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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ボロン酸ポリマーおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 30/06 20060101AFI20240816BHJP
   A61K 31/785 20060101ALI20240816BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240816BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240816BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240816BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240816BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20240816BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240816BHJP
   A61P 5/50 20060101ALI20240816BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240816BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240816BHJP
   C08F 8/42 20060101ALI20240816BHJP
   C08F 220/54 20060101ALI20240816BHJP
   C08F 226/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C08F30/06
A61K31/785
A61P1/16
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/08
A61P3/10
A61P5/50
A61P9/12
A61P15/00
C08F8/42
C08F220/54
C08F226/00
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2021516652
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019052110
(87)【国際公開番号】W WO2020061430
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】62/734,054
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521115292
【氏名又は名称】グライセンド, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフィアック, トーマス ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】ニムガオンカー, アシシュ
(72)【発明者】
【氏名】ポロモスカニク, スティーブン シー.
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-304971(JP,A)
【文献】特開平05-310844(JP,A)
【文献】特開平11-322761(JP,A)
【文献】国際公開第2009/066746(WO,A1)
【文献】特開2016-209372(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0134062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)~(III)のいずれか1つの繰り返し単位またはその薬学的塩を含むカチオン性ポリマーであって、
【化27】

(式中、
、R、RおよびRは、独立して、水素または置換もしくは非置換アルキルであり;
は、直接結合または-L-A-L-A-であり;
は、各出現において、直接結合または-L-A-L-A-であり;
は、-NR-、-NC(O)-または-C(O)N-であり;
は、各出現において、直接結合、-NR-、-O-または-S-であり;
は、-C(O)-または直接結合であり
およびAは、各出現において、独立して、直接結合、または置換もしくは非置換~Cアルキレンであり;
は、各出現において、水素または置換もしくは非置換アルキルであり;
Zは、各出現において、
【化28】

【化29】

であり;
nは1から100,000の整数であり
mはから4の整数である);
ただし、前記ポリマーが
【化31】

(式中、n’は1から100,000の整数である)である場合、100,000gmol-1を超える分子量を有さない、カチオン性ポリマー。
【請求項2】
前記-B(OH) 基が、Y またはY に対してフェニル環の3または4位にある、請求項1に記載のカチオン性ポリマー。
【請求項3】
式(I)の繰り返し単位を含む、請求項1または2に記載のカチオン性ポリマー。
【請求項4】
式(I)の前記繰り返し単位が、
【化32】

およびその薬学的塩(式中、R 、R 、R およびnは、請求項1において定義される通りである)からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のカチオン性ポリマー。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載のカチオン性ポリマーであって、R、RおよびRがそれぞれ水素であカチオン性ポリマー。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載のカチオン性ポリマーであって、RおよびRがそれぞれ水素でありがメチルであるカチオン性ポリマー。
【請求項7】
式(II)の繰り返し単位を含む、請求項1または2に記載のカチオン性ポリマー。
【請求項8】
が直接結合であり;
Zが
【化34】

である、請求項に記載のカチオン性ポリマー。
【請求項9】
式(III)の繰り返し単位を含む、請求項1または2に記載のカチオン性ポリマー。
【請求項10】
が直接結合であり;
Zが
【化35】

である、請求項に記載のカチオン性ポリマー。
【請求項11】
【化37】

ならびにその薬学的塩(式中、は、1から100,000の整数を表す)からなる群から選択される少なくとも1つの繰り返し単位を含むカチオン性ポリマー。
【請求項12】
【化39】

【化40】
およびその薬学的塩(式中、nは、1から100,000の整数を表す)からなる群から選択される繰り返し単位をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のカチオン性ポリマー。
【請求項13】
【化43】

およびその薬学的に許容される塩(式中、nおよびn’は、それぞれ独立して、1から100,000の整数である)からなる群から選択される構造を含むカチオン性ポリマーであって、ただし、前記ポリマーが
【化46】

