(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】自動改札機制御装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240816BHJP
G08G 1/01 20060101ALI20240816BHJP
G07B 15/00 20110101ALI20240816BHJP
G16Y 20/10 20200101ALI20240816BHJP
G16Y 20/40 20200101ALI20240816BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20240816BHJP
【FI】
G06Q50/10
G08G1/01 F
G07B15/00 B
G07B15/00 H
G16Y20/10
G16Y20/40
G16Y40/20
(21)【出願番号】P 2021093420
(22)【出願日】2021-06-03
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】對馬 銀河
(72)【発明者】
【氏名】柴田 宗典
(72)【発明者】
【氏名】石突 光隆
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-035665(JP,A)
【文献】特開2014-206829(JP,A)
【文献】特開2016-122373(JP,A)
【文献】特開平06-124374(JP,A)
【文献】特開平11-195153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B61L 1/00-99/00
G07B 11/00-17/04
G08G 1/00-99/00
G16Y 10/00-40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の自動改札機が設置された駅の駅勢圏に存在する人の分布情報である人分布情報を外部から取得する人分布情報取得手段と、
前記人分布情報の基準となる基準人分布情報と、前記取得された人分布情報との差に基づいて、前記駅勢圏における特異的な人の増加が発生していることを示す所定のイベント条件を満たすこと(以下このイベント条件を満たす状態を「イベント」という)を検出するイベント検出手段と、
前記基準人分布情報に対する前記人分布情報の差である超過人口分布情報に基づいて、前記イベントに係る超過人口が前記駅へ到達する予測到達人数の時系列変化である超過人口到達波動を予測する波動予測手段と、
前記超過人口到達波動に基づいて、前記自動改札機の入改札を増やすタイミングを制御する制御手段と、
を備え
、
前記人分布情報、前記基準人分布情報、及び前記超過人口分布情報は、前記駅勢圏を所定の地理的単位で区切った各地理的単位における人数の情報であり、
前記超過人口分布情報に基づいて前記イベントの地理的範囲であるイベント範囲を判定する範囲判定手段、
を更に備え、
前記波動予測手段は、前記駅と前記イベント範囲との間の距離が遠いほど、時間経過に対する前記予測到達人数の増加が緩やかであると推定して前記超過人口到達波動を予測する、
自動改札機制御装置。
【請求項2】
複数の自動改札機が設置された駅の駅勢圏に存在する人の分布情報である人分布情報を外部から取得する人分布情報取得手段と、
前記人分布情報の基準となる基準人分布情報と、前記取得された人分布情報との差に基づいて、前記駅勢圏における特異的な人の増加が発生していることを示す所定のイベント条件を満たすこと(以下このイベント条件を満たす状態を「イベント」という)を検出するイベント検出手段と、
前記基準人分布情報に対する前記人分布情報の差である超過人口分布情報に基づいて、前記イベントに係る超過人口が前記駅へ到達する予測到達人数の時系列変化である超過人口到達波動を予測する波動予測手段と、
前記超過人口到達波動に基づいて、前記自動改札機の入改札を増やすタイミングを制御する制御手段と、
を備え
、
前記人分布情報、前記基準人分布情報、及び前記超過人口分布情報は、前記駅勢圏を所定の地理的単位で区切った各地理的単位における人数の情報であり、
前記超過人口分布情報に基づいて前記イベントの地理的範囲であるイベント範囲を判定する範囲判定手段と、
前記超過人口分布情報の時間変化に基づいて、前記イベント範囲が前記駅に向けて移動を開始したことを検出する移動開始検出手段と、
を更に備え、
前記波動予測手段は、前記駅と前記イベント範囲との位置関係に基づいて前記超過人口到達波動を予測し、
前記制御手段は、前記移動開始検出手段による検出がなされた場合に、前記超過人口到達波動に基づく前記自動改札機の入改札の増加制御を行う、
自動改札機制御装置。
【請求項3】
複数の自動改札機が設置された駅の駅勢圏に存在する人の分布情報である人分布情報を外部から取得する人分布情報取得手段と、
前記人分布情報の基準となる基準人分布情報と、前記取得された人分布情報との差に基づいて、前記駅勢圏における特異的な人の増加が発生していることを示す所定のイベント条件を満たすこと(以下このイベント条件を満たす状態を「イベント」という)を検出するイベント検出手段と、
前記基準人分布情報に対する前記人分布情報の差である超過人口分布情報に基づいて、前記イベントに係る超過人口が前記駅へ到達する予測到達人数の時系列変化である超過人口到達波動を予測する波動予測手段と、
前記超過人口分布情報に基づいて、前記駅勢圏のうち所定の駅前範囲における前記超過人口の変化を監視する駅前範囲監視手段と、
前記監視された変化が所与の増加傾向条件を満たした場合に、前記超過人口到達波動に基づいて、前記自動改札機の入改札を増やす
制御を行う制御手段と、
を備える自動改札機制御装置。
【請求項4】
複数の自動改札機が設置された駅の駅勢圏に存在する人の分布情報である人分布情報を外部から取得する人分布情報取得手段と、
前記人分布情報の基準となる基準人分布情報と、前記取得された人分布情報との差に基づいて、前記駅勢圏における特異的な人の増加が発生していることを示す所定のイベント条件を満たすこと(以下このイベント条件を満たす状態を「イベント」という)を検出するイベント検出手段と、
前記基準人分布情報に対する前記人分布情報の差である超過人口分布情報に基づいて、前記イベントに係る超過人口が前記駅へ到達する予測到達人数の時系列変化である超過人口到達波動を予測する波動予測手段と、
前記自動改札機の入場及び出場別の通行人数である入出場者数を監視する入出場者数監視手段と、
所与の運行データに基づいて、前記駅から人を輸送する輸送可能人数を推定する輸送人数推定手段と、
前記入出場者数と前記輸送可能人数とに基づいて、前記駅の滞留状況を推測する滞留状況推測手段と、
前記超過人口到達波動に基づく前記自動改札機の入改札の増加制御を行い、当該増加制御の後に、前記滞留状況に基づく当該増加制御の解除条件を満たした状態が所定時間継続した場合に当該増加制御を解除する制御を行う制御手段と、
を備える自動改札機制御装置。
【請求項5】
前記波動予測手段は、前記超過人口分布情報の時間変化に基づいて、前記超過人口到達波動を予測する、
請求項
1~4の何れか一項に記載の自動改札機制御装置。
【請求項6】
前記超過人口分布情報に基づいて前記イベントに係る人数であるイベント人数を推定するイベント人数推定手段、
を更に備え、
前記波動予測手段は、前記イベント人数に基づいて前記超過人口到達波動を予測する、
