(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01F 12/46 20060101AFI20240816BHJP
A01D 41/127 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A01F12/46
A01D41/127 110
(21)【出願番号】P 2020111093
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2022-06-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藤田 敏章
(72)【発明者】
【氏名】林 壮太郎
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特許第6279965(JP,B2)
【文献】特開2006-101769(JP,A)
【文献】特開2010-227078(JP,A)
【文献】特許第6059056(JP,B2)
【文献】特許第5968629(JP,B2)
【文献】特開2008-212102(JP,A)
【文献】特開2005-237338(JP,A)
【文献】特許第5731938(JP,B2)
【文献】特開2015-084667(JP,A)
【文献】特開2018-102160(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0017556(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00 - 41/16
A01F 12/46
A01F 12/60
B65G 65/30 - 65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒貯留部と、
前記穀粒貯留部から穀粒を外部へ排出する穀粒排出装置と、
前記穀粒排出装置により排出される穀粒の排出量を検出する検出部と、
前記穀粒排出装置から排出する穀粒の目標排出量を決定する決定部と、
前記検出部により検出された前記排出量が前記決定部により決定された前記目標排出量に達したことに応じて前記穀粒排出装置を制御して穀粒の排出を停止させる停止制御部と、を備え、
前記穀粒排出装置は、前記穀粒貯留部の底部に配置される底スクリューを備え、
前記検出部は、前記底スクリューの回転数に基づいて前記排出量を検出し、
前記底スクリューの回転数は、エンジンの回転速度に基づいて算出され
、
前記決定部は、排出された穀粒を貯留する穀粒運搬車の受入可能量を外部から通信によって取得し、取得した前記受入可能量に基づいて前記目標排出量を決定するコンバイン。
【請求項2】
前記底スクリューの回転速度が一定である請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記決定部は、排出された穀粒を乾燥する乾燥装置の受入可能量を取得し、取得した前記受入可能量に基づいて前記目標排出量を決定する請求項1
又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記停止制御部は、排出された穀粒を貯留する穀粒運搬車の貯留量を取得すると共に、取得した前記貯留量に基づいて前記穀粒排出装置の排出速度を変更する請求項1から
3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記穀粒貯留部に貯留された穀粒の減少量を検出する減少量検出部と、
前記減少量検出部が検出した前記減少量と、前記検出部が検出した前記排出量と、に基づいて、前記穀粒貯留部においてブリッジが発生しているか否かを判定する判定部と、を備える請求項1から
4のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項6】
穀粒貯留部と、
前記穀粒貯留部から穀粒を外部へ排出する穀粒排出装置と、
前記穀粒排出装置により排出される穀粒の排出量を検出する検出部と、
前記穀粒排出装置から排出する穀粒の目標排出量を決定する決定部と、
前記検出部により検出された前記排出量が前記決定部により決定された前記目標排出量に達したことに応じて前記穀粒排出装置を制御して穀粒の排出を停止させる停止制御部と、を備え、
前記穀粒排出装置は、前記穀粒貯留部の底部に配置される底スクリューを備え、
前記検出部は、前記底スクリューの回転数に基づいて前記排出量を検出し、
前記底スクリューの回転数は、エンジンの回転速度に基づいて算出され、
前記穀粒貯留部に貯留された穀粒の減少量を検出する減少量検出部と、
前記減少量検出部が検出した前記減少量と、前記検出部が検出した前記排出量と、に基づいて、前記穀粒貯留部においてブリッジが発生しているか否かを判定する判定部と、
機体前後方向に沿って延びる軸芯周りに揺動駆動される揺動部材
と、を備え、
前記ブリッジが発生していると前記判定部が判定した場合、前記揺動部材が揺動されるコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、穀粒排出装置を備えるコンバインが記載されている。キャビンの内部には、穀粒排出装置の作動に関する操作を可能にする有線式の遠隔操作具が設けられている。排出スイッチ及び排出停止スイッチにより、穀粒排出装置の排出停止状態と排出状態とが切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコンバインにて、穀粒を穀粒運搬車へ排出する排出作業を行う際には、オペレータが排出スイッチを操作して穀粒の排出を開始する。そして、オペレータは穀粒運搬車の穀粒の貯留量を監視する。そして穀粒運搬車が満杯になると、オペレータが排出停止スイッチを操作して穀粒の排出を停止する。