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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】車両の制御方法及び車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/22 20060101AFI20240816BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20240816BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240816BHJP
   B60W 20/16 20160101ALI20240816BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20240816BHJP
   F01N 3/021 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F01N3/22 321B
B60K6/46 ZHV
B60W10/06 900
B60W20/16
F01N3/20 K
F01N3/021
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020194335
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083082
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 太一朗
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-056614(JP,A)
【文献】特開2007-321719(JP,A)
【文献】特開2016-002862(JP,A)
【文献】特開2021-160646(JP,A)
【文献】特開2022-021564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/22
B60K 6/46
B60W 10/06
B60W 20/16
F01N 3/20
F01N 3/021
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの排気通路に設けられ、大気に放出される排気ガスを浄化するとともに、バッテリの電力で加熱される加熱装置を有する第1触媒と、を備えた車両の制御方法であって、
前記加熱装置によって前記第1触媒を第1所定温度まで上昇させる暖機に必要な第1触媒暖機時間を推定し、
前記車両の走行開始予定時刻より少なくとも前記第1触媒暖機時間前に、前記加熱装置に電力の供給を開始して前記第1触媒を暖機し、
前記車両が前記走行開始予定時刻に走行を開始しない場合には、前記暖機時よりも小さな電力を前記加熱装置に供給して、前記第1触媒を前記第1所定温度以上に維持することを特徴とする車両の制御方法。
【請求項2】
エンジンと、
前記エンジンの排気通路に設けられ、大気に放出される排気ガスを浄化するとともに、バッテリの電力で加熱される加熱装置を有する第1触媒と、を備えた車両の制御方法であって、
前記加熱装置によって前記第1触媒を第1所定温度まで上昇させる暖機に必要な第1触媒暖機時間を推定し、
前記車両の走行開始予定時刻より少なくとも前記第1触媒暖機時間前に、前記加熱装置に電力の供給を開始して前記第1触媒を暖機し、
前記エンジンの冷却水温を第2所定温度まで上昇させる暖機に必要なエンジン暖機時間を推定し、
前記第1触媒暖機時間と前記エンジン暖機時間とを合算して第1合計時間を算出し、
前記車両の走行開始予定時刻より少なくとも前記第1合計時間前に、前記加熱装置に電力の供給を開始し、前記第1触媒を前記第1所定温度まで上昇させた後、前記エンジンを第1回転速度で駆動させて前記エンジンを暖機することを特徴とする車両の制御方法。
【請求項3】
請求項に記載された車両の制御方法であって、
前記車両が前記走行開始予定時刻に走行を開始しない場合に、前記冷却水温が第3所定温度まで低下したときは、前記エンジンを駆動させて前記冷却水温を前記第2所定温度まで上昇させることを特徴とする車両の制御方法。
【請求項4】
請求項に記載された車両の制御方法であって、
前記冷却水温が前記第3所定温度まで低下して前記エンジンが駆動されたときには、前記加熱装置への電力の供給を停止することを特徴とする車両の制御方法。
【請求項5】
請求項からのいずれか1つに記載された車両の制御方法であって、
前記車両は、前記排気通路における前記第1触媒の下流側に大気に放出される排気ガスを浄化する第2触媒をさらに備え、
前記加熱装置及び前記エンジンの排気によって前記第2触媒の暖機に必要な第2触媒暖機時間を推定し、
前記第1合計時間に前記第2触媒暖機時間を合算して第2合計時間を算出し、
前記車両の走行開始予定時刻より少なくとも前記第2合計時間前に、前記加熱装置に電力の供給を開始して前記第1触媒を前記第1所定温度まで上昇させた後、前記エンジンを前記第1回転速度よりも遅い第2回転速度で駆動して前記第2触媒を暖機した後、前記エンジンを前記第1回転速度で駆動して前記エンジンの冷却水温を前記第2所定温度まで上昇させることを特徴とする車両の制御方法。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1つに記載された車両の制御方法であって、
次回の走行開始予定時刻の外気温を推定し、
推定した前記外気温に基づいて、次回の前記加熱装置による前記暖機に必要なエネルギー量を推定し、
前記車両の走行終了時に前記エネルギー量を確保できるように前記バッテリの充電率を制御することを特徴とする車両の制御方法。
【請求項7】
エンジンと、
前記エンジンの排気通路に設けられ、大気に放出される排気ガスを浄化するとともに、バッテリの電力で加熱される加熱装置を有する第1触媒と、
を備えた車両の制御装置であって、
前記加熱装置によって前記第1触媒を第1所定温度まで上昇させる暖機に必要な第1触媒暖機時間を推定し、
前記車両の走行開始予定時刻より少なくとも前記第1触媒暖機時間前に、前記加熱装置に電力の供給を開始して前記第1触媒を暖機し、
