(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】煙感知器試験装置
(51)【国際特許分類】
G08B 17/10 20060101AFI20240816BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20240816BHJP
A62C 37/50 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G08B17/10 K
G08B17/00 K
A62C37/50
(21)【出願番号】P 2020158314
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】白男川 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】橋口 寛
(72)【発明者】
【氏名】橋本 幸司
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-207497(JP,A)
【文献】特開平08-124056(JP,A)
【文献】特開2004-362352(JP,A)
【文献】特開2009-245138(JP,A)
【文献】特開2020-071770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0308346(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/10
G08B 17/00
A62C 37/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙感知器に煙を供給して前記煙感知器を試験する煙感知器試験装置であって、
煙を発生する煙発生手段と、
前記煙発生手段で発生した煙により前記煙感知器の試験を行う試験部とを備え、
前記試験部は、前記煙が通過する試験空間を内部に有する保持器を備え、前記煙感知器において煙を感知する部分である検煙部を含む一部分が前記保持器の前記試験空間に設置されて前記煙感知器の試験を行うことを特徴とする煙感知器試験装置。
【請求項2】
前記試験部は、前記試験空間における前記煙の流れ方向に直交する方向の前記試験空間の面積が制限され、煙が主に前記検煙部を含む一部分だけ流れるように前記検煙部を含む一部分を収納する前記保持器を有することを特徴とする請求項1記載の煙感知器試験装置。
【請求項3】
複数の前記保持器を有し、
複数の前記保持器が配管によって並列に接続され、前記煙発生手段で発生した前記煙が前記配管を介して複数の前記試験空間に並列に供給されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の煙感知器試験装置。
【請求項4】
前記煙発生手段で発生した前記煙を前記試験部に導く往路と、前記試験部から流出した煙を前記往路に戻す復路と、を有する循環回路と、
前記循環回路に設けられ、前記循環回路内にクリーンエアを投入するクリーンエア投入口と、
前記往路において前記試験部の上流に配置され、前記循環回路に前記煙を循環させる送風ファンと、
前記試験部に流入する前記煙の濃度を均一化する均一化装置と、を備え、
前記均一化装置は、
前記送風ファンの上流に配置され、前記煙発生手段で発生した煙と、前記クリーンエア投入口から投入されたクリーンエアと、前記試験部から流出して前記往路に戻ってきた煙とを貯留する1次バッファタンクと、
前記送風ファンの下流で前記試験部との間に配置され、前記送風ファンからの煙を貯留する2次バッファタンクとを備えていることを特徴とする請求項3記載の煙感知器試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙感知器の感度試験を行うための煙感知器試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、煙感知器の感度試験は、検査槽内で煙を循環させ、循環風路内に試験対象の煙感知器を配置することで行われている。このような感度試験に用いられる試験装置の一例として非特許文献1に開示された煙感知器試験装置がある。
【0003】
非特許文献1の煙感知器試験装置は、略直方体形状の容器で構成された検査槽の中央に、仕切板を水平に設置して上下に区分された空間を形成し、下部空間から上部空間、上部空間から下部空間へと送風ファンにより一方向に煙を循環させる循環風路を形成している。そして、下部空間に配置した発煙ヒーターから発生した煙を、循環風路内で循環させて検査槽内部を均一の煙濃度にし、上部空間に設置した煙感知器の感度試験を行うようにしている。
