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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/10 20060101AFI20240816BHJP
   F02M 35/024 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B01D46/10 D
F02M35/024 511D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020201778
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089405
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 啓
(72)【発明者】
【氏名】長光 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】池田 祐人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 勝▲徳▼
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-075744(JP,U)
【文献】特開2011-143385(JP,A)
【文献】実開昭59-168619(JP,U)
【文献】特開2019-037933(JP,A)
【文献】特開2020-189259(JP,A)
【文献】特開平06-078024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-46/54
F02M 35/00-35/16
F24F 7/04-7/06
F24F 13/08-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が流通可能な開口部が設けられた枠体と、
前記枠体に対して回動可能に支持されることにより、前記開口部を閉じて粒子状物質を捕集可能な閉状態と、前記開口部を開放する開状態とに切替可能なフィルタと、
前記フィルタが前記閉状態にある場合に前記フィルタを前記枠体に対して固定可能な固定部と、
を備え、
前記固定部は、前記枠体の開放側端部に回動可能に取り付けられ留め金具と、前記留め金具の先端部に設けられたネジと、を含み、
前記フィルタが前記閉状態にある場合に、前記留め金具が前記フィルタの開放を遮ることで前記フィルタを前記枠体に対して固定し、前記留め金具がフィルタの開放を遮る状態で前記ネジを締め付けることで前記ネジの先端が前記フィルタを前記開口部の縁部に押し付ける、
フィルタ装置。
【請求項2】
前記フィルタは、前記フィルタが前記閉状態にある場合に、前記開口部の縁部との間に介在するように前記フィルタの縁部に設けられた封止部材を有する、
請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記封止部材は、弾性変形可能なパッキンである、請求項に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記フィルタを通過した後の前記気体に含まれる前記粒子状物質よりも更に微小な微粒子状物質を捕集可能な吸気フィルタより上流側に配置される、
請求項1からのいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記フィルタが開状態にある場合、前記フィルタが前記閉状態にある際に前記気体が通過可能な通気面に養生シートを備えることが可能である、
請求項1からのいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記開口部の縁部又は前記フィルタの支持側端部に前記フィルタの開放時の開度を規制する開度規制金具を備える、請求項1からのいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等の施設では電源喪失時に備えて非常用電源設備が用意されている。かかる非常用電源設備にはディーゼルエンジン等の内燃機関によって発電する電源設備が採用されるが、粉塵などの粒子状物質を含む雰囲気の中でも確実に始動し、安定的に発電することが求められる。そこで、原子力発電所等の施設又は非常用電源設備では外気取入口に粉塵などを捕集するためのフィルタ装置を設置することが求められる。
