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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】通信装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/24 20130101AFI20240816BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20240816BHJP
   G01S 5/14 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B60R25/24
E05B49/00 J
G01S5/14
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021087005
(22)【出願日】2021-05-24
(65)【公開番号】P2022180088
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-172820(JP,A)
【文献】特開平11-107592(JP,A)
【文献】特開2012-162943(JP,A)
【文献】特開2020-029715(JP,A)
【文献】特開2021-032742(JP,A)
【文献】米国特許第10972196(US,B1)
【文献】特表2018-514752(JP,A)
【文献】米国特許第9566945(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/24
E05B 49/00
G01S 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の移動体に搭載される通信装置であって、
前記通信装置と人に所持される第1の携帯機との第1の距離の測定を開始するための第1の測距トリガ信号を取得する取得部と、
あらかじめ規定された前記第1の移動体の判別に必要となる第1の固有情報と、取得した前記第1の測距トリガ信号に含まれる第2の移動体の判別に必要となる第2の固有情報とが一致しないことに基づいて、前記第1の距離を測定するための第1の測距通信を開始せずに、測距トリガ信号の受信待機状態を維持する通信制御部と、
を備え
前記通信制御部は、前記第1の測距トリガ信号が取得される前における前記第1の携帯機の認証成功に基づいて前記受信待機状態に遷移し、前記受信待機状態に遷移してから所定の時間が経過したことに基づいて、前記受信待機状態を解除する、
通信装置。
【請求項2】
前記通信制御部は、前記第1の固有情報と前記第2の固有情報とが一致しないことに基づいて、前記第1の携帯機が不適合な携帯機であるとして前記第1の測距通信を開始しない、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信制御部は、前記第1の固有情報と前記第2の固有情報とが一致することに基づいて、前記第1の携帯機が適合した携帯機であるとして前記第1の測距通信を開始する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
記第2の固有情報は、前記第1の移動体とは異なる前記第2の移動体の判別に必要となる固有情報である、
請求項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信制御部は、前記受信待機状態において第2の携帯機から取得された第2の測距トリガ信号に前記第1の固有情報が含まれることに基づいて、前記通信装置と前記第2の携帯機との第2の距離を測定するための第2の測距通信を開始する、
請求項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信制御部は、前記第2の距離の測定を要求するための信号である第2の測距要求の前記第2の携帯機への送信を制御することにより、前記第2の測距通信を開始する、
請求項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信制御部は、前記第2の距離の測定に用いられる信号である測距用信号が前記第2の携帯機から受信されることを待機することにより、前記第2の測距通信を開始する、
請求項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記取得部は、前記第2の携帯機から前記通信装置への測距トリガ信号の過去の送信回数に応じたカウンタ情報を前記第2の測距トリガ信号から取得し、
前記通信制御部は、前記カウンタ情報と前記第2の測距通信の結果とを制御装置に出力する、
請求項のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項9】
前記通信制御部は、前記第1の距離の測定を要求するための信号である第1の測距要求の前記第1の携帯機への送信を制御しないことにより、前記第1の測距通信を開始しない、
請求項のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項10】
前記通信制御部は、前記第1の距離の測定に用いられる信号である第1の測距用信号が前記第1の携帯機から受信されたとしても、前記第1の測距用信号に対応する第2の測距用信号を返信しないことにより、前記第1の測距通信を開始しない、
請求項のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項11】
前記通信制御部は、前記第1の固有情報と前記第1の測距トリガ信号に含まれる前記第2の固有情報とが一致することに基づいて、前記第1の測距通信を開始する、
請求項に記載の通信装置。
【請求項12】
コンピュータを、
第1の移動体に搭載される通信装置であって、
前記通信装置と人に所持される第1の携帯機との第1の距離の測定を開始するための第1の測距トリガ信号を取得する取得部と、
あらかじめ規定された前記第1の移動体の判別に必要となる第1の固有情報と、取得した前記第1の測距トリガ信号に含まれる第2の移動体の判別に必要となる第2の固有情報とが一致しないことに基づいて、前記第1の距離を測定するための第1の測距通信を開始せずに、測距トリガ信号の受信待機状態を維持する通信制御部と、
を備え
前記通信制御部は、前記第1の測距トリガ信号が取得される前における前記第1の携帯機の認証成功に基づいて前記受信待機状態に遷移し、前記受信待機状態に遷移してから所定の時間が経過したことに基づいて、前記受信待機状態を解除する、