【0004】
この非特許文献1の煙感知器試験装置では、煙感知器の大きさが、高さ30mm、幅100mm程度であるのに対し、煙感知器の設置空間である上部空間は、高さ400mm、幅500mm程度となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1の煙感知器試験装置では、煙感知器の設置空間である上部空間が、煙感知器全体を収容してなお大きい空間となっている。このため、感度試験の際に、発煙ヒーターから発煙を開始した後、上部空間を含む検査槽内全体を所定の煙濃度に均一にするのに時間を要し、試験時間が長くなるという問題があった。また、煙感知器が設置された上部空間だけでなく、下部空間までも煙を均一に分布させる必要があるため、その分、煙を多く発生させなければならないという問題があった。
【0007】
本発明はこのような点を鑑みなされたもので、試験時間の短時間化及び発煙量の低減を図ることが可能な煙感知器試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る煙感知器試験装置は、煙感知器に煙を供給して煙感知器を試験する煙感知器試験装置であって、煙を発生する煙発生手段と、煙発生手段で発生した煙により煙感知器の試験を行う試験部とを備え、試験部は、煙が通過する試験空間を内部に有する保持器を備え、煙感知器において煙を感知する部分である検煙部を含む一部分が保持器の試験空間に設置されて煙感知器の試験を行うものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、煙感知器の検煙部が設置されて感度試験を行う試験空間が、煙感知器の検煙部を含む一部分を収納可能な大きさに設定され、必要最低限のスペースとしたので、試験時間の短時間化及び発煙量の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る煙感知器試験装置の構成を示す概略図である。
【
図2】実施の形態に係る煙感知器試験装置の保持器を備えた試験部の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施の形態に係る煙感知器試験装置の構成を示す概略図である。
本実施の形態に係る煙感知器試験装置は、試験対象の煙感知器に煙を供給して煙感知器の感度を試験する煙を発生する装置であって、煙を発生する煙発生手段1と、煙発生手段1で発生した煙を循環させる循環回路2とを備えている。循環回路2には、試験対象の煙感知器10の試験を行う試験部3と、1次バッファタンク4と、送風ファン5と、2次バッファタンク6とが配置されている。
【0012】
煙発生手段1は、煙として例えば、エアロゾルを発生する手段である。煙発生手段1は、流動パラフィン又は濾紙を例えば400℃のヒーターでくん焼することで煙を発生させる。煙発生手段1における煙発生方法は、この方法に限るものではなく、他の方法を用いてもよい。
【0013】
循環回路2は、煙発生手段1にて発生した煙を試験部3に導く往路2aと、試験部3から流出した煙を往路2aに戻す復路2bとを有する。往路2aは、1次バッファタンク4と、送風ファン5と、2次バッファタンク6と、試験部3と、を配管20により接続して構成されている。復路2bは、配管21により構成されている。また、循環回路2は、クリーンエアを循環回路2内に投入するクリーンエア投入口22と、循環回路2内の煙を排出する排煙口23とを有する。クリーンエア投入口22は、クリーンエアを外部から取り入れるための開口である。排煙口23は、循環回路2内の煙を排出するための開口である。クリーンエア投入口22及び排煙口23は、煙感知器試験装置内の煙濃度を下げたいとき又は空気を入れ換えたいときに、電気制御により開閉可能に構成されている。
【0014】
試験部3は、煙感知器10の感度試験を行う部分である。試験部3は、煙感知器10を保持する保持器30を複数備えている。複数の保持器30は、配管20によって並列に接続されている。保持器30の詳細については改めて説明する。なお、
図1には、試験部3が複数の保持器30を備えた例を示しているが、保持器30の台数は任意であり、1台でもよい。
【0015】
送風ファン5は、煙発生手段1で発生した煙を