【0003】
特許文献1には、火山灰を捕集可能なフィルタ装置が開示されている。かかるフィルタ装置は、外気に含まれる火山灰を捕集するフィルタと、フィルタを外気の流れる方向と交差する方向にスライド可能に支持するレールと、複数のフィルタが外気の流れる方向と交差する方向に並んで配置されるようにレールを支持するフレームと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-37933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたフィルタ装置では吸気圧力損失が発生するので、内燃機関の吸気フィルタを別途設け、火山が噴火した場合に火山灰を捕集するフィルタを外気取入口に対して設置することが検討されている。このような外気取入口に対するフィルタの設置作業は少なからず時間や手間を要するが、例えば、火山が噴火して、近い将来、施設や設備を囲む雰囲気の中に火山灰のような粒子状物質の混入が予想される場合には、これらの粒子状物質が到達する前に迅速に設置作業を完了させる必要がある。そのため、内燃機関の吸気フィルタを別途設け、火山が噴火した場合に火山灰のような粒子状物質を捕集するフィルタを外気取入口に設置することとするとフィルタの設置に要する時間を短縮することが求められる。
【0006】
本開示は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、フィルタの設置に要する時間を短縮できるフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係るフィルタ装置は、
気体が流通可能な開口部が設けられた枠体と、
前記枠体に対して回動可能に支持されることにより、前記開口部を閉じて粒子状物質を捕集可能な閉状態と、前記開口部を開放する開状態とに切替可能なフィルタと、
前記フィルタが前記閉状態にある場合に前記フィルタを前記枠体に対して固定可能な固定部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示のフィルタ装置によれば、フィルタを設置する作業者がフィルタを開状態から閉状態に切り替え、フィルタを枠体に対して固定することにより、開口部に対してフィルタが設置される。よって、フィルタの設置に要する時間を短縮でき、近い将来、気体中に火山灰のような粒子状物質の混入が予想される場合にもこれらの粒子状物質が到達する前にフィルタの設置作業を完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るフィルタ装置を複数設置した例を概略的に示す正面図である。
図2図1に示したフィルタ装置を複数設置した例の平面図である。
図3図1に示した一つのフィルタ装置を概略的に示す正面図である。
図4-1】図3に示したフィルタ装置の平面図であって、フィルタが開口部を開放した状態を示す図である。
図4-2】図3に示したフィルタ装置の平面図であって、フィルタが開口部を閉塞した状態を示す図である。
図5図4に示した固定部の詳細を示す平面図である。
図6】実施形態に係るフィルタ装置を適用した非常用電源設備の一例(例1)を概略的に示す図である。
図7】実施形態に係るフィルタ装置を適用した非常用電源設備の一例(例2)を概略的に示す図である。
図8】実施形態に係るフィルタ装置を適用した非常用電源設備の一例(例3)を概略的に示す図である。
図9】実施形態に係るフィルタ装置を適用した非常用電源設備の一例(例4)を概略的に示す図である。
図10】実施形態に係るフィルタ装置を適用した非常用電源設備の一例(例5)を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態に係るフィルタ装置について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
