(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】物体検出方法及び物体検出装置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/50 20060101AFI20240816BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20240816BHJP
G01S 17/86 20200101ALI20240816BHJP
【FI】
G01S17/50
G01S17/931
G01S17/86
(21)【出願番号】P 2021032404
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】池上 尭史
(72)【発明者】
【氏名】野田 邦昭
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103225(JP,A)
【文献】国際公開第2013/111310(WO,A1)
【文献】特開2016-101889(JP,A)
【文献】特開2007-137139(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112363131(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/51
G01S 13/00-13/95
G01S 17/00-17/95
G08G 1/16
B60R 21/0134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の位置である自己位置を検出し、
前記自車両の周囲に存在する物体の前記自車両に対する位置を検出し、
検出された前記自車両の自己位置及び前記物体の位置に基づいて、前記物体の移動軌跡を検出し、
前記移動軌跡上に静止物体が存在するか否かを判定し、
前期移動軌跡上に静止物体が存在しないと判定した場合に、前記物体を移動物体として出力する
ことを特徴とする物体検出方法。
【請求項2】
前記移動軌跡は、前記自車両の自己位置又は前記物体の過去の位置から、前記物体の現在の位置までの移動軌跡である
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出方法。
【請求項3】
前記移動軌跡は、前記自車両の自己位置又は前記物体の過去の位置から、前記物体の現在の位置までの移動軌跡に基づいて推定された、前記物体の移動予測軌跡である
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出方法。
【請求項4】
前記自車両に搭載された測距センサを用いて、前記物体の前記自車両に対する位置を示す測距点を検出し、
検出された前記測距点をクラスタリングして物標化することにより、前記自車両の周囲に存在する物体の前記自車両に対する位置を検出する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の物体検出方法。
【請求項5】
前記移動軌跡上の測距点密度を算出し、
算出した前記測距点密度に基づいて、前記移動軌跡上に静止物体が存在するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項4に記載の物体検出方法。
【請求項6】
前記測距点密度が予め設定されたしきい値以上である場合には、前記移動軌跡上に静止物体が存在すると判定し、
前記測距点密度が前記しきい値より小さい場合には、前記移動軌跡上に静止物体が存在しないと判定する
ことを特徴とする請求項5に記載の物体検出方法。
【請求項7】
前記移動軌跡上に静止物体が存在すると判定した場合に、前記物体の移動速度の周期と前記自車両の移動速度の周期に相関があるか否かを判定し、
前記物体の移動速度の周期と前記自車両の移動速度の周期に相関がないと判定した場合に、前記物体を移動物体として出力する
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の物体検出方法。
【請求項8】
前記移動軌跡上に静止物体が存在すると判定した場合に、前記自車両の移動速度を所定の周期で変化させ、
前記自車両の移動速度を所定の周期で変化させた時の前記物体の移動速度の周期と、所定の周期で変化させた前記自車両の移動速度の周期に相関があるか否かを判定し、
前記自車両の移動速度を所定の周期で変化させた時の前記物体の移動速度の周期と、所定の周期で変化させた前記自車両の移動速度の周期に相関がないと判定した場合に、前記物体を移動物体として出力する
