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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】埋設装置および埋設方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/10 20060101AFI20240816BHJP
   E02D 13/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
E02D7/10
E02D13/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020175713
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067155
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】島崎 傑
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】牧田 晃介
(72)【発明者】
【氏名】古屋 敏男
(72)【発明者】
【氏名】石橋 亜須佐
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 正俊
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-124535(JP,A)
【文献】特開昭61-064925(JP,A)
【文献】特開2005-163348(JP,A)
【文献】特開平03-228997(JP,A)
【文献】特開2018-204257(JP,A)
【文献】特開2007-032251(JP,A)
【文献】特開平08-209697(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0056650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00 - 7/30
E02D 13/00 - 13/10
E21B 7/20
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体をその先端部側から地盤に推進させて埋設するための埋設装置であって、
前記管体に推進力を作用させる推進装置と、
該推進装置と前記管体の内壁との間に配置された膨縮可能な袋体と、
該袋体を膨らませる膨張装置と、
を備え、
前記袋体を、前記推進装置による推進力を前記管体へと伝達する推進力伝達部材として機能させ、前記推進装置による推進力を当該袋体のみに作用させる埋設装置。
【請求項2】
前記袋体は、前記管体の前記先端部以外の部分に設けられている、請求項1に記載の埋設装置。
【請求項3】
管体をその先端部側から地盤に推進させて埋設するための埋設装置であって、
前記管体に推進力を作用させる推進装置と、
該推進装置と前記管体の内壁との間に配置された膨縮可能な袋体と、
該袋体を膨らませる膨張装置と、
を備え、
前記袋体を、前記推進装置による推進力を前記管体へと伝達する推進力伝達部材として機能させ、
前記推進装置を当該管体の閉塞していない前記先端部に配置し、前記推進装置による推進力を当該袋体に伝達するとともに当該推進装置にて地盤を打撃しながら前記管体を地盤に推進させる、埋設装置。
【請求項4】
前記推進装置の周囲に前記袋体が配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の埋設装置。
【請求項5】
前記推進装置に取り付けられるエクステンションの周囲に前記袋体が配置されている、請求項1または2に記載の埋設装置。
【請求項6】
前記袋体が周方向に複数配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の埋設装置。
【請求項7】
埋設装置を用いて管体を地盤に埋設する際の埋設方法であって、
前記管体の内部から当該管体に対して推進力を作用させる推進装置と、前記管体の内壁との間に膨縮可能な袋体を配置し、
該袋体を膨らませ、
前記推進装置により前記管体に推進力を作用させる、埋設方法。
【請求項8】
前記推進装置の周辺または前記袋体の周辺に止水材を設置する、請求項7に記載の埋設方法。
【請求項9】
地盤に前記管体を埋設した後、当該管体の先端部で拡底する、請求項7または8に記載の埋設方法。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一項に記載の埋設方法によって地盤に埋設した前記管体に充填材を充填する、地中構造物の設置工法。
【請求項11】
