IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サントリーホールディングス株式会社の特許一覧

特許7539357パッキン取り外し治具およびパッキン取り外し方法
<>
  • 特許-パッキン取り外し治具およびパッキン取り外し方法 図1
  • 特許-パッキン取り外し治具およびパッキン取り外し方法 図2
  • 特許-パッキン取り外し治具およびパッキン取り外し方法 図3
  • 特許-パッキン取り外し治具およびパッキン取り外し方法 図4
  • 特許-パッキン取り外し治具およびパッキン取り外し方法 図5
  • 特許-パッキン取り外し治具およびパッキン取り外し方法 図6
  • 特許-パッキン取り外し治具およびパッキン取り外し方法 図7
  • 特許-パッキン取り外し治具およびパッキン取り外し方法 図8
  • 特許-パッキン取り外し治具およびパッキン取り外し方法 図9
  • 特許-パッキン取り外し治具およびパッキン取り外し方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】パッキン取り外し治具およびパッキン取り外し方法
(51)【国際特許分類】
   B25B 27/28 20060101AFI20240816BHJP
   B23P 19/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B25B27/28
B23P19/02 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021147748
(22)【出願日】2021-09-10
(65)【公開番号】P2023040643
(43)【公開日】2023-03-23
【審査請求日】2023-09-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会名 からくり改善▲R▼くふう展 オンライン 第25回からくり改善くふう展2020 製造現場における「見える化・IoT」改善展2020 開催アドレス https://www.jipm-ondemand.com/jipm/login/login.php?c=ODY1(現在は公開されていません。) 開催年月日 令和3年3月23日~令和3年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 徳之
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-085637(JP,A)
【文献】特開2020-121382(JP,A)
【文献】特表2015-520345(JP,A)
【文献】実開昭63-136878(JP,U)
【文献】米国特許第4473934(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 25/00 - 29/02
B25B 33/00
B23P 19/00 - 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に存在する成分を液体中に分散させるホモゲナイザーの送液を行うピストンに装着したパッキン部を前記ピストンから取り外す際に使用する治具であって、
前記パッキン部に対して前記ピストンを相対移動させるときに前記パッキン部の端部と当接できる当接部を備えたパッキン部当接治具と、
前記ピストンを一の方向に摺動させるときに当該ピストンに固定して前記パッキン部当接治具を前記一の方向に向けて押圧できる押圧部を備えた押圧治具と、
前記パッキン部当接治具と係合する係合端部を備えて前記ピストンを他の方向に摺動させるときに前記パッキン部当接治具の前記他の方向への移動を規制して位置を固定する固定治具と、を有するパッキン取り外し治具。
【請求項2】
前記パッキン部当接治具および前記押圧治具を共に同一方向にガイドできるガイド溝を備えたガイド治具を有する請求項1に記載のパッキン取り外し治具。
【請求項3】
液体中に存在する成分を液体中に分散させるホモゲナイザーの送液を行うピストンに装着したパッキン部を前記ピストンから取り外す際に、
前記パッキン部に対して前記ピストンを相対移動させるときに前記パッキン部の端部と当接できる当接部を備えたパッキン部当接治具を、前記ピストンの円柱部の上面に設置するパッキン部当接治具設置工程と、
前記ピストンを一の方向に摺動させるときに当該ピストンに固定して前記パッキン部当接治具を前記一の方向に向けて押圧できる押圧部を備えた押圧治具を、前記円柱部およびピストン軸部の結合部の上面に設置して固定する押圧治具設置工程と、
