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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240816BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20240816BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20240816BHJP
   H05K 3/28 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
H05K1/02 A
H05K1/18 R
H01L23/12 C
H05K3/28 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020208262
(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公開番号】P2022095119
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】西田 智弘
(72)【発明者】
【氏名】半戸 琢也
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-40512(JP,A)
【文献】特開2002-353257(JP,A)
【文献】特開2007-173361(JP,A)
【文献】特開2009-289914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/18
H01L 23/13
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有しているセラミック基材を備え、
前記凹部は、半導体素子が搭載される素子搭載予定部を有し、
前記素子搭載予定部には、少なくとも一つの金属部が配置されている、
配線基板であって、
前記凹部の側壁は、少なくとも前記凹部の開口部において、前記凹部の底部側に向かって前記凹部の幅を狭める方向に傾斜している傾斜部を有し、
前記傾斜部の少なくとも一部には、傾斜に沿って複数の溝が形成されており、
前記溝は、前記傾斜部の上端から下端にまで延びている、配線基板。
【請求項2】
前記凹部の少なくとも一辺の前記側壁と、この側壁に対向して位置する前記側壁とに、前記溝が形成されている、請求項1に記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップなどの半導体素子が搭載される素子搭載予定部を有している配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路などを搭載した半導体チップは、例えば、スイッチング素子、抵抗、コンデンサなどの様々な半導体素子で構成されている。この半導体チップは、例えば、セラミック、ガラスなどの非導電性材料で形成されている絶縁基板上に搭載され、モジュール化された配線基板を構成する。
【0003】
半導体チップを絶縁基板に電気的に接続する方法としては、例えば、ワイヤボンディングのように線状配線(ワイヤ)によって接続する方法、あるいは、アレイ状に並んだバンプと呼ばれる突起状の端子によって接続する方法などが挙げられる。バンプによって半導体チップを絶縁基板に電気的に接続する方法は、フリップチップ実装と呼ばれる。
【0004】
例えば、特許文献1には、フリップチップ実装の方式を採用した配線基板が開示されている。特許文献1に開示された構成では、配線基板1の凹部7に設けられている電極4に、半田バンプ9によって表面実装素子2(半導体素子)が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-335515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フリップチップ実装の方式を採用した配線基板には、例えば、特許文献1に示されるように、基板に凹部を形成し、この凹部内に半導体素子と接続される電極などの導電パターンを配置する構成がある。
【0007】
フリップチップ実装方式の配線基板では、半導体素子とバンプとの接続部を保護することなどを目的として、半導体素子とバンプとの接続部周辺を樹脂材料で充填することが行われる。凹部を有する配線基板の場合には、凹部内に樹脂材料を流し込み、硬化させることによって、樹脂の充填が行われる。
【0008】
しかし、流し込まれる樹脂材料は、ある程度の粘性を有しており、流動性が低いことがある。そのため、凹部内の空隙部分の全てが樹脂材料で充填されず、硬化樹脂中にボイドが発生する可能性がある。
