(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】流動床式焼却装置
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
F23G5/50 E ZAB
F23G5/50 G
F23G5/50 Q
(21)【出願番号】P 2020069603
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2022-10-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】308024395
【氏名又は名称】荏原環境プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 浩
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-356334(JP,A)
【文献】特開2018-167642(JP,A)
【文献】特開2019-039587(JP,A)
【文献】特開2018-021686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給じん機のごみの出口部と流動床式焼却炉のごみの供給口とを結ぶシュート部を有する流動床式焼却装置であって、
前記給じん機のごみの出口部からごみが落下する様子を撮像できる位置に配置されたカメラと、
前記カメラの撮像画像のうち落下するごみが通過する領域にオプティカルフローの演算を行い、出力される画素ごとのベクトルの重力方向の成分を合算した値を、前記ごみの落下量を示す値として算出することにより、前記カメラの撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値を算出する算出手段と、
を備えたことを特徴とする流動床式焼却装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記カメラの撮像画像のうち
その高さが前記カメラの撮像領域全体の高さの20%以下である前記落下するごみが通過する領域にオプティカルフローの演算を行い、
出力される画素ごとのベクトルの重力方向の成分を合算した値を、前記ごみの落下量を示す値として算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の流動床式焼却装置。
【請求項3】
前記撮像画像のフレームレートは120fps以上である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の流動床式焼却装置。
【請求項4】
前記算出手段により算出されたごみの落下量を示す値に基づいて、給じん機の回転数を制御する制御手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の流動床式焼却装置。
【請求項5】
前記算出手段により算出されたごみの落下量を示す値に基づいて、流動床式焼却炉の流動床の上部空間に供給する二次空気量を制御する制御手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の流動床式焼却装置。
【請求項6】
前記算出手段により算出されたごみの落下量を示す値に基づいて、流動床式焼却炉の流動床に供給する流動空気量を制御する制御手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の流動床式焼却装置。
【請求項7】
給じん機のごみの出口部と流動床式焼却炉のごみの供給口とを結ぶシュート部を有する流動床式焼却装置において、前記給じん機のごみの出口部からごみが落下する様子を撮像できる位置に配置されるカメラと、
前記カメラの撮像画像のうち落下するごみが通過する領域にオプティカルフローの演算を行い、出力される画素ごとのベクトルの重力方向の成分を合算した値を、前記ごみの落下量を示す値として算出することにより、前記カメラの撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値を算出する算出手段と、
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項8】
給じん機のごみの出口部と流動床式焼却炉のごみの供給口とを結ぶシュート部を有する流動床式焼却装置において、前記給じん機のごみの出口部からごみが落下する様子を撮像できる位置に配置された
カメラの撮像画像のうち落下するごみが通過する領域にオプティカルフローの演算を行い、出力される画素ごとのベクトルの重力方向の成分を合算した値を、前記ごみの落下量を示す値として算出することにより、前記カメラの撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値を算出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床式焼却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流動床式焼却炉は、燃焼速度が速く、炉内に滞留するごみの量が少ないことから、供給するごみの量、質の変動を受けやすい。その一方で、燃焼させる都市ごみや産業廃棄物は、事前に破砕してあったとしても、大きさ、質が一定ではなく、供給量の制御に問題があった。ごみの供給量の変動は、酸素濃度の変動、CO濃度の変動につながる。CO濃度は、環境管理基準値が法と契約に定められており、遵守できないと問題となる。
