(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/282 20060101AFI20240816BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20240816BHJP
【FI】
G01S7/282
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2020134134
(22)【出願日】2020-08-06
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】錦戸 正光
(72)【発明者】
【氏名】佐東 将行
(72)【発明者】
【氏名】川路 聡
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋平
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/180584(WO,A1)
【文献】特開2002-062350(JP,A)
【文献】国際公開第2019/106656(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 13/00 - G01S 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
を備え、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて物体を検出する電子機器であって、
前記送信波を送信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力に応じて、前記周波数の複数のセグメントのそれぞれにおいて
、少なくとも一度は送信するタイミングを含みつつ前記送信波を送信する頻度を決定する制御部を備える、電子機器。
【請求項2】
前記制御部は、前記周波数の複数のセグメントのうちノイズ電力が小さいセグメントほど、前記送信波を送信する頻度を高くする、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、前記周波数の複数のセグメントのうちノイズ電力が最小のセグメントにおいて、前記送信波を送信する頻度を最も高くする、請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、前記周波数の複数のセグメントのうちノイズ電力が大きいセグメントほど、前記送信波を送信する頻度を低くする、請求項1乃至3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記制御部は、前記周波数の複数のセグメントのうちノイズ電力が最大のセグメントにおいて、前記送信波を送信する頻度を最も低くする、請求項1乃至4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
前記
反射波を受信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力を測定する測定部を備える、請求項1乃至5のいずれかに記載の電子機器。
【請求項7】
前記測定部は、前記反射波を受信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力に基づいて、前記
反射波を受信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力を測定する、請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記測定部は、前記反射波を受信する周波数の複数のセグメントにおける平均のノイズ電力に基づいて、前記
反射波を受信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力を測定する、請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記送信波を送信する周波数の複数のセグメントは、特定の周波数帯域において分割されたセグメントとする、請求項1乃至8のいずれかに記載の電子機器。
【請求項10】
前記送信波を送信する周波数の複数のセグメントのそれぞれは、異なる複数の周波数帯域に属するセグメントとする、請求項1乃至8のいずれかに記載の電子機器。
【請求項11】
前記送信波を送信する周波数の複数のセグメントは、異なる複数の周波数帯域のいずれかに属するとともに、当該異なる複数の周波数帯域のそれぞれにおいて分割されたセグメントとする、請求項1乃至8のいずれかに記載の電子機器。
【請求項12】
前記送信波を送信する周波数の複数のセグメントは、24GHz帯、77GHz帯、79GHz帯、及び140GHz帯の少なくともいずれかに含まれる、請求項1乃至11のいずれかに記載の電子機器。
【請求項13】
前記制御部は、前記周波数の複数のセグメントにおいて前記送信波の周波数ホッピングを行う、請求項1乃至12のいずれかに記載の電子機器。
【請求項14】
送信アンテナによって送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を受信アンテナによって受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて物体を検出するステップと、
前記送信波を送信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力に応じて、前記周波数の複数のセグメントのそれぞれにおいて
、少なくとも一度は送信するタイミングを含みつつ前記送信波を送信する頻度を決定するステップと、
を含む、電子機器の制御方法。
【請求項15】
コンピュータに、
送信アンテナによって送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を受信アンテナによって受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて物体を検出するステップと、
前記送信波を送信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力に応じて、前記周波数の複数のセグメントのそれぞれにおいて
、少なくとも一度は送信するタイミングを含みつつ前記送信波を送信する頻度を決定するステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車に関連する産業などの分野において、自車両と所定の物体との間の距離などを測定する技術が重要視されている。特に、近年、ミリ波のような電波を送信し、障害物などの物体に反射した反射波を受信することで、物体との間の距離などを測定するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))の技術が、種々研究されている。このような距離などを測定する技術の重要性は、運転者の運転をアシストする技術、及び、運転の一部又は全部を自動化する自動運転に関連する技術の発展に伴い、今後ますます高まると予想される。
【0003】
上述のような、電波の送受信によって物体を検出する技術が普及すると、多数の機器からそれぞれ送信される電波が干渉するため、各機器が物体を検出する性能が弱まることも想定される。このような事態に対応し得る提案も、いくつかなされている。例えば、特許文献1は、自機器のレーダと他のレーダとのアンテナの角度によって干渉が生じる場合に、自機器のレーダ装置の送信又は受信を停止することにより、電波干渉を回避することを提案している。また、特許文献2は、複数のレーダ相互間において情報を共有することで、互いに異なる周波数ホッピングのパターンを設定することにより、電波干渉を回避することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-156442号公報
【文献】特開2005-195450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
