(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ルーフサイドレール
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
B62D25/06 A
(21)【出願番号】P 2021085438
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】満行 裕一
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-131054(JP,A)
【文献】特開2016-078569(JP,A)
【文献】特開2009-051367(JP,A)
【文献】特開2009-056990(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0123495(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体側部上部を車両前後方向に延びるルーフサイドレールであって、
車幅方向内側に位置するレールインナ部材と、
車幅方向外側に位置し、前記レールインナ部材と共に閉断面構造を形成しているレールアウタ部材と、
を含み、
前記レールインナ部材と前記レールアウタ部材は、前記閉断面構造の部分から車幅方向内側に延びてルーフパネルと共に接合されるフランジ部をそれぞれ有し、
前記レールアウタ部材は、端縁部が前記フランジ部である上方を向いた上面部を有し、
前記上面部は、前記フランジ部を含む内側部分と、前記内側部分よりも車幅方向外側に位置する外側部分と、
前記内側部分と前記外側部分を接続する接続部分と、を含み、
前記内側部分は、車幅方向内側が高くなるように水平面に対して傾斜し、
前記外側部分は、車幅方向外側が高くなるように水平面に対して傾斜
し、
前記内側部分と前記接続部分の境界は、上方に凸の上側ビードを形成し、
前記外側部分と前記接続部分の境界は、下方の凸の下側ビードを形成し、
前記接続部分は、前記レールインナ部材から離れている、
ルーフサイドレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体左右の側部上部を車両前後方向に延びるルーフサイドレールに関し、特にその構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、例えば自動車の車体側部には、下部車体から立設される複数のピラーと、ピラーの上端をつなぐように車両の前後方向に延びるルーフサイドレールが設けられている。左右のルーフサイドレールの間にルーフが架設されている。ルーフは、車体の頂部全体を覆うルーフパネルと、車両前後方向の複数の位置にて左右のルーフレールに架設された梁状のルーフリインホースメントを含む。
【0003】
ルーフサイドレールは、レールアウタ部材とレールインナ部材が接合された閉断面構造の部分を有する。レールアウタ部材とレールインナ部材は、ルーフサイドレールの閉断面構造の部分から車幅方向内側に延びてルーフパネルと共にスポット溶接等により接合される部分をそれぞれ有する。レールアウタ部材とレールインナ部材がルーフパネルと共に接続された部分は、概略水平配置される。
【0004】
下記特許文献1には、側面衝突時に、変形するルーフサイドレール(14)がルーフリインホースメント(ルーフリインフォース20)の端面(20B)の上部に当たり、ここに荷重を入力することで、ルーフリインホースメント(20)が、上方に凸に屈曲することを抑制する技術が示されている。なお、上記の( )内の部材名および符号は、下記特許文献1で用いられている符号であり、本願の実施形態の説明で用いられる部材名および符号とは関連しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
側方から柱状障害物が衝突した場合、ルーフサイドレールは水平面内で屈曲されるよう変形する。この変形において、レールアウタ部材とレールインナ部材の接合部分が水平配置を維持して変形すると、面内曲げとなり、端縁に大きな引張応力が発生する。
【0007】
