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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240816BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240816BHJP
   C08K 3/011 20180101ALI20240816BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240816BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240816BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20240816BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L23/08
C08K3/011
C08K3/013
C08K3/04
C08K5/54
B60C1/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020129151
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022025945
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄二
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和輝
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/105912(WO,A1)
【文献】特開2009-067969(JP,A)
【文献】国際公開第2012/023607(WO,A1)
【文献】特開2015-160903(JP,A)
【文献】特開2011-099022(JP,A)
【文献】国際公開第2020/054239(WO,A1)
【文献】特表2020-532601(JP,A)
【文献】特開2010-222509(JP,A)
【文献】特開2008-201841(JP,A)
【文献】特表2004-528444(JP,A)
【文献】特開2016-108446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/08
C08L 9/00
C08K 3/011
C08K 3/013
C08K 3/04
C08K 5/54
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)とに由来する構成単位を有し、かつ、下記要件(i)および(ii)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(S)と、
ジエン系ゴム(T)とを含有し、
前記ジエン系ゴム(T)100質量部に対して前記共重合体(S)を0.5質量部以上、50質量部以下の量で含有し、
さらに、前記ジエン系ゴム(T)100質量部に対して、架橋剤0.2~15質量部と、カーボンブラック15~100質量部と、白色フィラー65~150質量部と、シランカップリング剤0.2~10質量部とを含有することを特徴とするゴム組成物:
(i)エチレン(A)に由来する構成単位と、α-オレフィン(B)に由来する構成単位とのモル比[(A)/(B)]が、40/60~99.9/0.1である;
(ii)100℃におけるムーニー粘度[ML(1+4)(100℃)、JIS K6300]が、5~100である。
【請求項2】
前記ジエン系ゴム(T)100質量部に対して前記共重合体(S)を1質量部以上、40質量部以下の量で含有することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴム組成物からなるタイヤ用ゴム材料。
【請求項4】
請求項に記載のタイヤ用ゴム材料を用いて形成されたタイヤトレッド。
【請求項5】
請求項に記載のタイヤトレッドを含むことを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)やエチレン・プロピレン共重合体ゴム(EPR)に代表されるエチレン・α-オレフィン系ゴムは、その分子構造の主鎖に不飽和結合を有していないため、汎用されている共役ジエン系ゴムに比べ、耐熱老化性および耐候性に優れることから、自動車用部品、電線用材料、建築土木資材、工業材部品、各種樹脂の改質材等の用途に幅広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、自動車等のタイヤ用途には、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)が広く用いられている。スチレン・ブタジエンゴムなどのジエン系ゴムは、単独では耐候性が不十分であるため、タイヤ等、屋外で長期間使用する用途に用いる場合には、耐候性を改良するためにアミン系老化防止剤やパラフィン系ワックスなどを添加して用いるのが通常である。しかしながら、アミン系老化防止剤やパラフィン系ワックス等を配合したジエン系ゴム製品は、時間の経過とともに、その表面にこれらの成分がブリードアウトし、表面に変色を生じる場合がある。また、店頭などでの保管中においても、ブリードアウトによる変色や粉吹き等の外観悪化を生じ、商品価値の低下を招く場合があった。このため、ゴム成分自体による耐候性の向上が望まれていた。
【0004】
このような問題を解決するために、スチレン・ブタジエンゴムにエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)を配合して、耐候性を向上させることが検討されてはいるが、スチレン・ブタジエンゴムとEPDMとは、熱架橋を行う際に相分離を生じやすく、十分な耐疲労性が得られないという問題があった。
【0005】
本出願人は、エチレンと、α-オレフィンと、特定のトリエン化合物とに由来する構造単位からなるランダム共重合体ゴムと、ジエン系ゴムと、カーボンブラックと、加硫剤とを含有するゴム組成物を提案している(特許文献2参照)。このゴム組成物は、エチレン・α-オレフィン・トリエンランダム共重合体ゴムが、ジエン系ゴムとほぼ同等の早い加硫速度を示すことから、ジエン系ゴムとの相分離を生じにくく、ジエン系ゴムが本来的に有している優れた機械強度特性を損なわず、タイヤサイドウォール用途に好適である。
【0006】
また本出願人は、α-オレフィンに由来する構造単位と、非共役ポリエンに由来する構造単位とを含有する非共役ポリエン系共重合体と、軟化剤とを含有する組成物と、ジエン系ゴムとを混合したゴム組成物が、制動性能および燃費性能に優れたタイヤの形成に好適であることを見出し、これを提案している(特許文献3,4参照)。
【0007】
現在、タイヤの製造においては、スチレン・ブタジエン系ゴムや天然ゴムなどのジエン系ゴムを主成分とする未架橋の組成物をシート状等に成形し、表面のみを電子線で架橋してダレを防止した後、タイヤ形状に組み立てを行い、硫黄架橋する工程が主に採用されている。
【0008】
さらに、天然ゴム(NR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などのジエン系ゴムは、耐動的疲労性及び動的特性に優れるゴムとして知られており、自動車タイヤ及び防振ゴムの原料ゴムとして使用されている。しかしながら、昨今、これらのゴム製品が使用される環境が大きく変化し、ゴム製品の耐熱老化性および耐候性の向上が求められており、例えば、自動車タイヤのトレッド及びタイヤサイドウォールには、特に耐候性が求められている。しかしながら、現行ジエン系ゴムが具備する優れた機械的特性、耐疲労性及び動的特性を保持し、しかも、良好な耐候性を有するゴムは従来なかった。
【0009】