送信された送信波が所定の物体に反射した反射波を受信することにより、当該物体を検出する技術において、送信波の干渉を低減することが望ましい。
【0006】
本開示の目的は、送信された送信波が所定の物体に反射した反射波を受信することにより、当該物体を検出する技術において、送信波の干渉を低減し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る電子機器は、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、
を備える。
前記電子機器は、前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて物体を検出する。
前記電子機器は、前記送信波を送信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力に応じて、前記周波数の複数のセグメントのそれぞれにおいて、少なくとも一度は送信するタイミングを含みつつ前記送信波を送信する頻度を決定する制御部を備える。
【0008】
一実施形態に係る電子機器の制御方法は、
送信アンテナによって送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を受信アンテナによって受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて物体を検出するステップと、
前記送信波を送信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力に応じて、前記周波数の複数のセグメントのそれぞれにおいて、少なくとも一度は送信するタイミングを含みつつ前記送信波を送信する頻度を決定するステップと、
を含む。
【0009】
一実施形態に係るプログラムは、
コンピュータに、
送信アンテナによって送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を受信アンテナによって受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて物体を検出するステップと、
前記送信波を送信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力に応じて、前記周波数の複数のセグメントのそれぞれにおいて、少なくとも一度は送信するタイミングを含みつつ前記送信波を送信する頻度を決定するステップと、
を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
一実施形態によれば、送信された送信波が所定の物体に反射した反射波を受信することにより、当該物体を検出する技術において、送信波の干渉を低減し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。
【
図2】一実施形態に係る電子機器の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る電子機器によって測定されるノイズ電力の例を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る電子機器によるノイズ電力に応じた送信周波数の割り当ての例を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る電子機器の動作を説明するフローチャートである。
【
図6】一実施形態に係る電子機器の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図7】一実施形態に係る電子機器によって測定されるノイズ電力の例を示す図である。
【
図8】一実施形態に係る電子機器によって測定されるノイズ電力の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などのような乗り物(移動体)に搭載されることで、当該移動体の周囲に存在する所定の物体を検出することができる。このために、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した送信アンテナから、移動体の周囲に送信波を送信することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した受信アンテナから、送信波が反射された反射波を受信することができる。送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は、例えば移動体に設置されたレーダセンサ等に備えられてもよい。
【0014】
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器が、乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車に限定されない。一実施形態に係る電子機器は、自動運転自動車、バス、タクシー、トラック、オートバイ、自転車、船舶、航空機、ヘリコプター、トラクターなどの農作業装置、除雪車、清掃車、パトカー、救急車、及びドローンなど、種々の移動体に搭載されてよい。また、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自らの動力で移動する移動体にも限定されない。例えば、一実施形態に係る電子機器が搭載される移動体は、トラクターにけん引されるトレーラー部分などとしてもよい。一実施形態に係る電子機器は、センサ及び所定の物体の少なくとも一方が移動し得るような状況において、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、センサ及び物体の双方が静止していても、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、本開示に含まれる自動車は、全長、全幅、全高、排気量、定員、積載量などによって限定されるものではない。例えば、本開示の自働車は、排気量が660ccより大きい自動車、及び、排気量が660cc以下の自動車、いわゆる軽自動車なども含む。また、本開示に含まれる自動車は、いわゆるガソリン車に限定されず、エネルギーの一部若しくは全部が電気を利用し、モータの動力を利用する自動車を含んでもよい。
【0015】
まず、一実施形態に係る電子機器による物体の検出の例を説明する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。
図1は、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備える電子機器を、移動体に設置した例を示している。
【0017】
図1に示す移動体100には、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備える電子機器1が設置されている。また、
図1に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載(例えば内蔵)していてもよい。電子機器1の具体的な構成については後述する。電子機器1は、後述のように、例えば送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方を備えるものとしてよい。
図1に示す移動体100は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、任意のタイプの移動体としてよい。
図1において、移動体100は、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)に移動(走行又は徐行)していてもよいし、他の方向に移動していてもよいし、また移動せずに静止していてもよい。
【0018】
図1に示すように、移動体100には、送信アンテナを備える電子機器1が設置されている。
図1に示す例において、送信アンテナ及び受信アンテナを備える電子機器1は、移動体100の前方に1つだけ設置されている。ここで、電子機器1が移動体100に設置される位置は、