このように、従来のコンバインでは、穀粒の排出作業においてオペレータによる監視及び操作を必要とし、効率化の点で改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、穀粒の排出作業においてオペレータの手間を削減可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンバインの特徴構成は、穀粒貯留部と、前記穀粒貯留部から穀粒を外部へ排出する穀粒排出装置と、前記穀粒排出装置により排出される穀粒の排出量を検出する検出部と、前記穀粒排出装置から排出する穀粒の目標排出量を決定する決定部と、前記検出部により検出された前記排出量が前記決定部により決定された前記目標排出量に達したことに応じて前記穀粒排出装置を制御して穀粒の排出を停止させる停止制御部と、を備え、前期穀粒排出装置は、前記穀粒貯留部の底部に配置される底スクリューを備え、前記検出部は、前記底スクリューの回転数に基づいて前記排出量を検出し、前記底スクリューの回転数は、エンジンの回転速度に基づいて算出され、前記決定部は、排出された穀粒を貯留する穀粒運搬車の受入可能量を外部から通信によって取得し、取得した前記受入可能量に基づいて前記目標排出量を決定する点にある。
【0007】
本発明のコンバインの特徴構成によれば、排出量が目標排出量に達すると穀粒の排出が停止するので、オペレータが穀粒の排出を監視して穀粒排出装置を停止操作する必要がない。従って、穀粒の排出作業においてオペレータの手間を削減することが可能となる。
また、底スクリューの回転数に基づいて排出量が確実に検出されるので、穀粒排出装置の停止が確実に行われ好ましい。
また、穀粒運搬車の受入可能量に基づいて目標排出量が決定されるので、目標排出量が適切なものとなり好ましい。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
本発明のコンバインの更なる特徴構成は、前記底スクリューの回転速度が一定である点にある。
【0013】
本発明のコンバインの特徴構成によれば、底スクリューの回転速度が一定であるので、簡易な構成により排出量を検出でき好ましい。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
本発明のコンバインの更なる特徴構成は、前記決定部は、排出された穀粒を乾燥する乾燥装置の受入可能量を取得し、取得した前記受入可能量に基づいて前記目標排出量を決定する点にある。
【0021】
本発明のコンバインの特徴構成によれば、乾燥装置の受入可能量に基づいて目標排出量が決定されるので、目標排出量が適切なものとなり好ましい。
【0022】
本発明のコンバインの更なる特徴構成は、前記停止制御部は、排出された穀粒を貯留する穀粒運搬車の貯留量を取得すると共に、取得した前記貯留量に基づいて前記穀粒排出装置の排出速度を変更する点にある。
【0023】
本発明のコンバインの特徴構成によれば、穀粒運搬車の貯留量に基づいて穀粒排出装置の排出速度が変更されるので、穀粒の排出作業の効率化が可能となる。例えば、穀粒運搬車の貯留量が小さいときには排出速度を大きくし、貯留量が大きいときには排出速度を小さくして、穀粒の排出作業の時間を短縮すると共に穀粒運搬車から穀粒が溢れることを抑制できる。
【0024】
本発明のコンバインの更なる特徴構成は、前記穀粒貯留部に貯留された穀粒の減少量を検出する減少量検出部と、前記減少量検出部が検出した前記減少量と、前記検出部が検出した前記排出量と、に基づいて、前記穀粒貯留部においてブリッジが発生しているか否かを判定する判定部と、を備える点にある。
【0025】
穀粒貯留部におけるブリッジの発生とは、穀粒貯留部の内部で穀粒が架橋状になり、穀粒貯留部から穀粒が排出されなくなる現象をいう。本発明のコンバインの特徴構成によれば、減少量と排出量とに基づいてブリッジの発生が判定されるので、ブリッジへの対処が可能となり、穀粒の排出作業の中断による作業効率の低下を抑制することができる。
また、本発明のコンバインの特徴構成は、穀粒貯留部と、前記穀粒貯留部から穀粒を外部へ排出する穀粒排出装置と、前記穀粒排出装置により排出される穀粒の排出量を検出する検出部と、前記穀粒排出装置から排出する穀粒の目標排出量を決定する決定部と、前記検出部により検出された前記排出量が前記決定部により決定された前記目標排出量に達したことに応じて前記穀粒排出装置を制御して穀粒の排出を停止させる停止制御部と、を備え、前記穀粒排出装置は、前記穀粒貯留部の底部に配置される底スクリューを備え、前記検出部は、前記底スクリューの回転数に基づいて前記排出量を検出し、前記底スクリューの回転数は、エンジンの回転速度に基づいて算出され、前記穀粒貯留部に貯留された穀粒の減少量を検出する減少量検出部と、前記減少量検出部が検出した前記減少量と、前記検出部が検出した前記排出量と、に基づいて、前記穀粒貯留部においてブリッジが発生しているか否かを判定する判定部と、機体前後方向に沿って延びる軸芯周りに揺動駆動される揺動部材と、を備え、前記ブリッジが発生していると前記判定部が判定した場合、前記揺動部材が揺動される点にある。
本発明のコンバインの特徴構成によれば、穀粒タンクにおいて穀粒のブリッジが発生している場合に、揺動部材が揺動すると、ブリッジが解消されて穀粒の排出が適切に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図3】穀粒排出装置の概要構成を示す説明図である。
【
図5】αターン周回走行パターンによる自動走行を示す図である。
【
図6】Uターン周回走行パターンによる自動走行及び排出走行を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るコンバインの実施の形態について、図面に基づいて説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。なお、以下の説明では、矢印Fの方向を「機体前側」、矢印Bの方向を「機体後側」、矢印Uの方向を「上側」、矢印Dの方向を「下側」とする。左右を示す場合には、機体前側を向いた状態における右手側を「右」、左手側を「左」とする。
【0028】
〔コンバインの構成〕
