(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】吊り下げ保持具
(51)【国際特許分類】
B66C 1/12 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
B66C1/12 M
(21)【出願番号】P 2020122869
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】瀧井 政嗣
(72)【発明者】
【氏名】三橋 友行
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-087673(JP,U)
【文献】特開昭62-269890(JP,A)
【文献】実開平02-015985(JP,U)
【文献】実開平03-125780(JP,U)
【文献】特開2002-154783(JP,A)
【文献】米国特許第06565136(US,B1)
【文献】実開昭56-159553(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載物を載置した直方体形状のパレットを搬送装置により搬送する際に、前記パレットを吊り下げ保持する吊り下げ保持具であって、
前記パレットを下方から支持する下部支持体と、
前記積載物よりも上方に位置し、前記搬送装置に保持される上部支持体と、
鉛直方向に沿って延び、前記上部支持
体と前記下部支持
体とを連結する複数の連結部と、
を備え
、
前記下部支持体は、
一方向に延びた第1長尺部材と、
前記一方向に延び、前記第1長尺部材に平行配置された第2長尺部材と、
前記一方向の直交方向に延び、前記第1長尺部材及び前記第2長尺部材それぞれの端部を接続する第3長尺部材と、
を備え、
前記パレットを支持した状態において、前記第1長尺部材及び前記第2長尺部材のそれぞれの両端部は、前記鉛直方向から視て、前記パレットから突出し、かつ、突出した部分に、前記複数の連結部が接続される複数の下側接続部を有し、
前記上部支持体は、
前記下側接続部と前記鉛直方向に対向する位置に、前記複数の連結部が接続される複数の上側接続部を有している、
吊り下げ保持具。
【請求項2】
前記下側接続部は、貫通孔を有し、
前記連結部は、両端部に前記下側接続部及び前記上側接続部に接続可能なフックを有する、
請求項1に記載の吊り下げ保持具。
【請求項3】
前記第3長尺部材は、手持ち部を有する、
請求項1又は2に記載の吊り下げ保持具。
【請求項4】
前記複数の下側接続部は、前記第1長尺部材の両端部及び前記第2長尺部材の両端部それぞれに設けられ、
前記第1長尺部材に設けられる下側接続部と、前記第2長尺部材に設けられる下側接続部とは、前記直交方向に対向している、
請求項
1から請求項3のいずれか一つに記載の吊り下げ保持具。
【請求項5】
前記上部支持体は、
前記複数の上側接続部と異なる位置に設けられ、前記複数の連結部が接続可能な複数の予備接続部、
をさらに備える、
請求項
1から請求項4のいずれか一つに記載の吊り下げ保持具。
【請求項6】
前記上部支持体は、前記鉛直方向から視て矩形状であって、四隅に前記搬送装置に接続される四つの装置側接続部を備えている、
請求項1から請求項
5のいずれか一つに記載の吊り下げ保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り下げ保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
大型ブロックなどは、パレットに積載された状態で、フォークリフトで持ち上げられたり、クレーンによって吊り下げられたりして、搬送されることがある。この場合、パレットに積載された積載物は露出した状態であることが多く、搬送時に積載物に疵つけないことが望まれる。
【0003】
特許文献1には、荷物を傷めることなく、パレットを吊り上げることができるパレット吊り具が開示されている。特許文献1に記載のパレット吊り具は、鋼製の長尺体をパレット下の空隙に挿通して、パレット両側から突出させた両端に紐体を設けた構成としてある。紐体をフックで吊り上げることで、パレットが吊り上がるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の場合、紐体をフックで吊り上げると、その紐体は、長尺体の両端から、パレット中央の上方に向かって、鉛直方向に傾斜して延びた状態となる(特許文献1の
図2参照)。このため、紐体は荷物の近傍を通過することになるため、嵩高い荷物の場合、紐体が荷物上部の角に当たり、荷物に疵がつくおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、積載した積載物に疵をつけずにパレットを吊り下げることができる吊り下げ保持具、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吊り下げ保持具は、