図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。例えば、
図1に示すような電子機器1を、移動体100の左側、右側、及び/又は、後方などに設置してもよい。また、このような電子機器1の個数は、移動体100における測定の範囲及び/又は精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。電子機器1は、移動体100の内部に設置されているとしてもよい。移動体100の内部とは、例えばバンパー内の空間、ボディ内の空間、ヘッドライト内の空間、又は運転スペースの空間などでよい。
【0019】
電子機器1は、送信アンテナから送信波として電磁波を送信する。例えば移動体100の周囲に所定の物体(例えば
図1に示す物体200)が存在する場合、電子機器1から送信された送信波の少なくとも一部は、当該物体によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えば電子機器1の受信アンテナによって受信することにより、移動体100に搭載された電子機器1は、当該物体を検出することができる。
【0020】
送信アンテナを備える電子機器1は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、電子機器1は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係る電子機器1は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。
【0021】
図1に示す移動体100に搭載された電子機器1は、送信アンテナから送信された送信波の反射波を受信アンテナから受信する。このようにして、電子機器1は、移動体100から所定の距離内に存在する所定の物体200を検出することができる。例えば、
図1に示すように、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との間の距離Lを測定することができる。また、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との相対速度も測定することができる。さらに、電子機器1は、所定の物体200からの反射波が、自車両である移動体100に到来する方向(到来角θ)も測定することができる。以下、物体200からの反射波のような信号が自機器に到来する角度を、「到来角」とも記す。
【0022】
ここで、物体200とは、例えば移動体100に隣接する車線を走行する対向車、移動体100に並走する自動車、及び移動体100と同じ車線を走行する前後の自動車などの少なくともいずれかとしてよい。また、物体200とは、オートバイ、自転車、ベビーカー、歩行者などの人間、動物、昆虫その他の生命体、ガードレール、中央分離帯、道路標識、歩道の段差、壁、マンホール、又は障害物など、移動体100の周囲に存在する任意の物体としてよい。さらに、物体200は、移動していてもよいし、停止していてもよい。例えば、物体200は、移動体100の周囲に駐車又は停車している自動車などとしてもよい。
【0023】
図1において、電子機器1の大きさと、移動体100の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。また、
図1において、電子機器1は、移動体100の外部に設置した状態を示してある。しかしながら、一実施形態において、電子機器1は、移動体100の各種の位置に設置してよい。例えば、一実施形態において、電子機器1は、移動体100のバンパーの内部に設置して、移動体100の外観に現れないようにしてもよい。
【0024】
次に、一実施形態に係る電子機器1をより詳細に説明するに際し、一般的なミリ波方式のレーダに基づく技術の現状について記す。
【0025】
例えば自動車産業などの業界において、自動ブレーキなどに代表される先進運転支援システム(Advanced Driver Assistance System:ADAS)が普及期に入り、かつてないほどにセンシング技術が着目されている。そこで、ミリ波方式のレーダのようなセンサとして、高速、高精度、高信頼性でありながら、より安価なものが望まれるようになっている。そのようなセンサの中でも、車両周辺の障害物などを検出する装置に関しては、障害物を検出する必要のある範囲において、障害物までの距離及び障害物の方向を、高い信頼度で正確に測定することが求められる。このようなセンサとして、ミリ波方式のレーダが多く用いられている。
【0026】
また、近年、車載レーダとして複数の周波数帯を利用することが可能になりつつある。具体的には、既に利用されている周波数帯として、24GHz帯、77GHz帯、及び79GHz帯が存在する。また、将来の利用が見込まれる周波数帯として、140GHz帯が、周波数割当て機関において、国際協調を考慮しつつ、検討されている。周波数割り当て機関は、日本国においては総務省であり、世界的にはITU-R(ITU(International Telecommunication Union) Radiocommunication Sector)である。
【0027】
上述したミリ波方式のレーダの技術に基づく測距方式として、送信する電波の周波数を時間と共に一定に変化させるFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave radar)方式が広く採用されている。しかしながら、ミリ波レーダを搭載したシステムが普及すると、多くの自動車など搭載されたミリ波レーダの送信信号が互いに干渉し合うことが想定される。このような干渉が発生すると、ミリ波レーダによる正確な測距・測角性能が弱まることが予想される。FMCW方式において、周波数を変化させる幅(使用する周波数の帯域幅)が広ければ広いほど、測距・測角性能が向上する。一方、周波数を変化させる幅が広ければ広いほど、異なるレーダ間の送信信号がお互いに電波干渉を発生させて、性能劣化を招くリスクも高くなる。そこで、このような事態に対処し得るものとして、一実施形態に係る電子機器1を説明する。
【0028】
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器1の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz~30GHz付近)などのような周波数帯の電波を送信するものとして説明する。例えば、電子機器1の送信アンテナは、77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。また、電子機器1の送信アンテナは、24GHz帯、77GHz帯、79GHz帯、及び140GHz帯の少なくともいずれかの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。
【0029】
(第1実施形態)
図2は、第1実施形態に係る電子機器1の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、第1実施形態に係る電子機器1の構成の一例について説明する。
【0030】
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。以下、例として、電子機器1の送信アンテナは、24GHz帯、77GHz帯、79GHz帯、及び140GHz帯の少なくともいずれかの周波数帯域幅を有する電波を送信するような実施形態について説明する。以下の説明において、一般的なミリ波方式のレーダと同様になる説明は、適宜、簡略化又は省略する。
【0031】
図2に示すように、第1実施形態に係る電子機器1は、レーダ制御部10、周波数シンセサイザ12、送信部20、送信アンテナ23、受信部30、受信アンテナ31、及びアナログフロントエンド40を含んで構成されてよい。また、第1実施形態に係る電子機器1において、送信部20は、送信信号生成部21、及びDAC22を含んでよい。また、第1実施形態に係る電子機器1において、受信部30は、ADC32、距離推定部33、速度推定部34、角度推定部35、クラスタリング・トラッキング処理部36、及びノイズ電力測定部37を含んでよい。第1実施形態に係る電子機器1は、