前記ピストンを一の方向に摺動させて前記パッキン部当接治具を前記押圧治具によって前記一の方向に向けて押圧して移動させる押圧工程と、
前記押圧治具を前記結合部の上面から除去する押圧治具除去工程と、
前記パッキン部当接治具と係合する係合端部を備えて前記ピストンを他の方向に摺動させるときに前記パッキン部当接治具の前記他の方向への移動を規制して位置を固定する固定治具を、前記ピストン軸部を収容するホモゲナイザー本体の壁面部と前記パッキン部当接治具とに亘って突っ張り架設する固定治具架設工程と、
前記ピストンを他の方向に摺動させて前記パッキン部に対して前記ピストンを相対移動させて前記ピストンから前記パッキン部を離脱させるパッキン部離脱工程と、を有するパッキン取り外し方法。
【請求項4】
前記パッキン部当接治具設置工程および前記押圧治具設置工程の後に、
前記パッキン部当接治具および前記押圧治具を共に同一方向にガイドできるガイド溝を備えたガイド治具を、前記ガイドができるように前記パッキン部当接治具および前記押圧治具の上方に設置するガイド治具設置工程を有する請求項3に記載のパッキン取り外し方法。
【請求項5】
前記押圧工程の後に、前記ガイド治具を除去するガイド治具除去工程を有する請求項4に記載のパッキン取り外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホモゲナイザーにおいて、送液を行うピストンに装着したパッキン部を当該ピストンから取り外す際に使用する治具に関する。
【背景技術】
【0002】
ホモゲナイザーは、液体に溶けずに粒子状になっている成分を高い圧力(150~1500気圧)で細い隙間のバルブ(数ミクロン~数mm)に高速で通過させて細かくし、液体中に均一に分散させる装置である。この装置を使うと、例えば水と混じり合わない油を細かく分散(乳化)し、分離させないようにすることができる。ホモゲナイザーは、牛乳や乳製品・缶コーヒー等の乳化・均質だけではなく、医薬品や化学・化粧品業界など様々な分野で使用されている。
【0003】
ホモゲナイザーは、モータの回転運動をピストンの往復運動に変換する駆動部を備え、当該ピストンで送液を行うプランジャー式高圧ポンプの出口に、圧力調整可能なホモバルブ(均質弁)を備えており、流体の乳化・均質・分散を、大容量かつ連続的に行うことができる。
【0004】
ホモゲナイザーは定期的な分解点検が必要であり、例えば特許文献1には、ピストンの着脱について記載してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実公平4-11017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホモゲナイザーにおいて、ピストンはその円柱部の周囲にパッキン部を装着する場合がある。当該パッキン部は、例えば樹脂製のVパッキンと、その前後に設けたピストンガイドメタルやパッキン部アダプターなどからなるパッキンユニットのことをいう。当該パッキン部はピストンとシリンダーとの間を密閉している。この場合、ホモゲナイザーのメンテナンスにおいて、パッキン部を装着したピストンの円柱部をピストン軸部から離脱した後、パッキン部を当該円柱部から離脱する作業を行っていた。その後、例えばパッキン部の交換を実施する場合には、新しいパッキン部をピストンの円柱部に装着し、当該パッキン部を装着した当該円柱部をピストン軸部に装着する作業を行っていた。
【0007】
特に、ピストンの円柱部をピストン軸部から離脱する際には、円柱部およびピストン軸部の結合部のネジをスパナなどの工具で緩め、当該円柱部をピストン軸部に装着する際には当該ネジを当該工具で強固に締める必要があった。当該工具で作業する空間は非常に狭いため、このようなピストン(円柱部)の着脱作業は煩雑なものとなっていた。
【0008】
ホモゲナイザーのメンテナンスにおいて、ピストンやパッキン部の脱着に要する時間は、全体の4分の1程度を占めており、さらにホモゲナイザー1台につき、通常、複数本(3~5本)のピストンを備えるため、ピストンやパッキン部の脱着にかなりの時間や労力を要していた。
【0009】
従って、本発明の目的は、ホモゲナイザーにおいて、パッキン部の交換などのメンテナンス作業を迅速かつ簡便に行えるパッキン取り外し治具およびパッキン取り外し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るパッキン取り外し治具の特徴構成は、液体中に存在する成分を液体中に分散させるホモゲナイザーの送液を行うピストンに装着したパッキン部を前記ピストンから取り外す際に使用する治具であって、
