固有HLB値を、X、Y、Zはれ界面活性剤M、N及びOの混合量(g)を表す。
【0024】
ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸とのエステル化度(モノエステル、ジエステル、トリエステル、ポリエステル)によらず、脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等とショ糖のエステルであってもよく、例えば、ミリスチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、ジラウリン酸スクロース、ジステアリン酸スクロース、トリベヘン酸スクロース等を用いることができる。
【0025】
非極性液状油としてはスクワラン、シリコーン油、流動イソパラフィン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、水添ポリオレフィン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン等を用いてもよい。
【0026】
極性液状油は動植物、合成等の起原を問わず、エステル油、エーテル油等を用いてもよく、例えば、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ジカプリリルエーテル等を用いてもよい。
【0027】
乳化型クレンジング化粧料は、ポリグリセリルアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレン脂肪酸エステルを含有してもよい。ポリグリセリルアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン脂肪酸エステルのいずれか1つ以上を0重量%超過1.5重量%以下で含有してもよい。また、ポリグリセリルアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン脂肪酸エステルの上限値は1.0重量%であってもよい。
【0028】
ポリグリセリルアルキルエーテルとしては例えばポリグリセリンモノラウリルエーテル、ポリグリセリンモノミリスチルエーテル、ポリグリセリンモノパルミチルエーテル、ポリグリセリンモノステアリルエーテル、ポリグリセリンモノイソステアリルエーテル、ポリグリセリンモノオレイルエーテル等を用いることができ、より具体的にはポリグリセリル-4ラウリルエーテルを用いることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、イソステアリン酸ポリグリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル、オレイン酸ポリグリセリル、ミリスチン酸ポリグリセリルを挙げることができ、より具体的には、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10等を挙げることができる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、イソステアリン酸PEG-10グリセリル、ステアリン酸PEG-40等を挙げることができる。
【0029】
乳化型クレンジング化粧料は、0.2重量%~0.75重量%のポリグリセリルアルキルエーテル又は0.75重量%~1.25重量%の脂肪酸が直鎖飽和脂肪酸からなるポリグリセリン脂肪酸エステルからなってもよい。
【0030】
乳化型クレンジング化粧料は、0重量%超過2.5重量%以下のモノグリセリン脂肪酸エステルを含有してもよい。乳化型クレンジング化粧料は、エステル結合する脂肪酸が分岐脂肪からなるモノグリセリン脂肪酸エステルを0.75重量%~2.5重量%で含有してもよい。なお、エステル結合する脂肪酸は分岐脂肪酸であっても直鎖脂肪酸であってもよく、エステル結合する脂肪酸としては、例えばステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラギン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸等を用いてもよく、モノグリセリン脂肪酸エステルはイソステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル等からなってもよい。
【0031】
乳化型クレンジング化粧料は、0重量%超過3重量%以下の高級アルコールを含有してもよい。高級アルコールとしては、ステアリルアルコール、コレステロール、フィトステロールズ等を用いてもよい。特にフィトステロールズを用いることが有益であり、0.1重量%~0.75重量%のフィトステロールズを用いてもよい。フィトステロールズの下限値は0.2重量%としてもよい。
【0032】
非極性液状油は非極性液状油及び極性液状油の合計量に対して、25/65~45/65の割合で含有されてもよい。
