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  • 特許-ロータリ圧縮機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ロータリ圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/356 20060101AFI20240816BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20240816BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F04C18/356 L
F04C18/356 H
F04C29/00 C
F04C29/12 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021515410
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 JP2019017646
(87)【国際公開番号】W WO2020217385
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆史
(72)【発明者】
【氏名】木全 央幸
(72)【発明者】
【氏名】堀田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 創
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】米倉 秀明
【審判官】柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-150949(JP,A)
【文献】実開昭59-039794(JP,U)
【文献】実開昭61-009584(JP,U)
【文献】特開平08-270580(JP,A)
【文献】特開2003-120529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/356
F04C 29/00
F04C 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びる回転軸と、
該回転軸を軸線回りに回転可能に支持する軸受と、
前記回転軸を回転させるモータと、
前記回転軸の回転によって冷媒を圧縮するロータリ圧縮部と、
前記回転軸、前記軸受、前記モータ、及び前記ロータリ圧縮部を収容するハウジングと、
前記ロータリ圧縮部の圧縮室に冷媒を導入可能な吸入管と、
を備え、
前記ロータリ圧縮部は、
前記圧縮室を形成し上下方向に並んで配置される複数のシリンダと、
前記複数のシリンダ同士の間に配置されたセパレータプレートと、
を有し、
前記吸入管は、
前記シリンダの上方、又は下方に配置されて前記ハウジングを前記回転軸の径方向に貫通して延びる主管と、
前記主管に接続されて前記回転軸の軸線方向に延びて、前記複数のシリンダにおける前記圧縮室の前記径方向外側で、前記複数のシリンダの間にわたって配置され、各々の前記圧縮室に連通している接続管と、
を有し、
前記主管の内径及び前記接続管の内径は、前記シリンダの厚みよりも大きく、
前記複数のシリンダの各々には、前記径方向に延びるとともに各々の前記圧縮室と前記接続管とを連通する吸入流路が、上面視で前記主管が挿通される前記ハウジングの開口部と対向した位置に設けられ、
前記接続管には、前記吸入流路のそれぞれに対向するように連通する貫通孔が設けられ、
前記貫通孔は、前記吸入流路のそれぞれの軸線上に配置され、
前記吸入流路は前記シリンダの外周面に開口することで前記シリンダには開口穴が設けられ、
前記開口穴には封止栓が設けられているロータリ圧縮機。
【請求項2】
前記主管の内径と前記接続管の内径とは同径であり、前記主管の内径及び前記接続管の内径は前記吸入流路の内径よりも大きい請求項に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】
前記主管は、前記シリンダの上方に配置され、
