(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240816BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/165
B41J2/01 301
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2020069892
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2019136862
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】四ノ宮 文二
(72)【発明者】
【氏名】磯野 真滋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広信
(72)【発明者】
【氏名】伊田 和弘
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-136760(JP,A)
【文献】特開2016-78404(JP,A)
【文献】特開2018-8426(JP,A)
【文献】特開2004-338263(JP,A)
【文献】特許第4770837(JP,B2)
【文献】特開2006-110840(JP,A)
【文献】国際公開第2020/040285(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/060310(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向および前記第1方向に直交する第2方向に延び、記録媒体を支持する支持台と、
前記支持台よりも上方に、前記支持台と対向するように設けられたキャリッジと、
前記キャリッジを前記第1方向に移動させるキャリッジ移動装置と、
光硬化性のインクを吐出するノズル
がそれぞれ形成された複数のインクヘッドを備え、前記支持台と対向するように前記キャリッジに設けられた記録ヘッドと、
前記インクを硬化させる光が照射される照射口を備え、前記支持台と対向するように前記キャリッジに設けられた光照射装置と、
前記支持台よりも下方において前記第1方向および前記第2方向に延びるベース面と、
前記支持台の前記第1方向の一方側の側面と対向するように設けられた遮光板と、
を備え、
前記照射口は、前記記録ヘッドよりも前記第1方向の他方側に設けられ、
前記キャリッジ移動装置は、前記遮光板よりも前記第1方向の前記一方側に設定された待機位置に前記キャリッジを移動させることが可能に構成され、
前記第1方向に
関して、前記支持台
の前記一方側の側面と前記遮光板
の前記他方側の側面との間の距離は、前記照射口
の前記一方側の端部と
前記複数のインクヘッドのうちの最も前記他方側のインクヘッドの前記他方側の端部との間の距離よりも短く設定されており、
前記ベース面の上方かつ前記待機位置における前記キャリッジの下方
であって前記遮光板よりも前記第1方向の前記一方側には、
ユーザーが前記記録ヘッドおよび前記光照射装置のメンテナンス作業を行うことが可能な作業空間が設けられている、
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
第1方向および前記第1方向に直交する第2方向に延び、記録媒体を支持する支持台と、
前記支持台よりも上方に、前記支持台と対向するように設けられたキャリッジと、
前記キャリッジを前記第1方向に移動させるキャリッジ移動装置と、
光硬化性のインクを吐出するノズルを備え、前記支持台と対向するように前記キャリッジに設けられた記録ヘッドと、
前記インクを硬化させる光が照射される照射口を備え、前記支持台と対向するように前記キャリッジに設けられた光照射装置と、
前記支持台の前記第1方向の一方側の側面と対向するように設けられた遮光板と、
を備え、
前記照射口は、前記記録ヘッドよりも前記第1方向の他方側に設けられ、
前記キャリッジ移動装置は、前記遮光板よりも前記第1方向の前記一方側に設定された待機位置に前記キャリッジを移動させることが可能に構成され、
前記第1方向に関する前記支持台と前記遮光板との間の距離は、前記第1方向に関する前記照射口と前記記録ヘッドとの間の距離よりも短く設定されており、
前記待機位置における前記キャリッジの下方には、作業空間が設けられ、
前記遮光板は、前記支持台の側を向いた遮光面を備え、
前記遮光面には、光の反射を抑制するような表面処理がなされている
、
インクジェットプリンタ。
【請求項3】
第1方向および前記第1方向に直交する第2方向に延び、記録媒体を支持する支持台と、
前記支持台よりも上方に、前記支持台と対向するように設けられたキャリッジと、
前記キャリッジを前記第1方向に移動させるキャリッジ移動装置と、
光硬化性のインクを吐出するノズルを備え、前記支持台と対向するように前記キャリッジに設けられた記録ヘッドと、
前記インクを硬化させる光が照射される照射口を備え、前記支持台と対向するように前記キャリッジに設けられた光照射装置と、
前記支持台の前記第1方向の一方側の側面と対向するように設けられた遮光板と、
を備え、
前記照射口は、前記記録ヘッドよりも前記第1方向の他方側に設けられ、
前記キャリッジ移動装置は、前記遮光板よりも前記第1方向の前記一方側に設定された待機位置に前記キャリッジを移動させることが可能に構成され、
前記第1方向に関する前記支持台と前記遮光板との間の距離は、前記第1方向に関する前記照射口と前記記録ヘッドとの間の距離よりも短く設定されており、
前記待機位置における前記キャリッジの下方には、作業空間が設けられ、
前記インクは、所定の波長帯の光を受けると硬化するインクであり、
前記遮光板は、前記支持台の側を向いた反射面を備え、
前記反射面は、少なくとも前記所定の波長帯の光を反射するように構成されている
、
インクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記所定の波長帯は、紫外線領域に含まれ、
前記反射面を構成する材料は、少なくとも前記所定の波長帯の光を選択的に反射する透明な材料である、
請求項
3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
第1方向および前記第1方向に直交する第2方向に延び、記録媒体を支持する支持台と、
前記支持台よりも下方において前記第1方向および前記第2方向に延びるベース面と、
前記支持台よりも上方に、前記支持台と対向するように設けられたキャリッジと、
前記キャリッジを前記第1方向に移動させるキャリッジ移動装置と、
光硬化性のインクを吐出するノズルを備え、前記支持台と対向するように前記キャリッジに設けられた記録ヘッドと、
前記インクを硬化させる光が照射される照射口を備え、前記支持台と対向するように前記キャリッジに設けられた光照射装置と、
前記支持台の前記第1方向の一方側の側面と対向するように設けられた遮光板と、
を備え、
前記照射口は、前記記録ヘッドよりも前記第1方向の他方側に設けられ、
前記キャリッジ移動装置は、前記遮光板よりも前記第1方向の前記一方側に設定された待機位置に前記キャリッジを移動させることが可能に構成され、
前記第1方向に関する前記支持台と前記遮光板との間の距離は、前記第1方向に関する前記照射口と前記記録ヘッドとの間の距離よりも短く設定されており、
前記待機位置における前記キャリッジの下方には、作業空間が設けられ、
前記ベース面のうち前記支持台と前記遮光板との間の部分の上方に広がり、光の反射を抑制するような表面処理がなされた反射防止部
をさらに備えている
、
インクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記第1方向に関する前記支持台と前記遮光板との間の距離は、前記照射口の前記第1方向に関する長さよりも長い、
請求項1
~5のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記遮光板の前記第2方向に関する長さは、前記記録ヘッドの前記第2方向に関する長さよりも長い、