前記車両が前記走行開始予定時刻に走行を開始しない場合には、前記暖機時よりも小さな電力を前記加熱装置に供給して、前記第1触媒を前記第1所定温度以上に維持することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項8】
エンジンと、
前記エンジンの排気通路に設けられ、大気に放出される排気ガスを浄化するとともに、バッテリの電力で加熱される加熱装置を有する第1触媒と、
を備えた車両の制御装置であって、
前記加熱装置によって前記第1触媒を第1所定温度まで上昇させる暖機に必要な第1触媒暖機時間を推定し、
前記車両の走行開始予定時刻より少なくとも前記第1触媒暖機時間前に、前記加熱装置に電力の供給を開始して前記第1触媒を暖機し、
前記エンジンの冷却水温を第2所定温度まで上昇させる暖機に必要なエンジン暖機時間を推定し、
前記第1触媒暖機時間と前記エンジン暖機時間とを合算して第1合計時間を算出し、
前記車両の走行開始予定時刻より少なくとも前記第1合計時間前に、前記加熱装置に電力の供給を開始し、前記第1触媒を前記第1所定温度まで上昇させた後、前記エンジンを第1回転速度で駆動させて前記エンジンを暖機することを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を制御する車両の制御方法及び車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発電機と、発電機を駆動するよう構成されたエンジンと、エンジンから排出された排気ガスを浄化するよう構成された触媒装置と、エンジンの運転を制御するよう構成された制御部(PCU)と、を備えた電気自動車が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された電気自動車では、エンジンを始動することによって、発電機が発電を開始するときに、触媒装置が活性状態に至るまでは、触媒装置が活性状態に至った以降の発電駆動力よりも低い駆動力となるように、エンジンを運転する暖機モードを実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-52500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された電気自動車では、車両が走行を開始した後、エンジンが発電を開始する前にエンジンを暖機モードで駆動している。これにより、エンジンの駆動時間が長くなるため、ドライバが受けるエンジンの振動や騒音の時間が長くなり、音振性能が良好とは言えなかった。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、エンジン始動時の音振性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、車両は、エンジンと、エンジンの排気通路に設けられ、大気に放出される排気ガスを浄化するととともに、バッテリの電力で加熱される加熱装置を有する第1触媒と、を備える。この車両の制御方法は、加熱装置によって第1触媒を第1所定温度まで上昇させるために必要な触媒暖機時間を推定し、車両の走行開始予定時刻より前に、加熱装置に対して触媒暖機時間、電力を供給して第1触媒を暖機し、車両が走行開始予定時刻に走行を開始しない場合には、暖機時よりも小さな電力を加熱装置に供給して、第1触媒を第1所定温度以上に維持する
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、走行開始予定時刻には、第1触媒の温度を上昇させておくことができる。これにより、車両が走行を開始してエンジンが始動するときに、第1触媒の暖機をするためだけにエンジンを駆動する必要がなくなる。よって、音振性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両の概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る暖機制御を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の実施形態に係る待機モードにおける制御のフローチャートである。
図4図4は、本発明の実施形態に係る暖機制御によるタイムチャートの一例である。
図5図5は、変形例に係る暖機制御によるフローチャートである。
図6図6は、変形例に係る待機モードにおける制御のフローチャートである。
図7図7は、変形例に係る暖機制御によるタイムチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1を参照して、本発明の実施形態に係る車両100の制御方法について説明する。
【0012】
車両100は、エンジン1と、第1モータとしての発電モータ2と、バッテリ3と、第2モータとしての走行モータ4と、エンジン1に吸入される外気が通る吸気通路11と、エンジン1からの排気ガスが通る排気通路12と、車両100の動作を制御する制御装置としてのコントローラ20と、を備える。本実施形態の車両100は、エンジン1を発電のみに使用し、走行モータ4を車輪5の駆動と電力の回生に使用するシリーズ方式のハイブリッド車両である。
【0013】
エンジン1は、ガソリンを燃料とする内燃エンジンであり、複数のシリンダ10(図1では3つ)を有する。
【0014】
吸気通路11には、スロットルバルブ14が配置される。スロットルバルブ14は、コントローラ20により駆動制御される。スロットルバルブ14は、エンジン1に供給される吸入空気の流量を調整する。
【0015】
エンジン1の各シリンダ10には、それぞれ、燃料噴射装置(図示せず)、吸気弁(図示せず)、排気弁(図示せず)、吸気弁及び排気弁のバルブタイミングを調整する動弁機構(図示せず)、点火プラグ(図示せず)等が設けられる。燃料噴射装置を所定のタイミングで制御することにより、燃料がエンジン1のシリンダ10内に噴射され、また、ピストン(図示せず)の動作に伴ってシリンダ10内にて燃料と空気との混合気が形成される。この混合気は点火プラグにおいて発生した火花に基づいて燃焼される。
【0016】
