(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B62D 63/02 20060101AFI20240816BHJP
B60S 9/04 20060101ALI20240816BHJP
B62B 17/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B62D63/02
B60S9/04
B62B17/02
(21)【出願番号】P 2020206230
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
(72)【発明者】
【氏名】森崎 紗耶
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-1444(JP,A)
【文献】特開2005-28971(JP,A)
【文献】特開2018-111448(JP,A)
【文献】特開2020-117177(JP,A)
【文献】特開昭60-35677(JP,A)
【文献】特開昭62-12449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 63/02,61/00,
B60S 9/04,
B62B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体の前部を支持する前脚装置と、
前記車両本体の後部を支持する後脚装置と、を備え、
前記前脚装置の上部は、機体左右方向に沿う第1軸芯周りに前記車両本体に対して揺動可能な状態で、前記車両本体に接続しており、
前記後脚装置の上部は、機体左右方向に沿う第2軸芯周りに前記車両本体に対して揺動可能な状態で、前記車両本体に接続しており、
前記前脚装置の下部に、駆動可能な前車輪が設けられており、
前記後脚装置の下部に、駆動可能な後車輪が設けられており、
前記前車輪の回転と、前記後車輪の回転と、をそれぞれ独立して制御可能な制御部を備え、
前記制御部は、前記前車輪の回転数と、前記後車輪の回転数と、が互いに異なるように、前記前車輪の回転及び前記後車輪の回転を制御可能であり、
前記前脚装置と前記後脚装置とは、前記前車輪と前記後車輪との回転による推進力によって揺動され
、
前記前脚装置と前記車両本体とに亘る機構であって、前記前脚装置を前記車両本体に対して前記第1軸芯周りに揺動させるためのアクチュエータを有する機構を備えておらず、
前記後脚装置と前記車両本体とに亘る機構であって、前記後脚装置を前記車両本体に対して前記第2軸芯周りに揺動させるためのアクチュエータを有する機構を備えていない作業車。
【請求項2】
前記制御部は、走行中に、前記前車輪の回転数よりも前記後車輪の回転数の方が高くなるように、前記前車輪の回転及び前記後車輪の回転を制御可能であり、
前記制御部は、走行中に、前記前車輪の回転数よりも前記後車輪の回転数の方が低くなるように、前記前車輪の回転及び前記後車輪の回転を制御可能である請求項
1に記載の作業車。
【請求項3】
前記制御部は、停車中に、前記前車輪と前記後車輪とが近付くように、前記前車輪の回転及び前記後車輪の回転を制御可能であり、
前記制御部は、停車中に、前記前車輪と前記後車輪とが遠ざかるように、前記前車輪の回転及び前記後車輪の回転を制御可能である請求項1
または2に記載の作業車。
【請求項4】
前記前車輪及び前記後車輪とは異なる接地可能な接地部を前記車両本体に備えた請求項1から
3の何れか一項に記載の作業車。
【請求項5】
前記接地部は、前記車両本体から下側へ突出する一つまたは複数の脚状部材により構成されている請求項
4に記載の作業車。
【請求項6】
前記接地部は、地面に対向する平坦な面である接地面を有する請求項
4または
5に記載の作業車。
【請求項7】
前記接地部は、前記車両本体から下側へ突出した突出状態と、接地しないように退避した退避状態と、の間で状態変更可能である請求項
4から