請求項1
~6のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記キャリッジ移動装置および前記光照射装置を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記キャリッジ移動装置を制御して、前記キャリッジを前記待機位置に移動させる第1制御部と、
前記光照射装置による光の照射を開始または停止する第2制御部と、
を備え、
前記第2制御部は、前記第1制御部によって前記キャリッジが前記待機位置に移動される際、少なくとも前記照射口が前記支持台よりも前記第1方向の前記一方側に位置するよりも前に前記光の照射を停止する、
請求項1~7のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記遮光板の上端は、前記支持台よりも上方であって前記記録ヘッドおよび前記光照射装置よりも下方に位置している、
請求項1~8のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光硬化性のインクを記録媒体に吐出する記録ヘッドと、インクに光を照射する光照射装置とを備えたインクジェットプリンタが知られている。そのようなインクジェットプリンタの中には、光照射装置からの光が反射されて記録ヘッドに照射されることを抑制する反射防止部材を備えたものが存在する。光照射装置からの光の反射光が記録ヘッドに照射されると、記録ヘッドのノズル面に付着したインクやノズル内のインクが増粘または硬化し、一部のノズルからインクが正常に吐出されない等の不具合が発生するおそれがある。反射防止部材は、そのような不具合を防止するためのものである。例えば、特許文献1には、プラテンと略平行な上面を有し、プラテンの側方に配置された反射防止部材を備えたインクジェットプリンタが開示されている。特許文献1に開示されたインクジェットプリンタによれば、記録ヘッドが反射防止部材の上方に配置されたときには記録ヘッドと反射防止部材との間に反射光が入っていきにくいため、反射光の記録ヘッドへの照射が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録媒体を支持する支持台の側方の領域では、クリーニングに代表されるような記録ヘッドのメンテナンス作業が行われることがある。メンテナンス作業のしやすさという観点からは、支持台の側方に作業スペースがあり、作業スペースでは記録ヘッドの下方に障害物がないことが好ましい。しかし、特許文献1に開示されたようなインクジェットプリンタでは、記録ヘッドとほぼ同じ面積を有する反射防止部材が支持台の側方に設けられている。そのため、支持台の側方では記録ヘッドと反射防止部材とが対向し、記録ヘッドのメンテナンス作業が難しい。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光照射装置からの光が記録ヘッドに照射されるのを抑制しつつ、かつ、支持台の側方における記録ヘッドのメンテナンス作業を容易に行うことができるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示するインクジェットプリンタは、第1方向および前記第1方向に直交する第2方向に延び記録媒体を支持する支持台と、前記支持台よりも上方に前記支持台と対向するように設けられたキャリッジと、前記キャリッジを前記第1方向に移動させるキャリッジ移動装置と、光硬化性のインクを吐出するノズルを備え、前記支持台と対向するように前記キャリッジに設けられた記録ヘッドと、前記インクを硬化させる光が照射される照射口を備え、前記支持台と対向するように前記キャリッジに設けられた光照射装置と、前記支持台の前記第1方向の一方側の側面と対向するように設けられた遮光板と、を備えている。前記照射口は、前記記録ヘッドよりも前記第1方向の他方側に設けられている。前記キャリッジ移動装置は、前記遮光板よりも前記第1方向の前記一方側に設定された待機位置に前記キャリッジを移動させることが可能に構成されている。前記第1方向に関する前記支持台と前記遮光板との間の距離は、前記第1方向に関する前記照射口と前記記録ヘッドとの間の距離よりも短く設定されている。前記待機位置における前記キャリッジの下方には、メンテナンス空間が設けられている。
【0007】
上記インクジェットプリンタによれば、光照射装置の照射口の進行方向前方側の端部が支持台上から支持台の側方に出ようとしている時点において、記録ヘッドは、遮光板よりも照射口から離間している。すなわち、このとき、遮光板は、照射口と記録ヘッドとの間に位置している。そのため、このとき、光照射装置によって照射された光の一部は、遮光板により遮られ、記録ヘッドに到達しない。よって、光照射装置からの光の反射光が記録ヘッドに照射されることが抑制される。なお、照射口の進行方向前方側の端部が支持台上から支持台の側方に出ようとしている時点より後の時点においては光照射装置から光を照射する必要はない。
【0008】
また、上記インクジェットプリンタによれば、記録ヘッドは、遮光板よりも支持台から離間した待機位置まで移動される。待機位置において、キャリッジの下方には、メンテナンス空間が設けられている。よって、キャリッジを待機位置まで移動させることにより、記録ヘッドのメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0009】
このように、上記インクジェットプリンタによれば、光照射装置からの光が記録ヘッドに照射されるのを抑制しつつ、かつ、支持台の側方における記録ヘッドのメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るプリンタを示す斜視図である。
【
図2】フロントカバーを開けた状態のプリンタを示す正面図である。
【
図3】フラットベッドおよびキャリッジ周辺の平面図である。
【
図4】フラットベッドおよびキャリッジ周辺の正面図である。
【
図5】フラットベッドおよびキャリッジ周辺の右側面図である。
【
図8】照射口の進行方向前方側の端部がフラットベッド上から外部に出る時点のフラットベッドおよびキャリッジを示す正面図である。
【
図9】照射口の進行方向後方側の端部がフラットベッド上から外部に出る時点のフラットベッドおよびキャリッジを示す正面図である。
【
図10】第2実施形態に係るフラットベッドおよびキャリッジ周辺の正面図である。
【
図11】第2実施形態に係る遮光板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、一実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタと呼ぶ。)10を示す斜視図である。以下の説明では、特に断らない限り、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、後述するフラットベッド30(
図2参照)が略水平となるように設置されたプリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。主走査方向Yは左右方向である。符号Xは、副走査方向を示している。副走査方向Xは前後方向である。副走査方向Xは、主走査方向Yに直交している。符号Zは、上下方向を示している。上下方向Zは、主走査方向Yおよび副走査方向Xに直交している。
【0013】
以下では、主走査方向Yのうち左方を第1主走査方向Y1とも呼び、右方を第2主走査方向Y2とも呼ぶ。詳しくは後述するが、第1主走査方向Y1は、キャリッジ40をフラットベッド30上から待機位置P1に移動させる際の進行方向前方側である(
図2参照)。第2主走査方向Y2は、キャリッジ40を待機位置P1に移動させる際の進行方向後方側である。また、以下では、副走査方向Xのうち後方を第1副走査方向X1とも呼び、前方を第2副走査方向X2とも呼ぶ。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0014】