図1は、実施形態に係るフィルタ装置1を複数設置して例を概略的に示す正面図である。図2は、図1に示したフィルタ装置1を複数設置した例の平面図である。図3は、図1に示した一つのフィルタ装置を概略的に示す正面図である。図4は、図3に示したフィルタ装置の平面図であって、図4-1は、フィルタが開口部を開放した状態を示す図であり、図4-2は、フィルタが開口部を閉塞した状態を示す図である。図5は、図4に示した固定部の詳細を示す平面図である。
【0012】
実施形態に係るフィルタ装置1は、例えば、原子力発電所の建屋等の施設の外気取入口INT1や原子力発電所等の施設に用意された非常用電源設備等の設備の外気取入口INT2に設置される。図1及び図2に示すように、施設の外気取入口INT1や設備の外気取入口INT2が実施形態に係るフィルタ装置1よりも大きい場合には、実施形態に係るフィルタ装置1が複数設置される。
【0013】
図3及び図4に示すように、実施形態に係るフィルタ装置1は、枠体2、フィルタ3及び固定部4を備えている。
【0014】
枠体2には、気体(例えば、空気)が流通可能な開口部21が設けられている。図3及び図4に示す例では、枠体2は、幅方向及び高さ方向よりも奥行き方向が短い直方体形状の枠体で構成され、枠体2の後面に開口部21が設けられ、枠体2の前面に開口部21と対応する前面開口部22が設けられている。よって、図3に示したフィルタ装置1の正面視において開口部21は前面開口部22に重なる(図3に開口部21は現れていない)。例えば、開口部21と前面開口部22は各々矩形であって、開口部21は、前面開口部22よりも小さく、前面開口部22にはフィルタ3が挿入され、開口部21はフィルタ3によって閉塞される。
【0015】
フィルタ3は、枠体2に対して回動可能に支持されることにより、開口部21を閉じて気体と共に流入する火山灰等の粒子状物質を捕集可能な閉状態と開口部21を開放する開状態とに切替可能である。よって、施設や設備を囲む雰囲気の中に粒子状物質の混入が予想されない場合にはフィルタ3を開状態とすることで吸気圧力損失の発生を防ぐことができる。そして、例えば、火山が噴火して、近い将来、施設や設備を囲む雰囲気の中に火山灰のような粒子状物質の混入が予想される場合にはフィルタ3を閉状態とすることで、施設内又は設備内に火山灰のような粒子状物質が侵入するのを防ぐことができる。
尚、フィルタ3は、枠体2に対して直接的に回動可能に支持されるものであってもよいし、枠体2とフィルタ3との間に別の部材が介在することにより、枠体2に対して間接的に回動可能に支持されるものであってもよい。
【0016】
図3及び図4に示す例では、フィルタ3は、枠体2の前面開口部22の縁部23(以下「ヒンジ側縁部23」という)とヒンジ31を介して接続され、枠体2に回動可能に支持される。フィルタ3は、枠体2の前面開口部22を閉塞する扉部32と該扉部32の後方に設けられたフィルタ部33とを含み、フィルタ部33の前後に設けられた通気面33A,33Bの各々が扉部32の前面とフィルタ部33の後面とに露出する一方、フィルタ部33の外周面を囲繞する枠(図示せず)によって被覆されている。これにより、フィルタ部33を気体が流通可能となり、フィルタ部33の外周面が保護される。フィルタ部33は、例えば、開口部21よりも大きく前面開口部22よりも小さな直方体形状であって、例えば、開口部21と前面開口部22との間隔と略同一の奥行寸法を有している。これにより、フィルタ3(扉部32)が前面開口部22を閉塞した場合にフィルタ3(フィルタ部33)が開口部21を閉塞する。
【0017】
フィルタ3は、例えば、扉部32のヒンジ側端部(支持側縁部)32aにフィルタ3の開放時の開度を規制する開度規制金具35が設けられ、フィルタ3の開度が90度を超えて大きく開くことがないように規制されている。開度規制金具35は、例えば、平面視L字状の金具で構成され、フィルタ3の開度が90度を超える場合に枠体2(ヒンジ側縁部23)に干渉することで、フィルタ3の開度が規制される。これにより、フィルタ装置1が複数設置されて場合において、複数のフィルタ装置1のうちいずれかのフィルタ3が開状態にあるとき、フィルタ3が大きく開いて隣の開口部21に重なってしまうのを抑制することができる。このため、フィルタ開放時の開口面積をより大きく確保することができる。
