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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/20 20180101AFI20240816BHJP
   F21S 43/237 20180101ALI20240816BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20240816BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20240816BHJP
   F21V 5/02 20060101ALI20240816BHJP
   F21W 103/10 20180101ALN20240816BHJP
   F21W 103/45 20180101ALN20240816BHJP
   F21W 103/35 20180101ALN20240816BHJP
   F21W 103/20 20180101ALN20240816BHJP
   F21W 102/10 20180101ALN20240816BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S43/237
F21V5/00 320
F21V5/04 600
F21V5/02
F21W103:10
F21W103:45
F21W103:35
F21W103:20
F21W102:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020170332
(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公開番号】P2022062368
(43)【公開日】2022-04-20
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】稲村 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】西岡 健
(72)【発明者】
【氏名】土谷 隆徳
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-225388(JP,A)
【文献】特開2017-010876(JP,A)
【文献】特開2018-092733(JP,A)
【文献】特表2013-513912(JP,A)
【文献】特開2020-155388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/20
F21V 5/00
F21W 103/10
F21W 103/45
F21W 103/35
F21W 103/20
F21W 102/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を囲むレンズの内表面の一部の領域に前記光源の光を拡散させるシボ加工面を持つ面発光領域部と、
前記レンズの内表面の前記シボ加工面のない領域に前記光源の光が前記レンズの外表面で線状に見えるように前記光を収束させる溝または突条を持つ線発光領域部と
を備え
前記光源が、単一で設けられ前記面発光領域部よりも前記線発光領域部に近い位置に配置される軸状の導光棒である
ことを特徴とする、車両用灯具。
【請求項2】
前記溝または前記突条が、前記導光棒の延設方向に沿って延設される
ことを特徴とする、請求項記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記面発光領域部及び前記線発光領域部の双方が、前記レンズの外表面に前記光源の光を拡散させるシボ加工面を持つ
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記光源の光の照射方向が、前記線発光領域部における前記レンズの外表面に対して傾斜するように設定される
ことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記溝または前記突条が、前記レンズの内表面に垂直な断面において前記レンズの内表面をV字状に凹設または凸設させた形状に形成される
ことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記溝または前記突条が、前記光源に対向する面と前記光源に対向しない面とを有する
ことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り付けられる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に取り付けられる車両用灯具において、配光パターンの見栄えを向上させる技術が知られている。例えば、光源の光を反射する反射膜を用いてテールランプとしての主配光を得るとともに、光拡散作用のある発光部を形成して面発光を実現するものが知られている。このような構造により、車両用灯具の視覚効果が向上しうる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-176982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、光を面状に発光させる面発光と線状に発光させる線発光(ライン発光)とを両立させるためには複雑な内部構造が要求されることが多く、製造コストや重量が上昇しやすいという課題がある。例えば特許文献1に記載の構造では、面発光用の光源と線発光用の光源とが別設される。そのため、車両用灯具の本体のコスト及び重量だけでなく、光源や配線のコスト及び重量もかかってしまう。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、簡素な構成で面発光と線発光とをともに実現できるようにした車両用灯具を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の車両用灯具は、光源を囲むレンズの内表面の一部の領域に前記光源の光を拡散させるシボ加工面を持つ面発光領域部と、前記レンズの内表面の前記シボ加工面のない領域に前記光源の光が前記レンズの外表面で線状に見えるように前記光を収束させる溝または突条を持つ線発光領域部とを備える。前記光源は、単一で設けられ前記面発光領域部よりも前記線発光領域部に近い位置に配置される軸状の導光棒である。
