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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】開閉体装置及び開閉体装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/68 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
E06B9/68 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020203103
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090674
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114166
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 浩三
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大助
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-196595(JP,A)
【文献】特開平10-067499(JP,A)
【文献】特開2012-235646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00,9/02,9/06-9/18,
9/40-9/50,9/56-9/92
E05F 15/00-15/79
H02P 3/00-3/26
H02P 21/00-20/04,25/10-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の周縁部に設けられた開閉手段と、
前記開閉手段を電動で動作させる開閉機としての、電磁ブレーキ付きの電動機と、
前記電動機を駆動して、前記開閉手段の動作を電動で制御する制御手段と、
前記電動機の各相の位相を検出する検出手段とを備え、
前記制御手段は、正弦波の交流電力を前記電動機へ通電して、前記電動機を駆動する電動機駆動手段と、前記電磁ブレーキを駆動するブレーキ駆動手段と、前記電動機駆動手段及び前記ブレーキ駆動手段の動作を指令する処理手段と、予め測定された前記電動機の各相の各位相における前記電動機の出力トルクのデータが記憶されたメモリとを有し、
前記処理手段は、前記電動機の回転開始時、前記電動機駆動手段に対して、前記電動機への正弦波の交流電力の通電を指令した後、前記検出手段の検出結果に基づき、前記メモリに記憶された、予め測定された前記電動機の各相の各位相における前記電動機の出力トルクのデータに応じて、前記電磁ブレーキを開放する時刻を、前記電動機の各相の周期の内の前記電動機のトルクが所望の値となる時に決定して、前記ブレーキ駆動手段に対して、前記電磁ブレーキの開放を指令し、その後、前記電動機の回転による誘導起電力に応じて、前記電動機駆動手段に対して、前記電動機の駆動の制御を指令することを特徴とする開閉体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉体装置において、前記処理手段は、前記電磁ブレーキを開放する時刻を、前記電動機の各相の周期の倍数の所定時間に、前記電動機の各相の周期の内の、前記電動機のトルクが所望の値となる時の経過時間と、前記検出手段の検出結果に対応する経過時間との差分の時間を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定することを特徴とする開閉体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の開閉体装置において、前記検出手段は、前記電動機の各相の電流をそれぞれ検出する3つのホールセンサを有し、前記電動機の各相の位相を60度毎に検出し、
前記処理手段は、前記検出手段の検出結果に基づき、前記電磁ブレーキを開放する時刻を、前記電動機の各相の周期の倍数の所定時間に、当該周期を6等分に分割したときの6つの異なる経過時間のいずれかを加算して決定することを特徴とする開閉体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の開閉体装置において、前記検出手段は、前記電動機のトルクが所望の値となる時の位相を検出するまで、前記電動機の各相の位相の検出を繰り返し、
前記処理手段は、前記検出手段の検出結果に基づき、前記電磁ブレーキを開放する時刻を、前記電動機の各相の周期の倍数の所定時間に、前記検出手段が前記電動機のトルクが所望の値となる時の位相を検出した時の経過時間を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定することを特徴とする開閉体装置。
【請求項5】
開口部の周縁部に設けられた開閉手段と、
前記開閉手段を電動で動作させる開閉機としての、電磁ブレーキ付きの電動機と、
前記電動機を駆動して、前記開閉手段の動作を電動で制御する制御手段とを備えた開閉体装置の制御方法であって、
前記制御手段に、正弦波の交流電力を前記電動機へ通電して、前記電動機を駆動する電動機駆動手段と、前記電磁ブレーキを駆動するブレーキ駆動手段と、前記電動機駆動手段及び前記ブレーキ駆動手段の動作を指令する処理手段と、予め測定された前記電動機の各相の各位相における前記電動機の出力トルクのデータが記憶されたメモリとを設け、