エンジン1は、減速機13を介して、発電モータ2に機械的に連結される。エンジン1の動力は、減速機13を介して発電モータ2に伝達され、発電モータ2はエンジン1の動力によって回転して発電する。発電モータ2は、バッテリ3に対して電気的に接続され、発電モータ2の発電電力はバッテリ3に充電される。
【0017】
排気通路12には、エンジン1からの排気ガスを浄化する第1触媒30と、第1触媒30を通過した排気ガスを浄化する第2触媒40と、が設けられる。本実施形態では、第1触媒30として、例えば、三元触媒が用いられる。第1触媒30は、排気中のNOx、CO、HC等を酸化、還元することにより無害な窒素、水、二酸化炭素等へと浄化する。また、本実施形態では、第2触媒40として、例えば、GPF(ガソリン・パティキュレート・フィルタ)が用いられる。GPFは、例えば、微小粒子状物質を除去する楕円柱状のセラミックフィルタによって構成される。第1触媒30及び第2触媒40は、排気ガスの熱により暖機され、特に所定の活性温度以上の温度になると高効率で排気ガスを浄化可能となる。
【0018】
第1触媒30は、入口付近に加熱装置31を有する。加熱装置31は、例えば、電熱ヒータにより構成される。加熱装置31は、バッテリ3の電力が供給されることにより発熱し、第1触媒30を直接加熱する。これにより、第1触媒30の触媒性能をより早く発揮させることができる。なお、これに限らず、加熱装置31が第1触媒30の入口付近を流れる排気ガスを加熱し、この加熱された排気ガスによって第1触媒30を加熱するように構成することもできる。
【0019】
バッテリ3は、例えば、リチウムイオン電池により構成される。バッテリ3は、走行モータ4によって回生された電力及び発電モータ2によって発電された電力が充電されるとともに、充電された電力を走行モータ4に供給する。
【0020】
バッテリ3のSOC(充電率)は、SOCセンサ3aによって検出され、コントローラ20に送信される。コントローラ20は、SOC(充電率)に基づいてバッテリ3の充電制御を行う。
【0021】
走行モータ4は、バッテリ3からインバータ6を介して供給される電力により駆動する。走行モータ4による回転動力がギア機構7を介して車輪5に伝達されることで、車両100は走行する。
【0022】
車両100では、例えば、高負荷時のように大きな駆動力が要求され、バッテリ3からの電力のみでは駆動力要求を満たせない場合には、バッテリ3からの電力に加え、エンジン1に接続される発電モータ2からの電力(エンジン1の発電電力)も走行モータ4に供給される。これに対し、中、低負荷時のように大きな駆動力が要求されない場合には、走行モータ4にはバッテリ3からのみ電力が供給され、エンジン1の発電電力はすべてバッテリ3に充電される。
【0023】
コントローラ20は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、CPUを含む汎用の電子回路と周辺機器から構成される。コントローラ20は、車両100の走行状態(車速、SOCなど)に基づいて、あらかじめ記憶されたプログラムを実行することにより、車両100の各種制御を実行する。
【0024】
次に、バッテリ3の充電制御について説明する。
【0025】
バッテリ3の充電は、コントローラ20により制御される。バッテリ3のSOCが充電制御の下限値まで低下すると、コントローラ20は、エンジン1を駆動する。これにより、発電モータ2が駆動し、発電モータ2によって発電された電力がバッテリ3に供給され、バッテリ3は充電される。
【0026】
バッテリ3のSOCが充電制御の上限値まで上昇すると、コントローラ20は、エンジン1を停止する。これにより、発電モータ2が停止し、発電モータ2による発電が停止する。
【0027】
また、車両100が減速しているとき、あるいは、コースト走行しているときには、車輪5の駆動力により走行モータ4が回転することで電力が回生される。走行モータ4によって回生された電力はバッテリ3に充電される。
【0028】
ところで、車両100が走行を開始した直後は、第1触媒30の温度がほぼ外気温と等しくなっている。このため、そのままエンジン1を始動すると、排気性能が悪化することになる。そこで、加熱装置31によって第1触媒30を加熱することが考えられる。しかしながら、この場合、バッテリ3から走行モータ4に供給できる電力が低下するため、走行性能が悪化するおそれがある。
【0029】
そこで、本実施形態の車両100では、車両100が走行を開始する前に、第1触媒30及びエンジン1の暖機を行う暖機制御を行う。以下に、図2及び図3を参照しながら、本実施形態の暖機制御について説明する。
【0030】
図2は、本実施形態の暖機制御に係る制御の流れを示すフローチャートである。図2に示すフローチャートに示す暖機制御は、コントローラ20にあらかじめ記憶されたプログラムに基づいて実行される。
【0031】
ステップS1では、車両100の走行開始予定時刻tsを取得する。具体的には、ドライバが事前に設定した走行開始予定時刻tsがコントローラ20内のメモリに記憶されており、コントローラ20は、この設定された走行開始予定時刻tsをメモリから読み出す。
【0032】
ステップS2では、走行開始予定時刻tsの外気温Taを取得する。コントローラ20は、例えば、外気温センサ8によって検出された現在の外気温Trと現在までの外気温の変化とに基づいて、走行開始予定時刻tsの外気温Taを推定する。なお、これに限らず、例えば、車両100が外部と通信可能な装備を備えていれば、天気予報などから走行開始予定時刻tsの予想外気温を取得し、この予想外気温を外気温Taとしてもよい。
【0033】
ステップS3では、暖機時間tw1~tw3を算出する。ここで、暖機時間tw1~tw3について説明する。
【0034】
暖機時間tw1は、加熱装置31によって第1触媒30を第1所定温度T1まで上昇させる暖機に必要な時間(以下では、「第1触媒暖機時間」ともいう。)である。コントローラ20は、目標値である第1所定温度T1と現在の外気温Trとの差、もしくは第1所定温度T1とステップS2において推定した外気温Taとの差と、加熱装置31による単位時間当たりの発熱量と、第1触媒30の熱容量と、に基づいて、第1触媒暖機時間(暖機時間tw1)を算出する。なお、暖機時間tw1算出時の第1触媒30の温度は、外気温Trと同等とみなせるため、外気温Trを用いて暖機時間tw1を算出しているが、温度センサ30aによって検出された第1触媒30の温度(第1触媒温度Tcat)を用いて、暖機時間tw1を算出するようにしてもよい。