前記パッキン部に対して前記ピストンを相対移動させるときに前記パッキン部の端部と当接できる当接部を備えたパッキン部当接治具と、
前記ピストンを一の方向に摺動させるときに当該ピストンに固定して前記パッキン部当接治具を前記一の方向に向けて押圧できる押圧部を備えた押圧治具と、
前記パッキン部当接治具と係合する係合端部を備えて前記ピストンを他の方向に摺動させるときに前記パッキン部当接治具の前記他の方向への移動を規制して位置を固定する固定治具と、を有する点にある。
【0011】
上述したパッキン部当接治具および押圧治具は、押圧部がパッキン部当接治具と当接するようにホモゲナイザーに配置することができる。この状態で、ピストンを一の方向に摺動させて位置を移動させ、ピストンに固定した押圧治具によってパッキン部当接治具をパッキン部取り外し位置まで移動させることができる。このとき、パッキン部当接治具の当接部をパッキン部の端部と当接させることができる。
【0012】
固定治具は、係合端部の側でパッキン部当接治具と係合するようにホモゲナイザーに配置することができる。この状態でピストンを他の方向に摺動させて位置を移動させると、パッキン部も他の方向に移動しようとするが、パッキン部当接治具の当接部がパッキン部の端部と当接し、さらにパッキン部当接治具が固定治具によって他の方向への移動を規制するように固定してあるため、パッキン部の位置は固定された状態となる。この状態で、さらにピストンが他の方向に移動すると、パッキン部に対してピストンのみが相対移動し、やがてピストンからパッキン部を離脱させることができる。
【0013】
このように本構成によれば、ホモゲナイザーにおいて、パッキン部当接治具、押圧治具および固定治具を使用することで、ピストンからパッキン部の取り外しを伴うメンテナンス作業を行うことができる。特に、本発明では、パッキン部の離脱作業において、ピストンの円柱部をピストン軸部から離脱する必要は無く、さらに当該離脱後に当該円柱部をピストン軸部に装着する必要もないため、当該メンテナンス作業を迅速かつ簡便に行うことができる。
【0014】
また、従来、ピストンの円柱部をピストン軸部から着脱する際に、円柱部およびピストン軸部の結合部のネジの締緩作業に使用していたスパナなどの工具を使用していたところ、本発明では、当該使用の必要がないため当該ネジを当該工具で強固に締緩する必要がなくなるため、狭い作業空間での作業を省き、かつパッキン部取り外しを伴うメンテナンス作業の省力化を実現することができる。さらに、本発明では、メンテナンス作業の時間を短縮することができるため、作業効率の向上を図ることができる。
【0015】
本発明に係るパッキン取り外し治具の更なる特徴構成は、前記パッキン部当接治具および前記押圧治具を共に同一方向にガイドできるガイド溝を備えたガイド治具を有する点にある。
【0016】
上述したガイド治具は、例えばパッキン部当接治具の一部および押圧治具の一部をガイド溝に係入させるようにホモゲナイザーに配置することができる。従って、本構成によれば、ガイド治具によってパッキン部当接治具および押圧治具を共に同一方向(ピストンの軸芯方向)にガイドできるため、パッキン部当接治具および押圧治具を、ピストンの円周方向に位置ズレし難い状態(姿勢を安定させた状態)で同一方向に移動させることができる。
【0017】
本発明に係るパッキン取り外し方法の特徴構成は、液体中に存在する成分を液体中に分散させるホモゲナイザーの送液を行うピストンに装着したパッキン部を前記ピストンから取り外す際に、
前記パッキン部に対して前記ピストンを相対移動させるときに前記パッキン部の端部と当接できる当接部を備えたパッキン部当接治具を、前記ピストンの円柱部の上面に設置するパッキン部当接治具設置工程と、
前記ピストンを一の方向に摺動させるときに当該ピストンに固定して前記パッキン部当接治具を前記一の方向に向けて押圧できる押圧部を備えた押圧治具を、前記円柱部およびピストン軸部の結合部の上面に設置して固定する押圧治具設置工程と、
前記ピストンを一の方向に摺動させて前記パッキン部当接治具を前記押圧治具によって前記一の方向に向けて押圧して移動させる押圧工程と、
前記押圧治具を前記結合部の上面から除去する押圧治具除去工程と、
前記パッキン部当接治具と係合する係合端部を備えて前記ピストンを他の方向に摺動させるときに前記パッキン部当接治具の前記他の方向への移動を規制して位置を固定する固定治具を、前記ピストン軸部を収容するホモゲナイザー本体の壁面部と前記パッキン部当接治具とに亘って突っ張り架設する固定治具架設工程と、