図1に、コンバインの一例である自脱型のコンバインが示されている。このコンバイン1には、機体10と、クローラ式の走行装置11と、が備えられている。機体10の前部には、圃場の植立穀稈を刈り取って収穫する収穫部12が設けられている。
【0029】
機体10において収穫部12の後方に、運転部13が設けられている。運転部13は、機体10の前部における右側に位置する。運転部13の左方に、収穫部12により収穫された収穫物を搬送する搬送部14が設けられている。
【0030】
搬送部14の後方に、搬送部14により搬送された収穫物を脱穀処理する脱穀装置15が設けられている。脱穀装置15の後部に、排藁を切断処理する排藁処理装置16が設けられている。
【0031】
運転部13の後方且つ脱穀装置15の右方に、脱穀装置15により得られた穀粒を貯留する穀粒タンク17(「穀粒貯留部」の一例)が設けられている。
【0032】
穀粒タンク17の後方に、穀粒タンク17に貯留された穀粒を排出口18aから外部に排出する穀粒排出装置18が設けられている。穀粒排出装置18は、上下方向に延びる旋回軸芯周りで旋回可能である。
【0033】
運転部13の前部における左側部分には、衛星測位モジュール19が設けられている。衛星測位モジュール19は、人工衛星からのGNSS(Global Navigation Satellite System)の信号を受信して、受信した信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを生成する。GNSSとしては、GPS、QZSS、Galileo、GLONASS、BeiDou、等を利用可能である。
【0034】
運転部13には、管理端末21(
図7参照)が配置されている。管理端末21は、種々の情報を表示可能に構成されている。管理端末21が、コンバイン1の自動走行に関する種々の設定(後述する優先する走行パターンの設定など)の入力操作を受け付け可能に構成されてもよい。
【0035】
外部の通信ネットワークに接続可能な通信部23(
図7参照)が設けられている。通信部23は、当該通信ネットワークを通じて穀粒運搬車CVや外部のサーバ等と通信可能に構成されている。
【0036】
機体10の後部に、畦A(
図8)への接近を検出可能な検出装置24(
図7参照)が設けられている。検出装置24は、例えば、誘導型、静電容量型、超音波型、電磁波型、赤外線型、接触型の近接センサや、カメラ等である。
【0037】
コンバイン1は走行装置11により自走可能に構成されており、収穫部12によって圃場の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11により走行する収穫走行が可能なように構成されている。
【0038】
〔穀粒タンク〕
図2に示されるように、穀粒タンク17は、貯留量センサ17a、レベルセンサ17b、及び揺動部材17cを備えている。貯留量センサ17aは、穀粒タンク17の下に配置される。貯留量センサ17aは、穀粒タンク17から受ける荷重を検出することにより穀粒タンク17に貯留されている穀粒の量を検出する。レベルセンサ17bは、穀粒タンク17の内部の側壁に設けられている。レベルセンサ17bは、穀粒の接触を検知することにより、穀粒タンク17に貯留されている穀粒の量を検出する。揺動部材17cは、機体前後方向に沿って延びる板状の部材であって、穀粒タンク17の内部における底スクリュー18bの上方に配置されている。揺動部材17cは、モータ等のアクチュエータ(図示せず)により、機体前後方向に沿って延びる軸芯周りに揺動駆動される。穀粒タンク17において穀粒のブリッジが発生している場合に、揺動部材17cが揺動すると、ブリッジが解消されて穀粒の排出が適切に行われる状態となる。
【0039】
〔穀粒排出装置〕
図3に示されるように、穀粒排出装置18は、底スクリュー18b、縦送りスクリューコンベア18c、横送りスクリューコンベア18d、油圧シリンダ18e、旋回装置18f、センサ18g、及びカメラ18hを備えている。
【0040】
底スクリュー18bは、穀粒タンク17の底部に設けられ、穀粒タンク17に貯留された穀粒を縦送りスクリューコンベア18cへ送り出す。縦送りスクリューコンベア18cは、穀粒タンク17の後ろに設けられており、底スクリュー18bからの穀粒を横送りスクリューコンベア18dへ送り出す。横送りスクリューコンベア18dは、縦送りスクリューコンベア18cの上部から水平方向に延びて設けられており、縦送りスクリューコンベア18cからの穀粒を排出口18aから排出する。
【0041】
エンジンEの動力が、排出クラッチCを介して底スクリュー18bへ伝達され、底スクリュー18bから縦送りスクリューコンベア18cへ伝達され、縦送りスクリューコンベア18cから横送りスクリューコンベア18dへ伝達される。
【0042】
油圧シリンダ18eは、横送りスクリューコンベア18dを縦送りスクリューコンベア18cに対して上下揺動させる。旋回装置18fは、縦送りスクリューコンベア18cを縦軸芯周りに旋回させる。
【0043】
センサ18gは、穀粒排出装置18を通流する穀粒の流量を検出する。センサ18gは、横送りスクリューコンベア18dの先端部に設けられている。
【0044】
カメラ18hは、穀粒排出装置18から排出された穀粒を撮影する。カメラ18hは、排出口18aの近傍に設けられている。
【0045】
〔穀粒運搬車の構成〕
穀粒運搬車CVは、コンバイン1の穀粒排出装置18から排出された穀粒を受け取り及び貯留可能に構成されている。穀粒運搬車CVは、
図7に示されるように、制御装置90、衛星測位モジュール91、通信部92、及び貯留量センサ93を備えている。
【0046】
制御装置90は、穀粒の貯留量RA、穀粒の受入可能量MA1、及び受取位置RPをコンバイン1の制御装置80へ送信する。
【0047】
衛星測位モジュール91は、人工衛星からのGNSSの信号を受信して、受信した信号に基づいて、穀粒運搬車CVの自車位置を示す測位データを生成する。
【0048】
通信部92は、外部の通信ネットワークに接続可能であり、当該通信ネットワークを通じてコンバイン1や外部のサーバ等と通信可能に構成されている。
