(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】医療用活栓
(51)【国際特許分類】
A61M 39/22 20060101AFI20240816BHJP
A61M 39/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A61M39/22 100
A61M39/02
(21)【出願番号】P 2021062634
(22)【出願日】2021-04-01
(62)【分割の表示】P 2018502989の分割
【原出願日】2017-02-09
【審査請求日】2021-04-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2016040273
(32)【優先日】2016-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中神 裕之
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】松本 一樹
【合議体】
【審判長】井上 哲男
【審判官】村上 哲
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/149566(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/049826(WO,A1)
【文献】特開平10-332001(JP,A)
【文献】特開2007-143813(JP,A)
【文献】特開平11-342209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/22
A61M 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の本体と、
前記本体の側面に周方向に互いに間隔をおいてそれぞれ接続された第1管路、第2管路及び第3管路と、
前記本体の内周面により外周面が支持され、前記本体の
軸方向に延びる柱状で且つ前記本体に対して相対的に回転可能な栓体とを備え、
前記第3管路は、
前記本体の軸方向に広がり且つ前記第3管路の延びる方向に延びる隔壁によって互いに区画された前記第1管路側の第1の部分と、前記第2管路側の第2の部分とを有し、
前記栓体を第1の位置とした場合に、第1流路、第2流路、第3流路及び第4流路が形成され、
前記第1流路は、前記栓体に形成され、前記第1管路と前記第3管路の前記第1の部分とを接続し、
前記第2流路は、前記栓体に形成され、前記第2管路と前記第3管路の前記第2の部分とを接続し、
前記第3流路は、前記第3管路に形成され、
前記第4流路は、前記栓体に形成され、前記第1流路と前記第2流路とを接続し、
前記栓体を第1の位置とした場合に、前記栓体における、前記第1管路の延長線上に位置する面の少なくとも一部は、前記第1管路の延長線と直交せず、前記第3管路側に向かう傾斜面となり、前記第2管路の延長線上に位置する面の少なくとも一部は、前記第2管路の延長線と直交せず、前記第3管路側に向かう傾斜面となり、且つ、前記第1管路と前記第1流路との境界部に、前記第1流路側の下面が前記第1管路側の下面よりも低い位置となった段差が形成され、前記第2管路と前記第2流路との境界部に、前記第2流路側の下面が前記第2管路側の下面よりも低い位置となった段差が形成され、
前記第3管路は、前記本体の側面に接続された筒状部分と、前記筒状部分の端部に固定され、弁体を保持するハウジングとを有し、
前記隔壁は、前記第3管路における前記筒状部分及び前記ハウジングの内側に位置して
おり、
前記第3管路の前記筒状部分は、基端側に比して内径が大きい第3管路拡径部を末端側に有し、
前記第3管路拡径部は、前記ハウジング側に向かって前記ハウジングの内径と一致するまで内径が次第に大きくなり、
前記隔壁の前記弁体側の端部は、前記本体の軸方向と直交する断面視において半円形状である、医療用活栓。
【請求項2】
円筒状の本体と、
前記本体の側面に周方向に互いに間隔をおいてそれぞれ接続された第1管路、第2管路及び第3管路と、
前記本体の内周面により外周面が支持され、前記本体の
軸方向に延びる柱状で且つ前記本体に対して相対的に回転可能な栓体とを備え、
前記第3管路は、
前記本体の軸方向に広がり且つ前記第3管路が延びる方向に延びる隔壁によって互いに区画された前記第1管路側の第1の部分と、前記第2管路側の第2の部分とを有し、