尚、上述した例では、開度規制金具35が扉部32のヒンジ側端部(支持側側縁部)32aに設けられているが、開度規制金具35は、前面開口部22のヒンジ側縁部23に設けられていてもよい。
【0018】
フィルタ3は、例えば、開状態で針金やロープ等の部材WRで固定可能である。これにより、施設や設備を囲む雰囲気の中に火山灰のような粒子状物質の混入が予想されるまでフィルタ3を開状態で固定しておくことで吸気圧力損失を抑制する一方、粒子状物質の混入が予想される場合に針金やロープ等の部材WRを切断することでフィルタ3を開状態から閉状態に切り替える。このようにフィルタ3を開状態で針金やロープ等の部材WRで固定すれば針金やロープ等の部材WRを切断することでフィルタ3を開状態から閉状態に簡単に切り替えることができる。
【0019】
フィルタ3は、フィルタ3が閉状態にある場合に、開口部21の縁部との間に介在するようにフィルタ3の縁部に設けられた封止部材36を有する。よって、フィルタ3が閉状態にある場合に、フィルタ3の縁部に設けられた封止部材36が開口部21の縁部との間に介在するので、粒子状物質が含まれる気体がフィルタ3を通らずに施設内又は設備内に入り込むのを防止できる。
【0020】
図4に示す例では、フィルタ3は、フィルタ3が閉状態にある場合に、開口部21の縁部との間に介在するようにフィルタ部33の後面縁部の全周に亘り設けられた封止部材を有する。
【0021】
封止部材36は、例えば、弾性変形可能なパッキンである。パッキンは、例えば、フィルタ部33の後面縁部の全周に亘り設けられ、フィルタ3を閉状態にしたときに弾性変形することで、フィルタ3と開口部21の縁部との間を封止する。
【0022】
固定部4は、フィルタ3が閉状態にある場合にフィルタ3を枠体2に対して固定可能である。よって、フィルタ3が閉状態にある場合に作業者がフィルタ3を枠体に対して固定することで、フィルタ3を設置できる。
【0023】
固定部4は、フィルタ3を開口部21の縁部に押し付けた状態でフィルタ3を枠体2に対して固定可能である。よって、フィルタ3を設置する作業者がフィルタ3を開口部21の縁部に押し付けた状態でフィルタ3を枠体2に対して固定すれば、フィルタ3が開口部21に密着するので、粒子状物質が含まれる気体がフィルタ3を通らずに施設内又は設備内に入り込むのを防止できる。
【0024】
図3から図5に示す例では、固定部4は、枠体2の前面開口部22の縁部(以下「開放側縁部25」という)に設けられた留め金具42、及び留め金具42の先端部に設けられたネジ43により構成される。
【0025】
留め金具42とネジ43は、フィルタ3の閉状態(非押圧状態)から閉状態のフィルタ3を開口部21の縁部に押し付ける押圧状態に切替可能である。留め金具42は、枠体2の開放側端部に回動可能に取り付けられ、例えば、留め金具42が時計の3時の位置にある場合に留め金具42がフィルタ3の開放を遮ることでフィルタ3を枠体2に対して固定する一方、留め金具42が6時の位置にある場合に留め金具42がフィルタ3の開閉を自在にすることでフィルタ3を枠体2に対して開放する。
【0026】
留め金具42の先端部に設けられたネジ43は、フィルタ3を枠体2(開口部21の縁部)に押し付けるためのもので、留め金具42が時計の3時の位置にある状態(フィルタ3の開放を遮る状態)でネジ43を締め付けることでネジ43の先端がフィルタ3を押圧するので、非押圧状態から押圧状態に切り替わり、開口部21に対して位置決めされたフィルタ3が枠体2に対して固定される。
【0027】
上述した固定部4によれば、フィルタ3を開状態から閉状態に切り換え、留め金具42によってフィルタ3の開放を遮るとともに、ネジ43を締め付けることで、フィルタ3を開口部21の縁部に押し付けた状態でフィルタ3を枠体2に固定できる。よって、フィルタ3を設置する作業者は、フィルタ3の設置に要する時間を短縮でき、近い将来、気体中に火山灰のような粒子状物質の混入が予想される場合にもこれらの粒子状物質が到達するまえにフィルタ3の設置作業を完了させることができる。
【0028】
