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▶ アルセロールミタル・チューブラー・プロダクツ・ルクセンブルク・エス・アの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】プレミアム接続部のトルクショルダ
(51)【国際特許分類】
   F16L 15/04 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
F16L15/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021145180
(22)【出願日】2021-09-07
(62)【分割の表示】P 2019547651の分割
【原出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2021191975
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】15/449,350
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/634,558
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517290512
【氏名又は名称】アルセロールミタル・チューブラー・プロダクツ・ルクセンブルク・エス・ア
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マール・イー・エバンス
(72)【発明者】
【氏名】イェルン・ステイン・ユリアン・ファン・ビッテンベルゲ
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-099716(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102678065(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103321585(CN,A)
【文献】特開2005-240888(JP,A)
【文献】特開2015-055296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0245433(US,A1)
【文献】特表2011-501075(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102852469(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 15/00 - 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ付き管状接続部であって、ねじ付き管状接続部は、
雄ねじと、ピンシール面と、自由端にあるピントルクショルダと、を有するピンと、
ピンを受け入れるためのボックスであって、雄ねじと相互作用するための雌ねじと、ピンシール面と接触するためのボックスシール面と、ピントルクショルダと接触するためのボックストルクショルダとを有し、ピンシール面がピントルクショルダから軸方向に離間された、ボックスと、
を含み、
ピンとボックスとが長手方向軸を規定し、
ピントルクショルダが、第1の外向きのピンショルダ面と第2の内向きのピンショルダ面とを有し、第1のピンショルダ面が、長手方向軸に垂直な垂直軸と第1の角度で交差し、第2のピンショルダ面が、垂直軸と第2の角度で交差し、第1のピンショルダ面と第2のピンショルダ面とがピン頂点で交わって受け部を規定し、
ボックストルクショルダが、第1の内向きのボックスショルダ面と第2の外向きのボックスショルダ面とを有し、第1のボックスショルダ面が、長手方向軸に垂直な垂直軸と第3の角度で交差し、第2のボックスショルダ面が、垂直軸と第4の角度で交差し、第1のボックスショルダ面と第2のボックスショルダ面とがボックス頂点で交わってノーズを規定し、
受け部とノーズがV字形である、
ねじ付き管状接続部。
【請求項2】
第1のピンショルダ面が、第2のピンショルダ面と同じ長さである、請求項1に記載のねじ付き管状接続部。
【請求項3】
第1および第2の角度が、ピンに作用する力の比較的大きな成分が軸方向成分力であるように選択される、請求項1に記載のねじ付き管状接続部。
【請求項4】
第1の角度が第3の角度に等しく、第2の角度が第4の角度に等しい、請求項1に記載のねじ付き管状接続部。
【請求項5】
ピントルクショルダが、ボックストルクショルダの形状と同様の形状を有する、請求項1に記載のねじ付き管状接続部。
【請求項6】