図1の矢印方向に循環させるファンである。
【0016】
1次バッファタンク4及び2次バッファタンク6は、流入した流体を一時的に貯留するタンクである。1次バッファタンク4は、送風ファン5の上流に配置され、煙発生手段1からの煙と、クリーンエア投入口22からのクリーンエアと、試験部3から流出して往路2aに戻ってきた煙と、を一時的に貯留する。2次バッファタンク6は、送風ファン5の下流で試験部3との間に配置され、送風ファン5からの煙を一時的に貯留する。
【0017】
1次バッファタンク4内では、煙発生手段1からの煙と、クリーンエア投入口22からのクリーンエアと、試験部3から流出して往路2aに戻ってきた煙とが混合される。混合された煙は、送風ファン5にて撹拌されて均一濃度となり、2次バッファタンク6に送られる。2次バッファタンク6は、送風ファン5からの煙を一時的に貯留することで、煙の流量変動を抑制し、試験部3に供給する供給量を安定させる。このように、循環回路2において試験部3の上流に1次バッファタンク4及び2次バッファタンク6が設けられていることで、濃度が均一化された煙が試験部3に安定的に送られるようになっている。1次バッファタンク4及び2次バッファタンク6は、煙の濃度を均一化する均一化装置を構成している。
【0018】
2次バッファタンク6には煙濃度測定手段7が配置されている。煙濃度測定手段7は、煙濃度を測定する手段である。煙濃度測定手段7は、空気中に煙粒子がどの程度存在するかを測定する。煙濃度測定手段7は、例えば光学的に濃度を測定する方法にて測定を行う。光学的に濃度を測定する方法とは、発光部から発光された一定の光を受光部にて受光し、その受光量に応じて煙の濃度を検知する方法である。煙濃度測定手段7における測定方法は、この方法に限るものではなく、他に例えば放射性物質の電離電流変化率を用いて測定する方法等を用いてもよい。また、複数の保持器30に取り付けられる煙感知器10のうちの1つを基準感知器として、基準感知器から出力される煙濃度を煙濃度測定手段7の測定値に置き換えてもよい。煙濃度測定手段7の測定結果は、後述の制御装置8に出力される。
【0019】
煙感知器試験装置は更に、煙感知器試験装置全体を制御する制御装置8を備えている。制御装置8は、煙濃度測定手段7の測定結果に基づいて、送風ファン5の回転数、クリーンエア投入口22の開閉、排煙口23の開閉等の制御を行う。
【0020】
次に、上記のように構成された煙感知器試験装置の動作を説明する。
制御装置8からの駆動指令により煙発生手段1及び送風ファン5が駆動されると、煙発生手段1にて発生した煙が循環回路2内を循環する。制御装置8は、煙濃度測定手段7によって測定された濃度が予め設定された設定濃度に一定に保たれるように、クリーンエア投入口22及び排煙口23の開閉制御を行う。
【0021】
循環回路2内を循環する煙は、1次バッファタンク4及び2次バッファタンク6を経て濃度の均一化が図られて試験部3に流入する。そして、煙濃度が設定濃度に一定に保たれた試験部3において、煙感知器10の感度試験が行われる。
【0022】
ところで、従来の煙感知器試験装置は、煙感知器全体を含む検査槽内の空間全体を、設定濃度の煙に均一化して感度試験を行っていた。しかし、感度試験にあたっては、煙感知器において煙を感知する部分である検煙部に設定濃度の煙が流入する構成とすれば十分である。そこで、本実施の形態では、煙感知器10を保持する保持器30内に、煙感知器10全体のうちの一部分、具体的には検煙部を含む一部分、の大きさに絞った試験空間を形成し、試験空間の煙濃度を均一化して感度試験を行う構成とした。
【0023】
以下、保持器30の詳細について説明する。
【0024】
図2は、実施の形態に係る煙感知器試験装置の保持器を備えた試験部の概略平面図である。
図3は、
図2のA-A概略断面図である。
保持器30は、直方体状の筐体31を有する。筐体31には、煙発生手段1で発生した煙が流入する流入口31aと、煙が流出する流出口31bとが形成されている。流入口31aには、上流側配管20aが接続され、流出口31bには下流側配管20bが接続されている。上流側配管20a及び下流側配管20bは、配管20の一部を構成している。
【0025】
筐体31の内部には、煙感知器10の感度試験を行うための試験空間32が形成されている。
図2及び
図3においてドットで示した部分が試験空間32である。試験空間32は流入口31a及び流出口31bに連通しており、流入口31aから煙が流入し、流出口31bから煙が流出するようになっている。