【0003】
特許文献1では、ごみの塊の重心と面積によりごみの落下量を算出する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、テレビカメラで撮影された画像に対し、フレーム1枚の画像を2値化し、輪郭を抽出し、抽出された輪郭の中の面積を算出し、その面積内の重心を算出したのち、次のフレームの画像に対しても同様の複雑な演算処理を行って輪郭または面積の近いものを探し、前回算出された重心から今回算出された重心までの移動距離を計算して落下量としている。そのため、フレーム1枚あたりの計算に時間がかかり、2つのフレームの間隔が長くなり、落下をとらえることができなかったり、もしくは次のフレームでごみの形状が変わってしまって移動距離を判別できなかったりするという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものでる。本発明の目的は、ごみの落下量を示す値を安定して算出できる流動床式焼却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る流動床式焼却装置は、
給じん機のごみの出口部と流動床式焼却炉のごみの供給口とを結ぶシュート部を有する流動床式焼却装置であって、
前記給じん機のごみの出口部からごみが落下する様子を撮像できる位置に配置されたカメラと、
前記カメラの撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値を算出する算出手段と、
を備える。
【0008】
このような態様によれば、カメラの撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値を算出するため、従来のように画像を2値化し、輪郭を抽出し、抽出された輪郭の中の面積を算出し、その面積内の重心を算出したのち、次のフレームの画像に対しても同様の複雑な演算処理を行って輪郭または面積の近いものを探し、前回算出された重心から今回算出された重心までの移動距離を計算して落下量とするのに比べて、フレーム1枚当たりの計算時間を大幅に短縮できる。そのため、2つのフレームの間隔を短くすることが可能であり、落下の見逃しを減らすことができる。また、カメラの撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値を算出し、ごみの形状は見ていないため、次のフレームでごみの形状が変わっても落下量を示す値を算出することは可能である。したがって、ごみの落下量を示す値を安定して算出できる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る流動床式焼却装置は、第1の態様に係る流動床式焼却装置であって、
前記算出手段は、前記カメラの撮像画像のうち落下するごみが通過する領域にオプティカルフローの演算を行い、その重力方向の成分を合算した値を、前記ごみの落下量を示す値として算出する。
【0010】
このような態様によれば、カメラの撮像画像の全体にオプティカルフローの演算を行うのではなく、カメラの撮像画像のうち落下するごみが通過する領域にオプティカルフローの演算を行い、その重力方向の成分を合算した値を、ごみの落下量を示す値として算出するため、フレーム1枚当たりの計算時間をさらに短縮できる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る流動床式焼却装置は、第1または2の態様に係る流動床式焼却装置であって、
前記撮像画像のフレームレートは120fps以上である。
【0012】
このような態様によれば、落下の見逃しを減らすことができ、ごみの落下量を示す値をより安定して算出できる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る流動床式焼却装置は、第1~3のいずれかの態様に係る流動床式焼却装置であって、
前記算出手段により算出されたごみの落下量を示す値に基づいて、給じん機の回転数を制御する制御手段
をさらに備える。
【0014】
本発明の第5の態様に係る流動床式焼却装置は、第1~3のいずれかの態様に係る流動床式焼却装置であって、
前記算出手段により算出されたごみの落下量を示す値に基づいて、流動床式焼却炉の流動床の上部空間に供給する二次空気量を制御する制御手段
をさらに備える。
【0015】
本発明の第6の態様に係る流動床式焼却装置は、第1~3のいずれかの態様に係る流動床式焼却装置であって、
前記算出手段により算出されたごみの落下量を示す値に基づいて、流動床式焼却炉の流動床に供給する流動空気量を制御する制御手段
をさらに備える。
【0016】