【0033】
ショ糖脂肪酸エステルはHLBが7以上11.5以下からなってもよい。
【0034】
乳化型クレンジング化粧料は、アミノ酸系界面活性剤、多価アルコール、防腐剤等を含有してもよい。アミノ酸系界面活性剤としてはステアロイルグルタミン酸塩、パルミトイルグルタミン酸塩等を用いてもよく、例えばステアロイルグルタミン酸Na等が用いられてもよい。多価アルコールとしてはグリセリン、BG(1,3-ブチレングリコール)、ペンタエリスリトール等が用いられてもよい。防腐剤としてはメチルパラベン、エチルパラベン等が用いられてもよい。
【0035】
本実施の形態の乳化型クレンジング化粧料は、溶媒を含有してもよく、溶媒としては例えば精製水を用いることができる。
【0036】
本実施の形態による乳化型クレンジング化粧料は、前述した成分以外の油性成分、水性成分、界面活性剤を含有してもよい。また、本実施の形態による乳化型クレンジング化粧料は、添加剤等の成分を含有してもよい。このような添加剤としては、増粘剤、界面活性剤、保存剤、pH調整剤、キレート剤、安定剤、刺激軽減剤、着色剤、分散剤、香料、酸化防止剤、植物抽出液、ビタミン類、アミノ酸、無期粉体、UV散乱剤、UV吸収剤、カロテノイド類、セラミド類、ポリフェノール類等を挙げることができる。
【0037】
[実施例]
乳化状態の評価に関し、実施例及び比較例を示した表の「乳化の可否」では、調製直後に乳化状態を確認し、乳化状態を保っていたものは良好と判断して「○」で示し、調製中又は調製直後に分離した場合を乳化不良と判断して「×」で示している。なお、乳化不良と判断した試料は保存安定性及び官能評価ができなかったため、「-」で示している。
【0038】
また、「保存安定性(50℃1カ月)」では、実施例及び比較例で調製した各試料を無色透明のガラス容器に充填して密封し、50℃の恒温槽に1か月静置保管した。1カ月後の状態を目視観察により分離の有無を評価した。まったく分離が見られなかった場合には「◎」で示し、ごくわずかな分離(液滴)を確認できた場合には「○」で示し、明らかな分離が見られ、分離層が形成されている場合には「△」で示し、著しく分離(分離層が大きい)場合には「×」で示している。
【0039】
また官能評価では、パネル5名の評価結果の平均値で評価した。具体的には、パネル5名に、市販のメイクアップ化粧料を塗布した後、乳化型クレンジング化粧料である乳化型クレンジング化粧料2gを用いて一定の力加減と速さでクレンジングをしてもらい、その後、水で洗い流した。マッサージ性、メイクとの馴染みの良さ、すすぎやすさ、洗い流し後のさっぱり感、洗い流し後の保湿感について各項目の基準にて評価した。
【0040】
実施例及び比較例を示した表の「マッサージ性(塗布後から転相時にかけての増粘のなさ)」では、ほとんど増粘しなかった場合に「4」で示し、やや増粘した場合に「3」で示し、明らかに増粘した場合に「2」で示し、著しく増粘した場合に「1」で示した。その上で、平均値が3.5以上の場合に「◎」で示し、平均値が2.5以上3.5未満の場合に「〇」で示し、平均値が1.5以上2.5未満の場合に「△」で示し、平均値が1.5未満の場合に「×」で示した。
【0041】
実施例及び比較例を示した表の「マッサージ性(塗布始めから転相までの早さ)」では、非常に早い場合に「4」で示し、早い場合に「3」で示し、やや遅い場合に「2」で示し、非常に遅い場合に「1」で示した。その上で、平均値が3.5以上の場合に「◎」で示し、平均値が2.5以上3.5未満の場合に「〇」で示し、平均値が1.5以上2.5未満の場合に「△」で示し、平均値が1.5未満の場合に「×」で示した。
【0042】
実施例及び比較例を示した表の「マッサージ性(転相時のなめらかさ:ダマができる等不均一な状態にならないこと)」では、非常に滑らかな場合に「4」で示し、滑らか場合に「3」で示し、ややダマができた場合に「2」で示し、ダマが多い場合に「1」で示した。その上で、平均値が3.5以上の場合に「◎」で示し、平均値が2.5以上3.5未満の場合に「〇」で示し、平均値が1.5以上2.5未満の場合に「△」で示し、平均値が1.5未満の場合に「×」で示した。
【0043】
実施例及び比較例を示した表の「マッサージ性 転相の分かりやすさ(転相前後の粘性変化の大きさ)では、非常にわかりやすい場合に「4」で示し、わかりやすい場合に「3」で示し、ややわかりにくい場合に「2」で示し、わかりにくい場合に「1」で示した。その上で、平均値が3.5以上の場合に「◎」で示し、平均値が2.5以上3.5未満の場合に「〇」で示し、平均値が1.5以上2.5未満の場合に「△」で示し、平均値が1.5未満の場合に「×」で示した。
【0044】