【0049】
貯留量センサ93は、穀粒運搬車CVに貯留された穀粒の貯留量RAを検出する。貯留量センサ93は、例えば、重量センサやレベルセンサである。
【0050】
穀粒運搬車CVは、穀粒を乾燥装置まで運搬し、穀粒を乾燥装置へ投入する。乾燥装置は、コンバイン1から排出された穀粒を乾燥する装置である。
図7に示されるように、乾燥装置は、制御装置100及び通信部102を備えている。制御装置100は、穀粒の受入可能量MA2をコンバイン1の制御装置80へ送信する。通信部102は、外部の通信ネットワークに接続可能であり、当該通信ネットワークを通じてコンバイン1や外部のサーバ等と通信可能に構成されている。
【0051】
〔コンバインによる収穫作業〕
自脱型のコンバイン1による圃場での収穫作業について、
図4~6を参照しながら説明する。本実施形態では、
図2に示されるように、圃場の外形が矩形である例が説明される。図示例では、圃場の長辺が東西方向に平行であり、圃場の短辺が南北方向であり、条方向が南北方向である。
【0052】
まず、
図4に示されるように、圃場における外周側の領域において圃場の境界線(圃場の外周)に沿って周回するように収穫走行が行われる(初期周回走行)。この初期周回走行によって既作業地となった領域は外周領域SA(
図5参照)として設定され、外周領域SAの内側の未作業地は作業対象領域CA(
図5参照)として設定される。外周領域SAの外縁Wは、初期周回走行が圃場の外周から離れず外周に沿って行われた場合には、圃場の外周にほぼ一致し、圃場の外周から離れた場所においては、圃場の外周から離れることになる。
【0053】
外周領域SAは、作業対象領域CAの植立穀稈の収穫を自動走行により行う際に、コンバイン1が方向転換(後述するターン走行)するためのスペースとして用いられる。また、外周領域SAは、穀粒の排出場所や、燃料の補給場所への移動を行うためのスペースとしても用いられる。
【0054】
初期周回走行は、外周領域SAの幅をある程度広く確保するために、2周~4周程度行われる。初期周回走行は、手動走行により行われてもよいし、自動走行により行われてもよい。初期周回走行は、作業対象領域CAの1辺(好ましくは対向する2辺)が条方向と平行になるように行われる。本実施形態では、作業対象領域CAが矩形であり、作業対象領域CAの対向する2つの短辺が条方向と平行である場合について説明する。
【0055】
初期周回走行に続いて、自動走行により作業対象領域CAの植立穀稈が収穫される。この自動走行においては、作業対象領域CAに設定された収穫走行経路Lを自動走行しながら植立穀稈を収穫する自動収穫走行と、1つの自動収穫走行と次の自動収穫走行との間に行われるターン走行とが繰り返し行われる。ターン走行は、2つの収穫走行経路Lの間を繋ぐターン走行経路Tの自動走行である。
【0056】
上述の自動収穫走行及びターン走行は、所定の走行パターンに沿って行われる。走行パターンとしては、
図5に示されるαターン周回走行パターンと、
図6に示されるUターン周回走行パターンと、が例示される。
【0057】
αターン周回走行パターン(
図5)は、矩形の作業対象領域CAの4つの辺に平行な収穫走行経路Lを順に走行し、ターン走行をαターン走行にて行う走行パターンである。αターン走行は、先の収穫走行経路Lの延びる方向に沿った前進と、旋回走行を含む後進走行と、次の収穫走行経路Lの延びる方向に沿った前進と、により実行される。
図5の例では、コンバイン1は、収穫走行経路L01、L02、L03、L04、及び、ターン走行経路T01、T02、T03を走行する。αターン周回走行パターンによる自動走行は、
図5に示されるように、渦巻き状の走行となる。
【0058】
Uターン周回走行パターン(
図6)は、矩形の領域の対向する2辺に平行な収穫走行経路Lを交互に外側から順に走行し、ターン走行をUターン走行にて行う走行パターンである。Uターン走行は、旋回走行を含む前進走行のみにより実行される。
図6の例では、コンバイン1は、収穫走行経路L05、L06、L07、L08、及び、ターン走行経路T04、T05、T06を走行する。Uターン周回走行パターンによる自動走行は、
図6に示されるように、αターン周回走行パターンと同様に渦巻き状の走行となる。
【0059】
本実施形態では、Uターン周回走行パターンで走行する収穫走行経路Lを、作業対象領域CAの条方向に平行な2辺に平行な経路とする。すなわち、Uターン周回走行パターンによる自動走行では、自動収穫走行は条方向に平行な経路においてのみ行われる。従って、自脱型コンバインであるコンバイン1において脱穀処理が適切に行われ好ましい。
【0060】
αターン周回走行パターンによる自動走行は、外周領域SAの幅が狭くてUターン周回走行パターンによる自動走行が実行し難い場合に、Uターン周回走行パターンに先立って行われる。外周領域SAの幅が十分に大きく、Uターン周回走行パターンによる自動走行が可能な場合には、αターン周回走行パターンによる自動走行は実行されなくてもよい。
【0061】
穀粒タンク17の穀粒の貯留量が大きくなると、
図6に示されるように、排出走行経路Xを自動走行する排出走行が実行されて、穀粒運搬車CVへの穀粒の排出が行われる。排出走行経路Xは、収穫走行を中断した収穫中断位置IPから、終端位置EDに至る走行経路である。終端位置EDは、受取位置RPに停車した穀粒運搬車CVの近傍に設定される。本実施形態では、排出走行経路Xは、準備経路Y、及び後進経路Zを含んでいる。準備経路Yは、収穫中断位置IPから後進経路Zの開始位置までの経路である。後進経路Zは、排出走行経路Xの終端部であって、圃場の外周と交差する方向に後進しながら受取位置RPへ近づき、終端位置EDに至る経路である。
【0062】
本実施形態では、穀粒排出装置18による穀粒運搬車CVへの穀粒の排出は、自動的に行われる。詳しくは、コンバイン1の制御装置80が穀粒排出装置18を制御して、穀粒排出装置18の排出口18aを穀粒運搬車CVの投入口99の上方に位置させ、穀粒排出装置18を作動させて穀粒を排出させる。穀粒の排出量が目標排出量に達すると、制御装置80は穀粒排出装置18を制御して穀粒の排出を停止させる。