請求項7から9のいずれか一項に記載の埋設方法によって地盤に埋設した前記管体を当該地盤から抜き出し、前記管体を抜き出した後の前記地盤の孔に充填材を充填する、地中構造物の設置工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設装置および埋設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭を地盤に埋設する際の一手法として、鋼管杭の先端を杭内部からエアーハンマーで打撃して推進させて打ち込み埋設するというものが知られている。
【0003】
例えば下記の特許文献1では、円柱体の中でハンマーのピストンを往復動させ、そのときに発生する衝撃を杭に伝達して当該杭を推進させる手法が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2では、中空状ケーシングを鋼管内に挿入した状態で立坑内にセットし、ケーシングに挿入したエアーハンマー(空気衝撃式推進機)を作動させ、鋼管を地中に打設するという手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許2672484号公報
【文献】特公平1-22440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のごとき従来の手法においては、ハンマーで鋼管杭を打撃する際にハンマーが暴れてしまい、打撃力(ひいては鋼管杭を地盤中へと推進させるための力)を継続的にかつ効率よく鋼管杭に伝達することが難しいという問題が生じうる。
【0007】
これに対し、特許文献2に記載のごとき手法によれば、鋼管とエアーハンマーとをテンシヨンチエン(張力チェーン)で連結することで、エアーハンマーの暴れやこれによる伝達効率の劣化を抑制することが可能である。ところが、このような連結構造の場合、衝撃によって連結部材(特許文献の場合であれば張力チェーン)が破損してしまうことがあるという別の問題を抱えうる。また、張力チェーンのごとき連結部材を用いるとすれば、打設の前に鋼管やエアーハンマーにチェーンを取り付け、打設後に取り外すというように手間がかかり、全体の作業がそのぶん煩雑になりやすく、作業効率に劣る。
【0008】
そこで、本発明は、推進装置による推進力を継続的に効率よく管体に伝達することができ、かつ、推進装置と管体とを連結する部材が衝撃で破損するといった事象を防止することができるようにした、管体を地盤に埋設するための埋設装置および埋設方法、ならびに地中構造物の設置工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、管体をその先端部側から地盤に推進させて埋設するための埋設装置であって、
管体に推進力を作用させる推進装置と、
該推進装置と管体の内壁との間に配置された膨縮可能な袋体と、
該袋体を膨らませる膨張装置と、
を備え、
袋体を、推進装置による推進力を管体へと伝達する推進力伝達部材として機能させ、推進装置による推進力を当該袋体のみに作用させる埋設装置である。
【0010】
上記のごとき埋設装置においては、袋体を膨らませ、推進装置を管体の内壁に密着させた状態とすることができる。この状態で推進装置を作動し、推進力伝達部材としての袋体を介して管体に推進力を伝達することで、管体を地盤に向け推進させることができる。このように、袋体を介して推進力を伝達することで、動作時の振動や衝撃により推進装置が暴れてしまうのを抑え、エネルギーのロスが生じるのを抑制することができる。
【0011】
また、本態様では、管体の一部に振動や打撃力などを直接的に作用させることなく、袋体のみに推進力を作用させて管体に伝えるようにしているので、振動や打撃力の影響で管体の一部が破損するといった事象が生じることがないし、打撃に伴い騒音が生じるということもない。しかも、本態様では、膨縮可能な袋体を用いて推進装置を管体の内壁に密着させていることから、推進装置と管体とを連結する部材が衝撃で破損するといった事象が生じることもない。
【0012】
上記のごとき埋設装置において、推進力伝達部は、管体の先端部以外の部分に設けられていてもよい。
【0013】
本発明の別の一態様は、管体をその先端部側から地盤に推進させて埋設するための埋設装置であって、
管体に推進力を作用させる推進装置と、
該推進装置と管体の内壁との間に配置された膨縮可能な袋体と、
該袋体を膨らませる膨張装置と、
を備え、
袋体を、推進装置による推進力を管体へと伝達する推進力伝達部材として機能させ、
推進装置を当該管体の閉塞していない先端部に配置し、推進装置による推進力を当該袋体に伝達するとともに当該推進装置にて地盤を打撃しながら管体を地盤に推進させる、埋設装置である。
【0014】
上記のごとき埋設装置において、推進装置の周囲に袋体が配置されていてもよい。
【0015】
上記のごとき埋設装置において、推進装置に取り付けられるエクステンションの周囲に袋体が配置されていてもよい。
【0016】
上記のごとき埋設装置において、袋体が周方向に複数配置されていてもよい。
【0017】
本発明の一態様は、埋設装置を用いて管体を地盤に埋設する際の埋設方法であって、