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の物体検出方法。
【請求項9】
前記移動軌跡上に静止物体が存在すると判定した場合に、前記物体の位置を検出するサンプリング周期を変化させ、
前記サンプリング周期の変化と前記物体の移動速度の変化の間に相関があるか否かを判定し、
前記サンプリング周期の変化と前記物体の移動速度の変化の間に相関がないと判定した場合に、前記物体を移動物体として出力する
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の物体検出方法。
【請求項10】
自車両の位置である自己位置を検出するための第1のセンサと、
前記自車両の周囲に存在する物体の前記自車両に対する位置を検出するための第2のセンサと、
コントローラと、
を備える物体検出装置であって、
前記コントローラは、
前記第1のセンサを用いて検出された前記自車両の自己位置及び前記第2のセンサを用いて検出された前記物体の位置に基づいて、前記物体の移動軌跡を検出し、
前記移動軌跡上に静止物体が存在するか否かを判定し、
前期移動軌跡上に静止物体が存在しないと判定した場合に、前記物体を移動物体として出力する
ことを特徴とする物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の物体検出方法及び物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、道路に沿って設置された壁上物体を移動物体として誤認することを低減する物体識別方法が開示されている。特許文献1の物体識別方法は、クラスタを構成する測距点群の自車両の進行方向に対する傾きと、認識した道路境界の自車両の進行方向に対する傾きの差が予め設定した閾値以内である場合に、測距点群は道路に沿って設置された壁上物体であると判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1は、道路に沿って設置された柵やガードレールのような、道路に沿って設置され、同一形状の構造の繰り返しパターンを有する静止物体を考慮していない。このような静止物体の測距データを自車両の走行中に取得すると、ストロボ効果によって、道路に沿って設置された静止物体の一部を移動物体として誤認してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、道路に沿って設置された静止物体を移動物体として誤認することを低減することができる物体検出方法及び物体検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る物体検出方法は、自車両の位置である自己位置を検出し、自車両の周囲に存在する物体の自車両に対する位置を検出し、検出された自車両の自己位置及び物体の位置に基づいて、物体の移動軌跡を検出し、物体の移動軌跡上に静止物体が存在するか否かを判定し、物体の移動軌跡上に静止物体が存在しないと判定した場合に、物体を移動物体として出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、道路に沿って連続して設置された静止物体を移動物体として誤認することを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る物体検出装置、及びその周辺機器の構成を示すブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施形態に係る物体検出装置の誤検出の例を説明するための図である。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aのシーンにおいて、自車両の前方に存在する物体を検出した際の物体検出結果の例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、誤検出判定部の機能を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る物体検出装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1実施形態の変形例に係る物体検出装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る物体検出装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明を適用した第1実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