図2に示す機能部のうち少なくともいずれかを含まなくてもよいし、
図2に示す機能部以外の機能部を含んでもよい。
図2に示す電子機器1は、ミリ波帯域等の電磁波を用いた一般的なレーダと基本的に同様に構成した回路を用いて構成してよい。一方、第1実施形態に係る電子機器1において、レーダ制御部10による制御、及び、ノイズ電力測定部37による動作は、従来の一般的なレーダとは異なる。
【0032】
レーダ制御部10は、電子機器1を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器1全体の動作の制御を行うことができる。レーダ制御部10は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。レーダ制御部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。第1実施形態において、レーダ制御部10は、例えばCPU(ハードウェア)及び当該CPUで実行されるプログラム(ソフトウェア)として構成してよい。レーダ制御部10は、レーダ制御部10の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。
【0033】
第1実施形態において、レーダ制御部10は、送信アンテナ23から送信される送信波の周波数を決定する。第1実施形態に係るレーダ制御部10の動作については、さらに後述する。レーダ制御部によって決定された送信波の周波数は、周波数シンセサイザ12に入力される。このため、レーダ制御部10は、周波数シンセサイザ12に接続されてよい。また、
図2に示すように、レーダ制御部10は、送信部20及び受信部30に接続されてもよい。
【0034】
周波数シンセサイザ12は、レーダ制御部10によって決定された周波数に基づいて、必要な周波数の搬送波を生成する。周波数シンセサイザ12は、例えば一般的なミリ波方式のレーダの技術に基づくものとしてよい。周波数シンセサイザ12によって生成された搬送波信号は、アナログフロントエンド40に供給される。このため、周波数シンセサイザ12は、アナログフロントエンド40に接続されてよい。
【0035】
送信部20において、送信信号生成部21は、電子機器1(送信アンテナ23)から送信する信号を発生する。第1実施形態に係る電子機器1において、送信信号生成部21は、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)を生成してよい。特に、送信信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、送信信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周期的に線形に増大するチャープ信号(79GHz帯)としてもよい。また、例えば、送信信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。送信信号生成部21が生成する信号は、例えばレーダ制御部10において予め設定されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。送信信号生成部21によって生成された信号は、DAC22に供給される。このため、送信信号生成部21は、DAC22に接続されてよい。
【0036】
DAC(デジタル・アナログ・コンバータ)22は、送信信号生成部21から供給されるデジタル信号をアナログ信号に変換する機能を有する。DAC22は、一般的なデジタル・アナログ・コンバータを含めて構成してよい。DAC22によってアナログ化された信号は、アナログフロントエンド40に供給される。このため、DAC22は、アナログフロントエンド40に接続されてよい。
【0037】
アナログフロントエンド40は、送信部20によって生成された送信変調波、及び、周波数シンセサイザ12によって生成された搬送波信号に基づいて、電子機器1(送信アンテナ23)から送信する送信波を生成する。アナログフロントエンド40は、例えば一般的なミリ波方式のレーダの技術に基づくものとしてよい。アナログフロントエンド40によって生成された送信波は、送信アンテナ23に供給される。このため、アナログフロントエンド40は、送信アンテナ23に接続されてよい。
【0038】
送信アンテナ23は、複数の送信アンテナをアレイ状に配列させたアンテナアレイとしてよい。
図2においては、送信アンテナ23の構成を簡略化して示してある。送信アンテナ23は、アナログフロントエンド40から供給される信号を、電子機器1の外部に送信する。送信アンテナ23は、一般的なミリ波レーダにおいて用いられる送信アンテナアレイを含めて構成してよい。特に、
図2に示す送信アンテナ23aは、例えば79GHz帯の電波の送信に対応した送信アンテナとしてよい。
【0039】
このようにして、第1実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナ23を備え、送信アンテナ23から送信波として送信信号(例えば送信チャープ信号)を送信することができる。
【0040】
例えば、
図2に示すように、電子機器1の周囲に物体200が存在する場合を想定する。この場合、送信アンテナ23から送信された送信波の少なくとも一部は、物体200によって反射される。送信アンテナ23から送信された送信波のうち、物体200によって反射されるものの少なくとも一部は、受信アンテナ31に向けて反射され得る。
【0041】
受信アンテナ31は、反射波を受信する。ここで、当該反射波は、送信アンテナ23から送信された送信波のうち物体200によって反射されたものの少なくとも一部としてよい。
【0042】
受信アンテナ31は、複数の受信アンテナをアレイ状に配列させたアンテナアレイとしてよい。
図2においては、受信アンテナ31の構成を簡略化して示してある。受信アンテナ31は、送信アンテナ23から送信された送信波が反射された反射波を受信する。受信アンテナ31は、一般的なミリ波レーダにおいて用いられる受信アンテナアレイを含めて構成してよい。特に、
図2に示す受信アンテナ31aは、例えば79GHz帯の電波の受信に対応した受信アンテナとしてよい。受信アンテナ31は、反射波として受信された受信信号を、アナログフロントエンド40に供給する。このため、受信アンテナ31は、アナログフロントエンド40に接続されてよい。
【0043】
上述のアナログフロントエンド40は、周波数シンセサイザ12によって生成された搬送波信号、及び、受信アンテナ31によって受信された反射波に基づいて、受信変調信号を生成する。アナログフロントエンド40によって生成された受信変調信号は、ADC32及びノイズ電力測定部37に供給される。このため、アナログフロントエンド40は、受信部30のADC32及びノイズ電力測定部37に接続されてよい。
【0044】
ADC(アナログ・デジタル・コンバータ)32は、アナログフロントエンド40から供給されるアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有する。ADC32は、一般的なアナログ・デジタル・コンバータを含めて構成してよい。ADC32によってデジタル化された信号は、距離推定部33及び速度推定部34に供給される。このため、ADC32は、距離推定部33及び速度推定部34に接続されてよい。
【0045】
距離推定部33は、ADC32から供給されるデジタル信号に基づいて、電子機器1から物体200までの距離を算出する(測距)。また、速度推定部34は、ADC32から供給されるデジタル信号に基づいて、物体200の電子機器1に対する相対速度を算出する(測速)。距離推定部33による距離の推定結果及び速度推定部34による速度の推定結果は、角度推定部35に供給されてよい。角度推定部35は、距離推定部33による距離の推定結果及び速度推定部34による速度の推定結果に基づいて、物体200の電子機器1から見た方位角(到来角)を算出する(測角)。距離推定部33による距離の推定結果、速度推定部34による速度の推定結果、及び角度推定部35による角度の推定結果の少なくともいずれかは、クラスタリング・トラッキング処理部36に供給されてよい。