図2に示す例では、フィルタ装置1は、フィルタ3が開状態にある場合、フィルタ3が閉状態にある際に気体が通過可能な通気面33A,33Bに養生シートCSが設置可能である。よって、作業者がフィルタ3の通気面33A,33Bに養生シートCSを設置することでフィルタ3の通気面33A,33Bが養生されるので、フィルタ3の汚損を防止できる。
【0029】
養生シートCSは、例えば、薄いフィルム状の形態で、フィルムが空気の通過を防止し、フィルタ部33の通気面33Aと、33Bを養生シートCSにて覆い、フィルタ部33の縁部の全周または一部に、貼り付けあるいは取り付けることで通気面33Aおよび33Bを防汚できる。
【0030】
図2に示す例では、フィルタ装置1は、枠体2よりも下流側に配置された吸気フィルタ5を更に備える。吸気フィルタ5は、フィルタ3を通過した後の気体に含まれる粒子状物質を捕集可能である。よって、施設内又は設備内には微粒子状物質を取り除いた気体が供給される。これにより、電源設備が確実に始動し、安定的に発電することができる。例えば、吸気フィルタ5は、フィルタ3よりも更に小さな孔径を有していてもよい。この場合、フィルタ3の孔径よりも大きな粒子状物質はフィルタ3で捕集され、吸気フィルタ5にはフィルタ3の孔径よりも更に小さな粒子状物質(微粒子状物質)を含んだ気体が供給される。これにより、吸気フィルタ5はフィルタ3の孔径よりも大きな粒子状物質による目詰まりを防止できる。
【0031】
上述した実施形態に係るフィルタ装置によれば、フィルタ3を設置する作業者が、フィルタ3を開状態から閉状態に切り替え、フィルタ3を枠体2に対して固定すれば、フィルタ3が設置される。よって、作業者がフィルタ3の設置に要する時間を短縮でき、近い将来、気体中に火山灰のような粒子状物質の混入が予想される場合にもこれらの粒子状物質が到達する前にフィルタ3の設置作業を完了させることができる。
【0032】
図6は、実施形態に係るフィルタ装置1を適用した非常用電源設備の一例(例1)を概略的に示す図である。図6に示す非常用電源設備11は、例えば、沸騰水型原子炉(以下「BWR」という)の原子力施設に設置される設備であって、設備内にディーゼルエンジン等の内燃機関によって発電する発電機111が設置されている。非常用電源設備11には重力方向下方が開口した外気取入口113が設けられ、実施形態に係るフィルタ装置1は、外気取入口113の下流であってバグフィルタ115(吸気フィルタ)の上流にバグフィルタ115と平行に設置される。尚、実施形態に係るフィルタ装置1が枠体2よりも下流側に吸気フィルタ5を備える場合に、バグフィルタ115に替えて実施形態に係るフィルタ装置1を設置してもよい。
【0033】
かかる非常用電源設備11によれば、外気取入口113が重力方向下方に開口しているので、非常用電源設備11を囲む雰囲気の中に火山灰のような粒子状物質が混入している場合であっても設備内への粒子状物質の流入を抑制できる。そして、雰囲気の中に含まれる粒子状物質は実施形態に係るフィルタ装置1のフィルタ3で捕集され、フィルタ3の下流には粒子状物質が含まれる気体の流入を防止できる。そして、バグフィルタ115にはフィルタ3の孔径よりも小さな粒子状物質(微粒子状物質)を含んだ気体が供給されるので、フィルタ3の孔径よりも大きな粒子状物質によるバグフィルタ115の目詰まりを防止できる。そして、バグフィルタ115としてフィルタ装置1に設置されるフィルタ3の孔径よりも小さな孔径のフィルタを選定することで、フィルタ装置1に設置されたフィルタ3を通過した微粒子状物質はバグフィルタ115で捕集され、バグフィルタ115の下流には微粒子状物質が含まれる気体の流入を防止できる。これにより、非常電源設備内に設置されたディーゼルエンジン等の内燃機関によって発電する発電機111は確実に始動し、安定的に発電することができる。
【0034】