前記電動機の各相の位相を検出する検出手段を設け、
前記処理手段により、前記電動機の回転開始時、前記電動機駆動手段に対して、前記電動機への正弦波の交流電力の通電を指令した後、前記検出手段の検出結果に基づき、前記メモリに記憶された、予め測定された前記電動機の各相の各位相における前記電動機の出力トルクのデータに応じて、前記電磁ブレーキを開放する時刻を、前記電動機の各相の周期の内の前記電動機のトルクが所望の値となる時に決定して、前記ブレーキ駆動手段に対して、前記電磁ブレーキの開放を指令し、その後、前記電動機の回転による誘導起電力に応じて、前記電動機駆動手段に対して、前記電動機の駆動の制御を指令することを特徴とする開閉体装置の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の開閉体装置の制御方法において、前記処理手段により、前記電磁ブレーキを開放する時刻を、前記電動機の各相の周期の倍数の所定時間に、前記電動機の各相の周期の内の、前記電動機のトルクが所望の値となる時の経過時間と、前記検出手段の検出結果に対応する経過時間との差分の時間を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定することを特徴とする開閉体装置の制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の開閉体装置の制御方法において、前記検出手段に、前記電動機の各相の電流をそれぞれ検出する3つのホールセンサを設け、前記電動機の各相の位相を60度毎に検出し、
前記処理手段により、前記検出手段の検出結果に基づき、前記電磁ブレーキを開放する時刻を、前記電動機の各相の周期の倍数の所定時間に、当該周期を6等分に分割したときの6つの異なる経過時間のいずれかを加算して決定することを特徴とする開閉体装置の制御方法。
【請求項8】
請求項5に記載の開閉体装置の制御方法において、前記検出手段により、前記電動機のトルクが所望の値となる時の位相を検出するまで、前記電動機の各相の位相の検出を繰り返し、
前記処理手段により、前記検出手段の検出結果に基づき、前記電磁ブレーキを開放する時刻を、前記電動機の各相の周期の倍数の所定時間に、前記検出手段が前記電動機のトルクが所望の値となる時の位相を検出した時の経過時間を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定することを特徴とする開閉体装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、ビル、工場、倉庫、車庫などの建物を含む構造物躯体の開口部などをシャッターなどの開閉体を用いて仕切るように構成された開閉体装置及び開閉体装置の制御方法に係り、特に、開閉体を電動で動作させる開閉機の動作音を抑えるのに好適な開閉体装置及び開閉体装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シャッターカーテンなどのような開閉体装置は、住宅、ビル、工場、倉庫、車庫などの建物を含む構造物躯体の出入口や窓部、あるいは内部の通路や空間などの開口部に設置され、その開閉体を移動させることによってその開口部を開放、閉鎖するものである。この開閉体装置は、多数の短冊状のスラット材からなるスラットカーテン、多数のパイプ材をリンク材などで連結させてなるパイプグリルカーテン、一枚状あるいは多数連結されたパネル材からなるパネルカーテン、ネット材からなるネットカーテン、合成樹脂あるいは布繊維製のシート材からなるシートカーテン、あるいはこれらの複合部材などからなる複合カーテンなどの開閉体を、開口部の上部から繰り出し下降させて開口部全体を閉鎖するように構成されている。このような開閉体装置は、開閉体の開閉動作を電動で行なう場合が多い。電動の開閉体装置としては、電動シャッター装置、電動ドア装置、電動オーニング装置などがある。
【0003】
一般に、電動の開閉体装置は、建物などの構造物の開閉用空間部を昇降開閉するための開閉体を、構造物の天井裏またはシャッターケースに配置された開閉機(モータ等の電動機)によって昇降駆動するようになっている。このような電動の開閉体装置の中には、電動機の回転を検出するセンサを設けないで、電動機の回転数や磁極位置などを推定して制御する、センサレス制御方式を採用したものがある。センサレス制御方式には、様々な方法が考案されているが、その多くは、電動機の回転による誘導起電力を利用して、電動機の回転数や磁極位置などを演算で求めるものである。特許文献1には、同期電動機のセンサレス制御装置が開示されている。センサレス制御方式は、装置の小型化や、組み立て及び調整工程の省力化が図れるといった利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-25277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
三相ブラシレスモータのセンサレス制御方式における通電方法としては、正弦波通電方法(以下、「正弦波制御」と言う)と、矩形波通電方法(以下、「矩形波制御」と言う)とがある。
正弦波制御を用いると、電動機の回転中の動作音を抑えることができるという特長がある。しかしながら、センサレス制御方式では電動機の回転による誘導起電力を利用するため、電動機の回転数が低い回転開始時に起動特性が悪い。特に、シャッターなどの開閉体装置では、開閉体の自重が大きく、開閉体の上昇時にブレーキを開放する際、開閉体の自重により電動機を逆回転させようとする力が働くため、起動時の制御がより難しくなる。