前記栓体を第1の位置とした場合に、第1流路、第2流路、第3流路及び第4流路が形成され、
前記第1流路は、前記栓体に形成され前記第1管路と前記第3管路の前記第1の部分とを接続し、
前記第2流路は、前記栓体に形成され前記第2管路と前記第3管路の前記第2の部分とを接続し、
前記第3流路は、前記第3管路に形成され、
前記第4流路は、前記栓体に形成され前記第1流路と前記第2流路とを接続し、
前記栓体を第1の位置とした場合に、前記栓体における、前記第3管路の前記第1の部分の延長線上に位置する面の少なくとも一部は、前記第3管路から前記第1管路に向かって前記栓体の径方向外側に傾斜する傾斜面となり、前記第3管路の前記第2の部分の延長線上に位置する面の少なくとも一部は、前記第3管路から前記第2管路に向かって前記栓体の径方向外側に傾斜する傾斜面となり、且つ、前記第1管路と前記第1流路との境界部に、前記第1流路側の下面が前記第1管路側の下面よりも低い位置となった段差が形成され、前記第2管路と前記第2流路との境界部に、前記第2流路側の下面が前記第2管路側の下面よりも低い位置となった段差が形成され、
前記第3管路は、前記本体の側面に接続された筒状部分と、前記筒状部分の端部に固定され、弁体を保持するハウジングとを有し、
前記隔壁は、前記第3管路における前記筒状部分及び前記ハウジングの内側に位置して
おり、
前記第3管路の前記筒状部分は、基端側に比して内径が大きい第3管路拡径部を末端側に有し、
前記第3管路拡径部は、前記ハウジング側に向かって前記ハウジングの内径と一致するまで内径が次第に大きくなり、
前記隔壁の前記弁体側の端部は、前記本体の軸方向と直交する断面視において半円形状である、医療用活栓。
【請求項3】
前記栓体を前記第1の位置とした場合に、前記栓体における、前記第1管路の延長線上に位置する前記傾斜面の延長線は、前記隔壁の前記第1管路側の側面に達し、前記栓体における、前記第2管路の延長線上に位置する前記傾斜面の延長線は、前記隔壁の前記第2管路側の側面に達する、請求項1又は2に記載の医療用活栓。
【請求項4】
前記栓体における前記第1流路となる面と前記第4流路となる面との接続部は曲面である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の医療用活栓。
【請求項5】
前記栓体を第1の位置とした場合に、前記本体の内面における前記第1流路及び前記第2流路を形成する部分は外側に凸であり、前記栓体の外面における前記第1流路及び前記第2流路を形成する部分は内側に凸である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の医療用活栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は医療用活栓に関し、特に薬液の注入に用いることができる医療用活栓に関する。
【背景技術】
【0002】
輸液回路及び血液回路等の医療用回路に、流路を切り換えるための三方活栓等の医療用活栓が接続されている場合がある。三方活栓を接続することにより、例えば、点滴等の際に、主流路を流れる薬液に側流路から別の薬液を容易に導入することができる。
【0003】
一般的な三方活栓は、直線的に配置された第1の管路及び第2の管路と、これに交差する方向に配置された第3の管路とを有している。3つの管路は円筒形の本体に接続され、本体の内側には円柱状の栓体が回転可能に挿入されている。栓体には内部を貫通するT字状の流通孔が設けられており、栓体を回転させて流通孔の位置を調整することにより、3つの管路の間を流通状態にしたり、遮断状態にしたりすることができる(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
しかし、このような三方活栓は、栓体を貫通するT字状の流通孔によってデッドスペースが生じるため、例えば第3の管路から注入した薬液の一部がデッドスペースに滞留してしまう。
【0005】
薬液の滞留を防止することを目的として、栓体の外周面に溝を設け、第1の管路からの薬液により第3の管路をフラッシングする構成の三方活栓が検討されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0006】
しかし、栓体の外周面に溝部を設けた場合においても、第3管路の本体側の部分にしか薬液が流れず、第3管路全体をフラッシングすることは困難である。このため、薬液の滞留を解消する効果が十分ではない。三方活栓に限らず他の医療用活栓についても同様である。