[物体検出装置の構成]
図1を参照して、本実施形態に係る物体検出装置及びその周辺機器の構成を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る物体検出装置10は、車両制御装置30に接続されている。物体検出装置10及び車両制御装置30は、自動運転機能を有する車両に適用されてもよく、自動運転機能を有しない車両に適用されてもよい。また、物体検出装置10及び車両制御装置30は、は、自動運転と手動運転とを切り替えることが可能な車両に適用されてもよい。なお、本実施形態における自動運転とは、例えば、ブレーキ、アクセル、ステアリングなどのアクチュエータの内、少なくとも何れかのアクチュエータが乗員の操作なしに制御されている状態のことを指す。そのため、その他のアクチュエータが乗員の操作により作動していたとしても構わない。また、自動運転とは、加減速制御、横位置制御などのいずれかの制御が実行されている状態であればよい。また、本実施形態における手動運転とは、例えば、ブレーキ、アクセル、ステアリングを乗員が操作している状態のことを指す。物体検出装置10は、測距センサ11と、車速センサ12と、角速度センサ13と、制御装置20とを備える。
【0011】
測距センサ11は、自車両に搭載され、自車両の周囲に存在する物体の測距データを取得する。測距データには、測距点までの距離に関する情報、測距点の高さに関する情報、及び測距点の方向に関する情報が含まれる。ここで、本実施形態における物体とは、道路に沿って設置された柵、ガードレール、壁などを含む静止物体でもよく、他車両、バイク、自転車、歩行者を含む移動物体でもよい。測距センサ11は、例えばレーダ、ライダーを用いることができる。
【0012】
測距センサ11の一例であるレーダは、自車両の前方などの、自車両周囲の任意の方向の所定領域に対して、走査しつつ間欠的にレーザ光(出射波)を照射し、物体で反射した光(反射波)をそれぞれ受光することによって、自車両の周囲の物体を各測距点として検出する。測距点とは、レーザ光の反射光によって特定される物体の一部が存在する位置を示す。
【0013】
また、測距センサ11の一例であるライダーは、自車両周囲の任意の方向の所定領域に対して、走査しつつ間欠的にレーザ光よりも波長の短い電磁波を照射し、前述したレーダと同様に、物体で反射した電磁波を自車両の周囲の物体を各測距点として検出する。なお、測距センサ11の数及び設置する位置は特に限定されず、測距センサ11として複数のセンサを組み合わせてもよく、測距センサ11として異なる種類のセンサを組み合わせてもよい。
【0014】
車速センサ12は、自車両に搭載され、自車両の走行速度を検出し、検出された自車両の走行速度を制御装置20に出力する。角速度センサは、自車両に搭載され、自車両の角速度を検出し、検出された角速度を制御装置20に出力する。なお、車速センサ12及び角速度センサ13は、車輪の回転数と操舵角を検出するセンサであってもよいし、車輪の回転速度やステアリングの操舵角を検出するセンサであってもよい。
【0015】
制御装置20は、自車両の自己位置及び自車両の周囲に存在する物体の位置を検出し、検出された自車両の自己位置及び物体の位置に基づいて、物体の移動軌跡を検出し、物体の移動軌跡上に静止物体が存在するか否かを判定し、物体の移動軌跡上に静止物体が存在しないと判定した場合に、物体を移動物体として出力する機能を有する。
【0016】
制御装置20は、CPU(中央処理装置)、メモリ(記憶部)、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには、物体検出装置10として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、物体検出装置10が備える複数の情報処理回路として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって物体検出装置10が備える複数の情報処理回路を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。制御装置20は、複数の情報処理回路として、物体検出部21と、オドメトリ計測部22と、トラッキング部23と、誤検出判定部24と、出力部25と、を備える。
【0017】