【0046】
具体的には、受信部30は、I/Q変換されたデータが入力されることにより、距離(Range)方向及び速度(Velocity)方向の高速フーリエ変換(2D-FFT)をそれぞれ行う。その後、受信部30は、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、及び/又は、CFAR(Constant False Alarm Rate)などの処理による雑音点の除去による誤警報の抑制と一定確率化を行う。そして、受信部30は、例えばCFARの基準を満たす点に対して到来角度推定を行うことにより、物体200の位置を得ることとなる。受信部30によって測距、測速、及び測角された結果として生成される情報(センシング結果)は、電子機器1の外部に出力されてよい。第1実施形態に係る電子機器1における距離の推定、速度の推定、及び角度の推定は、例えば一般的なミリ波方式のレーダの技術に基づくものとしてよい。
【0047】
電子機器1は、クラスタリング・トラッキング処理部36による処理結果(センシング結果)を例えば外部の制御部に出力するインタフェースを含んで構成されてもよい。クラスタリング・トラッキング処理部36は、物体200の位置、速度、及び角度の少なくともいずれかの情報を、例えばCAN(Controller Area Network)などの信号として、電子機器1の外部に出力する。第1実施形態に係る電子機器1から出力されるセンシング結果は、例えば電子機器1の外部のECU(Electronic Control Unit)のような制御部に供給されてよい。
【0048】
このように、第1実施形態実施形態に係る電子機器1は、送信波を送信する送信アンテナ23と、送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナ31と、を備えてよい。このような構成によって、第1実施形態に係る電子機器1は、送信波として送信される送信信号及び反射波として受信される受信信号に基づいて物体を検出してよい。
【0049】
また、ノイズ電力測定部37は、アナログフロントエンド40から供給されるアナログ信号のノイズ電力を測定する。第1実施形態において、ノイズ電力測定部37は、受信アンテナ31が受信する電波におけるノイズの電力を測定してよい。例えば、ノイズ電力測定部37は、送信アンテナ23から送信波を送信していない時に、受信アンテナ31が受信する信号のノイズ電力を測定してもよい。また、例えば、ノイズ電力測定部37は、送信波のフレームにおいて送信波の送信が設定されていないタイミングで受信アンテナ31が受信する信号のノイズ電力を測定してもよい。
【0050】
後述のように、第1実施形態に係る電子機器1は、周波数の複数のセグメントにおいて電波を送信及び/又は受信し得る。このため、ノイズ電力測定部37は、送信波を受信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力を測定してもよい。また、ノイズ電力測定部37は、反射波を受信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力に基づいて、送信波を受信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力を測定してもよい。この場合、ノイズ電力測定部37は、反射波を受信する周波数の複数のセグメントにおける平均のノイズ電力に基づいて、送信波を受信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力を測定してもよい。
【0051】
ノイズ電力測定部37によって測定されたノイズ電力の情報は、レーダ制御部10に供給される。このため、ノイズ電力測定部37は、レーダ制御部10に接続されてよい。レーダ制御部10は、ノイズ電力測定部37から供給されたノイズ電力の情報に基づいて、送信波を送信する周波数の複数のセグメントのそれぞれにおいて送信波を送信する頻度を決定する。このような動作については、さらに後述する。また、レーダ制御部10は、ノイズ電力測定部37から供給されたノイズ電力の情報に基づいて、送信部20及び受信部30の少なくとも一方の動作を制御してもよい。
【0052】
次に、第1実施形態に係る電子機器1の動作を説明する。
【0053】
第1実施形態に係る電子機器1は、周波数の複数のセグメントにおいて電波を送信し得る。そこで、第1実施形態に係る電子機器1は、周波数の複数のセグメントのうち、例えばノイズ電力が低いセグメントにおいて、送信波を送信する頻度を比較的高くしてよい。一方、第1実施形態に係る電子機器1は、周波数の複数のセグメントのうち、例えばノイズ電力が高いセグメントにおいて、送信波を送信する頻度を比較的低くしてもよい。以下、このような動作について、より詳細に、例を挙げて説明する。
【0054】
図3は、第1実施形態に係る電子機器1が送信及び/又は受信する電波の周波数のセグメントにおけるノイズ電力の例を説明する図である。
図3において、横軸は送信及び/又は受信する電波の周波数を示し、縦軸はそれぞれの周波数におけるノイズ電力を示す。
【0055】
図3に示すように、第1実施形態に係る電子機器1は、79GHz帯の周波数帯域を、N1、N2、N3、及びN4の4つのセグメントに分割して、電波を送信及び/又は受信可能としてよい。第1実施形態に係る電子機器1において、ノイズ電力測定部37は、
図3に示すような4つのセグメントにおいて電波を受信すると、それぞれのセグメントにおけるノイズ電力を測定することができる。
【0056】
ノイズ電力測定部37が4つのセグメントN1乃至N4におけるノイズ電力を測定した結果、
図3に示すように、セグメントN2におけるノイズ電力が最も低かったとする。また、
図3に示すように、セグメントN3及びセグメントN4におけるノイズ電力は、セグメントN2におけるノイズ電力よりも高く、セグメントN1におけるノイズ電力よりも低かったとする。また、
図3に示すように、セグメントN1におけるノイズ電力は、4つのセグメントN1乃至N4の中で最も高かったとする。このようにノイズ電力測定部37が測定した各セグメントのノイズ電力の情報は、レーダ制御部10に供給される。
【0057】
レーダ制御部10は、ノイズ電力測定部37によって測定された各セグメントのノイズ電力に基づいて、4つのセグメントN1乃至N4のそれぞれにおいて送信波を送信する頻度を決定する。例えば、
図3に示した例において、4つのセグメントN1乃至N4の中で、セグメントN2は最もノイズ電力が低い。したがって、セグメントN2において送信波が送信されれば、電波干渉が起こるリスクは低いものと想定される。そこで、レーダ制御部10は、セグメントN2において送信波を送信する頻度を高く設定してよい。一方、例えば、
図3に示した例において、4つのセグメントN1乃至N4の中で、セグメントN1は最もノイズ電力が高い。したがって、セグメントN1において送信波が送信されれば、電波干渉が起こるリスクは高いものと想定される。そこで、レーダ制御部10は、セグメントN1において送信波を送信する頻度を低く設定してよい。本開示において、「頻度」は、時間、回数、割合又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0058】
図4は、第1実施形態に係る電子機器1が送信する送信波のフレームにおいて割り当てられる電波の周波数のセグメントの例を説明する図である。
図4において、横軸は送信フレームの時間的な長さを示し、縦軸は送信フレーム内の時間において電波を送信する周波数のセグメントを示す。
【0059】
図4に示す送信波のフレーム1及びフレーム2のそれぞれにおいて、電波の送信タイミングが周波数のセグメントN1乃至N4に割り当てられた頻度は、以下のようになっている。
セグメントN1:1回
セグメントN2:3回
セグメントN3:2回
セグメントN4:2回