本実施形態では、プリンタ10は、インクジェット方式のプリンタである。本実施形態において、「インクジェット方式」とは、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式または圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む従来公知の各種の手法によるインクジェット式のことをいう。
【0015】
図1に示すように、プリンタ10は、箱状に形成されている。本実施形態では、プリンタ10は、ケース20と、フロントカバー25とを備えている。
図2は、フロントカバー25を開けた状態のプリンタ10を示す正面図である。
図2に示すように、ケース20の前部には、開口が形成されている。フロントカバー25は、ケース20の開口を開閉自在に設けられている。ここでは、フロントカバー25は、後端を軸に回転可能なように、ケース20に支持されている。フロントカバー25には、窓部26が設けられている。窓部26は、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。ユーザーは、窓部26を通じてケース20の内部空間20aを視認することが可能である。
【0016】
図2に示すように、ケース20の内部空間20aは、ベースプレート21と、背面パネル22と、左側パネル23と、右側パネル24とによって区画されている。ベースプレート21は、内部空間20aの底面を構成している。ベースプレート21は、平板状に構成されている。ベースプレート21は、水平方向に延びている。ベースプレート21の上面は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びるベース面21aを構成している。背面パネル22は、内部空間20aの背面を構成している。背面パネル22は、平板状に構成されている。背面パネル22は、ベース面21aと交差するように設けられている。ここでは、背面パネル22は、ベース面21aと直交している。背面パネル22は、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びている。図示は省略するが、背面パネル22には、前後方向に貫通する開口部が形成されている。開口部は、後述するフラットベッド30よりも第1主走査方向Y1側に形成されている。左側パネル23および右側パネル24は、それぞれ、内部空間20aの左側壁および右側壁を構成している。左側パネル23および右側パネル24は、それぞれ、平板状に構成されている。左側パネル23および右側パネル24は、それぞれ、副走査方向Xおよび上下方向Zに延びている。
【0017】
ベースプレート21、背面パネル22、左側パネル23、および右側パネル24は、例えば、ステンレス鋼板、SECC(電気亜鉛メッキ鋼板)等によって形成されている。ステンレス鋼板の場合、ベースプレート21、背面パネル22、左側パネル23、および右側パネル24は、特に表面処理されていないステンレス鋼板によって形成され、その光の反射率は、例えば、30%~50%である。SECCの場合、ベースプレート21、背面パネル22、左側パネル23、および右側パネル24の反射率は、例えば、40%またはその前後である。
【0018】
図2に示すように、プリンタ10の内部空間20aには、フラットベッド30と、ベッド移動装置35と、キャリッジ40と、キャリッジ移動装置45と、記録ヘッド50と、光照射装置60と、反射防止機構70とが設けられている。
【0019】
フラットベッド30は、記録媒体5を支持する支持台である。フラットベッド30は、ベース面21aの上方に設けられている。本実施形態に係るプリンタ10は、いわゆる、フラットベッドタイプのプリンタである。フラットベッド30は、平板状の部材である。フラットベッド30は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びている。フラットベッド30は、上下方向Zを向いている。ベースプレート21のベース面21aとフラットベッド30とは、略平行に構成されている。フラットベッド30の上面には、記録媒体5が載置される。記録媒体5の形状は特に限定されず、平板状の他、様々な立体形状を有していてもよい。また、記録媒体5の材質も特に限定されず、記録媒体5は、例えば、木、金属、ガラス、紙、布などであってもよい。フラットベッド30は、ケース20の内部空間20aにおいて、主走査方向Yのほぼ中央に配置されている。
【0020】
フラットベッド30の下方には、ベッド移動装置35が配置されている。ベッド移動装置35は、フラットベッド30を副走査方向Xおよび上下方向Zに移動させる部材である。フラットベッド30は、ベッド移動装置35によって下方から支持されている。ベッド移動装置35は、副走査方向移動機構35Xと、上下方向移動機構35Zとを備えている。上下方向移動機構35Zは、フラットベッド30を支持して上下方向Zに移動させる。上下方向移動機構35Zは、副走査方向移動機構35Xによって下方から支持されている。副走査方向移動機構35Xは、上下方向移動機構35Zを支持して副走査方向Xに移動させる。ただし、ベッド移動装置35の構成は限定されない。例えば、副走査方向移動機構35Xと上下方向移動機構35Zとは、上下の位置関係が逆でもよい。
【0021】
キャリッジ40は、記録ヘッド50および光照射装置60を搭載している。キャリッジ40は、ベース面21aおよびフラットベッド30と対向するように設けられている。キャリッジ40は、ベース面21aおよびフラットベッド30の上方に配置されている。キャリッジ40は、キャリッジ移動装置45によって主走査方向Yに移動される。キャリッジ移動装置45は、ガイドレール46と、ベルト47と、図示しない左右のプーリと、キャリッジモータ48(
図7参照)とを備えている。
【0022】
図2に示すように、ガイドレール46は、背面パネル22に支持され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール46は、背面パネル22の前面に固定されている。キャリッジ40は、主走査方向Yに移動可能にガイドレール46に係合している。キャリッジ40は、背面パネル22よりも前方(第2副走査方向X2側)に配置されている。キャリッジ40には無端状のベルト47が固定されている。ベルト47は、ガイドレール46の右側および左側に設けられたプーリ(図示省略)に巻き掛けられている。一方のプーリにはキャリッジモータ48が取り付けられている。キャリッジモータ48が駆動するとプーリが回転し、ベルト47が走行する。それにより、キャリッジ40がガイドレール46に沿って主走査方向Yに移動する。
【0023】
記録ヘッド50は、キャリッジ40に設けられている。記録ヘッド50は、ベース面21aおよびフラットベッド30と対向するように設けられている。記録ヘッド50は、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54を備えている。第1インクヘッド51~第4インクヘッド54は、キャリッジ40の下面に設けられている。
図3は、フラットベッド30およびキャリッジ40周辺の平面図である。
図4は、フラットベッド30およびキャリッジ40周辺の正面図である。
図5は、フラットベッド30およびキャリッジ40周辺の右側面図である。
図3に示すように、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54は、いずれも副走査方向Xに延びている。なお、記録ヘッド50が備えるインクヘッドの数はここでは4個であるが、インクヘッドの数は限定されない。
【0024】
図3に示すように、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54は、それぞれ、複数のノズルが形成されたノズル面を備えている。例えば、第1インクヘッド51は、複数のノズル51aが形成されたノズル面51bを備えている。ノズル面51bは、フラットベッド30に対向している。