6の何れか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動可能な前車輪及び駆動可能な後車輪を備える作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車として、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この作業車(特許文献1では「不整地移動装置」)は、前車輪(特許文献1では「車輪」)及び後車輪(特許文献1では「車輪」)に支持された車両本体(特許文献1では「本体部」)を備えている。そして、この作業車は、前車輪及び後車輪を駆動することにより、走行可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような作業車においては、車両本体の地上高さが比較的低く設計されている場合、車体の重心が比較的低くなるため、安定的に走行しやすい。しかしながら、凹凸の多い地面を走行する際に、車両本体の地上高さが比較的低いと、車両本体の底部が地面に干渉しがちである。
【0005】
本発明の目的は、製造コストの増大を抑制しつつ、車両本体の地上高さを状況に応じて変更可能な作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、車両本体と、前記車両本体の前部を支持する前脚装置と、前記車両本体の後部を支持する後脚装置と、を備え、前記前脚装置の上部は、機体左右方向に沿う第1軸芯周りに前記車両本体に対して揺動可能な状態で、前記車両本体に接続しており、前記後脚装置の上部は、機体左右方向に沿う第2軸芯周りに前記車両本体に対して揺動可能な状態で、前記車両本体に接続しており、前記前脚装置の下部に、駆動可能な前車輪が設けられており、前記後脚装置の下部に、駆動可能な後車輪が設けられており、前記前車輪の回転と、前記後車輪の回転と、をそれぞれ独立して制御可能な制御部を備え、前記制御部は、前記前車輪の回転数と、前記後車輪の回転数と、が互いに異なるように、前記前車輪の回転及び前記後車輪の回転を制御可能であり、前記前脚装置と前記後脚装置とは、前記前車輪と前記後車輪との回転による推進力によって揺動され、前記前脚装置と前記車両本体とに亘る機構であって、前記前脚装置を前記車両本体に対して前記第1軸芯周りに揺動させるためのアクチュエータを有する機構を備えておらず、前記後脚装置と前記車両本体とに亘る機構であって、前記後脚装置を前記車両本体に対して前記第2軸芯周りに揺動させるためのアクチュエータを有する機構を備えていないことにある。
【0007】
本発明であれば、制御部が、前車輪の回転数と後車輪の回転数とが互いに異なるように、前車輪の回転及び後車輪の回転を制御することにより、前車輪と後車輪との間の距離が長くなるか、あるいは、短くなる。これにより、車両本体の地上高さが変化する。
【0008】
例えば、前車輪と後車輪との間の距離が長くなる場合、それに伴い、前脚装置が第1軸芯周りに車両本体に対して揺動し、且つ、後脚装置が第2軸芯周りに車両本体に対して揺動する。このとき、前脚装置及び後脚装置は、それぞれ、水平姿勢に近付くように揺動する。その結果、車両本体の地上高さは低くなる。
【0009】
また、前車輪と後車輪との間の距離が短くなる場合、それに伴い、前脚装置が第1軸芯周りに車両本体に対して揺動し、且つ、後脚装置が第2軸芯周りに車両本体に対して揺動する。このとき、前脚装置及び後脚装置は、それぞれ、地面に対して垂直な姿勢に近付くように揺動する。その結果、車両本体の地上高さは高くなる。
【0010】
また、本発明であれば、車両本体の地上高さを変更するために、前脚装置及び後脚装置の長さを変更可能な機構を備える必要がない。そのため、前脚装置及び後脚装置の長さを変更可能な機構を備える場合に比べて、製造コストの増大を抑制することができる。
【0011】
従って、本発明であれば、製造コストの増大を抑制しつつ、車両本体の地上高さを状況に応じて変更可能な作業車を実現できる。
【0012】
さらに、本発明において、前記制御部は、走行中に、前記前車輪の回転数よりも前記後車輪の回転数の方が高くなるように、前記前車輪の回転及び前記後車輪の回転を制御可能であり、前記制御部は、走行中に、前記前車輪の回転数よりも前記後車輪の回転数の方が低くなるように、前記前車輪の回転及び前記後車輪の回転を制御可能であると好適である。