である場合、前記ポリマーは100,000を超える分子量を有さない、カチオン性ポリマー。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のカチオン性ポリマーおよび薬学的に許容される添加剤を含む、医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物が、液剤、錠剤、カプレット剤およびカプセル剤からなる群から選択される投薬形態で提供される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬組成物が、腸溶性コーティング錠剤、カプレット剤およびカプセル剤からなる群から選択される投薬形態で提供される、請求項14または15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記腸溶性コーティング錠剤、カプレット剤またはカプセル剤が、十二指腸への標的送達のためのものである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
追加の治療剤をさらに含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
被験体における代謝障害を処置するための、請求項1から13のいずれか一項に記載のカチオン性ポリマーを含む組成物または請求項14から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
別の治療剤と組み合わせて前記被験体に投与されることを特徴とする、請求項19に記載の組成物もしくは医薬組成物。
【請求項21】
代謝障害の処置のための医薬の製造における、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物または請求項14から18のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項22】
前記代謝障害が、グルコース不耐症、1型真性糖尿病(T1DM)、2型真性糖尿病(T2DM)、前糖尿病、高脂血症、肥満、体重過多、脂質異常症、高血圧症、高血糖症、耐糖能障害、インスリン抵抗性、代謝症候群、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)および多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)からなる群から選択される、請求項19もしくは20に記載の組成物もしくは医薬組成物または請求項21に記載の使用。
【請求項23】
2型真性糖尿病を処置するための、請求項1から13のいずれか一項に記載のカチオン性ポリマーを含む組成物または請求項14から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
2型真性糖尿病の処置のための医薬の製造における、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物または請求項14から18のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項25】
肥満を処置するための、請求項1から13のいずれか一項に記載のカチオン性ポリマーを含む組成物または請求項14から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
肥満の処置のための医薬の製造における、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物または請求項14から18のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項27】
被験体における胃腸障害を処置するための、請求項1から13のいずれか一項に記載のカチオン性ポリマーを含む組成物または請求項14から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
胃腸障害の処置のための医薬の製造における、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物または請求項14から18のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項29】
前記胃腸障害が、セリアック疾患、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、結腸炎、クロストリジウム・ディフィシル(clostridium difficile)、内毒素血症、下痢および便秘からなる群から選択される、請求項27に記載の組成物もしくは医薬組成物または請求項28に記載の使用。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
米国成人人口の約11.3%が2型真性糖尿病(T2DM)を患い、米国成人の35%が前糖尿病症状を有する。糖尿病に起因する米国の医療費は年間2,000億ドルに迫りつつある。T2DMの発生率は肥満の流行と並行して増加し続けており、T2DMのための現在の処置の大部分は、経口および静脈内医薬のレジメンからなり、このレジメンは、その医薬の全身性吸収に伴い副作用が生じることが一つの理由で、多くの被験体にとって最適まで及ばない可能性がある。消化管から十二指腸をバイパスまたは除去するための肥満外科手術はT2DMを改善することが示されている。糖尿病外科サミットでは、一部の肥満患者(グレードIIIの肥満)におけるT2DMを処置するために肥満外科手術を推奨しており、その肥満外科手術を他の患者の処置のために検討すべきであるとしている(例えば、Koliaki, C. et al., BMC Endocr Disord. (2017) 17:50 DOI 10.1186/s12902-017-0202-6を参照のこと)。
【0002】
第一選択薬からインスリンならびに外科手術および他の高侵襲性処置までの典型的な糖尿病患者のパスの分析から、効果のない処置および臨床イナーシャに限らず、著しいギャップが明らかになっている。外科手術および薬理学的解決策も広く採用されることはなかった。専門臨床医がケアパスに加わったことが、これらの失敗の一因になっている。したがって、プライマリケア医の管理下での有効な処置が、専門医、例えば内分泌専門医、消化器専門医、または外科医を必要とするものよりも対象母集団のはるかに大きなセグメントに到達する可能性が高く、したがって、より大きな影響を与えるであろう。