図3に示すように、ノズル面51bは、副走査方向Xに延びている。複数のノズル51aは、副走査方向Xに並んでノズル列を形成している。ノズル51aは、インクが吐出される微細な穴である。ノズル51aは、それぞれ、インクが貯留される圧力室に連通している。インクは、例えば圧電素子等の駆動によって圧力室が膨張/収縮されることによってノズル51aから吐出される。なお、
図3では、1つのノズル列のノズル51aの数は5個に図示されているが、実際にはもっと多数(例えば300個)形成されている。1つのノズル列に形成されるノズル51aの数は限定されない。第2インクヘッド52~第4インクヘッド54も、第1インクヘッド51と同様の構成を備えている。
【0025】
インクヘッド51~54には、それぞれ、図示しないインクチューブによって図示しないインクカートリッジが接続されている。インクヘッド51~54のノズル列には、それぞれ異なるインクカートリッジが接続されている。複数のインクカートリッジには、それぞれ異なる色のインクが収容されている。ただし、複数のインクカートリッジには、一部または全部同じ色のインクが収容されていてもよい。
【0026】
本実施形態では、記録ヘッド50から吐出されるインクは、光硬化性インクである。光硬化性インクは、ここでは、紫外線を照射されると硬化する紫外線硬化型のインクである。光硬化性インクの成分、特性等は特に限定されない。また、吐出されるインクの色も限定されない。
【0027】
光照射装置60は、キャリッジ40に設けられている。光照射装置60は、ベース面21aおよびフラットベッド30に対向するように設けられている。本実施形態では、光照射装置60は、記録ヘッド50よりも右方(第2主走査方向Y2側)に配置されている。
図3に示すように、光照射装置60は、インクを硬化させる光を生成する光源61と、光源61からの光を外部に向かって照射する照射口62とを備えている。光源61は、例えば、複数の紫外線照射ランプから構成されている。照射口62は、ここでは、光を通過させるカバーが設けられた開口部である。ただし、照射口62は、カバー等に覆われない単なる開口部でもよい。照射口62は、副走査方向Xに延びている。照射口62の副走査方向Xの長さLx2は、記録ヘッド50の副走査方向Xの長さLx1よりも長い。
【0028】
反射防止機構70は、光照射装置60から照射される光の反射光が記録ヘッド50に照射されるのを抑制するための部材である。
図6は、反射防止機構70の斜視図である。
図6に示すように、反射防止機構70は、反射防止部材80と、遮光板90とを備えている。反射防止部材80は、背面パネル22に支持されている。遮光板90は、反射防止部材80に支持されている。反射防止部材80および遮光板90は、ベース面21aよりも上方に設けられている。
【0029】
反射防止部材80は、金属板を曲げて形成されている。反射防止部材80の材料は、ここでは、アルミニウム合金である。ただし、反射防止部材80の材料は、特に限定されるわけではない。反射防止部材80は、第1反射防止部81と第2反射防止部82とを備えている。
図6に示すように、第1反射防止部81は、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びている。第2反射防止部82は、第1反射防止部81の下端から前方に向かって延びている。第2反射防止部82は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びている。
【0030】
反射防止部材80は、背面パネル22に沿って設けられている。反射防止部材80は、第1反射防止部81に設けられた取付孔81aに挿入されたボルトによって背面パネル22に固定されている。反射防止部材80は、フラットベッド30よりも第1主走査方向Y1側に配置され、背面パネル22に固定されている。
図6に示すように、第1反射防止部81は、ガイドレール46の左端とほぼ同じ位置まで左方に延びている。そのため、第1反射防止部81の左端は、可動範囲内において最も左方に位置しているときのキャリッジ40よりも左方に位置する。以下、このキャリッジ40の位置を待機位置P1(
図2も参照)と称する。待機位置P1は、フラットベッド30よりも第1主走査方向Y1側に設定されている。キャリッジ移動装置45は、待機位置P1にキャリッジ40を移動させることが可能に構成されている。第1反射防止部81は、背面パネル22に沿って、キャリッジ40の待機位置P1よりも第1主走査方向Y1側まで延びている。
【0031】
待機位置P1は、例えば、記録ヘッド50や光照射装置60のメンテナンス作業を行うキャリッジ40の位置である。待機位置P1におけるキャリッジ40の下方、言い換えれば、待機位置P1におけるキャリッジ40とベース面21aとの間には、
図2に示すように、メンテナンス空間Smが設けられている。待機位置P1におけるキャリッジ40の下方にはベースプレート21および第2反射防止部82が設けられているだけであり、待機位置P1におけるキャリッジ40の下方領域はメンテナンス空間Smとなっている。ユーザーは、必要に応じ、キャリッジ40を待機位置P1に配置した状態で記録ヘッド50や光照射装置60のメンテナンス作業を行う。メンテナンス作業は、例えば、スティック状のクリーナによる記録ヘッド50や照射口62のクリーニング等である。
【0032】
第1反射防止部81は、フラットベッド30よりも第1主走査方向Y1側に配置されるとともに、背面パネル22に沿って延びている。第1反射防止部81は、背面パネル22の前面に取り付けられている。第1反射防止部81は、背面パネル22に形成された図示しない開口部を塞ぐように背面パネル22に取り付けられている。第1反射防止部81は、背面パネル22に略平行に設けられている。第1反射防止部81は、背面パネル22よりも前方(第2副走査方向X2側)に配置されている。また、
図5に示すように、第1反射防止部81は、キャリッジ40よりも後方(第1副走査方向X1側)に配置されている。第1反射防止部81は、副走査方向X視において、背面パネル22の一部に重なるように設けられている。
図4に示すように、第1反射防止部81の上端は、ガイドレール46よりも下方に位置している。第1反射防止部81の上端は、また、キャリッジ40の下面および光照射装置60の下面よりも上方に位置している。
【0033】
第2反射防止部82は、第1反射防止部81の下端に接続され、そこからベース面21aに沿って前方(背面パネル22から離れる方向)に向かって延びている。第2反射防止部82は、ベース面21aに略平行に設けられている。第2反射防止部82は、ベースプレート21のベース面21aに沿って、待機位置P1よりも第1主走査方向Y1側に延びている。第2反射防止部82の左端は、第1反射防止部81の左端と主走査方向Yに関する位置が概ね揃っている。第2反射防止部82は、
図3に示すように、記録ヘッド50の前端よりも前方(第2副走査方向X2側)まで延びている。
【0034】
図6に示すように、第1反射防止部81および第2反射防止部82には、光の反射を抑制する反射防止シートS1が貼付されている。反射防止シートS1の種類は限定されない。反射防止シートS1は、例えば、不織布、樹脂の発泡体、樹脂のシート、活性炭のシートなどによって形成されている。反射防止シートS1の光の反射率は、例えば、5%以下である。ただし、より好ましくは、反射防止シートS1の光の反射率は、2%以下である。
【0035】
なお、反射防止部材80(少なくとも第1反射防止部81および第2反射防止部82)には、光照射装置60が照射する光の反射を抑制する表面処理がなされていればよく、表面処理の方法は限定されない。上記した表面処理は、例えば、塗装やアルマイト処理などであってもよい。
【0036】
遮光板90は、平板状の部材である。遮光板90も、例えば、アルミニウム合金の平板によって形成されている。ただし、遮光板90の材質は特に限定されるわけではない。遮光板90は、第2反射防止部82の上面に設けられ、そこから上方に延びている。遮光板90は、ベース面21aの上方にベース面21aと垂直に設けられている。遮光板90は、副走査方向Xおよび上下方向Zに延びている。