請求項
1~5の何れか一項に記載の自動改札機制御装置。
【請求項7】
前記自動改札機の入場及び出場別の通行人数である入出場者数を監視する入出場者数監視手段と、
所与の運行データに基づいて、前記駅から人を輸送する輸送可能人数を推定する輸送人数推定手段と、
前記入出場者数と前記輸送可能人数とに基づいて、前記駅の滞留状況を推測する滞留状況推測手段と、
を更に備え、
前記制御手段は、前記滞留状況が所定の入場調整必要条件を満たした場合に、前記超過人口到達波動に基づく前記自動改札機の入改札の増加制御を中止し、前記自動改札機の入改札を減らす又は無しとする入場調整制御を行う、
請求項1~
6の何れか一項に記載の自動改札機制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動改札機を制御する自動改札機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過度な混雑にならずに旅客が安全に駅に滞留することができる人数の上限として滞留可能人数という考えがある。駅の出入口に設置される自動改札機の入改札/出改札/改札停止の切り換え制御は、実際に改札内に滞留している人数を調整する重要な要素である。
【0003】
特許文献1には、自動改札機を通行する入場者数/出場者数をそれぞれカウントし、基準データと比較して、複数ある自動改札機の入改札/出改札の台数比(入出比)を切り換える技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、駅の自動改札機を通行する入場者数をカウントするとともに、鉄道の運行にともなって発車した列車の本数当たりの減算数をカウントされた入場者数から減算し、入場者数が上限値に達すると自動改札機を閉じて改札停止にする技術が開示されている。
【0005】
また、自動改札機の制御とは別に、人々が携帯する携帯端末から位置情報を取得して特定場所の混雑率を求める技術(例えば、特許文献3を参照)も知られるところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-195153号公報
【文献】特開2020-154679号公報
【文献】特開2002-288385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
駅における滞留人数の調整が困難になりやすい状況の1つが、駅勢圏内においてスポーツの試合や、ライブコンサート、展示会、学会、入試等の各種試験、などのイベントが開催されてイベント終了後にイベント利用者が駅に集中する状況である。こうした状況では、駅の混雑率が急激に高まり、従来の自動改札機の制御では対応が遅れるケースがあった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、急激な混雑の発生にも対応できる自動改札機の制御技術を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための第1の発明は、複数の自動改札機が設置された駅の駅勢圏に存在する人の分布情報である人分布情報を外部から取得する人分布情報取得手段(例えば、
図1の制御基板1150、通信装置1153、
図6の処理部200、人分布情報取得部208、第1通信部301、
図7の取得済人分布情報530、
図8のステップS10)と、
前記人分布情報の基準となる基準人分布情報と、前記取得された人分布情報との差に基づいて、前記駅勢圏における特異的な人の増加が発生していることを示す所定のイベント条件を満たすこと(以下このイベント条件を満たす状態を「イベント」という)を検出するイベント検出手段(例えば、
図1の制御基板1150、
図6の処理部200、イベント検出部210、
図10のステップS46)と、
前記基準人分布情報に対する前記人分布情報の差である超過人口分布情報に基づいて、前記イベントに係る超過人口が前記駅へ到達する予測到達人数の時系列変化である超過人口到達波動を予測する波動予測手段(例えば、
図1の制御基板1150、
図6の処理部200、波動予測部216、
図7の超過人口到達波動データ564、
図10のステップS54)と、
前記超過人口到達波動に基づいて、前記自動改札機の入改札を増やすタイミングを制御する制御手段(例えば、
図1の制御基板1150、
図6の処理部200、
図9のステップS90~ステップS92)と、を備える自動改札機制御装置、である。
【0010】
第1の発明の自動改札機制御装置は、駅勢圏に係る人分布情報を外部から取得し、基準人分布情報に対する特異的な人の増加を検出し、これをもって駅勢圏におけるイベントを検出することができる。そして、超過人口到達波動を予測して、当該予測に基づいて自動改札機の入改札を増やすタイミングを制御できる。従来のように、改札内の滞留人数が急激に増加してから自動改札機の入改札を増やすのではなく、予測に基づいて混雑が到来するタイミングを適確に判断し、そのタイミングに応じて入改札を増やすことができるようになるため、混雑対応の遅れを無くすことができる。
【0011】
第2の発明は、前記波動予測手段が、前記超過人口分布情報の時間変化に基づいて、前記超過人口到達波動を予測する(例えば、
図10のステップS40~ステップS46)、第1の発明の自動改札機制御装置である。
【0012】
第2の発明の自動改札機制御装置は、時々刻々と変化する超過人口分布情報に基づいて超過人口到達波動を予測できる。このため、超過人口到達波動の予測精度を向上させることができる。
【0013】
第3の発明は、前記超過人口分布情報に基づいて前記イベントに係る人数であるイベント人数を推定するイベント人数推定手段(例えば、
図1の制御基板1150、
図6の処理部200、イベント人数推定部214、
図7のイベント人数562、
図10のステップS52)、を更に備え、前記波動予測手段は、前記イベント人数に基づいて前記超過人口到達波動を予測する、第1又は第2の発明の自動改札機制御装置である。
【0014】
第3の発明の自動改札機制御装置は、超過人口分布情報に基づいてイベント人数を推定し、その推定したイベント人数に基づいて超過人口到達波動を予測できる。このため、超過人口到達波動の予測精度を向上させることができる。
【0015】
第4の発明は、前記人分布情報、前記基準人分布情報、及び前記超過人口分布情報は、前記駅勢圏を所定の地理的単位で区切った各地理的単位における人数の情報であり、
前記超過人口分布情報に基づいて前記イベントの地理的範囲であるイベント範囲を判定する範囲判定手段(例えば、
図1の制御基板1150、
図6の処理部200、範囲判定部212、
図7のイベント範囲メッシュリスト554、
図10のステップS42)、を更に備え、前記波動予測手段は、前記駅と前記イベント範囲との位置関係に基づいて前記超過人口到達波動を予測する、第1~第3の何れかの発明の自動改札機制御装置である。
【0016】
第4の発明の自動改札機制御装置は、人分布情報、基準人分布情報、及び超過人口分布情報が、駅勢圏を所定の地理的単位で区切った各地理的単位における人数の情報であり、超過人口分布情報に基づいてイベントの地理的範囲であるイベント範囲を判定する。そして、イベント範囲に基づいて超過人口到達波動を予測できる。このため、超過人口到達波動の予測精度を向上させることができる。
【0017】