物体検出部21は、自車両の周囲に存在する物体の測距センサ11に対する位置(すなわち自車両に対する位置であり、以下では自車両に対する位置と記載する)を検出する。具体的には、物体検出部21は、自車両に搭載された測距センサ11を用いて、自車両の周囲に存在する物体の自車両に対する位置を示す測距データを検出し、検出された各測距点をクラスタリングして物標化することにより、自車両の周囲に存在する物体の自車両に対する位置を検出する。クラスタリングとは、検出された複数の測距点に基づき、測距点間の距離が近い測距点の集合を点群として纏める処理を示す。クラスタリング方法として、「Kd-tree」などを用いて近傍探索し、設定した距離の閾値内に含まれる点をクラスタリングしていく手法を用いることができる。他のクラスタリング方法として、例えば「Nearest Neighbor法」や「K-Means法」などの既存の手法を用いることができる。クラスタリングの具体的な方法には特に限定はなく、公知のクラスタリング方法を用いることができる。
【0018】
オドメトリ計測部22は、オドメトリデータを取得して、自車両の位置である自己位置を検出する。オドメトリ計測部22は、オドメトリデータとして、例えば、車速センサ12から自車両の走行速度を取得して、角速度センサ13から自車両の角速度を取得する。そして、取得した自車両の走行速度及び角速度から、自車両の移動距離と移動方向を求めるいわゆるオドメトリによって、ある位置を原点とする相対座標系での自車両の位置及び姿勢(方位角)を推定することにより、自車両の位置である自己位置を検出する。例えば、物体検出装置10が起動された時点や処理がリセットされた時点の自車両の位置を原点とし、自車両の方位角を0°として自車両の位置及び姿勢を検出する。なお、オドメトリ計測部22は、車輪の回転数と操舵角を用いて自車両の位置及び姿勢を検出してもよいし、車輪の回転速度やステアリングの操舵角を用いて自車両の位置及び姿勢を検出してもよい。このように、オドメトリに用いられるパラメータは、特に限定されない。
【0019】
トラッキング部23は、検出された自車両の自己位置及び物体の位置に基づいて、物体の移動軌跡を検出する。トラッキング部23は、物体検出部21によって検出された物体をオドメトリ座標上で追跡するトラッキング処理を実行する。具体的には、トラッキング部23は、異なる時刻において検出された物体の自車両に対する位置及び自車両の自己位置に基づいて、異なる時刻に検出された物体の同一性の検証(対応付け)を行う。そして、その対応付けをもとに、物体が移動物体であるか否かを判定する。そして、物体が移動物体であると判定した場合に、物体の移動軌跡、物体の速度ベクトル及び物体の移動予測軌跡を算出する。算出された物体の移動軌跡、速度ベクトル、移動予測軌跡の情報は、マイクロコンピュータ内のメモリに記憶され、後述する誤検出判定に用いられる。なお、トラッキング部23は、自車両の移動速度履歴と、物体の移動速度履歴をさらに記憶してもよい。
【0020】
ここで、
図2A及び
図2Bを参照して、自車両の走行中に道路に沿って設置された静止物体を検出する際に生じる問題点について説明する。
図2Aは、片側2車線の道路の中央分離帯に柵が設置されている道路において、自車両が右側車線を走行しているシーンを示す。
図2Aに示すシーンにおいて、自車両に搭載されたライダーやカメラによって自車両の周囲に存在する物体を検出すると、道路に沿って設置されている柵(静止物体)の一部に、実際には存在しないはずの架空の移動物体(ゴースト)を誤検出してしまう場合がある。これはストロボ効果によるものであり、自車両の走行中に、道路に沿って設置された、例えば柵を一定のサンプリング周期で検出した場合に、同一形状の構造の繰り返しパターンを有する柵の区別ができなくなり、柵の一部を移動物体として誤検出してしまうためである。なお、道路に沿って設置された、例えば車線分離標のような一定距離間隔で配置されたポールや、一定距離間隔で配置された杭同士を接続して形成した柵のように、所定の空間周波数を有する物体群であっても同様に、架空の移動物体(ゴースト)を誤検出してしまう場合があり、
図2Aに示すような柵に限らず道路に沿って一定間隔で物体が存在する場合には同様の誤検出が発生する可能性が有る。
【0021】
図2Bは、
図2Aのシーンにおいて、測距センサ11を用いて自車両の前方に存在する柵を検出した際の、物体検出結果の一例を示す。
図2Bの長方形や白丸の枠は、測距点群が物標化された各物体を示し、各物体から伸びた線分は、各物体の速度ベクトルを示す。