それゆえ、機械的特性、耐動的疲労性及び動的特性に優れるジエン系ゴムと、耐熱老化性及び耐候性に優れるエチレン・プロピレン共重合体ゴム(EPR)等のエチレン・炭素数3~20のα-オレフィン共重合体とのブレンド系ゴム組成物が、種々検討されている。しかしながら、エチレン・炭素数3~20のα-オレフィン共重合体が有する動的特性のレベルとジエン系ゴムが有する動的特性のレベルとが異なっているため、均一な物性を示すブレンド系ゴム組成物は、従来得られなかった。なお、自動車タイヤにおける動的特性は、燃費を悪化させない材料であるか否かを問題にし、その指標はtanδ(損失正接)値であり、tanδ値が低いほど動的特性が優れている。
【0010】
また、タイヤトレッドはタイヤが路面と接するゴム部品であり、スタッドレスタイヤにおいては、通常のサマータイヤに求められるウェットグリップ性能、燃費性能、ロングライフ性能に加え、優れた氷上制動性能が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2009/072553号
【文献】特開2001-123025号公報
【文献】国際公開第2005/105912号
【文献】国際公開第2005/105913号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、特にスタッドレスタイヤにおいて求められているウェットグリップ性能、ロングライフ性能(耐疲労性)および氷上制動性能などの特性に優れたゴム組成物、該ゴム組成物からなるタイヤ用ゴム材料、該タイヤ用ゴム材料を用いて形成されたタイヤトレッド、および該タイヤトレッドを備えたタイヤを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、ジエン系ゴムに、実質的に共架橋しない特定の低分子量エチレン・α-オレフィン共重合体を配合したゴム組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明に係るゴム組成物は、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)とに由来する構成単位を有し、かつ、下記要件(i)および(ii)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(S)と、ジエン系ゴム(T)とを含有し、前記ジエン系ゴム(T)100質量部に対して前記共重合体(S)を0.5質量部以上、50質量部以下の量で含有することを特徴とする。
(i)エチレン(A)に由来する構成単位と、α-オレフィン(B)に由来する構成単位とのモル比[(A)/(B)]が、40/60~99.9/0.1である;
(ii)100℃におけるムーニー粘度[ML(1+4)(100℃)、JIS K6300]が、5~100である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ジエン系ゴムのロングライフ性能(耐疲労性)を維持しつつ、ウェットグリップ性能を向上させ、氷上制動性能を大幅に向上させることができるゴム組成物およびその用途を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係るゴム組成物は、特定のエチレン・α-オレフィン共重合体(S)と、ジエン系ゴム(T)とを含有し、前記ジエン系ゴム(T)100質量部に対して前記共重合体(S)を0.5質量部以上、50質量部以下の量で含有する。
【0017】
[エチレン・α-オレフィン共重合体(S)]
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(S)(以下、単に「共重合体(S)」ともいう。)は、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)とに由来する構成単位を有する。
【0018】
炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素原子数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であり、得られるエチレン・α-オレフィン共重合体が優れた機械的性質を示し、さらにゴム弾性を持った成形体を得ることができるため好ましい。これらのα-オレフィンは一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0019】
すなわち、前記共重合体(S)は、少なくとも1種の炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)に由来する構成単位を含んでおり、2種以上の炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0020】
前記共重合体(S)は、上述の通り、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)とに由来する構成単位を有する共重合体であって、下記要件(i)および(ii)を満たす。
(i)エチレン(A)に由来する構成単位と、α-オレフィン(B)に由来する構成単位とのモル比[(A)/(B)]が、40/60~99.9/0.1である。
(ii)100℃におけるムーニー粘度[ML(1+4)(100℃)、JIS K6300]が、5~100である。
本明細書では、「炭素原子数3~20のα-オレフィン」を単に「α-オレフィン」とも記す。
【0021】
<要件(i)>
要件(i)は、前記共重合体(S)中のエチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1を満たすことを特定するものであり、このモル比は好ましくは40/60~90/10、より好ましくは45/55~85/15、さらに好ましくは50/50~78/22である。このような前記共重合体(S)は、架橋成形体の原料として用いた場合に、得られる架橋成形体が優れたゴム弾性を示し、機械的強度ならびに柔軟性に優れたものとなるため好ましい。
【0022】
なお、共重合体(S)中のエチレン量(エチレン(A)に由来する構成単位の含量)およびα-オレフィン量(α-オレフィン(B)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0023】
<要件(ii)>
要件(ii)は、前記共重合体(S)の100℃におけるムーニー粘度[ML(1+4)(100℃)、JIS K6300]が、5~100を満たすことを特定するものであり、前記ムーニー粘度は、好ましくは10~80、より好ましくは20~60である。 ムーニー粘度が前記範囲にある成分(A)は、優れた加工性を有する。
前記共重合体(S)は、下記要件(iii)を満たすことが好ましい。
【0024】
<要件(iii)>
要件(iii)は、前記共重合体(S)の、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(分子量分布;Mw/Mn)が、好ましくは4~40の範囲にあることを特定するものである。この分子量分布(Mw/Mn)は、より好ましくは4~30、さらに好ましくは5~25の範囲である。
前記共重合体(S)が、要件(iii)を満たす場合、低分子量成分を適切な量で含有するため、加工性が良好となる。
【0025】
なお、前記共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数値として求めることができる。
前記共重合体(S)は、下記要件(iv)を満たすことが好ましい。
【0026】
<要件(iv)>
要件(iv)は、前記共重合体(S)の前記数平均分子量(Mn)が30,000以下であることを特定するものである。前記数平均分子量(Mn)は、好ましくは500~25,000、より好ましくは1,000~20,000の範囲である。
【0027】
前記共重合体(S)が、要件(iv)を満たす場合、低分子量成分を適切な量で含有するため、加工性が良好となる。
前記共重合体(S)は、極限粘度[η]が好ましくは0.1~5dL/g、より好ましくは0.~5.0dL/g、さらに好ましくは0.3~4.0dL/gである。
【0028】