【0009】
そこで、本発明では、セラミック基材に形成されている凹部内に充填される樹脂中にボイド(空洞)が形成されにくくすることのできる配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面にかかる配線基板は、凹部を有しているセラミック基材を備えている。前記凹部は、半導体素子が搭載される素子搭載予定部を有し、前記素子搭載予定部には、少なくとも一つの金属部が配置されている。この配線基板において、前記凹部の側壁は、少なくとも前記凹部の開口部において、前記凹部の底部側に向かって前記凹部の幅を狭める方向に傾斜している傾斜部を有している。
【0011】
上記の構成によれば、凹部を取り囲むように設けられている側壁の少なくとも何れかに傾斜部が設けられていることで、この傾斜部を有する側壁から凹部内に流し込まれた樹脂材料を、凹部の底部側へ向けて流れやすくすることができる。これにより、凹部内に充填される樹脂中にボイドが形成される可能性を低減させることができる。
【0012】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記傾斜部の少なくとも一部には、傾斜に沿って複数の溝が形成されており、前記溝は、前記傾斜部の上端から下端にまで延びていてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、溝が形成されている傾斜部を有する側壁から凹部内へ樹脂材料を注入した際に、毛細管現象により樹脂材料の流れ性をより向上させることができる。
【0014】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記凹部の少なくとも一辺の前記側壁と、この側壁に対向して位置する前記側壁とに、前記溝が形成されていてもよい。
【0015】
上記のような構成を有する配線基板は、セラミック基材の表面上において、主走査方向および副走査方向にレーザー光を走査するレーザー処理によって形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一局面にかかる配線基板によれば、セラミック基材に形成されている凹部内に充填される樹脂中にボイドが形成されにくくすることができる。この配線基板を用いて得られる半導体パッケージでは、半導体素子側の接続端子と配線基板側の接続パッドとの間の接合部に充填される樹脂の気密性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態にかかる配線基板の構成を示す断面模式図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる配線基板の構成を示す平面図である。
図3図1に示す配線基板に半導体チップが搭載された半導体モジュールの構成を示す断面模式図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる配線基板の製造工程を示す模式図である。
図5】本実施形態にかかる配線基板の一例の画像を示す図である。
図6図5に示す配線基板の傾斜部の断面形状を測定した結果を示す図である。
図7図5に示す配線基板の傾斜部の溝を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0019】
本実施形態では、本発明にかかる配線基板の一例として、配線基板1を例に挙げて説明する。この配線基板1には、半導体チップ(半導体素子)40が搭載され、半導体モジュール50を構成する。
【0020】
(配線基板および半導体モジュールの構成)
図1には、配線基板1の断面構造を模式的に示す。図2には、複数の接続パッド21が設けられている配線基板1の表面側の構成を示す。図3には、半導体モジュール50の断面構造を模式的に示す。本実施形態では、便宜上、略平板状の配線基板1において半導体チップ40が搭載される側の面を表面とし、その反対側の面を裏面とする。但し、配線基板1の表面および裏面の定義はこれに限定はされず、任意に決めることができる。
【0021】
配線基板1は、主として、セラミック基材(絶縁性の基材)10、接続パッド21、配線部22、および導電性ビア23などを備えている。
【0022】
セラミック基材10は、配線基板1の土台となる部材である。セラミック基材10は、複数のセラミックシートを積層して形成されている。セラミックシートは、例えば、アルミナ(Al)を主成分とする高温焼成セラミックで形成することができる。また、別の実施態様では、セラミックシートは、ガラス-セラミックなどの中温焼成セラミック(MTCC)、または低温焼成セラミック(LTCC)で形成されていてもよい。