第5の発明は、前記波動予測手段が、前記駅と前記イベント範囲との間の距離が遠いほど、時間経過に対する前記予測到達人数の増加が緩やかであると推定して前記超過人口到達波動を予測する、第4の発明の自動改札機制御装置である。
【0018】
第5の発明の自動改札機制御装置によれば、超過人口到達波動の予測精度を向上させることが可能になる。
【0019】
第6の発明は、前記超過人口分布情報の時間変化に基づいて、前記イベント範囲が前記駅に向けて移動を開始したことを検出する移動開始検出手段(例えば、
図1の制御基板1150、
図6の処理部200、移動開始検出部220、
図9のステップS80)、を更に備え、前記制御手段は、前記移動開始検出手段による検出がなされた場合に、前記超過人口到達波動に基づく前記自動改札機の入改札の増加制御を行う、第4又は第5の発明の自動改札機制御装置である。
【0020】
第6の発明の自動改札機制御装置は、駅勢圏内においてイベントが検出されても、実際に超過人口が駅に向かって移動を開始しない状況では通常通りの制御を行い、移動開始を検出した後に自動改札機の入改札の増加制御を行う。
【0021】
第7の発明は、前記超過人口分布情報に基づいて、前記駅勢圏のうち所定の駅前範囲における前記超過人口の変化を監視する駅前範囲監視手段(例えば、
図1の制御基板1150、
図6の処理部200、駅前範囲監視部218、
図10のステップS60)、を更に備え、前記制御手段は、前記監視された変化が所与の増加傾向条件を満たした場合に、前記自動改札機の入改札を増やす制御を行う(例えば、
図9のステップS84)、第1~第6の何れかの発明の自動改札機制御装置である。
【0022】
第7の発明の自動改札機制御装置は、イベント人数に基づく超過人口到達波動とは別の処理として、駅前範囲における超過人口の変化を監視し、所与の増加傾向条件を満たした場合に自動改札機の入改札を増やす制御を行う。そのため、超過人口到達波動に基づく自動改札機の入改札増加制御のバックアップとして、イベント駅前範囲における超過人口の増加に速やかに対応することが可能となる。
【0023】
第8の発明は、前記自動改札機の入場及び出場別の通行人数である入出場者数を監視する入出場者数監視手段(例えば、
図1の制御基板1150、
図6の処理部200、入出場者数監視部202、
図7の改札データ520、
図8のステップS12)と、
所与の運行データに基づいて、前記駅から人を輸送する輸送可能人数を推定する輸送人数推定手段(例えば、
図1の制御基板1150、
図6の処理部200、輸送人数推定部204、
図7の改札運行データ分析結果データ524、
図8のステップS14)と、
前記入出場者数と前記輸送可能人数とに基づいて、前記駅の滞留状況を推測する滞留状況推測手段(例えば、
図1の制御基板1150、
図6の処理部200、滞留状況推測部206、
図7の改札運行データ分析結果データ524、
図8のステップS20~ステップS22)と、を備え、前記制御手段は、前記超過人口到達波動に基づく前記自動改札機の入改札の増加制御を行った後に、前記滞留状況に基づく当該増加制御の解除条件を満たした状態が、所定時間継続した場合に、当該増加制御を解除する、第1~第7の何れかの発明の自動改札機制御装置である。
【0024】
第8の発明の自動改札機制御装置は、入出場者数を監視するとともに、運行データに基づく輸送可能人数を推定し、入出場者数と輸送可能人数とに基づいて、駅の滞留状況を推測する。そして、超過人口到達波動に基づく自動改札機の入改札の増加制御を行った後に、滞留状況に基づく当該増加制御の解除条件を満たした状態が、所定時間継続した場合に、当該増加制御を解除する。従って、超過人口到達波動の影響がなくなったと見なせる状況になった場合に、増加制御を解除して通常の制御に戻すことができる。
【0025】
第9の発明は、前記自動改札機の入場及び出場別の通行人数である入出場者数を監視する入出場者数監視手段と、所与の運行データに基づいて、前記駅から人を輸送する輸送可能人数を推定する輸送人数推定手段と、前記入出場者数と前記輸送可能人数とに基づいて、前駅の滞留状況を推測する滞留状況推測手段(例えば、
図1の制御基板1150、
図6の処理部200、滞留状況推測部206、
図7の改札運行データ分析結果データ524、
図8のステップS20~ステップS22)と、を更に備え、前記制御手段は、前記滞留状況が所定の入場調整必要条件を満たした場合に、前記超過人口到達波動に基づく前記自動改札機の入改札の増加制御を中止し、前記自動改札機の入改札を減らす又は無しとする入場調整制御を行う、第1~第8の何れかの発明の自動改札機制御装置である。
【0026】
第9の発明の自動改札機制御装置は、入出場者数を監視するとともに、運行データに基づく輸送可能人数を推定し、入出場者数と輸送可能人数とに基づいて、駅の滞留状況を推測する。そして、滞留状況が所定の入場調整必要条件を満たした場合に、超過人口到達波動に基づく自動改札機の入改札の増加制御を中止し、自動改札機の入改札を減らす又は無しとする入場調整制御を行う。いわゆる「入場制限」を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】駅に外部より到達する外来人数の予測について説明するための図(その1)。
【
図3】駅に外部より到達する外来人数の予測について説明するための図(その2)。
【
図4】イベントに係る人々が駅への移動開始判定について説明するための図。
【
図5】自動改札機制御装置による自動改札機6の制御モードについて説明するための図。
【
図6】自動改札機制御装置の機能構成例を示す機能ブロック図。
【
図7】記憶部が記憶するプログラムやデータの例を示す図。
【
図8】自動改札機制御装置における処理の流れを説明するためのフローチャート。
【
図10】イベント検出分析処理の流れを説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を適用した実施形態の一例を説明するが、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。
【0029】
図1は、自動改札機制御装置に係るシステム構成図である。
自動改札機制御装置1100は、ネットワーク9を介して、駅4に設置されている複数の自動改札機6と、人分布情報提供システム20と、データ通信可能に接続されている。なお、自動改札機6の数は、図示の例にかぎらず駅4の規模等に応じて変化する。
【0030】
ネットワーク9は、データ通信が可能な通信路を意味する。すなわち、ネットワーク9とは、直接接続のための専用線(専用ケーブル)やイーサネット(登録商標)等によるLAN(Local Area Network)の他、電話通信網やケーブル網、インターネット等の通信網を含む意味であり、また、通信方法については有線/無線を問わない。
【0031】
自動改札機制御装置1100と自動改札機6とを接続するネットワーク9と、自動改札機制御装置1100と人分布情報提供システム20とを接続するネットワーク9とは、同じでなくてもよい。前者を駅構内LANとし、後者をインターネットとしてもよい。
【0032】
人分布情報提供システム20は、人々が携帯する携帯端末装置(例えば、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、ウェアラブルコンピュータ、など)であって、GPS(Global Positioning System)などによる測位機能を有する携帯端末装置から、それぞれの位置情報を時系列に取得・分析し、分析結果としての人分布情報22を外部装置(この場合、自動改札機制御装置1100)へ提供するコンピュータシステムである。