前記共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100,000~500,000、より好ましくは120,000~500,000、さらに好ましくは150,000~400,000である。
前記共重合体(S)は、上記の極限粘度[η]および重量平均分子量(Mw)を兼ね備えて満たすことが好ましい。
【0029】
[エチレン・α-オレフィン共重合体(S)の製造]
前記共重合体(S)は、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)とを共重合してなる共重合体である。
【0030】
前記共重合体(S)は、前記の要件(i)および(ii)を満たす限りにおいて、どのような製法で調製されてもよいが、バナジウム系触媒、チタン系触媒またはメタロセン系触媒などを用いる従来公知の方法により製造することができる。特に特開昭62-121709等に記載された溶液重合法が好ましい。
【0031】
[ジエン系ゴム(T)]
前記ジエン系ゴム(T)としては、主鎖に二重結合を有する公知のジエン系ゴムを制限なく使用でき、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。ジエン系ゴムとしては、共役ジエン化合物を主モノマーとする重合体または共重合体ゴムが好ましく用いられる。本発明において、ジエン系ゴムには、天然ゴム(NR)、水添ゴムも含まれる。ジエン系ゴム(T)としては、通常、未架橋のものを採用することができ、ヨウ素価が100以上、好ましくは200以上、さらに好ましくは250以上のものが望ましい。
【0032】
このようなジエン系ゴム(T)としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ニトリルゴム、水添ニトリルゴムなどが挙げられる。
【0033】
本発明において、ジエン系ゴム(T)としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)がより好ましく、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)が特に好ましい。これらのジエン系ゴム(T)は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0034】
天然ゴム(NR)としては、グリーンブック(天然ゴム各種等級品の国際品質包装基準)により規格化された天然ゴムを用いることができる。イソプレンゴム(IR)としては、比重が0.91~0.94、ムーニー粘度〔ML1+4(100℃),JIS K6300〕が30~120のものが好ましく用いられる。
【0035】
スチレン・ブタジエンゴム(SBR)としては、比重が0.91~0.98、ムーニー粘度〔ML1+4(100℃),JIS K6300〕が20~120のものが好ましく用いられる。ブタジエンゴム(BR)としては、比重が0.90~0.95、ムーニー粘度〔ML1+4(100℃),JIS K6300〕が20~120のものが好ましく用いられる。
【0036】
本発明のゴム組成物は、上述した共重合体(S)とジエン系ゴム(T)とを必須成分として含有するものであって、ジエン系ゴム(T)100質量部に対して共重合体(S)を0.5~50質量部、好ましくは1~40質量部、より好ましくは5~30質量部の範囲で含有する。
【0037】
本発明のゴム組成物中の、共重合体(S)とジエン系ゴム(T)との合計の含有量は3質量%以上、好ましくは5質量%以上であり、上限は特にないが90質量%以下であることが望ましい。本発明に係るゴム組成物は、ゴム弾性、耐候性、耐オゾン性にも優れ、特に機械特性、耐候性、耐疲労性に優れている。また、該ゴム組成物は耐磨耗性にも優れている。したがって、本発明に係るゴム組成物を適用すれば、優れた制動性能と優れた燃費性能とが両立し、ゴム弾性、耐候性、耐オゾン性にも優れ、特に機械特性、耐疲労性に優れたタイヤを得ることができる。また、耐磨耗性にも優れたタイヤを得ることができる。
【0038】
<任意成分>
本発明のゴム組成物は、用途に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに、軟化剤、充填剤、その他の樹脂成分、架橋剤、発泡剤、酸化防止剤(安定剤)、耐候剤、可塑剤、着色剤、従来公知のゴム組成物に配合される各種添加剤などの任意成分を適宜含有することができる。
【0039】
軟化剤
軟化剤としては、従来ゴムに配合されている軟化剤が広く用いられる。
具体的には、
パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル等の石油系軟化剤;
合成油系軟化剤;
エチレンとα-オレフィンのコオリゴマー;
パラフィン・ワックス;
流動パラフィン;
ホワイト・オイル(白油);
ペトロラタム;
コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;
ヒマシ油、綿実油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油、パーム油、大豆油、落花生油、木ろう、ロジン、パインオイル、ジペンテン、パインタール、トール油等の植物油系軟化剤;
黒サブ、白サブ、飴サブ等のサブ(ファクチス);
蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;
リシノール酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩;
ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤;
クマロン・インデン樹脂;
フェノール・ホルムアルデヒド樹脂;
テルペン・フェノール樹脂;
ポリテルペン樹脂;
合成ポリテルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂、水添変性脂環族系炭化水素樹脂、水添炭化水素樹脂、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、アタクチックポリプロピレン等の石油系炭化水素樹脂
などが挙げられる。
【0040】
これらの中では石油系軟化剤、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、石油系炭化水素樹脂が好ましく、石油系軟化剤、石油系炭化水素樹脂がさらに好ましく、石油系軟化剤が特に好ましい。
【0041】
石油系軟化剤の中では、石油系プロセスオイルが好ましく、この中でもアロマ系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等がさらに好ましく、アロマ系プロセスオイルが特に好ましい。また石油系炭化水素樹脂の中では、脂肪族系環状炭化水素樹脂が好ましい。
これら軟化剤の中でもアロマ系プロセスオイルが特に好ましい。
なお、軟化剤は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0042】
本発明のゴム組成物における軟化剤の含有量は、共重合体(S)100質量部に対して、軟化剤が0.1~300質量部であり、好ましくは、1~250質量部であり、より好ましくは、5~200質量部である。前記範囲内では、ゴム組成物の押出し成形性、プレス成形性、インジェクション成形性等や、ロール加工性などの成形加工性に優れるため好ましい。
【0043】
充填剤
充填剤としては、特に限定はないが、無機充填剤がゴム組成物の引張強度、引裂強度、耐摩耗性などの機械強度を向上させるため好ましい。
【0044】
無機充填剤としては、例えば、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラック;これらのカーボンブラックをシランカップリング剤などで表面処理した表面処理カーボンブラック;シリカ、活性化炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、微粉タルク、タルク、微粉ケイ酸、クレーなどの白色フィラーが挙げられる。
