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特許7539277椎間インプラント、および椎間インプラントと挿入装置とを含むシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】椎間インプラント、および椎間インプラントと挿入装置とを含むシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20240816BHJP
   A61F 2/46 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A61F2/44
A61F2/46
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020153796
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2021045544
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】19198123
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/901,944
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティモ・ビーダーマン
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-042619(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0265008(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0317320(US,A1)
【文献】特開2013-000595(JP,A)
【文献】米国特許第08545566(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0165943(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
A61F 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎間インプラントであって、
椎間腔に挿入されるように構成された本体と、
前記本体に設けられ、挿入装置(100)の駆動シャフト(110)の係合部分(111)を内部に収容するように構成され、前記本体の外側から開口部(11)を通してアクセス可能である、中空空間(10)とを含み、
前記開口部(11)は、前記係合部分(111)が前記中空空間(10)内にある場合に、前記椎間インプラントおよび前記挿入装置が互いに対して回転軸(R)の周りを少なくとも第1の角度位置から第2の角度位置へ旋回することを可能にするように細長くなっており、
前記椎間インプラントはさらに、少なくとも第1の当接面(21)および第2の当接面(22)を含み、前記第1の当接面(21)および前記第2の当接面(22)は各々、前記挿入装置(100)が前記第1の角度位置または前記第2の角度位置で前記椎間インプラントに対して締付けられる場合に前記椎間インプラント(1、1000)と前記挿入装置(100)との間に形状嵌合接続を提供するために、前記挿入装置(100)に形成された当接面(123)に係合するように構成され、
前記椎間インプラント(1、1000)での前記第1の当接面(21)および前記第2の当接面(22)は平面を含む、椎間インプラント。
【請求項2】
前記中空空間(10)は球状部分(12)を含み、前記係合部分は、前記中空空間(10)の前記球状部分(12)の球体半径と一致する球体半径を有する球状部分(112)を有する、請求項1に記載の椎間インプラント。
【請求項3】
前記回転軸(R)は、前記中空空間(10)の前記球状部分(12)の中心点を通って延在し、細長い前記開口部(11)の縁によって規定される平面と略平行である軸によって規定される、請求項2に記載の椎間インプラント。
【請求項4】
前記本体は中実部分(3)を含み、前記中空空間(10)は、前記本体の前記中実部分(3)におけるくぼみによって形成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の椎間インプラント。
【請求項5】
記挿入装置(100)での対応する前記当接面(123)は平面を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の椎間インプラント。
【請求項6】
前記第1の当接面(21)は、前記本体の外面に設けられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の椎間インプラント。
【請求項7】