本発明の第7の態様に係る装置は、
給じん機のごみの出口部と流動床式焼却炉のごみの供給口とを結ぶシュート部を有する流動床式焼却装置において、前記給じん機のごみの出口部からごみが落下する様子を撮像できる位置に配置されるカメラと、
前記カメラの撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値を算出する算出手段と、
を備える。
【0017】
本発明の第8の態様に係る装置は、
給じん機のごみの出口部と流動床式焼却炉のごみの供給口とを結ぶシュート部を有する流動床式焼却装置において、前記給じん機のごみの出口部からごみが落下する様子を撮像できる位置に配置されたカメラの撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値を算出する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ごみの落下量を示す値を安定して算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る流動床式焼却装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す流動床式焼却装置の給じん機の出口部を拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、カメラの撮像領域を説明するための図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す流動床式焼却装置における給じん量制御を説明するための図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す流動床式焼却装置における二次空気量制御を説明するための図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す流動床式焼却装置における流動空気量制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明および以下の説明で用いる図面では、同一に構成され得る部分について、同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、一実施の形態に係る流動床式焼却装置100の構成を示す概略図である。
図1に示すように、流動床式焼却装置100は、給じん機1と、シュート部2と、流動床式焼却炉3と、ボイラ6とを有している。
【0022】
図2は、給じん機1の出口部を拡大して示す図である。
図1および
図2に示すように、給じん機1は、給じん機スクリュー軸1aと、給じん機スクリュー軸1aを回転させるモータ9とを有している。給じん機スクリュー軸1aの外周面にはらせん状に延びる給じん機羽根1bが設けられている。
【0023】
給じん機1のごみの入口部にはホッパ7が設けられている。モータ9により給じん機スクリュー軸1aが回転されることで、給じん機羽根1bが給じん機スクリュー軸1a回りに回転され、ホッパ7から給じん機1のケーシング内に投入されるごみは、回転される給じん機羽根1bによって出口部側(給じん機スクリュー軸1aの先端側)へと押し出される。
【0024】
図示された例では、給じん機1の出口部には、かき取り機5が設けられている。かき取り機5は、かき取り機軸5aと、かき取り機軸5aの外周面に取り付けられた複数のかき取り機羽根5bとを有している。
【0025】
不図示の駆動機構によりかき取り機軸5aが回転されることで、かき取り機羽根5bがかき取り機軸5a回りに旋回され、給じん機1の出口部に充填されたごみG1は、かき取り機羽根5bによってかき取られてオーバーハングしたのち、重力によって落下する。
図2において、符号G2は、オーバーハングしているごみを示しており、符号G3は、落下しているごみを示している。
【0026】
図1に示すように、シュート部2は、給じん機1のごみの出口部と流動床式焼却炉3のごみの供給口とを結んでいる。給じん機1の出口部から落下するごみは、シュート部2を通って、流動床式焼却炉3へと投入され、流動床8にて焼却される。ごみの焼却により発生する排ガスは、ボイラ6へと送られて熱回収されたのち、排気される。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態に係る流動床式焼却装置100は、カメラ4と、算出手段13と、制御手段15とをさらに有している。
【0028】
カメラ4は、それ自体は公知のITVカメラ(工業用テレビカメラ)であり、給じん機1のごみの出口部からごみが落下する様子を撮像できる位置に配置されている。カメラ4の撮像画像のフレームレートは、好ましくは120fps(フレーム毎秒)以上であり、より好ましくは240fps以上である。
【0029】
図3は、カメラ4の撮像領域Aを説明するための図である。