なお、充填剤は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0045】
本発明のゴム組成物における充填剤の含有量は、ジエン系ゴム(T)100質量部に対して、充填剤が1~300質量部であり、好ましくは5~250質量部であり、より好ましくは10~200質量部である。前記範囲内では、ゴム組成物の混練性、加工性に優れ、ゴム成形体の機械的性質、圧縮永久歪みに優れるため好ましい。また、引張強度、引裂強度および耐摩耗性などの機械的性質が向上された架橋成形体を得ることができ、架橋成形体の他の物性を損なうことなくその硬度を高くすることができ、さらに架橋成形体の製造コストを引下げることができる。
【0046】
その他の樹脂成分
本発明のゴム組成物は、前述の共重合体(S)以外の樹脂成分を必要に応じて含有してもよい。このようなその他の樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
【0047】
本発明のゴム組成物がポリオレフィン樹脂を含有すると、製品硬度を調整できるとともに、加工温度でのコンパウンド粘度を下げることができるため、加工性をより向上させることができる。また熱可塑性エラストマーとして取り扱いができ、ハンドリング性、混練手法の幅が広がるため好ましい。
【0048】
ポリオレフィン樹脂としては、通常、GPCで測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量が10,000以上のポリオレフィン樹脂が好適に用いられる。
ポリオレフィン樹脂としては、α‐オレフィン単独重合体、α‐オレフィン共重合体が挙げられる。α‐オレフィン単独重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、α‐オレフィン共重合体としては、エチレン・炭素原子数3~20のα‐オレフィン共重合体(ただし、前記共重合体(S))とは異なる)、エチレン・炭素原子数3~20のα‐オレフィン・非共役ポリエン共重合体が挙げられる。エチレン・炭素原子数3~20のα‐オレフィン共重合体としては、エチレン・プロピレンラバー(EPR)、プロピレン・エチレンラバー(PER)、エチレン・ブテンラバー(EBR)、エチレン・オクテンラバー(EOR)などが挙げられる。
【0049】
また、エチレン・炭素原子数3~20のα‐オレフィン・非共役ポリエン共重合体としては、エチレン・プロピレンターポリマー(EPT)、エチレン・ブテンターポリマー(EBT)などが挙げられる。
【0050】
ポリオレフィン樹脂としては、これらの中でも、ポリエチレン、エチレン・α‐オレフィン共重合体、ポリプロピレンが好ましい。
なお、ポリオレフィン樹脂は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0051】
本発明のゴム組成物がポリオレフィン樹脂を含有する場合の、ポリオレフィン樹脂の含有量は、前述の共重合体(S)100質量部に対して、ポリオレフィン樹脂が1~100質量部であり、好ましくは5~80質量部であり、より好ましくは10~50質量部である。前記範囲内では、ゴム組成物から形成される成形体の硬度を調整できるとともに、加工温度でのコンパウンド粘度を下げることができるため、加工性をより向上させることができる。また熱可塑性エラストマーとして取り扱いができ、ハンドリング性、混練手法の幅が広がるため好ましい。
【0052】
架橋剤
本発明に係るゴム組成物は、架橋可能な組成物であり、これを架橋することにより、後述する本発明に係る架橋成形体を製造することができる。架橋は、架橋剤を使用して加熱等により行ってもよく、また、電子線、X線、γ線、α線およびβ線などの放射線を照射することにより架橋する放射線架橋により行ってもよい。放射線架橋のうちでは電子線架橋が好ましい。
【0053】
本発明に係る架橋成形体は、放射線架橋、特に電子線架橋により架橋を行って製造されることが好ましく、この場合には、ゴム組成物は、架橋剤を含有しなくてもよい。
また、ゴム組成物を加熱により架橋する場合には、ゴム組成物が、架橋剤を含有することが好ましい。なお、架橋剤は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0054】
架橋剤としては、硫黄系化合物、有機過酸化物、フェノール樹脂、ヒドロシリコーン系化合物、アミノ樹脂、キノン又はその誘導体、アミン系化合物、アゾ系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート等のゴムを架橋する際に一般に使用される架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤の中でも、硫黄系化合物、有機過酸化物、フェノール樹脂が好ましい。
【0055】
架橋剤が有機過酸化物である場合には、その具体例としては、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。
【0056】
架橋剤として有機過酸化物を用いる場合には、本発明のゴム組成物は、下記架橋助剤を含有することが好ましい。
架橋剤として有機過酸化物を用いる場合に、ゴム組成物が含有することが好ましい架橋助剤としては、例えば、イオウ;p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;その他マレイミド系架橋助剤;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。架橋助剤の配合量は、有機過酸化物1モルに対して、通常0.5~10モル、好ましくは0.5~7モル、より好ましくは1~5モルである。また、架橋助剤の配合量は、有機過酸化物1モルに対して0.5~2モル、好ましくは0.5~1.5モル、さらに好ましくはほぼ等モルの量とすることも望ましい。
【0057】
架橋剤が硫黄系化合物である場合には、その具体例としては、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレン等が挙げられる。
【0058】
架橋剤が硫黄系化合物である場合には、該硫黄系化合物の配合量は、ジエン系ゴム(T)100質量部に対して、通常は0.2~15質量部、好ましくは0.5~7.0質量部、さらに好ましくは0.7~5.0質量部である。硫黄系化合物の配合量が上記範囲内であると、得られるゴム成形体の表面へのブルームなく、ゴム組成物が優れた架橋特性を示すので好適である。
【0059】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合には、本発明のゴム組成物は、下記架橋助剤を含有することが好ましい。
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合に、ゴム組成物が含有することが好ましい架橋助剤としては、例えば、酸化亜鉛、亜鉛華などが挙げられる。架橋助剤の配合量は、共重合体(S)100質量部に対して、通常1~20質量部である。
架橋剤に硫黄系化合物を使用する場合には、硫黄と加硫促進剤を併用することが望ましい。
【0060】