前記第1の当接面(21)は、細長い前記開口部(11)に隣接する領域において設けられる、請求項6に記載の椎間インプラント。
【請求項8】
前記第2の当接面(22)は、前記本体の外面に設けられる、請求項1~のいずれか1項に記載の椎間インプラント。
【請求項9】
前記第2の当接面(22)は、細長い前記開口部(11)に隣接する領域において設けられる、請求項8に記載の椎間インプラント。
【請求項10】
前記第1の当接面(21)および前記第2の当接面(22)は、前記第1および前記第2の角度位置にそれぞれ対応する位置に設けられている、請求項1~のいずれか1項に記載の椎間インプラント。
【請求項11】
前記第1および前記第2の角度位置は、互いに対して約90°回転されている、請求項10に記載の椎間インプラント。
【請求項12】
なくとも第3の当接面(23)をさらに含み、前記第3の当接面(23)は、前記挿入装置(100)が前記椎間インプラントに対して締付けられる場合に前記椎間インプラント(1、1000)と前記挿入装置(100)との間に形状嵌合接続を提供するために、前記挿入装置での対応する前記当接面(123)に係合するように構成される、請求項1~11のいずれか1項に記載の椎間インプラント。
【請求項13】
前記第3の当接面(23)は、前記本体の外側に、細長い前記開口部(11)に隣接して形成された、請求項12に記載の椎間インプラント。
【請求項14】
前記第3の当接面(23)は、前記第1の当接面(21)と前記第2の当接面(22)との間に位置する、請求項12または13に記載の椎間インプラント。
【請求項15】
前記第3の当接面(23)は、0°~90°の中間角度位置に対応する請求項14に記載の椎間インプラント。
【請求項16】
前記椎間インプラントが前記挿入装置に対して動かされる場合に角度範囲における複数の角度位置を達成し、前記挿入装置(100)が前記椎間インプラントに対して締付けられる場合に前記椎間インプラント(1、1000)と前記挿入装置(100)との間に特定の角度位置で圧力嵌合接続を提供するために、前記挿入装置(100)上の対応する案内面(124)と協働するように構成された、案内面(24、25)をさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の椎間インプラント。
【請求項17】
前記椎間インプラントでの前記案内面(24、25)および前記挿入装置での対応する前記案内面(124)は、円筒状である、請求項16に記載の椎間インプラント。
【請求項18】
前記本体は、2つの対向する長い側面(2a、2b)と、前記長い側面間にそれぞれある2つの対向する短い側面(2c、2d)とを含み、前記短い側面は前記長い側面よりも短く、細長い前記開口部(11)は、1つの長い側面(2a)から隣接する短い側面(2c)への移行部に設けられる、請求項1~17のいずれか1項に記載の椎間インプラント。
【請求項19】
細長い前記開口部(11)とは異なる位置にあり、前記挿入装置(100)に対する前記椎間インプラント(1、1000)の単一の角度位置で前記係合部分(111)を収容するように構成された、少なくとも1つのさらなる開口部(30、30’)をさらに含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の椎間インプラント。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の椎間インプラントと、挿入装置とを含む、システムであって、前記挿入装置は、
前記係合部分(111)が端に設けられた駆動シャフト(110)と、
前記駆動シャフト(110)を可動に保持して案内する案内スリーブ(120)とを含み、前記案内スリーブ(120)は、対応する前記当接面(123)およびオプションで案内面(124)を含む、システム。
【請求項21】
前記当接面(123)および案内面(124)を前記スリーブの自由端に含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記係合部分(111)は、前記係合部分が旋回可能である前記中空空間(10)内での第1の構成と、前記係合部分が前記椎間インプラントに対して締付けられる第2の構成とを呈することができる、請求項20または21に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、椎間インプラント、およびそのような椎間インプラントのための挿入装置に関する。椎間インプラントおよび挿入装置は、たとえば、椎間板が損傷した場合の脊椎固定術のために使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