【0003】
米国特許出願公開第2006/0134062号では、ある特定のアリールボロン酸部分が加水分解に不安定なリンカーを介してポリマー骨格に結合しているポリマー、およびリパーゼ阻害剤としてのそのようなポリマーの使用が開示されている。この場合、ポリマーコンジュゲートが低分子リパーゼ阻害剤を送達するために、ポリマー骨格はリパーゼ阻害に関しては重要ではないことが記載されている。T2DMは検討されていない。
【0004】
米国特許第7,943,713号では、ある特定のポリアミンボロン酸誘導体、ならびに紙の湿紙強度および湿潤強度を増加させるためのその使用が開示されている。好ましいポリマーは、ポリマー骨格の炭素原子に直接結合しているか、またはポリマー骨格の炭素原子にアミド結合を介して結合しているアリールボロン酸部分によって特徴付けられる。薬理学的使用は検討されていない。
【0005】
国際公開第2017/024237号では、ある特定のカチオン性ポリマー、および粘液を複合体化して十二指腸に閉塞性バリアを形成するためのポリマーの使用が開示されている。
Seno, M. et. al, Materials Science and Engineering C, 62 (2016) 474-479では、フェニルボロン酸修飾ポリ(アリルアミン塩酸塩)およびポリ(pol)(ビニルアルコール)から構成されるある特定のpHおよび糖感受性多層フィルムが開示されている。Sato, K. et al, Langmuir, 2014, 30, 9247-9250でも、フェニルボロン酸修飾ポリ(アリルアミン塩酸塩)およびポリ(ビニルアルコール)から構成される多層フィルムが開示されている。
したがって、T2MDおよび関連する代謝障害を呈する被験体を処置するための新規の医薬および非侵襲的方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2006/0134062号明細書
【文献】米国特許第7,943,713号明細書
【文献】国際公開第2017/024237号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Koliaki, C. et al., BMC Endocr Disord. (2017) 17:50 DOI 10.1186/s12902-017-0202-6
【文献】Seno, M. et. al, Materials Science and Engineering C, 62 (2016) 474-479
【文献】Sato, K. et al, Langmuir, 2014, 30, 9247-9250
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
本発明は、被験体の胃腸(GI)管の腸管内層と内腔内容物との間に物理的バリアを形成するためのポリマー組成物を提供する。本発明のポリマーはムチン相互作用剤であり、GI管内の常在ムチンとの相互作用によって物理的バリアを系中で形成する。
【0009】
本発明者らは、ペンダントボロン酸部分をある特定のカチオン性ポリマーに組み込むと、ポリマーのムチン複合体化活性が劇的に改善されることを発見した。対照的に、ペンダントボロン酸部分を添加しても、中性またはアニオン性ポリマーのムチン複合体化活性は顕著に変化しなかった。
【0010】
実施例で示すように、本明細書において記載するポリマーは、相当するカチオン性ポリマーと比較して、ムチンおよび粘液複合体化活性が改善されており、十二指腸のpHにおいてムチンおよび粘液を効果的に濃縮することができる。ポリマーは、十二指腸のpHにおいて粘液と強固に結合し、粘液に結合すると、高濃度の塩(例えば、1M NaCl)または酸性条件(例えば、0.02M HCl)による除去に耐性を示す。得られたポリマー-粘液複合体は、遊離粘液と比較して劇的に異なる特性を有する。例えば、本明細書において示すように、ポリマーは、粘液中の小粒子の拡散係数を約2桁(約1/100に)減少させる。糖尿病のラットモデルに投与された場合、ポリマーは、経口グルコース耐性試験において血中グルコースレベルを効果的に減少させ、血中グルコースレベルにおいて用量応答性の改善を示した。これらの結果は、消化管から十二指腸をバイパスまたは除去するための「代謝外科手術」が行われた患者において観察される、グルコースホメオスタシスの改善およびインスリン抵抗性の低下を再現しているが、外科手術または侵襲性内視鏡的手順とは異なり、本発明のポリマーは非侵襲的様式で容易に投与される。任意の特定の理論または機序に拘束されることを望むものではないが、これらのデータは、ポリマーを経口で投与した場合に、十二指腸において粘液を複合体化して、閉塞性非吸収性内腔バリアを形成することが可能であることを実証する。十二指腸の閉塞性バリアの形成は、外科的または内視鏡的手順によって十二指腸をバイパス、除去、または切除することと機能的に類似しているかまたは同等であり、グルコースホメオスタシスの改善をもたらす(例えば、Koliaki, C. et al., BMC Endocr Disord. (2017) 17:50 DOI 10.1186/s12902-017-0202-6を参照のこと)。
【0011】
本開示は、アミンまたはアミドまたはカルバメートまたはチオカルバメート結合官能基を介してポリマー骨格に直接的または間接的に結合されたペンダントボロン酸基を含有するカチオン性ポリマー、および代謝疾患を処置する方法であって、治療有効量のそのようなポリマーを、それを必要とする被験体に投与することを含む方法に関する。
【0012】
本発明の別の態様は、本発明のポリマーを担体または希釈剤と一緒に含む医薬組成物である。医薬組成物は、例えば本明細書において記載する障害の処置における治療法のために使用してもよい。同様に、本発明は、本明細書において開示するポリマーの医薬としての使用、および本明細書において記載する障害を処置するための医薬の製造における本明細書において開示するポリマーの使用を提供する。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
式(I)~(III)のいずれか1つの繰り返し単位の繰り返し単位を含むポリマーであって、
【化27】