図2Bに示すように、実際には柵が存在する位置に、架空の移動物体(ゴースト)が誤検出されてしまっている。このような物体検出結果に基づいて自車両の走行制御を実行すると、誤検出されたゴーストの位置、速度ベクトルの向きなどが、自車両の走行制御に影響を及ぼすおそれがある。本実施形態では、物体の移動軌跡上に静止物体が存在するか否かを判定し、物体の移動軌跡上に静止物体が存在する場合に、物体は誤検出されたゴーストであると判定し、移動物体情報から除外する。これにより、道路に沿って設置された静止物体を移動物体であると誤認することを低減することができる。
【0022】
誤検出判定部24は、検出された物体の移動軌跡上に静止物体が存在するか否かを判定する。そして、物体の移動軌跡上に静止物体が存在すると判定した場合には、物体は移動物体ではないと判断し、物体を移動物体情報から除外する。以下、
図3を参照して、誤検出判定方法の一例を説明する。
【0023】
[誤検出判定方法]
図3は、
図2Aのシーンにおいて、道路に沿って設置された柵の測距データを検出したときの物体検出結果と、物体の移動軌跡及び移動予測軌跡とを示すイメージ図である。このとき、道路に沿って設置された柵の一部に検出されている物体は、誤検出された架空の移動物体(ゴースト)である。
【0024】
通常、自車両が測距センサ11を用いて周囲に存在する物体の測距データを検出する場合には、自車両に近い位置に存在する物体ほど正確に測距データを検出することができる。特に、測距センサ11が、自車両周囲の所定範囲に走査しつつ間欠的に出射波を照射し、物体で反射した反射波をそれぞれ受光することによって、自車両の周囲の物体を各測距点として検出するセンサである場合には、遠方ほど測距点の間隔が広く、近傍ほど測距点の間隔が狭くなる。したがって、
図3に示すように、道路に沿って設置された柵の測距データを検出した場合には、自車両に近い位置ほど多くの測距点が検出される。この場合、誤検出判定部24は、自車両の自己位置又は物体の過去の位置から、物体の現在の位置までの移動軌跡上の測距点密度を算出し、算出した測距点密度に基づいて、移動軌跡上に静止物体が存在するか否かを判定することができる。なお、測距点密度を算出する際には、参照する移動軌跡の長さを固定してもよく、参照する過去の時間長を固定してもよい。
【0025】
移動軌跡上の測距点密度が大きいということは、すなわち、物体の移動軌跡上に静止物体が存在する可能性が高いことを示す。そして、物体の移動軌跡上に静止物体が存在するということは、検出された物体が、道路に沿って設置された静止物体の一部を移動物体として誤検出している可能性が高いことを示す。したがって、誤検出判定部24は、算出した測距点密度があらかじめ設定された閾値以上である場合に、移動軌跡上に静止物体が存在すると判定する。そして、算出した測距点密度が閾値より小さい場合に、移動軌跡上に静止物体が存在しないと判定する。一方、物体の移動軌跡上の測距点密度が閾値以上である場合には、誤検出判定部24は、物体を移動物体情報から除外する。これにより、道路に沿って設置された静止物体を移動物体と誤認することを低減できる。
【0026】
出力部25は、自車両の周囲に存在する物体の移動物体情報を、車両制御装置30に出力する。出力部25は、物体の移動軌跡上に静止物体が存在しないと判定した場合に、物体を移動物体として出力する。
【0027】
車両制御装置30は、物体検出装置10から取得した移動物体情報に基づいて、自車両を制御する。例えば、車両制御装置30は、移動物体情報に基づいて、自車両と移動物体との間隔が一定距離以上となるように、加速度、減速度、及び車速を実現するための駆動機構の動作、及びブレーキ動作を制御する。なお、駆動機構の動作は、エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車にあっては電動モータの動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と電動モータとのトルク配分も含む。また、移動物体情報に基づいて、自車両が車線変更を行う場合には、車両制御装置30は、ステアリングアクチュエータの動作を制御して、車輪の動作を制御することで、自車両の転回制御を実行する。
【0028】
[物体検出処理の手順]
次に、
図4に示すフローチャートを参照して、本実施形態に係る物体検出装置10による物体検出処理の手順の一例を説明する。
【0029】
まず、ステップS10において、測距センサ11は、自車両の周囲に存在する物体の測距データを取得する。処理はステップS11に進み、物体検出部21は、ステップS10で取得された測距データをクラスタリングして物標化することにより、自車両の周囲に存在する物体の自車両に対する位置を検出する。