腰椎または胸椎椎体間固定手術は、最もよく行なわれる、機器化された脊椎固定手術のうちの1つである。とりわけ、腰椎の椎体間固定術のための公知の外科的アプローチは、後方腰椎椎体間固定術(posterior lumbar interbody fusion:PLIF)、経椎間孔的腰椎椎体間固定術(transforaminal lumbar interbody fusion:TLIF)、前方腰椎椎体間固定術(anterior lumbar interbody fusion:ALIF)、前側方ALIF、および側方椎体間固定術を含む。
【0003】
たとえばTLIFにとって好適である椎間インプラントおよびそれを挿入するための装置が、特許文献1に記載されている。この椎間インプラントは、上面と、下面と、上面と下面との間に延在する側壁と、椎間インプラント内に形成され、側壁のくぼんだ部分を通って延在する細長い開口部を通してアクセス可能である中空空間とを含む。中空空間は、挿入ツールの駆動シャフトの係合部分を受けるように形作られる。椎間インプラントは、互いに面し、駆動シャフトを可動に保持する挿入ツールのスリーブの一部による摺動係合のために構成された、少なくとも2つの案内面を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】US2017/0056194 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の基盤となる目的は、拡大された応用分野を有する、改良されたかまたは代替的な椎間インプラント、およびその挿入装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の椎間インプラントによって、および、請求項15に記載のそのような椎間インプラントと挿入装置とを含むシステムによって解決される。さらなる展開が従属請求項で与えられる。
【0007】
この椎間インプラントは、椎間インプラントに対する挿入装置の旋回を可能にするとともに、挿入装置に対して椎間インプラントを少なくとも2つの旋回位置で形状嵌合接続によってロックするように設計されている。そのような形状嵌合接続は、摩擦に基づく圧力嵌合接続と比べて、より頑丈である。これは、大きい力がしばしば必要とされる椎間インプラントの挿入時の安全性を強化する。
【0008】
さらに、挿入装置との形状嵌合接続によって規定された固定位置で椎間インプラントを挿入すること、および、必要であれば、形状嵌合接続を解除した後にインプラントの位置を調節し、インプラントが依然として挿入装置に安全に接続されたままで挿入装置に対してインプラントを旋回させることが可能である。そのような手順により、インプラントの位置の訂正を行なうことができる。
【0009】
さらなる局面によれば、椎間インプラントは、椎間インプラントと挿入装置との間の形状嵌合接続のために異なる旋回角度を規定するための3つ以上の異なる面を含んでいてもよい。したがって、単一の椎間インプラントにより、椎間腔への異なるアクセス経路が可能であってもよく、異なる手術手法が実現され得る。よって、椎間インプラントの応用分野はさらに拡大され得る。
【0010】
さらに別の局面によれば、椎間インプラントは、案内面に沿った椎間インプラントおよび挿入装置の互いに対する旋回、ならびに、協働する案内面に沿った特定の位置でのインプラントおよび挿入装置の互いに対する摩擦クランプのための少なくとも1つの案内面を含んでいてもよい。
【0011】
さらに別の局面によれば、椎間インプラントは、インプラント上の他の位置で挿入装置を旋回不能に受けるためのさらなる受け部を含んでいてもよい。
【0012】
さらに別の局面によれば、椎間インプラントは、椎間インプラントを患者の体内に永続的設置のために挿入する前の試行手順のために使用されるダミーインプラントまたは検査インプラントであり得る。
【0013】
このため、椎間インプラントは、全く同一の椎間インプラントおよび挿入装置を使用して、たとえばTLIF、ALIF、前側方ALIF、PLIF、および側方椎体間固定術といったさまざまな手術手順のために使用され得るが、手術手順はそれらに限定されない。インプラントを挿入装置に接続する可能性の拡大により、インプラントは、脊椎への前方および側方アプローチなどにおける困難な解剖学的状況の場合に特に有用であり得る。
【0014】
さらなる特徴および利点は、添付図面による実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】挿入装置が接続された、第1の実施形態に従った椎間インプラントのシステムの斜視図である。
図2】挿入装置との接続のための細長い開口部を示す一方側からの図1の椎間インプラントの斜視図である。
図3】挿入装置の取付けのためのさらなる開口部を示す別の側からの図1および図2の椎間インプラントの斜視図である。
図4図1の挿入装置の駆動シャフトの前方部分の斜視図である。
図5図4の駆動シャフトの前方部分の側面図である。
図6】90°回転された図5の駆動シャフトの前方部分の側面図である。