ボックスシール面が、ピンシール面と接触し、シールを形成するように構成され、シールとピントルクショルダとの間のピンとボックスとの間にギャップが形成されている、請求項1に記載のねじ付き管状接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年3月3日に出願された米国特許出願第15/449,350号明細書の継続であり、その開示全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、石油および天然ガス産業で使用され得るねじ付きパイプおよびそのようなパイプ用のコネクタに関する。例えば、パイプは、コネクタの一端でボックスに収まるピンを有する端部を有し、パイプとコネクタとはねじ切りによって接続される。コネクタは、パイプと第2のパイプとがコネクタを介して接続されるように、第2のピンを有する第2のパイプ用の第2のボックスを有することができる。
【背景技術】
【0003】
国際公開第84/04352号パンフレットには、二段テーパねじを有するボックスおよびピン部材の管状継手またはコネクタが記載されていると言われている。相補的な係合シール面の2つの金属同士のシールが提供されている。ピン部材の端部にある逆角度トルクショルダと、ボックス部材およびフック付きねじの内部終端とが、継手およびボックスおよびピン部材をさらに特徴付けている。
【0004】
米国特許第4,623,173号明細書には、オイルパイプ用のねじ継手カップリングが記載されていると言われている。メインシール部は、雄ねじの端部で軸方向に凸形状となるシール部と、雌ねじの内側でテーパ状となるシール部とを備え、雄ねじの端部は、雌ねじの内側に形成されたストッパの端部に当接する。
【0005】
米国特許第4,624,488号明細書には、ボックス部材の座ぐり穴とピン部材の自由端上で協働する内部円錐台形シール面を有する管状接続部が記載されていると言われている。ピン部材の内部シール面は、ピン部材の端部に隣接する管状接続部の軸から実質的に14度で内向きに傾斜している。ボックス内部シール面の傾斜角は、ピン内面の傾斜角と実質的に同じである。接続部の軸に実質的に平行であるピン部材の内面の傾斜角よりも小さい範囲で傾斜する、ピン部材の遠位近位端から遠位端に向かって配置されたパイロット面またはブルノーズが、ピン端部の平坦な厚さの増加を規定している。
【0006】
米国特許第7,334,821号明細書には、雄ねじ付き要素と雌ねじ付き要素とを有するねじ付き管状接続部が記載されていると言われている。雄ねじ付き要素は、雄ねじと、自由端とを有し、ねじと自由端との間には非ねじ付きリップがある。雌ねじ付き要素は、内部テーパ雌ねじと、雌ねじとラグとの間の非ねじ付き部分とを有する。雌ねじ付き要素は、環状軸方向当接面を含む。雌ねじ内で雄ねじが完全に構成されると、自由端が環状軸方向当接面に当接し、他の軸受面が半径方向に干渉し、金属-金属接触圧力下にあって金属-金属シール面を構成する。
【0007】
米国特許第7,334,821号明細書では、別の軸方向当接面が雄ねじ付き要素の自由端の前面に形成され、単一のリップシール面がねじの端部から、ある軸方向距離でリップ上に配置されている。リップは、遠位軸方向当接面と単一のリップシール面との間に、リップシール面とは異なる雌ねじ付き部材に面する外周面を有する付属部を含む。
【0008】
米国特許公開第2014/0145433号明細書には、ピンとボックス部材とを含む管状接続部が記載されていると言われている。ピン部材は、第1のねじ構造と、第1のねじ構造からピン部材に沿って軸方向に離間された螺旋状トルクショルダとを有する。ボックス部材は、第2のねじ構造と、第2のねじ構造からボックス部材に沿って軸方向に離間された第2の螺旋状トルクショルダとを有する。回転すると、螺旋状トルクショルダが互いに係合する。
【0009】
パイプなど、ピンを有するねじ付き筒と、コネクタなど、ボックスを有するねじ付き筒との間のプレミアム接続部の構成中に、以下の手順が発生する:(1)ねじの頂点同士が接触するまでパイプ上のピンがコネクタに刺し込まれる;(2)次に、ピンシール面がボックスシール面に最初に接触するまでピンがボックスにねじ込まれて、「ハンドタイト(hand tight)」と呼ばれる位置を規定する;(3)ピンの端部、いわゆるトルクショルダがボックス上の対応するトルクショルダにちょうど接触するまで、ピンがボックス内にさらにねじ込まれて、「ショルダタイト(shoulder tight)」と呼ばれる位置を規定し、ハンドタイト位置からショルドタイト位置までのこの追加の回転は、ピンとボックスシールとの間に締まり嵌めを生じさせる;(4)次に、ピンをさらに締めて追加のトルクを生成して、「パワータイト(power tight)」と呼ばれる最終的な構成位置を規定する。