前記ピストンを他の方向に摺動させて前記パッキン部に対して前記ピストンを相対移動させて前記ピストンから前記パッキン部を離脱させるパッキン部離脱工程と、を有する点にある。
【0018】
パッキン部当接治具設置工程では、パッキン部当接治具を円柱部の上面に設置し、当接部とパッキン部の端部とを当接(或いは近接)させることができる。
押圧治具設置工程では、押圧治具を結合部の上面に設置して押圧治具を当該上面に固定し、押圧部がパッキン部当接治具と当接するように配置することができる。
押圧工程では、ピストンを一の方向に摺動させて位置を移動させ、押圧治具によってパッキン部当接治具をパッキン部取り外し位置まで移動させることができる。
押圧治具除去工程では、押圧治具を結合部の上面から除去することができる。
固定治具架設工程では、固定治具を、係合端部の側でパッキン部当接治具と係合させ、当該係合端部の反対の側を壁面部に設置することにより、パッキン部当接治具と壁面部とに亘って突っ張り架設した状態とすることができる。
パッキン部離脱工程では、ピストンを他の方向に摺動させて位置を移動させると、パッキン部も他の方向に移動しようとするが、パッキン部当接治具の当接部がパッキン部の端部と当接し、さらにパッキン部当接治具が固定治具によって他の方向への移動を規制するように固定してあるため、パッキン部の位置は固定された状態となる。この状態で、さらにピストンが他の方向に移動すると、パッキン部に対してピストンのみが相対移動し、やがてピストンからパッキン部を離脱させることができる。
【0019】
このように本構成のパッキン取り外し方法によれば、パッキン部当接治具、押圧治具および固定治具を使用して上記の各工程を行うことで、ピストンからパッキン部の取り外しを伴うメンテナンス作業を迅速かつ簡便に行うことができる。また、当該方法によれば、メンテナンス作業の省力化を実現でき、メンテナンス作業効率の向上を図ることができる。
【0020】
本発明に係るパッキン取り外し方法の更なる特徴構成は、前記パッキン部当接治具設置工程および前記押圧治具設置工程の後に、前記パッキン部当接治具および前記押圧治具を共に同一方向にガイドできるガイド溝を備えたガイド治具を、前記ガイドができるように前記パッキン部当接治具および前記押圧治具の上方に設置するガイド治具設置工程を有する点にある。
【0021】
ガイド治具設置工程では、パッキン部当接治具の一部および押圧治具の一部をガイド治具のガイド溝に係入させるように、パッキン部当接治具および押圧治具の上方に設置することができる。
【0022】
本発明に係るパッキン取り外し方法の更なる特徴構成は、前記押圧工程の後に、前記ガイド治具を除去するガイド治具除去工程を有する点にある。
【0023】
ガイド治具除去工程では、ガイド治具を除去することで押圧治具を除去できる状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態のパッキン取り外し治具を示す平面図である。
図2】パッキン取り外し治具を使用してパッキンの取り外しを行う概略図である。
図3】パッキン取り外し治具を使用してパッキンの取り外しを行う概略図である。
図4】パッキン取り外し治具を使用してパッキンの取り外しを行う概略図である。
図5】パッキン取り外し治具を使用してパッキンの取り外しを行う概略図である(パッキン部当接治具設置工程,押圧治具設置工程)。
図6】パッキン取り外し治具を使用してパッキンの取り外しを行う概略図である(ガイド治具設置工程)。
図7】パッキン取り外し治具を使用してパッキンの取り外しを行う概略図である(押圧工程)。
図8】パッキン取り外し治具を使用してパッキンの取り外しを行う概略図である(固定治具架設工程)。
図9】パッキン取り外し治具を使用してパッキンの取り外しを行う概略図である(パッキン部離脱工程)。
図10】実施形態のパッキン取り外し方法の各工程の流れを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明のパッキン取り外し治具は、液体中に存在する成分を液体中に分散させるホモゲナイザーの送液を行うピストンに装着したパッキン部を当該ピストンから取り外す際に使用する治具である。
【0026】
図1~9に示したように、パッキン取り外し治具Xは、パッキン部2に対してピストン1を相対移動させるときにパッキン部2の端部2aと当接できる当接部11aを備えたパッキン部当接治具10と、
ピストン1を一の方向D1に摺動させるときに当該ピストン1に固定してパッキン部当接治具10を一の方向D1に向けて押圧できる押圧部21aを備えた押圧治具20と、