これに対し、矩形波制御を用いると、電動機の回転開始時の起動特性は安定するが、電動機の回転中の動作音が大きくなる。
なお、シャッターの動作が低速のときは矩形波制御を用い、シャッターの動作が所定の速度を超えたら正弦波制御を用いる方法や、シャッターの位置が下限から所定の高さ以下のときは矩形波制御を用い、シャッターの位置が下限から所定の高さを超えたら正弦波制御を用いる方法もある。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、開閉体の動作中の電動機の動作音を抑え、かつ、開閉体の動作開始時に電動機の起動特性が良い開閉体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の開閉体装置の第1の特徴は、開口部の周縁部に設けられた開閉手段と、開閉手段を電動で動作させる開閉機としての、電磁ブレーキ付きの電動機と、電動機を駆動して、開閉手段の動作を電動で制御する制御手段と、電動機の各相の位相を検出する検出手段とを備え、制御手段が、正弦波の交流電力を電動機へ通電して、電動機を駆動する電動機駆動手段と、電磁ブレーキを駆動するブレーキ駆動手段と、電動機駆動手段及びブレーキ駆動手段の動作を指令する処理手段とを有し、処理手段が、電動機の回転開始時、電動機駆動手段に対して、電動機への正弦波の交流電力の通電を指令した後、検出手段の検出結果に基づき、電磁ブレーキを開放する時刻を、電動機の各相の周期の内の電動機のトルクが所望の値となる時に決定して、ブレーキ駆動手段に対して、電磁ブレーキの開放を指令し、その後、電動機の回転による誘導起電力に応じて、電動機駆動手段に対して、電動機の駆動の制御を指令することにある。
【0008】
電動機駆動手段が、正弦波の交流電力を電動機へ通電して、電動機を駆動し、処理手段が、電動機の回転による誘導起電力に応じて、電動機駆動手段に対して、電動機の駆動の制御を指令するので、センサレス制御方式を用いた電動機の正弦波制御により、開閉体の動作中の電動機の動作音が抑えられる。
そして、電動機の回転開始時、処理手段が、電動機駆動手段に対して、電動機への正弦波の交流電力の通電を指令した後、検出手段が検出した電動機の各相の位相(角度)に基づき、電磁ブレーキを開放する時刻を、電動機の各相の周期の内の電動機のトルクが所望の値となる時に決定して、ブレーキ駆動手段に対して、電磁ブレーキの開放を指令するので、電動機のトルクが所望の値となる時に、電磁ブレーキが開放されて電動機が回転を開始し、電動機の起動特性が良くなる。
【0009】
開閉手段は、住宅、ビル、工場、倉庫、車庫などの建物などの構造物における、出入口や窓部、あるいは内部の通路や空間などの開口部を電動で開閉移動するシャッターカーテンなどの開閉部材で構成される。開閉手段が、シャッターカーテンの場合には、建物などの開口部の周縁部の一つである上部に収納され、まぐさなどを通過してシャッターカーテンが下降し、開口部を電動で開閉動作する。これ以外にも、開閉手段が開口部の下部に収納されて、上昇方式にて電動で開閉移動したり、開閉手段が側部に収納されて、スライド方式にて電動で移動したりすることもある。また、開閉手段には、閉鎖によって開口部を全閉できるものも全閉できないものも含む。
【0010】
本発明の開閉体装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体装置において、処理手段が、電磁ブレーキを開放する時刻を、電動機の各相の周期の倍数の所定時間(周期の0倍の時間「0」を含む、以下同様)に、電動機の各相の周期の内の、電動機のトルクが所望の値となる時の経過時間と、検出手段の検出結果に対応する経過時間との差分の時間を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定することにある。
これにより、電磁ブレーキを開放する時刻を、電動機のトルクが所望の値となる時に決定することができる。
【0011】
本発明の開閉体装置の第3の特徴は、前記第2の特徴に記載の開閉体装置において、検出手段が、電動機の各相の電流をそれぞれ検出する3つのホールセンサを有し、電動機の各相の位相を60度毎に検出し、処理手段が、検出手段の検出結果に基づき、電磁ブレーキを開放する時刻を、電動機の各相の周期の倍数の所定時間に、当該周期を6等分に分割したときの6つの異なる経過時間のいずれかを加算して決定することにある。
検出手段が、電動機の各相の電流をそれぞれ検出する3つのホールセンサを有し、電動機の各相の位相を60度毎に検出するので、処理手段は、検出手段の検出結果に基づき、電動機の各相の周期の倍数の所定時間に加算する時間として、電動機の各相の周期を6等分に分割したときの6つの異なる経過時間のいずれかを選択することにより、電磁ブレーキを開放する時刻を、容易に決定することができる。
【0012】
本発明の開閉体装置の第4の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体装置において、検出手段が、電動機のトルクが所望の値となる時の位相を検出するまで、電動機の各相の位相の検出を繰り返し、処理手段が、検出手段の検出結果に基づき、電磁ブレーキを開放する時刻を、電動機の各相の周期の倍数の所定時間に、検出手段が電動機のトルクが所望の値となる時の位相を検出した時の経過時間を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定することにある。