【0010】
接続部がハンドタイト位置にある際のピントルクショルダとボックストルクショルダとの間の距離は、「スタンドオフ(standoff)」と呼ばれる。ショルダタイト位置に達すると、スタンドオフは除去される。スタンドオフを除去する間にピンシール面とボックスシール面とが接触することから、大きなスタンドオフが問題になる場合がある。大きなスタンドオフを縮小するために大量の回転が必要であると、シール面のかじりが発生し、それによってシールが損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第84/04352号
【文献】米国特許第4,623,173号明細書
【文献】米国特許第4,624,488号明細書
【文献】米国特許第7,334,821号明細書
【文献】米国特許公開第2014/0145433号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ボックス内のピンを固定または捕捉するトルクショルダを提供することにより、ボックスに対するピンの動きを低減または排除することである。例えば、トルクショルダは、ピンが半径方向に移動したり、曲がったり、変形したりするのを防ぐ。
【0013】
代替または追加の目的は、製造が容易な接続部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ねじ付き管状接続部を提供する。ねじ付き管状接続部は、
雄ねじと、ピンシール面と、自由端にあるピントルクショルダと、を有するピンと、ピンを受け入れるためボックスと、を含み、ボックスは、ピンねじと相互作用するための雌ねじと、ピンシール面と接触するためのボックスシール面と、ピントルクショルダと接触するためのボックストルクショルダと、を有する。ピンとボックスとは、長手方向軸を規定する。ピントルクショルダは、第1のピンショルダ面と第2のピンショルダ面とを有し、第1のピンショルダ面は、長手方向軸に垂直な軸と第1の角度で交差し、第2のピンショルダ面は、垂直軸と第2の角度で交差する。ボックストルクショルダは、第1のボックスショルダ面と第2のボックスショルダ面とを有する。第1のボックスショルダ面は、長手方向軸に垂直な軸と第3の角度で交差し、第2のボックスショルダ面は、垂直軸と第4の角度で交差する。
【0015】
本発明はさらに、別のねじ付き管状接続部を提供する。ねじ付き管状接続部は、雌ねじと、ピンシール面と、自由端にあるピントルクショルダと、を有するピンと、ピンを受け入れるためのボックスと、を含み、ボックスは、雄ねじと相互作用するための雄ねじと、ピンシール面と接触するためのボックスシール面と、ピントルクショルダと接触するためのボックストルクショルダとを有する。ピンとボックスとは、長手方向軸を規定する。ピントルクショルダは、ピン半径を有する少なくとも1つのピンショルダ面を有し、少なくとも1つのピンショルダ面は、長手方向軸に対して湾曲している。ボックストルクショルダは、ボックス半径を有する少なくとも1つのボックスショルダ面を有し、少なくとも1つのボックスショルダ面は、長手方向軸に対して湾曲している。
【0016】
本発明はまた、ねじ付き管状接続部を形成する方法を提供する。方法は、
雄ねじと、ピンシール面と、自由端にあるピントルクショルダと、を有するピンを提供する工程であって、ピントルクショルダが、第1の方向に延びる第1のピンショルダ面と、第2の方向に延びる第2のピンショルダ面とを含む工程と、
雌ねじと、ボックスシール面と、自由端にあるボックストルクショルダと、を有するボックスを提供する工程であって、ボックストルクショルダが、第3の方向に延びる第1のボックスショルダ面と、第4の方向に延びる第2のボックスショルダ面と、を含む工程と、
ボックスにピンを刺し込んで、雄ねじと雌ねじとを互いに噛み合わせる工程と、
ピンシール面がボックスシール面に接触するまで、ボックスに対してピンを回転させる工程と、
第1のボックスショルダ面が第1のピンショルダ面に接触し、第2のボックスショルダ面が第2のピンショルダ面に接触するまで、ボックスに対してピンをさらに回転させる工程と、を含む。
【0017】
本発明の好ましい実施形態が、以下の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】当技術分野で既知のトルクショルダの詳細図を示す。
図1B】当技術分野で既知のトルクショルダの詳細図を示す。
図1C】当技術分野で既知のトルクショルダの詳細図を示す。
図1D】当技術分野で既知のトルクショルダの詳細図を示す。
図2A】構成の第2段階、ハンドタイト位置にある、本発明によるオイルパイプ用のプレミアム接続部の断面図を示す。
図2B】構成の第2段階、ハンドタイト位置にある、本発明によるオイルパイプ用のプレミアム接続部の断面図を示す。