【0007】
そこで、薬液の滞留を防止することを目的として、第3の管路内に隔壁を設け、第1の管路から流れてきた薬液や血液が隔壁を乗り越えて、第2の管路に流れるような構成の三方活栓が検討されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-046349号公報
【文献】特開2008-511371号公報
【文献】特開2010-142438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の三方活栓は、第1の管路から第2の管路に流れる薬液等が隔壁を乗り越えなければ、第1の管路から第2の管路に流れることができない。このため、隔壁によって薬液の流れが一旦堰き止められ、第2の管路への流量が減少してしまい、第2の管路の末端に接続されたカテーテル等を通して、患者の体内に薬液を十分に投与することができないという問題がある。
【0010】
本開示の課題は、管路内における薬液の滞留が生じにくく、第2の管路へ流れる薬液等の流量が減少しにくい医療用活栓を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
医療用活栓の一態様は、円筒状の本体と、本体の側面に周方向に互いに間隔をおいてそれぞれ接続された第1管路、第2管路及び第3管路と、本体の内周面により外周面が支持され、本体に対して相対的に回転可能な柱状の栓体とを備え、第3管路は、第3管路内を区画する隔壁を有し、栓体は、その外周面に設けられた溝部を有し、第1管路と第2管路とは、栓体を前記第1の位置とした際に、溝部と本体の内壁面とにより構成され、第1管路と第3管路とを接続する第1流路と、溝部と本体の内壁面とにより構成され、第2管路と第3管路とを接続する第2流路と、隔壁の外周面と第3管路の内壁面とにより構成され、第1流路と第2流路とを接続する第3流路と、溝部と隔壁の本体側の端面とにより構成され、第1流路と第2流路とを接続する第4流路とにより接続される。
【0012】
このような構成とすることにより、栓体の第1の位置において、第3流路だけでなく第4流路によっても第1管路と第2管路とが接続されるため、第1管路から第2管路への流量減少を防止できる。また、第3流路を流れる液により第3管路を十分にフラッシングすることも可能となる。
【0013】
医療用活栓の一態様において、栓体を第1の位置とした場合に、溝部における第1流路となる部分の延長線は、隔壁の第1管路側の側面に達し、溝部における第2の流路となる部分の延長線は、隔壁の第2管路側の側面に達するようにしてもよい。また、栓体を第1の位置とした場合に、溝部における第1流路となる部分は、隔壁と交差する方向に延びていてもよい。このようにすることにより、第1流路と第2流路との間において、薬液をさらに滞留しにくくすることができる。
【0014】
医療用活栓の一態様において、第3流路は、第1管路側の第1の部分と第2管路側の第2部分とを有し、栓体を第1の位置とした場合に、溝部における第1流路となる部分の第3管路側の端部は、第3流路の第1の部分を本体内に延長した範囲内に位置するようにしてもよい。このような構成とすることにより第1流路から第3流路へ液が十分に流れるようにすることができる。
【0015】
医療用活栓の一態様において、第3管路は、本体側に向かって次第に内径が小さくなる縮径部を有していてもよい。縮径部を設けることにより、第3管路内に段差が生じず、薬液の滞留をより生じにくくすることができる。
【0016】
医療用活栓の一態様において、溝部の幅は、第3管路における本体側の端部の幅以上としてもよい。このような構成とすることにより、第3管路を十分にフラッシングすることが可能となる。この場合、溝部の幅は1.5mm以上、4.0mm以下とすることができる。
【0017】
医療用活栓の一態様において、第3管路は、本体と反対側の端部からオスコネクタを挿入可能であり、挿入されたオスコネクタの先端は、隔壁の端面と当接するようにしてもよい。これにより、隔壁がオスコネクタの挿入深さを制限するストッパとなり、オスコネクタの接続が容易となると共に、弁体の脱落を生じにくくすることができる。
【0018】
医療用活栓の一態様において、第1管路は本体側に向かって縮径していてもよい。このような構成とすることにより、第1管路における液の滞留を少なくすることができる。
【0019】