通信装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザによって使用される携帯機の位置を検出する技術が知られている。例えば、移動体に搭載された二つの通信装置それぞれとユーザによって使用される携帯機との間の測距通信の結果に基づいて、携帯機の位置を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる技術では、検出された携帯機の位置が条件を満たした場合に、移動体の作動が許可される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9566945号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、正規の通信相手である携帯機と移動体との間における測距がより確実に行われるように制御することが望まれる。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、正規の通信相手である携帯機と移動体との間における測距がより確実に行われるように制御することを可能にした、新規かつ改良された技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、移動体に搭載される通信装置であって、前記通信装置と人に所持される携帯機との距離の測定を開始するための測距トリガ信号を取得する取得部と、あらかじめ規定された前記移動体の判別に必要となる第1の固有情報と、取得した測距トリガ信号に含まれる移動体の判別に必要となる第2の固有情報とが一致しないことに基づいて、前記距離を測定するための測距通信を開始しない通信制御部と、を備える、通信装置が提供される。
【0006】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、移動体に搭載される通信装置であって、前記通信装置と人に所持される携帯機との距離の測定を開始するための測距トリガ信号を取得する取得部と、あらかじめ規定された前記移動体の判別に必要となる第1の固有情報と、取得した測距トリガ信号に含まれる移動体の判別に必要となる第2の固有情報とが一致しないことに基づいて、前記距離を測定するための測距通信を開始しない通信制御部と、を備える、通信装置として機能させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように本発明によれば、正規の通信相手である携帯機と移動体との間における測距がより確実に行われるように制御することを可能にした技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
図2】比較例に係る通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
図3】本発明の実施形態に係る通信システムの第1の動作例を示すシーケンス図である。
図4】本発明の実施形態に係る通信システムの第2の動作例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
<1.一実施形態>
以下、本発明の実施形態に係る通信システムについて説明する。
【0011】
<<1.1.構成例>>
まず、図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る通信システムの構成例について説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。図1に示されるように、本発明の実施形態に係る通信システム1は、車両10(第1の移動体)および携帯機20を備える。携帯機20は、人によって所持され、車両10の正規の通信相手に該当し得る。なお、本発明の実施形態では、携帯機20以外に、車両10の正規の通信相手ではない図示しない携帯機が存在することも想定する。
【0013】
なお、車両10は、移動体の一例に過ぎない。したがって、車両10の代わりに他の移動体(例えば、船舶、航空機など)が用いられてもよい。また、本発明の実施形態においては、携帯機20が電子キーである場合を主に想定する。しかし、携帯機20は、電子キー以外の端末であってよく、スマートフォンであってもよいし、タブレット端末であってもよいし、携帯電話であってもよいし、他の電子機器であってもよい。
【0014】
(車両の構成)
続いて、車両10の構成について説明する。図1に示されるように、車両10は、車載装置の例としてのドアロック装置41と、ボディECU(Electronic Control Unit)42と、車載装置の例としてのエンジン51と、エンジンECU52と、制御装置110と、第1の通信装置131と、第2の通信装置132とを備える。
【0015】
ドアロック装置41は、車両10のドアの施解錠を制御する。ボディECU42は、車載電装品の電源を管理する。例えば、ボディECU42は、制御装置110による制御に従ってドアロック装置41を駆動させる。例えば、図示しない記録媒体に記録されたボディECU42に対応するプログラムがプロセッサによって実行されることによって、コンピュータがボディECU42として機能する。
【0016】
エンジン51は、車両10のエンジンである。エンジンECU52は、エンジン51を制御する。例えば、エンジンECU52は、制御装置110による制御に従ってエンジン51を駆動させる。例えば、図示しない記録媒体に記録されたエンジンECU52に対応するプログラムがプロセッサによって実行されることによって、コンピュータがエンジンECU52として機能する。
【0017】
制御装置110は、位置推定部114と、作動制御部116とを有する。位置推定部114および作動制御部116については、後に詳細に説明する。例えば、図示しない記録媒体に記録された制御装置110に対応するプログラムがプロセッサによって実行されることによって、コンピュータが制御装置110として機能する。一例として、制御装置110は、ドアの施解錠を制御する照合ECUに該当し得る。
【0018】
第1の通信装置131は、車両10に搭載されており、第1の通信装置131と携帯機20との間で測距値を得るための通信(以下「測距通信」とも言う。)を実行する。第1の通信装置131は、通信線37を介して第2の通信装置132と接続されている。第1の通信装置131は、第2の通信装置132を制御するマスター通信機として機能し得る。
【0019】
第1の通信装置131は、取得部141および通信制御部151を備える。取得部141および通信制御部151については、後に詳細に説明する。例えば、図示しない記録媒体に記録された第1の通信装置131に対応するプログラムがプロセッサによって実行されることによって、コンピュータが第1の通信装置131として機能する。
【0020】
第2の通信装置132は、車両10に搭載されており、第2の通信装置132と携帯機20との間で測距通信を実行する。第2の通信装置132は、通信線36を介して制御装置110に接続されている。第2の通信装置132は、第1の通信装置131によって制御されるスレーブ通信機として機能し得る。
【0021】
第2の通信装置132は、取得部142および通信制御部152を備える。取得部142および通信制御部152については、後に詳細に説明する。例えば、図示しない記録媒体に記録された第2の通信装置132に対応するプログラムがプロセッサによって実行されることによって、コンピュータが第2の通信装置132として機能する。