【0033】
人分布情報提供システム20は、当該システム運用者が提供するAPI(Application Programming Interface)に基づきアクセスしてきた外部装置へ、逐次、最新の人分布情報22を提供する。新たな人分布情報22の生成タイミングは適宜設定可能であるが、リアルタイム~数分程度の比較的短時間であるのが望ましい。
【0034】
人分布情報22は、現実の地理的範囲を所定の地理的単位で区切ったメッシュ24に対応づけ、メッシュ24毎の範囲情報及び当該メッシュの地理的範囲内に存在する最新の人数を含む情報である。人数は、人々の携帯情報端末の数でも良いし、携帯情報端末の数を元にした標本率から人口を推計した数、であってもよい。
【0035】
図1では、メッシュ24内の数(イタリック体で示す数値)が、当該各地理的単位における人数を示している。人分布情報22は、人分布情報提供システム20の運用形態によっては「混雑情報」「移動滞在マップデータ」「流動人口データ」などと読み替えることもできる。
【0036】
人分布情報22の対象となる地理的範囲は、駅4から所定距離の範囲であり、いわゆる駅勢圏を含む。地理的範囲を地理的単位に区切るメッシュについては、適宜設定可能である。
図1の例では、1つのメッシュ24(1つの地理的単位)を四角形状としてマトリクス状に配置した例を示しているが、メッシュ24の形状はこれに限らずその他の形状(例えば、三角形、六角形など)としてもよい。また、大きさも適宜設定することができる。
【0037】
自動改札機制御装置1100は、駅4に設置されている複数の自動改札機6に通信接続し、それら自動改札機6の動作を個別に制御する装置である。すなわち、自動改札機制御装置1100は、各自動改札機6を入改札/出改札/改札停止の何れかに動作制御することができる。
【0038】
自動改札機制御装置1100は、例えば本体装置1101と、キーボード1106と、タッチパネル1108と、ストレージ1140と、を有し、本体装置1101に制御基板1150を搭載するコンピュータシステムである。
【0039】
制御基板1150には、CPU(Central Processing Unit)1151やGPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などの各種マイクロプロセッサ、VRAMやRAM,ROM等の各種ICメモリ1152、通信装置1153が搭載されている。なお、制御基板1150の一部又は全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)や、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、SoC(System on a Chip)により実現するとしてもよい。
【0040】
そして、自動改札機制御装置1100は、制御基板1150が所定のプログラム及びデータに基づいて演算処理することにより、人分布情報提供システム20から人分布情報22を取得する機能と、駅4に外部より到達する外来人数の予測機能と、自動改札機6を遠隔制御する機能と、を実現する。
【0041】
図2と
図3は、駅4に外部より到達する外来人数の予測について説明するための図である。
図2に示すように、自動改札機制御装置1100は、人分布情報提供システム20から取得した人分布情報22を取得済人分布情報530として蓄積・統計処理して基準人分布情報532を作成する。
【0042】
基準人分布情報532は、各メッシュ24の平時における人分布の情報である。例えば、所定の基準期間毎(例えば、月日別・曜日別・時間帯別など)に求めた、メッシュ24別の平均人数の情報である。基準人分布情報532は、基本的には、新たに人分布情報22を取得する毎に更新される。但し、平均算出のための母集団には、データ間で過度な差がある特異データは適宜除外する。従って、後述するイベント時のデータは除外される。
【0043】
自動改札機制御装置1100は、新たに人分布情報22を取得すると、メッシュ24別に、基準人分布情報532における当該メッシュの人数と、最新の人分布情報22における当該メッシュの人数と、の差分(超過人口)を求め、超過人口分布情報553を作成する。
図2の超過人口分布情報553に示す各メッシュ24内のイタリック体の数字は、各メッシュにおける差分を示している。基準人分布情報532より多い場合をプラス、少ない場合をマイナスの数字で示している。
【0044】
自動改札機制御装置1100は、特異的な人の増加が発生していることを示す所定のイベント条件(例えば、差分「+5以上」)を満たすメッシュ24を抽出すると、当該抽出されたメッシュ24に対応する地理的範囲にて、局所的に平時よりも人が集中した状態すなわち「イベント」が起きていると見なす。例えば、プロ野球の試合やアイドルのライブコンサート、展示会、などのイベントが開催されていて人が集まっていると見なす。
【0045】
自動改札機制御装置1100は、所定のイベント条件を満たすメッシュ24として抽出されたメッシュ24の群を1つのイベント範囲26と認定する。
図2中の太い黒線で囲った網掛けのメッシュがイベント範囲26である。そして、イベント範囲26の超過人口の合計を「イベント人数Mi」、超過人口の重心位置をイベント位置28、駅4からイベント位置28までの距離をイベント距離Li、とする。なお、当該日における入出場者数差が統計的に得られる通常日の平均入出場者数差を上回っていて、且つ、当該日におけるその累積値(超過出場者数)がイベント範囲26の超過人口を上回る場合には、より多い人数に備える観点から、イベント人数Miを当該累積値とする。
【0046】
自動改札機制御装置1100は、イベント距離Liとイベント人数Miとに基づいて、将来において駅4へ到達する予測到達人数の時系列変化である超過人口到達波動50を予測する。
【0047】
超過人口到達波動50の予測方法は例えば次の方法を採用することができる。
超過人口到達波動50を
図3に示すような正規分布の1つの波とみなす。具体的には、超過人口到達波動50の面積Aは、イベント人数Miに同じ又は略同じであり、駅4とイベント範囲26との間の距離が遠いほど、時間経過に対する予測到達人数の増加/減少が緩やかであるとする。
【0048】
ここで言う「駅4とイベント範囲26との間の距離」は、例えば、駅4からイベント位置28までの距離(イベント距離Li)を採用することができる。この場合、超過人口到達波動50の正規分布は、分散σ2(標準偏差σ)が駅4からイベント位置28までのイベント距離Liに比例し、イベント距離Liが小さいほど正規分布の山の尖りが高くなると言い換えることができる。
【0049】
超過人口到達波動50を、
図3を参照してより詳細に説明する。超過人口到達波動50は、正規分布の形状として予測されるものであり、イベントに係る人々が駅4に向かって移動開始する移動開始時刻tsを「0」とする予測時間軸に対して、ピーク値(分布の最頻値・平均値)が駅4に到達する予測ピーク到達時間Tpに対応するように設定される。予測ピーク到達時間Tpは、イベント距離Liを駅勢圏内で想定される平均歩行速度(例えば、60m/分)で除算して得られる時間である。
【0050】
移動開始時刻tsは、例えば