【0030】
処理はステップS12に進み、オドメトリ計測部22は、オドメトリデータを取得して、自車両の位置である自己位置を検出する。オドメトリ計測部22は、オドメトリデータとして、例えば、車速センサ12から自車両の走行速度を取得して、角速度センサ13から自車両の角速度を取得する。そして、取得した自車両の走行速度及び角速度から、自車両の移動距離と移動方向を求めるいわゆるオドメトリによって、ある位置を原点とする相対座標系での自車両の位置及び姿勢を推定することにより、自車両の位置である自己位置を検出する。
【0031】
処理はステップS13に進み、トラッキング部23は、物体検出部21によって検出された物体をオドメトリ座標上で追跡するトラッキング処理を実行する。トラッキング部23は、物体が移動物体であるか否かを判定する。そして、物体が移動物体であると判定した場合(ステップS13でYES)には、処理はステップS14に進む。一方、物体が移動物体ではないと判定した場合(ステップS13でNO)には、
図4の処理を終了する。ステップS14において、トラッキング部23は、物体の移動軌跡、物体の速度ベクトルを算出する。
【0032】
処理はステップS15に進み、誤検出判定部24は、ステップS14で算出された物体の移動軌跡と、ステップS10で検出された測距データとを比較する。誤検出判定部24は、自車両の自己位置又は物体の過去の位置から、物体の現在の位置までの移動軌跡上の測距点密度を算出する。処理はステップS16に進み、誤検出判定部24は、移動軌跡上の測距点密度が予め設定された閾値以上か否かを判定する。そして、移動軌跡上の測距点密度が閾値以上である場合(ステップS16でYES)には、処理はステップS17に進む。一方、移動軌跡上の測距点密度が閾値より小さい場合(ステップS15でNO)には、処理はステップS18に進む。
【0033】
ステップS17において、誤検出判定部24は、物体を移動物体情報から除外して、ステップS18に進む。ステップS18において、出力部25は、移動物体情報を車両制御装置30に出力して、
図4の処理を終了する。
【0034】
[第1実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る物体検出方法及びその装置では、自車両の位置である自己位置を検出し、自車両の周囲に存在する物体の前記自車両に対する位置を検出し、検出された自車両の自己位置及び物体の位置に基づいて、物体の移動軌跡を検出し、物体の移動軌跡上に静止物体が存在するか否かを判定し、物体の移動軌跡上に静止物体が存在しないと判定した場合に、物体を移動物体として出力する。これにより、移動物体であると判定した物体の移動軌跡上に静止物体が存在する場合に、物体を移動物体として出力することを防止でき、道路に沿って設置された静止物体を移動物体として誤認することを低減できる。
【0035】
また、本実施形態に係る物体検出方法及びその装置では、物体の移動軌跡は、自車両の自己位置又は物体の過去の位置から、物体の現在の位置までの移動軌跡である。すなわち、自車両の自己位置又は自車両の周囲に存在する物体の過去の位置から、物体の現在の位置までの移動軌跡を算出する。そして、算出された移動軌跡上に、静止物体が存在するか否かを判定する。これにより、道路に沿って設置された静止物体が、走行している自車両の前方で途切れている場合であっても、道路に沿って設置された静止物体を移動物体と誤認することを低減できる。
【0036】
さらに、本実施形態に係る物体検出方法及びその装置では、自車両に搭載された測距センサを用いて、物体の前記自車両に対する位置を示す測距点を検出し、検出された測距点をクラスタリングして物標化することにより、自車両の周囲に存在する物体の自車両に対する位置を検出する。そして、移動軌跡上の測距点密度を算出し、算出した測距点密度に基づいて、移動軌跡上に静止物体が存在するか否かを判定する。移動軌跡上の測距点密度が所定値以上である場合には、移動軌跡上に静止物体が存在すると判定し、測距点密度が所定値より小さい場合には、移動軌跡上に静止物体が存在しないと判定する。物体の移動軌跡上の測距点密度に基づいて、移動軌跡上に静止物体が存在するか否かを判定することにより、移動軌跡上に測距点を誤検出した場合に、移動軌跡上に静止物体が存在すると誤判定することを抑制できる。
【0037】
[変形例]