図3に示すように、遮光板90の主走査方向Yに関する長さW3は、素材であるアルミニウム合金の厚さである。遮光板90の主走査方向Yに関する長さW3は、例えば、1mm~2mmである。この長さW3は、例えば、記録ヘッド50の主走査方向Yの長さW1よりも小さく、各インクヘッド51~54の主走査方向Yの長さよりも小さい。
【0037】
遮光板90は、フラットベッド30よりも第1主走査方向Y1側に設けられている。遮光板90は、フラットベッド30の第1主走査方向Y1側の側面30Lに対向するように設けられている。本実施形態では、主走査方向Yに関するフラットベッド30と遮光板90との間の距離D2は、主走査方向Yに関する照射口62と記録ヘッド50との間の距離D1よりも短く、照射口62の主走査方向Yに関する幅W2よりも長く構成されている。
図3に示すように、照射口62と記録ヘッド50との間の距離D1は、照射口62の第1主走査方向Y1側の端部62Lと、最も照射口62に近いインクヘッドの照射口62側の端部(ここでは、第4インクヘッド54の第2主走査方向Y2側の端部54R)との間の距離である。フラットベッド30と遮光板90との間の距離D2は、フラットベッド30の第1主走査方向Y1側の側面30Lと、遮光板90の第2主走査方向Y2側の面91(後述する遮光面91)との間の距離である。
【0038】
キャリッジ40の待機位置P1は、遮光板90よりも第1主走査方向Y1側に設定されている。遮光板90は、主走査方向Yに関して、フラットベッド30とキャリッジ40の待機位置P1との間に設けられている。
【0039】
図3に示すように、遮光板90の副走査方向Xに関する長さLx3は、記録ヘッド50の副走査方向Xに関する長さLx1よりも長く構成されている。本実施形態では、遮光板90の副走査方向Xに関する長さLx3は、照射口62の副走査方向Xに関する長さLx2よりもさらに長い。遮光板90は、ここでは、キャリッジ40の後端よりも後方からキャリッジ40の前端よりも前方まで延びている。
【0040】
図4に示すように、遮光板90の上面93は、記録ヘッド50の下面および光照射装置60の下面よりも下方に位置している。記録ヘッド50および光照射装置60は、キャリッジ40がフラットベッド30上から待機位置P1に移動するとき、遮光板90の上方を通過する。遮光板90の上面93の位置とフラットベッド30の上面の位置との関係は特に限定されない。遮光板90の上面93の位置は、フラットベッド30の上面の位置よりも上方でもよく、下方でもよい。ここでは、遮光板90の上面93の位置は、フラットベッド30の上面の位置よりも下方である。
【0041】
遮光板90のフラットベッド30側の面91は、キャリッジ40がフラットベッド30上から待機位置P1に向かうときに光照射装置60から照射される光、またはその反射光を受ける遮光面91を構成している。遮光面91は、第2主走査方向Y2側を向いている。遮光板90のうち、少なくとも遮光面91には、光の反射を抑制する表面処理が施される。本実施形態では、遮光面91だけでなく、遮光面91の裏面92、および遮光板90の上面93にも、光の反射を抑制する表面処理が施されている。遮光板90に対する表面処理は、ここでは、反射防止部材80と同様に、反射防止シートS1の貼付である。
【0042】
図3に示すように、第1反射防止部81および第2反射防止部82の一部は、遮光板90よりもフラットベッド30側に位置している。第2反射防止部82のうち遮光板90とフラットベッド30との間の部分は、ベース面21aのうちフラットベッド30と遮光板90との間の部分によって反射される光を抑制している。以下、第2反射防止部82の上記部分をベッド側反射防止部82aと呼ぶ。ベッド側反射防止部82aは、ベース面21aのうちフラットベッド30と遮光板90との間の部分の上方に広がっている。ベッド側反射防止部82aには、光の反射を抑制するような表面処理がなされている。
【0043】
図1に示すように、プリンタ10は、制御装置100を備えている。
図7は、プリンタ10のブロック図である。
図7に示すように、制御装置100は、副走査方向移動機構35Xと、上下方向移動機構35Zと、キャリッジモータ48と、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54と、光照射装置60の光源61とに接続され、それらの動作を制御している。制御装置100は、例えば、プリンタ10に接続されたコンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという。)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置100の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、各部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。制御装置100の構成は特に限定されない。
図7に示すように、制御装置100は、キャリッジ移動制御部101と、照射制御部102とを備えている。制御装置100は、他の制御部を備えていてもよいが、ここでは、説明および図示を省略する。
【0044】
キャリッジ移動制御部101は、キャリッジモータ48の動作を制御することにより、キャリッジ40の主走査方向Yの動きを制御する。キャリッジ移動制御部101は、キャリッジ40を待機位置P1に移動させる際の動作を制御する。キャリッジ移動制御部101は、キャリッジ移動装置45を制御して、キャリッジ40を待機位置P1に移動させる。
【0045】
照射制御部102は、光照射装置60の動作を制御する。詳しくは、照射制御部102は、光源61を制御することによって、光照射装置60による光の照射を開始または停止する。照射制御部102は、キャリッジ移動制御部101によってキャリッジ40が待機位置P1に移動される際には、遅くとも照射口62がフラットベッド30よりも第1主走査方向Y1側に位置するよりも前に光の照射を停止する。ただし、特に光を照射する必要がない場合には、照射制御部102は、それよりも前に光の照射を停止する。
【0046】
以下では、キャリッジ40がフラットベッド30上から待機位置P1に移動する際のプリンタ10の動作、および、それによってもたらされる効果について説明する。
【0047】
[ベッド側反射防止部および遮光板の効果]
まず、ベッド側反射防止部82aおよび遮光板90の効果について説明する。
図8および
図9は、それぞれ、キャリッジ40が待機位置P1に移動する途中のフラットベッド30およびキャリッジ40を示す正面図である。そのうち、
図8は、光照射装置60の照射口62の第1主走査方向Y1側の端部62Lがフラットベッド30上からフラットベッド30の側方に出る時点のフラットベッド30およびキャリッジ40を示している。照射口62の第1主走査方向Y1側の端部62Lは、待機位置P1に移動する際のキャリッジ40の進行方向前方側の端部である。
図9は、照射口62の第2主走査方向Y2側の端部62Rがフラットベッド30上からフラットベッド30の側方に出る時点のフラットベッド30およびキャリッジ40を示している。照射口62の第2主走査方向Y2側の端部62Rは、キャリッジ40の進行方向後方側の端部である。以下では、端部62Lおよび62Rを、それぞれ単に、左端62Lおよび右端62Rとも呼ぶ。
【0048】
図8に示すように、照射口62の左端62Lがフラットベッド30上からフラットベッド30の左方に出る時点においては、主走査方向Yに関して左端62Lとフラットベッド30の左方側の側面30Lの位置とが揃っている。主走査方向Yに関する照射口62と記録ヘッド50との間の距離D1が主走査方向Yに関するフラットベッド30と遮光板90との間の距離D2よりも長いため、このとき、記録ヘッド50の第4インクヘッド54は、遮光板90よりも第1主走査方向Y1側に位置している。
【0049】
遅くとも