【発明の効果】
【0007】
開示の車両用灯具によれば、簡素な構成で面発光と線発光とをともに実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例としての車両用灯具が適用された車両の斜視図である。
図2図1に示す車両用灯具の模式的な斜視図である。
図3図1に示す車両用灯具の模式的な断面図である。
図4図1に示す車両用灯具の光り方を説明するための模式的な断面図である。
図5】(A),(B)は変形例としてのインナーレンズの形状を例示する模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.構成]
図1は、実施例としての車両用灯具1が適用された車両10の斜視図である。ここでいう車両用灯具1には、例えばフロントコンビネーションランプやリヤコンビネーションランプなどの複合灯具だけでなく、前照灯(ヘッドライト)や後退灯(バックランプ),尾灯(テールランプ),制動灯(ブレーキランプ),方向指示灯(ウインカーランプ)などの灯具も含まれる。
【0010】
図2は、図1に示す左後部の車両用灯具1であるリヤコンビネーションランプを拡大して示す模式的な斜視図である。この車両用灯具1には、光を面状に発光させる面発光部11と線状に発光させる線発光部12とを有する尾灯が内蔵される。面発光部11は、車両10の後方だけでなく上方や左右側方(図2の例では左側方)からも視認可能な曲面をなす比較的広範囲の領域である。また、線発光部12は、光る部分が線状(ライン状)に見えるように面発光部11に隣接する領域に配置される。図2に示す例では、線発光部12に三本のラインが含まれている。
【0011】
図3は、図1に示す車両用灯具1の構造を模式的に示す断面図(図2のA-A断面図)である。車両用灯具1には、透明度の高い樹脂で形成されるアウターレンズ2と車体に固定されるハウジング6とが設けられる。また、アウターレンズ2とハウジング6とに囲まれる空間内には、インナーレンズ3とリフレクター5とに囲まれた導光棒4が配置される。導光棒4は、光源として機能する軸状の発光体であり、線発光部12のラインに沿って延設される。リフレクター5は、導光棒4から発せられた光を車両用灯具1の外側(車両10の外側)に向かって反射させるものであり、導光棒4よりも内側の部分を覆うように配置される。
【0012】
インナーレンズ3は、アウターレンズ2の内側に導光棒4を囲んで配置される部材であり、配光パターンを形成する機能を持つ。図3に示すように、インナーレンズ3には、面発光部11に対応する配光パターンを形成するための面発光領域部8と、線発光部12に対応する配光パターンを形成するための線発光領域部9とが設けられる。これらの面発光領域部8,線発光領域部9は隣接する位置に配置される。また、導光棒4は、面発光領域部8よりも線発光領域部9に近い位置に配置される。なお、導光棒4に対する距離の関係は不問であり、例えば面発光領域部8よりも線発光領域部9から遠い位置に導光棒4を配置してもよい。
【0013】
図3に示すように、面発光領域部8においては、少なくとも内表面の一部の領域(図3では内表面と外表面との双方)に導光棒4の光を拡散させるシボ加工面7が形成される。シボ加工面7とは、光を拡散させる(被視認性範囲を拡大させる)機能を持った面であり、例えば微小な凹凸形状やシワ形状,カット形状などが形成された面である。一方、線発光領域部9においては、外表面にシボ加工面7が設けられるものの、内表面にはシボ加工面7が形成されず、導光棒4の光がインナーレンズ3の外表面で線状に見えるように突条13が設けられる。なお、面発光領域部8においてシボ加工面7を形成するのは、内表面のみでもよい。また、線発光領域部9の外表面のシボ加工面7は省略してもよい。
【0014】
突条13は、導光棒4の光がインナーレンズ3の外表面で線状に見えるようにその光を収束させるべく、インナーレンズ3の内表面に形成される線状の突出部分である。図3に示す例では、三本の突条13が形成されている。これらの突条13は、導光棒4の延設方向に沿って延設される。
【0015】
図3に示す突条13には、三種類の面部14~16が設けられる。これらの面部14~16は、導光棒4からの光の入射角が相違するように形成される。言い換えれば、突条13の断面は台形状に形成される。これにより、各々の突条13を通過した光は、突条13の延在方向に沿って線状に光る配光パターンを形成する。このように、突条13は、インナーレンズ3の内表面に垂直な断面において、インナーレンズ3の内表面をV字状に凹設した形状(または凸設させた形状)に形成される。
【0016】