【0023】
なお、別の実施形態では、セラミック基材10は、1枚のセラミックシートで形成されていてもよい。
【0024】
本実施形態では、セラミック基材10は、中央に凹部10aを有している。凹部10aは、上方に向かって開口している。凹部10aの開口部の上方には、半導体チップ40が配置される。すなわち、凹部10aの上方は、半導体チップ40などの半導体素子が搭載される素子搭載予定部40aとなっている。
【0025】
凹部10aは、上面視で、略長方形状を有している(図2参照)。凹部10aの周囲には、外周壁(側壁)11が設けられている。凹部10aの底面部(底部)10bには、所定形状の導電性パターン(金属部とも呼ばれる)が形成されており、接続パッド21および配線部22などを形成している。
【0026】
外周壁11を形成している凹部10aの4つの側面には、傾斜部15が設けられている。傾斜部15は、凹部10aの開口部において、底面部10b側に向かって凹部10aの幅を狭める方向に傾斜している(図1参照)。
【0027】
素子搭載予定部40aに半導体チップ40が設置された状態で、凹部10aには、開口部から液状の樹脂材料が流し込まれる。外周壁11の側面の少なくとも何れかに上記のような傾斜部15が設けられていることで、この傾斜部15を有する側面から樹脂材料を流し込むと、凹部10aの底面部10bへ向けて樹脂材料が流れやすくなる。
【0028】
本実施形態では、凹部10aの全ての側面に傾斜部15が設けられている。これにより、どの側面側から樹脂材料を注入しても、凹部10aの底面部10bへ向けて樹脂材料を流れ込みやすくすることができる。
【0029】
また、凹部10aの4つの側面のうち、少なくとも一つの側面には、傾斜部15の傾斜に沿って、傾斜部15の上端から下端にまで延びている複数の溝16が形成されていることが好ましい。複数の溝16は、傾斜部15の傾斜の方向に沿って互いに略平行に延びている。溝16の幅W1(図7参照)は、例えば、約10μm以上30μm以下の範囲内とすることができる。傾斜部15の表面にこのような複数の溝16が設けられていることで、傾斜部15を有する側面から凹部10a内に樹脂材料を注入した際に、毛細管現象により樹脂材料の流れ性をより向上させることができる。
【0030】
本実施形態では、凹部10aの4つの側面のうち、互いに対向する2つの側面の傾斜部15に溝16が設けられている。図2に示す例では、凹部10aの4つの側面のうち、左右両側に位置している2つの側面の傾斜部15aおよび15aに溝16が設けられている。凹部10aの4つの側面のうち、上方側および下方側に位置している2つの側面の傾斜部15bおよび15bには、溝16は設けられていない。このような構成を有する凹部10aは、例えば、セラミック基材10の表面をレーザー処理することによって形成することができる。
【0031】
接続パッド21および配線部22は、セラミック基材10の底面部10bに設けられている。図2には、セラミック基材10の底面部10bに、複数の接続パッド21が並んで配置されている状態を示している。図2では図示されていないが、セラミック基材10の底面部10bには、複数の配線部22も配置されている。なお、配線基板1における接続パッド21および配線部22の配置の仕方は、図2に示す例に限定はされない。配線基板1の仕様および用途などに応じて、接続パッド21および配線部22の配置方法は、適宜変更される。
【0032】
接続パッド21は、配線基板1に搭載される半導体チップ40の接続端子41との間で電気的に接続される(図3参照)。接続パッド21は、セラミック基材10の底面部10bから突出するように設けられている。図1に示すように、接続パッド21は、主として、導電性の金属突起部(金属部)31と、絶縁性の側壁12とで形成されている。
【0033】
接続パッド21の一部または全ては、導電性ビア23と接続されている。図1に示すように、導電性ビア23と接続されている接続パッド21は、その金属突起部31が、導電性ビア23を構成する金属部33の上方に配置されている。
【0034】
導電性ビア23は、セラミック基材10の内部を貫通するように設けられている。導電性ビア23は、配線基板1の表面側に形成されている接続パッド21と、配線基板1の裏面側に形成されている接続パッド(図示せず)とを電気的に接続する。導電性ビア23は、セラミック基材10内に埋め込まれている金属部33で主に形成されている。金属部33は、金属突起部31と同様に、導電性の材料で形成されている。金属部33は、接続パッド21の金属突起部31と一体的に形成されていてもよい。
【0035】