【0013】
この構成によれば、走行中に車両本体の地上高さを変更可能な作業車を実現できる。
【0014】
例えば、制御部が、前進走行中に、前車輪の回転数よりも後車輪の回転数の方が高くなるように、前車輪の回転及び後車輪の回転を制御すると、前車輪と後車輪との間の距離が短くなる。その結果、車両本体の地上高さは高くなる。
【0015】
また、制御部が、前進走行中に、前車輪の回転数よりも後車輪の回転数の方が低くなるように、前車輪の回転及び後車輪の回転を制御すると、前車輪と後車輪との間の距離が長くなる。その結果、車両本体の地上高さは低くなる。
【0016】
さらに、本発明において、前記制御部は、停車中に、前記前車輪と前記後車輪とが近付くように、前記前車輪の回転及び前記後車輪の回転を制御可能であり、前記制御部は、停車中に、前記前車輪と前記後車輪とが遠ざかるように、前記前車輪の回転及び前記後車輪の回転を制御可能であると好適である。
【0017】
この構成によれば、停車中に車両本体の地上高さを変更可能な作業車を実現できる。
【0018】
例えば、制御部が、停車中に、前車輪と後車輪とが近付くように、前車輪の回転及び後車輪の回転を制御すると、前車輪と後車輪との間の距離が短くなる。その結果、車両本体の地上高さは高くなる。
【0019】
また、制御部が、停車中に、前車輪と後車輪とが遠ざかるように、前車輪の回転及び後車輪の回転を制御すると、前車輪と後車輪との間の距離が長くなる。その結果、車両本体の地上高さは低くなる。
【0020】
さらに、本発明において、前記前車輪及び前記後車輪とは異なる接地可能な接地部を前記車両本体に備えていると好適である。
【0021】
この構成によれば、前車輪及び後車輪によってだけではなく、接地部によっても、車両本体を支えることができる。これにより、車両本体が安定的に支持されやすい。
【0022】
さらに、本発明において、前記接地部は、前記車両本体から下側へ突出する一つまたは複数の脚状部材により構成されていると好適である。
【0023】
この構成によれば、凹凸の多い地形を移動する場合に、脚状部材によって車両本体を支えることができる。これにより、凹凸の多い地形において、作業車が安定的に移動しやすい。
【0024】
さらに、本発明において、前記接地部は、地面に対向する平坦な面である接地面を有すると好適である。
【0025】
この構成によれば、例えばぬかるみ等の軟弱な地面の上を走行する場合に、接地面を地面に接地させた状態で走行することにより、前車輪及び後車輪が地中に沈み込む事態を回避しやすい。これにより、軟弱な地面の上での走破性が向上する。
【0026】
さらに、本発明において、前記接地部は、前記車両本体から下側へ突出した突出状態と、接地しないように退避した退避状態と、の間で状態変更可能であると好適である。
【0027】
接地部が常に接地する構成では、作業車が走行している間、地面からの抵抗力(摩擦)が常に接地部に作用することとなる。その結果、燃費が悪くなりがちである。
【0028】
ここで、上記の構成によれば、接地部を接地させなくても安定的に走行できる状況においては、接地部を退避させることができる。これにより、接地部が常に接地する構成に比べて、燃費が良好になりやすい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図3】制御部に関する構成を示すブロック図である。
【
図4】停車中に車両本体の地上高さが高くなる場合の例を示す図である。
【
図5】走行中に車両本体の地上高さが高くなる場合の例を示す図である。
【
図7】その他の実施形態(1)における接地部の構成を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明に係る作業車の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、
図1、
図2、
図4から
図7に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」とする。また、