【0022】
例えば、通信線36および通信線37を介した通信における通信プロトコルは、LIN(Local Interconnect Network)であってもよいし、CAN(Controller Area Network)であってもよい。なお、通信線36には、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)などの通信インターフェースが用いられていてもよい。
【0023】
制御装置110とボディECU42とは、車両10の内部の通信線32を介して接続されている。通信線32を介した通信に用いられるプロトコルは、例えばCANであってもよいし、LINであってもよい。また、制御装置110とエンジンECU52とは、車両10の内部の通信線31を介して接続されている。通信線31を介した通信に用いられるプロトコルは、例えばCANであってもよいし、LINであってもよい。
【0024】
(携帯機の構成)
続いて、携帯機20の構成について説明する。携帯機20は、端末制御部210と、通信部220とを備える。
【0025】
端末制御部210は、携帯機20の動作を制御する。例えば、図示しない記録媒体に記録された端末制御部210に対応するプログラムがプロセッサによって実行されることによって、コンピュータが端末制御部210として機能する。一例として、端末制御部210は、通信部220による通信を制御する。
【0026】
通信部220は、第1の通信装置131および第2の通信装置132それぞれとの間で測距通信を実行する。
【0027】
(測距通信の概要)
続いて、測距通信の概要について説明する。
【0028】
なお、以下の説明では、第1の通信装置131および第2の通信装置132それぞれと携帯機20との間の測距値がより高精度に算出されることを考慮し、第1の通信装置131および第2の通信装置132それぞれと携帯機20との間の電波の伝播時間に基づいて測距値が算出される場合を主に想定する。しかし、電波の伝播時間以外の値に基づいて測距値が算出されてもよい。
【0029】
例えば、第1の通信装置131と携帯機20とのうち一方から送信されて他方において受信された電波の強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)に基づいて測距値が算出されてもよい。同様に、第2の通信装置132と携帯機20とのうち一方から送信されて他方において受信された電波の強度に基づいて測距値が算出されてもよい。すなわち、以下の説明において、電波の伝播時間に基づく測距値は、電波強度による測距値に置き換えられてもよい。
【0030】
例えば、携帯機20における通信部220から送信された、携帯機20との距離の測定を開始するための信号(以下、「測距トリガ信号」とも言う。)が、第1の通信装置131における取得部141によって取得された場合を想定する。かかる場合において、通信制御部151は、取得部141によって測距トリガ信号が取得されたことに基づいて、第1の通信装置131と携帯機20との間における測距通信を開始する。
【0031】
同様に、携帯機20における通信部220から送信された携帯機20との距離の測定を開始するための信号(以下、「測距トリガ信号」とも言う。)が、第1の通信装置131における取得部141によって取得された場合を想定する。かかる場合において、通信制御部151は、取得部141によって測距トリガ信号が取得されたことに基づいて、第2の通信装置132と携帯機20との間における測距通信を開始する。
【0032】
なお、本発明の実施形態においては、測距通信に使用される電波(後に説明する、測距要求、測距応答および測距用信号などに使用される電波)がUWB(Ultra Wide Band)帯の電波である場合を主に想定する。しかし、測距通信に使用される電波は、UWB帯の電波に限定されない。さらに、本発明の実施形態においては、測距トリガ信号の送受信に使用される電波がUWB帯の電波である場合を主に想定する。しかし、測距トリガ信号の送受信に使用される電波は、UWB帯の電波に限定されない。
【0033】
<<1.2.比較例>>
続いて、図2を用いて、比較例に係る通信システムの動作例について説明する。
【0034】
図2は、比較例に係る通信システムの動作例を示すシーケンス図である。図2に示されるように、比較例に係る通信システムは、携帯機90と車両80とを備える。携帯機90は、通信部930を備える。一方、車両80は、第1の通信装置831と、第2の通信装置832とを備える。
【0035】
車両80は、正規の通信相手である携帯機90から送信される情報(認証用情報)に基づいて、携帯機90の認証を行う。車両80は、携帯機90の認証が成功した場合には、自身が保持しているシードを携帯機90に送信する。これによって、車両80と携帯機90との間においてシードが共有される。続いて、携帯機90における通信部930は、測距トリガ信号を送信する。
【0036】
第1の通信装置831は、測距トリガ信号を受信すると(S81)、測距トリガ信号を受信したことに基づいて、測距通信を開始する。一例として、第1の通信装置831は、第1の通信装置831と携帯機90との距離の測定を要求するための信号(以下、「測距要求」とも言う。)を携帯機90に送信する(S83)。
【0037】
携帯機90における通信部930は、測距要求を受信すると、測距要求に対する応答を測距応答として第1の通信装置831に返信する(S86)。このとき、携帯機90は、測距要求の受信時刻から測距応答の送信時刻までの時間ΔT2aと、車両80と携帯機90との間においてあらかじめ共有されたシード(図2では「SE1」と表現されている)とを測距応答に含める。
【0038】
第1の通信装置831は、測距応答を受信すると、測距応答に含まれるシードSE1と、車両80において保持されているシードとを比較する。第1の通信装置831は、測距応答に含まれるシードSE1と車両80において保持されているシードとが一致する場合には、第1の通信装置831と携帯機90における通信部930との間の測距要求および測距応答の伝播時間に基づいて測距通信の結果を得る。例えば、第1の通信装置831は、かかる伝播時間に基づいて、測距通信の結果の例として測距値Daを算出する(S87)。
【0039】
第2の通信装置832は、測距トリガ信号を受信すると(S82)、測距トリガ信号を受信したことに基づいて、測距通信を開始する。一例として、第2の通信装置832は、第2の通信装置832と携帯機90との距離の測定を要求するための信号(測距要求)を携帯機90に送信する(S88)。
【0040】
携帯機90は、通信部930によって測距要求が受信されると、測距要求に対する応答を測距応答として第2の通信装置832に返信する(S91)。このとき、携帯機90は、測距要求の受信時刻から測距応答の送信時刻までの時間ΔT2bと、車両80と携帯機90との間においてあらかじめ共有されたシードSE1とを測距応答に含める。
【0041】