配線部22は、配線基板1上に張り巡らされており、配線基板1内の各素子に電気信号を送信する。また、配線部22の一部は、配線基板1に搭載される半導体チップ40の接続端子41との間で電気的に接続されてもよい(図3参照)。配線部22は、セラミック基材10の底面部10bから突出するように設けられている。図1に示すように、配線部22は、主として、導電性の金属突起部(金属部)32と、絶縁性の側壁13とで形成されている。
【0036】
なお、図1には図示されていないが、セラミック基材10の内部にも配線が形成されていてもよい。セラミック基材10の内部に形成されている内層配線は、図示しない導電性ビアなどによって、セラミック基材10の底面部10bに配置されている配線部22と電気的に接続されていてもよい。
【0037】
金属突起部31および32は、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、銀(Ag)、またはモリブデン(Mo)などの金属材料、あるいはこれらの金属材料を主成分とする合金材料によって形成することができる。金属部33も、金属突起部31および32と同様の材料で形成することができる。
【0038】
金属突起部31および32、並びに金属部33は、例えば、印刷ペーストによるメタライズ法、基板に開口部を形成して導電性ペーストを埋め込む方法、パターン状の金属層を転写する方法などの従来公知の方法を用いて、形成することができる。これにより、セラミック基材10内に所定のパターン形状を有する金属突起部31および32、並びに金属部33を形成することができる。そして、後述するように、金属突起部31および32などが形成されたセラミック基材10の表面をレーザー処理することによって、図1に示すように、金属突起部31および32を、セラミック基材10の底面部10bから突出させることができる。
【0039】
絶縁性の側壁12は、金属突起部31の外周を覆うように設けられている。側壁12は、セラミック基材10の底面部10bから盛り上がるように形成されている。また、側壁12は、セラミック基材10の一部で形成されている。すなわち、側壁12とセラミック基材10とは、一体となっている。
【0040】
絶縁性の側壁13は、金属突起部32の外周を覆うように設けられている。側壁12と同様に、側壁13は、セラミック基材10の底面部10bから盛り上がるように形成されている。また、側壁13は、セラミック基材10の一部で形成されている。すなわち、側壁13とセラミック基材10とは、一体となっている。
【0041】
本実施形態では、側壁12および13は、配線基板1の厚み方向に沿った断面視で、セラミック基材10の凹部10aの底面部10bに至るまで裾広がりに傾斜している(図1参照)。このように、側壁12および13が裾広がりの形状を有していることで、セラミック基材10の底面部10bと側壁12および13との接合部において側壁の外径が大きくなるため、接続パッド21および配線部22をセラミック基材10の底面部10bに対して、より強固に固定させることができる。
【0042】
金属突起部31の頂面31a(図4参照)は、セラミック基材10の側壁12に覆われておらず露出している。この露出した頂面31aには、メッキ層35が形成される。また、金属突起部32の頂面32aは、セラミック基材10の側壁13に覆われておらず露出している。この露出した頂面32a(図4参照)には、メッキ層35が形成される。
【0043】
メッキ層35は、例えば、Niメッキ、およびAuメッキなどを含む。メッキ層35は、単層のメッキ層で構成されていてもよいし、複数のメッキ層で構成されていてもよい。メッキ層35は、例えば、従来公知の電解めっき法などを用いて形成することができる。電解めっき法を行うことで、セラミック基材10から露出している金属部の表面(例えば、頂面31a、頂面32aなど)にメッキ被膜を形成することができる。
【0044】
上記のような構成を有する配線基板1の素子搭載予定部40aには、半導体チップ40が搭載される。これにより、半導体モジュール50が得られる。図3には、半導体モジュール50の断面構造を模式的に示す。
【0045】
半導体モジュール50では、配線基板1上に、フリップチップ実装によって半導体チップ40が接続されている。具体的には、配線基板1の接続パッド21および配線部22などと、半導体チップ40の接続端子41とが、半田バンプ36を介して接続されている。
【0046】
配線基板1上に半導体チップ40が搭載された状態で、セラミック基材10の凹部10aには、液状の樹脂材料が流し込まれる。この樹脂材料が硬化することで、凹部10aには、樹脂51が充填された状態となる。これにより、半導体モジュール50が得られる。
【0047】