図4のようにして決定する。すなわち、時刻t1の超過人口分布情報553におけるイベント位置28aと、その後の時刻t2の超過人口分布情報553におけるイベント位置28bとを比較し、前者の位置が後者の位置よりも駅4に近づいていることを検出すると、その時刻をもって移動開始時刻(ts=t2)とする。なお、イベント位置28のゆらぎに対応するために、適宜、駅4に近づいていると見なすために満たすべき位置ズレの閾値を設定するとよい。
【0051】
そして、自動改札機制御装置1100は、予測到達人数が所定の要対応判定基準値Mkに達するイベント対応タイミング時刻Tkを決定し、自動改札機6を超過人口到達波動50の波動に備えた制御モードに切り換える予定時刻とする。つまり、イベントに起因する人の波が、要対応判定基準値Mkに達するイベント対応タイミング時刻Tkを予測して、当該時刻になると駅4への流入人口の増加に備えた制御へ切り換えることで、従来の自動改札機6の制御ではできなかった急激に高まる混雑への対応を予測的に実現する。
【0052】
図5は、自動改札機制御装置1100による自動改札機6の制御モードについて説明するための図である。自動改札機制御装置1100は、制御モードとして「通常モード」「イベント対応モード」「入場調整モード」の3つを切り換える。
【0053】
通常モードは、平時に適用される制御モードであって、複数ある自動改札機6の入出比(入改札/出改札の比率)を、過去所定時間長(例えば、過去10分~20分程度)における入場/出場の改札データの蓄積結果に基づいて変更する。例えば、入場者数が出場者数より大きい場合には、出改札の自動改札機6を多くするように入出比を制御する。勿論、通常モードの制御内容はこれに限定されず適宜設定可能である。
【0054】
イベント対応モードは、超過人口到達波動50の到来により予測される混雑に対応するための制御モードであって、最低限の出改札数を確保して、入改札の自動改札機6の数を最大にする。「最低限の出改札数」は、例えば、1列車当たりの降車乗客数(単位=人:過去の実績に基づく所定値)を、列車間隔(単位=分)で除算し、更に改札の機能流動量(単位=人/分/台:1台の自動改札機6が単位時間長当たりでさばける通行人数)で除算した値に、所定の安全係数を加算して求める。勿論、最低限の出改札数の求め方は、これに限定されず適宜設定可能である。
【0055】
自動改札機制御装置1100は、超過人口分布情報553からイベントに係る人々が駅4に向かって移動を開始したことを検出した後、イベント対応タイミング時刻Tkに達すると、イベント対応モードで自動改札機6の制御を開始する。
【0056】
入場調整モードは、駅構内の滞留人数が、滞留可能人数(限界値)を超えないように入改札数を調整する。「入改札数」は、(1)1列車の輸送可能人数(単位=人)を、列車間隔(単位=分)で除算し、更に改札の機能流動量(単位=人/分/台)で除算した値、(2)滞留可能人数(単位=人)を、列車間隔(分)で除算し、更に改札の機能流動量(単位=人/分/台)で除算した値、の何れか小さい方とする。そして、入改札以外の自動改札機6は出改札とする。
但し、出改札とする自動改札機6の台数は、イベント対応モードで説明した「最低限の出改札数」以下にはしない。
【0057】
自動改札機制御装置1100は、入場/出場の改札データと、運行スケジュールとに基づいて、駅4における予測滞留人数を推定し、予測滞留人数が所与の入場調整必要条件(例えば、滞留可能人数の90%以上、或いは、滞留可能人数の80%以上など)を満たす場合に、自動改札機6の制御を入場調整モードに切り替える。予測滞留人数が所与の入場停止必要条件(例えば、滞留可能人数より大きい、など)を満たす場合には、入改札の自動改札機6の台数を「0」、つまり実質的な入場停止状態とするとしてもよい。
【0058】
なお、イベントの態様によっては、イベント位置28がイベント範囲26の実体を正しく表さない場合もある。例えば、マルシェ形式のイベントでは、スタジアムなどの一箇所に大勢が集まる局所スポーツ観戦形式のイベントよりも、イベント範囲26が広範囲に及んで、集まった人々の分布もまばらになり得る。それ故、イベント位置28を監視しても、イベントに係る人々の駅4への移動開始を適切に検出できない可能性がある。
【0059】
そこで、自動改札機制御装置1100は、イベントに係る人々が駅4に向かって移動を開始したことを検出するバックアップ手段として、超過人口分布情報553に基づいて、駅勢圏のうち所定の駅前範囲30における超過人口の変化を監視する。そして、監視された変化が所与の増加傾向条件を満たした場合には、イベント位置28の駅4への接近が検出されなくとも自動改札機6をイベント対応モードに切り替える制御をする。
【0060】
図6は、自動改札機制御装置1100の機能構成例を示す機能ブロック図である。
自動改札機制御装置1100は、処理部200と、第1通信部301と、第2通信部302と、記憶部500と、画像表示部600(例えば、モニター)と、操作入力部700(例えば、キーボードやマウス)と、を備える。
【0061】
処理部200は、例えばCPUやGPU、ASIC、FPGA等の演算回路となるプロセッサの他、ICメモリなどの電子部品によって実現され、自動改札機6や人分布情報提供システム20などから取得したデータ等に基づいて各種の演算処理を実行して、自動改札機6の制御を実行する。
【0062】
処理部200は、入出場者数監視部202と、輸送人数推定部204と、滞留状況推測部206と、人分布情報取得部208と、イベント検出部210と、範囲判定部212と、イベント人数推定部214と、波動予測部216と、駅前範囲監視部218と、移動開始検出部220と、制御部222と、計時部290と、を有する。
【0063】
入出場者数監視部202は、自動改札機6の入場及び出場別の通行人数である入出場者数を監視する。
【0064】
輸送人数推定部204は、列車に関する所与の運行データに基づいて、駅4から人を輸送する輸送可能人数を推定する。
【0065】
滞留状況推測部206は、駅4の入出場者数と、駅4における輸送可能人数とに基づいて、駅4の滞留状況を推測する。具体的には、駅構内に滞留している予測滞留人数を推定する。
【0066】
人分布情報取得部208は、複数の自動改札機6が設置された駅4の駅勢圏に存在する人の分布情報である人分布情報22を外部から取得して記憶管理する制御と、取得済人分布情報530を所与の更新タイミングで統計処理して、基準人分布情報532を更新・管理する制御と、を行う。
【0067】
イベント検出部210は、基準人分布情報532と、取得された人分布情報22との差に基づいて、駅勢圏における特異的な人の増加が発生していることを示す所定のイベント条件を満たすこと、すなわち「イベント」を検出する制御を行う。その過程で、イベント検出部210は、超過人口分布情報553を生成する。
【0068】
範囲判定部212は、超過人口分布情報553に基づいてイベントの地理的範囲であるイベント範囲26を判定する。
【0069】
イベント人数推定部214は、超過人口分布情報553と超過出場者数とに基づいてイベントに係る人数であるイベント人数Miを推定する。例えば、超過人口分布情報553と超過出場者数とのうち、大きい方の値をイベント人数Miとしてもよい。
【0070】
波動予測部216は、超過人口分布情報553に基づいて、イベントに係る超過人口が駅4へ到達する予測到達人数の時系列変化である超過人口到達波動50を予測する。