図3A】構成の第3段階、ショルダタイト位置にある接続部を示す。
図3B】構成の第3段階、ショルダタイト位置にある接続部を示す。
図4】本発明によるオイルパイプ用のプレミアム接続部の断面図を示し、オイルパイプのピンはコネクタのボックスに刺し込まれている。
図5A】本発明による、図2Aから図4に示されるトルクショルダの詳細図を示す。
図5B】本発明による、図2Aから図4に示されるトルクショルダの詳細図を示す。
図6】本発明によるトルクショルダの追加の実施形態の詳細図を示す。
図7】本発明によるトルクショルダの追加の実施形態の詳細図を示す。
図8】本発明によるトルクショルダの追加の実施形態の詳細図を示す。
図9図5Aおよび図5Bに示される実施形態に従ってピンに加えられる力の力線図を示す。
図10A】本発明によるトルクショルダのさらに好ましい実施形態を示す。
図10B】本発明によるトルクショルダのさらに好ましい実施形態を示す。
図11A】本発明によるトルクショルダの別の好ましい実施形態を示す。
図11B】本発明によるトルクショルダの別の好ましい実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1Aは、当技術分野で既知の従来のトルクショルダと金属間シールの組合せとを示している。ボックス1520は、ボックスシール面1524と、ボックストルクショルダ1526とを含む。ピン1420は、ピンシール面1424と、ノーズ1428と、ピントルクショルダ1426と、を含む。図1に示すように、ピンシール面1424は、ピン1420の端部に位置される。ピン1420のノーズ1428は、接続が形成されると、ピンシール面1424とピントルクショルダ1426との間に押し込まれる。ピン1420とボックス1520との接続は、パイプとコネクタ(図示せず)との長手方向軸を規定する。軸Xは、長手方向軸に垂直であり、ピンノーズ1428でトルクショルダ1426、1526の端部を通る。ピントルクショルダ1426およびボックストルクショルダ1526はそれぞれ、垂直軸Xに対して角度が付けられた単一のショルダ面を含む。トルクショルダ1426、1526と垂直軸Xとの間に形成される内角Aは、例えば、約-15°、すなわち、軸Xから時計回り方向に15°であってよい。この傾斜角度は従来技術で知られている。この例では、ピンノーズ1428は、ボックスシール面1524とボックストルクショルダ面1526との間にしっかりと押し込まれている。例えば、米国特許第7,334,821号明細書を参照されたい。
【0020】
図1Dは、従来技術で既知のプレミアム接続部を示している。図1Bは、トルクショルダ1426、1526がちょうど接触し始めた時点の図1Dの接続部の拡大図を示す。ギャップScは、ピン1420の外面とボックス1520の座ぐり面との間に存在し、組み立てを容易にするために必要である。角度Aは、組み立て後にピン1420とボックス1520とを一緒にロックするのに有益であるが、図1Cは、接続部をさらにねじ込むと、角度Aによってピン1420がボックス1520に衝突することを示している。この望ましくない接触は、組み立て中の接続部の適切な位置決めを妨げる可能性があり、シール面1424、1524またはトルクショルダ1426、1526に損傷を引き起こす可能性がある。
【0021】
本発明によれば、先行技術に勝る利点を含むプレミアム接続部が提供され、例えば、ピンの動きが制御され得、上述のシール面への望ましくない接触および損傷が低減され得る。プレミアム接続部は、複数の表面を有するピンおよびボックストルクショルダを含み、例えば、各トルクショルダは、図2Aから図11Bに示される向きに関して上部および下部トルクショルダ面を有してもよい。本発明による別の特徴は、図2A図3Aおよび図10Aに示されるように、ショルダ面から離間されたシール面も含む。追加の特徴は、ピンが最終位置に位置させられた後であっても、ピンの端とボックスまたはコネクタの端との間に存在する空間を含む。図5Aおよび図6から図8および図10Aを参照されたい。
【0022】
好ましい実施形態では、ピンおよびボックスの上部および下部の両トルクショルダが同時に互いに接触してもよい。このように、コネクタはピンに対して、中立の捕捉を提供する。別の好ましい実施形態では、ピンおよびボックスの下部トルクショルダ面が互いに接触する前に、ピンおよびボックスの上部トルクショルダ面が互いに接触してもよい。この実施形態では、ピンは下向きに曲がってもよい。図6を参照されたい。さらに好ましい実施形態では、ピンおよびボックスの上部トルクショルダ面が互いに接触する前に、ピンおよびボックスの下部トルクショルダ面が互いに接触してもよい。この実施形態では、ピンは上向きに曲がってもよい。図2Bおよび図3Bを参照されたい。その結果、ピンの動きを所望に応じて制御することができる。