【0026】
試験空間32は、煙の通過方向に直交する方向の断面の高さH及び幅Wが、煙感知器10の検煙部11の高さ及び幅を収納可能な大きさである。言い換えれば、試験空間32は、試験空間32における煙の流れ方向に直交する方向の試験空間32の面積が制限され、煙が主に検煙部11を含む一部分だけ流れるように検煙部11を含む一部分を収納する。試験空間32の煙の通過方向の長さLは特に限定するものではないが、試験空間32内の煙濃度を設置濃度にするために必要な煙量の低減を図る観点から、長すぎない方が好ましい。具体的には例えば、試験空間32の長さLは、煙感知器10の同方向の長さを収納可能な大きさとすればよい。筐体31内に、上記寸法の試験空間32を形成するにあたっては、筐体31内に複数の板材を固定するなど、任意の構成を採用できる。
【0027】
本実施の形態1においては、試験空間32の高さH、幅W及び長さLを、煙感知器10の検煙部11の高さ、幅及び長さと同じとしている。この「同じ」とは、厳密に「同じ」場合のみに限定されず、実質的に同じ程度であることを意味する。
【0028】
筐体31において煙の通過方向に沿う方向の面(
図3の上面)には、煙感知器10を挿入するための円形状の挿入穴33が形成されている。挿入穴33の直径は、煙感知器10の外径よりも大きい。挿入穴33は試験空間32に連通しており、挿入穴33に煙感知器10を挿入することにより、煙感知器10の検煙部11が試験空間32内に位置するようになっている。
【0029】
感度試験の際には、1次バッファタンク4及び2次バッファタンク6を経て濃度の均一化が図られた煙が試験空間32内に流入し、試験空間32内の煙濃度が設定濃度に一定に保持され、煙感知器10の感度試験が行われる。
【0030】
以上のように、本実施の形態では、試験空間32を、検煙部11を含む一部分が挿入される大きさの空間としたので、煙感知器10全体を収納する大きさの空間とする場合と比較して、試験空間32の大きさが小さい。具体的には、試験空間32の高さH及び幅Wが、検煙部11を含む一部分のみ収納可能な高さ及び幅とした。これにより、煙濃度を設定濃度に均一化する空間を、感度試験を行うにあたって実質的に必要な大きさの空間に絞ることができる。よって、試験空間32内を設定濃度にするまでに要する時間を従来に比べて短縮でき、試験時間を短時間化できる。また、試験空間32内の煙濃度を設定濃度にするために必要な、煙発生手段1における発煙量を低減できる。
【0031】
また、本実施の形態では、試験部3が複数の保持器30を備えており、これらが配管20で接続されて複数の煙感知器10の感度試験を同時に行えるようになっている。従来の煙感知器試験装置にて複数の煙感知器の試験を同時に行おうとした場合、上部空間内に複数の煙感知器を分散して配置することになる。この場合、各煙感知器10に流入する煙の量にバラツキが生じる可能性がある。
【0032】
これに対し、本実施の形態では、各保持器30を配管20により接続し、配管20から各保持器30に直接煙が流入する構成としたため、各煙感知器10に流入する煙の量のバラツキを軽減できる。また、本実施の形態では、各保持器30を並列に接続しているため、直列に配置した場合に比べて更に煙の量のバラツキを軽減できる。
【0033】
また、従来の煙感知器試験装置では、送風ファンの風速を上げると、煙感知器への煙流入特性が悪化する傾向がある。これに対し、本実施の形態では、配管20により煙を保持器30に流入させるようにしたので、風速の影響を受けず、低速から高速までの何れの風速でも安定して保持器30に煙を流入させることができる。
【0034】
また、本実施の形態の煙感知器試験装置では、1次バッファタンク4及び2次バッファタンク6を経て煙が試験部3に流入するようにしたので、濃度が均一化された煙を安定して試験部3に供給できる。
【0035】
なお、保持器30は最小限の寸法を有する試験空間32で、検煙部11を含む一部分を収納できればよく、必ずしも検煙部11を含む一部分を機械的に保持して固定する必要はない。
【符号の説明】
【0036】
1 煙発生手段、2 循環回路、2a 往路、2b 復路、3 試験部、4 1次バッファタンク、5 送風ファン、6 2次バッファタンク、7 煙濃度測定手段、8 制御装置、10 煙感知器、11 検煙部、20 配管、20a 上流側配管、20b 下流側配管、21 配管、22 クリーンエア投入口、23 排煙口、30 保持器、31 筐体、31a 流入口、31b 流出口、32 試験空間、33 挿入穴。