図7図1の挿入装置の案内スリーブの前方部分の斜視図である。
図8図7のスリーブの前方部分の側面図である。
図9】90°回転された図8のスリーブの前方部分の側面図である。
図10a図1~3の椎間インプラントに図4~6の挿入装置の駆動シャフトの前方部分を接続するステップの斜視図である。
図10b図1~3の椎間インプラントに図4~6の挿入装置の駆動シャフトの前方部分を接続するステップの斜視図である。
図10c図1~3の椎間インプラントに図4~6の挿入装置の駆動シャフトの前方部分を接続するステップの斜視図である。
図11a】椎間インプラントを側壁の半分の高さで通って、かつ、挿入装置の長手方向軸を通って延在する平面で断面が取られた、椎間インプラントに挿入装置の前方部分を接続するステップの断面図である。
図11b】椎間インプラントを側壁の半分の高さで通って、かつ、挿入装置の長手方向軸を通って延在する平面で断面が取られた、椎間インプラントに挿入装置の前方部分を接続するステップの断面図である。
図11c】椎間インプラントを側壁の半分の高さで通って、かつ、挿入装置の長手方向軸を通って延在する平面で断面が取られた、椎間インプラントに挿入装置の前方部分を接続するステップの断面図である。
図11d】椎間インプラントを側壁の半分の高さで通って、かつ、挿入装置の長手方向軸を通って延在する平面で断面が取られた、椎間インプラントに挿入装置の前方部分を接続するステップの断面図である。
図12】挿入装置が椎間インプラントの長手方向軸との間にほぼ45°の角度を形成する、椎間インプラントと挿入装置との間の形状嵌合係合の斜視図である。
図13】挿入装置が椎間インプラントの長手方向軸との間にほぼ90°の角度を形成する、椎間インプラントと挿入装置との間の形状嵌合接続の斜視図である。
図14】挿入装置が椎間インプラントの長手方向軸との間にほぼ0°の角度を形成する、椎間インプラントと挿入装置との間の形状嵌合接続の斜視図である。
図15】挿入装置が、椎間インプラントを回転させて摩擦によってクランプすることを可能にする、椎間インプラントに対する位置にある、椎間インプラントと挿入装置との間の接続の斜視図である。
図16図13に示すようなほぼ90°の角度を形成する、椎間インプラントと挿入装置との間の接続の断面図である。
図17図14に示すようなほぼ0°の角度を形成する、椎間インプラントと挿入装置との間の接続の断面図である。
図18】さまざまな中間位置を呈すること、および、図15に示すように中間位置でインプラントおよび挿入装置を摩擦クランプすることを可能にする、椎間インプラントと挿入装置との間の接続の断面図である。
図19】挿入装置がさらなる受け部に接続された椎間インプラントの斜視図である。
図20図19の挿入装置を備える椎間インプラントの断面図である。
図21】挿入装置がさらに別の受け部に接続された椎間インプラントの斜視図である。
図22図21の挿入装置を備える椎間インプラントの断面図である。
図23】ALIF椎間インプラントとして形成された椎間インプラントのさらに変更された一実施形態の斜視図である。
図24】挿入装置が取付けられた、図23の椎間インプラントの斜視図である。
図25図24の椎間インプラントおよび挿入装置の上方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、椎間インプラント、および椎間インプラント1を椎間腔に挿入するための挿入装置100の斜視図を示す。椎間インプラント1は、椎間インプラント1の高さ範囲を規定する略垂直の側壁2を含む本体を含む。側壁2は、内側中実部分3と一体的に形成され、1つ以上の内側中空空間4を包囲する。中空空間4は、椎間インプラント1の上面5aおよび下面5bに向かって開いている。
【0017】
より詳細には、側壁2は、一体的に形成される前壁2a、対向する後壁2b、右側壁2c、および左側壁2dから構成されており、右側壁および左側壁が前壁2aおよび後壁2bを互いに接続するようになっている。前壁2aは椎間インプラント1の前方壁を表わし、後壁2bは椎間インプラント1の後方壁を表わす。前壁2aおよび後壁2bは右側壁2cおよび左側壁2dよりも長くてもよく、そのため、椎間インプラントは細長い外側輪郭を有する。実施形態では、前壁2aおよび後壁2bは互いに略平行であり、椎間インプラントの長手方向中心軸LI(図11aに示す)を規定する。オプションで、内壁6a、6bが、前壁2aから後壁2bへ円弧状に延在してもよい。双方の内壁6a、6bは、前壁2aおよび後壁2bの中心を通って高さ方向に延在する矢状面S(図11aに示す)に対して対称的であってもよい。中実部分3は、前壁2aから、後壁2bから離れたところまで延在する。それは、以下に説明されるようなくぼみの形をした受け部が、挿入装置100との係合のための十分な深さを有して中実体3に形成され得るような、前壁2aから後壁2bに向かう長さを有する。側壁2は、上面5aおよび下面5bが中実部分3を越えて延在するような高さを有していてもよい。