具体的には、波動予測部216は、超過人口分布情報553の時間変化、イベント人数Mi、駅4とイベント範囲26との位置関係、に基づいて超過人口到達波動50を予測する。より具体的には、波動予測部216は、駅4とイベント範囲26との間の距離(イベント距離Li)が遠いほど、時間経過に対する予測到達人数の増加/減少が緩やかであると推定して超過人口到達波動50を予測する。
【0071】
駅前範囲監視部218は、超過人口分布情報553に基づいて、駅勢圏のうち所定の駅前範囲30における超過人口の変化を監視する。
【0072】
移動開始検出部220は、超過人口分布情報553の時間変化に基づいて、イベント範囲26が駅4に向けて移動を開始したことを検出する。具体的には、移動開始検出部220は、イベント位置28と駅4との相対位置関係を監視し、イベントに係る人々が駅4に向かって移動開始したことと検出する。
【0073】
制御部222は、通常モード・イベント対応モード・入場調整モードの制御モードを切り換えて自動改札機6の遠隔制御を実行する(
図5参照)。そして、制御部222は、イベント対応モードに係り、超過人口到達波動50に基づいて、自動改札機6の入改札を増やすタイミングを制御する。具体的には、制御部222は、移動開始検出部220による検出がなされた場合に、超過人口到達波動50に基づく自動改札機6の入改札の増加制御を行う。また、制御部222は、駅前範囲30の超過人口を監視し、その変化が所与の増加傾向条件を満たした場合に、自動改札機6の入改札を増やす制御を行う。
【0074】
また、制御部222は、超過人口到達波動50に基づく自動改札機6の入改札の増加制御を行った後に、当該増加制御の解除条件を満たした状態が、所定時間(例えば10分間や15分間など)継続した場合、当該増加制御を解除する。
【0075】
また、制御部222は、所定の入場調整必要条件を満たした場合に、超過人口到達波動50に基づく自動改札機6の入改札の増加制御を中止し、自動改札機6の入改札を減らす又は無しとする入場調整制御を行う。
【0076】
計時部290は、システムクロックを利用して現在日時や制限時間等の計時を行う。
【0077】
第1通信部301及び第2通信部302は、データ通信に係るデータ処理を実行し、外部装置とのデータのやりとりを実現する。例えば、無線通信機、モデム、TA(ターミナルアダプタ)、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等によって実現される。
図1の通信装置1153がこれに該当する。第1通信部301は、自動改札機制御装置1100と人分布情報提供システム20との間の通信を実現し、第2通信部302は、自動改札機制御装置1100と自動改札機6との間の通信を実現する。
【0078】
図7は、記憶部500が記憶するプログラムやデータの例を示す図である。
記憶部500は、処理部200に自動改札機制御装置1100を統合的に制御させるための諸機能を実現するためのプログラムや各種データ等を記憶する。また、処理部200の作業領域として用いられ、処理部200がプログラムに従って実行した演算結果などを一時的に記憶する。この機能は、例えばRAMやROMなどのICメモリ、ハードディスク等の磁気ディスク、CD-ROMやDVDなどの光学ディスク、オンラインストレージなどによって実現される。
図1の例では本体装置1101が搭載するICメモリ1152やハードディスクなどの記憶媒体、及びストレージ1140がこれに該当する。
【0079】
記憶部500は、自動改札機制御プログラム502と、運行データ504(運行ダイヤのデータ)と、駅4の滞留可能人数506と、駅座標510と、改札データ520と、平均入出場者数差522と、改札運行データ分析結果データ524と、取得済人分布情報530と、基準人分布情報532と、イベント分析結果データ550と、現在日時900と、を記憶する。勿論、記憶部500は、その他のプログラムやデータ(例えばタイマーや、カウンタ、各種フラグなど)も適宜記憶する。
【0080】
自動改札機制御プログラム502は、処理部200が読み出して実行することで、入出場者数監視部202~制御部222としての機能を実現させるためのプログラムである。
【0081】
運行データ504は、少なくとも駅4を出発又は停車する列車の時刻表データを含む。滞留可能人数506は、駅4に滞留可能な人数として予め設定された値である。
【0082】
駅座標510は、駅4の地理的位置情報であって、イベント位置28までの距離(イベント距離Li)を求めるための基準点を示す。
【0083】
改札データ520は、所定周期(例えば10秒間や30秒間、1分間、など)で自動改札機6を通行した人数の計数結果であり、入場者数(入改札した人数)と出場者数(出改札した人数)とが別々に計数される。1つの改札データ520は、計数を行った周期期間を示す計測日時と、入場者数と、出場者数と、を格納する。
【0084】
平均入出場者数差522は、所定の算定期間別(例えば、月日別で且つ24時間別(=365日×24時間=8760通り))の入出場者数差の平均値である。
【0085】
改札運行データ分析結果データ524は、入場調整モードへの切り換え発動の判定のために必要とされる各種データを格納する。具体的には、改札運行データ分析結果データ524は、分析日時と、分析日時を現在とする駅4における現在滞留人数と、予測滞留人数と、輸送可能人数と、を格納する。勿論、これら以外のデータも適宜含めることができる。
【0086】
イベント分析結果データ550は、取得済人分布情報530に基づくイベントの検出や、イベント対応モードへの制御切り換えの判定に必要な各種データを格納する。
【0087】
具体的には、イベント分析結果データ550は、駅勢圏メッシュリスト552と、超過人口分布情報553と、イベント範囲メッシュリスト554と、合計超過人口556と、イベント位置座標履歴558と、イベント距離560と、イベント人数562と、超過人口到達波動データ564と、イベント対応タイミング時刻566と、駅前範囲メッシュリスト567と、駅前範囲監視データ568と、を含む。勿論、これら以外のデータも適宜含めることができる。
【0088】
駅勢圏メッシュリスト552は、駅4の駅勢圏を所定の地理的単位で区切ったメッシュ24それぞれの範囲・位置情報である。
【0089】
超過人口分布情報553は、人分布情報22と同じメッシュ構造を有し、メッシュ24毎に、最新の取得済人分布情報530における当該メッシュ24に存在する人数と、基準人分布情報532における当該メッシュ24に存在する基準人数の差分を格納する。
【0090】
イベント範囲メッシュリスト554は、イベント範囲26(
図2参照)となるメッシュ24のリストである。つまり、特異的な人の増加が発生していることを示す所定のイベント条件(例えば、差分「+5以上」)を満たしているメッシュ24のリストである。
【0091】
合計超過人口556は、イベント範囲26に該当するメッシュ24に存在する人数の合計である。
【0092】
イベント位置座標履歴558は、イベント位置28(
図4参照)の時系列の履歴データである。イベントに係る人々の駅4への移動開始を検出するための基礎データであり、駅4からイベント位置28までのイベント距離560(イベント距離Li;
図2参照)を算出する基礎データである。
【0093】
超過人口到達波動データ564は、超過人口到達波動50に係る各種データを格納する。例えば、超過人口到達波動50を記述する超過人口到達波動関数、予測ピーク到達時間Tp、を含む。勿論、これら以外のデータも適宜含めることができる。