積載物を載置した直方体形状のパレットを、搬送装置により搬送する際に、前記パレットを吊り下げ保持する吊り下げ保持具であって、
前記パレットを下方から支持する下部支持体と、
前記積載物よりも上方に位置し、前記搬送装置に保持される上部支持体と、
鉛直方向に沿って延び、前記上部支持部と前記下部支持部とを連結する複数の連結部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パレットに積載した積載物を疵つけずに、パレットを吊り下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、使用時における吊り下げ保持具の斜視図である。
【
図3】
図3は、下部支持体を前方から視た図である。
【
図4】
図4は、下部支持体を側方から視た図である。
【
図6】
図6は、上部支持体を前方から視た図である。
【
図7】
図7は、上部支持体を側方から視た図である。
【
図8】
図8は、別の例の上部支持体の平面図である。
【
図9】
図9は、別の例の上部支持体を側方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、使用時における吊り下げ保持具1の斜視図である。
【0011】
吊り下げ保持具1は、積載物110を載置したパレット100をクレーンなどの搬送装置(不図示)で吊り下げて、搬送することができるようにするための保持具である。積載物110の例としては、例えばセラミック、又はコンクリートなどのブロックが挙げられる。
【0012】
まず、パレット100について説明する。パレット100は直方体形状である。パレット100には、積載物110の載置面に沿って貫通する空隙101、102が設けられている。空隙101、102は、互いに平行に設けられている。なお、パレット100は、吊り下げ保持具1の専用パレットではない。パレット100は、例えば、フォークリフトの爪を差し込むことができる周知のパレットなど、後述の下部支持体2により下方からの支持が可能なパレットであればよい。
【0013】
吊り下げ保持具1は、下部支持体2と、上部支持体3と、複数の連結部4と、を備えている。
【0014】
下部支持体2はパレット100を下方から支持する。下部支持体2の具体的構成について、
図1~
図4を参照して説明する。
図2は、下部支持体2の平面図である。
図3は、下部支持体2を前方から視た図である。
図4は、下部支持体2を側方から視た図である。なお、
図2は、吊り下げ保持具1の使用状態において、鉛直方向の上方から下部支持体2を視た図であって、パレット100を破線で示している。
【0015】
下部支持体2は、例えば鋼材により形成されている。下部支持体2は、第1長尺部材21と、第2長尺部材22と、第3長尺部材23とを有している。
【0016】
第1長尺部材21は、一方向(以下、長さ方向と言う)に延びた部材である。第2長尺部材22は、長さ方向に延び、第1長尺部材21に平行配置された部材である。第3長尺部材23は、長さ方向の直交方向(以下、幅方向と言う)に延び、第1長尺部材21及び第2長尺部材22それぞれの一端部を接続する部材である。第1長尺部材21、第2長尺部材22及び第3長尺部材23は、円柱状であってもよいし、角柱状であってもよいし、断面がH形、溝形であってもよい。また、第1長尺部材21、第2長尺部材22及び第3長尺部材23は、中空であってもよい。
【0017】
第1長尺部材21は、パレット100の空隙101に挿入される。第2長尺部材22は、パレット100の空隙102に挿入される。この状態において、第1長尺部材21及び第2長尺部材22は、鉛直方向から視て、パレット100の対向する二辺それぞれから突出する長さを有している。
【0018】
なお、
図2では、第1長尺部材21及び第2長尺部材22の長さは同じであるが、第1長尺部材21、第2長尺部材22及び第3長尺部材23の長さは、特に限定されない。第1長尺部材21及び第2長尺部材22は、長さを同じとして、第3長尺部材23よりも長くしてもよいし、短くしてもよい。また、第1長尺部材21、第2長尺部材22及び第3長尺部材23それぞれの長さは、異なっていてもよいし、すべて同じであってもよい。
【0019】
パレット100から突出した、第1長尺部材21及び第2長尺部材22それぞれの両端部には、下側接続部211、212、221、222が設けられている。下側接続部211、212、221、222には、後述の連結部4が接続される。下側接続部211、212、221、222それぞれの構成は、連結部4が接続できる構成であればよく、特に限定されない。例えば連結部4がワイヤロープであり、その先端にフックが設けられている場合、下側接続部211、212、221、222は、フックを引っ掛けられる構成となる。
【0020】