検出手段が、電動機のトルクが所望の値となる時の位相を検出するまで、電動機の各相の位相の検出を繰り返すので、処理手段は、電磁ブレーキを開放する時刻を、電動機の各相の周期の倍数の所定時間に、検出手段が電動機のトルクが所望の値となる時の位相を検出した時の経過時間を加算するだけの、簡単な演算で容易に決定することができる。
【0013】
本発明の開閉体装置の制御方法の第1の特徴は、開口部の周縁部に設けられた開閉手段と、開閉手段を電動で動作させる開閉機としての、電磁ブレーキ付きの電動機と、電動機を駆動して、開閉手段の動作を電動で制御する制御手段とを備えた開閉体装置の制御方法であって、制御手段に、正弦波の交流電力を電動機へ通電して、電動機を駆動する電動機駆動手段と、電磁ブレーキを駆動するブレーキ駆動手段と、電動機駆動手段及びブレーキ駆動手段の動作を指令する処理手段とを設け、電動機の各相の位相を検出する検出手段を設け、処理手段により、電動機の回転開始時、電動機駆動手段に対して、電動機への正弦波の交流電力の通電を指令した後、検出手段の検出結果に基づき、電磁ブレーキを開放する時刻を、電動機の各相の周期の内の電動機のトルクが所望の値となる時に決定して、ブレーキ駆動手段に対して、電磁ブレーキの開放を指令し、その後、電動機の回転による誘導起電力に応じて、電動機駆動手段に対して、電動機の駆動の制御を指令することにある。
これは、前記第1の特徴に記載の開閉体装置に相当する、開閉体装置の制御方法である。
【0014】
本発明の開閉体装置の制御方法の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体装置の制御方法において、処理手段により、電磁ブレーキを開放する時刻を、電動機の各相の周期の倍数の所定時間に、電動機の各相の周期の内の、電動機のトルクが所望の値となる時の経過時間と、検出手段の検出結果に対応する経過時間との差分の時間を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定することにある。
これは、前記第2の特徴に記載の開閉体装置に相当する、開閉体装置の制御方法である。
【0015】
本発明の開閉体装置の制御方法の第3の特徴は、前記第2の特徴に記載の開閉体装置の制御方法において、検出手段に、電動機の各相の電流をそれぞれ検出する3つのホールセンサを設け、電動機の各相の位相を60度毎に検出し、処理手段により、検出手段の検出結果に基づき、電磁ブレーキを開放する時刻を、電動機の各相の周期の倍数の所定時間に、当該周期を6等分に分割したときの6つの異なる経過時間のいずれかを加算して決定することにある。
これは、前記第3の特徴に記載の開閉体装置に相当する、開閉体装置の制御方法である。
【0016】
本発明の開閉体装置の制御方法の第4の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体装置の制御方法において、検出手段により、電動機のトルクが所望の値となる時の位相を検出するまで、電動機の各相の位相の検出を繰り返し、処理手段により、検出手段の検出結果に基づき、電磁ブレーキを開放する時刻を、電動機の各相の周期の倍数の所定時間に、検出手段が電動機のトルクが所望の値となる時の位相を検出した時の経過時間を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定することにある。
これは、前記第4の特徴に記載の開閉体装置に相当する、開閉体装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、開閉体の動作中の電動機の動作音を抑え、かつ、開閉体の動作開始時に電動機の起動特性が良い開閉体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態による開閉体装置であるシャッター装置の概略構成を示す図である。
図2図1に示したシャッター装置内の各装置の動作を説明する図である。
図3】本発明の一実施の形態によるシャッター装置の制御装置の回路構成を示す図である。
図4】本発明の一実施の形態による、シャッターの上昇開始時の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図5】電磁ブレーキの開放時刻の決定動作の一例を説明する図である。
図6】本発明の他の実施の形態による、シャッターの上昇開始時の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に従って、本発明に係る開閉体装置の好ましい実施の形態について説明する。この実施の形態では、開閉手段として、上下に開閉動作されるシャッターカーテンを備えたシャッター装置を例に説明する。図1は、本発明の一実施の形態による開閉体装置であるシャッター装置の概略構成を示す図である。図1において、開閉体装置10は、出入口の開口部を上下に開閉するシャッター装置である。
【0020】
開閉体装置10は、建物の開口部に設けられるものであり、基本的にシャッターケース11、シャッターカーテン12、ガイドレール13,14、巻取シャフト15、チェーン16、電動機17、位相センサ171、制御装置18、障害物感知装置185、操作スイッチ19、及び電源供給装置20などを含んで構成される。
【0021】
この開閉体装置10は、通常時には、操作スイッチ19の操作に応じて、開閉機である電動機17を駆動して開閉制御するようになっている。さらに、この開閉体装置10では、シャッターカーテン12が巻取シャフト15に巻き取られている開放状態を機械的な保持機構(図示せず)によって保持しており、この開放状態で外部から火災の発生などを示す非常信号BSなどが制御装置18に入力された場合には、その保持機構による開放状態の保持が解除されて、シャッターカーテン12は、その自重で自然降下して開口部を自動閉鎖する機能も備えている。