【0018】
中空空間4は、骨移植材料で充填されるように構成される。また、たとえば歯7などの係合部分が、椎間インプラントの上面5aおよび下面5b上に設けられてもよく、それらは、隣接する椎体の終板への食い込みを容易にし得る。椎間インプラント1のくさび形状をもたらす角度を上面5aおよび下面5bが形成するように、前壁2aおよび後壁2bは、異なる高さを有していてもよい。
【0019】
特に図2で詳細に見えるように、側壁2に細長い開口部11を形成するくぼみ10が、前壁2aから右側壁2cへのの移行部に設けられる。くぼみ10は、挿入装置の一部を受けるための中空空間を椎間インプラント1内に規定する。それは中実部分3へと延在して、ほぼ90°の角度を有する隅をそこに形成する。それにより、くぼみ10の左端壁および右端壁が、ほぼ90°の角度を形成する。くぼみ10、および、それとともに開口部11は、椎間インプラント1の高さ方向における側壁2の中央に設けられてもよい。
【0020】
椎間インプラント1の高さ方向におけるくぼみ10の幅は、挿入装置の係合部分が、ある配向では差込み可能であるものの、傾斜した配向では差込み不能であるようになっている。くぼみ10の上壁および底壁は平面状であってもよく、互いに略平行に、かつ側壁2に略垂直に延在してもよい。開口部11は、前壁2aから、前壁2aと右側壁2cとの間の隅を通って、右側壁2cへと周方向に延在する。よって、細長い開口部11およびくぼみ10は、挿入装置の駆動シャフトが椎間インプラント1の長手方向中心軸LIとの間に0°の角度および90°の角度を呈し得るようなサイズを有する。
【0021】
くぼみ10の内側の隅では、挿入装置100の係合部分を旋回可能に受けるように構成された球形状くぼみ12が形成される。球形状くぼみ12の半径は、駆動シャフトの係合部分の外面の半径と一致する。球状くぼみ12は、挿入装置の係合部分がそこで約90°またはそれ以上の角度範囲で旋回することを可能にするような範囲を有する。球形状くぼみ12の中心を通り、かつ側壁2と平行に延在する軸Rが、椎間インプラント1と挿入装置100との間の回転相対運動のための回転軸R、より具体的には、旋回相対運動のための旋回軸を形成する。
【0022】
側壁2は、形状嵌合係合を達成するための挿入装置用の当接面を提供するように、および/または、挿入装置の旋回運動のための案内面を提供するように形作られる外面を、細長い開口部11の領域に有する。図11aでより詳細に見えるように、側壁2は、くぼみ10の領域において、当接面の存在による略多角形の輪郭で、外向きに突出する。
【0023】
特に図2図3、および図11aを参照して、第1の当接面21が、右側壁2cへと延在する細長い開口部11の側縁の周りに設けられる。第1の当接面21は略平面状であり、挿入装置の長手方向中心軸L(図4~8を参照)と椎間インプラントの長手方向中心軸LIとの間の配向が0°で挿入装置との形状嵌合係合を提供するように構成される。第2の当接面22が、前壁2aへと延在する細長い開口部11の対向する側縁の周りに設けられる。第2の当接面22は略平面状であり、挿入装置の長手方向中心軸Lと椎間インプラント1の長手方向中心軸LIとの配向が90°で挿入装置との形状嵌合係合を提供するように構成される。第3の当接面23が、開口部11のほぼ中心の周りに延在し、第1の当接面21および第2の当接面22との間に45°の角度を形成する。よって、第3の当接面23は、挿入装置の長手方向中心軸Lと椎間インプラント1の長手方向中心軸LIとの配向が45°で挿入装置との形状嵌合係合を提供するように構成される。
【0024】
側壁2はさらに、第1の案内面24を含み、それは、第1の当接面21と第3の当接面23との間に設けられ、回転軸Rと同軸の円筒軸を有する円筒状である。第2の案内面25が、第2の当接面22と第3の当接面23との間に設けられ、それも、回転軸Rと同軸の円筒軸を有する円筒状である。第1の案内面24および第2の案内面25は、挿入装置が椎間インプラント1に接続されて若干摩擦クランプされる場合に、椎間インプラント1と挿入装置100との間の案内される回転運動、より特定的には旋回運動を可能にする。
【0025】
オプションで、椎間インプラント1は、さまざまな外科的アプローチで挿入装置を用いて椎間インプラントを配置することを可能にするために、挿入装置100との接続のためのさらなる受け部、たとえばくぼみを、側壁2に含む。図示された実施形態では、椎間インプラントは、前壁2aのほぼ中心にある追加のくぼみ30と、左側壁2bにある追加のくぼみ30’とを含む。
【0026】