【0063】
穀粒の排出の完了後、作業対象領域CAに未作業地が残っている場合、収穫作業が続行される。作業対象領域CAに未作業地が残っていない場合、収穫作業が終了する。
【0064】
排出走行は、
図6に示されるように、1つの収穫走行経路L上の自動走行が終了した後に実行されてもよいし、収穫走行経路L上の自動走行を中断して実行されてもよい。
【0065】
〔制御に関する構成〕
以下、
図7のブロック図を参照しながら、コンバイン1及び穀粒運搬車CVの制御に関する構成について説明する。コンバイン1の制御装置80は、自車位置算出部81、領域算出部82(「領域設定部」の一例)、経路算出部83(「走行経路生成部」の一例)、走行制御部84、排出タイミング決定部85、取得部86、及び排出制御部87を備えている。
【0066】
詳しくは、制御装置80は、いわゆるECUであり、上述の各機能部に対応するプログラムを記憶するメモリ(HDDや不揮発性RAMなど。図示省略)と、当該プログラムを実行するCPU(図示省略)と、を備えている。プログラムがCPUにより実行されることにより、各機能部の機能が実現される。穀粒運搬車CVの制御装置90についても同様である。制御装置80は、走行装置11、収穫部12、穀粒タンク17、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール19、管理端末21、通信部23、排出クラッチC、及びエンジンEと接続され、これらを制御可能に構成されている。
【0067】
自車位置算出部81は、衛星測位モジュール19が生成した測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。
【0068】
領域算出部82は、自車位置算出部81が算出したコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、外周領域SA及び作業対象領域CAを算出する。具体的には、領域算出部82は、自車位置算出部81が算出したコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、圃場の外周側における周回走行(初期周回走行)でのコンバイン1の走行軌跡を算出する。そして、領域算出部82は、算出されたコンバイン1の走行軌跡に基づいて、コンバイン1が植立穀稈を収穫しながら走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして設定する。すなわち、領域算出部82は、周回した作業地の外周側の領域を外周領域SAとして設定する。また、領域算出部82は、算出された外周領域SAよりも圃場内側の領域を作業対象領域CAとして設定する。
【0069】
例えば、
図4においては、圃場の外周側における周回走行(初期周回走行)においてコンバイン1が走行した経路が矢印で示されている。図示例では、コンバイン1は、3周の周回走行を行っている。そして、この初期周回走行が完了すると、圃場は
図5に示される状態となる。
【0070】
領域算出部82は、
図5に示されるように、コンバイン1が植立穀稈を収穫しながら走行した圃場の外周側の領域を外周領域SAとして算出し、算出された外周領域SAよりも圃場内側の領域を作業対象領域CAとして算出する。
【0071】
経路算出部83は、領域算出部82の算出結果に基づいて、作業対象領域CAの内側において、自動収穫走行のための収穫走行経路Lを算出する。本実施形態では、収穫走行経路Lは、作業対象領域CAの4つの辺に平行に延びる複数のメッシュ線(
図5)である。また、経路算出部83は、ターン走行(αターン走行、Uターン走行)のための、2つの収穫走行経路Lの間を繋ぐターン走行経路Tを算出する。
【0072】
また、経路算出部83は、取得部86が取得する受取位置RPに基づいて、排出走行経路Xを生成する。排出走行経路Xは、排出タイミング決定部85が決定した排出タイミングに走行される経路である。経路算出部83は、排出走行経路Xの終端部が、圃場の外周と交差する方向に後進しながら受取位置RPへ近づく経路(後進経路Z)となるように、排出走行経路Xを生成する。経路算出部83は、後進経路Zの延長線上に受取位置RPが位置するように、排出走行経路Xを生成する。
【0073】
具体的には、まず経路算出部83は、外周領域SAの内部において受取位置RPに最も近く、コンバイン1が停車可能な位置を、終端位置EDとして設定する。
図6の図示例では、受取位置RPは外周領域SAの外縁Wの近傍に位置し、外縁Wは南北方向に延びている。経路算出部83は、終端位置EDを、南北方向については緯度が受取位置RPと等しく、東西方向については外周領域SAの内部において外縁Wに最も近くなるように、設定する。そして経路算出部83は、終端位置EDから外周領域SAの外縁Wと直交する方向(図示例では東西方向)に延びる経路を算出し、後進経路Zとする。そうすると、後進経路Zの延長線上に受取位置RPが位置することになる。
【0074】
経路算出部83は、排出タイミング決定部85が設定する収穫中断位置IPから、後進で後進経路Zに進入可能となる経路を算出し、準備経路Yとする。最終的に、経路算出部83は、準備経路Yと後進経路Zの組を、排出走行経路Xとして算出する。準備経路Yは、収穫中断位置IPから前進しつつ左旋回し、コンバイン1が西を向いた状態にて停車位置SPで停車する走行経路である。後進経路Zは、コンバイン1が西を向いた状態にて停車位置SPから後進し、コンバイン1が西を向いた状態にて終端位置EDで停車する走行経路である。
【0075】