第一面部14は、線発光領域部9の外表面に対してほぼ平行な面状の部位である。また、第二面部15は、図3に示す断面において、第一面部14の右側に隣接して配置される面状の部位である。第二面部15の法線の向きは、第一面部14の法線を、例えば図3中で反時計回りに数十度回転させた方向を向くように設定される。反対に、第三面部16は、図3に示す断面において、第一面部14の左側に隣接して配置される面状の部位である。第三面部16の法線の向きは、第一面部14の法線を、例えば図3中で時計回りに数十度回転させた方向を向くように設定される。これらの面部14~16を通過した光は、図4に示すように、線発光領域部9の外表面において、入射した面積よりも狭い線状の範囲に収束する。
【0017】
突条13に対する導光棒4の光の照射方向は、線発光領域部9におけるインナーレンズ3の外表面に対して傾斜するように設定される。例えば図3中において、第一面部14の法線に対して交差するように、導光棒4の光の照射方向が設定される。好ましくは、第二面部15または第三面部16のいずれかの法線に対して平行になるように、導光棒4の光の照射方向が設定される。つまり、第一面部14と第二面部15または第三面部16のいずれか一方が、導光棒4に対向するように面角度が設定され、第二面部15または第三面部16の他方が導光棒4に対向しないように面角度が設定されている。このような突条13の形状設定により、光の性質(直進、屈折、反射など)を利用して線発光領域部9の外表面における光の収束性が向上し、線発光部12の視認性が向上する。ここでいう「対向」とは、導光棒4に対して面が正対した状態だけでなく、導光棒4に面が向いている状態も含む。
【0018】
[2.作用,効果]
(1)本実施例の車両用灯具1には、面発光領域部8と線発光領域部9とが設けられる。面発光領域部8は、少なくともインナーレンズ3の内表面の一部の領域にシボ加工面7を持つ。シボ加工面7は、光源である導光棒4の光を拡散させるように機能する。また、線発光領域部9においては、インナーレンズ3の内表面のシボ加工面7が形成されていない領域に突条13が形成される。この突条13は、光がインナーレンズ3の外表面で線状に見えるように、光を収束させるように機能する。このような構造により、簡素な構成で面発光部11と線発光部12とを形成することができ、面発光と線発光とをともに実現できる。
【0019】
(2)上記の車両用灯具1では、図3に示すように、光源としての軸状の導光棒4が面発光領域部8よりも線発光領域部9に近い位置に配置される。相対的に光源から遠い位置に面発光領域部8を配置することで、光源の光の拡散性を高めることができ、面発光部11の見栄えや視覚効果を向上させることができる。また、相対的に光源に近い位置に線発光領域部9を配置することで、光源の光の収束性を高めて明瞭な線発光を実現することができ、線発光部12の見栄えや視覚効果を向上させることができる。
【0020】
(3)上記の突条13は、導光棒4の延設方向に沿って(例えば導光棒4に対して平行に)延設される。これにより、線発光領域部9における線発光の延在方向についての明るさを均一にすることができ、線発光部12の見栄えや視覚効果を向上させることができる。また、線発光領域部9に隣接する面発光領域部8においても、面発光の明るさを均一にすることができ、面発光部11の見栄えや視覚効果を向上させることができる。
【0021】
(4)上記の車両用灯具1では、面発光領域部8と線発光領域部9との双方が、インナーレンズ3の外表面に導光棒4の光を拡散させるシボ加工面7を持っている。シボ加工面7をインナーレンズ3の外表面に形成することで、光をさまざまな方向に拡散させることができる。また、車両用灯具1に対する見る角度(車両10の外部から車両用灯具1を見るときの視線の向き)が変化したとしても、面発光部11や線発光部12の明るさが変化しにくくなり、視認性を向上させることができる。
【0022】
(5)上記の車両用灯具1では、導光棒4の光の照射方向が、線発光領域部9におけるインナーレンズ3の外表面に対して傾斜するように設定される。これにより、図4に示すように、線発光領域部9の外表面において、入射した面積よりも狭い線状の範囲に光が収束しやすくなる。したがって、明瞭な線発光を容易に形成することができ、線発光部12の視認性をさらに向上させることができる。
【0023】
(6)上記の車両用灯具1では、図3に示すように、突条13がインナーレンズ3の内表面をV字状に凹設した形状に形成される。このような構造により、三種類の面部14~16を容易に形成することができ、線発光領域部9の外表面において光を線状に集めることができる。したがって、明瞭な線発光を容易に形成することができ、線発光部12の視認性をさらに向上させることができる。
【0024】
(7)上記の車両用灯具1では、図3に示すように、突条13が導光棒4に対向する面(第一面部14,第二面部15)と導光棒4に対向しない面(第三面部16)とを有している。これにより、線発光領域部9の外表面における光の収束性を向上させることができ、線発光領域部9の視認性を向上させることができる。
【0025】
[3.変形例]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせることができる。例えば、上述の実施例では線発光領域部9に台形状の断面を有する突条13が形成された構造を例示したが、図5(A)に示すように三角形状の突条17を形成してもよい。あるいは、図5(B)に示すように、突条13の代わりに溝18を形成してもよい。少なくともインナーレンズ3の内表面に光を線状に収束させる凹凸を形成することで、上述の実施例と同様の作用,効果を獲得できる。
【符号の説明】
【0026】
1 車両用灯具
2 アウターレンズ
3 インナーレンズ(レンズ)
4 導光棒(光源)
5 リフレクター
6 ハウジング
7 シボ加工面
8 面発光領域部
9 線発光領域部
10 車両
11 面発光部
12 線発光部
13,17 突条
14 第一面部
15 第二面部
16 第三面部
18 溝
図1
図2
図3
図4
図5