図2に示す矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、
図1、
図4から
図7に示す矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0031】
〔作業車の全体構成〕
図1及び
図2に示すように、本実施形態における作業車は、車両本体1と、左右の前脚装置2と、左右の後脚装置3と、を備えている。車両本体1は、箱状の外形を有している。前脚装置2は、車両本体1の前端部における下端部から前下方へ延びる状態で設けられている。後脚装置3は、車両本体1の後端部における下端部から後下方へ延びる状態で設けられている。
【0032】
前脚装置2は、車両本体1の前部を支持している。また、後脚装置3は、車両本体1の後部を支持している。
【0033】
即ち、作業車は、車両本体1と、車両本体1の前部を支持する前脚装置2と、車両本体1の後部を支持する後脚装置3と、を備えている。
【0034】
前脚装置2は、前アーム21、前車輪22、前モータ23を有している。前アーム21は、車両本体1の前端部における下端部から前下方へ延びる長尺の部材である。前車輪22及び前モータ23は、前アーム21の下端部に設けられている。即ち、前車輪22及び前モータ23は、前脚装置2の下部に設けられている。
【0035】
尚、本実施形態において、前モータ23は、油圧モータである。
【0036】
前車輪22は、前アーム21よりも車体左右方向内側に位置している。また、前モータ23は、前アーム21よりも車体左右方向外側に位置している。そして、前モータ23の駆動力が前車輪22に伝達されることにより、前車輪22が駆動する。なお、前車輪22および前モータ23の取付位置はこれに限るものではなく、例えば、前モータ23を前アーム21よりも車体左右方向内側に配置し、前車輪22を前アーム21よりも車体左右方向外側に配置してもよい。
【0037】
即ち、前脚装置2の下部に、駆動可能な前車輪22が設けられている。
【0038】
後脚装置3は、後アーム31、後車輪32、後モータ33を有している。後アーム31は、車両本体1の後端部における下端部から後下方へ延びる長尺の部材である。後車輪32及び後モータ33は、後アーム31の下端部に設けられている。即ち、後車輪32及び後モータ33は、後脚装置3の下部に設けられている。
【0039】
尚、本実施形態において、後モータ33は、油圧モータである。
【0040】
後車輪32は、後アーム31よりも車体左右方向内側に位置している。また、後モータ33は、後アーム31よりも車体左右方向外側に位置している。そして、後モータ33の駆動力が後車輪32に伝達されることにより、後車輪32が駆動する。なお、後車輪32および後モータ33の取付位置はこれに限るものではなく、例えば、後モータ33を後アーム31よりも車体左右方向内側に配置し、後車輪32を後アーム31よりも車体左右方向外側に配置してもよい。
【0041】
即ち、後脚装置3の下部に、駆動可能な後車輪32が設けられている。
【0042】
図1及び
図2に示すように、前アーム21の上端部は、車両本体1に接続している。即ち、前脚装置2の上部は、車両本体1に接続している。
【0043】
前アーム21は、機体左右方向に沿う第1軸芯P1周りに、車両本体1に対して揺動可能である。また、前車輪22及び前モータ23は、前アーム21と一体的に、第1軸芯P1周りに揺動する。
【0044】
即ち、前脚装置2の上部は、機体左右方向に沿う第1軸芯P1周りに車両本体1に対して揺動可能な状態で、車両本体1に接続している。
【0045】
また、後アーム31の上端部は、車両本体1に接続している。即ち、後脚装置3の上部は、車両本体1に接続している。
【0046】
後アーム31は、機体左右方向に沿う第2軸芯P2周りに、車両本体1に対して揺動可能である。また、後車輪32及び後モータ33は、後アーム31と一体的に、第2軸芯P2周りに揺動する。
【0047】
即ち、後脚装置3の上部は、機体左右方向に沿う第2軸芯P2周りに車両本体1に対して揺動可能な状態で、車両本体1に接続している。
【0048】