(式中、
、R、RおよびRは、独立して、水素または置換もしくは非置換アルキルであり;
は、各出現において、独立して、直接結合または-L-A-L-A-であり;
は、各出現において、-NR-、-NC(O)-または-C(O)N-であり;
は、各出現において、存在しない、-NR-、-O-または-S-であり;
は、各出現において、独立して、直接結合または-L-A-L-A-であり;
は、各出現において、-C(O)-である、または存在しない;
は、各出現において、存在しない、-NR-、-O-または-S-であり;
およびAは、各出現において、独立して、存在しない、または必要に応じて置換されたC~Cアルキレンであり;
は、各出現において、独立して、水素または置換もしくは非置換アルキルであり;
Zは、各出現において、
【化28】

【化29】

であり、好ましくは、-B(OH)は環の3または4位にあり;
nは1から100,000の整数であり、
mは0から4の整数である);ただし、前記ポリマーは
【化30】

ではなく、そして前記ポリマーが
【化31】

である場合、前記ポリマーは100,000を超える分子量を有さない、ポリマー。
(項目2)
式(I)の繰り返し単位を含む、項目1に記載のポリマー。
(項目3)
式(I)の前記繰り返し単位が、
【化32】

【化33】

からなる群から選択され、好ましくは、-B(OH)が環の3または4位にある、項目2に記載のポリマー。
(項目4)
項目3に記載の式(Ia)から(If)の繰り返し単位を含むポリマーであって、
、RおよびRが水素であり;
およびAが、独立して、存在しない、または必要に応じて置換されたC~Cアルキレンである、ポリマー。
(項目5)
項目3に記載の式(Ia)から(If)の繰り返し単位を含むポリマーであって、
およびRが水素であり;
がメチルであり;
およびAが、独立して、存在しない、または必要に応じて置換されたC~Cアルキレンである、ポリマー。
(項目6)
式(II)の繰り返し単位を含む、項目1に記載のポリマー。
(項目7)
式(II)の前記繰り返し単位において、
が直接結合であり;
Zが
【化34】

であり、好ましくは、-B(OH)が環の3または4位にある、項目6に記載のポリマー。
(項目8)
式(III)の繰り返し単位を含む、項目1に記載のポリマー。
(項目9)
式(III)の前記繰り返し単位において、
が直接結合であり;
Zが
【化35】

であり、好ましくは、-B(OH)が環の3または4位にある、項目8に記載のポリマー。
(項目10)
a)
【化36】

【化37】

【化38】

(式中、「m」は、1から100,000の整数を表す)からなる群から選択される少なくとも1つの繰り返し単位、ならびに
b)
【化39】

【化40】

【化41】

(式中、「n」は、1から100,000の整数を表す)からなる群から選択される少なくとも1つの繰り返し単位を含むポリマー。
(項目11)
【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