前記シリンダのうち上側の上シリンダに設けられる前記吸入流路の内径は、下側の下シリンダに設けられる前記吸入流路の内径以下である請求項1又は2に記載のロータリ圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリ圧縮機として、例えば特許文献1に示されるような、ハウジングと、ハウジング内で鉛直方向に延びるとともに電動モータによって回転する回転軸と、回転軸に支持されたシリンダを有するロータリ圧縮部と、回転軸に回転可能に支持され、シリンダの上下に固定される上部軸受、及び下部軸受と、を備えたものが知られている。シリンダには、ロータリ圧縮部の圧縮室に冷媒を導入可能な吸入管が接続されている。そして特許文献1には、シリンダを上下に2段に配置したツインロータリ圧縮機も開示されている。各々のシリンダには少なくとも1本ずつアキュムレータから別々に延びる吸入管が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-227957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のツインロータリ圧縮機では、振動を低減させるためにはシリンダ同士の間に介在されたセパレータプレートの厚みを薄くすることが好ましい。セパレータプレートを厚くすると二つのシリンダが離れてしまい、ピストンロータの偏心運動による振動の影響が大きくなるためである。しかしながら、セパレータプレートの厚みを薄くすると、2本の吸入管のハウジングとの接続部における吸入管同士の間の加工が難しくなる。そこで加工を容易化するため吸入管同士の間を広げるためには、セパレータプレートを厚くするか、吸入管を細くする必要がある。しかしながら、セパレータプレートを厚くすると上述のように振動が増大し、吸入管を細くすると圧損が増大して圧縮効率が低下してしまう。したがって、吸入管を1本にまとめることによって、吸入管同士の間の加工を無くすことが考えられる。
しかしながら特許文献1のシングルシリンダ構造に適用されているように、1本の吸入管をシリンダの内周面の内側に接続する構成をツインシリンダにそのまま適用し、ツインシリンダを貫通するように1本の吸入管を接続して冷媒を吸入させた場合には、ツインシリンダのうちの一方のシリンダの吸入室と他方のシリンダの圧縮室とが直接繋がってしまうことから、圧縮効率が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、複数のシリンダを有するロータリ圧縮機において、圧縮効率を低下させることなく、振動を低減できるロータリ圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決して係る目的を達成するために、以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係るロータリ圧縮機は、軸線に沿って延びる回転軸と、該回転軸を軸線回りに回転可能に支持する軸受と、前記回転軸を回転させるモータと、前記回転軸の回転によって冷媒を圧縮するロータリ圧縮部と、前記回転軸、前記軸受、前記モータ、及び前記ロータリ圧縮部を収容するハウジングと、前記ロータリ圧縮部の圧縮室に冷媒を導入可能な吸入管と、を備え、前記ロータリ圧縮部は、前記圧縮室を形成し上下方向に並んで配置される複数のシリンダと、前記複数のシリンダ同士の間に配置されたセパレータプレートと、を有し、前記吸入管は、前記シリンダの上方、又は下方に配置されて前記ハウジングを前記回転軸の径方向に貫通して延びる主管と、前記主管に接続されて前記回転軸の軸線方向に延びて、前記複数のシリンダにおける前記圧縮室の前記径方向外側で、前記複数のシリンダの間にわたって配置され、各々の前記圧縮室に連通している接続管と、を有し、前記主管の内径及び前記接続管の内径は、前記シリンダの厚みよりも大きく、前記複数のシリンダの各々には、前記径方向に延びるとともに各々の前記圧縮室と前記接続管とを連通する吸入流路が、上面視で前記主管が挿通される前記ハウジングの開口部と対向した位置に設けられ、前記接続管には、前記吸入流路のそれぞれに対向するように連通する貫通孔が設けられ、前記貫通孔は、前記吸入流路のそれぞれの軸線上に配置され、前記吸入流路は前記シリンダの外周面に開口することで前記シリンダには開口穴が設けられ、前記開口穴には封止栓が設けられている
【0007】