【0023】
図4は、第1段階の刺し込まれた位置にあるオイルパイプ10およびコネクタ100の断面図を示す。図2Aおよび図2Bは、回転が生じた後の第2段階でのオイルパイプ10とコネクタ100との接続を示す。オイルパイプ10は、ねじ部22と、ピンシール面24と、自由端にあるトルクショルダ26とを有するピン20を有する。ピントルクショルダ26は、第1の表面26aおよび第2の表面26bを含む。コネクタ100は、2つのボックス120、120’を有する。各ボックス120、120’は、半径方向内側の突出部150に、ねじ部122、ボックスシール面124およびトルクショルダ126を有する。ボックストルクショルダ126は、第1の表面126aおよび第2の表面126bを含む。この実施形態では、第1のボックスショルダ面126aは第1のピンショルダ面26aと相補的であり、第2のボックスショルダ面126bは第2のピンショルダ面26bと相補的である。
【0024】
コネクタ100は、図4に示されるように、2つの自由端102および102’を有する。上述のように、刺し込まれた位置では、ピン10のねじ部22がボックス120、120’のねじ部122に接触するまで、オイルパイプ10がコネクタ100に刺し込まれるか配置される。ピン10とボックス120、120’との間には、回転は未だ発生していない。ピン10およびボックス120、120’が回転すると、接続が形成される。
【0025】
構成のこの第2段階は、ねじ22、122またはシール面24、24が互いにちょうど接触し始めるハンドタイト位置として知られている。ピン20のねじ22は、ボックス120のねじ122に噛み合う。ピンシール面24とボックスシール面124とがちょうど接触し始める。ハンドタイト位置では、ピントルクショルダ26の第1の表面26a、126aとボックストルクショルダ126との間にギャップまたはスタンドオフ「Sa」が存在し、ピントルクショルダ26の第2の表面26bと、ボックストルクショルダ126の126bとの間にギャップまたはスタンドオフ「Sb」が存在する。この実施形態では、スタンドオフSaは、例えば、約0.06インチであり、スタンドオフSbは、例えば、約0.03インチである。スタンドオフSaおよびSbは、設計されたシール干渉およびシール角度の結果として異なってもよく、同じである必要はない。
【0026】
ピン20の端部にはノーズ27が延びる。ノーズ27は、ピン20の内面21と外面23との間に、長手方向軸に垂直な軸である軸Pの方向にトルクショルダ26の長さに沿って位置される。ノーズ27は、トルクショルダ26の第1の表面26aと第2の表面26bとを接続する頂点である。この実施形態では、第1の表面26aは、外面23からノーズ27まで一方向に延び、パイプ10の外周の周りで第2の方向に延びる。第2の表面26bは、内面21からノーズ27まで一方向に延び、パイプ10の内周の周りで第2の方向に延びる。ノーズ27の位置は、図1Aに示されるノーズ1428の位置とは異なる。図1Aでは、ノーズは、ピン1420の外面にあるトルクショルダ1426の一端、およびピンシール面1424またはその付近に位置される。図2Aから図11に示すように、ノーズ27は、ピントルクショルダ26の一端に位置されていない。その代わりに、ノーズ27は、プロファイル図でのショルダ26の長さに関してピントルクショルダ26の中間部または中央部にある。ノーズ27の形状は様々であってよく、例えば、角形、ソケット、平らな端、ブルノーズ、バルブ、円錐状、丸みを帯びた形状、魚尾状などであってよい。凹部127は、長手方向軸に垂直な方向にトルクショルダ126の長さに沿って位置され、第1の表面126aと第2の表面126bとを接続する頂点である。この実施形態では、ノーズ27および凹部127の形状は相補的であるため、ピン10がコネクタ100にねじ込まれるとノーズ27と凹部127とは嵌め合わされ、凹部127はノーズ27に接触し、ピンショルダ26はボックスショルダ126に接触する。(図5)。
【0027】
スタンドオフSaとスタンドオフSbとの幅の差は、ノーズ27が長手方向軸に関して凹部127と最初に位置合わせされていないために生じる。図2Bおよび図3Bに示すように、ノーズ27は凹部127の下に位置される。ノーズ27と凹部127との間のこのオフセットにより、ノーズ27が凹部127に受け入れられると、ピン10が上向きに曲げられる。ピン10が曲がることにより、ノーズ27が凹部127に押し込まれ、接続がさらに緊密になる。別の実施形態では、ノーズ27は凹部127の上方に位置し得るため、ピンが下向きに曲げられ、それによって接続がさらに緊密になる。例えば、図6を参照されたい。
【0028】