図7は、実施形態に係るフィルタ装置1を適用した非常用電源設備の一例(例2)を概略的に示す図である。図7に示す非常用電源設備12は、例えば、BWRの原子力施設に設置される設備であって、設備内にディーゼルエンジン等の内燃機関によって発電する発電機121が設置されている。非常用電源設備12には水平方向が開口した外気取入口123が設けられ、該外気取入口123の入口にはルーバー124が設置され、実施形態に係るフィルタ装置1は、ルーバー124の下流であってバグフィルタ125(吸気フィルタ)の上流にルーバー124及びバグフィルタ125と平行に設置される。尚、実施形態に係るフィルタ装置1が枠体2よりも下流側に吸気フィルタ5を備える場合に、バグフィルタ125に替えて実施形態に係るフィルタ装置1を設置してもよい。
【0035】
かかる非常用電源設備12によれば、外気取入口123の入口にルーバー124が設置されているので、非常用電源設備12を囲む雰囲気の中に火山灰のような粒子状物質が混入している場合であっても設備内への粒子状物質の流入を抑制できる。そして、雰囲気の中に含まれる粒子状物質は実施形態に係るフィルタ装置1のフィルタ3で捕集され、フィルタ3の下流に粒子状物質が含まれる気体の流入を防止できる。そして、バグフィルタ125にはフィルタ3の孔径よりも小さな粒子状物質(微粒子状物質)を含んだ気体が供給されるので、フィルタ3の孔径よりも大きな粒子状物質によるバグフィルタ125の目詰まりを防止できる。そして、バグフィルタ125としてフィルタ装置1に設置されるフィルタ3の孔径よりも小さな孔径のフィルタを選定することで、フィルタ装置1に設置されたフィルタ3を通過した微粒子状物質はバグフィルタ125で捕集され、バグフィルタ125の下流には微粒子状物質が含まれる気体の流入を防止できる。これにより、非常電源設備内に設置されたディーゼルエンジン等の内燃機関によって発電する発電機121は確実に始動し、安定的に発電することができる。
【0036】
図8は、実施形態に係るフィルタ装置1を適用した非常用電源設備の一例(例3)を概略的に示す図である。図8に示す非常用電源設備13は、例えば、加圧水型原子炉(以下「PWR」という)の原子力施設に設置される設備であって、設備内にディーゼルエンジン等の内燃機関によって発電する発電機131が設置されている。内燃機関によって発電する発電機131には重力方向下方が開口した煙突状のダクト132が接続され、実施形態に係るフィルタ装置1は、ダクト132の一端に設けられた外気取入口133の入口であって、金網フィルタ135の上流に金網フィルタ135と平行に設置される。
【0037】
かかる非常用電源設備13によれば、発電機131に接続された煙突状のダクト132の一端に設けられた外気取入口133が重力方向下方に開口しているので、非常用電源設備13を囲む雰囲気の中に火山灰のような粒子状物質の混入している場合であっても設備内への粒子状物質の流入を抑制できる。そして、雰囲気の中に含まれる粒子状物質は実施形態に係るフィルタ装置1のフィルタ3で捕集され、フィルタ3の下流には粒子状物質が含まれる気体の流入を防止できる。そして、金網フィルタ135にはフィルタ3の孔径よりも小さな粒子状物質(微粒子状物質)を含んだ気体が供給されるので、フィルタ3の孔径よりも大きな粒子状物質による金網フィルタ135の目詰まりを防止できる。そして、金網フィルタ135としてフィルタ装置1に設置されるフィルタ3の孔径よりも小さな孔径のフィルタを選定することで、フィルタ装置1に設置されたフィルタ3を通過した微粒子状物質は金網フィルタ135で捕集され、金網フィルタ135の下流には微粒子状物質が含まれる気体の流入を防止できる。これにより、非常電源設備内に設置されたディーゼルエンジン等の内燃機関によって発電する発電機131は確実に始動し、安定的に発電することができる。
【0038】
図9は、実施形態に係るフィルタ装置1を適用した非常用電源設備の一例(例4)を概略的に示す図である。図9に示す非常用電源設備14は、例えば、PWRの原子力施設に設置される設備であって、設備内にディーゼルエンジン等の内燃機関によって発電する発電機141が設置されている。内燃機関によって発電する発電機141には煙突状のダクト142が接続され、ダクト142の一端に設けられた外気取入口143の入口はドーム状の傘144によって覆われ、実施形態に係るフィルタ装置1は、外気取入口143の入口であって吸気フィルタ145の上流に吸気フィルタ145と平行に設置される。
【0039】