パッキン部当接治具10と係合する係合端部32を備えてピストン1を他の方向D2に摺動させるときにパッキン部当接治具10の他の方向への移動を規制して位置を固定する固定治具30と、を有する。
【0027】
本実施形態では、パッキン取り外し治具Xは、パッキン部当接治具10および押圧治具20を共に同一方向にガイドできるガイド溝40aを備えたガイド治具40を有する態様について説明する。
【0028】
ホモゲナイザー100は、モータ(図外)の回転運動をピストン1の往復運動に変換し、当該往復運動によって送液を行うことができる。ピストン1は円柱状の円柱部1aを備え、その一端は、モータに接続するピストン軸部1bと結合部1cにおいて連結している。
【0029】
ピストン1は、その往復運動の際に、領域Aに存在する液体を領域Cへ送液することができる。具体的には、ピストン1がD2方向に後退したとき、領域Aに存在する液体はバルブ101が開状態となることで領域Bに移動する。このとき、領域Cの液体はバルブ102が閉状態となっているため領域Bには移動できない。この状態で、ピストン1がD1方向に前進したとき、バルブ102が開状態となることで領域Cに移動する。このとき、領域Bの液体はバルブ101が閉状態となっているため領域Aには移動できない。
【0030】
このようにピストン1によって送液することで、送液された液体における成分の乳化・均質・分散を、大容量かつ連続的に行うことができる。
【0031】
パッキン部2は、ピストン1の円柱部1aの周囲に装着可能な態様としてあり、ピストン1とシリンダー103の内壁との間を密閉することができる。当該パッキン部2は円柱部1aの周囲に装着可能であり、前記密閉ができる態様であれば特に限定されるものではない。本実施形態では、パッキン部2を、樹脂製のVパッキン2Aと、その前後に設けたピストンガイドメタル2Bおよびパッキンアダプター2Cを円柱部1aの周囲に装着するパッキンユニットとした場合について説明する。即ち、本明細書では、パッキン部2の着脱についてはパッキンユニットの着脱を意図したものとする。しかし、パッキン部2が例えばVパッキン2Aのみからなる場合であってもよく、この場合は、パッキン部2の着脱はVパッキン2Aのみの着脱を意図したものとする。Vパッキン2Aを装着する数は特に限定されるものではないが、本実施形態では2本のVパッキン2Aを装着する場合について説明する。
【0032】
パッキン部当接治具10は、パッキン部2に対してピストン1を相対移動させるときにパッキン部2の端部2aと当接できる治具である。本実施形態では、パッキン部当接治具10は、当接治具本体11および当該当接治具本体11の一端の上面に設けた突出部12を備えた態様について説明するが、このような態様に限定されるものではない。当該当接治具本体11の一端は、パッキン部2の端部2aと当接できる当接部11aとなっている。
【0033】
本実施形態の当接治具本体11は、ピストン1の円柱部1aの上面の形状に沿った形状となるように、断面が半円形で長尺状の薄板としてある態様について説明する。
【0034】
突出部12は、当接治具本体11の一端の上面から突出するように設け、突出した部分は、固定治具30の一端と係合できる係合部12aを備えるように構成してあれば、その形状は限定されるものではない。本実施形態では、当該係合部12aを孔部とした場合について説明する。当該突出部12は当接治具本体11と一体形成したものであってもよいし、別体で形成した後に接着などによって一体化してもよい。
【0035】
また、パッキン部当接治具10の材質は、金属製や樹脂製など特に限定されるものではないが、本実施形態では金属製(ステンレス)とした場合について説明する。当接治具本体11の長尺方向の長さは、円柱部1aの長尺方向の長さと同等か、それより短く設定するとよい。本実施形態では、当接治具本体11の長尺方向の長さは、円柱部1aの長尺方向の長さの6割程度とした場合について説明する。当接治具本体11の厚さは、パッキン部当接治具10を円柱部1aの上面に設置した状態で、ピストン1が摺動するシリンダー103の内壁およびシリンダー開口部103aをパッキン部当接治具10が通過できるように設定する。本実施形態では、当接治具本体11の厚さは数ミリ(5ミリ)程度とした場合について説明する。
【0036】
押圧治具20は、当該押圧治具20をピストン1に固定した状態でピストン1を一の方向D1に摺動させるときにパッキン部当接治具10を一の方向D1に向けて押圧できる治具である。本実施形態では、押圧治具20は、押圧治具本体21および当該押圧治具本体21の上端に設けた突起部22を備えた態様について説明するが、このような態様に限定されるものではない。当該押圧治具本体21は、パッキン部当接治具10の端部11b(当接部11aの反対側)と当接できる押圧部21aを備える。