上記態様に係るロータリ圧縮機によれば、複数のシリンダのそれぞれに対して上方、又は下方に吸入管の主管を配置し、軸線方向に延びる接続管を介して複数のシリンダの圧縮室の各々に冷媒を吸入させることができる。これにより複数のシリンダの圧縮室の各々が繋がって圧縮効率が低下してしまうことなく、1本の吸入管によって各々の圧縮室に冷媒を吸入できる。吸入管を1本のみにできれば、セパレータプレートの厚みを薄くしても吸入管をハウジングへ接続する部分の加工が容易である。
また上記態様に係るロータリ圧縮機によれば、複数のシリンダの上方、又は下方に吸入管の主管を配置することで主管の内径がシリンダの厚みに制限されることがなく、主管の内径を大きくすることが可能となる。また接続管について内径を大きくすることが可能となる。よってより多くの冷媒を圧縮することができ、圧縮効率を向上させることができる。
さらに、吸入管内径にシリンダの厚みよりも大きい吸入管を採用することで、多くの冷媒を圧縮室に供給することができ、圧縮効率を向上させることができる。
また、吸入管より軸線方向に延びる接続管を通じて径方向に延びる各吸入流路を介して各圧縮室に供給することができる。よって1つの吸入管から複数のシリンダの圧縮室に効率よく分流させることができ、圧縮効率を向上させることができる。
また、シリンダの外周面から径方向内側に圧縮室に向かって加工具を挿入していくことで、各シリンダに対して横孔を加工して吸入流路を形成することができる。吸入流路としての横孔の加工後には開口穴が封止栓によって封止された状態となるので、吸入流路を容易に加工しつつ、接続管を流通する冷媒が開口穴よりシリンダの外へ流出してしまうことを回避できる。
【0014】
(2)上記(1)に記載のロータリ圧縮機において、前記主管の内径と前記接続管の内径とは同径であり、前記主管の内径及び前記接続管の内径は前記吸入流路の内径よりも大きくともよい。
【0015】
このような構成によれば、複数のシリンダの吸入流路内に供給される冷媒の流路をなす主管と接続管のそれぞれの内径を、シリンダの吸入流路の内径よりも大きくできるので、多くの冷媒を各圧縮室に供給することができ、圧縮効率を向上させることができる。
【0016】
(3)上記(1)又は(2)に記載のロータリ圧縮機において、前記主管は、前記シリンダの上方に配置され、前記シリンダのうち上側の上シリンダに設けられる前記吸入流路の内径は、下側の下シリンダに設けられる前記吸入流路の内径以下であってもよい。
【0017】
このような構成によれば、吸入管内を流通する冷媒のうち上側のシリンダの圧縮室に大量の冷媒が供給されることがないので、下側のシリンダの圧縮室まで十分に冷媒を供給することができ、冷媒の供給量が不足することを抑えることができ、圧縮効率の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の各態様に係る、ロータリ圧縮機によれば、複数のシリンダを有するロータリ圧縮機において、圧縮効率を低下させることなく、セパレータプレート厚みを薄くすることで振動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本発明の第一実施形態によるロータリ圧縮機の構成を示した縦断面図である。
図2図2図1に示すロータリ圧縮機のロータリ圧縮部周りの要部構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態によるロータリ圧縮機について、図面に基づいて説明する。かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態によるロータリ圧縮機(以下、単に圧縮機1という)は、例えば空気調和機や冷凍装置などに用いられる縦型の密閉型ロータリ圧縮機である。
【0022】
圧縮機1は、ハウジング2と、回転軸3と、上部軸受4A及び下部軸受4Bと、電動モータ5と、ロータリ圧縮部6及びスクロール圧縮部10と、吸入管7と、を備えている。回転軸3は、軸線(後述する回転軸線O)に沿って延びている。上部軸受4A及び下部軸受4Bは、回転軸3を回転軸線O回りに回転可能に支持する。電動モータ5は、回転軸3を回転させる。ロータリ圧縮部6は、回転軸3の回転によって冷媒を圧縮する。吸入管7は、ロータリ圧縮部6の圧縮室63A、63Bに冷媒を導入可能としている。
本実施形態の圧縮機1は、ロータリ圧縮部6の上方にスクロール圧縮部10をさらに備える二段圧縮機であるが、スクロール圧縮部10は必ずしも設けられなくともよい。
【0023】