加硫促進剤の具体例としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)(例えば、「ノクセラーNS」(商品名;大内新興(株)社製)など)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール(例えば、「サンセラーM」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール(例えば、「ノクセラーMDB-P」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルフォリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン等のグアニジン系;アセトアルデヒド-アニリン縮合物、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物等のアルデヒドアミン系;2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系;ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア等のチオウレア系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)(例えば、「ノクセラーTT」(商品名;大内新興(株)社製)など)等のチウラム系;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)(例えば、「サンセラーBz」(商品名;三新化学工業社製)など)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系;エチレンチオ尿素、N,N'-ジエチルチオ尿素、N,N'-ジブチルチオ尿素等のチオウレア系;ジブチルキサトゲン酸亜鉛等のザンテート系;その他亜鉛華(例えば、「酸化亜鉛2種」(商品名;ハクスイテック株式会社製)等が挙げられる。
【0061】
これらの加硫促進剤の配合量は、共重合体(S)100質量部に対して、通常は0.1~20質量部、好ましくは0.2~15質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部である。加硫促進剤の配合量が上記範囲内であると、得られるゴム成形体の表面へのブルームなく、優れた架橋特性を示すので好適である。
【0062】
加硫助剤は、その用途により適宜選択でき、単独でも2種以上混合して用いることができる。加硫助剤の具体的例としては、酸化マグネシウム、亜鉛華(例えば、「酸化亜鉛2種」(商品名;ハクスイテック株式会社製)などの酸化亜鉛)などが挙げられる。その配合量は、通常、共重合体(S)100質量部に対して、通常1~20質量部である。
【0063】
発泡剤
本発明のゴム組成物は、発泡剤を含有してもよい。なお、本発明のゴム組成物が、発泡剤を含有する場合には、通常、前記架橋剤も含有する。架橋剤および発泡剤を含有するゴム組成物を用いることにより、ゴム組成物を架橋および発泡し、発泡体を得ることができる。
【0064】
発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機系発泡剤;N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N'-ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)等のヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルホニルアジド等のアジド化合物などの有機発泡剤が挙げられる。発泡剤としては、ADCA、OBSHが好ましい。発泡剤は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0065】
本発明のゴム組成物が、発泡剤を含有する場合には、発泡剤の配合量は、共重合体(S)100質量部に対して、通常は0.2~30質量部、好ましくは0.5~25質量部、より好ましくは0.5~20質量部である。
【0066】
発泡助剤
本発明のゴム組成物が発泡剤を含有する場合には、必要に応じて発泡助剤さらに含有してもよい。発泡助剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの作用を示す。
このような発泡助剤としては、例えば、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸やその塩、尿素またはその誘導体などが挙げられる。
【0067】
本発明のゴム組成物が、発泡助剤を含有する場合には、発泡助剤の配合量は、共重合体(S)100質量部に対して、通常は0.2~30質量部、好ましくは0.5~25質量部、より好ましくは0.5~20質量部である。
【0068】
酸化防止剤
本発明に係るゴム組成物は、その材料寿命を長くできる点から、酸化防止剤を含有していることも好ましい。このような酸化防止剤としては、
フェニルナフチルアミン、4,4'-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N'-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等の芳香族第二アミン系安定剤;
2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、テトラキス-[メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のフェノール系安定剤;
ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系安定剤;2-メルカプトベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系安定剤;
ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系安定剤;
2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系安定剤
などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
加工助剤
本発明のゴム組成物は、加工助剤を含有してもよい。加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムまたはエステル類等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0070】
本発明のゴム組成物が、加工助剤を含有する場合には、加工助剤の配合量は、共重合体(S)100質量部に対して、通常は0.1~10質量部、好ましくは0.5~8質量部、より好ましくは1~6質量部である。上記範囲内であると、得られるゴム組成物の表面のブルームがなく、さらにゴム組成物を架橋する際に、架橋阻害が発生しないため好ましい。また、加工助剤を含有するゴム組成物は押出し成形性、プレス成形性、インジェクション成形性等の成形性、およびロール加工性に優れるため好ましい。
【0071】
界面活性剤
本発明のゴム組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、ジ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、「アクチングB」(吉富製薬株式会社製)、「アクチングSL」(吉富製薬株式会社製)等のアミン類、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、レシチン、トリアリルトリメリテート、脂肪族および芳香族カルボン酸の亜鉛化合物(例;「Struktol activator 73」、「Struktol IB 531」、「Struktol FA541」 Schill&Seilacher社製)、「ZEONET ZP」(日本ゼオン株式会社製)、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物(例;「リポガード2HT-F」(ライオン・アクゾ株式会社製)等が挙げられる。
【0072】
本発明のゴム組成物が、界面活性剤を含有する場合には、界面活性剤の配合量は、共重合体(S)100質量部に対して、通常は0.2~10質量部、好ましくは0.3~5質量部、さらに好ましくは0.5~4質量部である。界面活性剤は、その用途により適宜選択でき、単独でも2種類以上混合して用いることができる。
【0073】
老化防止剤
本発明のゴム組成物は、老化防止剤を含有してもよい。本発明のゴム組成物が老化防止剤を含有すると、該組成物から得られる製品寿命を長くすることが可能である。老化防止剤としては、従来公知の老化防止剤、例えばアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤等を用いることができる。