医療用活栓の一態様において、第1の位置において、第1流路の外側端部は、第1管路の端部下面よりも低い位置となるように設けられていてもよい。このような構成とすることにより、位置合わせのずれが生じた場合にも第1の管路における液の滞留が生じにくくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の医療用活栓によれば、管路内における薬液の滞留を生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係る医療用活栓を示す斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III線における断面図である。
【
図4】栓体が第1の位置にある場合を示す断面図である。
【
図5】栓体が第2の位置にある場合を示す断面図である。
【
図6】第1流路の部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1~3に示すように、本実施形態の医療用活栓は三方活栓であり、円筒状の本体101と、本体101の側面に周方向に互いに間隔をおいて接続された第1管路111、第2管路112及び第3管路113と、本体101の内周面により外周面が支持され、本体101に対して相対的に回転可能な円柱状の栓体102とを有している。
【0023】
本実施形態の三方活栓は、第1管路111と第2管路112とが、本体101を挟んで直線的に設けられており、第3管路113は、第1管路111及び第2管路112と直交する方向に設けられている。
図1においては、第1管路111がメスルアコネクタであり、第2管路112がカプラ付オスルアコネクタであり、第3管路113が弁体134を有するニードルレスコネクタである例を示している。本実施形態の三方活栓は任意の方向に配置して使用することができるが、以下においては、第3管路113を上側に向けて配置されているとして説明を行う。また、各管路について、本体101と接続されている側を基端、反対側を末端として説明する。
【0024】
第3管路113の基端部には、筒状の本体101の軸方向に沿って第3管路113を2つの部分に区画する隔壁133が設けられている。栓体102は、外周面に設けられた溝部121を有している。栓体102はハンドル105と一体となっており、ハンドル105と共に回転させることができる。
【0025】
図4に示すように、栓体102を本体101に対して相対回転させて第1の位置とした際に、溝部121と本体101の内壁とにより第1管路111と第3管路113とを接続する第1の通路123と、第2管路112と第3管路113とを接続する第2流路124とが形成される。また、隔壁133の外周面と第3管路113の内壁面とにより第1流路123と第2流路124とを接続する第3流路127が形成され、溝部121と隔壁133の本体101側の端部とにより第1流路123と第2流路124とを接続する第4流路128が形成される。
【0026】
このため、第1流路123と第2流路124とは、第3管路113内を通過する第3流路127により接続されると共に、本体101内を通過する第4流路127によっても接続される。さらに、第3流路127は、隔壁133により第1管路111側の第1部分131と第2管路112側の第2部分132とに区切られている。第3流路127を流れる薬液等は、第1部分131と第2部分132とを通過する。
【0027】
図5に示すように、栓体102を第1の位置から180度程度回転させた第2の位置とすることにより、第1管路111と第2管路112とは、溝部121と本体101の内壁面とにより形成される第5流路129により接続されるが、第3管路113とは接続されず第3流路127は閉鎖される。なお、栓体102を第1の位置から時計回りに90度程度回転させた第3の位置とすることにより、第1管路111と第3管路113とを接続することができ、反時計回りに90度程度回転させた第4の位置とすることにより第2管路112と第3管路113とを接続することができる。
【0028】