なお、凹部10aに樹脂材料を流し込む際には、溝16が形成されている傾斜部15aを有する側面から樹脂材料を流し込むことが好ましい。これにより、凹部10aの底面部10bへ向けて樹脂材料を流れやすくすることができるとともに、溝16の形状に起因した毛細管現象により樹脂材料の流れ性をより向上させることができる。これにより、硬化後の樹脂51にボイド(空洞)が形成される可能性を減らすことができる。
【0048】
また、図1などに示すように、接続パッド21の側壁12、および、配線部22の側壁13が、裾広がりの形状を有していることで、凹部10aに樹脂材料を流し込んだときに、凹部10aの底面部10bと側壁12または側壁13との境界部にも樹脂材料が流れ込みやすくなる。そのため、硬化後の樹脂51にボイドが形成される可能性をさらに減らすことができる。
【0049】
(配線基板の製造方法)
続いて、配線基板1の製造方法について説明する。ここでは特に、セラミック基材10に凹部10aを形成するとともに、凹部10aの底面部10bに接続パッド21および配線部22を形成する工程について説明する。この工程以外の配線基板1の製造方法については、従来公知の配線基板の製造方法が適用できる。
【0050】
図4には、セラミック基材10に凹部10aを形成し、底面部10bに接続パッド21および配線部22を形成するための各工程を、工程順に示す。
【0051】
先ず、図4の「1」で示す工程では、接続パッド21および配線部22を構成する金属突起部31および32が埋め込まれたセラミック基材10を準備する。
【0052】
具体的には、従来公知のパターン形成方法(例えば、フォトリソグラフィなど)を用いて、セラミックシートに、所定形状の金属突起部31および32を形成する。また、別のセラミックシートに、導電性ビア23となる金属部33、および、内層配線となる金属部を所定形状に形成する。
【0053】
このようにして得られた複数のセラミックシートは、その後、決められた順序で積層される。このとき、上方に積層されるセラミックシートには、凹部10aの形成予定領域に開口部が設けられている。これにより、セラミックシートの積層体には、凹部10aおよび外周壁11の一部が形成される。その後、得られたセラミックシートの積層体を焼成し、セラミック基材10が得られる。
【0054】
なお、セラミック基材10が1枚のセラミックシートで構成される場合には、所定形状の金属突起部31および32が形成された1枚のセラミックシートを焼成して、セラミック基材10を形成する。この方法で得られるセラミック基材10の表面には凹部は形成されておらず、平板状となっている。
【0055】
続いて、図4の「2」で示す工程を行う。この工程では、セラミック基材10の凹部10aの形成予定領域に対してレーザー処理を行う。具体的には、セラミック基材10上で、加工用のレーザー光をX方向およびY方向に走査しながら照射する。ここで、用いられるレーザー光としては、例えば、超短パルスレーザー、エキシマレーザー、UV固体レーザー、ファイバーレーザー、YAGレーザー、COレーザーなどが挙げられる。
【0056】
このレーザー処理の工程では、例えば、凹部10aの4つの側面のうち、左右両側の側面の傾斜部15aおよび15aに溝16が設けられている配線基板1(図2参照)の場合には、セラミック基材10の表面上でX方向に往復するようにレーザー光を走査する。そして、レーザー光をX方向に往復移動させながら、X方向に直交するY方向にレーザー光の位置をわずかに移動させることで、平面視で略長方形状の凹部10aの形成予定領域に対して、隈なくレーザー光を照射することができる。すなわち、このレーザー処理では、X方向がレーザー光の主走査方向となり、Y方向がレーザー光の副走査方向となる。
【0057】
このようなレーザー処理を行うことで、凹部10aの形成予定領域では、主としてセラミック基材10が削られる一方、金属突起部31および32についてはあまり削られることなく残される。これにより、セラミック基材10の表面に、4辺の外周壁11を有する凹部10aが形成される。
【0058】
そして、外周壁11の4つの側面には、底面部10b側に向かって凹部10aの幅を狭める方向に傾斜する傾斜部15が形成される。また、レーザー光の主走査方向Xと交差する位置にある傾斜部15aの表面には、図2に示すような複数の溝16が形成される。なお、レーザー光の主走査方向Xに平行な位置にある傾斜部15bの表面には、傾斜の方向に沿った溝16の代わりに、傾斜の方向と直交する方向(図2に示す例では、X方向)に沿って延びる横溝が形成され得る。
【0059】
また、凹部10aの底面部10b上では、金属突起部31および32と、その周囲に位置するセラミック基材10の一部とが突出する。
【0060】