管体の内部から当該管体に対して推進力を作用させる推進装置と、管体の内壁との間に膨縮可能な袋体を配置し、
該袋体を膨らませ、
推進装置により管体に推進力を作用させる、埋設方法である。
【0018】
上記のごとき埋設方法において、推進装置の周辺または袋体の周辺に止水材を設置してもよい。
【0019】
上記のごとき埋設方法において、地盤に管体を埋設した後、当該管体の先端部で拡底してもよい。
【0020】
地中構造物の設置工法においては、上記のごとき埋設方法によって地盤に埋設した管体に充填材を充填することができる。
【0021】
また、地中構造物の設置工法において、上記の埋設方法によって地盤に埋設した管体を当該地盤から抜き出し、管体を抜き出した後の地盤の孔に充填材を充填することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、推進装置と管体とを連結する部材が衝撃で破損するといった事象を防止しつつ、推進装置による推進力を継続的に効率よく管体に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】埋設装置の構成の一例を示す図である。
図2】先端が閉塞した杭を埋設施工する埋設装置を示す図である。
図3】杭を埋設施工する際の手順の一例を(A)~(D)の順に示す図である
図4】杭の基端側開口の近傍に袋体を配置した埋設装置を示す図である。
図5】推進装置のエクステンションの周囲に袋体を配置した埋設装置を示す図である。
図6】推進装置の周囲に複数の袋からなる構造の袋体を配置した埋設装置を示す図である。
図7】地中構造物の構築手法の一例について説明する、(A)地盤に打設した杭(ないしは杭のような管体)から推進装置を抜き取る様子、(B)杭(ないしは杭のような管体)のみになった様子、(C)当該杭(ないしは杭のような管体)に充填材を充填した様子をそれぞれ示す図である。
図8】地中構造物の構築手法の他の一例について説明する、(A)地盤に打設した杭(ないしは杭のような管体)から推進装置を抜き取る様子、(B)地盤から杭(ないしは杭のような管体)を抜き取る様子、(C)孔のみとなった地盤の様子、(D)孔のみとなった地盤に充填材を充填した様子をそれぞれ示す図である。
図9】推進装置の端部に止水材を設置した埋設装置の一例を示す図である。
図10】杭の先端部分に拡底する部材を設けた場合の埋設装置の一例を示す図である。
図11】(A)推進装置のエアーバイブレーターにて地盤を打撃しながら杭(管体)を地盤に推進させる埋設装置の一例を示す図と、(B)杭(管体)が前進した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0025】
図1等に、本発明に係る埋設装置の一実施形態を示す。
【0026】
埋設装置1は、杭100を地盤Gに埋設するための装置である。本実施形態の埋設装置1は、推進装置10、袋体20、エアーコンプレッサー30を含む(図1参照)。
【0027】
推進装置10は、杭100の内部から当該杭100に対して推進力を作用させ、杭100をその先端101側へ推進させ地盤Gへ埋設する装置である。本実施形態の推進装置10は、エアーバイブレーター11やエアーハンマー等からなる起震機で構成され、必要に応じて設けられるエクステンション12をさらに含む(エクステンション12については図3等参照)。
【0028】
起震機の一例である本実施形態のエアーバイブレーター11は、圧縮空気を利用してハンマーに相当する部分を上下動させて杭100に推進力を作用させる、いわゆるエアーハンマーと同様の構造の装置である(ただし、以下に説明する本実施形態では基本的に打撃を行わないことに鑑み、本明細書では「エアーバイブレーター」と称して説明する。本実施形態のエアーバイブレーター11は、外部に設置された推進用エアーコンプレッサー30Aから推進用エアーホース32Aを介して供給される圧縮空気をシリンダー11C内のピストン(図示省略)へと導き、該圧縮空気によりピストンを上下方向に振動させる。外部から供給された圧縮空気によって運動エネルギーを得たピストンが、シリンダー11Cの内部に設けられた可動部(図示省略)へエネルギーを伝達し、当該可動部の運動エネルギー(推進エネルギー)が、膨らんだ状態の袋体(推進力伝達部)20を介して杭100に伝達される。
【0029】
エクステンション12は、必要に応じてエアーバイブレーター11の基端(上端)側に取り付けられるアタッチメントである(図5図6等参照)。具体的には、エアーバイブレーター11の想定されるその後の掘進状況などに応じてエクステンション12が取り付けられ、たとえば打設後の杭100の内部からエアーバイブレーター11を回収する際などにエクステンション12が利用される。なお、エクステンション12のエアーバイブレーター11への取り付けの具体的態様には、そもそもエクステンション12とエアーバイブレーター11が一体化している態様、エクステンション12とエアーバイブレーター11を溶接によって分離不能に固く接続した態様、締結具、嵌合部材などによって分離可能に固く接続した態様、線材、バネ、鎖などによって柔軟に接続した態様、さらには、エクステンション12をエアーバイブレーター11の基端側に載せて接触させているだけの態様などが含まれる。