くぼみ30、30’は各々、側壁2の上縁および下縁と平行である平らな上縁および下縁を有する細長い開口部31を提供するように、切取られた対向する両側を有する円に対応する全体的内部断面を有する。くぼみ30、30’のサイズは、駆動シャフトの係合部分が、ある配向でのみ挿入可能であるものの、傾斜した配向では挿入不能であるようになっている。たとえば図11a~11cにより詳細に示すように、各くぼみ30、30’は内側の球形状くぼみ32を含み、その半径は、駆動シャフトの係合部分の半径と一致し、そのため、係合部分は、90°傾斜した配向を呈するように内部で回転され得る。
【0027】
ここで図1~8を参照して、挿入装置100を説明する。挿入装置100は、駆動シャフト110と、駆動シャフト110を内部で受ける案内スリーブ120と、ハンドル130と、回転作動ボタン135と、軸方向位置調節装置140とを含む。駆動シャフト110は案内スリーブ120内で可動に案内され、軸方向位置調節装置140を作動させることによって案内スリーブ120に対して前進または後退され得る。また、駆動シャフト110は、回転作動ボタン135を作動させることによって回転され得る。なお、駆動シャフトの軸方向変位および駆動シャフトの回転は、さまざまなやり方で達成されてもよい。
【0028】
駆動シャフト110は、挿入装置の長手方向軸Lを規定する。それは、図4~6により詳細に示す前方部分を有する。前方部分は、球の一区分の形状を有する球面112を有する、部分的に球形状の係合部分111を含む。球面112は、対向する平面113を生み出すように球の対向区分を除去することによって得られ得る。よって、係合部分111は、平面113間の厚さが、椎間インプラント1の高さ方向における細長い開口部11の幅およびオプションのくぼみ30、30’の開口部31の幅よりも若干小さい、平たくなった形状を有する。これは、平面113が側壁2の高さ方向に垂直に延在する配向で、係合部分111を椎間インプラント1のくぼみ10に、およびオプションでくぼみ30、30’に挿入することに可能にする。
【0029】
平面113の少なくとも一方上に、好ましくは双方上に、長手方向に延在する位置決めマーク114が設けられ、それは、挿入装置の長手方向中心軸Lと平行に延在する。
【0030】
係合部分111は、ネック部分116を介して主要部分115に接続される。ネック部分116は、係合部分111の球面部分112の最大直径よりも小さい外径を有する。主要部分115は、ネック部分116よりも大きい直径を有していてもよい。係合部分111の球状区分形状部分112は、それがいったん椎間インプラント1のくぼみ10に挿入されて球状くぼみ12に係合すると、またはオプションでくぼみ30、30’に挿入されて球状くぼみ32に係合すると、係合部分111が球状くぼみ12内で、またはオプションで球状くぼみ32内で旋回できるように90°傾斜され得るようなサイズを有する。
【0031】
案内スリーブ120の前方部分を、図7~9により詳細に示す。駆動シャフト110が案内スリーブ120内に配置されると、係合部分111が案内スリーブ120の前方部分から突出する。2つの対向する円筒状突出部122が、案内スリーブ120の最外端を形成する。円筒状突出部122は、それらがくぼみ10、30、30’のそれぞれに入り込むようなサイズを有する。管状の案内スリーブ120の端面は、平面123と、凹面、より詳細には円筒面124とを含み、円筒面124は、2つの突出部122間に配置され、その円筒軸が長手方向中心軸Lに垂直である。平面123はこのため、案内スリーブ120が側壁2に押付けられた場合に、椎間インプラント1の側壁2にある第1または第2または第3の当接面に当接するための当接面を形成する平面部分を、各突出部122に隣接して形成する。円筒面124は、挿入装置に対する椎間インプラントの案内された回転運動を可能にするために、椎間インプラントの側壁2にある第1の案内面24または第2の案内面25と協働するように構成された案内面を形成する。よって、円筒状案内面124の半径は、椎間インプラント1の側壁上の円筒状案内面24、25の半径に対応する。
【0032】
円筒状突出部122に長手方向に隣接する案内スリーブ120の外壁に、2つの対向する位置決め平坦部125が設けられてもよい。位置決め平坦部125は円筒状突出部122の位置を示しており、椎間インプラントとの接続時に挿入装置を正しく配向するために機能してもよい。さらに、案内スリーブ120の前方部分の外側に、長手方向に延在する少なくとも1つの位置決めマーク126が設けられてもよく、それは位置決め平坦部125から90°ずらされ、円筒状案内面124の位置を示している。
【0033】
駆動シャフト110が案内スリーブ120に挿入され、係合部分111が案内スリーブ120の前方部分から突出すると、駆動シャフト110は、軸方向位置調節装置140を作動させることによって前方へ押され、後退され得る。突出部122のサイズは、係合部分111が係合部分111の90°直立位置でのみ突出部122間で後退され得るようになっている。
【0034】