例えば、複数の金属突起部31が並んで配置されているセラミック基材10では、底面部10bから接続パッド21が突出した状態となる。この状態では、金属突起部31の外周には、レーザー処理後に残存したセラミック基材10で形成された側壁12が形成されている。このようなセラミック基材10と一体となった側壁12が設けられていることで、接続パッド21は、セラミック基材10の底面部10bに対して強固に固定され得る。
【0061】
また例えば、複数の金属突起部32が並んで配置されているセラミック基材10では、底面部10bから配線部22が突出した状態となる。この状態では、金属突起部32の外周には、レーザー処理後に残存したセラミック基材10で形成された側壁13が形成されている。このようなセラミック基材10と一体となった側壁13が設けられていることで、配線部22は、セラミック基材10の底面部10bに対して強固に固定され得る。
【0062】
このレーザー処理に用いられるレーザー光が超短パルスレーザーである場合のレーザー処理の条件は、例えば、以下の通りとすることができる。
【0063】
出力:1.0W以上10W以下
周波数:200kHz
速度:500mm/秒以上2000mm/秒以下
走査回数:10回以上50回以下
送りピッチ:10μm
【0064】
このレーザー処理において、走査回数を増減させることで、セラミック基材10の底面部10bから接続パッド21の頂面32aまでの高さを変化させることができる。
【0065】
レーザー処理の工程が終了した後、金属突起部31の頂面31aおよび金属突起部32の頂面32aには、メッキ層35が形成される。メッキ層35は、例えば、従来公知の電解めっき法などを用いて形成することができる。電解めっき法を行うことで、セラミック基材10から露出している金属部の表面(例えば、頂面31a、頂面32aなど)にメッキ被膜を形成することができる。
【0066】
以上のように、本実施形態にかかる配線基板1は、レーザー処理を行うことによって、レーザー光が照射されたセラミック基材10の表面を削ることができる。これにより。セラミック基材10の表面に凹部10aを形成することができる。
【0067】
また、本実施形態にかかる配線基板1では、レーザー処理を行うことによって、セラミック基材10の露出面(すなわち、底面部10b、傾斜部15、並びに側壁12および13の表面)に粗面加工を施すことができる。
【0068】
セラミック基材10の露出面に粗面加工が施されることで、凹部10aに樹脂材料を流し込んだときの樹脂材料の流れ性を向上させることができる。これにより、硬化後の樹脂51にボイドが形成される可能性をさらに減らすことができる。
【0069】
セラミック基材10の露出面の粗さは、例えば、JIS B 0601(1994)、JIS B 0031(1994)に準拠した方法で規定することができる。
【0070】
この方法で規定されるセラミック基材10の露出面の算術平均線粗さRaは、0.4以上0.9以下の範囲内とすることができ、0.5以上0.8以下の範囲内であることが好ましい。また、この方法で規定されるセラミック基材10の露出面の十点平均線粗さRzは、2.0以上6.0以下の範囲内とすることができ、3.0以上5.0以下の範囲内であることが好ましい。
【0071】
また、この方法で規定されるセラミック基材10の露出面の算術平均面粗さSaは、0.7以上1.4以下の範囲内とすることができ、0.8以上1.3以下の範囲内であることが好ましい。また、この方法で規定されるセラミック基材10の露出面の十点平均面粗さSzは、9.0以上21.0以下の範囲内とすることができ、10.0以上20.0以下の範囲内であることが好ましい。
【0072】
また、レーザー処理を行うことによって、金属突起部31および32の頂面31aおよび32aにも粗面加工を施すことができる。これにより、メッキ層35を介して頂面31aおよび32a上に配置される半田バンプ36との接合強度を高めることができる。これにより、配線基板1上に搭載される半導体チップ40を、接続パッド21などを介してより確実に接続させることができる。
【0073】
図5には、上記のようなレーザー処理を行うことによって凹部10aが形成された配線基板1の表面を撮影した画像の一例を示す。図5では、左側に配線基板1の全体の画像を示す。図5の右側には、上方に、傾斜部15bを有する側面の領域を拡大した画像を示し、下方に、傾斜部15aを有する側面の領域を拡大した画像を示す。
【0074】
図5の右側下方に示す画像では、レーザー光の主走査方向Xと交差する位置にある傾斜部15aの表面に、傾斜の方向に沿った複数の溝16が形成されていることが確認できる。また、図5の右側上方に示す画像では、レーザー光の主走査方向Xに平行な位置にある傾斜部15bの表面には、傾斜の方向に沿った溝は形成されていないことが確認できる。