栓体102を第1の位置として、第1管路111から第2管路112側へ薬液等を流す場合に、第4流路128が塞がれ、第3管路113に設けられた第3流路127だけが開通していると、流路の抵抗が大きくなり、第2管路112への流量が減少してしまう。しかし、本実施形態の三方活栓は、第3流路127だけでなく第4の流路128によっても第1管路111と第2管路112とが接続されているため、第1管路111から第2管路112への流量を確保し、流量減少を発生しにくくできる。第1流路123から第3流路127に流れ込んだ薬液は、第1部分131側を末端側に流れ、第3管路113の末端側において隔壁133を乗り越え第2部分132を通って第2流路124へ流れる。このため、隔壁133が無い場合と比べて、第3管路113の全体をフラッシングすることができる。従って、第3管路113から別の薬液を注入した場合に、第3管路113から注入した薬液が第3管路113内にほとんど滞留しないようにできる。
【0029】
図3に示すように、第3管路113の基端部における軸方向に沿った幅は、第1流路123及び第2流路124である溝部121の幅と一致している。このため、第1管路111側から第1流路123を流れてきた第1の薬液は、第4流路128側だけでなく、第3流路127の第1部分131内へもスムーズに導かれる。また、第2部分132内から第2流路124へ流れる。このため、第3管路113内における薬液の滞留をより生じにくくすることができる。なお、三方活栓は輸液、麻酔及び経腸栄養等に使用され、それぞれの用途で適切な流量を確保するために溝部121の幅は1.5mm~4.0mmであることが好ましく、本体側の端部の幅は1.5mm~4.0mmであることが好ましい。
【0030】
なお、上記のような寸法は特に限定されるものでなく、用途によって適宜変更することができる。
【0031】
第3管路113には、末端側から基端側に向かって次第に内径が小さくなる縮径部135を設けることができる。縮径部135を設けることにより、第1流路123及び第2流路124である溝部121の幅に合わせて狭くなった基端側と、注射筒等が挿入できる内径を有する末端側とを段差無く接続することができ、第3流路127を流れる液量を十分に確保でき、薬液の滞留をより生じにくくすることができる。
【0032】
第3管路113にオスルアコネクタを挿入する場合、隔壁133は、オスルアコネクタの挿入深さを制限するストッパとすることができる。この場合、オスルアコネクタを適切な位置まで挿入した際に、オスルアコネクタの先端が、隔壁133の末端側の端面と当接するように設計すればよい。例えば、標準的なカプラ付オスルアコネクタの場合、4.0mm~8.0mm程度挿入できるようにすることが好ましい。
【0033】
また、隔壁133の末端側は半球状等の曲面形状を有することが好ましい。このように構成することで、末端側が角形状である場合に比べて第3管路113内での滞留を防止しやすくなる。
【0034】
本実施形態において、栓体102を第1の位置とした状態において、
図4に示すように、溝部121の第4流路128を構成する頂上部は平坦となっていることが好ましい。このような構成とすることにより、
図5に示すように栓体102を第1の位置から180度回転させた第2の位置とした場合に、第5流路129の中間部に大きく盛り上がった凸部が生じている場合と比べて、第5流路129にボトルネックが生じにくく、第1管路111から第2管路112への十分な流量を確保できる。なお、頂上部は、完全に平らではなく若干の膨らみが設けられていてもよい。例えば、本体101の内周とほぼ平行な曲面等とすることができる。少なくとも、第1流路123である斜面と頂上部との接続部分及び第2流路124である斜面と頂上部との接続部分は、第3流路127方向へ伸びる曲面となっていた方が好ましい。このように構成することで、第3流路への流れが促され、第1管路111から第2管路112への十分な流量を確保できる。
【0035】
また、
図4に示すように、第1の位置において、第1流路123の上端部は、第1管路111の基端における上側の端部よりも上側に設けられることが好ましい。このように構成することで、第1部分131への流れが促され、その結果滞留を生じにくくすることができる。
【0036】
なお、三方活栓は輸液、麻酔及び経腸栄養等に使用され、それぞれの用途で適切な流量を確保するために本体101の内径Φは4.5mm~10.5mmとすることができる。栓体102を第1の位置とした際に、第3管路113を通る薬液の量を十分に確保するために、第4流路128における溝部121の底面と隔壁133の本体101側の端面との最小間隔d1は、0.8mm~2.8mm程度とすることが好ましい。d1をこのような値とすることにより、栓体102を第2の位置とした際に、第1管路111と第2管路112との間の流量も十分に確保できる。また、溝部121の最大高低差hを2.0mm~5.0mm程度とすることもできる。