かかる非常用電源設備14によれば、煙突状のダクト142の一端に設けられた外気取入口143の入口がドーム状の傘144によって覆われているので、非常用電源設備14を囲む雰囲気の中に火山灰のような粒子状物質が混入している場合であっても設備内への粒子状物質の流入を抑制できる。そして、雰囲気の中に含まれる粒子状物質は実施形態に係るフィルタ装置1のフィルタ3で捕集され、フィルタ3の下流には粒子状物質が含まれる気体の流入を防止できる。そして、吸気フィルタ145にはフィルタ3の孔径よりも小さな粒子状物質(微粒子状物質)を含んだ気体が供給されるので、フィルタ3の孔径よりも大きな粒子状物質による吸気フィルタ145の目詰まりを防止できる。そして、吸気フィルタ145としてフィルタ装置1に設置されるフィルタ3の孔径よりも小さな孔径のフィルタを選定することで、フィルタ装置1に設置されたフィルタ3を通過した微粒子状物質は吸気フィルタ145で捕集され、吸気フィルタ145の下流には微粒子状物質が含まれる気体の流入を防止できる。これにより、非常電源設備内に設置されたディーゼルエンジン等の内燃機関によって発電する発電機141は確実に始動し、安定的に発電することができる。
【0040】
図10は、実施形態に係るフィルタ装置1を適用した非常用電源設備の一例(例5)を概略的に示す図である。図10に示す非常用電源設備15は、例えば、PWRの原子力施設に設置される設備であって、設備内にディーゼルエンジン等の内燃機関によって発電する発電機151が設置されている。非常用電源設備15は、内燃機関によって発電する発電機151が設置される部屋15Aのほかに、前室15B及び中室15Cが設けられている。そして、内燃機関によって発電する発電機151には煙突状のダクト152が接続され、ダクト152の一端は中室中央に延びて前室に向いて設置され、その一端に吸気フィルタ155が設置される。また、前室15Bには外気取入口153が設けられ、ルーバー154が設置され、前室15Bと中室15Cとの境界に実施形態に係るフィルタ装置1が設置される。
【0041】
かかる非常用電源設備15によれば、前室15Bの外気取入口153にルーバー154が設置されているので、非常用電源設備15を囲む雰囲気の中に火山灰のような粒子状物質が混入している場合であっても設備内への粒子状物質の流入を抑制できる。そして、雰囲気の中に含まれる粒子状物質は実施形態に係るフィルタ装置1のフィルタ3で捕集され、フィルタ3の下流に粒子状物質が含まれる気体の流入を防止できる。そして、吸気フィルタ155にはフィルタ3の孔径よりも小さな粒子状物質(微粒子状物質)を含んだ気体が供給されるので、フィルタ3の孔径よりも大きな粒子状物質による吸気フィルタ155の目詰まりを防止できる。これにより、非常用電源設備内に設置されたディーゼルエンジン等の内燃機関によって発電する発電機151は確実に始動し、安定的に発電することができる。
【0042】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0043】
上記実施形態に記載の内容は、例えば、以下のように把握される。
【0044】
[1]の態様に係るフィルタ装置(1)は、
気体が流通可能な開口部(21)が設けられた枠体(2)と、
前記枠体(2)に対して回動可能に支持されることにより、前記開口部(21)を閉じて粒子状物質を捕集可能な閉状態と、前記開口部(21)を開放する開状態とに切替可能なフィルタ(3)と、
前記フィルタ(3)が前記閉状態にある場合に前記フィルタ(3)を前記枠体(2)に対して固定可能な固定部(4)と、
を備える。
【0045】
このような構成によれば、フィルタ(3)を設置する作業者が、フィルタ(3)を開状態から閉状態に切り替え、フィルタ(3)を枠体(2)に対して固定すれば、フィルタ(3)が設置される。よって、作業者がフィルタ(3)の設置に要する時間を短縮でき、近い将来、気体中に火山灰のような粒子状物質の混入が予想される場合にもこれらの粒子状物質が到達する前にフィルタ(3)の設置作業を完了させることができる。
【0046】
[2]別の態様に係るフィルタ装置(1)は、[1]に記載のフィルタ装置(1)であって、
前記固定部(4)は、前記フィルタ(3)が前記閉状態にある場合に前記フィルタ(3)を前記開口部(21)の縁部に押し付けた状態で前記フィルタ(3)を前記枠体(2)に対して固定可能である。