また、本実施形態において、前モータ23及び後モータ33は、何れも、正転駆動と逆転駆動とが可能である。前モータ23及び後モータ33が正転駆動することにより、作業車は前進走行する。前モータ23及び後モータ33が逆転駆動することにより、作業車は後進走行する。また、前モータ23及び後モータ33の駆動が停止することにより、作業車は停車する。
【0049】
〔制御部に関する構成〕
図3に示すように、作業車は、制御部4を備えている。本実施形態において、制御部4は、車両本体1に備えられている。
【0050】
制御部4は、入力装置5からの信号を受け取るように構成されている。本実施形態において、入力装置5は、ユーザが操作可能なリモコンである。しかしながら、本発明はこれに限定されず、入力装置5は、車両本体1に設けられた操作ボタン等であっても良い。
【0051】
制御部4は、入力装置5から受け取った信号に応じて、左前モータ23a、右前モータ23b、左後モータ33a、右後モータ33bを、それぞれ独立して制御可能である。尚、左前モータ23aは、左の前脚装置2における前モータ23である。右前モータ23bは、右の前脚装置2における前モータ23である。左後モータ33aは、左の後脚装置3における後モータ33である。右後モータ33bは、右の後脚装置3における後モータ33である。
【0052】
詳述すると、車両本体1の内部に、作動油供給装置(図示せず)が収納されている。作動油供給装置は、作業車に搭載されるエンジン或いは電動モータ等の駆動手段(図示せず)にて駆動される。作動油供給装置は、油圧ポンプ(図示せず)、複数の油圧制御弁(図示せず)、作動油タンク(図示せず)等を備えている。油圧ポンプは、左前モータ23a、右前モータ23b、左後モータ33a、右後モータ33bへ作動油を送り出す。複数の油圧制御弁は、左前モータ23a、右前モータ23b、左後モータ33a、右後モータ33bのそれぞれに供給される作動油を制御する。作動油タンクは、作動油を貯留する。そして、作動油供給装置は、左前モータ23a、右前モータ23b、左後モータ33a、右後モータ33bに対する作動油の給排あるいは流量の調節等を行う。
【0053】
そして、制御部4は、作動油供給装置の動作を制御することにより、左前モータ23a、右前モータ23b、左後モータ33a、右後モータ33bを制御する。
【0054】
そして、制御部4は、左前モータ23a及び右前モータ23bを制御することにより、左右の前車輪22の回転を制御可能である。また、制御部4は、左後モータ33a及び右後モータ33bを制御することにより、左右の後車輪32の回転を制御可能である。この構成により、制御部4は、前車輪22の回転と、後車輪32の回転と、をそれぞれ独立して制御可能である。
【0055】
即ち、作業車は、前車輪22の回転と、後車輪32の回転と、をそれぞれ独立して制御可能な制御部4を備えている。
【0056】
尚、制御部4は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおける機能部であっても良い。
【0057】
〔車両本体の地上高さの制御について〕
制御部4は、前車輪22の回転数と、後車輪32の回転数と、が互いに異なるように、前車輪22の回転及び後車輪32の回転を制御可能である。これにより、制御部4は、車両本体1の地上高さを制御可能である。
【0058】
尚、本発明における「回転数」は、負の値にもなり得る。前車輪22及び後車輪32が前進方向に回転しているとき、前車輪22及び後車輪32の回転数は正の値である。また、前車輪22及び後車輪32が後進方向に回転しているとき、前車輪22及び後車輪32の回転数は負の値である。そして、前車輪22の回転数の絶対値と、後車輪32の回転数の絶対値と、が一致していても、前車輪22の回転数及び後車輪32の回転数のうちの一方が正の値であり、他方が負の値である場合、前車輪22の回転数と、後車輪32の回転数と、は互いに異なっている。
【0059】
以下では、車両本体1の地上高さの制御について詳述する。
【0060】
図4において、作業車は停車中である。制御部4は、
図4に示すように、作業車が停車中の状態において、前車輪22と後車輪32とが近付くように、前車輪22の回転及び後車輪32の回転を制御可能である。