実施例及び比較例を示した表の「メイクとの馴染みの良さ」では、非常に良好な場合に「4」で示し、良好な場合に「3」で示し、やや馴染みにくい場合に「2」で示し、馴染みにくい場合に「1」で示した。その上で、平均値が3.5以上の場合に「◎」で示し、平均値が2.5以上3.5未満の場合に「〇」で示し、平均値が1.5以上2.5未満の場合に「△」で示し、平均値が1.5未満の場合に「×」で示した。
【0045】
実施例及び比較例を示した表の「水でのすすぎやすさ(早さ、すすぎ時のぬめりの無さ)」では、非常に良好な場合に「4」で示し、良好な場合に「3」で示し、やや不良な場合に「2」で示し、不良な場合に「1」で示した。その上で、平均値が3.5以上の場合に「◎」で示し、平均値が2.5以上3.5未満の場合に「〇」で示し、平均値が1.5以上2.5未満の場合に「△」で示し、平均値が1.5未満の場合に「×」で示した。
【0046】
実施例及び比較例を示した表の「洗い流し後のさっぱり感(油残り感のなさ)」では、非常に良好な場合に「4」で示し、良好な場合に「3」で示し、やや不良な場合に「2」で示し、不良な場合に「1」で示した。その上で、平均値が3.5以上の場合に「◎」で示し、平均値が2.5以上3.5未満の場合に「〇」で示し、平均値が1.5以上2.5未満の場合に「△」で示し、平均値が1.5未満の場合に「×」で示した。
【0047】
実施例及び比較例を示した表の「洗い流し後の保湿感」では、非常に良好な場合に「4」で示し、良好な場合に「3」で示し、やや不良な場合に「2」で示し、不良な場合に「1」で示した。その上で、平均値が3.5以上の場合に「◎」で示し、平均値が2.5以上3.5未満の場合に「〇」で示し、平均値が1.5以上2.5未満の場合に「△」で示し、平均値が1.5未満の場合に「×」で示した。
【0048】
下記表の各々における「(A)」及び「(C)」は界面活性剤を示し、「(B)」は油性成分を示し、「(D)」は水性成分を示している。実施例及び比較例の各々における乳化型クレンジング化粧料は(A)界面活性剤及び(B)油性成分を混合加熱した油相(約80℃)に、(C)界面活性剤及び(D)水性成を精製水と混合加熱した水相を加えて転相乳化法により撹拌混合して乳化後、室温付近まで撹拌冷却して乳化型クレンジング化粧料を得た。
【0049】
下記に示す表1及び表2では実施例1乃至5と比較例1乃至4を示している。表1及び表2に示される結果から理解されるように、HLBが5以上11.5以下であるショ糖脂肪酸エステルを用いることで乳化することができた。他方、ショ糖脂肪酸エステルのHLBが3以下である場合、及びショ糖脂肪酸エステルのHLBが12.5以上である場合には、乳化することができなかった。また、HLBが7以上11.5以下であるであるショ糖脂肪酸エステルを用いることで全ての項目において「○」以上の結果を得ることができ、非常に有益な効果を得ることができた。
【表1】
【表2】
【0050】
下記に示す表3及び表4では実施例6及び7と比較例5及び6を示している。表3及び表4に示される結果から理解されるように、ショ糖脂肪酸エステルが2種類以上のショ糖脂肪酸エステルを含有する場合において、炭素数が12の飽和脂肪酸(表3ではラウリン酸)からなるショ糖脂肪酸エステルを含むときには、飽和脂肪酸として炭素数が13以上17以下の飽和脂肪酸(表3ではミリスチン酸)からなるショ糖脂肪酸エステルも含有することが好ましい(実施例6)。他方、炭素数が12の飽和脂肪酸からなるショ糖脂肪酸エステルを含む場合に、飽和脂肪酸として炭素数が13以上17以下の飽和脂肪酸からなるショ糖脂肪酸エステルを含有せず、不飽和脂肪酸(表3ではオレイン酸)からなるショ糖脂肪酸エステルを含む場合(比較例6)又は飽和脂肪酸として炭素数が18以上の飽和脂肪酸(表3ではステアリン酸)からなるショ糖脂肪酸エステルも含有する場合(比較例5)には、乳化することができなかった。また、炭素数が12の飽和脂肪酸からなるショ糖脂肪酸エステルと、飽和脂肪酸として炭素数が13以上17以下の飽和脂肪酸からなるショ糖脂肪酸エステルを含有する態様では、全ての項目において「○」以上の結果を得ることができ、非常に有益な効果を得ることができた。
【表3】
【表4】
【0051】
下記に示す表5及び表6では実施例8乃至10と比較例7乃至11を示している。表5及び表6に示される結果から理解されるように、ショ糖脂肪酸エステルは3.0重量%~5.0重量%で含有されることが好ましく、ショ糖脂肪酸エステルが2.0重量%以下でしか含有されない場合、及び6.0重量%以上で含有される場合には、乳化することができなかった。また、ショ糖脂肪酸エステルが3.0重量%~4.5重量%で含有される態様では全ての項目において「○」以上の結果を得ることができ、非常に有益な効果を得ることができた。
【表5】
【表6】
【0052】