【0037】
本実施形態では、押圧治具本体21は、矩形状の薄板において、その正面視の底辺が結合部1cの上面の形状に沿った半円形の切欠部23を有する形状となるように構成してある場合について説明するが、このような態様に限定されるものではない。当該切欠部23は、例えば円柱部1aおよび結合部1cの間に存在する段差に嵌入できるように、形状や厚さ寸法を設定すればよい。切欠部23を当該段差に嵌入することによって、押圧治具20をピストン1に固定することができる。
【0038】
突起部22は、押圧治具本体21の上辺から突出するように設け、突出した部分は、作業時に作業者が把持できるように構成してあれば、その形状は限定されるものではない。本実施形態の突起部22は、屈曲した状態で押圧治具本体21と接続した態様について説明する。当該突起部22は押圧治具本体21と一体形成したものであってもよいし、別体で形成した後に接着などによって一体化してもよい。
【0039】
押圧治具20の材質は、金属製や樹脂製など特に限定されるものではないが、本実施形態では金属製(ステンレス)とした場合について説明する。また、本実施形態では、押圧治具本体21の厚さは、数ミリ(5ミリ)程度とした場合について説明する。
【0040】
固定治具30は、ピストン1を他の方向(一の方向の反対方向)D2に摺動させるときにパッキン部当接治具10の位置を固定する治具である。本実施形態では、固定治具30は、例えば長尺状(棒状)の固定治具本体31を備えるが、このような態様に限定されるものではない。当該固定治具本体31は、その一端にはパッキン部当接治具10と係合する係合端部32を備え、その他端には、ピストン軸部1bを収容するホモゲナイザー本体100Aの壁面部100Bに設置できる設置部33を備える。
【0041】
本実施形態では係合端部32は突設した凸部とした場合について説明するが、このような態様に限定されるものではなく、パッキン部当接治具10と係合して、当該パッキン部当接治具10を支持できる態様であればよい。当該凸部32は、上述したパッキン部当接治具10の係合部(孔部)12aに挿入することにより係合部12aと係合できるように構成すれば、その突出形状は特に限定されるものではない。
【0042】
設置部33は、前記壁面部100Bに設置できるように構成してある。本実施形態では、設置部33は、固定治具本体31の他端において、互いに反対方向となるように一対の脚部33a,33bを突設した態様としてあるがこのような態様に限定されるものではない。固定治具30は、凸部32の側で前記係合部12aと係合し、さらに設置部33の側で壁面部100Bに設置することにより、パッキン部当接治具10と壁面部100Bとに亘って突っ張り架設した状態とすることができ、パッキン部当接治具10の位置を固定することができるように構成してある。
【0043】
また、固定治具30の材質は、金属製や樹脂製など特に限定されるものではないが、本実施形態では金属製(ステンレス)とした場合について説明する。固定治具30の長尺方向の長さは、上記のように固定治具30によってパッキン部当接治具10の位置を固定した状態で、パッキン部2に対してピストン1を相対移動させてピストン1からパッキン部2を離脱させることができるように設定するとよい。
【0044】
ガイド治具40は、パッキン部当接治具10および押圧治具20を共に同一方向(ピストン1の軸芯方向)にガイドできるガイド溝40aを備えた治具である。本実施形態では、ガイド治具40は、矩形状の薄板の中央付近を、当該ガイド溝40aを形成する部分を、窓状に切り欠いたガイド治具本体41を備えた態様について説明するが、このような態様に限定されるものではない。ガイド溝40aは、パッキン部当接治具10および押圧治具20を共に同一方向にガイドできるように、例えばパッキン部当接治具10の突出部12および押圧治具20の突起部22をガイド溝40aに係入させることができる。
【0045】
ガイド治具本体41の一端は、シリンダー103の上面(シリンダーボックスの上面)に設置できるシリンダー側設置部42を備え、ガイド治具本体41の他端は、ホモゲナイザー本体100Aの壁面部100Bに設置できる壁面側設置部43を備える。本実施形態では、シリンダー側設置部42はガイド治具本体41より厚さが薄くなるように構成し、壁面側設置部43はガイド治具本体41の他端において互いに反対方向となるように一対の脚部43a,43bを突設した態様としてあるが、これらの態様に限定されるものではない。