ここで、ハウジング2の中心軸と回転軸3とは、鉛直方向(上下方向)に延在する共通軸上に配置され、この共通軸を以下、回転軸線Oという。回転軸3は、延在方向が上下方向となるように配置され、ハウジング2内において回転軸線O回りに回転可能に収容されている。
【0024】
ハウジング2は、密閉型で上下方向に延在し、回転軸3、軸受4A、4B、電動モータ5、及びロータリ圧縮部6を収容する。ハウジング2は、円筒状をなす本体部21と、本体部21の上下の開口を閉塞する上部蓋部22及び下部蓋部23と、を有する。ハウジング2は、側壁下部におけるシリンダ60(60A,60B)の上方に開口部24が形成されている。この開口部24には、吸入管7が管軸方向を水平方向に向けて挿通された状態で固定されている。
【0025】
ハウジング2の底部には、油が溜められることで、油溜まりが形成されている。油の初期封入時における油溜まりの液面は、ロータリ圧縮部6の上方に位置している。これにより、ロータリ圧縮部6は、油溜まりの中で駆動される。
【0026】
上部蓋部22には、周壁部を厚さ方向に貫通してハウジング2内に連通する吐出管13が設けられている。吐出管13は圧縮された冷媒をハウジング2の外部へ吐出する。
【0027】
電動モータ5は、ハウジング2内の上下方向の中央部に収容されている。電動モータ5は、ロータ51と、ステータ52と、を有する。ロータ51は、回転軸3の外周面に固定され、ロータリ圧縮部6の上方に配置されている。ステータ52は、ロータ51の外周面を囲むように配置され、ハウジング2の本体部21の内面21aに固定されている。
電動モータ5には、端子9を介して不図示の電源が接続されている。電動モータ5は、この電源からの電力によって回転軸3を回転させる。
【0028】
上部軸受4Aと下部軸受4Bは、上下からロータリ圧縮部6を挟むように配置されている。上部軸受4Aと下部軸受4Bは、それぞれ例えば金属材料から形成され、ロータリ圧縮部6を構成するシリンダ60に例えばボルト締結により固定されている。
また上部軸受4Aは、ハウジング2に固定されている。回転軸3は、上部軸受4Aと下部軸受4Bによって回転軸線O回りに回転自在にハウジング2に支持されている。
【0029】
ロータリ圧縮部6は、図2に示すように、電動モータ5の下方でハウジング2内の底部に配置され、冷媒を圧縮する。ロータリ圧縮部6は、複数(本実施形態では2つ)のディスク状のシリンダ60(60A、60B)と、偏心軸部61と、ピストンロータ62と、を有している。
【0030】
2つのシリンダ60A、60Bは、それぞれハウジング2内において回転軸線O方向に沿って上下に配列されている。ここで、上側に位置するシリンダを上シリンダ60Aといい、下側に位置するシリンダを下シリンダ60Bという。
各シリンダ60A、60Bの内部には、それぞれ圧縮室63A、63Bが形成されている。圧縮室63A、63Bは、ピストンロータ62を収容している。
また、各シリンダ60A、60Bによって上下に挟まれるようにして、シリンダ60A、60B同士の間にセパレータプレート69が配置されている。セパレータプレート69は圧縮室63A、63B同士を仕切っている。
【0031】
上シリンダ60A及び下シリンダ60Bには、それぞれ上面視で開口部24に対向した位置において、各シリンダ60A、60B内の圧縮室63A、63Bまで吸入管7を介して連通する吸入孔64、65(吸入流路)が形成されている。吸入孔64、65はシリンダ60A、60Bの外周面に開口することで、シリンダ60A、60Bには開口穴60xが形成されている。
【0032】
偏心軸部61は、回転軸3の下端部に設けられ、ピストンロータ62の内側において回転軸3の中心軸から直交する方向にオフセットした状態で設けられている。ピストンロータ62は、シリンダ60の内径よりも小さい外径の円筒状をなしてシリンダ60の内側に配置され、偏心軸部61が挿入されて偏心軸部61に固定されている。ピストンロータ62は、回転軸3の回転に伴って回転軸線Oに対して偏心して回転する。
【0033】
吸入孔64、65は、冷媒を各シリンダ60A、60Bの内部に流入可能とするための孔である。
なお、ロータリ圧縮部6には、図示しない吐出孔が設けられている。この吐出孔を通じて、ハウジング2の中間圧とされた内部空間、即ちシリンダ60A、60Bの上方の空間にロータリ圧縮部6で圧縮された冷媒が吐出される。
【0034】