図3に示すように、カメラ4は、給じん機1の出口部からごみが落下するシュート部2の途中、もしくは途中から落ち口までの全体を撮像する。カメラ4の取り付け位置は、給じん機1の出口部からごみがオーバーハングしてまさに落ちようとする部分と、そこから離れて落下していく部分の両方を見渡せる位置が望ましい。それにより、ごみが落下している領域がどこかを観察でき、落下するごみが通過する領域(後述するオプティカルフロー演算領域)Bを事前に決定することが可能となる。撮像領域Aの大きさは、焼却施設ごとに適宜設定され得るが、たとえば幅1300mm、高さ1000mmであり、オプティカルフロー演算領域Bの大きさは、たとえば幅1300mm、高さ50mmである。
【0030】
算出手段13は、コンピュータにより構成されており、カメラ4の撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値を算出する。ここで、ごみの落下量を示す値とは、ごみの落下量そのものであってもよいし、ごみの落下量の変動に比例して変動する値であってもよい。
【0031】
カメラ4の撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値を算出することで、従来のように画像を2値化し、輪郭を抽出し、抽出された輪郭の中の面積を算出し、その面積内の重心を算出したのち、次のフレームの画像に対しても同様の複雑な演算処理を行って輪郭または面積の近いものを探し、前回算出された重心から今回算出された重心までの移動距離を計算して落下量とするのに比べて、フレーム1枚当たりの計算時間を大幅に短縮することが可能であり、これにより、撮像画像のフレームレートを大きくする(たとえば、120fps以上、240fps以上など)ことが可能となる。また、カメラ4の撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値を算出し、ごみの形状は見ていないため、撮像画像の次のフレームでごみの形状が変わっても落下量を示す値を算出することが可能である。
【0032】
算出手段13は、撮像画像の画素ごとの動きを把握するために、密なオプティカルフローを計算してもよい。密なオプティカルフローは、Gunner Farnebackが2003年に発表した”Two-Frame Motion Estimation Based on Polynomial Expansion”という論文で提案されたアルゴリズムに基づいて計算され得る。オプティカルフローの計算では、画素ごとのベクトル(フローベクトル)が結果として出力される。
【0033】
図2に示すように、算出手段13は、カメラ4の撮像画像のうち落下するごみが通過する領域(オプティカルフロー演算領域)Bにオプティカルフローの演算を行い、出力される画素ごとのベクトルの重力方向の成分を合算した値を、ごみの落下量を示す値として算出してもよい。カメラ4の撮像画像のうち、撮像領域A全体にオプティカルフローの演算を行うのではなく、落下するごみが通過する領域(オプティカルフロー演算領域)Bのみにオプティカルフローの演算を行うことで、フレーム1枚当たりの計算時間をさらに短縮することが可能となる。落下するごみが通過する領域(オプティカルフロー演算領域)Bは、カメラ4の撮像領域A全体のうちかき取り機5より下方のすべての領域であってもよいし、かき取り機5に対して下方に離れて位置する一部の領域であってもよい。落下するごみが通過する領域(オプティカルフロー演算領域)Bの高さ(鉛直方向の長さ)は、望ましくはカメラ4の撮像領域A全体の高さ(上下方向の長さ)の20%以下であり、より望ましくは10%以下であり、さらに望ましくは5%以下である。落下するごみが通過する領域(オプティカルフロー演算領域)Bの幅(水平方向の長さ)は、カメラ4の撮像領域A全体の幅と同じであってもよいし、それより短くてもよい。
【0034】
図1に示すように、制御手段15は、算出手段13により算出されたごみの落下量を示す値に基づいて、給じん機1の回転数を制御するための制御信号を給じん量制御部16へと送信してもよいし、流動床式焼却炉3の流動床8の上部空間に供給する二次空気量を制御するための制御信号を二次空気量制御部17へと送信してもよいし、流動床式焼却炉3の流動床8に供給する流動空気量を制御するための制御信号を流動空気量制御部18へと送信してもよい。
【0035】
図3は、流動床式焼却装置100における給じん量制御を説明するための図である。
【0036】
給じん量制御の比較例として、ドラム圧力計19により計測されたボイラ6のドラム圧力が制御手段15へと送られ、御装手段15は、ボイラ6のドラム圧力を一定にするように、給じん機1の回転数を制御するための制御信号を、給じん量制御部16へと送信する、という制御方法が考えられる。しかしながら、ボイラ6の熱容量は非常に大きいため、このような制御では、速い応答は期待できない。
【0037】
これに対し、本実施の形態では、カメラ4の撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値が算出手段13により算出され、算出されたごみの落下量を示す値が制御手段15へと送られ、制御手段15は、算出手段13により算出されたごみの落下量を示す値に基づいて、ごみの落下量を一定にするように、給じん機1の回転数を制御するための制御信号を、給じん量制御部16へと送信する。このように制御することにより、瞬時のごみの落下に対しても対応できる制御が可能となる。