【0030】
袋体20は、推進装置10と杭100の内壁103との間に配置される、空気が出し入れされて膨張あるいは収縮する袋からなる。袋体20に空気を供給して膨らませると、推進装置10と杭100とがこの袋体20を介して密着した、いわば半固定の状態となる。推進装置10と杭100との密着性をより向上させ、また、推進装置10と杭100の内壁103の間における隙間をより減少させるという観点からすれば、例えばゴム膜のような弾性(伸縮性)を備えた素材からなる袋体20が好適であるが、もちろん、弾性(伸縮性)が無いあるいは極めて少ない素材からなる袋体20を採用することもできる。
【0031】
本実施形態の袋体20は、推進装置10の本体であるエアーバイブレーター11の周囲を覆うように配置された周状(環状ないしは筒状)の袋からなる(図1参照)。周状の袋体20は、推進装置10を杭100の内壁103に密着させる際の押圧力の周方向における偏りを少なくし、より均一に密着させた状態を実現しうる。これによれば、施工中の推進装置10を杭100の中心軸付近にて姿勢が崩れないよう保持し、上下方向への振動の精度や伝達される振動エネルギーの効率をより高めることが可能である。
【0032】
エアーコンプレッサー30は、エアーバイブレーター11に圧縮空気を供給して作動させる動力源と、袋体20を膨縮させる動力源の少なくとも一方として機能する装置(流体供給装置)として用いられている。本実施形態では、エアーバイブレーター11を作動させる推進用エアーコンプレッサー30Aと、袋体20を膨縮させる袋体用エアーコンプレッサー30Bとを採用している(図1参照)。これら推進用エアーコンプレッサー30Aと袋体用エアーコンプレッサー30Bは地上に配置されており、地上で操作することが可能となっている。推進用エアーコンプレッサー30Aは推進用エアーホース32Aでエアーバイブレーター11と接続され、袋体用エアーコンプレッサー30Bは袋体用エアーホース32Bで袋体20と接続されている(図1参照)。
【0033】
なお、本実施形態で施工対象とする杭100は、先端101が開口した鋼管杭であってもよいし(図1図8参照)、先端101が尖った鋼管杭であってもよい(図2参照)。また、先端101に小孔が設けられているといった、先端101が完全には閉塞していない杭100を施工対象とすることももちろん可能である。なお、図2等では先端101が逆円錐型に尖った杭100を示しているがこれは先端101が閉塞した形状の一例にすぎず、他の形状であっても構わないことはいうまでもない。
【0034】
続いて、上記のごとき埋設装置1による杭100の埋設施工の手順の一例を示す(図3参照)。
【0035】
地盤G上において杭100の基端側開口104から内部に推進装置10と袋体20を挿入する(図3(A)参照)。本実施形態では、エアーバイブレーター11を、その周囲に設置した袋体20ごと杭100に挿入する。
【0036】
エアーバイブレーター11を杭100の途中まで挿入したら(図3(B)参照)、袋体用エアーコンプレッサー30Bで空気を供給し、袋体20を膨らませる(図3(C)参照)。この状態で推進用エアーコンプレッサー30Aから圧縮空気を送気して推進装置10を駆動すると、エアーバイブレーター11が上下方向に振動し、振動により生じる運動エネルギーが袋体20の摩擦力を介して杭100に推進エネルギーとして伝達され、推進力が作用し、杭100が地盤Gを掘進する(図3(D)参照)。杭100が所定の深さまで掘進して埋設工程が完了したら、その都度、袋体20の空気を抜いて収縮させ、当該袋体20ごと推進装置10を回収する(図7(A)等参照)。なお、推進装置10を回収する際には、上記のエクステンション12や図示しないワイヤーなどを適宜利用することができる。
【0037】
なお、杭100の内部において袋体20を膨らませる位置(別言すれば、推進エネルギーが伝達される位置)が特に限定されることはない。当該位置は、杭100の長手方向の中間付近やそれよりも先端101寄りの位置であってもよいし(図1図2等参照)、基端側開口104の近傍の位置であってよい(図4参照)。
【0038】
以上により、埋設装置1を用いた杭100の埋設施工が完了する。上記の作業は、施工現場にて行うことができる。しかも、推進装置10を駆動したり、袋体20を収縮させたりするための操作はすべてエアーコンプレッサー30(推進用エアーコンプレッサー30A、袋体用エアーコンプレッサー30B)を使って地上で行うことができる。
【0039】