下側接続部211は、第3長尺部材23が接続された第1長尺部材21の一方端部に設けられて、下側接続部212は、第1長尺部材21の他方端部に設けられている。下側接続部221は、第3長尺部材23が接続された第2長尺部材22の一方端部に設けられ、下側接続部222は、第2長尺部材22の他方端部に設けられている。幅方向において、下側接続部211と下側接続部221とが対向し、下側接続部212と下側接続部222とが対向している。
【0021】
第3長尺部材23には、幅方向に沿って手持ち部231、232が設けられている。手持ち部231、232は、第1長尺部材21及び第2長尺部材22を、パレット100の空隙101、102に対して抜き差しする際に、作業者により握られる部材である。手持ち部231、232を設けることで、作業者は、下部支持体2をパレット100の空隙101、102に対して出し入れし易くなる。なお、手持ち部231、232が設けられる位置は、作業者が、下部支持体2を空隙101、102に抜き差しする際に握りやすい位置であればよい。
【0022】
上部支持体3は、例えば鋼材により形成される。上部支持体3は、パレット100に積載される積載物110よりも上方の位置で、複数の連結部4を介して下部支持体2を保持する。また、上部支持体3は、ワイヤ120を介して搬送装置に保持される。上部支持体3について、
図1、
図5、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0023】
図5は、上部支持体3の平面図である。
図6は、上部支持体3を前方から視た図である。
図7は、上部支持体3を側方から視た図である。なお、
図5は、吊り下げ保持具1の使用状態において、鉛直方向の上方から上部支持体3を視た図である。
【0024】
上部支持体3は、外枠31と、内枠32とを有している。外枠31は、鉛直方向からの平面視で矩形状であって、下部支持体2とほぼ同じ大きさである。内枠32は、外枠31の内側に設けられた十字状の枠である。
【0025】
下部支持体2と対向する上部支持体3の下面であって、外枠31の四隅には、四つの上側接続部311、312、313、314が設けられている。上側接続部311、312、313、314には、後述する連結部4が接続される。上側接続部311、312、313、314それぞれの構成は、下側接続部211、212、221、222と同様、特に限定されない。
【0026】
吊り下げ保持具1の使用状態では、上側接続部311は下側接続部211と鉛直方向に対向し、上側接続部312は下側接続部212と鉛直方向に対向する。また、上側接続部313は下側接続部221と鉛直方向に対向し、上側接続部314は下側接続部222と鉛直方向に対向する。上側接続部311、312、313、314と、下側接続部211、212、221、222とが鉛直方向に対向することで、連結部4は鉛直方向に延びた状態となる。
【0027】
なお、本実施形態では、上側接続部311、312、313、314は、外枠31の四隅に設けられているが、設ける位置は外枠の四隅に限定されない。吊り下げ保持具1の使用状態において、上側接続部311、312、313、314は、下側接続部211、212、221、222と鉛直方向に対向する位置に設けられていればよい。
【0028】
搬送装置側となる上部支持体3の上面であって、外枠31の四隅には、四つの装置側接続部321、322、323、324が設けられている。四つの装置側接続部321、322、323、324には、搬送装置と接続するワイヤ120が接続される。装置側接続部321、322、323、324の構成は、下側接続部211、212、221、222と同様、特に限定されない。四つの装置側接続部321、322、323、324を、矩形状の上部支持体3の四隅に設けることで、搬送装置により、上部支持体3をバランスよく吊り下げることができる。
【0029】
四つの装置側接続部321、322、323、324は、鉛直方向において、上側接続部311、312、313、314と重なる位置に設けられることが好ましい。この場合、下側接続部211、212、221、222、上側接続部311、312、313、314、及び、装置側接続部321、322、323、324は、鉛直方向に重なるようになる。この構成となることで、吊り下げ保持具1を搬送装置で吊り下げた際に、吊り下げ保持具1をバランスよく安定して吊り下げることができる。なお、装置側接続部は、内枠32の中央部に設けられていてもよいし、吊り下げ保持具1をバランスよく搬送装置で吊り下げられることができれば、装置側接続部の設置位置、及び、設置数は特に限定されない。
【0030】