第2の通信装置832は、測距応答を受信すると、測距応答に含まれるシードSE1と、車両80において保持されているシードとを比較する。第2の通信装置832は、測距応答に含まれるシードSE1と車両80において保持されているシードとが一致する場合には、第2の通信装置832と携帯機90における通信部930との間の測距要求および測距応答の伝播時間に基づいて測距通信の結果を得る。例えば、第2の通信装置832は、かかる伝播時間に基づいて、測距通信の結果の例として測距値Dbを算出する(S92)。
【0042】
しかし、かかる比較例においては、正規の通信相手である携帯機90と車両80との間における測距が行われなくなってしまう可能性がある。より詳細に、比較例においては、携帯機から送信される測距応答に含まれるシードSE1と車両80において保持されているシードとが一致しない場合には、通信が不成立となってしまい、測距を行うことができなくなってしまう可能性がある。
【0043】
一例として、車両80が、正規の通信相手ではない携帯機から測距トリガ信号を受信してしまった場合には、その携帯機から受信される測距応答に含まれるシードSE1は、車両80において保持されているシードと一致しないために、通信が不成立となってしまい、測距を行うことができなくなってしまう可能性がある。
【0044】
そこで、本発明の実施形態においては、車両80にとって正規の通信相手である携帯機90と車両80との間における測距がより確実に行われるように制御する技術について主に提案する。
【0045】
<<1.3.本実施形態の動作例>>
(第1の動作例)
続いて、図3を用いて、本発明の実施形態に係る通信システム1の第1の動作例について説明する。本発明の実施形態においては、車両10の判別に必要となる固有情報(第1の固有情報)が、車両10における図示しない記録媒体にあらかじめ登録されている。
【0046】
図3は、本発明の実施形態に係る通信システム1の第1の動作例を示すシーケンス図である。まず、車両10は、正規の通信相手である携帯機20から送信される情報(認証用情報)に基づいて、携帯機20の認証を行う。車両10は、携帯機20の認証が成功した場合には、自身が保持しているシードと、図示しない記録媒体にあらかじめ登録された固有情報とを携帯機20に送信する。これによって、車両10と携帯機20との間においてシードと固有情報とが共有される。
【0047】
さらに、第1の通信装置131において、通信制御部151は、携帯機20の認証が成功したことに基づいて、測距トリガ信号の受信待機状態に遷移する。同様に、第2の通信装置132において、通信制御部152は、携帯機20の認証が成功したことに基づいて、測距トリガ信号の受信待機状態に遷移する。
【0048】
続いて、携帯機20は、車両10から受信された固有情報と、携帯機20から車両10(すなわち、第1の通信装置131または第2の通信装置132)への測距トリガ信号の過去の送信回数に応じたカウンタ情報とを含んだ測距トリガ信号を送信する。一例として、カウンタ情報は、携帯機20から車両10への測距トリガ信号の過去の送信回数に1を加算した値であってもよい。
【0049】
なお、図3に示された例では、車両10が、あらかじめシード(図3では「SE1」と表現されている)を共有した正規の通信相手である携帯機20から測距トリガ信号を受信する場合を想定する。しかし、後にも説明するように、車両10が受信する測距トリガ信号は、正規の通信相手ではない携帯機から送信された測距トリガ信号である場合もあり得る。
【0050】
ここで、車両10によって受信される測距トリガ信号(第1の測距トリガ信号)の送信元の携帯機が正規の通信相手であるか否かに関わらず、当該測距トリガ信号(第1の測距トリガ信号)の送信元の携帯機は、第1の携帯機に該当する。そして、当該測距トリガ信号に含まれる固有情報は、第2の固有情報に該当する。第2の固有情報は、第2の移動体(すなわち、車両10または車両10とは異なる車両)の判別に必要となる情報である。
【0051】
図3に示されるように、第1の通信装置131において、取得部141が、固有情報(図3では「ID1」と表現されている)と、カウンタ情報(図3では「♯1」と表現されている)とを含んだ測距トリガ信号を取得すると(S11)、通信制御部151は、図示しない記録媒体にあらかじめ登録された固有情報と、測距トリガ信号に含まれる固有情報とを比較する。通信制御部151は、固有情報同士が一致する場合には、固有情報同士が一致することに基づいて、測距トリガ信号を送信した携帯機20が適合した携帯機であるとして、測距通信(第1の測距通信)を開始する。
【0052】
一例として、通信制御部151は、第1の通信装置131と携帯機20との距離の測定を要求するための信号(測距要求)の携帯機20への送信を制御する(S13)。このとき、通信制御部151は、携帯機20に送信される測距要求にカウンタ情報♯1を含める。
【0053】
携帯機20における通信部230は、測距要求を受信すると、測距要求に対する応答を測距応答として第1の通信装置131に返信する(S14)。このとき、携帯機20における端末制御部210は、カウンタ情報♯1と、測距要求の受信時刻から測距応答の送信時刻までの時間ΔT2aと、車両10と携帯機20との間においてあらかじめ共有されたシードSE1とを測距応答に含める。
【0054】
第1の通信装置131において、通信制御部151は、取得部141によって測距応答が取得されると、測距応答に含まれるシードSE1と、車両10において保持されているシードとを比較する。通信制御部151は、測距応答に含まれるシードSE1と車両10において保持されているシードとが一致する場合には、第1の通信装置131と携帯機20における通信部230との間の測距要求および測距応答の伝播時間に基づいて測距通信の結果を得る。例えば、通信制御部151は、かかる伝播時間に基づいて、測距通信の結果の例として測距値Daを算出する(S15)。
【0055】
より詳細に、通信制御部151は、測距要求の受信時刻から測距応答の送信時刻までの時間ΔT2aを測距応答から取得する。そして、通信制御部151は、測距要求の送信時刻から測距応答の受信時刻までの時間ΔT1aと、測距要求の受信時刻から測距応答の送信時刻までの時間ΔT2aとの差分を伝播時間として算出し、かかる伝播時間に基づいて測距値Daを算出し得る。例えば、通信制御部151は、伝播時間または伝播時間の半分(すなわち、片道の伝播時間)を測距値Daとしてもよいし、伝播時間または伝播時間の半分に電波の速度を乗じることにより、測距値Daを算出してもよい。
【0056】
第2の通信装置132において、取得部142が、固有情報ID1と、カウンタ情報♯1とを含んだ測距トリガ信号を取得すると(S12)、通信制御部152は、図示しない記録媒体にあらかじめ登録された固有情報と、測距トリガ信号に含まれる固有情報とを比較する。通信制御部152は、固有情報同士が一致する場合には、固有情報同士が一致することに基づいて、測距通信(第1の測距通信)を開始する。
【0057】