【0035】
暖機時間tw2は、加熱装置31及びエンジン1の排気によって第2触媒40を暖機するのに必要な時間(以下では、「第2触媒暖機時間」ともいう。)である。コントローラ20は、現在の外気温TrもしくはステップS2において推定した外気温Taと、加熱装置31による単位時間当たりの発熱量Qhと、エンジン1の排気ガスの流量及び排気ガスの熱量Qeとに基づいて、第2触媒暖機時間(暖機時間tw2)を算出する。なお、後述するように、第2触媒40の暖機時には、エンジン1はあらかじめ定められた回転速度N3(第2回転速度)で駆動される。このため、エンジン1の排気ガスの流量及び熱量Qeは容易に算出できる。
【0036】
暖機時間tw3は、エンジン1の冷却水温Twatを第2所定温度T2まで上昇させる暖機に必要な時間(以下では「エンジン暖機時間」ともいう。)である。コントローラ20は、目標値である第2所定温度T2と現在の外気温Trとの差、もしくは第2所定温度T2とステップS2において推定した外気温Taとの差と、エンジン1による単位時間当たりの発熱量と、に基づいて、エンジン暖機時間(暖機時間tw1)を算出する。なお、暖機時間tw3算出時の冷却水温Twatは、外気温Trと同等とみなせるため、外気温Trを用いて暖機時間tw3を算出しているが、温度センサ1aによって検出されたエンジン1の冷却水温Twatを用いて、暖機時間tw3を算出するようにしてもよい。
【0037】
ステップS4では、暖機開始時刻twsを算出する。具体的には、コントローラ20は、ステップS3で算出した暖機時間tw1、tw2、及びtw3を合算して第2合計時間としての合計時間ta1を算出する。そして、コントローラ20は、走行開始予定時刻tsより合計時間ta1前の時刻t1を暖機開始時刻twsとして算出する。なお、暖機時間に余裕を見て暖機開始時刻twsを時刻t1より若干早めるようにしてもよい。
【0038】
ステップS5では、時刻が暖機開始時刻twsになったか否かを判定する。時刻が暖機開始時刻twsになったら、ステップS6に進み、時刻が暖機開始時刻twsになっていなければ、ステップS5の判定を繰り返す、つまり、待機する。
【0039】
ステップS6では、加熱装置31を高暖機モードでONにする。具体的には、コントローラ20は、バッテリ3を電源として加熱装置31に対して電力E1を供給する。電力E1は、第1触媒30をより早く暖機するため、例えば、加熱装置31の定格電力に設定される。
【0040】
ステップS6において、加熱装置31に対して電力E1の供給が開始されると、加熱装置31の発熱により第1触媒30が加熱され、第1触媒温度Tcatが上昇する。
【0041】
ステップS7では、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1以上になったか否かを判定する。具体的には、コントローラ20は、温度センサ30aによって検出された第1触媒30の温度(第1触媒温度Tcat)が、第1所定温度T1まで上昇したか否かを判定する。第1所定温度T1は、例えば、第1触媒30の活性温度の下限値に設定される。ステップS7において、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1以上になったと判定されれば、第1触媒30の暖機が終了したと判断してステップS8に進み、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1まで上昇していなければ、ステップS7の判定を繰り返す。
【0042】
ステップS8では、加熱装置31を低暖機モードでONにする。具体的には、コントローラ20は、加熱装置31に対して電力E2を供給する。低暖機モードでは、高暖機モードで供給される電力E1より小さな電力E2が加熱装置31に供給される。
【0043】
ステップS9では、エンジン1を触媒暖機モードで駆動する。具体的には、コントローラ20は、エンジン1を回転速度N3(第2回転速度)で駆動する。エンジン1の回転速度N3は、例えば、発電モータ2による発電を伴わない、自立回転が可能な最低限付近の値に設定される。
【0044】
エンジン1を触媒暖機モードで駆動することにより、エンジン1からの排気ガスが排気通路12を通って、外部へ放出される。このとき、加熱装置31は低暖機モードでONになっている。このため、加熱装置31を通過する排気ガスが暖められ、この暖められた排気ガスが第2触媒40に流れていくことで、第2触媒40が加熱される。なお、エンジン1の始動直後は、エンジン1内に冷たい排気ガスが排気通路12に排出されるため、第1触媒30の温度が一時的に低下する。しかしながら、エンジン1の燃焼(時間の経過)とともに、第1触媒温度Tcatも再び上昇する。
【0045】
ステップS10では、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1以上になったか否かを判定する。具体的な判定方法は、ステップS7と同様であるので説明を省略する。ステップS10において、第1触媒温度Tcatが再び第1所定温度T1以上になったと判定されれば、ステップS11に進み、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1まで上昇していなければ、ステップS10の判定を繰り返す。
【0046】
ステップS11では、加熱装置31をOFFにする。具体的には、コントローラ20は、加熱装置31への電力の供給を停止する。
【0047】
ステップS12では、エンジン1を冷却水暖機モードで駆動する。具体的には、コントローラ20は、エンジン1を触媒暖機モード時の回転速度N3(第2回転速度)よりも早い回転速度N1(第1回転速度)で駆動させる。これにより、エンジン1の冷却水温Twatが上昇する。
【0048】
ステップS13では、冷却水温Twatが第2所定温度T2以上になったか否かを判定する。具体的には、コントローラ20は、冷却水温Twatを検出する温度センサ1aによって検出された冷却水温Twatが、第2所定温度T2まで上昇したか否かを判定する。ステップS13において、冷却水温Twatが第2所定温度T2以上になったと判定されれば、エンジン1の暖機が終了したと判断してステップS14に進み、冷却水温Twatが第2所定温度T2まで上昇していなければ、ステップS13の判定を繰り返す。