【0094】
イベント対応タイミング時刻566は、イベント対応タイミング時刻Tk(
図3参照)を示す予測日時である。
【0095】
駅前範囲メッシュリスト567は、駅前範囲30(
図4参照)に該当するメッシュ24のリストである。
【0096】
駅前範囲監視データ568は、駅前範囲30における人分布の監視履歴データである。例えば、駅前範囲30(
図4参照)に該当するメッシュ24別の人数の履歴、駅前範囲30の全てのメッシュ24に存在する合計人数の履歴、などを含む。
【0097】
次に、自動改札機制御装置1100の動作について説明する。
図8~
図9は、自動改札機制御装置1100における処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図8に示すように、自動改札機制御装置1100は、人分布情報提供システム20から定期的に人分布情報22を取得して取得済人分布情報530として記憶し、駅勢圏における基準人分布情報532を更新する処理を開始する(ステップS10)。
【0098】
次に、自動改札機制御装置1100は、改札データ520の収集及び平均入出場者数差522の更新の処理を開始する(ステップS12)。なお、平均入出場者数差522の更新に当たっては、改札データ520から得られる最新の入出場者数差の値が、更新前の平均値に対して所定の特異変化条件(例えば、平均値に対して20%以上の増加又は減少がある)を満たす場合には、イベント参加者による駅4の利用など特異なデータであると見なし、更新には用いないこととする。
【0099】
次に、自動改札機制御装置1100は、周期的に改札運行データを分析し、その結果を改札運行データ分析結果データ524とする改札運行データ分析処理を開始する(ステップS14)。
【0100】
具体的には、改札運行データ分析処理において、自動改札機制御装置1100は、運行データ504と改札データ520から、前列車(処理実行タイミングより直近過去に発車した列車)の発車以降からの入場者数を算出し、これを現在滞留人数Pnとして設定する。
【0101】
そして、前列車の発車から次列車までの経過時間t1を前列車から現在日時900までの経過時間t2で除算した値を、現在滞留人数Pnに乗算して、予測滞留人数Ppを求める。予測滞留人数Ppは、前列車が発車してから次列車が発車するまでの滞留人数を現在滞留人数Pnに基づいて予測した値となる。
【0102】
輸送可能人数は、駅4に停車する列車一本あたりの輸送可能人数(駅4から乗客を運び出す能力を示す人数)であって、運行曜日や運行日時、列車編成数、平均混雑率、などを変数とする所定の関数で推定される。当該関数は、予め定義されているものとする。或いは、関数に代えて、テーブルデータによって予め運行ダイヤに応じた輸送可能人数の所定値を設定しておいて、これを参照するとしてもよい。
【0103】
改札運行データ分析処理を開始したならば、次に、自動改札機制御装置1100は、入出場者数と輸送可能人数とに基づいて、駅4の滞留状況を推測して入場調整の要否を判断する入場調整要否判定処理を実行する(ステップS20~ステップS22)。
【0104】
具体的には、入場調整要否判定処理として、自動改札機制御装置1100は、滞留可能人数506よりも最新の予測滞留人数Ppの方が大きい場合(ステップS20のYES)、入場調整を必要と判断する。また、滞留可能人数506よりも最新の予測滞留人数Ppの方が大きくはないが、輸送可能人数よりも最新の予測滞留人数Ppの方が大きい場合(ステップS22のYES)も入場調整が必要と判断する。
【0105】
そして、自動改札機制御装置1100は、入場調整要否判定処理により入場調整を必要と判断すると、制御モードを入場調整モードに切り換え(ステップS24)、入場調整不要状態の連続時間を計時する(ステップS26)。具体的には、ステップS14で周期的な改札運行データ解析処理の実行が開始されているので、改札運行データ分析結果データ524は、随時最新状態に更新される。ステップS26では、自動改札機制御装置1100は、ステップS24で入場調整モードに切り換わって以降の最新の改札運行データ分析結果データ524を監視して、入場調整要否判定処理を実行し、滞留可能人数が予測滞留人数以上である場合(つまりステップS20のNO相当)、又は、輸送可能人数が予測滞留人数以上である場合(つまりステップS22のNO相当)に、改札運行データ解析処理の周期分の時間長を累計する。つまり、入場調整不要状態の連続時間を計時する。
【0106】
そして、その結果、入場調整不要状態の連続時間が、所定の解除基準時間長(例えば、10分程度)に達すると(ステップS28のYES)、ステップS20に戻る。ステップS28で肯定判定された状態でステップS20に戻っているので、ステップS20のNO(入場調整不要状態・その1)からステップS22のNO(入場調整不要状態・その2)へと流れて
図9に移り、自動改札機制御装置1100は、イベント検出分析処理を実行する(ステップS30)。
【0107】
図10は、イベント検出分析処理の流れを説明するためのフローチャートである。
イベント検出分析処理において、自動改札機制御装置1100は、先ず最新の取得済人分布情報530に基づいて超過人口分布情報553を作成する(ステップS40)。次いで、最新の取得済人分布情報530から駅勢圏に該当するメッシュ24の中から所定のイベント条件を満たすメッシュ24を抽出して、これをイベント範囲26とする(ステップS42)。そして、自動改札機制御装置1100は、当該イベント範囲26の全てのメッシュ24に分布している人数を合算して合計超過人口を求める(ステップS44)。
【0108】
合計超過人口が所定のイベント判定基準値(例えば、500程度)を超えると(ステップS46のYES)、自動改札機制御装置1100はイベントを検出したと判断する。つまり、時間経過に伴った超過人口分布情報553の変化(具体的には、超過人口の増加という時間変化)がやがてイベント判定基準に達するとイベントを検出する。そして、イベントを検出すると、自動改札機制御装置1100は、イベント位置28を求め(ステップS48)、イベント距離Liを求める(ステップS50)。
【0109】
また、自動改札機制御装置1100は、イベント人数Miを推計する(ステップS52)。具体的には、イベント人数Miは、合計超過人口と超過出場者数とのうちの大きい方の値とする。超過出場者数は、当該日において、平常日に比べてどれくらい人が駅4を起点とする駅勢圏に出ているか(存在するか)を表す値であって、例えば、改札データ520から得られる入出場者数差から平均入出場者数差522を差し引いた当該日の累積値である。
【0110】
次に、自動改札機制御装置1100は、超過人口到達波動予測処理を実行して、超過人口到達波動50(
図3参照)の他、超過人口到達波動データ564の各種データを求める(ステップS54)。イベント検出分析処理は、繰り返し実行されるため、超過人口到達波動データ564の各種データも随時更新され得る。
【0111】
そして、自動改札機制御装置1100は、駅前範囲監視データ568を更新し(ステップS56)、イベント対応タイミング時刻566を設定して(ステップS60)、イベント検出分析処理を終了する。
【0112】
一方、合計超過人口がイベント判定基準値を超えなければ(ステップS46のNO)、自動改札機制御装置1100は、イベント対応タイミング時刻566を設定し(ステップS58)、駅前範囲監視データ568を更新して(ステップS60)、イベント検出分析処理を終了する。