【0047】
このような構成によれば、固定部(4)がフィルタ(3)を開口部(21)の縁部に押し付けた状態でフィルタ(3)を枠体(2)に対して固定することで、フィルタ(3)が開口部(21)に密着するので、粒子状物質が含まれる気体がフィルタ(3)を通らずに施設内又は設備内に入り込むのを抑制できる。
【0048】
[3]また別の態様に係るフィルタ装置(1)は、[1]又は[2]に記載のフィルタ装置(1)であって、
前記フィルタ(3)は、前記フィルタ(3)が前記閉状態にある場合に、前記開口部(21)の縁部との間に介在するように前記フィルタ(3)の縁部に設けられた封止部材(36)を有する。
【0049】
このような構成によれば、フィルタ(3)の縁部に設けられた封止部材(36)がフィルタ(3)の縁部と開口部(21)の縁部との間を封止することで、粒子状物質が含まれる気体がフィルタ(3)を通らずに施設内又は設備内に入り込むのを防止できる。
【0050】
[4]また別の態様に係るフィルタ装置(1)は、[3]に記載のフィルタ装置(1)であって、
前記封止部材は、弾性変形可能なパッキンである。
【0051】
このような構成によれば、パッキンが弾性変形することでフィルタ(3)の縁部と開口部(21)の縁部との間を封止するので、粒子状物質が含まれる気体がフィルタ(3)を通らずに施設内又は設備内に入り込むのを防止できる。
【0052】
[5]また別の態様に係るフィルタ装置(1)は、[1]から[4]のいずれか一つに記載のフィルタ装置(1)であって、
前記フィルタ(3)を通過した後の前記気体に含まれる前記粒子状物質よりも更に微小な微粒子状物質を捕集可能な吸気フィルタ(5)より上流に配置される。
【0053】
このような構成によれば、吸気フィルタ(5)よりも上流側に配置されることで、吸気フィルタ(5)よりも上流において粒子状物質が捕集され、吸気フィルタ(5)の目詰まりを抑制できる。
【0054】
[6]また別の態様に係るフィルタ装置(1)は、[1]から[5]のいずれか一つに記載のフィルタ装置(1)であって、
前記フィルタ(3)が開状態にある場合、前記フィルタ(3)が前記閉状態にある際に前記気体が通過可能な通気面(33A,33B)に養生シート(CS)を備えることが可能である。
【0055】
このような構成によれば、フィルタ(3)の通気面(33A,33B)に養生シート(CS)を備えることでフィルタ(3)の通気面(33A,33B)が養生シートCSによって養生されるので、フィルタ(3)の通気面(33A,33B)の汚損を防止できる。
【0056】
[7]また別の態様に係るフィルタ装置(1)は、[1]から[6]のいずれか一つに記載のフィルタ装置(1)であって、
前記開口部の縁部又は前記フィルタの支持側端部に前記フィルタの開放時の開度を規制する開度規制金具を備える。
【0057】
このような構成によれば、フィルタが開状態にあるときに、フィルタが大きく開くのを防止できる。
【符号の説明】
【0058】
1 フィルタ装置
2 枠体
21 開口部
22 前面開口部
23 ヒンジ側縁部
25 開放側縁部
3 フィルタ
31 ヒンジ
32 扉部
32a ヒンジ側端部
33 フィルタ部
33A 通気面
33B 通気面
35 開度規制金具
36 封止部材
4 固定部
42 留め金具
43 ネジ
5 吸気フィルタ
11 非常用電源設備
111 発電機
113 外気取入口
115 バグフィルタ
12 非常用電源設備
121 発電機
123 外気取入口
124 ルーバー
125 バグフィルタ
13 非常用電源設備
131 発電機
132 ダクト
133 外気取入口
135 金網フィルタ
14 非常用電源設備
141 発電機
142 ダクト
143 外気取入口
144 傘
145 吸気フィルタ
15 非常要電源設備
15A 発電機が設置される部屋
15B 前室
15C 中室
151 発電機
152 ダクト
153 外気取入口
154 ルーバー
155 吸気フィルタ
CS 養生シート
WR 針金やロープ等の部材
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9
図10