【0049】
ステップS14では、車両100が走行を開始したか否かを判定する。具体的には、例えば、コントローラ20は、車速が一定値以上になったか否かを判定する。コントローラ20は、車速が一定値以上になっていれば、車両100が走行を開始したと判断し、暖機制御を終了する。これに対し、コントローラ20が、車両100が走行を開始していないと判断し、ステップS15に進んで待機モードを実行する。なお、車両100が走行を開始したか否かをイグニッションスイッチの操作に基づいて行うようにしてもよい。
【0050】
続いて、図3に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態における待機モードにおける制御について説明する。
【0051】
ステップS150では、加熱装置31をOFFにするとともにエンジン1を停止する。具体的には、コントローラ20は、加熱装置31への電力の供給を停止するとともに、エンジン1を停止する。
【0052】
ステップS151では、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1より小さくなったか否かを判定する。具体的には、コントローラ20は、温度センサ30aによって検出された第1触媒30の温度(第1触媒温度Tcat)が、第1所定温度T1より低下したか否かを判定する。ステップS151において、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1より低下したと判定されれば、ステップS152に進み、第1触媒温度Tcatが、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1より低下していなければ、ステップS158に進む。
【0053】
ステップS152では、加熱装置31を保温モードでONにする。具体的には、コントローラ20は、加熱装置31に対して低暖機モード時に供給される電力E2より小さな電力E3を供給する。電力E3は、加熱装置31によって第1触媒温度Tcatを第1所定温度T1に保持できる程度の電力であればよい。
【0054】
ステップS153では、冷却水温Twatが第3所定温度T3より小さくなったか否かを判定する。具体的には、コントローラ20は、冷却水温Twatを検出する温度センサ1aによって検出された冷却水温Twatが、第3所定温度T3まで低下したか否かを判定する。第3所定温度T3は、第2所定温度T2よりも小さな値であり、エンジン1が暖機されていると是認できる下限値付近の値に設定される。
【0055】
ステップS153において、冷却水温Twatが第3所定温度T3より小さくなったと判定されれば、エンジン1の暖機が必要と判断して、ステップS154に進む。これに対して、冷却水温Twatが第3所定温度T3以上であれば、ステップS153の判定を繰り返す。
【0056】
ステップS154では、エンジン1を保温モードで駆動する。具体的には、コントローラ20は、エンジン1を冷却水暖機モード時の回転速度N1(第1回転速度)よりも遅く、触媒暖機モード時の回転速度N3(第2回転速度)よりも早い、回転速度N2で駆動させる。これにより、エンジン1の冷却水温Twatが上昇する。
【0057】
ステップS155では、加熱装置31をOFFにする。具体的には、コントローラ20は、加熱装置31への電力の供給を停止する。ステップS154において、エンジン1が駆動しているので、排気ガスによって第1触媒30を第1所定温度T1以上に維持することが可能である。このため、加熱装置31をOFFにする。
【0058】
ステップS156では、冷却水温Twatが第2所定温度T2以上になったか否かを判定する。具体的な判定の方法は、ステップS13と同様であるので説明を省略する。ステップS156において、冷却水温Twatが第2所定温度T2以上になったと判定されれば、エンジン1の暖機が終了したと判断してステップS157に進み、冷却水温Twatが第2所定温度T2まで上昇していなければ、ステップS156の判定を繰り返す。
【0059】
ステップS157では、エンジン1を停止し、再び、ステップS151へ戻る。
【0060】
続いて、ステップS151において、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1以上であると判定され、ステップS158に進んだ場合について説明する。
【0061】
ステップS158では、冷却水温Twatが第3所定温度T3より小さくなったか否かを判定する。具体的な判定方法は、ステップS153と同様であるので説明を省略する。ステップS158において、冷却水温Twatが第3所定温度T3より小さくなったと判定されれば、エンジン1の暖機が必要と判断して、ステップS159に進む。これに対して、冷却水温Twatが第3所定温度T3以上であれば、再びステップS151に戻る。
【0062】
ステップS159では、エンジン1を保温モードで駆動する。具体的な方法は、ステップS154と同様であるので説明を省略する。エンジン1を保温モードで駆動した後は、ステップS156に進む。
【0063】
コントローラ20は、車両100が走行を開始した場合には、待機モードを終了する。なお、車両100の走行が開始されないまま、走行開始予定時刻tsから所定時間経過した場合には、待機モード終了する。また、走行開始予定時刻tsから所定時間経過しない場合であっても、バッテリ3の残容量が所定値以下になった場合には、コントローラ20は、待機モードを終了する。
【0064】
次に、図4のタイムチャートを参照して、本実施形態の暖機制御の具体例を説明する。なお、図4に示す例では、加熱装置31の高暖機モードとエンジン1の触媒暖機モードを若干オーバーラップさせるとともに、加熱装置31の高暖機モードとエンジン1の冷却水暖機モードとを若干オーバーラップさせている。
【0065】
上述のようにして算出した暖機開始時刻twsになると(時刻t1)、コントローラ20は、加熱装置31を高暖機モードでONにする。具体的には、コントローラ20は、加熱装置31に電力E1を供給する。加熱装置31に電力が供給されると、加熱装置31が発熱し、第1触媒30が加熱され、第1触媒30の温度(第1触媒温度Tcat)が上昇する。