椎間インプラント1は、たとえば、チタンまたはステンレススチールで、もしくは、任意の生体適合性金属または金属合金またはプラスチック材料で作られてもよい。生体適合性合金として、NiTi合金、たとえばニチノールが使用されてもよい。他の材料は、マグネシウムまたはマグネシウム合金であり得る。使用される生体適合性プラスチック材料は、たとえば、ポリエーテルエーテルケトン(polyether ether ketone:PEEK)またはポリ-L-ラクチド酸(poly-L-lactide acid:PLLA)であってもよい。また、挿入装置は、椎間インプラントと同じ材料または別の材料で作られてもよい。
【0035】
次に、椎間インプラント1および挿入装置の動作を説明する。まず、図10a~11dを参照して、椎間インプラント1に挿入装置100を接続するステップを説明する。図10aおよび図11aに示すように、駆動シャフト110の係合部分111が、案内スリーブ120の前方部分から突出する。係合部分111は、平面113が細長い開口部11の上縁および下縁と平行であるような態様で、椎間インプラントに対して配向される。この正しい配向は、案内スリーブ120上の位置決めマーク126と整列される位置決めマーク114の助けを借りて、容易に見出すことができる。図10bおよび図11bにさらに示すように、球面部分112がくぼみ10の隅に当接するまで、係合部分111が細長い開口部11を通ってくぼみ10に挿入される。側壁2が案内スリーブ120の前方部分の当接面123に当接し得るように、案内スリーブ120の円筒状突出部122がくぼみ10に入る。図10bおよび図11bに示す挿入位置では、椎間インプラントの第3の当接面23が、案内スリーブ120の当接面123に接触する。よって、挿入装置の長手方向軸Lは、椎間インプラント1の長手方向中心軸LIとの間に45°の角度を形成する。
【0036】
次に、図10cおよび図11cで説明されるように、平面113が挿入装置の長手方向軸Lに垂直に延在するように、駆動シャフト110が椎間インプラント1の球状くぼみ12内で回転され、より具体的には傾斜される。この配向では、係合部分の球状部分112は、椎間インプラント1の球状くぼみ12内で旋回可能である。この90°の回転は、ハンドルでボタン135を作動させることによって行なわれてもよい。
【0037】
最後に、図11dのまっすぐな矢印によって示されるように、駆動シャフト110が後方へ引っ張られる。それにより、それは、くぼみ10に入り得る円筒状突出部122間で動き得る。係合部分111がくぼみ10および球状くぼみ12内で垂直に配向される場合、すなわち、平面113が回転軸と平行に延在する場合、係合部分111は、開口部11を通ってくぼみ10から取り外されることができない。係合部分111がくぼみ30、30’内で垂直に配向される場合も、係合部分は、開口部31をそれぞれ通って取り外されることができない。同時に、挿入装置が椎間インプラントに対して締付けられると、椎間インプラントの当接面23と案内スリーブ120の当接面123とは互いに押付けられる。これらの平らな当接面により、挿入装置に対する椎間インプラントの回転、より詳細には旋回が防止されるような形状嵌合接続が提供される。椎間インプラントに対する挿入装置の最終的な締付けにより、接続がロックされる。
【0038】
図12~19は、挿入装置が椎間インプラント1に対して呈し得る異なる配向を示す。図12では、第3の当接面23が、案内スリーブ120上に設けられた平面状当接面123と協働する。よって、挿入装置と椎間インプラントとは、45°の角度を形成する。図13および図16では、椎間インプラントは第2の当接面22で、案内スリーブ120の対応する当接面123に当接する。よって、挿入装置と椎間インプラントとは、90°の角度を形成する。図14および図17では、椎間インプラントは第1の当接面21で、案内スリーブ120の対応する当接面123に当接する。よって、挿入装置と椎間インプラントとは、0°の角度を形成する。図15および図18では、椎間インプラントはその円筒状案内面24で、挿入装置の円筒状案内面124に当接する。これらの面は挿入装置に対してインプラントを旋回させることを可能にするため、インプラントに対する挿入装置のさまざまな角度位置を呈することを可能にする摩擦係合が存在する。各位置は、係合する面同士が互いに押付けられるように駆動シャフト110を後退させることによって固定され得る。それにより、接続が摩擦クランプによって固定される。
【0039】
図19および図20は、前壁2aにおける追加のくぼみ30を通した椎間インプラントの係合を示す。図21および図22は、左側壁2dにおける追加のくぼみ30’を通した椎間インプラントの係合を示す。インプラントおよび挿入装置は、単一の位置でともにロックされ得る。
【0040】