吸入管7は、上シリンダ60Aの上方に配置され、回転軸3の径方向に延びてハウジング2を貫通する主管70と、主管70におけるハウジング2内の内端70aから下方に延びる接続管71と、を有している。接続管71の上端71aは主管70の内端70aに接続されている。接続管71は、各圧縮室63A、63Bの径方向外側で回転軸線Oと平行となるように上シリンダ60Aと下シリンダ60Bとの間にわたって配置されている。
主管70の内端70aは、上部軸受4Aの径方向外側の端部に差し込まれている。接続管71は、主管70の内端70aから上部軸受4Aの内部を貫通して下方に延びている。
【0035】
接続管71には、吸入孔64、65のそれぞれに連通するように径方向に貫通する貫通孔71bが設けられている。貫通孔71bは、吸入孔64、65のそれぞれの軸線上に配置されている。吸入孔64、65の径方向外側の端部の開口穴60xには、吸入孔64、65を封止する封止栓72が嵌め込まれている。封止栓72は例えば金属のネジ等である。これにより、圧縮室63A、63Bと接続管71とは、吸入孔64、65及び貫通孔71bを介して連通している。
【0036】
主管70の内径d1は、各シリンダ60A、60Bの厚みt1、t2よりも大きく設定されている。また、主管70の内径d1と接続管71の内径d2とは、同径であり、内径d1及び内径d2は、それぞれ吸入孔64、65の内径d3、d4よりも大きい。
さらに、上シリンダ60Aに設けられる上吸入孔64の内径d3は、下シリンダ60Bに設けられる下吸入孔65の内径d4以下に設定されていてもよい。
【0037】
上記構成の圧縮機1においては、冷媒が吸入管7の主管70から接続管71及び各シリンダ60A、60Bの吸入孔64、65を介して、シリンダ60の内部空間である圧縮室63A、63Bに供給される。
そして、ピストンロータ62の偏心運動により、圧縮室63A、63Bの容積が徐々に減少して冷媒が圧縮される。各シリンダ60A、60Bの所定の位置には、冷媒を吐出する吐出穴(図示省略)が形成されており、この吐出穴にはリード弁(図示省略)が備えられている。これにより、圧縮された冷媒の圧力が高まると、リード弁を押し開き、冷媒をシリンダ60A、60Bの外部に吐出する。吐出された冷媒は、スクロール圧縮部10でさらに圧縮された後にハウジング2の上部に設けられた吐出管13から外部の図示しない配管に吐出されるようになっている。
【0038】
次に、上述したロータリ圧縮機の作用効果について説明する。
本実施形態による圧縮機1では、図1及び図2に示すように、シリンダ60A、60Bのそれぞれに対して、上方に主管70を配置し、接続管71及び吸入孔64、65を介して連通させて接続することができる。即ち1本の吸入管7を用いて、二つのシリンダ60A、60Bの圧縮室の各々に冷媒を吸入させることができる。
【0039】
接続管71は圧縮室63A、63Bの径方向外側に配置されているため、圧縮室63A、63Bの各々が接続管71によって直接繋がってしまうことがない。このため圧縮効率が低下してしまうことなく、1本の吸入管7によって各々の圧縮室63A、63Bに冷媒を吸入できる。
【0040】
ここで仮に吸入管7を各々のシリンダ60A、60Bに1本ずつ設ける場合には、吸入管7がハウジング2を貫通する位置で、吸入管7をハウジング2へ接続する際の加工が難しくなる。即ち2本の吸入管7同士の間での加工作業が難しくなる。この結果、セパレータプレート69の厚みを増し、2本の吸入管7を上下方向に離れた位置に配置し、吸入管7同士の距離を離す必要がある。若しくは2本の吸入管7同士の間隔をあけるため、各吸入管7を細くする必要がある。
しかし本実施形態では、吸入管7を1本のみにできるため、セパレータプレート69の厚みを薄くすることが可能である。この結果、2つのシリンダ60A、60B同士の距離を近づけることが可能となり、ピストンロータ62の偏心運動による振動を低減可能である。
【0041】