このように、レーダ制御部10は、ノイズ電力測定部37によって測定されたノイズ電力が比較的低いセグメントN2において、送信波を送信する頻度は比較的高く(例えば1フレーム中3回)設定してよい。一方、レーダ制御部10は、ノイズ電力測定部37によって測定されたノイズ電力が比較的高いセグメントN1において、送信波を送信する頻度は比較的低く(例えば1フレーム中1回)設定してよい。
【0060】
図4においては、フレーム1及びフレーム2のそれぞれにおいて、電波の送信タイミングが周波数のセグメントN1乃至N4に同じ回数(頻度)で割り当てられた例を示してある。しかしながら、送信波の各フレームにおいて、電波の送信タイミングが周波数のセグメントN1乃至N4に割り当てられる回数(頻度)は異なってもよい。また、
図4においては、フレーム1及びフレーム2のみにおいて、電波の送信タイミングが周波数のセグメントN1乃至N4に割り当てられている。しかしながら、フレーム3以降においても同様の思想に基づいて、電波の送信タイミングが周波数のセグメントN1乃至N4に割り当てられてよい。
【0061】
図3及び
図4に示すように、レーダ制御部10は、セグメントN1乃至N4のうちノイズ電力が小さいセグメントほど、送信波を送信する頻度が高くなるように設定してもよい。すなわち、
図3及び
図4に示す例において、セグメントのノイズ電力が小さくなる順(N1>N3=N4>N2)に、送信波を送信する頻度が高くなるように設定してもよい。また、
図3及び
図4に示すように、レーダ制御部10は、セグメントN1乃至N4のうちノイズ電力が最小のセグメントにおいて、送信波を送信する頻度が最も高くなるように設定してもよい。すなわち、
図3及び
図4に示す例において、セグメントのノイズ電力が最小のセグメントN2において、送信波を送信する頻度が最も高く(1フレーム中3回)なるように設定してもよい。
【0062】
一方、
図3及び
図4に示すように、レーダ制御部10は、セグメントN1乃至N4のうちノイズ電力が大きいセグメントほど、送信波を送信する頻度が低くなるように設定してもよい。すなわち、
図3及び
図4に示す例において、セグメントのノイズ電力が大きくなる順(N2<N3=N4<N1)に、送信波を送信する頻度が低くなるように設定してもよい。また、
図3及び
図4に示すように、レーダ制御部10は、セグメントN1乃至N4のうちノイズ電力が最大のセグメントにおいて、送信波を送信する頻度が最も低くなるように設定してもよい。すなわち、
図3及び
図4に示す例において、セグメントのノイズ電力が最大のセグメントN1において、送信波を送信する頻度が最も高く(1フレーム中1回)なるように設定してもよい。
【0063】
レーダ制御部10が「送信波を送信する頻度を高く/低く」設定するとは、例えば、1フレームにおいて送信波を送信する回数を多く/少なく設定することとしてよい。一方、「送信波を送信する頻度を高く/低く」設定するとは、例えば、複数のフレームにおいて送信波を送信する回数の総数が多く/少なくなるように設定することとしてよい。また、レーダ制御部10が「送信波を送信する頻度を高く/低く」設定するとは、例えば、1フレームにおいて送信波を送信する時間率を高く(長い時間)/低く(短い時間)設定することとしてもよい。一方、レーダ制御部10が「送信波を送信する頻度を高く/低く」設定するとは、例えば、複数のフレームにおいて送信波を送信する時間率を全体として高く(長い時間)/低く(短い時間)設定することとしてもよい。
【0064】
レーダ制御部10は、各セグメントにおけるノイズ電力の大きさ/小ささと、送信波を送信する頻度の低さ/高さとの関係は、例えば所定の関数に基づいて設定されてよい。ここで、所定の関数とは、例えば比例関係のような線形関数及び反比例関係のような非線形関数のみならず、所定の各種関数としてもよい。また、レーダ制御部10は、各セグメントにおけるノイズ電力の大きさ/小ささと、送信波を送信する頻度の低さ/高さとの対応関係を、予め記憶していてもよい。
【0065】
図5は、第1実施形態に係る電子機器1の動作を説明するフローチャートである。
図5に示す動作は、例えば電子機器1が物体を検出する動作を開始する時点で開始してよい。
【0066】
図5に示す動作が開始すると、電子機器1のノイズ電力測定部37は、送信波を送信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力をそれぞれ測定する(ステップS1)。ステップS1において、ノイズ電力測定部37は、例えば
図3に示したように、複数のセグメントN1乃至N4におけるノイズ電力(例えば平均値)をそれぞれ測定する。
【0067】
ステップS1において、ノイズ電力測定部37は、その時点で受信した受信信号に基づいてノイズ電力を測定してよい。一方、ステップS1において、ノイズ電力測定部37は、
図5に示す動作の前のサイクルのステップS4において受信した反射波に基づいてノイズ電力を測定してよい
【0068】
ステップS1において複数のセグメントにおけるノイズ電力が測定されたら、電子機器1のレーダ制御部10は、複数のセグメントにおけるノイズ電力に応じて、複数のセグメントのそれぞれにおいて送信波を送信する頻度を決定する(ステップS2)。すなわち、ステップS2において、レーダ制御部10は、ノイズ電力測定部37によって測定されたノイズ電力に応じて、送信周波数の各セグメントそれぞれの使用率(頻度)を決定してよい。
【0069】
ステップS2において送信周波数の各セグメントそれぞれの使用率(頻度)が決定されたら、レーダ制御部10は、決定された各セグメントの使用率(頻度)に従って、送信波の周波数及び送信タイミングを設定する。このようにして送信波の準備が完了すると、レーダ制御部10は、送信部20が(送信アンテナ23から)送信波を送信するように制御する(ステップS3)。ステップS3において、レーダ制御部10は、送信波を送信する周波数の複数のセグメントにおいて送信波の周波数ホッピングを行ってもよい。
【0070】
ステップS3において送信波が送信されると、周囲に物体が存在する場合、送信波の少なくとも一部が当該物体によって反射される。電子機器1の受信部30は、このように物体によって反射された反射波を(受信アンテナ31から)受信する(ステップS4)。
【0071】
ステップS4において反射波が受信されると、受信部30は、送信波として送信される送信信号及び反射波として受信される受信信号に基づいて、物体を検出する(ステップS5)。
【0072】
電子機器1は、定期的又は不定期的に、
図5に示す動作を繰り返してもよい。また、電子機器1は、物体を検出する動作の停止が要求された時点で、
図5に示す動作を停止してもよい。
【0073】
このように、第1実施形態に係る電子機器1において、レーダ制御部10は、送信波を送信する周波数の複数のセグメントにおけるノイズ電力に応じて、送信波を送信する周波数の複数のセグメントのそれぞれにおいて送信波を送信する頻度を決定する。この場合、レーダ制御部10は、送信波を送信する周波数の複数のセグメントのうちノイズ電力が小さいセグメントほど、送信波を送信する頻度を高くしてもよい。また、レーダ制御部10は、送信波を送信する周波数の複数のセグメントのうちノイズ電力が最小のセグメントにおいて、送信波を送信する頻度を最も高くしてもよい。一方、レーダ制御部10は、送信波を送信する周波数の複数のセグメントのうちノイズ電力が大きいセグメントほど、送信波を送信する頻度を低くしてもよい。また、レーダ制御部10は、送信波を送信する周波数の複数のセグメントのうちノイズ電力が最大のセグメントにおいて、送信波を送信する頻度を最も低くしてもよい。
【0074】
第1実施形態に係る電子機器1は、使用する周波数帯域を複数のセグメントに分割し、その分割したセグメントごとに電力を測定する。電子機器1は、このようにして測定されたノイズ電力に基づいて、送信波を送信する周波数帯の使用率を制御する。したがって、複数レーダ間の干渉の影響を低減し得る。第1実施形態に係る電子機器1によれば、例えばミリ波レーダのように、割り当てられる周波数として、複数の周波数帯(例えば24GHz帯、77GHz帯、79GHz帯、及び140GHz帯など)が存在することを積極的に活用することができる。第1実施形態に係る電子機器1は、上述のいずれかの周波数帯域内において、FMCW送信周波数又はパルス圧縮送信周波数などの送信信号を、送信フレーム内で周波数ホッピングさせてもよい。これにより、第1実施形態に係る電子機器1は、複数レーダ間の干渉耐性を向上させ得る。