一般に、使用時に、係合部分111が90°傾斜した直立位置にある場合、それは回転軸Rの周りを自由に旋回可能であるため、椎間インプラントに対する挿入装置の複数の角度位置を調節することができる。係合部分111が直立位置にある状態で駆動シャフト110が後退される場合、係合部分は、挿入装置とインプラントとが互いに引っ張られるように、くぼみ10の壁を内側から圧迫する。それにより、さまざまな角度位置を固定することができる。当接面を用いて、例示的な実施形態に示すような0°、90°、または45°といった予め規定された角度位置を、形状嵌合態様で固定することができる。案内面および圧力嵌合接続の助けを借りて、中間角度位置が達成されてもよい。固定を緩めることは、インプラントから挿入装置を外すことなく、椎間インプラントおよび挿入装置の相対位置を訂正することを可能にする。これは、椎間腔への側方または前方アプローチにとって特に有用であり得る。係合部分111を90°傾斜させ、それを開口部11を通して取り外すことによって、挿入装置を椎間インプラントから外すことができる。
【0041】
前述のステップにより、椎間腔へのさまざまなアクセス経路が実現され得る。単なる例として、外科的TLIF方法では、患者の背中の中心近くに小さい切開が施される。損傷した椎間板へのアクセスが行なわれ、椎間板が取り外され、骨移植片で充填された椎間インプラントが挿入される。次に、脊髄分節が、たとえば椎弓根ねじおよびロッドを使用して安定化される、上述の椎間インプラントおよび挿入装置は、椎間インプラントに係合してそれを椎間腔に挿入する複数の可能性を開く。椎間インプラントがいったん、椎間腔に最終的に配置されると、駆動シャフトは再び前方へ押され、90°傾斜され、くぼみ10またはくぼみ30、30’のそれぞれから取り外される。
【0042】
ここで図23~25を参照して、椎間インプラントの変更された一実施形態を示す。椎間インプラント1000は、中実体3’と上面5aおよび下面5bとに関して若干変更された内部構造を有するALIF椎間インプラントである。加えて、隣接する上方および下方椎体のそれぞれに係合するように構成されたねじ400のための穴1001が設けられる。椎間インプラント1000はまた、前述の実施形態と同様に、細長い開口部11を有するくぼみ10を含む。くぼみ10は、側壁2の別の側に設けられてもよい。前壁2aの中央の追加のくぼみ300は、挿入装置のための受け部を形成する。前述の実施形態のくぼみ30と比べて、くぼみ300は90°回転される。より詳細には、追加のくぼみ300は、対向する長辺が側壁2の高さ方向にある状態で延在する。これにより、くぼみ300が横方向で必要とする空間を減少させることができる。これは、ねじ400のための追加の穴1001を、前壁2a上の追加のくぼみ300の左および右に設けることを可能にする。
【0043】
インプラントおよび/または挿入装置のさまざまな変更が、添付された請求項で定義されるようなこの発明の範囲から逸脱することなく、加えられてもよい。
【0044】
たとえば、上述の実施形態に示された椎間インプラントは、単なる一例である。椎間インプラントの輪郭および形状は、特定の臨床要件に従って異なっていてもよい。たとえば、輪郭は、円形、矩形、卵形、腎臓形などといった、任意の他の形状を有していてもよい。いくつかの実施形態では、側壁の高さは、インプラント全体にわたって一定であってもよい。椎間インプラントはまた、たとえば3D印刷手法によって製造され得る三次元網目構造または格子構造の形をしていてもよい。さらに変更された一実施形態では、椎間インプラントは、試行手順のために使用されるダミーインプラントまたは検査インプラントであってもよい。
【0045】
インプラントと挿入装置との間に形状嵌合接続を生成するための当接面の数および/または配向および/または順序、ならびに、案内面の数および位置は、実施形態で示されたものに限定されない。さまざまな他の角度での椎間インプラントと挿入装置との接続を可能にするために、さまざまな他の当接面が設けられてもよい。案内面はまた、省略されてもよい。
【0046】
細長い開口部は、別の位置にあってもよい。さらに、細長い開口部は、垂直に、または傾斜した姿勢で延在してもよい。挿入装置に対してインプラントを旋回させるためのくぼみを有する細長い開口部が2つ以上設けられてもよい。また、挿入装置を受けるための追加のくぼみの数は、説明された実施形態で示されたものより多くても少なくてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1、1000:椎間インプラント、10:くぼみ、11:開口部、21:第1の当接面、22:第2の当接面、100:挿入装置、110:駆動シャフト、111:係合部分、123:当接面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図11a
図11b
図11c
図11d
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図25