また上記態様に係る圧縮機1によれば、複数のシリンダ60A、60Bの上方に吸入管7の主管70を配置することで、主管70の内径d1がシリンダ60A、60Bやセパレータプレート69の厚みに制限されることがない。同様に接続管71の内径d2もシリンダ60A、60Bやセパレータプレート69の厚みに制限されることがない。この結果、主管70、及び接続管71の内径d1、d2を大きくすることが可能となる。そして本実施形態では、吸入管7の主管70の内径d1と接続管71の内径d2とは同径で設けられ、それぞれ吸入孔64、65の内径よりも大きく設定されている。この結果、より多くの冷媒を圧縮することができ、圧縮効率を向上させることができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、接続管71に連通する吸入孔64、65をシリンダ60A、60Bに設けることで1つの吸入管7から一対のシリンダ60A,60Bの圧縮室63A、63Bに効率よく冷媒を分流させることができ、圧縮効率を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、シリンダ60A、60Bの外周面に径方向外側からドリル等の加工具を挿入していくことで、各シリンダ60A、60Bに対して横孔を加工して吸入孔64,65を形成することができる。また横孔の加工後には開口穴60xが封止栓72によって封止された状態となるので、主管70から供給されて接続管71を流通する冷媒が圧縮室63A、63Bに向かわずにシリンダ60A、60Bより流出してしまうことを回避できる。
【0044】
また、上シリンダ60Aに設けられる上吸入孔64の内径d3が下シリンダ60Bに設けられる下吸入孔65の内径d4以下であれば、吸入管7内を流通する冷媒のうち、上シリンダ60Aの圧縮室63Aに多くの冷媒が供給されてしまうことがない。このため下シリンダ60Bの圧縮室63Bへも十分に冷媒を供給することができ、下シリンダ60Bへの冷媒の供給量が不足することを抑えることができ、圧縮効率の低下を回避できる。
【0045】
以上、本発明によるロータリ圧縮機の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0046】
例えば、本実施形態では、2つのシリンダ60A、60Bを有するツインロータリタイプの圧縮機1を対象としているが、圧縮機1は、ツインロータリタイプに限定されることはなく、さらに多くのシリンダを有してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、吸入管7の主管70がシリンダ60A、60Bの上方に配置されて回転軸3の径方向に延びて圧縮室63A、63Bに連通する構成としているが、主管70がシリンダ60A、60Bの下方に配置されていてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、主管70の内径d1、接続管71の内径d2、各シリンダ60A、60Bの吸入孔64、65の内径d3、d4、各シリンダ60A、60Bの厚みt1、t2を各部に対して設定しているが、これに限定されることはない。
すなわち、主管70の内径d1がシリンダ60A、60Bの厚みよりも大きいことに限定されない。また、主管70の内径d1と接続管71の内径d2とが同径で設けられ、内径d1、d2が吸入孔64、65の内径よりも大きいことに限定されない。また上シリンダ60Aに設けられる吸入孔64の内径d3が、下シリンダ60Bに設けられる吸入孔65の内径d4以下であることに限定されることはない。
【0049】
また、本実施形態では、吸入孔64、65を設け、吸入孔64、65の開口穴60xに封止栓72が設けられた構成としているが、開口穴60xや封止栓72を設けず、接続管71と圧縮室63A、63Bとを接続するような冷媒流路をシリンダ60A、60Bに形成してもよい。
【0050】
さらに、ハウジング2、回転軸3、上部軸受4A、下部軸受4B、電動モータ5、ロータリ圧縮部6(シリンダ60、偏心軸部61、ピストンロータ62)、スクロール圧縮部10、及び吸入管7の形状、大きさ等の構成は、適宜な構成に設定することが可能である。
【0051】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の複数のシリンダを有するロータリ圧縮機によれば、圧縮効率を低下させることなく、振動を低減できる。
【符号の説明】
【0053】
1 圧縮機(ロータリ圧縮機)
2 ハウジング
3 回転軸
4A 上部軸受
4B 下部軸受
5 電動モータ
6 ロータリ圧縮部(圧縮部)
7 吸入管
9 端子
10 スクロール圧縮部
21 本体部
60 シリンダ
60x 開口穴
60A 上シリンダ
60B 下シリンダ
61 偏心軸部
62 ピストンロータ
63A、63B 圧縮室
64、65 吸入孔
69 セパレータプレート
70 主管
71 接続管
71a 上端
71b 貫通孔
72 封止栓
O 回転軸線(軸線)
図1
図2