図8の時点(照射口62の左端62Lがフラットベッド30上からフラットベッド30の左方に出る時点)において、光照射装置60は消灯される。光を照射する必要が特にない場合には、プリンタ10は、それよりも前、例えば、インクの硬化終了と同時に光の照射を停止する。最も遅い場合でも、
図8に示された時点以降には、光を照射する必要はない。しかしながら、光照射装置60を消灯する制御が行われるタイミングと、実際に光照射装置60が消灯するタイミングとの間にはタイムラグが存在する。そのため、
図8の時点においても、光照射装置60は光を照射している場合がある。
図8の時点において光照射装置60から照射された光の一部L1は、第2反射防止部82のベッド側反射防止部82aに照射される。ベッド側反射防止部82aに照射された光L1の大部分は、ベッド側反射防止部82aに貼付された反射防止シートS1(
図6参照)によって吸収される。
図8の時点において光照射装置60からベッド側反射防止部82aに照射された光L1は、その一部だけがベッド側反射防止部82aによって反射される。
【0050】
図8に示すように、ベッド側反射防止部82aによって反射された光L1の多くは、遮光板90の遮光面91に照射される。遮光面91に照射された光L1は、遮光面91によって遮られて遮光板90よりも第1主走査方向Y1側には到達しない。また、遮光面91に照射された光L1の大部分は、遮光面91に貼付された反射防止シートS1によって吸収される。遮光面91によって反射された光L1の一部は、さらに1回以上反射されて記録ヘッド50に到達する可能性があるが、その量はごく少ない。
【0051】
また、
図8に示すように、光照射装置60からベッド側反射防止部82a以外の場所に向かって照射された光の一部は、
図8の光L2として遮光板90に直接照射される。遮光面91に直接照射された光L2も、遮光面91によって遮られて遮光板90よりも第1主走査方向Y1側には到達しない。さらに、遮光板90に直接照射された光L2の大部分は、遮光板90の遮光面91によって吸収される。遮光面91によって反射された光L2の一部は、さらに1回以上反射されて記録ヘッド50に到達する可能性があるが、その量はごく少ない。
【0052】
このように、照射口62の左端62Lがフラットベッド30上からフラットベッド30よりも左方に出ようとする時点において、ベッド側反射防止部82aおよび遮光板90は、光照射装置60からの光L1およびL2の反射光が記録ヘッド50に到達することを抑制している。光L1およびL2は、もしもベース面21aによって反射された場合には、一次反射光となって記録ヘッド50のノズル面に向かって照射される可能性がある。このような一次反射光は、記録ヘッド50においてインクを硬化させ、不具合を発生させるおそれが高い。ベッド側反射防止部82aは、光照射装置60からの光L1の反射を抑えることによって、光L1の反射光が記録ヘッド50に到達することを抑制している。遮光板90は、光L1のベッド側反射防止部82aでの反射光、および直接光である光L2を遮ることによって、光L1およびL2が遮光板90よりも第1主走査方向Y1側に侵入することを抑制している。
【0053】
図8の時点からキャリッジ40がさらに第1主走査方向Y1に移動すると、
図9に示すように、照射口62の右端62Rがフラットベッド30上からフラットベッド30の左方に出る。この時点では、主走査方向Yに関して照射口62の右端62Rとフラットベッド30の左方側の側面30Lの位置とが揃っている。主走査方向Yに関する照射口62の長さW2が主走査方向Yに関するフラットベッド30と遮光板90との間の距離D2よりも短いため、このとき、照射口62は、遮光板90よりも第2主走査方向Y2側に位置している。従って、
図9に示された時点においても、
図8の場合と同じ理由により、光照射装置60からベッド側反射防止部82a遮光面91に照射された光の多くは、記録ヘッド50に到達しない。
図8と
図9との間の時点でも同様であり、光照射装置60から照射された光の多くは、記録ヘッド50に到達しない。遮光板90は、少なくとも
図9に示された時点(照射口62が完全にフラットベッド30よりも第1主走査方向Y1側に出る時点)まで遮光機能を有する。そこで、記録ヘッド50に向かって照射される光をより確実に遮蔽することができる。
【0054】
なお、
図8よりも前の時点では、光照射装置60からの光は、フラットベッド30またはその上に載置された記録媒体5によって反射される。そのため、
図8よりも前の時間帯では、記録ヘッド50への光の照射をベッド側反射防止部82aおよび遮光板90によって防止することは想定されていない。
【0055】
ベッド側反射防止部82aおよび遮光板90は、フラットベッド30のエリア外において光照射装置60からの光が記録ヘッド50に照射されるのを防ぐことを目的とするが、特に、光照射装置60からの光の反射光が記録ヘッド50に照射されることを
図8の時点から
図9の時点まで抑制するように構成されている。ベッド側反射防止部82aおよび遮光板90がそのように構成されていれば、記録ヘッド50に照射される光の量を抑制する効果が十分に期待できる。
【0056】
キャリッジ40は、
図9に示された時点の後、遮光板90よりも第1主走査方向Y1側に設定された待機位置P1に停止する。待機位置P1における記録ヘッド50の下方は、記録ヘッド50や光照射装置60のメンテナンス作業を行うためのメンテナンス空間Sm(
図2参照)となっている。
【0057】
上記のように、本実施形態に係るプリンタ10によれば、遮光板90は、副走査方向Xおよび上下方向Zに延びる遮光面91を有している。主走査方向Yに関するフラットベッド30と遮光板90との間の距離D2は、主走査方向Yに関する照射口62と記録ヘッド50との間の距離D1よりも短い。そのため、遮光面91がなければベース面21aに反射されて記録ヘッド50に向かって照射される光を抑制することができる。遮光板90が遮蔽する光は、照射口62から遮光面91に直接照射される光(例えば、光L2)と、ベース面21aのうちフラットベッド30と遮光板90との間の部分によって反射され遮光面91に照射される光(例えば、光L1)とを含む。また、本実施形態に係るプリンタ10によれば、待機位置P1におけるキャリッジ40の下方にメンテナンス空間Smが設けられているため、キャリッジ40を待機位置P1まで移動させることにより、記録ヘッド50のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0058】
さらに、本実施形態では、主走査方向Yに関するフラットベッド30と遮光板90との間の距離D2は、主走査方向Yに関する照射口62の長さW2よりも長い。そのため、遮光板90は、少なくとも照射口62が完全にフラットベッド30よりも第1主走査方向Y1側に出る時点まで遮光機能を有する。そこで、記録ヘッド50に向かって照射される光をより確実に遮蔽することができる。
【0059】
本実施形態では、
図3に示すように、遮光板90の副走査方向Xに関する長さLx3は、記録ヘッド50の副走査方向Xに関する長さLx1よりも長く構成されている。そのため、本実施形態に係る遮光板90は、副走査方向Xに関して、記録ヘッド50の全体を反射光から防御することができる。
【0060】
本実施形態では、遮光面91には、光の反射を抑制するような表面処理がなされている。かかる構成によれば、遮光面91による反射光を減少させることができる。そのため、その後に反射を繰り返して記録ヘッド50に照射される光の量も減少させることができる。
【0061】
本実施形態に係るプリンタ10は、ベース面21aのうちフラットベッド30と遮光板90との間の部分の上方に広がるベッド側反射防止部82aを備えている。ベッド側反射防止部82aには、光の反射を抑制するような表面処理がなされている。かかる構成によれば、フラットベッド30と遮光板90との間の領域での反射光を減少させることができる。そのため、その後に反射を繰り返して記録ヘッド50に照射される光の量も減少させることができる。
【0062】