走行制御部84は、走行装置11及び収穫部12を制御可能に構成されている。走行制御部84は、経路算出部83が算出した走行経路(収穫走行経路L、ターン走行経路T、排出走行経路X等)の内から次に走行する走行経路を設定する。走行制御部84は、走行経路の設定を、上述の走行パターン(αターン周回走行パターン、Uターン周回走行パターン)や、排出タイミング決定部85が設定する排出タイミング(後述)に基づいて実行する。そして走行制御部84は、自車位置算出部81が算出したコンバイン1の位置座標と、設定した走行経路と、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。具体的には、走行制御部84は、設定した走行経路に沿ってコンバイン1が走行するように、コンバイン1の走行装置11を制御する。そして走行制御部84は、コンバイン1が収穫走行経路Lを走行する時に収穫部12を動作させる。
【0076】
排出タイミング決定部85は、穀粒タンク17に貯留された穀粒を排出するタイミングである排出タイミングを決定する。具体的には、排出タイミング決定部85は、貯留量センサ17aが検出した穀粒タンク17に貯留されている穀粒の量に基づいて、穀粒の排出タイミングを設定する。そして、設定した排出タイミングに基づいて、収穫中断位置IPを設定する。
【0077】
例えば、排出タイミング決定部85は、穀粒タンク17に貯留されている穀粒の量が所定の閾値を超えたことに応じて、排出タイミングを「現在実行している自動収穫走行の終了後」に設定する。この場合、排出タイミング決定部85は、現在走行している収穫走行経路L(
図6の例では収穫走行経路L08)の終点を収穫中断位置IPとして設定する。
【0078】
排出タイミング決定部85が、自車位置算出部81が算出したコンバイン1の位置座標や、走行制御部84が設定した走行経路、取得部86が取得した受取位置RP等に基づいて排出タイミングを設定してもよい。例えば、排出タイミング決定部85が、現在走行している収穫走行経路Lの終点が受取位置RPから遠い場合に、排出タイミングを「次に実行する自動収穫走行の終了後」に設定してもよい。この場合、排出タイミング決定部85は、次に走行する収穫走行経路Lの終点を収穫中断位置IPとして設定する。
【0079】
例えば、現在のコンバイン1の位置と受取位置RPとの間の距離が、現在走行している収穫走行経路Lの終点と受取位置RPとの間の距離よりも小さい場合に、排出タイミング決定部85が排出タイミングを「現在」に設定してもよい。この場合、排出タイミング決定部85は、現在のコンバイン1の位置を、収穫中断位置IPに設定する。
【0080】
排出タイミング決定部85が、運転部13に配置された操作ボタン(図示なし)や管理端末21を通じたオペレータからの人為操作に応じて排出タイミングを決定するように構成されてもよい。
【0081】
排出タイミング決定部85が排出タイミングを設定したことが、管理端末21を通じてオペレータに報知されてもよい。
【0082】
取得部86は、穀粒排出装置18から排出される穀粒を受け取る際の穀粒運搬車CVが停車する位置である受取位置RPを取得する。本実施形態では、取得部86は、通信部92を通じて穀粒運搬車CVの制御装置90から受取位置RPを取得する。すなわち、取得部86が取得する受取位置RPは、穀粒運搬車CVに搭載された衛星測位モジュール91からの測位データに基づいて算出された穀粒運搬車CVの位置である。取得部86による受取位置RPの取得は、定期的且つ自動的に行われてもよいし、排出タイミング決定部85が排出タイミングを決定したことに応じて行われてもよいし、受動的(通信部23による受信の待機)に行われてもよい。
【0083】
排出制御部87は、受取位置RPに基づいて、穀粒排出装置18の動作を制御して、穀粒排出装置18の排出口18aを穀粒運搬車CVへの穀粒の投入が可能な位置へ移動させる。詳しくは、排出制御部87は、穀粒運搬車CVの穀粒の投入口99(例えば、コンテナやタンク等の開口部、
図8)の位置を受取位置RPに基づいて特定し、穀粒排出装置18を旋回させて、穀粒排出装置18の排出口18aを当該投入口の上方に位置させる。そして排出制御部87は、穀粒排出装置18を作動させて、穀粒運搬車CVへ穀粒を排出させる。
【0084】
本実施形態では、排出制御部87は、検出部87a、決定部87b、停止制御部87c、減少量検出部87d、判定部87e、及び解除動作部87fを備えている。
【0085】
検出部87aは、穀粒排出装置18により排出される穀粒の排出量を検出する。詳しくは、検出部87aは、底スクリュー18bの回転数に基づいて排出量を検出する。ここで、スクリューが1回転するときに搬送・排出される穀粒の量は一定である。本実施形態では、検出部87aは、底スクリュー18bの回転数に所定の係数を乗じて、穀粒の排出量を算出する。底スクリュー18bの回転数は、底スクリュー18bの回転速度に時間(底スクリュー18bが回転した時間)を乗じて算出される。底スクリュー18bの回転速度は、エンジンEの回転速度に基づいて算出される。穀粒排出装置18に、底スクリュー18bの回転数を検出するセンサが設けられ、検出部87aが当該センサの出力に基づいて底スクリュー18bの回転数を検出してもよい。
【0086】
また検出部87aは、穀粒排出装置18に設けられたセンサ18gの出力に基づいて穀粒の排出量を検出する。詳しくは、検出部87aは、穀粒排出装置18の作動中に、センサ18gの出力を積算し、積算値に所定の係数を乗じて排出量を算出する。
【0087】
また検出部87aは、穀粒排出装置18に設けられたカメラ18hが生成する撮影画像に基づいて穀粒の排出量を検出する。詳しくは、検出部87aは、カメラ18hが生成する撮影画像を解析して排出口18aからの穀粒の流量を経時的に推測し、推測した流量を積算して排出量を算出する。
【0088】
決定部87bは、穀粒排出装置18から排出する穀粒の目標排出量を決定する。本実施形態では、排出された穀粒を貯留する穀粒運搬車CVの受入可能量MA1を穀粒運搬車CVから取得し、取得した受入可能量MA1に基づいて目標排出量を決定する。受入可能量MA1は、穀粒運搬車CVの制御装置90からコンバイン1の制御装置80へ送信される。また、決定部87bは、排出された穀粒を乾燥する乾燥装置の受入可能量MA2を取得し、取得した受入可能量MA2に基づいて目標排出量を決定する。受入可能量MA2は、乾燥装置の制御装置100からコンバイン1の制御装置80へ送信される。決定部87bは、穀粒タンク17の穀粒の貯留量、穀粒運搬車CVの受入可能量MA1、及び乾燥装置の受入可能量MA2を超えない量(これらの量よりも少ない量)を目標排出量として決定する。