【0075】
このように、第1実施形態に係る電子機器1は、周波数ホッピングの周波数を決定する際、システムの周波数帯域を複数のセグメントに分割し、セグメントごとのノイズ電力を受信部30によって算出してよい。そして、第1実施形態に係る電子機器1は、周波数ホッピングにて使用するセグメントの使用率を、ノイズ電力に基づいて決定してよい。この場合、レーダ制御部10は、例えばノイズ電力に反比例する比率にて、セグメントを使用する頻度を決定してよい。
【0076】
第1実施形態に係る電子機器1によれば、送信された送信波が所定の物体に反射した反射波を受信することにより、当該物体を検出する技術において、送信波の干渉を低減し得る。
【0077】
例えば車載レーダを使用する場合、当該車載レーダを搭載する自動車などは、高速で移動したり、頻繁に向きを変更したりすることがある。また、このような車載レーダが普及すると、レーダを搭載した自動車は相当数になるため、レーダが送信する送信波の干渉を考慮する必要が生じる。第1実施形態に係る電子機器1によれば、複数レーダ間の干渉の影響を低減し得る。
【0078】
例えば、上述した特許文献1に記載の提案のようにして干渉を回避しようとすると、干渉を回避するためにレーダによる電波の送信及び/又は受信を停止する必要がある。しかしながら、このようにレーダによる電波の送信及び/又は受信を停止している期間中は、当然ながら、レーダの機能が停止することとなる。レーダの機能が停止している期間において、レーダによる測距又は測角などの情報を取得することはできない。
【0079】
また、例えば、上述した特許文献2に記載の提案のように、複数の危機において異なる周波数ホッピングパターンによる電波の送信を行うためには、複数のレーダ間で相互に情報を交換するインタフェースが必要になる。また、特許文献2に記載の提案のような電波の送信を行うためには、複数のレーダ間でタイミング同期を行うことも必要になる。レーダにはFMCW方式、FCM(Fast-Chirp Modulation)方式、及びパルス方式など、様々な方式がある。しかしながら、タイミングを同期しつつ異なるホッピングパターンを割り当てる方式においては、複数レーダが相互に同じ方式を採用している必要性がある。
【0080】
これに対し、上述した第1実施形態に係る電子機器1によれば、特許文献1又は特許文献2の提案のような不都合は生じない。すなわち、第1実施形態に係る電子機器1によれば、特許文献1に記載の提案のように、干渉を回避するためにレーダによる電波の送信及び/又は受信を停止する、という必要はない。また、第1実施形態に係る電子機器1によれば、特許文献2に記載の提案のように、複数レーダが相互に同じ方式を採用している必要性がある、ということもない。
【0081】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る電子機器について説明する。
【0082】
上述した第1実施形態に係る電子機器1は、
図3に示したように、(例えば79GHz帯のような)特定の周波数帯を複数(例えば4つ)に分割したセグメントにおいて送信波を送信した。このように、上述した第1実施形態に係る電子機器1において、送信波を送信する周波数の複数のセグメントは、特定の周波数帯域において分割されたセグメントとしてもよい。したがって、上述した第1実施形態に係る電子機器1が行う動作は、イントラバンド(Intra-Band)動作、又は帯域内動作とも記す。
【0083】
このように、第1実施形態に係る電子機器1が行うイントラバンド動作(帯域内動作)は、特定の周波数帯域内で行われる。ここで、特定の周波数帯域は、
図3に示したような79GHz帯に限定されず、例えば24GHz帯、77GHz帯、又は140GHz帯などとしてもよい。
【0084】
これに対し、第2実施形態に係る電子機器は、例えば24GHz帯、77GHz帯、及び140GHz帯などのような複数の周波数帯域幅の電波を送信してもよい。
【0085】
図6は、第2実施形態に係る電子機器の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、第2実施形態に係る電子機器の構成の一例について説明する。第2実施形態に係る電子機器は、
図2において説明した第1実施形態に係る電子機器1の一部を変更したものである。以下、
図2に示した第1実施形態に係る電子機器1と同様の内容になる説明は、適宜、簡略化又は省略する。
【0086】
図6に示すように、第2実施形態に係る電子機器2は、
図2に示した第1実施形態に係る電子機器1において、複数の周波数帯域の電波に対応するために、送信アンテナ23及び受信アンテナ31の対を複数備えている。
【0087】
図6に示すように、第2実施形態に係る電子機器2は、送信アンテナ23a、送信アンテナ23b、及び送信アンテナ23cを備えている。同様に、第2実施形態に係る電子機器2は、受信アンテナ31a、受信アンテナ31b、及び受信アンテナ31cを備えている。
【0088】
第2実施形態に係る電子機器2において、送信アンテナ23a及び受信アンテナ31aは、例えば、24GHz帯の電波を送受信するものとしてよい。また、電子機器2において、送信アンテナ23b及び受信アンテナ31bは、例えば、77GHz又は79GHz帯の電波を送受信するものとしてよい。また、電子機器2において、送信アンテナ23c及び受信アンテナ31cは、例えば、140GHz帯の電波を送受信するものとしてよい。
【0089】
図6に示す第2実施形態に係る電子機器2において、ノイズ電力測定部37は、例えば24GHz帯、77GHz帯、及び140GHz帯などのような複数の周波数帯域幅におけるノイズ電力を測定してよい。また、第2実施形態に係る電子機器2において、レーダ制御部10は、例えば24GHz帯、77GHz帯、及び140GHz帯などのような複数の周波数帯域幅において送信波を送信する頻度を決定してよい。その他、
図6に示す第2実施形態に係る電子機器2において、各機能部は、例えば24GHz帯、77GHz帯、及び140GHz帯などのような複数の周波数帯域幅に対応可能なものとしてよい。
【0090】
図7は、第2実施形態に係る電子機器2が送信及び/又は受信する電波の周波数のセグメントにおけるノイズ電力の例を説明する図である。
図3と同様に、
図7においても、横軸は送信及び/又は受信する電波の周波数を示し、縦軸はそれぞれの周波数におけるノイズ電力を示す。
【0091】
図7に示すように、第2実施形態に係る電子機器2は、周波数帯域を、例えば24GHz帯、77GHz帯、79GHz帯、及び140GHz帯の4つのセグメントに分割して、電波を送信及び/又は受信可能としてよい。第2実施形態に係る電子機器2において、ノイズ電力測定部37は、
図7に示すような4つのセグメントにおいて電波を受信すると、それぞれのセグメントにおけるノイズ電力を測定することができる。
【0092】
ノイズ電力測定部37が4つのセグメント24GHz帯乃至140GHz帯におけるノイズ電力を測定した結果、
図7に示すように、77GHz帯のセグメントにおけるノイズ電力が最も低かったとする。また、
図7に示すように、24GHz帯のセグメント及び140GHz帯のセグメントにおけるノイズ電力は、77GHz帯のセグメントにおけるノイズ電力よりも高く、79GHz帯のセグメントにおけるノイズ電力よりも低かったとする。また、
図7に示すように、79GHz帯のセグメントにおけるノイズ電力は、4つのセグメント24GHz帯乃至140GHz帯の中で最も高かったとする。このようにノイズ電力測定部37が測定した各セグメントのノイズ電力の情報は、レーダ制御部10に供給される。
【0093】