また、本実施形態では、キャリッジ40が第1主走査方向Y1に移動される際、少なくとも照射口62がフラットベッド30よりも第1主走査方向Y1側に位置するよりも前に光の照射が停止される。上記制御によれば、遅くとも、遮光板90による遮光効果が発揮される時間帯(ここでは、
図8の時点から
図9の時点まで間の時間帯)より後の時間帯では、光照射装置60は消灯する。よって、上記制御によれば、光照射装置60からの光の反射光が記録ヘッド50に照射されるのを確実に抑制することができる。
【0063】
なお、本実施形態では、遮光板90の上面93にも光の反射を抑制するような表面処理がなされている。遮光板90の上面93に照射された光の一部は、上面93によって記録ヘッド50に向かうように反射される。そこで、本実施形態では、遮光板90の上面93に光の反射を抑制するような表面処理を行うことによって、そのような反射光を少なくしている。
【0064】
[反射防止部材の効果]
次に、反射防止部材80の効果について説明する。反射防止部材80は、内部空間20aの壁面による光の反射を抑制する。
図5に示すように、光照射装置60が照射する光には、例えば、光L3のような後方に向かう光が含まれる。光L3は、背面パネル22およびベース面21aによって反射され、記録ヘッド50に向かうような軌道を描く。反射防止部材80は、例えば、光L3のような光が記録ヘッド50に照射されることを抑制している。
【0065】
光照射装置60が照射する光の一次反射光の大部分は、遮光板90によって遮光されるが、他の一部は、例えば光L3のように、直接または間接に背面パネル22に向かって照射される。特に、遮光板90よりも上方を通過した光は直接光であり、その強度は強い。背面パネル22およびベース面21aのうち遮光板90よりも第1主走査方向Y1側に位置する部分に何らの反射光対策もしない場合、光L3は、背面パネル22およびベース面21aによって反射され、記録ヘッド50に到達する可能性がある。
【0066】
反射防止部材80は、第1反射防止部81と第2反射防止部82とを有し、背面パネル22およびベース面21aによる光の反射を抑制している。第1反射防止部81は、フラットベッド30よりも第1主走査方向Y1側の位置に配置され、背面パネル22に沿ってキャリッジ40の待機位置P1よりも第1主走査方向Y1側まで延びている。第1反射防止部81には、光照射装置60が照射する光の反射を抑制するような表面処理がなされている。そこで、第1反射防止部81は、背面パネル22によって光L3が反射されるのを抑制する。詳しくは、光L3の大部分は、第1反射防止部81に貼付された反射防止シートS1(
図6参照)に吸収される。
【0067】
また、第1反射防止部81は、背面パネル22に沿って延びているため、フラットベッド30およびキャリッジ40の移動を妨げない。第1反射防止部81を背面パネル22に沿わせることにより、フラットベッド30およびキャリッジ40の移動を妨げることなく、待機位置P1の後方まで第1反射防止部81を延ばすことができる。
【0068】
第1反射防止部81によって吸収されず反射された光L3の一部は、第2反射防止部82に照射される。第2反射防止部82は、フラットベッド30よりも第1主走査方向Y1側の位置に配置され、ベース面21aに沿って待機位置P1よりも第1主走査方向Y1側まで延びている。ここでは、第2反射防止部82にも、光照射装置60が照射する光の反射を抑制するような表面処理がなされている。そこで、第2反射防止部82は、ベース面21aによって光L3が反射されるのを抑制する。詳しくは、光L3の大部分は、第2反射防止部82に貼付された反射防止シートS1(
図6参照)に吸収される。よって、記録ヘッド50に到達する光L3の量はごく少なく抑えられる。
【0069】
また、第2反射防止部82は、ベースプレート21のベース面21aに沿って、ベース面21aと略並行に前方に延びている。第2反射防止部82をベース面21aに沿わせることにより、フラットベッド30およびキャリッジ40の移動を妨げることなく、待機位置P1の後方まで第2反射防止部82を延ばすことができる。
【0070】
上記のように、第1反射防止部81によれば、光照射装置60から背面パネル22に向かって照射される光の反射光の量を少なくすることができる。それにより、最終的に記録ヘッド50に向かって照射される反射光の量を少なくすることができる。さらに、第2反射防止部82を備えることにより、ベース面21aで反射されて記録ヘッド50に照射される反射光の量を少なくすることができる。
【0071】
さらに、本実施形態では、第1反射防止部81および第2反射防止部82には、光照射装置60が照射する光の反射を抑制する反射防止シートS1が貼付されている。かかる構成によれば、光の反射を抑制する表面処理を容易に行うことができる。表面処理された部分の光の反射率は、5%以下であることが好ましい。
【0072】
また、本実施形態では、反射防止部材80は、背面パネル22に支持されている。かかる構成によれば、部材を追加することなく反射防止部材80をプリンタ10に取り付けることができる。
【0073】
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、本発明のインクジェットプリンタは、上記した実施形態に限定されない。例えば、上記した実施形態では、背面パネル22とは別体の反射防止部材80が設けられていた。しかし、背面パネルによる反射の防止は、背面パネルそのものによって実現されてもよい。すなわち、背面パネルは、光照射装置が照射する光の反射を抑制するような表面処理がなされた反射抑制領域を有していてもよい。反射抑制領域の表面処理としては、シートの貼付や塗装など種々の方式を採用することができる。また、上記した実施形態ではベースプレート21とは別体の第2反射防止部82が設けられていたが、ベースプレートによる反射防止は、ベースプレートそのものに対する表面処理によって実現されてもよい。
【0074】
上記した実施形態では、第1反射防止部81は、背面パネル22に略平行に設けられていた。しかし、第1反射防止部は、背面パネルに略平行である必要はない。同様に、上記した実施形態では第2反射防止部82はベース面21aに略平行に設けられていたが、第2反射防止部は、ベース面に略平行である必要はない。
【0075】
上記した実施形態では、遮光板90は、ベース面21aに垂直かつ副走査方向Xに平行に設けられていた。しかし、遮光板は、ベース面に概ね垂直であればよく、副走査方向に概ね平行な方向に延びていればよい。例えば、遮光板は、ベース面に対する垂直方向から10度以内の角度で傾斜していてもよく、副走査方向に対して10度以内の角度で傾斜していてもよい。
【0076】
上記した実施形態では、遮光板90の上面93は、水平方向に延びるように、つまり、主走査方向Yおよび副走査方向Xに平行に構成されていた。しかし、遮光板の上面は、例えば、主走査方向と非平行な傾斜面となるように構成されていてもよい。その場合の傾斜面は、上記した実施形態における向きで言えば、左上方から右下方に向かうような傾斜面が好ましい。このような傾斜面によれば、遮光板の上面よりも右上方に位置しているときの光照射装置からの光を右方に向かって反射することができる。それにより、光照射装置からの光が遮光板の上面によって反射されて記録ヘッドに照射されることを抑制できる。なお、上記した左方、右方、上方、下方等の方向は、説明のための例示に過ぎない。
【0077】
上記した実施形態では、プリンタ10はフラットベッドタイプのプリンタであったが、プリンタの構成は特に限定されない。例えば、ここに開示される技術は、記録媒体がロールから供給されるタイプのプリンタに対して適用されてもよい。記録媒体を支持する支持台は、ロールから供給される記録媒体が載置されるプラテンであってもよい。
【0078】
その他、特に言及がない限り、上記した実施形態は本発明を限定しない。
【0079】
[第2実施形態]
第2実施形態では、遮光板は光照射装置が照射する光を吸収するのではなく反射する。本実施形態に係る遮光板は、インクを硬化させる所定の波長帯の光を反射するように構成されている。以下の第2実施形態の説明では、第1実施形態と共通の機能を奏する部材には、第1実施形態と共通の符号を使用する。また、重複する説明は、省略または簡略化する。