【0113】
図9に戻って、次に自動改札機制御装置1100は、移動開始検出処理を実行する(ステップS70)。当該処理は、イベントに係る人々が駅4に向かって移動を開始したことを検出する処理であって、イベントの終了を推定する処理とも言える。なお、当該処理は、イベント対応タイミング時刻566が「未定」を示す場合にはスキップしてもよい。
【0114】
そして、移動開始検出処理の結果として移動開始が検出された場合(ステップS72のYES)、自動改札機制御装置1100はイベント対応要否判定処理を実行する(ステップS80~ステップS84)。
【0115】
具体的には、イベント対応要否判定処理として、自動改札機制御装置1100は、イベント位置座標履歴558を参照してイベント位置28が駅4の方向に移動しているかを判定する(ステップS80)。
【0116】
イベント位置28が駅4の方向に移動している場合(ステップS80のYES)、自動改札機制御装置1100は、イベント位置28から駅4までの距離が、所定の至近距離条件を満たすかを判定する(ステップS81)。
【0117】
至近距離条件を満たす場合は(ステップS81のYES)、イベント対応モードでは対応できないほど急激に駅4へ人が集まることが予測されることから、自動改札機制御装置1100は、ステップS24に移行して入場調整モードへ切り換える。
【0118】
至近距離条件を満たさない場合、すなわちイベント位置28が駅4からある程度離れている場合には(ステップS81のNO)、自動改札機制御装置1100は、続いてイベント対応タイミング時刻566が設定されているかを確認する(ステップS82)。そして、イベント対応タイミング時刻566が設定されていれば(ステップS82のYES)、自動改札機制御装置1100は、イベント対応が必要と判断する。
【0119】
また、イベント位置28が駅4の方向に移動していない場合や(ステップS80のNO)、イベント対応タイミング時刻566が設定されていない場合でも(ステップS82のNO)、駅前範囲の人数の変化が所定の増加基準値を超えると(ステップS84のYES)、自動改札機制御装置1100は、イベント対応が必要と判断する。
【0120】
一方、駅前範囲の人数の変化も所定の増加基準値を超えていない場合には(ステップS84のNO)、自動改札機制御装置1100は、イベント対応は不要と判断する。
【0121】
そして、そもそもイベントに係る人々の駅4への移動開始が検出されなかった場合(ステップS72のNO)と、イベント対応要否判定処理においてイベント対応が不要と判断した場合(ステップS84のNO)とにおいては、自動改札機制御装置1100は、通常モードで自動改札機6を制御する(ステップS88)。
【0122】
対して、イベント対応が必要と判断した場合(ステップS82のYES、ステップS84のYES)には、自動改札機制御装置1100は、イベント対応タイミング時刻566の到来をもって(ステップS90のYES)、イベント対応モードに制御モードを切り替える(ステップS92)。すなわち、超過人口到達波動50に基づく自動改札機6の入改札の増加制御を開始する。
【0123】
イベント対応モードへの切り換え後、自動改札機制御装置1100は、切り換え後におけるイベント対応不要状態の連続時間を計時する(ステップS94)。
具体的には、ステップS14で既に周期的な改札運行データ解析処理の実行が開始されているので、改札運行データ分析結果データ524は、随時最新状態に更新される。ステップS94では、自動改札機制御装置1100は、ステップS92でイベント対応モードに切り換わって以降の最新の改札運行データ分析結果データ524を監視する。
【0124】
そして、自動改札機制御装置1100は、(1)イベント位置28が駅方向に移動していない(つまりステップS80のNO相当)、(2)イベント対応タイミング時刻566の設定が無い(つまりステップS82のNO相当)の何れかで、且つ、駅前範囲メッシュの人数の変化が基準値を超えない場合(つまり、ステップS84のNO相当)であれば、改札運行データ解析処理の周期分の時間長を累計する。つまり、イベント対応不要状態の連続時間を計時する。その結果、イベント対応モードに切り換えて以降におけるイベント対応不要状態の連続時間が、所定の解除基準時間長(例えば、10分)に達すると(ステップS96のYES)、ステップS20に戻る。
【0125】
イベント対応不要状態の連続時間が、所定の解除基準時間長に達しない間(ステップS96のNO)、自動改札機制御装置1100は、最新の改札運行データ分析結果データ524に基づいて入場調整要否判定処理を行う(ステップS98:
図8のステップS20及びステップS22相当)。そして、入場調整が必要と判断された場合は(ステップS96のYES)、緊急処置としてステップS24へ移行して入場調整モードへ切り換える。入場調整が不要と判断された場合は(ステップS96のNO)、ステップS94に戻る。
【0126】
以上、本実施形態によれば、急激な混雑の発生にも対応できる自動改札機の制御技術を提供することができる。すなわち、自動改札機制御装置1100は、駅勢圏に係る人分布情報22を外部から取得し、基準人分布情報532に対する特異的な人の増加を検出し、これをもって駅勢圏におけるイベントを検出することができる。そして、超過人口到達波動50を予測して、当該予測に基づいて自動改札機6の入改札を増やすタイミングを制御できる。従来のように、改札内の滞留人数が急激に増加してから自動改札機6の入改札を増やすのではなく、予測に基づいて混雑が到来するタイミングを適確に判断し、そのタイミングに応じて入改札増やすことができるようになるため、混雑対応の遅れを無くすことができる。
【0127】
[変形例]
本発明を適用した実施形態の例について説明したが、本発明を適用可能な形態は上記形態に限定されるものではなく適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0128】
例えば、人分布情報22は、地上に限らず地下(例えば、駅に接続された地下街など)を含めてもよい。
【符号の説明】
【0129】
4…駅
6…自動改札機
20…人分布情報提供システム
22…人分布情報
24…メッシュ
26…イベント範囲
28…イベント位置
30…駅前範囲
50…超過人口到達波動
200…処理部
202…入出場者数監視部
204…輸送人数推定部
206…滞留状況推測部
208…人分布情報取得部
210…イベント検出部
212…範囲判定部
214…イベント人数推定部
216…波動予測部
218…駅前範囲監視部
220…移動開始検出部
222…制御部
301…第1通信部
302…第2通信部
500…記憶部
502…自動改札機制御プログラム
504…運行データ
506…滞留可能人数
520…改札データ
522…平均入出場者数差
524…改札運行データ分析結果データ
530…取得済人分布情報
532…基準人分布情報
550…イベント分析結果データ
552…駅勢圏メッシュリスト
553…超過人口分布情報
554…イベント範囲メッシュリスト
556…合計超過人口
558…イベント位置座標履歴
560…イベント距離
562…イベント人数
564…超過人口到達波動データ
566…イベント対応タイミング時刻
567…駅前範囲メッシュリスト
568…駅前範囲監視データ
1100…自動改札機制御装置
1150…制御基板