【0061】
図4に示す例では、制御部4は、前車輪22を後進方向に回転させると共に、後車輪32を前進方向に回転させる。これにより、前車輪22と後車輪32とが近付く。これに伴い、前脚装置2は、第1軸芯P1周りに、地面に対して垂直な姿勢に近付くように揺動する。また、後脚装置3は、第2軸芯P2周りに、地面に対して垂直な姿勢に近付くように揺動する。その結果、作業車の姿勢は、
図4に仮想線で示す姿勢から、実線で示す姿勢に変化する。これにより、車両本体1の地上高さは、第1高さH1から第2高さH2へ上昇する。
【0062】
尚、本実施形態において、車両本体1の地上高さは、車両本体1の下端の高さである。より具体的には、車両本体1の地上高さは、車両本体1に備わる接地部6の下端の高さである。接地部6については後述する。また、第2高さH2は第1高さH1よりも高い。
【0063】
また、
図4に示す例とは逆に、制御部4は、作業車が停車中の状態において、前車輪22と後車輪32とが遠ざかるように、前車輪22の回転及び後車輪32の回転を制御可能である。
【0064】
例えば、制御部4が、前車輪22を前進方向に回転させると共に、後車輪32を後進方向に回転させると、前車輪22と後車輪32とが遠ざかる。これに伴い、前脚装置2は、第1軸芯P1周りに、水平姿勢に近付くように揺動する。また、後脚装置3は、第2軸芯P2周りに、水平姿勢に近付くように揺動する。その結果、作業車の姿勢は、
図4に実線で示す姿勢から、仮想線で示す姿勢に変化する。これにより、車両本体1の地上高さは、第2高さH2から第1高さH1へ下降する。
【0065】
以上で説明したように、制御部4は、停車中に、前車輪22と後車輪32とが近付くように、前車輪22の回転及び後車輪32の回転を制御可能である。また、制御部4は、停車中に、前車輪22と後車輪32とが遠ざかるように、前車輪22の回転及び後車輪32の回転を制御可能である。
【0066】
また、
図5において、作業車は走行中である。より具体的には、作業車は前進走行中である。制御部4は、
図5に示すように、作業車が走行中の状態において、前車輪22の回転数よりも後車輪32の回転数の方が高くなるように、前車輪22の回転及び後車輪32の回転を制御可能である。
【0067】
図5に示す例では、制御部4は、前車輪22を第1回転数V1で回転させると共に、後車輪32を第2回転数V2で回転させる。第2回転数V2は、第1回転数V1よりも高い。これにより、前車輪22と後車輪32との間の距離が短くなる。これに伴い、前脚装置2は、第1軸芯P1周りに、地面に対して垂直な姿勢に近付くように揺動する。また、後脚装置3は、第2軸芯P2周りに、地面に対して垂直な姿勢に近付くように揺動する。その結果、作業車の姿勢は、
図5に仮想線で示す姿勢から、実線で示す姿勢に変化する。これにより、車両本体1の地上高さは、第1高さH1から第2高さH2へ上昇する。
【0068】
また、
図5に示す例とは逆に、制御部4は、作業車が走行中の状態において、前車輪22の回転数よりも後車輪32の回転数の方が低くなるように、前車輪22の回転及び後車輪32の回転を制御可能である。
【0069】
例えば、制御部4が、前車輪22を第2回転数V2で回転させると共に、後車輪32を第1回転数V1で回転させると、前車輪22と後車輪32との間の距離が長くなる。これに伴い、前脚装置2は、第1軸芯P1周りに、水平姿勢に近付くように揺動する。また、後脚装置3は、第2軸芯P2周りに、水平姿勢に近付くように揺動する。その結果、作業車の姿勢は、
図5に実線で示す姿勢から、仮想線で示す姿勢に変化する。これにより、車両本体1の地上高さは、第2高さH2から第1高さH1へ下降する。
【0070】
以上で説明したように、制御部4は、走行中に、前車輪22の回転数よりも後車輪32の回転数の方が高くなるように、前車輪22の回転及び後車輪32の回転を制御可能である。また、制御部4は、走行中に、前車輪22の回転数よりも後車輪32の回転数の方が低くなるように、前車輪22の回転及び後車輪32の回転を制御可能である。
【0071】