【0080】
図10は、第2実施形態に係るフラットベッド30およびキャリッジ40周辺の正面図である。
図11は、遮光板190の斜視図である。
図10に示すように、本実施形態でも、主走査方向Yに関するフラットベッド30と遮光板190との間の距離D2は、主走査方向Yに関する光照射装置60の照射口62と記録ヘッド50との間の距離D1よりも短く設定されている。ここでは、遮光板190の位置は、第1実施形態に係る遮光板90の位置と同じである。ただし、遮光板190の位置は、第1実施形態に係る遮光板90の位置と異なっていてもよい。例えば、主走査方向Yに関するフラットベッド30と遮光板190との間の距離は、主走査方向Yに関する照射口62と記録ヘッド50との間の距離D1と同じか、距離D1よりも長く設定されていてもよい。
【0081】
図10および
図11に示すように、本実施形態に係る遮光板190は、第1実施形態に係る遮光板90とは形状が異なっている。
図10に示すように、遮光板190の上端は、フラットベッド30よりも上方に位置している。遮光板190は、フラットベッド30よりも上方まで延びている。また、遮光板190の上端は、記録ヘッド50および光照射装置60よりも下方に位置している。図示は省略するが、遮光板190の前縁は、記録ヘッド50の前端よりも前方に位置している。また、
図11に示すように、遮光板190の後縁は、背面パネル22に接している。遮光板190の後縁には、背面パネル22の形状に対応した切欠きが設けられている。これにより、遮光板190は、背面パネル22にほとんど隙間なく接している。
【0082】
遮光板190のフラットベッド30の側を向いた面は、インクを硬化させる所定の波長帯の光を反射する反射面191を構成している。本実施形態でも、インクは所定の波長帯の光を受けると硬化するインクである。詳しくは、本実施形態に係るインクは、紫外線領域に含まれる所定の波長帯の光を受けると硬化する紫外線硬化インクである。反射面191は、少なくとも上記所定の波長帯の光を反射するように構成されている。
【0083】
反射面191を構成する材料は特に限定されないが、ここでは透明な材料である。反射面191を構成する材料は、少なくとも上記所定の波長帯の光を選択的に反射する。一方、反射面191を構成する材料は、少なくとも一部の波長帯の可視光線を通過させる。これにより、遮光板190を通してメンテナンス空間Smからフラットベッド30を視認すること、およびその逆が可能である。ここでは、遮光板190の全部が、かかる材料によって形成されている。ただし、かかる材料によって構成されているのは、遮光板190の一部であってもよい。なお、ここでの「透明」とは、無色透明だけでなく、有色透明や半透明も含む。反射面191は、例えば、紫外線カットガラスや、紫外線カット仕様の透明樹脂、紫外線カットフィルムを貼付した各種透明材料などから構成される。
【0084】
なお、遮光板の反射面を構成する材料は、所定の波長帯の光を選択的に反射する透明な材料でなくてもよく、全ての波長の光を反射する材料であってもよい。そのような材料としては、例えば、金属や不透明な樹脂等を挙げることができる。
【0085】
本実施形態では、遮光板190は、フラットベッド30よりも上方かつ記録ヘッド50および光照射装置60の近傍まで延びており、さらに、後縁が背面パネル22に接している。そのため、遮光板190よりもメンテナンス空間Sm側には、光照射装置60が照射する光のうちインクを硬化させる波長帯の光はほとんど届かない。そこで、本実施形態では、第1実施形態における反射防止部材80に相当する部材が設けられていない。ただし、遮光板がフラットベッドよりも上方まで延びている場合であっても、第1実施形態における反射防止部材80に相当する部材が設けられていてもよい。
【0086】
本願発明者の計測によれば、光照射装置60からの光を吸収ではなく反射する遮光板190によっても、記録ヘッド50に照射される光を大きく低減することができる。メンテナンス空間Smにおける記録ヘッド50のメンテナンス作業が容易にできる点は、第1実施形態と同様である。
【0087】
上記に加え、本実施形態では、プリンタ10の製作コストを容易に低減することができる。一般に光を吸収する部材や表面処理はコストが高い。本実施形態では、そのような高価な部材を用いたり、高価な表面処理を行ったりする必要がないため、プリンタ10の製作コストを容易に低減することができる。
【0088】
さらに、遮光板190をフラットベッド30よりも上方まで延ばすことにより、記録ヘッド50に照射される光をより低減することができる。本願発明者の計測によれば、かかる構成により、第1実施形態に係る遮光板90と同等の遮光効果を得ることが可能である。また、遮光板190をフラットベッド30よりも上方まで延ばすことにより、メンテナンス空間Smの壁面に反射防止の処理を施さなくてもよくなるか、少なくとも、メンテナンス空間Smの壁面のうち反射防止の処理を施す必要がある部分が減少する。これにより、プリンタ10の製作コストが低減される。なお、遮光板は、フラットベッドより上方まで延びていなくてもよい。
【0089】
本実施形態では、遮光板190の反射面191を構成する材料は、インクを硬化させる波長帯の光を選択的に反射する透明な材料である。これにより、メンテナンス空間Smからフラットベッド30を視認することができ、遮光板190よりもフラットベッド30の側の空間からメンテナンス空間Smを視認することができる。
【0090】
以上、第2実施形態に係るプリンタについて説明した。しかし、本発明のインクジェットプリンタは、上記した第2実施形態にも限定されない。
【0091】
上記した第2実施形態では、遮光板190は、ベース面21aに垂直かつ副走査方向Xに平行に設けられていた。しかし、遮光板は、ベース面に概ね垂直であればよく、副走査方向に概ね平行な方向に延びていればよい。例えば、遮光板は、ベース面に対する垂直方向から10度以内の角度で傾斜していてもよく、副走査方向に対して10度以内の角度で傾斜していてもよい。
【0092】
上記した第2実施形態では、遮光板190の上面は、水平方向に延びるように、つまり、主走査方向Yおよび副走査方向Xに平行に構成されていた。しかし、遮光板の上面は、例えば、主走査方向と非平行な傾斜面となるように構成されていてもよい。その場合の傾斜面は、第2実施形態における向きで言えば、左上方から右下方に向かうような傾斜面が好ましい。このような傾斜面によれば、遮光板の上面よりも右上方に位置しているときの光照射装置からの光を右方に向かって反射することができる。それにより、光照射装置からの光が遮光板の上面によって反射されて記録ヘッドに照射されることを抑制できる。なお、上記した左方、右方、上方、下方等の方向は、説明のための例示に過ぎない。
【0093】
上記した第2実施形態では、プリンタ10はフラットベッドタイプのプリンタであったが、プリンタの構成は特に限定されない。例えば、ここに開示される技術は、記録媒体がロールから供給されるタイプのプリンタに対して適用されてもよい。記録媒体を支持する支持台は、ロールから供給される記録媒体が載置されるプラテンであってもよい。
【0094】
その他、特に言及がない限り、第2実施形態も、第1実施形態と同様に本発明を限定しない。
【符号の説明】
【0095】
5 記録媒体
10 プリンタ(インクジェットプリンタ)
21 ベースプレート(ベース部材)
21a ベース面
22 背面パネル
30 フラットベッド(支持台)
40 キャリッジ
45 キャリッジ移動装置
50 記録ヘッド
60 光照射装置
62 照射口
70 反射防止機構
80 反射防止部材
81 第1反射防止部
82 第2反射防止部
90 遮光板
91 遮光面
100 制御装置
101 キャリッジ移動制御部(第1制御部)
102 照射制御部(第2制御部)
190 遮光板(第2実施形態)
191 反射面(第2実施形態)
P1 待機位置
S1 反射防止シート
Sm メンテナンス空間
X 副走査方向(第2方向)
Y 主走査方向(第1方向)