【0074】
老化防止剤としては、具体的には、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤、ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等が挙げられる。
【0075】
本発明のゴム組成物が、老化防止剤を含有する場合には、老化防止剤の配合量は、共重合体(S)100質量部に対して、通常は0.01~10質量部、好ましくは0.02~7質量部、さらに好ましくは0.03~5質量部である。上記範囲内であると、本発明のゴム組成物から得られる成形体が耐熱老化性に優れるため好ましい。
【0076】
その他の添加剤
本発明のゴム組成物には、さらにその他の添加剤が含まれていてもよい。その他の添加剤としては、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤および増粘剤等が挙げられる。
【0077】
また、本発明に係るゴム組成物は、上述の通り各種任意成分を特に制限なく含有することができるが、ゴム組成物を構成する共重合体(S)とジエン系ゴム(T)とが、良好な相溶性を有し、これらを含むゴム組成物を用いると相分離を生じることなく架橋成形体を製造することができ、しかも、共重合体(S)が、得られる架橋成形体に優れた耐候性を与えるため、ゴム組成物中における耐候剤や酸化防止剤などの含有量が抑制された場合にも、耐候性に優れた架橋成形体を容易に得ることができる。このため耐候剤や酸化防止剤などの添加剤含有量を好適に抑制することができ、経済的であるとともにブリードアウトによる架橋成形体の品質劣化を防ぐことができる。
【0078】
<ゴム組成物の調製方法>
本発明のゴム組成物は、前述の共重合体(S)とジエン系ゴム(T)を含有するゴム組成物であり、好ましくは、架橋剤、カーボンブラック、白色フィラー、シランカップリング剤などの成分を含有する。たとえば、前記ジエン系ゴム(T)100質量部に対して、架橋剤0.2~15質量部と、カーボンブラック5~100質量部と、白色フィラー5~150質量部と、シランカップリング剤0.2~10質量部とを含有するゴム組成物が挙げられるが、その調製方法としては特に限定はない。
【0079】
ゴム組成物の調製方法としては、例えば、ゴム組成物に含まれる各成分を、例えば、ミキサー、ニーダー、ロール等の従来知られる混練機、さらに二軸押出機のような連続混練機等を用いて混合する方法、ゴム組成物に含まれる各成分が溶解または分散した溶液を調製し、溶媒を除去する方法等が挙げられる。
また、本発明に係るゴム組成物は、共重合体(S)とジエン系ゴム(T)と、必要に応じて任意成分とを同時にあるいは逐次配合して調製することができる。
【0080】
ゴム組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、一般的なゴム配合物の調製方法を特に制限なく採用することができる。たとえば、本発明のゴム組成物が任意成分を含有する場合、任意成分の少なくとも一部を、共重合体(S)あるいはジエン系ゴム(T)とあらかじめ混合した後に残りの任意成分を配合してもよく、また、共重合体(S)およびジエン系ゴム(T)を配合した後に任意成分を添加して配合してもよい。
【0081】
たとえばバンバリーミキサー、ニーダー、インターミックス等のインターナルミキサー類を用いて、共重合体(S)、ジエン系ゴム(T)、および必要に応じて配合する他の成分を、80~170℃の温度で3~10分間混練した後、必要に応じて架橋剤およびさらに必要に応じて架橋促進剤、架橋助剤、発泡剤などを加えて、オープンロールなどのロール類あるいはニーダーを用いて、ロール温度40~80℃で5~30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。このようにして通常リボン状またはシート状のゴム組成物が得られる。上記のインターナルミキサー類での混練温度が低い場合には、架橋剤、架橋促進剤、発泡剤などを同時に混練することもできる。
【0082】
<架橋成形体>
本発明の架橋成形体は、前述の本発明のゴム組成物を架橋することにより得られる。なお、架橋の際には、金型を用いても、用いなくてもよい。金型を用いない場合には、ゴム組成物は、通常、連続的に成形、架橋される。
【0083】
ゴム組成物を架橋させる方法としては、(a)架橋剤を含有するゴム組成物を、通常、押出し成形、プレス成形、インジェクション成形等の成形法や、ロール加工により所望形状に予備成形し、成形と同時にまたは成形物を架橋槽内に導入して加熱する方法や、(b)架橋剤を含有するゴム組成物を、(a)の方法と同様の方法で予備成形し、次いで電子線を照射する方法を例示することができる。
【0084】
なお、(a)の方法では、加熱によりゴム組成物中の架橋剤による架橋反応が起こり、架橋体が得られる。また、(b)の方法では、電子線により架橋反応が起こり、架橋体が得られる。(b)の方法においては通常、予備成形が施されたゴム組成物に、0.1~10MeVのエネルギーを有する電子線を、ゴム組成物の吸収線量が通常は0.5~36Mrad、好ましくは0.5~20Mrad、さらに好ましくは1~10Mradになるように照射する。
【0085】
また、ゴム組成物の架橋は、未架橋のゴム組成物を、通常、押出成形機、カレンダーロール、プレス、射出成形機またはトランスファー成形機などの成形機を用いた種々の成形法よって所望形状に予備成形し、成形と同時にまたは成形物を架橋槽内に導入して加熱するか、あるいは、電子線、X線、γ線、α線およびβ線などの放射線を照射することにより架橋する放射線架橋により行うことができる。成形あるいは予備成形の方法としては、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形及び発泡成形などにより、所望の形状に成形する公知の成形方法を適宜採用することができる。また、架橋成形体が発泡体の場合は、発泡剤を配合した未架橋のゴム組成物を発泡成形した後に電子線照射あるいは加熱により架橋するか、発泡成形と同時に架橋を進行させることにより製造することができる。さらに、ゴム組成物を架橋する工程は、加熱による架橋と電子線架橋とを組み合わせて行ってもよい。
【0086】
上記ゴム組成物を加熱により架橋する場合には、通常、硫黄、硫黄系化合物、過酸化物などの架橋剤を含むゴム組成物を用いて、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチームまたはLCM(熱溶融塩槽)などの加熱形態の架橋槽を用いて、150~270℃の温度で1~30分間加熱することが好ましい。硫黄架橋または過酸化物架橋は、架橋工程に特殊な装置を必要としない利点があるため、従来よりゴム組成物の架橋工程に広く用いられている。
【0087】
また、電子線照射により架橋する電子線架橋により架橋を行う場合は、通常架橋剤を含有しないゴム組成物を用いて、予備成形されたゴム組成物に、電子線を照射して、架橋成形体を製造することが好ましい。電子線照射による架橋は、架橋剤を用いなくても行うことができ、架橋工程において揮発物の発生が少ないという利点がある。
【0088】
電子線照射による架橋工程を伴う架橋成形体の製造は、具体的には、例えば次のようにして行うことができる。まずバンバリーミキサーなどのミキサーを用い、共重合体(S)、ジエン系ゴム(T)および必要に応じて各種添加剤ならびに架橋助剤などを、80~170℃の温度で3~10分間混練した後、オープンロールなどのロール類を用い、ロール温度40~80℃で5~30分間混練した後、分出し、リボン状またはシート状のゴム組成物を調製するか、または、容器内などで各成分をブレンドすることによりゴム組成物を調製する。このようにして調製されたゴム組成物はシート状等のまま、あるいは押出成形機、カレンダーロール、射出成形機またはプレスにより所望の形状に成形するか、または押出機よりストランド状に押し出してカッター等により粉砕してペレットにして電子線を照射する。あるいは、架橋助剤などの化合物を含浸した共重合体(S)およびジエン系ゴム(T)などの粉体に直接電子線を照射して、ゴム組成物の架橋物を調製してもよい。電子線の照射は、通常0.1~10MeV(メガエレクトロンボルト)、好ましくは0.3~5MeVのエネルギーを有する電子線を、吸収線量が通常0.5~100kGy(キログレイ)、好ましくは0.5~70kGyになるように行う。