尚、図示は省略するが、制御部4は、後進走行中に、前車輪22の回転数よりも後車輪32の回転数の方が高くなるように(前車輪22の回転数の絶対値よりも後車輪32の回転数の絶対値の方が大きくなるように)、前車輪22の回転及び後車輪32の回転を制御可能である。これにより、前車輪22と後車輪32との間の距離は長くなる。その結果、車両本体1の地上高さは低くなる。
【0072】
また、制御部4は、後進走行中に、前車輪22の回転数よりも後車輪32の回転数の方が低くなるように(前車輪22の回転数の絶対値よりも後車輪32の回転数の絶対値の方が小さくなるように)、前車輪22の回転及び後車輪32の回転を制御可能である。これにより、前車輪22と後車輪32との間の距離は短くなる。その結果、車両本体1の地上高さは高くなる。
【0073】
〔接地部について〕
図1に示すように、車両本体1は、接地部6を有している。接地部6は、前車輪22及び後車輪32とは異なる部材である。尚、接地部6は、車両本体1に含まれていても良いし、車両本体1に含まれていなくても良い。
【0074】
図1及び
図6に示すように、接地部6は、車両本体1から下側へ突出した突出状態と、接地しないように退避した退避状態と、の間で状態変更可能である。そして、接地部6は、突出状態であるとき、接地する。
【0075】
即ち、作業車は、前車輪22及び後車輪32とは異なる接地可能な接地部6を備えている。
【0076】
図6に示すように、本実施形態において、接地部6は、車両本体1から下側へ突出する二つの脚状部材61により構成されている。尚、本発明はこれに限定されない。接地部6は、一つの脚状部材61により構成されていても良いし、三つ以上の脚状部材61により構成されていても良い。
【0077】
即ち、接地部6は、車両本体1から下側へ突出する一つまたは複数の脚状部材61により構成されている。
【0078】
図3に示すように、制御部4は、入力装置5から受け取った信号に応じて、接地部6の状態を制御する。これにより、制御部4は、接地部6の状態を、突出状態と、退避状態と、の間で切り替える。
【0079】
本実施形態において、接地部6の状態は、車両本体1に備わる油圧シリンダ(図示せず)の駆動によって切り替わる。この油圧シリンダは、上下方向に伸縮する。この油圧シリンダが伸びると、接地部6は突出状態となる。この油圧シリンダが縮むと、接地部6は退避状態となる。そして、制御部4は、この油圧シリンダへの作動油の供給状態を制御することにより、接地部6の状態を制御する。
【0080】
尚、本発明はこれに限定されず、接地部6の状態が、油圧シリンダ以外のアクチュエータ(例えば電気モータ)によって切り替わるように構成されていても良い。
【0081】
以上で説明した構成であれば、制御部4が、前車輪22の回転数と後車輪32の回転数とが互いに異なるように、前車輪22の回転及び後車輪32の回転を制御することにより、前車輪22と後車輪32との間の距離が長くなるか、あるいは、短くなる。これにより、車両本体1の地上高さが変化する。
【0082】
例えば、前車輪22と後車輪32との間の距離が長くなる場合、それに伴い、前脚装置2が第1軸芯P1周りに車両本体1に対して揺動し、且つ、後脚装置3が第2軸芯P2周りに車両本体1に対して揺動する。このとき、前脚装置2及び後脚装置3は、それぞれ、水平姿勢に近付くように揺動する。その結果、車両本体1の地上高さは低くなる。
【0083】
また、前車輪22と後車輪32との間の距離が短くなる場合、それに伴い、前脚装置2が第1軸芯P1周りに車両本体1に対して揺動し、且つ、後脚装置3が第2軸芯P2周りに車両本体1に対して揺動する。このとき、前脚装置2及び後脚装置3は、それぞれ、地面に対して垂直な姿勢に近付くように揺動する。その結果、車両本体1の地上高さは高くなる。
【0084】
また、以上で説明した構成であれば、車両本体1の地上高さを変更するために、前脚装置2及び後脚装置3の長さを変更可能な機構を備える必要がない。そのため、前脚装置2及び後脚装置3の長さを変更可能な機構を備える場合に比べて、製造コストの増大を抑制することができる。
【0085】