【0089】
停止制御部87cは、検出部87aにより検出された排出量が決定部87bにより決定された目標排出量に達したことに応じて穀粒排出装置18を制御して穀粒の排出を停止させる。詳しくは、停止制御部87cは、検出部87aが経時的に検出する排出量と、決定部87bが決定した目標排出量とを経時的に比較し、排出量が目標排出量に達したことに応じて、穀粒排出装置18の動作を停止させる。
【0090】
また停止制御部87cは、排出された穀粒を貯留する穀粒運搬車CVの貯留量RAを取得すると共に、取得した貯留量RAに基づいて穀粒排出装置18の排出速度を変更する。例えば、停止制御部87cは、貯留量RAが所定の閾値よりも小さい場合に穀粒排出装置18の排出速度を最大速度とし、貯留量RAが所定の閾値を超えたことに応じて穀粒排出装置18の排出速度を最大速度よりも小さい終了速度とする。停止制御部87cは、エンジンEの回転数を変更することにより、穀粒排出装置18の排出速度を変更する。
【0091】
減少量検出部87dは、穀粒タンク17に貯留された穀粒の減少量を検出する。本実施形態では、減少量検出部87dは、穀粒タンク17の貯留量センサ17a及びレベルセンサ17bの出力に基づいて、減少量を検出する。
【0092】
判定部87eは、減少量検出部87dが検出した減少量と、検出部87aが検出した排出量と、に基づいて、穀粒タンク17においてブリッジが発生しているか否かを判定する。例えば、判定部87eは、減少量が排出量よりも小さく、減少量と排出量との差が所定の閾値よりも大きい場合に、ブリッジが発生していると判定する。特に、検出部87aが底スクリュー18bの回転数のみ基づいて排出量を検出している形態においては、ブリッジが発生した場合には穀粒タンク17の穀粒の貯留量は減少しないが、底スクリュー18bの回転は継続し、検出部87aによる排出量の算出値は増加し続ける。判定部87eが、減少量と排出量との差を算出し、所定の閾値と比較することにより、ブリッジが発生しているか否かを判定することができる。
【0093】
解除動作部87fは、ブリッジが発生していると判定部87eが判定したことに応じて、穀粒タンク17の揺動部材17cを揺動させる。例えば、解除動作部87fは、揺動部材17cのアクチュエータを所定の時間作動させ、停止させる。
【0094】
穀粒運搬車CVの制御装置90は、衛星測位モジュール91、通信部92、及び貯留量センサ93と接続され、これらを制御可能に構成されている。制御装置90は、自車位置算出部94、受入可能量算出部95、貯留量算出部96、及び送信制御部97を備えている。
【0095】
自車位置算出部94は、衛星測位モジュール91が生成した測位データに基づいて、穀粒運搬車CVの位置座標を算出する。
【0096】
受入可能量算出部95は、穀粒運搬車CVが受入可能な穀粒の量である受入可能量MA1を算出する。例えば、受入可能量算出部95は、穀粒運搬車CVが穀粒を未だ受け入れておらずタンクが空である場合には、穀粒運搬車CVの最大容量を受入可能量MA1として算出する。例えば、受入可能量算出部95は、貯留量算出部96が算出した現在の穀粒の貯留量RAを最大容量から減算した値を、受入可能量MA1として算出する。
【0097】
貯留量算出部96は、貯留量センサ93の出力に基づいて、現在の穀粒運搬車CVの穀粒貯留量である貯留量RAを算出する。
【0098】
送信制御部97は、通信部92を介して、コンバイン1から穀粒を受け取る際に穀粒運搬車CVが停車する位置である受取位置RPを送信する。例えば、送信制御部97は、圃場に到着して停車した旨の運転者からの操作入力に応じて、自車位置算出部94が算出した現在の穀粒運搬車CVの位置座標を、コンバイン1へ送信する。
【0099】
また、送信制御部97は、通信部92を介して、受入可能量MA1を送信する。例えば、送信制御部97は、圃場に到着して停車した旨の運転者からの操作入力に応じて、受取位置RPと共に受入可能量MA1をコンバイン1へ送信する。
【0100】
また、送信制御部97は、通信部92を介して、貯留量RAを送信する。例えば、送信制御部97は、コンバイン1の穀粒排出装置18から穀粒を受け入れている間、経時的に貯留量RAをコンバイン1へ送信する。
【0101】
送信制御部97による受取位置RP、受入可能量MA1、貯留量RAの送信は、コンバイン1の制御装置80からの送信要求に応じて行われてもよい。
【0102】
乾燥装置の制御装置100は、通信部102と接続され、これを制御可能に構成されている。制御装置100は、受入可能量算出部103、及び送信制御部104を備えている。
【0103】
受入可能量算出部103は、乾燥装置が受入可能な穀粒の量である受入可能量MA2を算出する。例えば、受入可能量算出部103は、乾燥装置が穀粒を未だ受け入れておらず装置が空である場合には、乾燥装置の最大容量を受入可能量MA2として算出する。例えば、受入可能量算出部103は、乾燥装置の最大容量から既に受け入れた量を減算した値を、受入可能量MA2として算出する。
【0104】
送信制御部97は、通信部92を介して、受入可能量MA2を送信する。例えば、送信制御部97は、コンバイン1からの送信要求に応じて、受入可能量算出部103が算出した現在の乾燥装置の受入可能量MA2を、コンバイン1へ送信する。
【0105】
以上の通り構成されたコンバイン1及び穀粒運搬車CVは、次のように動作する。穀粒運搬車CVの送信制御部97が受取位置RPを送信し、コンバイン1の取得部86が受取位置RPを取得する。コンバイン1の排出タイミング決定部85が、排出タイミングを決定する。排出タイミングの決定は、受取位置RPの取得の前でもよいし後でもよい。経路算出部83が、排出タイミング及び受取位置RPに基づいて排出走行経路Xを算出する。走行制御部84が、排出タイミングに基づいて、排出走行経路Xを次に走行する走行経路として設定する。走行制御部84が、排出走行経路Xに沿ってコンバイン1を自動走行させる。そしてコンバイン1は、後進経路Zを後進しながら走行し、終端位置EDに停車する。