【0066】
第1触媒30の温度(第1触媒温度Tcat)が第1所定温度T1まで上昇する直前に(時刻t2)、コントローラ20は、エンジン1を触媒暖機モードで駆動する。具体的には、コントローラ20は、エンジン1を回転速度N3で駆動する。
【0067】
そして、時刻t3において、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1まで上昇すると、コントローラ20は、加熱装置31に供給する電力を電力E2に低下する。
【0068】
上述のように、エンジン1の始動直後は、エンジン1内に冷たい排気ガスが排気通路12を通じて第1触媒30に流れてくるため、第1触媒温度Tcatが一時的に低下するが、時間の経過とともにエンジン1の排気ガスも高温になるので、第1触媒温度Tcatも再び上昇する。また、エンジン1が駆動することによって、上述のように、エンジン1からの排気ガスによって、第2触媒40が加熱される。
【0069】
第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1付近まで上昇すると(時刻t4)、コントローラ20は、エンジン1を冷却水暖機モードで駆動する。具体的には、コントローラ20は、エンジン1を回転速度N1で駆動する。
【0070】
そして、時刻t5において、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1まで上昇すると、コントローラ20は、加熱装置31への電力の供給を停止する。
【0071】
エンジン1が回転速度N1で駆動することにより、冷却水が暖められ、冷却水温Twatが上昇する。なお、このとき、エンジン1の排気ガスにより第1触媒温度Tcatも上昇する。そして、時刻t6において、冷却水温Twatが第2所定温度T2まで上昇すると、コントローラ20は、エンジン1を停止する。なお、時刻t6は、車両100の走行開始予定時刻tsであるが、図4に示す例では、車両100の走行が開始されず、そのまま待機モードに移行する。
【0072】
走行開始予定時刻tsを過ぎると、加熱装置31がOFFになっているとともに、エンジン1が停止しているため、第1触媒温度Tcat及び冷却水温Twatが徐々に低下する。
【0073】
時刻t7において、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1より小さくなると、コントローラ20は、加熱装置31を保温モードでONにする。具体的には、コントローラ20は、加熱装置31に電力E3を供給する。これにより、第1触媒温度Tcatが第1所定温度以上に維持される。この間、エンジン1は停止しているため、冷却水温Twatはさらに低下する。
【0074】
時刻t8において、冷却水温Twatが第3所定温度T3まで低下すると、コントローラ20は、エンジン1を保温モードで駆動する。具体的には、コントローラ20は、エンジン1を回転速度N2で駆動する。これにより、冷却水温Twatが上昇する。
【0075】
時刻t9において、冷却水温Twatが第2所定温度T2まで上昇すると、コントローラ20は、エンジン1を停止する。以降は、コントローラ20は、第1触媒温度Tcat及び冷却水温Twatのそれぞれ所定温度を維持するようにして制御を継続する。
【0076】
以上のように、本実施形態の暖機制御では、コントローラ20は、走行開始予定時刻tsを推定し、車両100の走行開始予定時刻tsより合計時間ta1前に、第1触媒30、第2触媒40及びエンジン1の暖機を開始する。これにより、車両100が走行を開始したときに、第1触媒温度Tcat及び冷却水温Twatが低温の状態でエンジン1が始動されることを抑制できるので、排気性能が悪化することを抑制できる。また、走行開始予定時刻tsには、第1触媒温度Tcat及び冷却水温Twatを上昇させておくことができるので、車両100が走行を開始してエンジン1が始動するときに、第1触媒30の暖機をするためだけにエンジン1を駆動する必要がなくなる。よって、音振性能を向上させることができる。
【0077】
また、本実施形態の暖機制御では、コントローラ20は、第1触媒温度Tcatを第1所定温度T1以上に維持するとともに、冷却水温Twatが第3所定温度T3以上に維持する待機モード(保温制御)を実行する。これにより、走行開始予定時刻tsを過ぎて、車両100が走行を開始するような場合でも、第1触媒30の暖機が完了しているので、第1触媒30の暖機するためにエンジン1を駆動する必要がない。よって、排気性能の悪化を防止できるとともに、音振性能を向上させることができる。
【0078】
また、図4に示す実施例では、上述のような暖機モードの切り換えにおいてオーバーラップを設けているので、制御の切り換えによるタイムラグを防止できる。
【0079】
なお、コントローラ20は、車両100の走行開始後、次回の走行開始予定時刻tsの外気温Taを推定するとともに、推定した外気温Taに基づいて、次回の加熱装置31による暖機に必要なエネルギー量Qrを推定して、車両100の走行終了時にエネルギー量Qrを確保できるようにバッテリ3の充電率を制御する。
【0080】
具体的には、例えば、ナビゲーションなどの情報から自宅付近に近づいたことを検知した場合に、推定した次回の走行開始予定時刻tsの外気温Taに基づいて、次回の暖機制御に必要なエネルギー量Qrを確保できるようにバッテリ3の充電率を制御する。これにより、バッテリ3の充電率不足により、次回の暖機制御(走行開始予定時刻ts前の暖機)を行うことができない状況に陥ることを防止できる。
【0081】
なお、暖機制御では、走行開始予定時刻tsよりも前に、エンジン1の暖機、及び第2触媒40の暖機を必ずしも行う必要はない。
【0082】
以下に、変形例として、図5から図7を参照して、第1触媒30の暖機のみを行う暖機制御について説明する。
【0083】
図5は、変形例における暖機制御の流れを示すフローチャートである。また、図6は、変形例における待機モードの制御の流れを示すフローチャートである。なお、図5及び図6に示すフローチャートでは、図2及び図3と同じ処理を示すステップについては、同じ番号を付して適宜説明を省略し、処理の異なるステップを中心に説明する。