【0089】
γ線照射は、電子線照射と比べてゴム組成物に対する透過度が高く、特にゴム組成物をペレット形状にしたものに照射する場合、少量を直接照射するだけでペレット内部まで充分架橋させることができる。γ線の照射は、ゴム組成物にγ線照射量が通常0.1~50kGy、好ましくは0.3~50kGyになるように行うことができる。
【0090】
架橋成形体の架橋度は、ゲル分率で表すことができる。通常、架橋体のゲル分率は、1~80%である。しかしながら本発明における架橋成形体では、架橋の程度はこの範囲に限定されるものではなく、ゲル分率が10%未満、特には0.5%未満のゲル分率を示す架橋度の低い架橋体においても、架橋度の高い本発明の架橋成形体と同様、外観表面に優れるような効果は得られる。
【0091】
本発明に係る架橋成形体は、ゴム特性を有する各種製品の用途に制限なく利用することができる。本発明に係る架橋成形体は、製品の少なくとも一部を構成していればよく、全体が本発明に係る架橋成形体から構成されていることも好ましく、また、本発明の架橋成形体が製品の少なくとも一部を構成する、積層体あるいは複合体であることも好ましい。積層体としては、2層以上の層を有する多層積層体のうち、少なくともその1層が本発明に係る架橋成形体である積層体が挙げられ、たとえば、多層フィルムおよびシート、多層容器、多層チューブ、水系塗料の一構成成分として含まれる多層塗膜積層体等の形態が挙げられる。
【0092】
本発明に係る架橋成形体は、耐候性に特に優れることから、タイヤや電線被覆材などの屋外で長期間使用する用途にも好適に用いることができ、特に各種タイヤの少なくとも一部を構成するタイヤ部材用途に好適に使用することができる。
【0093】
タイヤ部材としては、たとえば、タイヤインナーライナー、タイヤインナーチューブ、タイヤフラップ、タイヤショルダー、タイヤビード、タイヤトレッドおよびタイヤサイドウォールなどが挙げられる。このうち、タイヤトレッド、タイヤサイドウォールの用途に好適に用いることができ、特にタイヤトレッドに好適に用いることができる。
【0094】
本発明の架橋成形体は、ジエン系ゴムが本来有する優れた機械的強度および耐疲労性(ロングライフ性能)を保持し、かつ、優れたウェットグリップ性能および氷上制動性能を示す。本発明の架橋成形体を用いたタイヤトレッドやタイヤサイドウォールなどのタイヤ部材は、耐候性に優れるとともに、耐動的疲労特性に優れる。
【0095】
<発泡体>
本発明の発泡体は、前述の発泡剤を含有する本発明のゴム組成物を架橋および発泡することにより得られる。
【0096】
前記ゴム組成物は、発泡剤を含むため、ゴム組成物を加熱することによって、架橋剤による架橋反応と共に、発泡剤が分解して炭酸ガスや窒素ガスを発生する。このため、気泡構造を有する発泡体が得られる。
【0097】
<用途>
本発明のゴム組成物は、低温特性、機械特性、押出し成形性、プレス成形性、インジェクション成形性等の成形性、およびロール加工性に非常に優れており、本発明のゴム組成物から、低温特性(低温での柔軟性、ゴム弾性等)、機械特性などに優れる成形体を好適に得ることができる。
【0098】
また、本発明のゴム組成物は、前述の共重合体(S)を用いることにより、加工性、成形性および架橋特性に優れ、耐熱安定性、ロングライフ性能、ウェットグリップ性能および氷上制動性能に優れた架橋体を製造することができるため、本発明のゴム組成物から得られた架橋体は、高温下での長期使用が見込まれる用途やスタッドレスタイヤなどの用途にも好適に使用することができる。
【0099】
本発明のゴム組成物、該組成物から得られる成形体、たとえば、架橋体や発泡体などは、様々な用途に用いることができる。具体的には、タイヤ用ゴム材料、O-リング、工業用ロール、パッキン(例えばコンデンサーパッキン)、ガスケット、ベルト(例えば、断熱ベルト、複写機ベルト、搬送ベルト)、自動車用ホースなどのホース類(例えば、ターボチャージャーホース、ウォーターホース、ブレーキリザーバーホース、ラジエターホース、エアーホース)、防振ゴム、防振材あるいは制振材(例えば、エンジンマウント、モーターマウント)、マフラーハンガー、スポンジ(例えば、ウェザーストリップスポンジ、断熱スポンジ、プロテクトスポンジ、微発泡スポンジ)、ケーブル(イグニッションケーブル、キャブタイヤケーブル、ハイテンションケーブル)、電線被覆材(高圧電線被覆材、低電圧電線被覆材、舶用電線被覆材)、グラスランチャネル、カラー表皮材、給紙ロール、ルーフィングシート等に好適に用いられる。これらのうちでも、自動車用内外装部品や耐熱性を求められる用途に好適に用いられ、タイヤトレッド等のタイヤ用ゴム材料として好適である。
【0100】
[タイヤ用ゴム材料]
本発明に係るタイヤ用ゴム材料は前記本発明のゴム組成物からなることを特徴とする。本発明に係るタイヤ用ゴム材料は優れた(氷上)制動性能と優れた燃費性能とが両立しているほか、本発明に係るタイヤ用ゴム材料は、ゴム弾性、耐候性、耐オゾン性にも優れ、特に機械特性、耐疲労性に優れている。また、該ゴム材料は耐摩耗性にも優れている。したがって本発明に係るタイヤ用ゴム材料を適用すれば、優れた制動性能と優れた燃費性能とが両立し、ゴム弾性、耐候性、耐オゾン性にも優れ、特に機械特性、耐疲労性(ロングライフ性能)、ウェットグリップに優れたタイヤを得ることができる。また、耐摩耗性に優れたタイヤを得ることができる。
【0101】
[タイヤトレッド]
本発明に係るタイヤトレッドは前記本発明のタイヤ用ゴム材料を用いて形成されるものである。本発明のタイヤ用ゴム材料を加硫して得られるタイヤトレッドを適用すれば、優れた(氷上)制動性能と優れた燃費性能とが両立し、ゴム弾性、耐候性、耐オゾン性にも優れ、特に機械特性、耐疲労性(ロングライフ性能)、ウェットグリップに優れたタイヤを得ることができる。また、耐摩耗性に優れたタイヤを得ることができる。
【0102】
本発明においては、上述した要件を満たす範囲で、その用途に応じて適切な特性を有する共重合体(S)を選択して用いることができる。たとえば、タイヤトレッド用途には、比較的低分子量の共重合体(S)を好適に用いることができる。
【0103】
[タイヤ]
本発明に係るタイヤは前記本発明のタイヤトレッドを備える。本発明に係るタイヤは優れた(氷上)制動性能と優れた燃費性能とが両立し、ゴム弾性、耐候性、耐オゾン性にも優れ、特に機械特性、耐疲労性(ロングライフ性能)、ウェットグリップに優れる。また、該タイヤは耐摩耗性にも優れる。
【実施例
【0104】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例における各特性の評価方法は次の通りである。
【0105】
<エチレン・α-オレフィン共重合体の組成>
エチレン・α-オレフィン共重合体の、各構成単位の質量分率(質量%)は、13C-NMRによる測定値により求めた。測定値は、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1、積算回数:8000回にて、共重合体の13C-NMRのスペクトルを測定して得た。
【0106】
<極限粘度>
極限粘度[η]は、(株)離合社製全自動極限粘度計を用いて、温度:135℃、測定溶媒:デカリンにて測定した。
【0107】
<ムーニー粘度>
ムーニー粘度ML(1+4)100℃は、ムーニー粘度計「SMV-202」((株)島津製作所製)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて100℃で測定した。
【0108】
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数値である。測定装置および条件は、以下のとおりである。なお、分子量は、市販の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成し、換算法に基づいて算出した。