本発明は、側方からの柱状物の衝突の際、レールアウタ部材およびレールインナ部材の接合部分に生じる引張応力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るルーフサイドレールは、車両の車体側部上部を車両前後方向に延びており、車幅方向内側に位置するレールインナ部材と、車幅方向外側に位置し、レールインナ部材と共に閉断面構造を形成しているレールアウタ部材とを含む。レールインナ部材とレールアウタ部材は、ルーフサイドレールの閉断面構造の部分から車幅方向内側に延びてルーフパネルと共に接合されるフランジ部をそれぞれ有する。レールアウタ部材は、端縁部が前記フランジ部である上方を向いた上面部を有し、当該上面部は、前記フランジ部を含む内側部分と、内側部分よりも車幅方向外側に位置する外側部分と、前記内側部分と前記外側部分を接続する接続部分とを含む。そして、内側部分は、車幅方向内側が高くなるように水平面に対して傾斜し、外側部分は、車幅方向外側が高くなるように水平面に対して傾斜し、内側部分と接続部分の境界は、上方に凸の上側ビードを形成し、外側部分と接続部分の境界は、下方の凸の下側ビードを形成している。さらに、接続部分は、レールインナ部材から離れている。
【0009】
側方から柱状障害物が衝突すると、レールアウタ部材の上面部は、内側部分と外側部分の間で下方に凸になるように屈曲し、内側部分端縁部のフランジ部が面外曲げ状態となる。
【発明の効果】
【0011】
ルーフパネルおよびレールインナ部材と接合されている端縁部が面外曲げ状態となることにより、面内曲げ状態となる場合に比べ、当該端縁部に生じる引張応力が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】車両のモノコックボデーの側部を示す図である。
【
図2】本実施形態のルーフサイドレールの断面を示す図である。
【
図3】車両が柱状障害物に衝突した状態を示す側面図である。
【
図4】車両が柱状障害物に衝突した状態を示す平面図である。
【
図5】比較例のルーフサイドレールの断面を示す図である。
【
図6】柱状障害物に衝突したときの本実施形態および比較例のルーフサイドレールの変形状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。以下の説明において、特段の断りがない限り、前後左右上下等の相対位置および向きを表す語句は、車両に関する相対位置および向きを表す。また、車両の左右方向(幅方向)において車両の前後方向に延びる中心線に近い側を車幅方向内側、遠い側を車幅方向外側と記す。各図において、矢印FRの向きが前方、矢印UPの向きが上方、矢印LHの向きが左方、矢印OUTの向きが車幅方向外側である。
【0014】
図1は、車両10のモノコックボデー12の車両側部の概略構成を示す図である。モノコックボデー12は、ルーフの左右を前後方向に延びて設けられるルーフサイドレール14と、左右のルーフサイドレール14に架設されるように左右方向に延びて設けられた複数のルーフリインホースメント16を含む。さらに、左右のルーフサイドレール14の間であり、車体の頂部を覆い、車体表面となるルーフパネル18(
図4参照)が設けられている。
【0015】
図2は、ルーフサイドレール14の前後方向に直交する断面を示す図である。ルーフサイドレール14は、それぞれ鋼板製のレールアウタ部材22とレールインナ部材24とを含み、レールアウタ部材22とレールインナ部材24は接合されて閉断面構造を形成している。レールアウタ部材22は、上方を向いた上面部26と、上面部26の車幅方向外側の縁から下方に延びる車幅方向外側を向いた側面部28を含む。レールインナ部材24は、レールアウタ部材22の上面部26と側面部28が作る角から離れた位置で、上面部26と側面部28に接合し、これにより、概略三角形の閉断面構造の部分が形成される。レールアウタ部材22の車室に対して外側には、レールアウタ部材22を覆い、車体表面となるレールアウタパネル30が設けられている。レールアウタパネル30は、レールアウタ部材22、レールインナ部材24よりも薄い鋼板で形成されてよい。
【0016】
レールアウタ部材22およびレールインナ部材24は、車幅方向内側の端縁部に、閉断面構造の部分から車幅方向内側に離れる向きに延びるフランジ部32,34を有する。レールアウタ部材22のフランジ部32をアウタ部材上部フランジ部32と記し、レールインナ部材24のフランジ部34をインナ部材上部フランジ部34と記す。アウタ部材上部フランジ部32とインナ部材上部フランジ部34は、レールアウタパネル30およびルーフパネル18と重ねられて、これらと共に溶接等により接合されている。