【0106】
終端位置EDが穀粒運搬車CVに十分に近く、終端位置EDに停車したコンバイン1から穀粒運搬車CVへの穀粒の排出が可能な場合には、排出制御部87が、穀粒排出装置18の排出口18aを穀粒運搬車CVの投入口99の上方に位置させ、穀粒排出装置18を作動させて穀粒の排出を開始する。コンバイン1の制御装置80の決定部87bが、穀粒運搬車CVの受入可能量MA1を穀粒運搬車CVから取得し、取得した受入可能量MA1に基づいて目標排出量を決定する。検出部87aが、穀粒排出装置18により排出される穀粒の排出量を検出する。そして停止制御部87cが、検出部87aにより検出された排出量が決定部87bにより決定された目標排出量に達したことに応じて穀粒排出装置18を制御して穀粒の排出を停止させる。
【0107】
終端位置EDが穀粒運搬車CVから遠く、終端位置EDに停車したコンバイン1から穀粒運搬車CVへの穀粒の排出が不可能な場合には、コンバイン1を終端位置EDから更に後進させて穀粒運搬車CVへ接近する必要がある。この後進走行は、オペレータにより手動で行われてもよいし、以下述べるように自動走行により行われてもよい。
【0108】
走行制御部84は、
図6に示されるように、検出装置24からの出力に基づいて、畦Aに接触しないように、領域算出部82が設定した外周領域SAを超えてコンバイン1の機体10を後進させる(畦検出走行)。例えば、走行制御部84は、排出停車位置DPを設定し、排出停車位置DPに到達するか検出装置24が畦Aを検出するまで、コンバイン1を後進させる。排出停車位置DPは、停車したコンバイン1から穀粒運搬車CVへの穀粒の排出が可能な停車位置であって、後進経路Zの終端位置EDと穀粒運搬車CVの受取位置RPとの間の停車位置であり、外周領域SAの外の停車位置である。コンバイン1が排出停車位置DPへ到達した場合、排出制御部87は、穀粒排出装置18の排出口18aを穀粒運搬車CVの投入口99の上方に位置させ、穀粒排出装置18を作動させ穀粒を排出させる。コンバイン1が排出停車位置DPへ到達する前に検出装置24が畦Aを検出した場合には、オペレータが手動操作により、コンバイン1の後進による穀粒運搬車CVへの接近、及び穀粒の排出作業を行う。いずれの場合であっても、穀粒排出装置18の停止の制御は、検出部87a、決定部87b、及び停止制御部87cにより自動的に行われる。
【0109】
〔他の実施形態〕
(1)穀粒排出装置18の作動中に、コンバイン1の制御装置80が、エンジンEを所定の回転数に制御してもよい。この場合、穀粒排出装置18の作動中における底スクリュー18bが所定の回転速度にて一定に保たれる。
【0110】
(2)コンバイン1に報知部が備えられ、判定部87eがブリッジの発生を判定したことに応じて、制御装置80が報知部を作動させてもよい。報知部は例えば、ブザーやランプ、音声発生装置、画像表示装置等である。判定部87eがブリッジの発生を判定したことに応じて、排出制御部87が穀粒排出装置18の作動を停止させてもよい。
【0111】
(3)後進経路Zの形態は、実施形態で説明した例に限られない。例えば、後進経路Zが外周領域SAの外縁Wと直交せず、90度未満の角度で交差していてもよい。後進経路Zが直線でなく、曲がっていてもよい。
【0112】
(4)準備経路Yの形態は、実施形態で説明した例に限られない。例えば、準備経路Yに複数の旋回経路や、1つ又は複数の直進経路(前進や後進)が含まれてもよい。
【0113】
(5)コンバイン1の取得部86による受取位置RPの取得の形態は、実施形態で説明した例に限られない。例えば、取得部86が、オペレータの携帯情報端末や、農業情報システム等を介して、穀粒運搬車CVの制御装置90から送信された受取位置RPを取得してもよい。受取位置RPが、穀粒運搬車CVに搭載された衛星測位モジュール91からの測位データに基づいて算出されたものでなくてもよい。例えば、受取位置RPが、オペレータや作業管理者、農業情報システム等により決定されコンバイン1の制御装置80へ入力されたものでもよい。
【0114】
(6)コンバイン1の決定部87bによる受入可能量MA1、MA2の取得の形態は、実施形態で説明した例に限られない。例えば、決定部87bが、オペレータの携帯情報端末や、農業情報システム等を介して、穀粒運搬車CVの制御装置90から送信された受入可能量MA1、乾燥装置の制御装置100から送信された受入可能量MA2を取得してもよい。受入可能量MA1が、穀粒運搬車CVの制御装置90により算出されたものでなくてもよい。受入可能量MA2が、乾燥装置の制御装置100により算出されたものでなくてもよい。例えば、受入可能量MA1、MA2が、オペレータや作業管理者、農業情報システム等により決定されコンバイン1の制御装置80へ入力されたものでもよい。
【0115】
(7)コンバイン1の制御装置80の各機能部が、コンバイン1の外部、例えば管理コンピュータ等に設けられてもよい。例えば、領域算出部82や経路算出部83、排出タイミング決定部85、取得部86、排出制御部87、検出部87a、決定部87b、停止制御部87c、減少量検出部87d、判定部87e、及び解除動作部87fのうちの1つ又は複数が、コンバイン1の外部のコンピュータに設けられてもよい。コンバイン1及び外部のコンピュータ、又はコンバイン1、穀粒運搬車CV、及び外部のコンピュータにより、システムが構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、自脱型コンバインの他、普通型コンバインにも適用可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 :コンバイン
18 :穀粒排出装置
18b :底スクリュー
18g :センサ
18h :カメラ
87a :検出部
87b :決定部
87c :停止制御部
87d :減少量検出部
87e :判定部
CV :穀粒運搬車
MA1 :受入可能量
MA2 :受入可能量
RA :貯留量