【0022】
ガイドレール13,14は、シャッターカーテン12の両端部に接するように建物の開口部の両端側に設けられ、まぐさ部から床面まで掛け渡された断面形状がコの字型の案内溝を有する金属製部材又はこれと同等の部材で構成されている。シャッターカーテン12は、このガイドレール13,14の各案内溝に沿って上昇下降し、開口部の開閉動作を行う。
【0023】
巻取シャフト15は、シャッターケース11の両端側に回動可能に設けられ、シャッターカーテン12を巻き取ったり巻き戻したりする。チェーン16は、電動機17の回転軸に設けられた主動スプロケットと巻取シャフト15の回転軸に設けられた従動スプロケットとを連結している。従って、電動機17の回転駆動力は、チェーン16を介して巻取シャフト15側に伝達され、電動機17が回転すると、チェーン16を介して巻取シャフト15が回転し、シャッターカーテン12の開閉動作が制御されるようになっている。
【0024】
制御装置18は、マイクロコンピューター構成になっており、商用電源の電源ラインACから電源供給装置20を介して電力が供給されている。制御装置18は、操作スイッチ19上の各操作ボタンの操作状態に対応した制御信号や、障害物感知装置185からの感知信号などに基づいて、電動機17の回転を制御したり、非常信号BSに基づいて保持機構を解除したりする。
【0025】
操作スイッチ19は、開閉停の各動作に対応した制御スイッチとして、上昇(開)ボタン19A、停止(停)ボタン19B、下降(閉)ボタン19Cをそれぞれ有し、これら各ボタンの操作状態に応じた制御信号を制御装置18に出力する。なお、図1では示していないが、制御装置18は、無線型リモコン装置によっても操作可能としてもよい。
【0026】
非常信号BSは、火災発生などの非常時に外部の制御室などから供給される電圧24[V]の信号であり、制御装置18内の図示しない危害防止用連動中継器に入力される。なお、外部からの非常信号BSの入力と併せて、又は代わりに、シャッターケース11の内側であって、まぐさ部の開口部近傍、すなわちシャッターカーテン12が昇降する部分に温度感知器などを設けてもよい。この温度感知器としては、常時接点がオン状態にあり、接点が所定温度(摂氏100~300度の範囲の任意温度)に達した時点で接点を開きオフ状態となるB接点の自動復帰型の高温度用バイメタル式サーモスタットなどで構成され、接点が開いた場合には火災などが発生したことを示す信号を非常信号BSに相当する信号として出力するようにしてもよい。
【0027】
障害物感知装置185は、送信機がシャッターカーテン12の下端部(座板)に設けられたもので、障害物感知時には、内蔵された座板スイッチの移動に対応した感知信号を制御装置18に送信し、また、その後の障害物の除去により座板スイッチの復帰移動時には、復帰信号を送信する構成となっている。障害物感知装置185の送信機から制御装置18への信号の送信は、図のような有線方式に限らず、電池を電源として作動する無線方式のものでもよい。また、シャッターカーテン12の下端部に障害物の接触で移動する座板スイッチを設け、障害物接触時の座板の移動力でガイドレール13,14の高さ方向に沿って設けられたテープスイッチを押圧する構成や、テープスイッチから制御装置18に対し感知信号を有線出力する構成としてもよい。この他、開口部に光電管やLED等の投受光センサを設け、画像認識等により障害物を非接触で感知する構成としてもよい。
【0028】
図2は、図1に示したシャッター装置内の各装置の動作を説明する図である。制御装置18は、電源供給装置20から供給された電力により、操作スイッチ19、障害物感知装置185、及び位相センサ171からの各信号、並びに非常信号BSに基づいて、電動機17を制御する。
なお、図2では、制御装置18以外への商用電源の接続関係については、その図示を省略してある。
【0029】
電動機17は、電磁ブレーキ付きの電動機であって、モータ17aに、電磁ブレーキ17bが取り付けられている。電磁ブレーキ17bは、シャッターカーテン12の動作停止時に、モータ17aの回転を停止させ、また、モータ17aの回転停止中にモータ17aを保持して、シャッターカーテン12の自重により、モータ17aが回転するのを防止する。
【0030】
電動機17には、電動機17のモータ17aの各相の位相(角度)を検出するための位相センサ171が取り付けられている。本実施の形態の位相センサ171は、モータ17aの各相の電流をそれぞれ検出する3つのホールセンサを有する。各ホールセンサは、ホール効果を利用して、モータ17aの各相の電流を検出する。そして、位相センサ171は、各ホールセンサの検出結果から、モータ17aの各相の位相を60度毎に検出する。
【0031】
図3は、本発明の一実施の形態によるシャッター装置の制御装置の回路構成を示す図である。本実施の形態の制御装置18は、モータ駆動回路18a、ブレーキ駆動回路18b、CPU18c、及びメモリ18dなどを含んで構成されている。
モータ駆動回路18aは、IPM(Intelligent Power Module:高機能電力用半導体素子)ドライバ等からなり、CPU18cの制御により、電源供給装置20から制御装置18へ供給された正弦波の交流電力を、電動機17のモータ17aへ通電して、モータ17aを駆動する。
ブレーキ駆動回路18bは、CPU18cの制御により、電動機17の電磁ブレーキ17bを駆動する。