従って、以上で説明した構成であれば、製造コストの増大を抑制しつつ、車両本体1の地上高さを状況に応じて変更可能な作業車を実現できる。
【0086】
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態において、接地部6は、二つの脚状部材61により構成されている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、作業車は、上記実施形態における接地部6に代えて、
図7に示すような接地部16を備えていても良い。
【0087】
図7に示す接地部16は、棒状部62と、そり状部63と、を有している。棒状部62は、車両本体1から下側へ突出している。そり状部63は、地面に対向する姿勢のそり形状を有しており、棒状部62の下端に接続している。そして、そり状部63は、接地面63aを有している。接地面63aは、地面に対向する平坦な面である。
【0088】
即ち、
図7に示す接地部16は、地面に対向する平坦な面である接地面63aを有する。
【0089】
図7に示す接地部16は、上記実施形態における接地部6と同様に、突出状態と、退避状態と、の間で状態変更可能である。そして、作業車は、接地部16を突出状態にしたままで走行することにより、接地面63aが地面に接した状態で走行可能である。
【0090】
(2)上記実施形態では、二つの前脚装置2が設けられている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。前脚装置2の設けられる個数は、一つでも良いし、三つ以上でも良い。
【0091】
(3)上記実施形態では、二つの後脚装置3が設けられている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。後脚装置3の設けられる個数は、一つでも良いし、三つ以上でも良い。
【0092】
(4)前モータ23は電気モータであっても良い。また、後モータ33は電気モータであっても良い。
【0093】
(5)制御部4は、停車中に、後車輪32の回転を停止させた状態で、前車輪22を後進方向に回転させることができるように構成されていても良い。前車輪22及び後車輪32をこのように制御した場合、前車輪22と後車輪32とが近付く。その結果、車両本体1の地上高さは高くなる。
【0094】
(6)制御部4は、停車中に、前車輪22の回転を停止させた状態で、後車輪32を前進方向に回転させることができるように構成されていても良い。前車輪22及び後車輪32をこのように制御した場合、前車輪22と後車輪32とが近付く。その結果、車両本体1の地上高さは高くなる。
【0095】
(7)制御部4は、停車中に、後車輪32の回転を停止させた状態で、前車輪22を前進方向に回転させることができるように構成されていても良い。前車輪22及び後車輪32をこのように制御した場合、前車輪22と後車輪32とが遠ざかる。その結果、車両本体1の地上高さは低くなる。
【0096】
(8)制御部4は、停車中に、前車輪22の回転を停止させた状態で、後車輪32を後進方向に回転させることができるように構成されていても良い。前車輪22及び後車輪32をこのように制御した場合、前車輪22と後車輪32とが遠ざかる。その結果、車両本体1の地上高さは低くなる。
【0097】
(9)上記実施形態において、退避状態の接地部6は、車両本体1から下側へ突出している。しかしながら、本発明はこれに限定されない。退避状態の接地部6は、接地部6の下端部が車両本体1の内部に隠れる位置まで退避していても良い。
【0098】
(10)前アーム21及び後アーム31は、地面からの衝撃を吸収するサスペンション機構を備えていても良い。
【0099】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、駆動可能な前車輪及び駆動可能な後車輪を備える作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0101】
1 車両本体
2 前脚装置
3 後脚装置
4 制御部
6、16 接地部
22 前車輪
32 後車輪
61 脚状部材
63a 接地面
P1 第1軸芯
P2 第2軸芯