ここまで説明した本実施形態の埋設装置1によれば、杭100の中で袋体20を膨らませ、当該袋体20を介して、推進装置10を杭100の内壁103に対し密着させた状態とすることができる。しかも、この状態は、例えば張力チェーンを使って剛な状態で連結したもの(剛結状態)とは異なり、膨らませた袋体20を使って剛ではない状態で密着させるというものである。この状態で推進装置10を駆動して袋体20を介して推進力を与えることで、推進時の衝撃により推進装置10自体が反発して暴れてしまうのを適度に抑え、エネルギーのロスが生じるのを抑制することが可能となるので、結果として、推進力を継続的に効率よく杭100に伝達することができる。また、上記のように、膨らませた袋体20を使って剛結ではない状態で推進装置10を杭100に密着させた状態で推進力を作用させることから、これらを連結する部材が衝撃で破損するといった従前のごとき事象が生じることがない。
【0040】
しかも、周状の袋体20を利用する本実施形態の埋設装置1によれば、膨らませた当該袋体20によって推進装置10と杭100の内周面との間の隙間を埋めやすい(図1等参照)。これによれば、施工時に漏れる騒音を軽減させることができる。
【0041】
また、上記のごとき構成である本実施形態の埋設装置1は、エアーコンプレッサー等を必要とするものの簡易なコンプレッサーなどで構成することが可能であり、そういった点からすればその設備は非常に少なくて済む。
【0042】
なお、上記のごとき埋設施工を終え、打設後の当該埋設した杭(ないしは杭のような管体)100から推進装置10を抜き取り(図7(A)参照)、杭(ないしは杭のような管体)100のみになったら(図7(B)参照)、当該杭(ないしは杭のような管体)100に充填材(コンクリート・砂・セメントミルク・モルタル・水など)を充填し(図7(C)参照)、地中構造物を構築することができる。なお、推進装置10を逆進させる(推進装置10に進行方向を切り替える機能があるので、これを機能させて上向きに進ませる)ことで、当該推進装置10を利用して杭(ないしは杭のような管体)100と推進装置10とを同時に抜き取ることも可能である。
【0043】
あるいは、上記のごとき埋設施工を終え、打設後の当該埋設した杭(ないしは杭のような管体)100から推進装置10を抜き取ったら(図8(A)参照)、地盤Gから杭(ないしは杭のような管体)100も抜き取り(図8(B)参照)、孔のみとなった地盤Gに対し(図8(C)参照)、充填材を充填し(図8(D)参照)、地中構造物を構築することもできる。この手法によれば、杭(ないしは杭のような管体)100を回収できるため、複数孔を掘削する際に当該管体を再利用することができる。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0045】
例えば、上述の実施形態では袋体20の具体例として周状のものを説明したが(図1参照)、これは好適な一例にすぎない。この他の例として、周方向に袋が複数配置された構造の袋体20を採用してもよい(図6参照)。このような袋体20によって埋設施工中の推進力を分散し、推進装置10の暴れをバランスよく吸収し抑制することが可能である。上記のごとき構造を採用する場合、袋体20のそれぞれは周方向へ等分布となるよう配置されていることが好ましい。なお、図示を省略しているが、袋体用エアーホース32Bの数を袋の数と同数とすることができる。
【0046】
また、エアーバイブレーター11の基端に既述のごとくエクステンション12を取り付ける場合にあっては、袋体20を、エアーバイブレーター11の周囲にではなく当該エクステンション12の周囲に配置してもよい(図5参照)。別言すれば、本願において、推進装置10と杭(管体)100の内壁103との間に袋体20を配置することには、推進装置本体たるエアーバイブレーター11と杭100の内壁103との隙間に袋体20を配置することはもちろんのこと、エクステンション12と杭100の内壁103との隙間に袋体20を配置することも含まれる。要は、推進装置10が暴れるのを直接的でも間接的にでもいいから抑えることができればよい。また、この場合の袋体20として、上記のごとく周方向に袋が複数配置された構造のもの(図6参照)を採用してもよい。
【0047】
また、本実施形態において施工対象とした杭100は埋設施工の好適な対象の一例にすぎず、その他の形状や構造の杭も上記の埋設装置1による施工対象に含めることができる。さらには、鋼管を地中に水平方向に埋設するといった場合の当該鋼管も埋設装置1による施工対象に含めることができる。要は、管体であって、その内部に配置した推進装置10から当該管体に対して推進力を作用させることができるものは本願の埋設装置1による施工対象に含めることができる。
【0048】
なお、本実施形態において例示したエアーバイブレーター以外の推進装置(例えば、油圧駆動または電気駆動によるバイブレーター、手動によるバイブレーターなど)を用いて埋設施工をすることができることはいうまでもない。また、空気以外の流体、例えば空気以外の気体や、油や水などの液体を用いることができることも同様である。また、本実施形態において説明したエアーバイブレーター11は杭100に推進力を与えるための起震機の好適な一具体例にすぎず、上述したように、エアーハンマーなどからなる起震機を採用することももちろん可能である。