【0017】
レールアウタ部材22およびレールインナ部材24は、さらに下方の端縁部に、閉断面構造の部分から下方に離れる向きに延びるフランジ部36,38を有する。レールアウタ部材22のフランジ部36をアウタ部材下部フランジ部36と記し、レールインナ部材24のフランジ部38をインナ部材下部フランジ部38と記す。アウタ部材下部フランジ部36とインナ部材下部フランジ部38は、レールアウタパネル30と重ねられて、これと共に溶接等により接合されている。
【0018】
レールアウタ部材の上面部26は、車幅方向内側の端縁部がアウタ部材上部フランジ部32である内側部分26aと、内側部分26aよりも車幅方向外側に位置する外側部分26bを含む。内側部分26aおよび外側部分26bは、概略平面形状である。内側部分26aと外側部分26bの間には、内側部分26aおよび外側部分26bと交差し、これらを接続するように接続部分26cが配置される。内側部分26aと接続部分26cの境界は、上方に凸となり、車両前後方向に延びる上側ビード40を形成している。外側部分26bの接続部分26cの境界は、下方に凸となり、車両前後方向に延びる下側ビード42を形成している。
【0019】
レールアウタ部材22の上面部26の内側部分26aは、水平面Hに対して車幅方向内側が高くなるように角度αで傾斜して配置され、外側部分26bは、水平面Hに対して車幅方向外側が高くなるように角度βで傾斜して配置されている。これにより、上面部26は全体として、中央部分が下に凸となるように屈曲した形状を有している。
【0020】
図3,4は、車両10が、側方から電信柱や道路標識の支柱などの柱状障害物44に衝突した状態を模式的に示す図である。図示するように車両10のルーフ部分に柱状障害物44が衝突すると、ルーフサイドレール14は水平面内で大きく屈曲する。
【0021】
図5は、
図2に示すルーフサイドレール14の比較対象となるルーフサイドレール14Bの断面図であり、各構成要素には、
図2に示すルーフサイドレール14の対応する要素と同一の符号に「B」を付している。ルーフサイドレール14に対するルーフサイドレール14Bの相違点は、上面部26Bが、下に凸の屈曲形状ではなく、平らな面で構成されている点である。他の構成要素については、共通である。
【0022】
図6は、柱状障害物44の衝突後のルーフサイドレール14,14Bの変形状態を示す図である。比較例のルーフサイドレール14Bにおいては、衝突による変形後、アウタ部材上部フランジ部32Bがほぼ水平面内に位置している。このため、フランジ部32Bは、フランジ部32B自身が規定する平面内で湾曲または屈曲する面内曲げの状態となり、フランジ部32Bの端縁には、大きな引張応力が作用する。この引張応力のためにレールアウタ部材22が裂ける可能性がある。
【0023】
一方、本実施形態のルーフサイドレール14では、柱状障害物44が衝突すると、レールアウタ部材22の上面部26が、内側部分26aと外側部分26bの間で下方に凸となるよう屈曲し、これにより、内側部分26aおよび内側部分26aに属するアウタ部材上部フランジ部32が、横配置から縦配置になる。縦配置となることにより、柱状障害物44の衝突によるアウタ部材上部フランジ部32の変形は、板が反るように変形する面外曲げ状態となる。面外曲げでは、アウタ部材上部フランジ部32の端縁の引張応力は、面内曲げに比べて小さくなり、レールアウタ部材22が裂けることが抑制される。
【0024】
また、内側部分26aと外側部分26bの間に上側ビード40および下側ビード42を設けたことにより、内側部分26aと外側部分26bの境の部分での折れを誘発させ、確実に下に凸に屈曲させることができる。
【符号の説明】
【0025】
10 車両、12 モノコックボデー、14 ルーフサイドレール、18 ルーフパネル、22 レールアウタ部材、24 レールインナ部材、26 レールアウタ部材の上面部、26a 内側部分、26b 外側部分、26c 接続部分、28 レールアウタ部材の側面部、30 レールアウタパネル、32 アウタ部材上部フランジ部、34 インナ部材上部フランジ部、40 上側ビード、42 下側ビード、44 柱状障害物。