【0046】
ガイド治具40の材質は、金属製や樹脂製など特に限定されるものではないが、本実施形態では金属製(ステンレス)とした場合について説明する。また、本実施形態では、ガイド治具本体41の厚さは、数ミリ(5ミリ)程度とした場合について説明する。
【0047】
本発明のパッキン取り外し治具Xは、以下のようにして使用することができる。
即ち、パッキン部当接治具10および押圧治具20は、押圧治具本体21の押圧部21aがパッキン部当接治具10の端部11bと当接するようにホモゲナイザー100に配置することができる。この状態で、ピストン1を一の方向D1に摺動させて位置を移動させ、ピストン1に固定した押圧治具20によってパッキン部当接治具10をパッキン部取り外し位置まで移動させることができる。このとき、パッキン部当接治具10の当接部11aをパッキン部2の端部2aと当接させることができる。
【0048】
固定治具30は、係合端部32の側でパッキン部当接治具10の係合部12aと係合するようにホモゲナイザー100に配置することができる。この状態でピストンを他の方向D2に摺動させて位置を移動させると、パッキン部2も他の方向D2に移動しようとするが、パッキン部当接治具10の当接部11aがパッキン部2の端部2aと当接し、さらにパッキン部当接治具10が固定治具30によって固定してあるため、パッキン部2の位置は固定された状態となる。この状態で、さらにピストン1が他の方向D2に移動すると、パッキン部2に対してピストン1のみが相対移動し、やがてピストン1からパッキン部2を離脱させることができる。
【0049】
また、ガイド治具40は、パッキン部当接治具10の突出部12および押圧治具20の突起部22をガイド溝40aに係入させるようにホモゲナイザー100に配置することができる。従って、ガイド治具40によってパッキン部当接治具10および押圧治具20を共に同一方向(ピストン1の軸芯方向)にガイドできるため、パッキン部当接治具10および押圧治具20を、ピストン1の円周方向に位置ズレし難い状態(姿勢を安定させた状態)で一の方向D1に移動させることができる。
【0050】
上記のパッキン取り外し治具Xを使用して、ホモゲナイザー100のピストン1に装着したパッキン部2を取り外すパッキン取り外し方法(図10)について、より具体的に以下に説明する。
【0051】
まず、ホモゲナイザー100の駆動を停止した後、シリンダー103の蓋部104を外し、シリンダー103の内部のスプリング105を除去する(図2~3)。手動回転ハンドル(図外)を回すことによってピストン1の位置を最奥の状態にする(図4)。
【0052】
パッキン部当接治具10をピストン1の円柱部1aの上面に設置するパッキン部当接治具設置工程P1を行う(図5)。本工程では、パッキン部当接治具10の一端側(当接部11aの側)の一部をシリンダー開口部103aに挿入してパッキン部当接治具10を円柱部1aの上面に設置し、当接部11aとパッキン部2の端部2aとを当接(或いは近接)させる。
【0053】
この状態で、押圧治具20を、円柱部1aおよびピストン軸部1bの結合部1cの上面に設置して固定する押圧治具設置工程P2を行う(図5)。本工程では、押圧治具本体21(切欠部23)の底辺を、例えば円柱部1aおよび結合部1cの間に存在する段差に嵌入できるように押圧治具20を結合部1cの上面に設置し、押圧治具20を当該上面に固定する。このとき、パッキン部当接治具10の突出部12および押圧治具20の突起部22は、ピストン1の軸芯方向視において重なるように配置される。
【0054】
好ましくは、パッキン部当接治具設置工程P1および押圧治具設置工程P2の後に、ガイド治具40を、パッキン部当接治具10および押圧治具20を共に同一方向にガイドができるようにパッキン部当接治具10および押圧治具20の上方に設置するガイド治具設置工程P3を行う(図6)。本工程では、パッキン部当接治具10の突出部12および押圧治具20の突起部22をガイド溝40aに係入させる。
【0055】