【0109】
装置:ゲル透過クロマトグラフ Alliance GP2000型(Waters社製)、
解析装置:Empower2(Waters社製)、
カラム:TSKgel GMH6-HT×2+TSKgel GMH6-HTL×2(7.5mmI.D.×30cm、東ソー社製)、
カラム温度:140℃、
移動相:o-ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)、
検出器:示差屈折計(RI)、
流速:1.0mL/min、
注入量:400μL、
サンプリング時間間隔:1s、
カラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)、
分子量換算:旧法EPR換算/粘度を考慮した較正法。
【0110】
<未加硫ゴム組成物の物性>
(1)ムーニースコーチ
125℃における最低粘度(Vm)およびスコーチ時間(t5)は、JIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて、125℃の条件下で測定した。
【0111】
(2)加硫速度
実施例および比較例における未加硫ゴム組成物を用いて、測定装置:MDR2000(ALPHA TECHNOLOGIES 社製)により、温度170℃および時間20分の測定条件下で、加硫速度(tc90)を以下のとおり測定した。
一定温度および一定のせん断速度の条件下で得られるトルク変化を測定した。トルクの最大値と最小値との差の90%のトルクに達成するまでの時間を加硫速度(tc90;分)とした。
【0112】
<硬さ試験(デュロ-A硬度)>
JIS K 6253に従い、架橋シートの硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている2mmのシート状ゴム成形品6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。硬度が低いほど氷上制動性能が良いという指標となる。
【0113】
<引張り試験>
JIS K 6251に従い、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、シートの破断強度(TB)〔MPa〕および破断伸び(EB)〔%〕を測定した。すなわち、シート状の架橋成形体を打抜いてJIS K 6251(2001年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製した。この試験片を用いて同JIS K 6251に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、伸び率が25%であるときの引張応力〔25%モジュラス(M25)〕、伸び率が100%であるときの引張応力〔100%モジュラス(M100)〕、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。M25が低いほど耐疲労性(ロングライフ性能)および氷上制動性能が良いという指標となり、M100が低いほどウェットグリップ性能が良いという指標となる。また、EBが大きいほど耐疲労性(ロングライフ性能)が良いという指標となる。
【0114】
<圧縮永久歪み(CS)>
JIS K 6262に従い、直径29mm、高さ(厚さ)12.5mmの架橋体を試験片とした。荷重をかける前の試験片高さ(12.5mm)に対して25%圧縮し、スペーサーごと70℃のギヤーオーブン中にセットして22時間熱処理した。次いで試験片を取出し、室温で30分間放置後、試験片の高さを測定し下記の計算式で圧縮永久歪み(%)を算出した。
0℃圧縮永久歪は、0℃の恒温槽中にセットして22時間処理した。次いで試験片を恒温槽内で取出し、30分放置後、試験片の高さを測定し以下の計算式で圧縮永久歪み(%)を算出した。
圧縮永久歪み(%)={(t0-t1)/(t0-t2)}×100
t0:試験片の試験前の高さ
t1:試験片を前記条件で処理し室温で30分間放置した後の高さ
t2:試験片の測定金型に取り付けた状態での高さ
【0115】
<引張粘弾性試験>
貯蔵弾性率E';実施例および比較例によって得られた加硫ゴム1mmシートについて、TA-Instruments社製のRSA-G2を用いて窒素下で動的粘弾性を測定した。ここで、貯蔵弾性率(E')は、粘弾性体に正弦的振動ひずみを与えたときの応力と、ひずみの関係を表わす複素弾性率を構成する項であり、TA-Instruments社製のRSA-G2による、引張モード(歪み1%)により-70℃~100度の温度領域において4℃/minの昇温速度、周波数10Hzにて測定される値である。
tanδ;実施例および比較例によって得られた加硫ゴム1mmシートについて、TA-Instruments社製のRSA-G2を用いて窒素下で動的粘弾性を測定した。ここで、tanδ(0℃、60℃)=E”/E’にて求められる値である。
E’@-20℃(E+7)およびE’@0℃(E+7)が低いほど氷上制動性能が良いという指標となる。また、tanδ0℃が大きいほどウェットグリップが良いという指標となる。
【0116】
[実施例1]
<ゴム組成物の調製および架橋成形体の製造>
下記表1に示すエチレン・プロピレン共重合体(S-1)(商品名:三井EPT(登録商標)0045、三井化学(株)製)20質量部、ジエン系ゴムとして、天然ゴム(NR(RSS#3)、竹原ゴム社販売)55質量部およびブタジエンゴム(Nipole BR1200、日本ゼオン(株)製)45質量部、架橋助剤として酸化亜鉛(ZnO#1・酸化亜鉛2種、ハクスイテック(株)製)3質量部、加工助剤としてステアリン酸(ステアリン酸つばきシリーズ、日油(株)製)2質量部、カーボンブラック(ショウブラックN-339、昭和キャボット(株)社製)15質量部、白色フィラーとしてシリカ(ニップシルVN3、東ソー・シリカ(株)製)65質量部、シランカップリング剤(Si-69、EVONIK社製)4.5質量部、架橋剤として硫黄2質量部、加硫促進剤としてサンセラーCM(三新化学(株)製)2質量部およびサンセラーD(三新化学(株)製)1.8質量部および軟化剤としてアロマ系オイル(AH-16、出光興産(株)製)20質量部を、BB-4型バンバリーミキサー(神戸製鋼所製)を用いて混練し、ゴム配合物を得た。前記混練では、シリカ/カップリング剤/ポリマーを2分間素練りし、次いで酸化亜鉛、ステアリン酸、カーボンブラック、アロマ系オイルを入れて、2分間混練した。その後、ラムを上昇させて掃除を行い、更に1分間混練し、未加硫のゴム配合物(A-1)を得た。
【0117】
【表1】
【0118】
前記ゴム配合物(A-1)を8インチロール(日本ロール(株)社製)を用いて、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数18rpm、後ロールの回転数16rpmに巻きつけて混練した。
【0119】
混練は、前記混合物に、切り返し3回、丸め通し6回を行い、厚み2.2~2.5mmのシートとしてゴム組成物を得ることで行った。得られたゴム組成物を用いて、未加硫のゴム配合物(A-1)の特性を評価した。結果を表2に示す。
【0120】
次いでプレス成形機を用いて170℃で10分間プレス処理を行って、厚さ2mmおよび1mmの架橋体(A-2)シートを作製した。得られた架橋体(A-2)シートを用いて、硬さ試験、引張試験、引張粘弾性試験を行った。
【0121】
また、170℃で15分間の条件で架橋を行い、厚み12.5mm、直径29mmの架橋体(A-3)を得た。架橋体(A-3)を用いて、圧縮永久歪みの測定を行った。
ゴム組成物および架橋体の評価結果を表2に示す。
【0122】
[比較例1]
実施例1において、エチレン・プロピレン共重合体を用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物および架橋成形体を製造し、各種物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0123】
【表2】