【0084】
図5におけるステップS3Aでは、暖機時間t1を算出する。暖機時間t1の具体的な算出方法は、図2のステップS3と同様であるので、説明を省略する。
【0085】
ステップS4Aでは、暖機開始時刻twsを算出する。具体的には、コントローラ20は、コントローラ20は、走行開始予定時刻tsよりステップS3で算出した暖機時間tw1前の時刻を暖機開始時刻twsとして算出する。
【0086】
次に、図6に示す変形例における待機モードについて説明する。
【0087】
この変形例では、第1触媒30の暖機が完了したにもかかわらず、車両100が走行を開始していない場合に、待機モードに移行する。この変形例では、待機モードに移行したときには、加熱装置31がOFFになっているため(図5のステップS11の処理)、第1触媒温度Tcatは徐々に低下する。
【0088】
ステップS151では、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1より小さくなったか否かを判定する。ステップS151において、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1より低下したと判定されれば、ステップS152に進む。これに対し、第1触媒温度Tcatが、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1より低下していなければ、ステップS151Aの判定を繰り返す。
【0089】
ステップS152では、加熱装置31を保温モードでONにする。具体的には、コントローラ20は、加熱装置31に対して電力E3を供給する。
【0090】
以降は、コントローラ20は、走行開始予定時刻tsから所定時間経過する、車両100が走行を開始した、あるいは、バッテリ3の残容量が所定値以下になるまで、待機モードを継続する。
【0091】
次に、図7のタイムチャートを参照して、変形例における暖機制御の具体例を説明する。
【0092】
上述のようにして算出した暖機開始時刻twsになると(時刻t1)、コントローラ20は、加熱装置31を高暖機モードでONにする。具体的には、コントローラ20は、加熱装置31に電力E1を供給する。加熱装置31に対して電力E1の供給が開始されると、加熱装置31の発熱により第1触媒30が加熱され、第1触媒温度Tcatが上昇する。
【0093】
そして、時刻t11において、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1まで上昇すると、コントローラ20は、加熱装置31への電力の供給を停止する。なお、時刻t11は、車両100の走行開始予定時刻tsであるが、図7に示す変形例では、車両100は走行が開始されず、そのまま待機モードに移行する。
【0094】
時刻t12において、第1触媒温度Tcatが第1所定温度T1より小さくなると、コントローラ20は、加熱装置31を保温モードでONにする。具体的には、コントローラ20は、加熱装置31に電力E3を供給する。これにより、第1触媒温度Tcatが第1所定温度以上に維持される。
【0095】
このように、この変形例においても、車両100の走行開始予定時刻tsより暖機時間ta1分前に、加熱装置31に電力の供給を開始して第1触媒30を暖機しているので、第1触媒温度Tcatが低温の状態でエンジン1が始動されることを抑制できる。これにより、排気性能が悪化することを抑制できる。また、走行開始予定時刻tsには、第1触媒温度Tcatを上昇させておくことができるので、車両100が走行を開始してエンジン1が始動するときに、第1触媒30の暖機をするためだけにエンジン1を駆動する必要がなくなる。よって、音振性能を向上させることができる。
【0096】
さらに、この変形例でも、第1触媒温度Tcatを第1所定温度T1以上に維持する待機モード(保温制御)を実行する。これにより、走行開始予定時刻tsを過ぎて、車両100が走行を開始しても、第1触媒30の暖機が完了しているので、第1触媒30の暖機するためにエンジン1を駆動する必要がない。よって、排気性能の悪化を防止できるとともに、音振性能を向上させることができる。
【0097】
なお、第1触媒30の暖機とエンジン1の暖機のみを行う場合には、コントローラ20は、暖機時間tw1及び暖機時間tw3を合算して第1合計時間としての合計時間ta2を算出する。そして、コントローラ20は、走行開始予定時刻tsより合計時間ta2前の時刻t1を暖機開始時刻twsとして算出するようにすればよい。なお、この場合も、暖機時間に余裕を見て暖機開始時刻twsを時刻t1より若干早めるようにしてもよい。
【0098】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0099】
車両100は、エンジン1と、エンジン1の排気通路12に設けられ、大気に放出される排気ガスを浄化するととともに、バッテリ3の電力で加熱される加熱装置31を有する第1触媒30と、エンジン1と加熱装置31の動作を制御するコントローラ20(制御装置)と、を備える。
【0100】
コントローラ20は、加熱装置31によって第1触媒30を第1所定温度T1まで上昇させる暖機に必要な第1触媒暖機時間tw1を推定し、車両100の走行開始予定時刻tsより少なくとも第1触媒暖機時間tw1前に、加熱装置31に電力E1の供給を開始して第1触媒30を暖機する。
【0101】
この構成では、車両100の走行開始予定時刻tsより少なくとも暖機時間ta1分前に、加熱装置31に電力の供給を開始して第1触媒30を暖機しているので、第1触媒温度Tcatが低温の状態でエンジン1が始動されることを抑制できる。これにより、排気性能が悪化することを抑制できる。また、走行開始予定時刻tsには、第1触媒温度Tcatを上昇させておくことができるので、車両100が走行を開始してエンジン1が始動するときに、第1触媒30の暖機をするためだけにエンジン1を駆動する必要がなくなる。よって、音振性能を向上させることができる。さらに、第1触媒30の温度が活性温度になっているので、排気性能の悪化を防止することができる。
【0102】
コントローラ20(制御装置)は、車両100が走行開始予定時刻tsに走行を開始しない場合には、暖機時よりも小さな電力E3を加熱装置31に供給して、第1触媒30を第1所定温度T1以上に維持する。