下記に示す表7及び表8では実施例11乃至15と比較例12を示している。表7及び表8に示される結果から理解されるように、ポリグリセリルアルキルエーテルを1.0重量%以下で含有することが好ましい。他方、ポリグリセリルアルキルエーテルを合計して2.0重量%以上で含有する場合(比較例12)には、乳化することができなかった。なお、これらの結果から、ポリグリセリルアルキルエーテルの上限値を1.5重量%とすることができる。また、ポリグリセリルアルキルエーテルが0.2重量%~0.75重量%で含有される態様では全ての項目において「○」以上の結果を得ることができ、非常に有益な効果を得ることができた。
【表7】
【表8】
【0053】
下記に示す表9及び表10では実施例16乃至20を示している。ポリグリセリルアルキルエーテルを用いることなく、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10等のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合にも、化粧料を乳化することができた。また、イソステアリン酸PEG-10グリセリルやステアリン酸PEG―40といったポリオキシエチレン脂肪酸エステルを用いた場合にも化粧料を乳化することができた。ポリグリセリルアルキルエーテルと同様の挙動を示すことから、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン脂肪酸エステルの各々の上限値を1.5重量%とすることができる。なお、ミリスチン酸ポリグリセリル-10を1.0重量%で用いた場合には全ての項目において「○」以上の結果を得ることができ、非常に有益な効果を得ることができた。この結果と、ステアリン酸ポリグリセリル―10を用いることも有益であることが確認できていることから、脂肪酸が直鎖飽和脂肪酸からなるポリグリセリン脂肪酸エステルを0.75重量%~1.25重量%で含有する態様を用いることも有益である。
【表9】
【表10】
【0054】
下記に示す表11及び表12では実施例21乃至27を示している。実施例21乃至26では、エステル結合する脂肪酸が分岐脂肪酸からなるモノグリセリン脂肪酸エステルであるイソステアリン酸グリセリルの含有量を変化させている。イソステアリン酸グリセリルの含有量が3.0重量以上になると保全安定性が悪くなることから、その含有量は2.5重量%以下であることが好ましい。表11及び表12では、(エステル結合する脂肪酸が直鎖脂肪酸からなるモノグリセリン脂肪酸エステルである)ステアリン酸グリセリルの含有量が2.0重量%である態様を示しているが、(エステル結合する脂肪酸が分岐脂肪酸からなるモノグリセリン脂肪酸エステルである)イソステアリン酸グリセリルの場合と同様であり、その含有量は2.5重量%以下であることが好ましい。また、エステル結合する脂肪酸が分岐脂肪酸からなるモノグリセリン脂肪酸エステルの含有量が1.0重量%以上2.5重量%以下である場合には、全ての項目において「○」以上の結果を得ることができることから非常に有益である。なお、エステル結合する脂肪酸が分岐脂肪酸からなるモノグリセリン脂肪酸エステルの含有量の下限値を0.75重量%としてもよい。
【表11】
【表12】
【0055】
下記に示す表13及び表14では実施例28乃至31及び比較例13乃至15を示している。表13の「B-1」は非極性液状油であり、「B-2」は極性液状油であり、「B-3」は「高級アルコール」を示している。表13及び表14に示される結果から理解されるように、非極性液状油は非極性液状油及び極性液状油の合計量に対して、25/65~50/65の割合で含有されることが好ましく、非極性液状油が非極性液状油及び極性液状油の合計量に対して20/65以下となる場合、及び60/65以上となる場合には、乳化することができなかった。
【表13】
【表14】
【0056】
下記に示す表15及び表16では実施例32乃至36を示している。実施例32乃至35ではフィトステロールズの含有量を変化させているが、フィトステロールズを含有しない場合、及びフィトステロールズを1.0重量%以上で含有する場合には、マッサージ性において「△」となる評価が出てくることから、フィトステロールズを0.2重量%~0.75重量%で含有させることが特に有益であることを確認できる。また、フィトステロールズの代わりにコレステロールを0.5重量%で用いた場合でもマッサージ性において「△」となる評価が出てくることから、コレステロールではなくフィトステロールズを用いることが有益であることを確認できる。
【表15】
【表16】
【0057】
なお、実施例及び比較例で用いた材料の具体的な内容は以下のとおりである。
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【0058】
上述した実施の形態及び実施例の記載は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎない。また、出願当初の特許請求の範囲の記載は本件特許明細書の範囲内で適宜変更することもでき、その範囲を拡張及び変更することもできる。