一例として、通信制御部152は、第2の通信装置132と携帯機20との距離の測定を要求するための信号(測距要求)の携帯機20への送信を制御する(S16)。このとき、通信制御部152は、携帯機20に送信される測距要求にカウンタ情報♯1を含める。
【0058】
携帯機20における通信部230は、測距要求を受信すると、測距要求に対する応答を測距応答として第2の通信装置132に返信する(S17)。このとき、携帯機20における端末制御部210は、カウンタ情報♯1と、測距要求の受信時刻から測距応答の送信時刻までの時間ΔT2bと、車両10と携帯機20との間においてあらかじめ共有されたシードSE1とを測距応答に含める。
【0059】
第2の通信装置132において、通信制御部152は、取得部142によって測距応答が取得されると、測距応答に含まれるシードSE1と、車両10において保持されているシードとを比較する。通信制御部151は、測距応答に含まれるシードSE1と車両10において保持されているシードとが一致する場合には、第2の通信装置132と携帯機20における通信部230との間の測距要求および測距応答の伝播時間に基づいて測距通信の結果を得る。例えば、通信制御部152は、かかる伝播時間に基づいて、測距通信の結果の例として測距値Dbを算出する(S18)。
【0060】
より詳細に、通信制御部152は、測距要求の受信時刻から測距応答の送信時刻までの時間ΔT2bを測距応答から取得する。そして、通信制御部152は、測距要求の送信時刻から測距応答の受信時刻までの時間ΔT1bと、測距要求の受信時刻から測距応答の送信時刻までの時間ΔT2bとの差分を伝播時間として算出し、かかる伝播時間に基づいて測距値Dbを算出し得る。例えば、通信制御部152は、伝播時間または伝播時間の半分(すなわち、片道の伝播時間)を測距値Dbとしてもよいし、伝播時間または伝播時間の半分に電波の速度を乗じることにより、測距値Dbを算出してもよい。
【0061】
図3に示された例では、車両10が、あらかじめシードSE1を共有した正規の通信相手である携帯機20から測距トリガ信号を受信する場合を想定されている。しかし、上記したように、車両10が受信する測距トリガ信号は、正規の通信相手ではない携帯機から送信された測距トリガ信号である場合もあり得る。かかる場合を想定して、通信システム1の動作例を以下に説明する。
【0062】
第1の通信装置131において、取得部141は、正規の通信相手ではない携帯機から測距トリガ信号を取得する。この測距トリガ信号には、固有情報とカウンタ情報とが含まれている。しかし、正規の通信相手ではない携帯機は、車両10が保持している固有情報と一致する固有情報を保持していない。したがって、通信制御部151は、図示しない記録媒体にあらかじめ登録された固有情報と、測距トリガ信号に含まれる固有情報とが一致しないと判定する。
【0063】
このとき、通信制御部151は、固有情報同士が一致しないことに基づいて、測距トリガ信号を送信した携帯機が不適合な携帯機であるとして、測距通信(第1の測距通信)を開始しない。これによって、測距通信において行われるシード同士の比較が行われないため、シード同士が一致せずに通信が不成立となってしまうことがなくなり、測距を行うことができなくなってしまう可能性が低減され得る。換言すると、正規の通信相手である携帯機20と車両10との間における測距がより確実に行われるように制御され得る。
【0064】
より詳細に、通信制御部151は、固有情報同士が一致しないことに基づいて、測距通信を開始せずに、測距トリガ信号の受信待機状態を維持する。これによって、通信制御部151によって、正規の通信相手である携帯機20からの測距トリガ信号の受信が待機され得る。一例として、通信制御部151は、測距要求の正規の通信相手ではない携帯機への送信を制御しないことにより、測距通信を開始しないようにしてもよい。なお、通信制御部151は、受信待機状態に遷移してから所定の時間が経過したことに基づいて、受信待機状態を解除してもよい。
【0065】
第2の通信装置132において、取得部142は、正規の通信相手ではない携帯機から測距トリガ信号を取得する。通信制御部151と同様に、通信制御部152は、図示しない記録媒体にあらかじめ登録された固有情報と、測距トリガ信号に含まれる固有情報とが一致しないと判定する。そして、通信制御部152は、固有情報同士が一致しないことに基づいて、測距通信(第1の測距通信)を開始しない。
【0066】
より詳細に、通信制御部152は、固有情報同士が一致しないことに基づいて、測距通信を開始せずに、測距トリガ信号の受信待機状態を維持する。一例として、通信制御部152は、測距要求の正規の通信相手ではない携帯機への送信を制御しないことにより、測距通信を開始しないようにしてもよい。なお、通信制御部152は、受信待機状態に遷移してから所定の時間が経過したことに基づいて、受信待機状態を解除してもよい。
【0067】
続いて、車両10が、受信待機状態において正規の通信相手である携帯機20から測距トリガ信号を受信する場合を想定する。ここで、車両10によって受信される測距トリガ信号(第2の測距トリガ信号)の送信元の携帯機が正規の通信相手であるか否かに関わらず、当該測距トリガ信号(第2の測距トリガ信号)の送信元の携帯機は、第2の携帯機に該当する。
【0068】
第1の通信装置131において、取得部141は、受信待機状態において正規の通信相手である携帯機20から測距トリガ信号を取得する。この測距トリガ信号には、固有情報とカウンタ情報とが含まれている。正規の通信相手である携帯機20は、車両10が保持している固有情報と一致する固有情報を保持しているため、通信制御部151は、図示しない記録媒体にあらかじめ登録された固有情報と、測距トリガ信号に含まれる固有情報とが一致すると判定する。
【0069】
このとき、通信制御部151は、固有情報同士が一致することに基づいて、測距通信(第2の測距通信)を開始する。一例として、通信制御部151は、第1の通信装置131と携帯機20との距離(第2の距離)の測定を要求するための信号(第2の測距要求)の携帯機20への送信を制御する(S13)。このとき、通信制御部151は、携帯機20に送信される測距要求にカウンタ情報♯1を含める。その後は、上記したS14およびS15と同様の処理が実行され得る。
【0070】
第2の通信装置132において、取得部142は、受信待機状態において正規の通信相手である携帯機20から測距トリガ信号を取得する。通信制御部151と同様に、通信制御部152は、図示しない記録媒体にあらかじめ登録された固有情報と、測距トリガ信号に含まれる固有情報とが一致すると判定する。
【0071】
このとき、通信制御部152は、固有情報同士が一致することに基づいて、測距通信(第2の測距通信)を開始する。一例として、通信制御部152は、第2の通信装置132と携帯機20との距離(第2の距離)の測定を要求するための信号(第2の測距要求)の携帯機20への送信を制御する(S16)。このとき、通信制御部152は、携帯機20に送信される測距要求にカウンタ情報♯1を含める。その後は、上記したS17およびS18と同様の処理が実行され得る。