【0049】
また、本実施形態では、推進用エアーコンプレッサー(流体供給装置)30Aと袋体用エアーコンプレッサー(流体供給装置)30Bという別々のエアーコンプレッサーを用いたが、ひとつのエアーコンプレッサーで両機能を兼用することとしてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、袋体20を膨縮させるための装置として袋体用エアーコンプレッサー(流体供給装置)30Bを用いたが、これは袋体20を膨らませるための装置(膨張装置)の好適な一例にすぎない。このほか、たとえば袋体20の外部から熱を供給し、袋体20の内部の流体を加熱して膨張させるといった手段ないしはそのための装置を流体供給装置の代わりに、あるいは液体供給装置と併せて用いることも可能である。以下に2つの例を挙げる。(1)例えば、袋体20の外縁部が杭(管体)100の内径とほとんど等しいかほんの少し内径より大きい程度だとする。この時、袋体20が杭100の内部から杭100を押す力は、エアーバイブレーター(起震機)11による推進力に耐えうる力ではない場合があり得るが、袋体20が杭100にこすれながら振動が続くことによって摩擦熱が発生し、それによって袋体20が温められ、袋体20の内部の空気が膨張し、推進力に十分耐える力で杭100を押せるようになる可能性がある。(2)杭100の上部からホースを通じて袋体に熱風を当て、膨張させるといった構成の加熱装置(膨張装置)50を用いる方法がある(図5参照)。
【0051】
また、本実施形態ではエアーバイブレーター11が生み出す推進力を袋体20のみに伝達して作用させる形態を示したが(図3等参照)、これも本発明の好適な一例にすぎない。このほか、たとえば、エアーバイブレーター11を杭100の開口先端101の近傍に配置し、推進装置10の当該エアーバイブレーター11による推進力を袋体20に伝達するとともに、このエアーバイブレーター11にて地盤を打撃しながら杭100を地盤に推進させることも可能である(図11参照)。こうした場合には、エアーバイブレーター11による推進力を利用して地盤を直接的にたたき砕き破壊しながら杭(管体)100を推進させて埋設することができる。
【0052】
また、本実施形態のごとき杭100の埋設方法において、推進装置10の周辺、袋体20の周辺といった箇所に適宜、止水材40を設置してもよい(図9参照)。止水材40を設置することで、杭(管体)100内へ土や水が混入することを抑止することができる。止水材40としては、Oリング、鉄板などといった、止水や土砂混入防止の機能・効果を有する部材を採用することができる。このような止水材40は、推進装置10と一体化されていてもよい。また、本例では推進装置10の先端付近に配置した止水材40を例示しているが(図9参照)、このほかの例として、止水材40を、分割された袋体20(図6参照)の隙間を埋めるように設置してもよいし、当該推進装置10の上部付近に設置してもよい。
【0053】
また、本実施形態のごとき埋設装置1は、杭(管体)100を埋設した後、当該杭(管体)100の先端101のあたりで拡底する構成であってもよい。このように先端101のあたりを拡底させるための構成や手段は特に限定されない。例を挙げるならば、推進装置10で打撃を加えることによりある部材を動かしたり塑性変形させたりして杭(管体)100の外径よりも広く外側へ拡径させるといった構成や手段を採用することができる。一例として、縦断面が例えば「く」字形の拡径部材120を杭100の先端101にピン結合しておき、杭100を埋設した後、当該拡径部材120の一端側を推進装置10で打撃することで他端側を外側に開かせるようにした構成を採用することができる(図10参照)。このように、杭100のとくに先端101のあたりを拡径させることで、地盤G中での抵抗を増大させ、杭100としての支持力を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、管体(例えば鋼管杭)を地盤に埋設する際に用いられる埋設装置や埋設方法に適用して好適である。
【符号の説明】
【0055】
1…埋設装置
10…推進装置
11…エアーバイブレーター(起震機)
11C…シリンダー
12…エクステンション
20…袋体(推進力伝達部)
30A(30)…推進用エアーコンプレッサー(流体供給装置)
30B(30)…袋体用エアーコンプレッサー(流体供給装置(膨張装置))
32A(32)…推進用エアーホース
32B(32)…袋体用エアーホース
40…止水材
50…加熱装置(膨張装置)
100…杭(管体)
101…先端
103…内壁
104…基端側開口
120…拡径部材
F…充填材
G…地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11