第1実施形態に係る物体検出方法は、物体の移動軌跡上に静止物体が存在すると判定した場合に、物体を移動物体情報から除外する。しかしながら、物体の移動軌跡上に静止物体が存在すると判定した場合に、物体の移動速度の周期と、自車両の移動速度の周期に相関があるか否かを判定し、物体の移動速度の周期と自車両の移動速度の周期に相関がある場合に、物体を移動物体情報から除外してもよい。
【0038】
上述したように、自車両が走行中に、道路に沿って設置された柵などの繰り返しパターンのある静止物体を検出した際に、柵(静止物体)の一部が移動物体として誤検出されてしまうのは、ストロボ効果によるものである。この場合、誤検出された移動物体(ゴースト)の速度は、繰り返しパターンの空間的な繰り返し周期と、測距点を検出するサンプリング周期と、自車両の走行速度の関係で決定される。したがって、物体の移動速度の周期と、自車両の移動速度の周期の相関が高い場合には、物体はゴーストであり、道路に沿って設置された静止物体を移動物体として誤認している可能性が高い。
【0039】
以下、
図5に示すフローチャートを参照して、第1実施形態に係る物体検出方法の変形例を説明する。
図5のステップS10~S16、ステップS18は、
図4のステップS10~S16、ステップS18と同じ動作であり、説明を省略する。ただし、
図5のステップS16においては、移動軌跡上の測距点密度が閾値以上である場合(ステップS16でYES)には、処理はステップS20に進む。
【0040】
ステップS20において、誤検出判定部24は、移動物体の移動速度履歴と、自車両の移動速度履歴を比較する。具体的には、誤検出判定部24は、物体の移動速度の周期と自車両の移動速度の周期を比較する。
【0041】
処理はステップS21に進み、誤検出判定部24は、物体の移動速度の周期と自車両の移動速度の周期に相関があるか否かを判定する。なお、誤検出判定部24は、自車両の速度が変化するタイミングと、物体の速度が変化するタイミングが一致する場合に、物体の移動速度の周期と自車両の移動速度の周期に相関がある、と判定する。そして、自車両の速度が変化するタイミングと、物体の速度が変化するタイミングが一致しない場合に、物体の移動速度の周期と自車両の移動速度の周期に相関がないと判定する。誤検出判定部24は、物体の移動速度の周期と自車両の移動速度の周期に相関があると判定した場合(ステップS21でYES)には、ステップS22に進む。一方、物体の移動速度の周期と自車両の移動速度の周期に相関がないと判定した場合(ステップS21でNO)には、ステップS18に進む。
【0042】
なお、誤検出判定部24は、移動軌跡上に静止物体が存在すると判定した場合に、自車両の移動速度を所定の周期で変化させ、自車両の移動速度を所定の周期で変化させた時の物体の移動速度の周期と、所定の周期で変化させた自車両の移動速度の周期に相関があるか否かを判定してもよい。
【0043】
ステップS22において、誤検出判定部24は、物体を移動物体情報から除外して、ステップS18に進む
【0044】
以上説明したように、第1実施形態に係る物体検出方法の変形例では、移動軌跡上に静止物体が存在すると判定した場合に、物体の移動速度の周期と自車両の移動速度の周期に相関があるか否かを判定し、物体の移動速度の周期と自車両の移動速度の周期に相関がないと判定した場合に、物体を移動物体として出力する。これにより、移動軌跡上に静止物体が存在すると判定すると判定した場合に、より精度よく、道路に沿って設置された静止物体を移動物体と誤認することを低減できる。
【0045】
また、第1実施形態に係る物体検出方法の変形例では、移動軌跡上に静止物体が存在すると判定した場合に、自車両の移動速度を所定の周期で変化させ、自車両の移動速度を所定の周期で変化させた時の物体の移動速度の周期と、所定の周期で変化させた前記自車両の移動速度の周期に相関があるか否かを判定し、自車両の移動速度を所定の周期で変化させた時の物体の移動速度の周期と、所定の周期で変化させた自車両の移動速度の周期に相関がないと判定した場合に、物体を移動物体として出力する。自車両の移動速度を所定の周期で変化させることにより、自車両の移動速度の周期と、物体の移動速度の周期の相関を判定しやすくなる。したがって、さらに精度よく、道路に沿って設置された静止物体を移動物体と誤認することを低減できる。
【0046】
また、上述したように、誤検出された移動物体(ゴースト)の速度は、繰り返しパターンの空間的な繰り返し周期と、測距点を検出するサンプリング周期と、自車両の走行速度の関係で決定される。したがって、物体の移動速度の周期と、測距点(物体の位置)を検出するサンプリング周期の相関が高い場合にも、物体はゴーストであり、道路に沿って設置された静止物体を移動物体として誤認している可能性が高いと判断することができる。