【0072】
通信制御部151は、カウンタ情報♯1と、測距通信の結果の例として得た測距値Daとを制御装置110に出力する。また、通信制御部152は、カウンタ情報♯1と、測距通信の結果の例として得た測距値Dbとを制御装置110に出力する。このように、カウンタ情報が測距通信の結果と対応付けられて出力されることによって、携帯機20と第1の通信装置131との間の測距通信の結果、および、携帯機20と第2の通信装置132との間の測距通信の結果の時間的な対応関係が担保され得る。
【0073】
位置推定部114は、携帯機20と第1の通信装置131との間の測距通信の結果と、携帯機20と第2の通信装置132との間の測距通信の結果とに基づいて、携帯機20の位置を推定する。
【0074】
携帯機20の位置を推定する処理の例について詳細に説明すると、以下の通りとなる。すなわち、車両10の図示しない記録媒体には、第1の通信装置131の位置および第2の通信装置132の位置があらかじめ登録されている。位置推定部114は、車両10の図示しない記録媒体から、第1の通信装置131の位置および第2の通信装置132の位置を取得する。
【0075】
そして、位置推定部114は、携帯機20と第1の通信装置131との間の測距通信の結果と第1の通信装置131の位置とに応じた位置(以下、「第1の候補位置」とも言う。)を算出する。例えば、第1の候補位置は、第1の通信装置131の位置を基準として、携帯機20と第1の通信装置131との間の測距値を半径とする円周または球面であってよい。
【0076】
同様に、位置推定部114は、携帯機20と第2の通信装置132との間の測距通信の結果と第2の通信装置132の位置とに応じた位置(以下、「第2の候補位置」とも言う。)を算出する。例えば、第2の候補位置は、第2の通信装置132の位置を基準として、携帯機20と第2の通信装置132との間の測距値を半径とする円周または球面であってよい。
【0077】
位置推定部114は、このようにして算出した第1の候補位置と第2の候補位置と、に基づいて、携帯機20の位置を推定する。一例として、位置推定部114は、第1の候補位置と第2の候補位置とが重複する位置を携帯機20の位置として推定し得る。なお、位置推定部114は、携帯機20の位置を二次元座標として算出してもよいし、三次元座標として算出してもよい。あるいは、位置推定部114は、このようにして算出した携帯機20の二次元座標または三次元座標が属するエリアを、携帯機20の位置として推定してもよい。
【0078】
あるいは、携帯機20と第1の通信装置131との間の測距通信、および、携帯機20と第1の通信装置131との間の測距通信がそれぞれ複数回(例えば、5回など)実行される場合も想定され得る。かかる場合には、複数の測距値のうち最小となる測距値が(障害物による電波の反射が少なく)最も精度が高い可能性があるため、携帯機20の位置の推定に用いられるのが望ましい。
【0079】
作動制御部116は、位置推定部114によって推定された携帯機20の位置に応じた処理の実行を制御する。一例として、作動制御部116は、位置推定部114によって推定された携帯機20の位置に基づいて、車両10の作動を制御する。これによって、携帯機20の位置に応じて車両10の作動が制御されるため、ユーザの利便性が向上する。
【0080】
より詳細に、作動制御部116は、位置推定部114によって推定された携帯機20の位置が車室外であると判定された場合に、ボディECU42によるドアロック装置41の施錠または解錠の作動を許可してもよい。これよって、例えば、ドア施錠時に車外ドアハンドルがタッチ操作されると、車両ドアが解錠され、ドア解錠時に車外ドアハンドルのロックボタンが押し操作されると、車両ドアが施錠される。
【0081】
他の一例として、作動制御部116は、位置推定部114によって推定された携帯機20の位置が車室内であると判定された場合に、車両10のエンジンの始動を許可してもよい。これによって、例えば、ブレーキペダルが踏み込まれながらエンジンスイッチ50が操作されると、エンジン51が始動する。より詳細に、作動制御部116は、位置推定部114によって推定された携帯機20の位置が車室内であると判定された場合に、車室内のエンジンスイッチ50による車両電源の遷移操作を許可してもよい。
【0082】
なお、作動制御部116による作動制御の対象は、車両10の機械または装置に限定されない。作動制御部116は、位置推定部114によって推定された携帯機20の位置に基づいて、車両10以外の機械または装置の作動を制御してもよい。
【0083】
(第2の動作例)
続いて、図4を用いて、本発明の実施形態に係る通信システム1の第2の動作例について説明する。図3を用いて説明した第1の動作例と同様に、車両10の判別に必要となる固有情報(第1の固有情報)が、車両10における図示しない記録媒体にあらかじめ登録されている。
【0084】
図4は、本発明の実施形態に係る通信システム1の第2の動作例を示すシーケンス図である。図3を用いて説明した第1の動作例と同様に、車両10と携帯機20との間においてシードと固有情報とが共有される。さらに、図3を用いて説明した第1の動作例と同様に、通信制御部151は、携帯機20の認証が成功したことに基づいて、測距トリガ信号の受信待機状態に遷移する。同様に、第2の通信装置132において、通信制御部152は、携帯機20の認証が成功したことに基づいて、測距トリガ信号の受信待機状態に遷移する。
【0085】
続いて、図3を用いて説明した第1の動作例と同様に、携帯機20は、車両10から受信された固有情報と、携帯機20から車両10(すなわち、第1の通信装置131または第2の通信装置132)への測距トリガ信号の過去の送信回数に応じたカウンタ情報とを含んだ測距トリガ信号を送信する。
【0086】
図4に示されるように、第1の通信装置131において、取得部141が、固有情報ID1と、カウンタ情報♯1とを含んだ測距トリガ信号を取得すると(S11)、通信制御部151は、図示しない記録媒体にあらかじめ登録された固有情報と、測距トリガ信号に含まれる固有情報とを比較する。通信制御部151は、固有情報同士が一致する場合には、固有情報同士が一致することに基づいて、測距通信(第1の測距通信)を開始する。
【0087】
一例として、通信制御部151は、第1の通信装置131と携帯機20との距離の測定に用いられる信号(以下、「測距用信号」とも言う。)が携帯機20から受信されることを待機する。
【0088】
同様に、第2の通信装置132において、取得部142が、固有情報ID1と、カウンタ情報♯1とを含んだ測距トリガ信号を取得すると(S12)、通信制御部152は、図示しない記録媒体にあらかじめ登録された固有情報と、測距トリガ信号に含まれる固有情報とを比較する。通信制御部152は、固有情報同士が一致する場合には、固有情報同士が一致することに基づいて、測距通信(第1の測距通信)を開始する。
【0089】
一例として、通信制御部152は、第2の通信装置132と携帯機20との距離の測定に用いられる信号(測距用信号)が携帯機20から受信されることを待機する。