【0103】
この構成では、走行開始予定時刻tsを過ぎても、第1触媒30の温度(第1触媒温度Tcat)が第1所定温度T1以上に維持されているので、車両100が走行開始予定時刻tsを過ぎて走行を開始した場合であっても、排気性能が悪化することを防止できる。
【0104】
コントローラ20(制御装置)は、車両100の走行開始予定時刻ts前に、エンジン1の冷却水温Twatを第2所定温度T2まで上昇させる暖機に必要なエンジン暖機時間tw3を推定し、第1触媒暖機時間tw1とエンジン暖機時間tw3とを合算して合計時間ta2(第1合計時間)を算出し、車両100の走行開始予定時刻tsより少なくとも合計時間ta2(第1合計時間)前に、加熱装置31に電力E1の供給を開始し、第1触媒30を第1所定温度T1まで上昇させた後、エンジン1を第1回転速度(回転速度N1)で駆動させてエンジン1を暖機する。
【0105】
この構成では、冷却水温Twatが低温の状態でエンジン1が始動されることを抑制できるので、排気性能が悪化することを抑制できる。
【0106】
コントローラ20(制御装置)は、車両100が走行開始予定時刻tsに走行を開始しない場合に、冷却水温Twatが第3所定温度T3まで低下したときは、エンジン1を駆動させて冷却水温Twatを第2所定温度T2まで上昇させる。
【0107】
この構成では、走行開始予定時刻tsを過ぎても、冷却水温Twatが第3所定温度T3より低くなることがない。これにより、車両100が走行開始予定時刻tsを過ぎてから走行を開始した場合であっても、エンジン1が暖機状態にあるので、排気性能が悪化することを防止できる。
【0108】
コントローラ20(制御装置)は、冷却水温Twatが第3所定温度T3まで低下してエンジン1が駆動されたときには、加熱装置31への電力の供給を停止する。
【0109】
待機モード実行中、エンジン1を駆動した場合には、加熱装置31への電力の供給を停止しても、エンジン1からの排気ガスによって、第1触媒温度Tcatを第1所定温度T1以上に維持することができる。これにより、電力消費を低減することができる。
【0110】
車両100は、排気通路12における第1触媒30の下流側に大気に放出される排気ガスを浄化する第2触媒40をさらに備える。コントローラ20(制御装置)は、加熱装置31及びエンジン1の排気によって第2触媒40の暖機に必要な第2触媒暖機時間tw2を推定し、合計時間ta2(第1合計時間)に第2触媒暖機時間tw2を合算して合計時間ta1(第2合計時間)を算出し、車両100の走行開始予定時刻tsより少なくとも合計時間ta1(第2合計時間)前に、加熱装置31に電力の供給を開始して第1触媒30を第1所定温度T1まで上昇させた後、エンジン1を第1回転速度(回転速度N1)よりも遅い第2回転速度(回転速度N3)で駆動して第2触媒40を暖機した後、エンジン1を第1回転速度(回転速度N1)で駆動してエンジン1の冷却水温Twatを第2所定温度T2まで上昇させる。
【0111】
この構成では、車両100の走行開始予定時刻tsより合計時間ta1前に、加熱装置31に電力の供給を開始して第1触媒30を暖機するとともに、エンジン1を駆動してエンジン1及び第2触媒40を暖機している。これにより、第1触媒温度Tcat及び冷却水温Twatが低温の状態でエンジン1が始動されることを抑制できるので、排気性能が悪化することをより確実に抑制できる。
【0112】
コントローラ20(制御装置)は、次回の走行開始予定時刻tsの外気温を推定し、推定した外気温に基づいて、次回の加熱装置31による暖機に必要なエネルギー量Qrを推定し、車両100の走行終了時にエネルギー量Qrを確保できるようにバッテリ3の充電率を制御する。
【0113】
この構成では、バッテリ3の充電率不足により、次回の事前暖機(走行開始予定時刻ts前の暖機)を行うことができない状況に陥ることを防止できる。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0115】
上記実施形態では、車両100として、シリーズハイブリッド車両を例に説明したが、これに限らず、上記暖機制御は、パラレルハイブリッド車両などにも適用できる。また、バッテリ容量が十分あれば、エンジン1のみで駆動する車両にも適用できる。
【0116】
第1触媒30と加熱装置31は、別体で構成されていても、一体で構成されていてもよい。
【0117】
上記実施形態では、走行開始予定時刻tsをドライバが事前に設定した場合を例に説明したが、これに限らず、例えば、コントローラ20が走行が開始された時刻を学習し、学習した時刻を基に走行開始予定時刻tsを設定するようにしてもよい。また、渋滞情報などを加味して走行開始予定時刻tsを変更するようにしてもよい。さらに、ドライバの所有する携帯型端末(タブレット型端末、スマートフォン)と連動して、ドライバのスケジュールや日常の行動に基づいて走行開始予定時刻tsを推定するようにしてもよい。
【0118】
上記実施形態では、車両100に搭載されたコントローラ20が、図2及び図3等に示す全てのステップの処理を行っている場合を例に説明したが、これに限られることはない。例えば、ドライバの所有するパソコン、タブレット型端末、あるいはスマートフォンなどのコンピュータによってステップS1-S4の処理を実行するようにしてよい。具体的には、これらの機器において、設定または推定された走行開始予定時刻ts、及び取得した走行開始予定時刻tsの外気温Taに基づいて、暖機時間t1~t3、及び暖機開始時刻twsを算出する。算出された暖機開始時刻twsは、コントローラ20に送信され、コントローラ20は、受信した暖機開始時刻twsに基づいて、ステップS5以下の処理を実行する。なお、この場合には、これらの機器及びコントローラ20が、制御装置に相当する。
【符号の説明】
【0119】
100 車両
1 エンジン
1a 温度センサ
2 発電モータ
3 バッテリ
3a SOCセンサ
4 走行モータ
10 シリンダ
11 吸気通路
12 排気通路
20 コントローラ(制御装置)
30 第1触媒
31 加熱装置
31a 温度センサ
40 第2触媒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7