図3Aおよび図3Bは、構成の第3段階である第1のショルダタイト位置を示し、これは、ボックス120に対してピン20をさらに回転させた後に生じる。トルクショルダ26、126が互いに接触するまでボックス120にピン20をねじ込むことによって、シール面24、124が互いに押し付けられる。この好ましい実施形態では、例えば、相補的な第2の表面26b、126bは互いにちょうど接触する。その結果、第2の表面26b、126間のスタンドオフSbが除去される。しかし、相補的な第1の表面26a、126a間のスタンドオフSaは依然として存在する。ショルダ26、126間の接触点の後、追加の回転は未だ生じていないため、この位置では、ショルダ26、126に対して追加のトルク力は加えられない。半径方向の距離S1が、ピン20の端とボックス120の表面BSとの間に存在する。シール面24、124の相対角度は、接続部に設計されたシール干渉量S1だけピン20の端とボックス120の表面BSとを押し離して、漏出防止シールを形成するために十分な接触圧力をもたらす。
【0029】
構成の第4段階である第2のショルダタイト位置は、ボックス120に対してピン20をさらに回転させた後に生じる。トルクショルダの第1の表面26a、126aが互いに接触するまでボックス120にピン20をねじ込むことによって、シール面24、124が互いにさらに押し付けられる。半径方向の距離S1は、頂点27、127間の半径方向のオフセット量だけ縮小される。ピンの端部を半径方向外向きに押すと、シール面24、124が互いにさらに緊密になり、さらに優れたシールがもたらされる。第1のショルダ面と第2のショルダ面との間のV字形により、ギャップS1がゼロになってボックスとピンとの間に望ましくない接触が生じるのを防ぐ。
【0030】
接続部を構成する第5の最終段階は、パワータイト位置である。パワータイト段階の間、トルクショルダ26、126に追加のトルクが加えられるが、追加の回転はほとんど発生しない(例えば、約0.01回転)。追加の回転はほとんど発生しないため、接続部のパワータイト位置は、図3Aおよび図3Bに示すショルダタイト位置のように見える。
【0031】
トルクの増加量は、摩擦、ピンの剛性、シール領域周辺のボックスの剛性、ねじの干渉量(該当する場合)、潤滑剤、およびシールの干渉量の関数である。シール面24、124が互いに接触すると、トルクが急速に増加し始める。トルクの増加は、シール面24、124が互いに押し込まれることによって生じる。トルクは、ショルダ26、126がショルダタイト位置で接触するまでほぼ一定の割合で増加し続ける。ショルダ26、126が互いに接触すると、トルクは極めて急速に増加する。ショルダ26、126が接触すると、所定のパワータイト位置に到達し、所望のトルク量が達成されるまで、追加のトルクが加えられる。所望の最終的な構成トルクに到達するために、接続部をさらに回転させる必要はほとんどない(例えば、約0.01回転)。
【0032】
図5Aおよび図5Bは、本発明によるトルクショルダの実施形態の断面図を示す。図5Aおよび図5Bに示すように、図2Aから図4の実施形態では、ピン20は雄型部品として設計され、ボックス120は雌型部品として設計されているため、ボックス120はピン20を受け入れることができる。この実施形態では、ピントルクショルダ26およびボックストルクショルダ126はともにV字形断面を有する。ピンシール面24およびボックスシール面124は、パイプおよびコネクタの接続部によって規定される長手方向軸(図示せず)に関して、それぞれのトルクショルダ26、126から離間している。トルクショルダは、別の形状または設計の断面を有してもよい。
【0033】
ピントルクショルダ26のV字形延長部は、ボックストルクショルダ126のV字形受け部と係合して、ピン20が複数の方向、例えば半径方向内向きまたは外向きに移動するのを低減または防止する。例えば、第1の表面26a、126aは、ピン20のノーズ27を下方に維持することにより、ピン20がボックス120の隅に上向きに打ち込まれるのを防ぐ。また、第2の表面26b、126bは、外部から加えられた圧力がピン20を内向きに押し付けるのを防ぎ、これによりシール面24、124の付勢を弱める。
【0034】
内角Vaは、第1の表面26a、126aと軸Pとの間に形成される。内角Vaは、15°であってよく、これは軸Pに対して反時計回り方向に15°である。内角Vbは、第2の表面26b、126bと軸Pとの間に形成される。内角Vbは、-15°であってよく、これは軸Pに対して時計回り方向に15°である。角度Va、Vbは様々であってよく、例えばそれぞれ3~60°、-3~-60°であってよい。さらに、内角Vaは、内角Vbの絶対値と異なっていても、内角Vbの絶対値に等しくてもよい。例えば、図5Bに示すように、角度Vaは15°であり、-45°である角度Vbの絶対値に等しくなく、15°≠|-45°|であるため、Va≠|Vb|である。別の例では、角度Vaは20°であり得、角度Vbは-10°であり得、この場合、20°≠|-10°|であるため、Va≠|Vb|である。