【0038】
図4は、流動床式焼却装置100における二次空気量制御を説明するための図である。
【0039】
二次空気量制御の比較例として、酸素濃度計22により計測された煙突21の入り口の酸素濃度が制御手段15へと送られ、制御手段15は、酸素濃度を一定にするように、二次空気量を制御するための制御信号を二次空気量制御部17へと送信する、という制御方法が考えられる。しかしながら、酸素濃度計22は炉の下流に配置されているので、このような制御では、時間遅れが存在し、速い応答は期待できない。
【0040】
これに対し、本実施の形態では、カメラ4の撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値が算出手段13により算出され、算出されたごみの落下量を示す値が制御手段15へと送られ、制御手段15は、算出手段13により算出されたごみの落下量を示す値に基づいて、二次空気量を制御するための制御信号を二次空気量制御部17へと送信する。このように制御することにより、瞬時のごみの落下に対しても対応できる制御が可能となる。
【0041】
図5は、流動床式焼却装置100における流動空気量制御を説明するための図である。
【0042】
流動空気量制御の比較例として、炉内照度計23により計測された炉内の明るさが制御手段15へと送られ、制御手段15は、炉内が明るくなったら、流動空気を減じて急激なごみのガス化を防ぐように、流動空気量を制御するための制御信号を流動空気量制御部18へと送信する、という制御方法が考えられる。しかしながら、このような制御では、炉内の明るさを利用するため、応答は速いが、燃焼する前に対応することができない。
【0043】
これに対し、本実施の形態では、カメラ4の撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値が算出手段13により算出され、算出されたごみの落下量を示す値が制御手段15へと送られ、制御手段15は、算出手段13により算出されたごみの落下量を示す値に基づいて、流動空気量を制御するための制御信号を流動空気量制御部18へと送信する。このように制御することにより、ごみがたくさん落下したら、あらかじめ、流動空気を減少制御させ、ガス化が緩慢に行われるようにすることが可能となる。
【0044】
以上のような本実施の形態によれば、カメラ4の撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値を算出するため、従来のように画像を2値化し、輪郭を抽出し、抽出された輪郭の中の面積を算出し、その面積内の重心を算出したのち、次のフレームの画像に対しても同様の複雑な演算処理を行って輪郭または面積の近いものを探し、前回算出された重心から今回算出された重心までの移動距離を計算して落下量とするのに比べて、フレーム1枚当たりの計算時間を大幅に短縮できる。そのため、2つのフレームの間隔を短くすることが可能であり、落下の見逃しを減らすことができる。また、カメラ4の撮像画像のオプティカルフローに基づいてごみの落下量を示す値を算出し、ごみの形状は見ていないため、次のフレームでごみの形状が変わっても落下量を示す値を算出することは可能である。したがって、ごみの落下量を示す値を安定して算出できる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、カメラ4の撮像画像の全体Aにオプティカルフローの演算を行うのではなく、カメラ4の撮像画像のうち落下するごみが通過する領域Bにオプティカルフローの演算を行い、その重力方向の成分を合算した値を、ごみの落下量を示す値として算出するため、フレーム1枚当たりの計算時間をさらに短縮できる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、撮像画像のフレームレートが120fps以上であるため、落下の見逃しを減らすことができ、ごみの落下量を示す値をより安定して算出できる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態および変形例を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。また、各実施の形態および変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
100 流動床式焼却装置
1 給じん機
1a 給じん機スクリュー軸
1b 給じん機羽根
2 シュート部
3 流動床式焼却炉
4 カメラ
5 かき取り機
5a かき取り機軸
5b かき取り機羽根
6 ボイラ
7 ホッパ
8 流動床
9 モータ
11 流動空気
12 二次空気
13 算出手段
15 制御手段
16 給じん量制御部
17 二次空気量制御部
18 流動空気量制御部
19 ドラム圧力計
21 煙突
22 酸素濃度計
23 炉内照度計
A 撮像領域
B オプティカルフロー演算領域
G1 充填されたごみ
G2 オーバーハングしたごみ
G3 落下するごみ