【0037】
栓体102を第1の位置とした際に、第1流路123及び第2流路124の流量を確保するために、第1流路123及び第2流路124における溝部121の底面と本体101の内壁面との最小間隔d2及びd3は、1.0mm~2.5mm程度とすることが好ましい。d2及びd3をこのような値とすることにより、栓体120を第2の位置とした際に、第1管路111と第2管路112との間の流量も十分に確保できる。
【0038】
なお、上記のような寸法は特に限定されるものでなく、用途によって適宜変更することができる。
【0039】
図4に示すように、栓体102を第1の位置とした状態において、溝部121における第1流路123を構成する部分の延長線が、隔壁133の第1管路111側の側面の最下端に達し、第2流路124を構成する部分の延長線が、隔壁133の第2管路112側の側面の最下端に達するようにできる。栓体102を第2の位置とした際に十分な流量を確保できるように第4流路128を大きくすると、栓体102を第1の位置とした場合に、第1管路111から第2管路112へ流れる薬液の大部分が隔壁133の下側の第4流路128を通過してしまい、第3管路113をフラッシングできないおそれがある。しかし、本実施形態の三方活栓は、溝部121における第1流路123である斜面の延長線及び第2流路124である斜面の延長線が、隔壁133の側面の最下端に達するように設計されている。このため、第1管路111から第1流路123により第3管路113に向かう薬液の流れは、隔壁133の側面に当たり、隔壁133に沿って第3流路127の第1部分131内に侵入しやすくなる。また、第2部分132からの薬液の流れは、第2流路124に当たり、第2管路112側へ流れやすくなる。このため、第3管路113を通る薬液の量を十分に確保することができる。
【0040】
なお、
図6に示すように、栓体102を第1の位置とした状態において、溝部121における第1流路123を構成する部分の第3管路側113側の端部(上端部)123aは、第3流路127の第1の部分131を本体101内に延長した範囲に位置するようにすることができる。第1流路123の上端部123aが、第1の部分131を延長した範囲内に位置することにより、第1流路123から第3流路127へ流れる流量を十分に確保することができる。同様に、栓体102を第1の位置とした状態において、溝部121における第2流路124を構成する部分の第3管路側113側の端部(上端部)124aは、第3流路127の第2の部分132を本体101内に延長した範囲に位置するようにすることができる。
【0041】
また、
図7に示すように、栓体102を第1の位置とした場合に、溝部121における第1流路123及び第2流路124となる部分は、隔壁133がある方向へ湾曲していてもよい。この場合にも、栓体102を第1の位置とした状態において、溝部121における第1流路123を構成する部分の上端部123aは、第3流路127の第1の部分131を本体101内に延長した範囲に位置するようにすることができる。このような構成とすることで、栓体102を第1の位置とした場合に、第1流路123の流量を十分に確保しやすくなり、第1流路123から第3流路127へ流れ込む流量及び第1流路123から第4流路128へ流れ込む流量を確保しやすくなる。また、栓体102を第2の位置とした場合に、第1管路111から第2管路112への流量も確保しやすくなる。
【0042】
また、
図6、
図7に示すように、第1流路121の斜面の頂部付近における曲率の符号が正から負、又は負から正に変化する部分は1カ所であることが好ましい。曲率が変化する部分を1ヶ所とすることにより、第1流路121において段差を生じさせず、段差による滞留を生じにくくできる。
【0043】
本実施形態の三方活栓は、第1流路123の延長線及び第2流路124の延長線が、隔壁133の側面の最下端に達するようにしたが、溝部121における第1流路123である部分の延長線及び第2流路124である部分の延長線が、隔壁133と交差するようにできればよく、隔壁133の側面の最下端よりも上側に達するようにすることともできる。この場合においても、第1流路123の延長線及び第2流路124の延長線が隔壁133の基端面に達している場合と比べて、第3管路113へ薬液を導くことができる。但し、第1流路123の延長線及び第2流路124の延長線が、隔壁133の側面の最下端に達している場合の方が、流路となる溝部121の深さを確保しやすく、流量の確保が容易となる。