CPU18cは、モータ駆動回路18aに対して、モータ17aへの正弦波の交流電力の通電を指令し、その後、位相センサ171の検出結果に基づき、モータ17aの回転による誘導起電力に応じて、モータ17aの駆動の制御を指令する。また、CPU18cは、ブレーキ駆動回路18bに対して、電磁ブレーキ17bの作動及び開放を指令する。
メモリ18dには、予め測定された、モータ17aの各相の60度毎の各位相における、モータ17aの出力トルクのデータが記憶されている。
【0032】
図4は、本発明の一実施の形態による、シャッターの上昇開始時の制御装置の動作を示すフローチャートである。制御装置18のCPU18cは、まず、操作スイッチ19からの、シャッターカーテン12の上昇を指示する開信号が有ったか否かを判断する(ステップ401)。開信号が無かった場合、フローの最初に戻る。開信号が有った場合、CPU18cは、モータ駆動回路18aに対して、モータ17aへの正弦波の交流電力の通電を指令する(ステップ402)。
【0033】
CPU18cからの指令に応じ、モータ駆動回路18aが正弦波の交流電力をモータ17aへ通電すると、位相センサ171は、モータ17aの各相の位相を検出して、検出信号を出力する。CPU18cは、位相センサ171からの検出信号を入力し(ステップ403)、位相センサ171が検出したモータ17aの各相の位相に基づき、メモリ18dに記憶されたモータ17aの出力トルクのデータに応じて、電磁ブレーキ17bの開放時刻を、モータ17aの各相の周期の内のモータ17aの出力トルクが所望の値となる時に決定する(ステップ404)。そして、CPU18cは、決定した電磁ブレーキ17bの開放時刻に、ブレーキ駆動回路18bに対して、電磁ブレーキ17bの開放を指令する(ステップ405)。これにより、シャッターカーテン12は、上昇を開始する。
【0034】
図5は、電磁ブレーキの開放時刻の決定動作の一例を説明する図である。本例は、モータ17aへ出力される三相交流電力の周波数が50Hz(ヘルツ)であって、周期が20msec(ミリ秒)である例を示している。
図5(a)の縦軸は、モータ17aのu相の電流値を示し、図5(a)の横軸は、モータ17aのu相の位相(角度)を示している。図5(a)には、u相の電流の正弦波の波形に、60度毎の各位相時の位相センサ171の検出信号が併記されている。
【0035】
本例では、図5(a)において、モータ17aのu相の位相が60度の時、位相センサ171の検出信号が“010”となる。モータ17aのu相の位相が120度の時、位相センサ171の検出信号が“011”となる。モータ17aのu相の位相が180度の時、位相センサ171の検出信号が“100”となる。モータ17aのu相の位相が240度の時、位相センサ171の検出信号が“101”となる。モータ17aのu相の位相が300度の時、位相センサ171の検出信号が“110”となる。そして、モータ17aのu相の位相が360度の時、位相センサ171の検出信号が“001”となる。
【0036】
一方、図5(b)の縦軸は、モータ17aのu相の電流値を示し、図5(b)の横軸は、各相の周期が20msecである本例における、モータ17aのu相の一周期内の経過時刻(msec)を示している。図5(b)には、u相の電流の正弦波の波形に、図5(a)で示した60度毎の位相センサ171の検出信号が追記されている。なお、図5(b)の横軸に記載の数値は、小数点3桁以下が四捨五入されている。
【0037】
三相交流電力の各相の周期が20msecである本例の場合、図5(a)に示す位相センサ171の検出信号に基づき、電磁ブレーキ17bの開放時刻を、位相センサ171からの検出信号を入力した後(図4のステップ403)、モータ17a各相の周期20msecの倍数の所定時間に、モータ17aの各相の周期20msecの内の、モータ17aの出力トルクが所望の値となる時の経過時間と、図5(b)に示す位相センサ171の検出信号に対応する経過時間との差分の時間を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定すると、モータ17aの出力トルクが所望の値となる時に、電磁ブレーキ17bを開放することができる。
【0038】
例えば、以下、モータ17aのu相の位相が360度の時に、モータ17aの出力トルクが所望の値(例えば、最大値、又は所定値以上)となる場合について説明する。この場合、図5(a)において、位相センサ171の検出信号が“010”(u相の位相が60度)であったとき、図5(b)において、モータ17aの出力トルクが所望の値となる、u相の位相が360度の時の経過時間「20.00msec」と、位相センサ171の検出信号“010”に対応する経過時間「3.33msec」との差分の時間は、「16.67msec」である。従って、電磁ブレーキ17bの開放時刻を、各相の周期20msecの倍数の所定時間に、この差分の時間「16.67msec」を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定すると、モータ17aの出力トルクが所望の値となる時(u相の位相が360度の時)に、電磁ブレーキ17bを開放することができる。
【0039】
あるいは、上述の場合、図5(a)において、位相センサ171の検出信号が“011”(u相の位相が120度)であったとき、図5(b)において、モータ17aの出力トルクが所望の値となる、u相の位相が360度の時の経過時間「20.00msec」と、位相センサ171の検出信号“011”に対応する経過時間「6.67msec」との差分の時間は、「13.33msec」である。従って、電磁ブレーキ17bの開放時刻を、各相の周期20msecの倍数の所定時間に、この差分の時間「13.33msec」を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定すると、モータ17aの出力トルクが所望の値となる時(u相の位相が360度の時)に、電磁ブレーキ17bを開放することができる。