【0047】
したがって、誤検出判定部24は、移動軌跡上に静止物体が存在すると判定した場合に、物体の位置を検出するサンプリング周期を変化させ、サンプリング周期の変化と物体の移動速度の変化の間に相関があるか否かを判定し、サンプリング周期の変化と前記物体の移動速度の変化の間に相関がないと判定した場合に、物体を移動物体情報として出力しても良い。これにより、移動軌跡上に静止物体が存在すると判定すると判定した場合に、より精度よく、道路に沿って設置された静止物体を移動物体と誤認することを低減できる。
【0048】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において、第1実施形態と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
第1実施形態に係る物体検出方法は、自車両の自己位置又は物体の過去の位置から、物体の現在の位置までの移動軌跡上の測距点密度を算出した。しかし、例えば道路に沿って設置された柵(静止物体)が一度途切れ、自車両よりも前方の地点から再度道路に沿って柵(静止物体)が設置されているような場所で物体を検出した場合には、自車両の自己位置又は物体の過去の位置から物体の現在の位置までの移動軌跡上に、柵(静止物体)が存在しない区間が生じる。すなわち、自車両の自己位置又は物体の過去の位置から物体の現在の位置までの移動軌跡上に、測距点が検出されない区間が生じる。この場合、移動軌跡上の測距点密度の値は小さくなるため、移動軌跡上に静止物体がないと判定してしまい、道路に沿って設置された静止物体を移動物体として誤認してしまうおそれがある。
【0050】
そこで、第2実施形態に係る物体検出方法では、自車両の自己位置又は物体の過去の位置から、物体の現在の位置までの移動軌跡に基づいて推定された、物体の移動予測軌跡上の測距点密度を算出し、算出された移動予測軌跡上の測距点密度に基づいて、移動予測軌跡上に静止物体が存在するか否かを判定する。第2実施形態に係る物体検出装置の構成は、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0051】
[物体検出処理の手順]
図6に示すフローチャートを参照して、本実施形態に係る物体検出装置10による物体検出処理の手順の一例を説明する。
図6のステップS10~S14、ステップS18は、
図4のステップS10~S14、ステップS18と同じ動作であり、説明を省略する。
【0052】
ステップS30において、トラッキング部23は、ステップS14で算出した物体の移動軌跡及び速度ベクトルに基づいて、物体の移動予測軌跡を算出する。処理はステップS31に進み、誤検出判定部24は、ステップS30で算出された物体の移動予測軌跡と、ステップS10で検出された測距データとを比較する。誤検出判定部24は、物体の移動予測軌跡上の測距点密度を算出する。処理はステップS32に進み、誤検出判定部24は、物体の移動予測軌跡上の測距点密度が予め設定された閾値以上か否かを判定する。そして、移動予測軌跡上の測距点密度が閾値以上である場合(ステップS32でYES)には、処理はステップS33に進む。一方、移動軌跡上の測距点密度が閾値より小さい場合(ステップS32でNO)には、処理はステップS18に進む。
【0053】
ステップS33において、誤検出判定部24は、物体を移動物体情報から除外し、ステップS18に進む。
【0054】
[第2実施形態の効果]
以上説明したように、第2実施形態に係る物体検出方法及びその装置では、物体の移動軌跡は、自車両の自己位置又は物体の過去の位置から、前記物体の現在の位置までの移動軌跡に基づいて推定された、前記物体の移動予測軌跡である。自車両の自己位置又は物体の過去の位置から、物体の現在の位置までの移動軌跡を検出し、移動軌跡に基づいて、物体の移動予測軌跡を推定する。そして、推定された移動予測軌跡上に、静止物体が存在するか否かを判定する。これにより、道路に沿って設置された静止物体が一度途切れて、自車両よりも前方の地点から再度道路に沿って静止物体が設置されている場合であっても、道路に沿って設置された静止物体を移動物体と誤認することを低減できる。
【0055】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0056】
22 オドメトリ計測部
21 物体検出部
23 トラッキング部
24 誤検出判定部
25 出力部