【0044】
図4に示すように、栓体102を第1の位置とした場合に、第1流路123の外側端部が、第1管路111の基端における下側の端部(端部下面)よりも若干下側に位置し、第2流路124の外側端部が、第2管路112の端部下面よりも若干下側に位置することが好ましい。術者が栓体102を操作する際に、完全にずれが生じないように位置を合わせることは困難であり、通常は0°より大きく±6°より小さい程度のずれが生じる。栓体102を完全に第1の位置に合わせた場合に、第1流路123と第1管路111との端部同士及び第2流路124と第2管路112との端部同士が完全に一致するようにすると、位置合わせの僅かなずれによっても、第1管路111の基端を塞ぐような段差が生じるおそれがある。第1管路111の基端を塞ぐような段差が生じると、流量が制限され、滞留の原因となる。一方、栓体102を完全に第1の位置に合わせた場合に、第1流路123の外側端部が第1管路111の端部下面よりも若干下側に位置するようにすれば、位置合わせがずれた場合においても第1管路111の端部を塞ぐような段差を生じにくくすることができる。第2流路124と第2管路112との関係においても同様である。
【0045】
また、
図5に示すように、栓体102を第2の位置とした場合に、第5流路129の第2管路112側の外側端部が、第2管路112の基端における上側の端部(端部上面)よりも若干上側に位置し、第5流路129の第1管路111側の外側端部が、第1管路111の基端における端部正面よりも若干上側に位置することが好ましい。このような配置とすることにより、栓体102が第2の位置から若干ずれた場合においても、第1管路111の端部を塞ぐような段差が生じにくく、第1管路111と第2管路112との間を第5流路129を介してスムーズに薬液が流れるようにできる。
【0046】
本実施形態において、第3管路113に設ける弁体134は、スリットを有するスリット弁とすることができる。スリット弁とすることにより、第3管路113にルアシリンジ等のオスルアコネクタを挿入し、薬液を容易に注入することができる。また、オスルアコネクタを抜き取ることにより再び第3管路113の末端を閉止できる。
【0047】
本実施形態において、第3管路113の末端を閉止する弁体134が外部ハウジング137と内部ハウジング136との間に挟み込まれている例を示したが、弁体134の固定方法はこれに限らずどのようにしてもよい。また、外部ハウジング137にカプラを係合するためのねじ山138が設けられている構成としたが、ねじ山138が無い構成としてもよい。第3管路113は、薬液等の注入及び末端の閉止ができれば、ニードルレスコネクタ以外のコネクタとすることもできる。例えば、スリットの無い弁体を設け、注射針を用いて薬液を注入する構成とすることができる。また、
図8に示すように、ルアシリンジ等が接続できる単純なメスコネクタとすることも可能である。
【0048】
本実施形態において、第1管路111がメスルアコネクタであり、第2管路112がオスルアコネクタである例を示したが、第1管路111及び第2管路112はどのようなコネクタとしてもよい。例えば、メスルアコネクタとオスルアコネクタを入れ替えても、両方をオスルアコネクタ又はメスルアコネクタとしてもよい。また、コネクタではなく、パイプ等と直結されていてもよい。本実施形態において、上流側の管路は、本体部に向かって次第に縮径しているようにすることができる。このような構成とすることにより、上流側の管路内における液の滞留を生じにくくすることができる。
【0049】
本実施形態において、医療用活栓が三方活栓である例を示したが、三方活栓に限らず、薬液の注入を行う分岐を有している医療用活栓を同様の構成とすることができる。例えば、第3管路と反対側に第4管路が設けられた構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本実施形態の医療用活栓は、管路内における薬液の滞留が生じにくく、輸液回路等の医療用回路に接続する医療用活栓として有用である。
【符号の説明】
【0051】
101 本体
102 栓体
105 ハンドル
111 第1管路
112 第2管路
113 第3管路
121 溝部
123 第1流路
124 第2流路
127 第3流路
128 第4流路
129 第5流路
131 第1部分
132 第2部分
133 隔壁
134 弁体
135 縮径部
136 内部ハウジング
137 外部ハウジング
138 ねじ山