【0040】
あるいは、上述の場合、図5(a)において、位相センサ171の検出信号が“100”(u相の位相が180度)であったとき、図5(b)において、モータ17aの出力トルクが所望の値となる、u相の位相が360度の時の経過時間「20.00msec」と、位相センサ171の検出信号“100”に対応する経過時間「10.00msec」との差分の時間は、「10.00msec」である。従って、電磁ブレーキ17bの開放時刻を、各相の周期20msecの倍数の所定時間に、この差分の時間「10.00msec」を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定すると、モータ17aの出力トルクが所望の値となる時(u相の位相が360度の時)に、電磁ブレーキ17bを開放することができる。
【0041】
あるいは、上述の場合、図5(a)において、位相センサ171の検出信号が“101”(u相の位相が240度)であったとき、図5(b)において、モータ17aの出力トルクが所望の値となる、u相の位相が360度の時の経過時間「20.00msec」と、位相センサ171の検出信号“101”に対応する経過時間「13.33msec」との差分の時間は、「6.67msec」である。従って、電磁ブレーキ17bの開放時刻を、各相の周期20msecの倍数の所定時間に、この差分の時間「6.67msec」を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定すると、モータ17aの出力トルクが所望の値となる時(u相の位相が360度の時)に、電磁ブレーキ17bを開放することができる。
【0042】
あるいは、上述の場合、図5(a)において、位相センサ171の検出信号が“110”(u相の位相が300度)であったとき、図5(b)において、モータ17aの出力トルクが所望の値となる、u相の位相が360度の時の経過時間「20.00msec」と、位相センサ171の検出信号“110”に対応する経過時間「16.67msec」との差分の時間は、「3.33msec」である。従って、電磁ブレーキ17bの開放時刻を、各相の周期20msecの倍数の所定時間に、この差分の時間「3.33msec」を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定すると、モータ17aの出力トルクが所望の値となる時(u相の位相が360度の時)に、電磁ブレーキ17bを開放することができる。
【0043】
あるいは、上述の場合、図5(a)において、位相センサ171の検出信号が“001”(u相の位相が360度)であったとき、図5(b)において、モータ17aの出力トルクが所望の値となる、u相の位相が360度の時の経過時間「20.00msec」と、位相センサ171の検出信号“001”に対応する経過時間「20.00msec」との差分の時間は、「0.00msec」である。従って、電磁ブレーキ17bの開放時刻を、各相の周期20msecの倍数の所定時間に、この差分の時間「0.00msec」を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定すると、モータ17aの出力トルクが所望の値となる時(u相の位相が360度の時)に、電磁ブレーキ17bを開放することができる。
【0044】
本例では、電磁ブレーキ17bの開放時刻を決定する際、モータ17aの各相の周期20msecの倍数の所定時間に加算する差分の時間は、以下の通りである。
(1)位相センサ171の検出信号に対応する経過時間が「3.33msec」の時は、「16.67msec」。
(2)位相センサ171の検出信号に対応する経過時間が「6.67msec」の時は、「13.33msec」。
(3)位相センサ171の検出信号に対応する経過時間が「10.00msec」の時は、「10.00msec」。
(4)位相センサ171の検出信号に対応する経過時間が「13.33msec」の時は、「6.67msec」。
(5)位相センサ171の検出信号に対応する経過時間が「16.67msec」の時は、「3.33msec」。
(6)位相センサ171の検出信号に対応する経過時間が「20.00msec」の時は、「0.00msec」。
即ち、モータ17aの各相の周期20msecの倍数の所定時間に加算する差分の時間は、モータ17aの各相の周期を6等分に分割したときの6つの異なる経過時間のいずれかとなっている。
【0045】
以上、モータ17aのu相の位相が360度の時に、モータ17aの出力トルクが所望の値(例えば、最大値、又は所定値以上)となる場合について説明したが、モータ17aのu相の位相が60度、120度、180度、240度、300度の時に、それぞれ、モータ17aの出力トルクが所望の値となる場合にも、同様の手順によって、電磁ブレーキ17bの開放時刻を、モータ17aの各相の周期の内のモータ17aの出力トルクが所望の値となる時に決定することができる。また、モータ17aのu相に限らず、モータ17aのv相、w相についても、同様である。
【0046】