【0090】
携帯機20における通信部230は、第1の測距用信号を送信する。このとき、携帯機20における端末制御部210は、カウンタ情報♯1と、車両10と携帯機20との間においてあらかじめ共有されたシードSE1とを第1の測距用信号に含める。
【0091】
第1の通信装置131において、通信制御部151は、取得部141によって第1の測距用信号が取得されると(S32)、第1の測距用信号に含まれるシードSE1と、車両10において保持されているシードとを比較する。通信制御部151は、第1の測距用信号に含まれるシードSE1と車両10において保持されているシードとが一致する場合には、第2の測距用信号を送信する(S33)。このとき、通信制御部151は、カウンタ情報♯1を第2の測距用信号に含める。
【0092】
第2の通信装置132において、通信制御部152は、取得部142によって第1の測距用信号が取得されると(S33)、第1の測距用信号に含まれるシードSE1と、車両10において保持されているシードとを比較する。通信制御部151は、第1の測距用信号に含まれるシードSE1と車両10において保持されているシードとが一致する場合には、第2の測距用信号を送信する(S34)。このとき、通信制御部152は、カウンタ情報♯1を第2の測距用信号に含める。
【0093】
携帯機20における端末制御部210は、第1の通信装置131から第2の測距用信号が通信部230によって受信されると、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の第1の通信装置131からの受信時刻までの時間ΔT1aを算出する。さらに、携帯機20における端末制御部210は、第2の通信装置132から第2の測距用信号が通信部230によって受信されると、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の第2の通信装置132からの受信時刻までの時間ΔT1bを算出する。
【0094】
携帯機20における通信部230は、データを含んだ信号であるデータ信号を送信する。このとき、端末制御部210は、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の第1の通信装置131からの受信時刻までの時間ΔT1aと、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の第2の通信装置132からの受信時刻までの時間ΔT1bと、カウンタ情報♯1とを、データ信号に含める。
【0095】
第1の通信装置131において、通信制御部151は、取得部141によってデータ信号が取得されると(S35)、第1の測距用信号の受信時刻から第2の測距用信号の送信時刻までの時間ΔT2aを算出する。通信制御部151は、カウンタ情報♯1と、測距通信の結果の例としてのΔT1a、ΔT2aと、ΔT1bとを、制御装置110に出力する。
【0096】
第2の通信装置132において、通信制御部152は、取得部142によってデータ信号が取得されると(S36)、第1の測距用信号の受信時刻から第2の測距用信号の送信時刻までの時間ΔT2bを算出する。通信制御部152は、カウンタ情報♯1と、測距通信の結果の例としてのΔT1b、ΔT2bと、ΔT1aとを、制御装置110に出力する。
【0097】
このように、ΔT1a、ΔT1bが第1の通信装置131および第2の通信装置132から重複して制御装置110に出力されることによって、第1の通信装置131および第2の通信装置132のいずれかにおいて、ΔT1a、ΔT1bの少なくともいずれか一方が携帯機20から受信されない場合であっても、ΔT1a、ΔT1bの双方が制御装置110に入力される可能性が高まる。
【0098】
図4に示された例では、車両10が、あらかじめシードSE1を共有した正規の通信相手である携帯機20から測距トリガ信号を受信する場合を想定されている。しかし、上記したように、車両10が受信する測距トリガ信号は、正規の通信相手ではない携帯機から送信された測距トリガ信号である場合もあり得る。かかる場合を想定して、通信システム1の動作例を以下に説明する。
【0099】
第1の通信装置131において、取得部141は、正規の通信相手ではない携帯機から測距トリガ信号を取得する。この測距トリガ信号には、固有情報とカウンタ情報とが含まれている。しかし、正規の通信相手ではない携帯機は、車両10が保持している固有情報と一致する固有情報を保持していない。したがって、通信制御部151は、図示しない記録媒体にあらかじめ登録された固有情報と、測距トリガ信号に含まれる固有情報とが一致しないと判定する。
【0100】
このとき、図3を用いて説明した第1の動作例と同様に、通信制御部151は、固有情報同士が一致しないことに基づいて、測距通信(第1の測距通信)を開始しない。より詳細に、通信制御部151は、固有情報同士が一致しないことに基づいて、測距通信を開始せずに、測距トリガ信号の受信待機状態を維持する。
【0101】
一例として、通信制御部151は、正規の通信相手ではない携帯機から第1の測距用信号が受信されたとしても、第1の測距用信号に対応する第2の測距用信号を返信しないようにしてもよい。なお、通信制御部151は、受信待機状態に遷移してから所定の時間が経過したことに基づいて、受信待機状態を解除してもよい。
【0102】
第2の通信装置132において、取得部142は、正規の通信相手ではない携帯機から測距トリガ信号を取得する。通信制御部151と同様に、通信制御部152は、図示しない記録媒体にあらかじめ登録された固有情報と、測距トリガ信号に含まれる固有情報とが一致しないと判定する。
【0103】
このとき、通信制御部152は、通信制御部151と同様に、固有情報同士が一致しないことに基づいて、測距通信(第1の測距通信)を開始しない。より詳細に、通信制御部152は、固有情報同士が一致しないことに基づいて、測距通信を開始せずに、測距トリガ信号の受信待機状態を維持する。
【0104】
一例として、通信制御部152は、通信制御部151と同様に、正規の通信相手ではない携帯機から第1の測距用信号が受信されたとしても、第1の測距用信号に対応する第2の測距用信号を返信しないようにしてもよい。なお、通信制御部152は、通信制御部151と同様に、受信待機状態に遷移してから所定の時間が経過したことに基づいて、受信待機状態を解除してもよい。
【0105】
続いて、車両10が、受信待機状態において正規の通信相手である携帯機20から測距トリガ信号を受信する場合を想定する。
【0106】
第1の通信装置131において、取得部141は、受信待機状態において正規の通信相手である携帯機20から測距トリガ信号を取得する。この測距トリガ信号には、固有情報とカウンタ情報とが含まれている。正規の通信相手である携帯機20は、車両10が保持している固有情報と一致する固有情報を保持しているため、通信制御部151は、図示しない記録媒体にあらかじめ登録された固有情報と、測距トリガ信号に含まれる固有情報とが一致すると判定する。