レーダ制御部10は、ノイズ電力測定部37によって測定された各セグメントのノイズ電力に基づいて、4つのセグメント24GHz帯乃至140GHz帯のそれぞれにおいて送信波を送信する頻度を決定する。例えば、
図7に示した例において、4つのセグメント24GHz帯乃至140GHz帯の中で、77GHz帯のセグメントは最もノイズ電力が低い。したがって、77GHz帯のセグメントにおいて送信波が送信されれば、電波干渉が起こるリスクは低いものと想定される。そこで、レーダ制御部10は、77GHz帯のセグメントにおいて送信波を送信する頻度を高く設定してよい。一方、例えば、
図7に示した例において、4つのセグメント24GHz帯乃至140GHz帯の中で、79GHz帯のセグメントは最もノイズ電力が高い。したがって、79GHz帯のセグメントにおいて送信波が送信されれば、電波干渉が起こるリスクは高いものと想定される。そこで、レーダ制御部10は、79GHz帯のセグメントにおいて送信波を送信する頻度を低く設定してよい。
【0094】
各セグメントのそれぞれにおいて送信波を送信する頻度が決定されたら、レーダ制御部10は、第1実施形態と同様の思想に基づいて、送信波の各フレームにおいて、電波を送信する周波数セグメント及び電波の送信タイミングを設定してよい。
【0095】
このように、第2実施形態に係る電子機器2において、送信波を送信する周波数の複数のセグメントのそれぞれは、異なる複数の周波数帯域に属するセグメントとしてもよい。上述した第2実施形態に係る電子機器2が行う動作は、インターバンド(Inter-Band)動作、又は帯域間動作とも記す。
【0096】
第2実施形態に係る電子機器2によっても、送信された送信波が所定の物体に反射した反射波を受信することにより、当該物体を検出する技術において、送信波の干渉を低減し得る。
【0097】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る電子機器について説明する。
【0098】
第3実施形態に係る電子機器は、
図6において説明した第2実施形態に係る電子機器2と同様の構成としてよい。以下、
図2に示した第1実施形態に係る電子機器1及び/
図6に示した第2実施形態に係る電子機器2と同様の内容になる説明は、適宜、簡略化又は省略する。
【0099】
第3実施形態に係る電子機器は、第1実施形態におけるイントラバンド動作(帯域内動作)と、第2実施形態におけるインターバンド動作(帯域間動作)とを組み合わせた動作を行ってよい。すなわち、第3実施形態に係る電子機器は、例えば
図7に示したような4つのセグメント24GHz帯乃至140GHz帯のそれぞれを、例えば
図3に示したような79GHz帯のように1つ以上のセグメントにさらに分割してよい。
【0100】
図8は、第3実施形態に係る電子機器が送信及び/又は受信する電波の周波数のセグメントにおけるノイズ電力の例を説明する図である。
図3及び
図7と同様に、
図8においても、横軸は送信及び/又は受信する電波の周波数を示し、縦軸はそれぞれの周波数におけるノイズ電力を示す。
【0101】
図8に示すように、第3実施形態に係る電子機器は、周波数帯域を、例えば24GHz帯、77GHz帯、79GHz帯、及び140GHz帯の4つのセグメントに分割してよい。さらに、第3実施形態に係る電子機器は、4つのセグメントのそれぞれを、さらに1つ以上のセグメントに分割してよい。
【0102】
図8に示す例において、第3実施形態に係る電子機器は、24GHz帯のセグメントを、さらに2つのセグメントL1及びL2に分割している。また、
図8に示す例において、第3実施形態に係る電子機器は、77GHz帯のセグメントを、それ以上のセグメントに分割していない(1つのセグメントM1に分割)。
図8に示す例において、第3実施形態に係る電子機器は、79GHz帯のセグメントを、さらに4つのセグメントN1乃至N4に分割している。
図8に示す例において、第3実施形態に係る電子機器は、140GHz帯のセグメントを、さらに2つのセグメントK1及びK2に分割している。
【0103】
このように、第3実施形態に係る電子機器は、
図8に示すような9つのセグメントにおいて電波を送信及び/又は受信可能としてよい。第3実施形態に係る電子機器において、ノイズ電力測定部37は、
図8に示すような9つのセグメントにおいて電波を受信すると、それぞれのセグメントにおけるノイズ電力を測定することができる。
【0104】
ノイズ電力測定部37が9つのセグメントにおけるノイズ電力を測定した結果、
図8に示すように、24GHz帯のセグメントL2におけるノイズ電力が最も低かったとする。また、
図8に示すように、79GHz帯のセグメントN1におけるノイズ電力は、9つのセグメントの中で最も高かったとする。このようにノイズ電力測定部37が測定した各セグメントのノイズ電力の情報は、レーダ制御部10に供給される。
【0105】
レーダ制御部10は、ノイズ電力測定部37によって測定された各セグメントのノイズ電力に基づいて、9つのセグメントのそれぞれにおいて送信波を送信する頻度を決定する。例えば、
図8に示した例において、9つのセグメントの中で、24GHz帯のセグメントL2は最もノイズ電力が低い。したがって、24GHz帯のセグメントL2において送信波が送信されれば、電波干渉が起こるリスクは低いものと想定される。そこで、レーダ制御部10は、24GHz帯のセグメントL2において送信波を送信する頻度を高く設定してよい。一方、例えば、
図8に示した例において、9つのセグメントの中で、79GHz帯のセグメントN1は最もノイズ電力が高い。したがって、79GHz帯のセグメントN1において送信波が送信されれば、電波干渉が起こるリスクは高いものと想定される。そこで、レーダ制御部10は、79GHz帯のセグメントN1において送信波を送信する頻度を低く設定してよい。
【0106】
各セグメントのそれぞれにおいて送信波を送信する頻度が決定されたら、レーダ制御部10は、第2実施形態と同様の思想に基づいて、送信波の各フレームにおいて、電波を送信する周波数セグメント及び電波の送信タイミングを設定してよい。
【0107】
このように、第3実施形態に係る電子機器2において、送信波を送信する周波数の複数のセグメントは、異なる複数の周波数帯域のいずれかに属するとともに、当該異なる複数の周波数帯域のそれぞれにおいて分割されたセグメントとしてもよい。上述した第3実施形態に係る電子機器2が行う動作は、イントラバンド動作とインターバンド動作とのハイブリッド型動作とも記す。
【0108】
第3実施形態に係る電子機器によっても、送信された送信波が所定の物体に反射した反射波を受信することにより、当該物体を検出する技術において、送信波の干渉を低減し得る。
【0109】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことができる。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0110】
上述した実施形態は、電子機器1又は2としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1又は2のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1又は2のような機器が実行するプログラムとして実施してもよい。
【0111】
上述のように、各実施形態に係る電子機器において、送信波を送信する周波数の複数のセグメントは、24GHz帯、77GHz帯、79GHz帯、及び140GHz帯の少なくともいずれかに含まれるものとしてもよい。しかしながら、各実施形態に係る電子機器において、送信波を送信する周波数の複数のセグメントは、前述した周波数帯域以外の周波数帯域に含まれるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1,2 電子機器
10 レーダ制御部
12 周波数シンセサイザ
20 送信部
21 送信信号生成部
22 DAC
23 送信アンテナ
30 受信部
31 受信アンテナ
32 ADC
33 距離推定部
34 速度推定部
35 角度推定部
36 クラスタリング・トラッキング処理部
37 ノイズ電力測定部
40 アナログフロントエンド