なお、図5は、モータ17aへ出力される三相交流電力の周波数が50Hzであって、周期が20msecである例を示しているが、モータ17aへ出力される三相交流電力の周波数が60Hzであって、周期が16.666…msecである場合も、同様の手順によって、電磁ブレーキ17bの開放時刻を、モータ17aの各相の周期の内のモータ17aの出力トルクが所望の値となる時に決定することができる。
【0047】
以上説明した実施の形態によれば、モータ駆動回路18aが、正弦波の交流電力をモータ17aへ通電して、モータ17aを駆動し、CPU18cが、モータ17aの回転による誘導起電力に応じて、モータ駆動回路18aに対して、モータ17aの駆動の制御を指令するので、センサレス制御方式を用いたモータ17aの正弦波制御により、シャッターカーテン12の動作中のモータ17aの動作音が抑えられる。
そして、図4において、モータ17aの回転開始時、CPU18cが、モータ駆動回路18aに対して、正弦波の交流電力のモータ17aへの通電を指令した後(ステップ402)、位相センサ171が検出したモータ17aの各相の位相に基づき(ステップ403)、電磁ブレーキ17bを開放する時刻を、モータ17aの各相の周期の内のモータ17aの出力トルクが所望の値となる時に決定して(ステップ404)、ブレーキ駆動回路18bに対して、電磁ブレーキ17bの開放を指令する(ステップ405)ので、モータ17aの出力トルクが所望の値となる時に、電磁ブレーキ17bが開放されてモータ17aが回転を開始し、モータ17aの起動特性が良くなる。
【0048】
また、CPU18cが、電磁ブレーキ17bを開放する時刻を、モータ17aの各相の周期の倍数の所定時間に、モータ17aの各相の周期の内の、モータ17aの出力トルクが所望の値となる時の経過時間と、位相センサ171が検出した、モータ17aの各相の位相の検出結果に対応する経過時間との差分の時間を加算した、合計の時間が経過する時刻とするので、電磁ブレーキ17bを開放する時刻を、モータ17aの出力トルクが所望の値となる時に決定することができる。
【0049】
さらに、位相センサ171が、電動機17のモータ17aの各相の電流をそれぞれ検出する3つのホールセンサを有し、モータ17aの各相の位相を60度毎に検出するので、CPU18cは、位相センサ171の検出結果に基づき、モータ17aの各相の周期の倍数の所定時間に加算する時間として、モータ17aの各相の周期を6等分に分割したときの6つの異なる経過時間のいずれかを選択することにより、電磁ブレーキ17bを開放する時刻を、容易に決定することができる。
【0050】
次に、図6は、本発明の他の実施の形態による、シャッターの上昇開始時の制御装置の動作を示すフローチャートである。ステップ601~603は、図4のステップ401~403と同様である。
ステップ603において、位相センサ171からの検出信号を入力した後、CPU18cは、メモリ18dに記憶されたモータ17aの出力トルクのデータに応じて、位相センサ171の検出信号が示すモータ17aの各相の位相が、モータ17aのu相の一周期内の、モータ17aの出力トルクが所望の値(例えば、最大値、又は所定値以上)となるときの位相であるか否かを判断する(ステップ604)。モータ17aの出力トルクが所望の値となるときの位相でない場合、ステップ603へ戻る。
【0051】
位相センサ171の検出信号が示すモータ17aの各相の位相が、モータ17aの出力トルクが所望の値となるときの位相である場合、CPU18cは、電磁ブレーキ17bを開放する時刻を、モータ17aの各相の周期の倍数の所定時間に、位相センサ171がモータ17aの出力トルクが所望の値となる時の位相を検出した時の経過時間を加算した、合計の時間が経過する時刻と決定する(ステップ605)。そして、CPU18cは、決定した電磁ブレーキ17bの開放時刻に、ブレーキ駆動回路18bに対して、電磁ブレーキ17bの開放を指令する(ステップ606)。
【0052】
図6に示した実施の形態によれば、位相センサ171が、モータ17aの出力トルクが所望の値となる時の位相を検出するまで、モータ17aの各相の位相の検出を繰り返す(ステップ603~604)ので、CPU18cは、電磁ブレーキ17bを開放する時刻を、モータ17aの各相の周期の倍数の所定時間に、位相センサ171がモータ17aの出力トルクが所望の値となる時の位相を検出した時の経過時間を加算するだけの、簡単な演算で容易に決定する(ステップ605)ことができる。
【0053】
なお、電磁ブレーキ17bの開放時刻は、以上説明した例に限らず、位相センサ171が検出したモータ17aの各相の位相に基づき、電磁ブレーキ17bの開放時の作動時間なども考慮して、適切に決定することができる。
【0054】
本発明の開閉体装置としては、例えば、シャッター装置、窓シャッター装置、ブラインド装置、ロールスクリーン装置、垂れ幕装置、移動間仕切装置、引き戸装置、開き戸装置、折れ戸装置、門扉装置、オーニング装置、防水板装置などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10…開閉体装置
11…シャッターケース
12…シャッターカーテン
13,14…ガイドレール
15…巻取シャフト
16…チェーン
17…電動機
17a…モータ
17b…電磁ブレーキ
171…位相センサ
18…制御装置
18a…モータ駆動回路
18b…ブレーキ駆動回路
18c…CPU
18d…メモリ
185…障害物感知装置
19…操作スイッチ
19A…上昇(開)ボタン
19B…停止(停)ボタン
19C…下降(閉)ボタン
20…電源供給装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6