【0107】
このとき、通信制御部151は、固有情報同士が一致することに基づいて、測距通信(第2の測距通信)を開始する。一例として、通信制御部151は、第1の通信装置131と携帯機20との距離(第2の距離)の測定に用いられる信号(第1の測距用信号)の携帯機20からの受信を待機する。その後は、上記したS31、S33およびS35と同様の処理が実行され得る。
【0108】
第2の通信装置132において、取得部142は、受信待機状態において正規の通信相手である携帯機20から測距トリガ信号を取得する。通信制御部151と同様に、通信制御部152は、図示しない記録媒体にあらかじめ登録された固有情報と、測距トリガ信号に含まれる固有情報とが一致すると判定する。
【0109】
このとき、通信制御部152は、固有情報同士が一致することに基づいて、測距通信(第2の測距通信)を開始する。一例として、通信制御部152は、第2の通信装置132と携帯機20との距離(第2の距離)の測定に用いられる信号(第1の測距用信号)の携帯機20からの受信を待機する。その後は、上記したS32、S34およびS36と同様の処理が実行され得る。
【0110】
図3を用いて説明した第1の動作例と同様に、位置推定部114は、携帯機20と第1の通信装置131との間の測距通信の結果と、携帯機20と第2の通信装置132との間の測距通信の結果とに基づいて、携帯機20の位置を推定する。さらに、図3を用いて説明した第1の動作例と同様に、作動制御部116は、位置推定部114によって推定された携帯機20の位置に応じた処理の実行を制御する。
【0111】
<<1.4.効果>>
上記の実施形態によれば、車両10に搭載される第1の通信装置131であって、第1の通信装置131と携帯機との第1の距離の測定を開始するための第1の測距トリガ信号を取得する取得部141と、あらかじめ登録された車両10の判別に必要となる第1の固有情報と、第1の測距トリガ信号に含まれる車両の判別に必要となる第2の固有情報とが一致しないことに基づいて、第1の距離を測定するための第1の測距通信を開始しない通信制御部151と、を備える、第1の通信装置131が提供される。
【0112】
かかる構成によれば、測距通信において行われるシード同士の比較が行われないため、シード同士が一致せずに通信が不成立となってしまうことがなくなり、測距を行うことができなくなってしまう可能性が低減され得る。換言すると、正規の通信相手である携帯機と車両10との間における測距がより確実に行われるように制御され得る。
【0113】
なお、第1の通信装置131は、第2の通信装置132にも置き換えられ得る。
【0114】
<<1.5.変形例>>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0115】
(測距トリガ信号に関する変形例)
例えば、上記では、測距トリガ信号がUWB電波によって送信される例について主に説明した。しかし、どのような信号が測距トリガ信号として扱われるかは限定されない。例えば、測距トリガ信号は、車両10の図示しないBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)機器が発信したアドバタイズ信号に対する応答として携帯機20から送信される接続要求信号であってもよい。あるいは、測距トリガ信号は、ウェイク信号に対する応答として携帯機20から送信されるアック信号であってもよい。
【0116】
このとき、例えば、車両10において、図示しないLF送信機は、ウェイク信号をLF送信する。携帯機20において、図示しないLF受信部によってウェイク信号が受信されると、端末制御部210は、待機状態から起動し、図示しないUHF送信部によってアック信号がUHF送信される。車両10において、図示しないUHF受信機によってウェイク信号に対するアック信号を携帯機20から受信すると、端末制御部210によって測距要求の出力が制御される。
【0117】
あるいは、測距トリガ信号は、車両ドアのドアノブへの操作が行われたことを示す信号であってもよいし、エンジンスイッチ50の操作が行われたことを示す信号であってもよい。
【0118】
(作動許可に関する変形例)
上記では、作動制御部116が、位置推定部114によって推定された携帯機20の位置に基づいて、車両10の作動を制御する場合を主に説明した。特に、上記では、携帯機20の位置が車室外であると判定された場合に、車両10のドアの施錠または解錠を許可する場合を説明し、携帯機20の位置が車室内であると判定された場合に、車両10のエンジンの始動を許可する場合を説明した。しかし、作動が許可される対象は、これらに限定されない。
【0119】
一例として、ユーザが車両10から離れた場所において携帯機20を操作することによって、車両10を移動させたり停止させたりすることが可能な技術(リモートパーキング)が知られている。リモートパーキングが利用される場合には、ユーザが車両10からある程度離れてから車両10の移動が許可されないと、ユーザと車両10とが意図せず衝突してしまうといった事態が生じ得る。したがって、作動制御部116は、位置推定部114によって推定された携帯機20の位置が、車両10から所定の距離よりも遠いエリア内であると判定された場合に、車両10の移動を許可してもよい。
【0120】
より詳細に、携帯機20から送信されるリモート操作信号に基づいて、エンジン始動から停止までの駐車に関する動作を制御する各種のアクチュエータ(パーキングアクチュエータ)が車両10に設けられている場合を想定する。このとき、作動制御部116は、携帯機20の位置が、車両10から所定の距離よりも遠いエリア内であると判定された場合に、携帯機20から送信されるリモート操作信号に基づくパーキングアクチュエータによる、ステアリングの自動操舵、自動走行または駐停車の制御を許可してもよい。
【0121】
(通信装置に関する変形例)
上記では、携帯機20との間で測距通信を行う通信装置が二つ(第1の通信装置131と第2の通信装置132)である場合を主に想定した。しかし、携帯機20との間で測距通信を行う通信装置は、三つ以上であってもよい。かかる場合には、携帯機20との間で測距通信を行う通信装置は、携帯機20と三つ以上の通信装置それぞれとの測距通信の結果に基づいて携帯機20の位置が推定される得るため、より高精度に携帯機20の位置が推定され得る。なお、一例として、三つ以上の通信装置のうち、一つの通信装置がマスター通信機として機能し、残りの通信装置が、スレーブ通信機として機能してよい。
【符号の説明】
【0122】
1…通信システム、10…車両、20…携帯機、41…ドアロック装置、42…ボディECU、50…エンジンスイッチ、51…エンジン、52…エンジンECU、110…制御装置、114…位置推定部、116…作動制御部、131…第1の通信装置、141…取得部、151…通信制御部、132…第2の通信装置、142…取得部、152…通信制御部、210…端末制御部、230…通信部。
図1
図2
図3
図4