【0035】
図5Bに示すように、ノーズ27および凹部127は、軸Pの方向でショルダ26a、26b、126a、126bの長さに対して中心のトルクショルダまたはその付近に位置される。第1のピン面26aは、第2のピン面26bと同一またはほぼ同様の長さを有し、第1のボックス面126aは、第2のボックス面126と同一またはほぼ同様の長さを有する。図5Bの実施形態では、ノーズ27および凹部127は、内角Va、Vbの頂点として機能するが、これは好ましい実施形態の非限定的な例である。ノーズ27、凹部127および角度Va、Vbを含むトルクショルダ26、126の形状は可変である。異なる形状と頂点の位置とが使用されてもよい。表面26a、26b、126a、126bまたはVa、Vbの異なる形状または角度が使用されてもよい。例えば、ノーズ27の位置は、トルクショルダ26の中心にある必要はなく、代わりに、外面23よりも内面21の近くに位置されてもよい。
【0036】
図6の別の好ましい実施形態に示すように、第1の表面26a、126aは第2の表面26b、126bよりも長く、第1の角度Vaは第2の角度Vbの絶対値よりも大きい。図7は、第1の表面26a、126aが第2の表面26b、126bよりも短く、第1の角度Vaが第2の角度Vbよりも小さいことを示している。第1の表面26a、126a、第2の表面26b、126b、および頂点(ノーズ、凹部)27、127の形状は、所望の結果が得られるように設計される。上述のように、頂点27、127は、例えば、ピンの端部を押し下げて、ピンの曲げを真っ直ぐにするか最小限に抑えるために、最初は位置ずれしていてもよい。あるいは、例えば、シール24、124に対する接触圧力を高めるために、ピン20の端部を押し上げる必要がある場合がある。
【0037】
図8は、トルクショルダ26、126の別の好ましい実施形態を示し、ショルダ26、126は、図5から図7に示されるV字形断面とは対照的に、弾丸、ブルノーズまたは湾曲形状の断面を有する。第1の表面26aは第1の半径Raを有し、第2の表面26bは第2の半径Rbを有し、第1の表面126aは第3の半径Rcを有し、第2の表面126bは第4の半径Rdを有する。第1および第3の半径Ra、Rcは、第2および第4の半径、それぞれRb、Rdと異なっていても等しくてもよい。ノーズ27は、第1の表面26aと第2の表面26bとの間に位置される。凹部127は、第1の表面126aと第2の表面126bとの間に位置される。V字形断面の実施形態に関して上述したように、第1の表面26a、126a、第2の表面26b、126bおよび半径Ra、Rb、Rc、Rdおよび頂点は、ピン20を押し上げるか押し下げて、ボックス120に対してピン20を所望の位置に捕捉するように調整されてもよい。別の実施形態では、ピンは単一の半径を有する単一の表面を有してもよく、ボックスは単一の半径を有する単一の表面を有してもよい。この実施形態では、ピン半径とボックス半径とは等しくても等しくなくてもよく、半径の中心線は軸から同じ距離であってもなくてもよい。2つの半径が互いに対して半径方向にオフセットされている場合、ピンの端部は、2つの半径のオフセット方法に応じて、上向きまたは下向きに押し付けられる。
【0038】
トルクショルダ26、126のV字形断面およびブルノーズ断面設計は、雄型および雌型の形状がボックス内の半径方向の位置にピンを捕捉または拘束し、それによってピンの移動を低減または防止するため、従来技術よりも有利である。ショルダ26、126の設計を調整することにより、ピンの曲げ、湾曲またはたわみが補償されるか最小限に抑えられ得る。さらに、シール面24、124の接触圧力が増加し得る。同様に他の利点もそこから得られる可能性がある。
【0039】
好ましくは、第1および第2の角度Va、Vbまたは第1および第2の半径Ra、Rbは、ピン20に作用する力Fの比較的大きい成分が半径方向成分Rではなく軸方向成分Aであるように十分に小さくなるように設計される。図9を参照されたい。
【0040】