【0075】
図6には、レーザー顕微鏡(3次元形状測定器)(メーカー:キーエンス、品番:VK-X100)を用いて傾斜部15aおよび傾斜部15bの断面形状を測定した結果を示す。図6では、図5の「A」「B」「C」で示す位置の縦断面の断面形状の測定結果を、「A」「B」「C」としてそれぞれ示す。これらの結果から、凹部10aのいずれの側面にも傾斜部が形成されていることが確認できる。また、図6の「B」および「C」に示すように、溝16の頂部および底部のいずれにも傾斜が形成されていることが確認できる。
【0076】
図7には、溝16を有する傾斜部15aの一部を電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を示す。図7に示す例では、複数の溝16は、傾斜部15aの表面にスリット状に設けられている。なお、溝16の幅W1は、例えば、約10μm以上30μm以下とすることができる。また、溝16の長さL1は、例えば、約30μm以上100μm以下とすることができる。溝16の長さL1は、傾斜部15aの距離と同じであるか、それ以上であることが好ましい。
【0077】
(実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる配線基板1は、凹部10aを有しているセラミック基材10を備えている。凹部10aには、半導体チップ40などの半導体素子が搭載される素子搭載予定部40aが設けられている。素子搭載予定部40aには、少なくとも一つの金属部(具体的には、金属突起部31および32)が配置されている。金属部は、例えば、接続パッド21、および配線部22などを形成している。この配線基板1において、凹部10aの外周壁(側壁)11は、少なくとも凹部10aの開口部において、凹部10aの底面部10b側に向かって凹部10aの幅を狭める方向に傾斜している傾斜部15を有する。
【0078】
上記の構成によれば、凹部10aを取り囲むように設けられている外周壁11の少なくとも何れかに傾斜部15が設けられていることで、この傾斜部15を有する外周壁11側から凹部10a内に流し込まれた樹脂材料を、凹部10aの底面部10b側へ向けて流れやすくすることができる。これにより、凹部10a内に充填される樹脂中にボイドが形成される可能性を低減させることができる。
【0079】
本実施形態にかかる配線基板1において、傾斜部15の少なくとも一部(具体的には、傾斜部15a)には、傾斜に沿って複数の溝16が形成されている。この溝16は、傾斜部15の上端から下端にまで延びている。溝16は、セラミック基材10の表面に凹部10aを形成するために行うレーザー処理によって形成することができる。
【0080】
凹部10a内に樹脂材料を流し込む際には、溝16が形成されている傾斜部15aから流し込むことが好ましい。これにより、樹脂材料は、溝16の形状に沿って凹部10aの底面部10bへ向かってより流れ込みやすくなる。
【0081】
本実施形態では、凹部10aを取り囲むように設けられている外周壁11の少なくとも一辺の側面の傾斜部15aと、この一辺の側面に対向して位置する側面の傾斜部15aとに、溝16が形成されている。上述したように、凹部10aを形成するための通常のレーザー処理を用いることで、互いに対向する2つの側面に設けられている傾斜部15aの表面に溝16を形成することができる。
【0082】
しかし、本発明はこの構成に限定はされない。別の実施形態では、凹部10aの4つの側面の全てに溝16が形成されていてもよい。このような構成を有する配線基板は、例えば、セラミック基材の表面に対して実施するレーザー処理の主走査方向を変更することで得ることができる。
【0083】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した各実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 :配線基板
10 :セラミック基材
10a :(セラミック基材の)凹部
10b :(凹部の)底面部(底部)
11 :外周壁(凹部の側壁)
12 :側壁(絶縁性の側壁)
13 :側壁(絶縁性の側壁)
15 :傾斜部
16 :溝
21 :接続パッド
22 :配線部
31 :(接続パッドの)金属突起部(金属部)
32 :(配線部の)金属突起部(金属部)
35 :メッキ層
36 :半田バンプ
40 :半導体チップ(半導体素子)
40a :素子搭載予定部
41 :接続端子
50 :半導体モジュール
51 :樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7