ピストン1を一の方向D1に摺動させてパッキン部当接治具10を押圧治具20によって一の方向D1に向けて押圧して移動させる押圧工程P4を行う(図7)。本工程では、手動回転ハンドル(図外)を回すことによってピストン1を一の方向D1に摺動させて位置を移動させ、押圧治具20によってパッキン部当接治具10をパッキン部取り外し位置まで移動させる。このとき、押圧治具本体21の押圧部21aがパッキン部当接治具10の端部11bと当接してパッキン部当接治具10を一の方向D1に押圧し、パッキン部当接治具10の当接部11aをパッキン部2の端部2aと当接させる。また、仮にパッキン部当接治具10の上面がシリンダー開口部103aと接触した場合であっても、パッキン部当接治具10は押圧治具20によって一の方向D1に押圧されるため、確実にパッキン部当接治具10の当接部11aをパッキン部2の端部2aと当接させることができる。また、ガイド治具40によってパッキン部当接治具10および押圧治具20を共に同一方向にガイドできるため、パッキン部当接治具10および押圧治具20を、ピストン1の円周方向に位置ズレし難い状態(姿勢を安定させた状態)で一の方向D1に移動させることができる。
【0056】
押圧工程P4の後に、ガイド治具40を除去するガイド治具除去工程P5を行う。本工程では、ガイド治具40を除去することで押圧治具20を除去できる状態にすることができる。その後、押圧治具20を結合部1cの上面から除去する押圧治具除去工程P6を行う。
【0057】
固定治具30を、ピストン軸部1bを収容するホモゲナイザー本体100Aの壁面部100Bとパッキン部当接治具10とに亘って突っ張り架設する固定治具架設工程P7を行う(図8)。本工程では、固定治具30を係合端部32の側でパッキン部当接治具10の係合部12aと係合させ、設置部33の側を壁面部100Bに設置することにより、パッキン部当接治具10と壁面部100Bとに亘って突っ張り架設した状態とすることができる。これにより、固定治具30は、パッキン部当接治具10の他の方向D2への移動を規制して位置を固定することができる。
【0058】
ピストン1を他の方向D2に摺動させてパッキン部2に対してピストン1を相対移動させ、ピストン1からパッキン部2を離脱させるパッキン部離脱工程P8を行う(図9)。本工程では、手動回転ハンドル(図外)を回すことによってピストン1の位置を他の方向D2に向けて移動させ、ピストン1の位置をパッキン部取り外し位置から最奥の状態に配置させる。このとき、ピストン1が他の方向D2に移動するに伴い、パッキン部2も他の方向D2に移動しようとするが、パッキン部当接治具10の当接部11aがパッキン部2の端部2aと当接し、さらにパッキン部当接治具10が固定治具30によって突っ張り固定してあるため、パッキン部2の位置は固定された状態となる。この状態で、さらにピストン1が他の方向D2に移動すると、パッキン部2に対してピストン1のみが相対移動し、やがてピストン1からパッキン部2を離脱させることができる。
【0059】
離脱させたパッキン部2をシリンダー103の内部より作業者が取り出して、パッキン部2をピストン1の円柱部1aから離脱する作業を完了する。その後、新たなパッキン部に交換する、或いは、取り出したパッキン部2を清掃するなどのメンテナンス作業を引き続き行うことができる。
【0060】
このように、本発明では、パッキン部の離脱作業において、ピストン1の円柱部1aをピストン軸部1bから離脱する必要は無く、さらに当該離脱後に当該円柱部1aをピストン軸部1bに装着する必要もないため、パッキン部の取り外しを伴うメンテナンス作業を迅速かつ簡便に行うことができる。また、本発明では、ピストン1の円柱部1aをピストン軸部1bから着脱する際に、円柱部およびピストン軸部の結合部のネジの締緩作業に使用していたスパナなどの工具を使用する必要がないため、ネジを当該工具で強固に締緩する必要がなくなり、パッキン部の取り外しを伴うメンテナンス作業の省力化を実現することができる。さらに、メンテナンス作業の時間も短縮することができるため、作業効率の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のパッキン取り外し治具およびパッキン取り外し方法は、ホモゲナイザーにおいて、送液を行うピストンに装着したパッキン部を当該ピストンから取り外す際に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
X パッキン取り外し治具
1 ピストン
2 パッキン部
2a 端部
10 パッキン部当接治具
11a 当接部
20 押圧治具
21a 押圧部
30 固定治具
32 係合端部
40 ガイド治具
40a ガイド溝
D1 一の方向
D2 他の方向
P1 パッキン部当接治具設置工程
P2 押圧治具設置工程
P3 ガイド治具設置工程
P4 押圧工程
P5 ガイド治具除去工程
P6 押圧治具除去工程
P7 固定治具架設工程
P8 パッキン部離脱工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10