図10Aおよび図10Bは、図2Aから図9に示された実施形態と比較してV字形のショルダの設計が反転されたピンおよびボックスのトルクショルダ接続を示す。この実施形態では、ピン220は雌部材であり、ボックス320は雄部材である。ボックス320は、ボックスシール面324、第1のショルダ面326a、第2のショルダ面326bを含む。ノーズ327は、第1のショルダ面326aと第2のショルダ面326bとの間に形成される。ピン220は、ピンシール面224、第1のショルダ面226aおよび第2のショルダ面226bを含む。凹部227は、第1のショルダ面226bと第2のショルダ面226bとの間に形成される。この実施形態では、ボックス面326aと326bとの間の頂点はノーズ327を形成し、ピン面226aと226bとの間の頂点は凹部227を形成する。ノーズ327と凹部とは相補的な表面であるため、ノーズ327は、図2aから図5Bに関して上述したのと同じようにボックス320内でピン220を回転させることにより凹部227に受け入れられる。この反転されたショルダの設計は、図8に示すブルノーズの実施形態にも適用され得る。
【0041】
図11Aおよび図11Bは、本発明のさらに好ましい実施形態による、ピン520およびボックス420が異なるショルダ面形状を有し、頂点527および427が互いに相補的ではないトルクショルダ接続を示す。図11Aは、第1のショルダ面526aおよび第2のショルダ面526bを有する、丸みを帯びたまたはブルノーズのショルダ面526を有するピン520を示す。頂点527は、第1のショルダ面526aと第2のショルダ面526bとの間に位置される。ボックス420は、第1のショルダ面426aおよび第2のショルダ面426bを有するV字形のボックスショルダ面426を含む。頂点427は、第1のショルダ面426aと第2のショルダ面426bとの間に位置される。ピン520およびボックス420は、図2Aから図5Bに関して上述したのと同じように互いに接触する。ボックス420へのピン520の回転により、第1のショルダ面526aと第1のショルダ面426aとの接触、および第2のショルダ面526bと第2のショルダ面426bとの接触がもたらされる。図11Aおよび図11Bに示される実施形態では、ショルダ526およびショルダ426の異なる表面形状のために、頂点427および頂点527が互いに接触できない。構成後、頂点426、526間にギャップまたは空間530が存在する。また、ショルダ面526、426の形状および設計の変動により、ショルダ面526、426は、表面526、426の一部に沿って互いに接触しない。
【0042】
図11Bは、V字形のピンショルダ面526を有するピン520と、丸みを帯びたまたはブルノーズのボックスショルダ面426を有するボックス420とを示す。ピンショルダ面526は、第1のショルダ526aおよび第2のショルダ面526bを有する。頂点527は、第1のショルダ面526aと第2のショルダ面526bとの間に位置される。ボックスショルダ面426は、第1のショルダ面426aおよび第2のショルダ面426bを有する。頂点427は、第1のショルダ面426aと第2のショルダ面426bとの間に位置される。ピン520およびボックス420は、図2Aから図5Bおよび図11Aに関して上述したのと同じように互いに接触する。ボックス420へのピン520の回転により、第1のショルダ面526aと第1のショルダ面426aとの接触、および第2のショルダ面526bと第2のショルダ面426bとの接触がもたらされる。頂点427と527との間に空間530が存在する。
【0043】
図11Aおよび図11Bでは、構成中にピン520がボックス420内に挿入されると同時にピンショルダ面526a、526bがボックスショルダ面426a、426bに接触するように頂点527および427が互いに位置合わせされるように、ピン520およびボックス420が設計されてもよい。その代わりに、第1のショルダ面526a、426aが最初に接触し、次にピン520がボックス520にさらにねじ込まれると第2のショルダ面526b、426bが接触するように、ショルダ面526、426および頂点527、427が設計されてもよい。別の変形例では、第2のショルダ面526b、426bが最初に接触し、次にピン520がボックス520にさらにねじ込まれると第1のショルダ面526a、426aが接触するように、ショルダ面526、426および頂点527、427が設計されてもよい。
【0044】
ショルダ面426、526は、例えば、限定されるものではないが、ブルノーズ、弾丸形、角形、丸みを帯びた形状または魚尾状を含む様々な形状で設計されてもよい。
【0045】
前述の明細書では、特定の例示的な実施形態およびその例を参照して本発明を説明されている。しかし、以下の特許請求の範囲に記載された本発明のさらに広い主旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を加えることができることは明らかであろう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な方法で考慮されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B