四つの連結部4は、下部支持体2と、上部支持体3とを連結する、例えばステンレス鋼のワイヤロープ、ワイヤチェーンなどであり、両端にフックが設けられている。四つの連結部4それぞれは、上側接続部311と下側接続部211とを連結し、上側接続部312と下側接続部212とを接続し、上側接続部313と下側接続部221とを接続し、上側接続部314と下側接続部222とを接続する。下側接続部211、212、221、222と、上側接続部311、312、313、314とは、鉛直方向において対向しているため、連結部4は、鉛直方向に沿って延びた状態となる。なお、連結部4は、棒状の金属部材であってもよい。
【0031】
連結部4の長さは、適宜変更可能であるが、吊り下げ保持具1の使用状態において、上部支持体3がパレット100に載置される積載物110よりも高く位置すればよく、連結部4の長さは、その状態に合わせて適宜変更すればよい。連結部4がワイヤなどの紐体である場合には、連結部4は、ワイヤの長さを調整するターンバックルなどの調整金具を備えていてもよい。
【0032】
以上のように構成された吊り下げ保持具1は、各部材がパレット100に載置された積載物110に干渉しない構成である。このため、パレット100を吊り下げ搬送する際、パレット100に載置した積載物110が嵩高くても、積載物110を疵つけずに、パレット100を吊り下げ搬送することができる。
【0033】
また、吊り下げ保持具1を用いたパレット100の吊り下げは、吊り下げ保持具1を用いずワイヤなどの紐体でパレット100を吊り下げる場合と比べて、作業効率は向上する。例えば、パレット100を吊り下げ搬送の準備を行う際に、下部支持体2の第1長尺部材21及び第2長尺部材22をパレット100の空隙101、102に挿入する作業は、紐体を空隙101、102に通す場合と比べて簡単であるため、その作業効率は向上する。
【0034】
なお、吊り下げ保持具1をパレット100に取り付ける手順は、例えば、下部支持体2の第1長尺部材21及び第2長尺部材22をパレット100の空隙101、102に挿入する。また、上部支持体3を搬送装置で吊り下げる。そして、下部支持体2と上部支持体3とを、連結部4で接続する。この手順により、吊り下げ保持具1でパレット100を保持でき、パレット100の吊り下げ搬送が可能となる。
【0035】
(変形例)
上述の実施形態では、下部支持体2の下側接続部211、212、221、222と、上部支持体3の上側接続部311、312、313、314とは、一対一の関係としているが、上部支持体3は、さらに別の上側接続部を備えていてもよい。
【0036】
図8は、別の例の上部支持体3の平面図である。
図9は、別の例の上部支持体3を側方から視た図である。なお、
図8は、吊り下げ保持具1の使用状態において、鉛直方向の下方から上部支持体3を視た図である。
【0037】
上部支持体3は、四つの予備接続部331、332、333、334をさらに備えている。四つの予備接続部331、332、333、334は、上側接続部311、312、313、314と同じ構成であり、連結部4が接続可能な構成である。
【0038】
この場合、吊り下げ保持具1の使用状態において、下部支持体2の下側接続部211、212、221、222が、上側接続部311、312、313、314と鉛直方向に対向する場合には、連結部4により、下側接続部211、212、221、222と、上側接続部311、312、313、314とが接続される。また、下部支持体2の下側接続部211、212、221、222が、予備接続部331、332、333、334と鉛直方向に対向する場合には、連結部4により、下側接続部211、212、221、222と、予備接続部331、332、333、334とが接続される。
【0039】
このように、一つの上部支持体3に対して、異なる大きさの下部支持体2を用いることができる。このため、パレット100の大きさに応じた下部支持体2を用いることができる。なお、下部支持体2側にも、下側接続部211、212、221、222とは別の下側接続部をさらに設けるようにしてもよい。
【0040】
上記の実施形態及び変形例では、下部支持体2と上部支持体3とは、それぞれ異なる構成としたが、同じ構成としてもよい。例えば、下部支持体2に装置側接続部をさらに設けた部材を二つ準備する。一方の部材は、下部支持体2としてパレット100を下方から支持し、他方の部材は、上部支持体3としてワイヤ120を介して搬送装置に保持される。そして、二つの部材を、連結部4で接続する。この場合、同じ構成の部材を製造すればよいため、製造コストを低減させることが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1 吊り下げ保持具
2 下部支持体
3 上部支持体
4 連結部
21 第1長尺部材
22 第2長尺部材
23 第3長尺部材
31 外枠
32 内枠
100 パレット
101、102 空隙
110 積載物
120 ワイヤ
211、212、221、222 下側接続部
231、232 手持ち部
311、312、313、314 上側接続部
321、322、321、332 装置側接続部
331、332、333、334 予備接続部