からなる群から選択されるポリマーであって、ただし、前記ポリマーが
【化46】

である場合、前記ポリマーは100,000を超える分子量を有さない、ポリマー。
(項目12)
先行する項目のいずれか一項に記載のポリマーまたは
【化47】

および薬学的に許容される添加剤を含む、医薬組成物。
(項目13)
前記組成物が、液剤、錠剤、カプレット剤またはカプセル剤である、項目12に記載の医薬組成物。
(項目14)
前記組成物が、腸溶性コーティング錠剤、カプレット剤またはカプセル剤である、項目12に記載の医薬組成物。
(項目15)
前記腸溶性コーティング錠剤、カプレット剤またはカプセル剤が、十二指腸への標的送達のためのものである、項目14に記載の医薬組成物。
(項目16)
被験体における代謝障害を処置するための方法であって、治療有効量の項目1から11のいずれか一項に記載のポリマーまたは項目12から15のいずれか一項に記載の医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
(項目17)
別の治療剤を、それを必要とする前記被験体に投与することをさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記代謝障害が、グルコース不耐症、T1DM、T2DM、前糖尿病、高脂血症、肥満、体重過多、脂質異常症、高血圧症、高血糖症、耐糖能障害、インスリン抵抗性、代謝症候群、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)および多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)である、項目16または17に記載の方法。
(項目19)
前記代謝障害が2型真性糖尿病である、項目16または17に記載の方法。
(項目20)
被験体における胃腸障害を処置するための方法であって、項目1から11のいずれか一項に記載の治療有効量のポリマーまたは項目12から15のいずれか一項に記載の医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。

【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、ムチン複合体化アッセイを例示する。
【0014】
図2図2は、ムチン通過遠心分離アッセイを例示する。
【0015】
図3図3は、ムチン通過遠心分離アッセイを使用した、3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)と、中性(2-ヒドロキシプロピル-メタクリルアミド、HPMA)、アニオン性(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、AMPS)、およびカチオン性((3-メタクリルアミド)プロピルアミン、MAPAn)コモノマーとの共重合体の評価の結果を示すチャートである。評価した共重合体は、中性、アニオン性およびカチオン性モノマーと7.5%、15%または30%のAPBAとを含有していた。結果によって、APBAをカチオン性ポリマーに添加すると、ポリマーのムチン複合体化活性が劇的に改善されるが、アニオン性または中性ポリマーでは改善されなかったことが示される。
【0016】
図4図4は、ムチン通過遠心分離アッセイを使用した、いくつかのカチオン性ポリマー、および30%、20%のAPBAを含有する対応する共重合体の評価の結果を示すチャートである。試験したポリマーは、ポリ((3-メタクリルアミド)プロピルアミン(MAPAn)、MAPAn/APBA(70/30)、ポリ(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム塩化物(APTAC)、APTAC/APBA(70/30)、ポリ(3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアミン(APDMAn)、APDMAn/APBA(70/30)、ポリ4-ビニルピリジン(4-VPy)、4-VPy/APBA(80/20)および1-ビニルイミダゾール(1-VI)、1-VI/APBA(80/20)であった。結果によって、APBAを添加すると、各カチオン性ポリマーのムチン複合体化活性が強化されたことが示される。
【0017】
図5図5は、4-カルボキシフェニルボロン酸(CPBA)で修飾されたポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAAn-HCl)の1H-NMRスペクトルである。NMRスペクトルによって、ポリマーが16mol%の置換度を有することが示される。予想される不純物由来のNMRシグナルは観察されなかった。
【0018】
図6図6Aおよび6Bは、対照およびポリマー処置群に関する研究8日目の経口グルコース耐性試験の結果をそれぞれ例示する。図6Aは、グルコース投与後の各群からの120分にわたる血中グルコースレベルを示す。図6Bは、対照および処置群に関する血中グルコース曲線下増加面積における減少をそれぞれ比較している。
【0019】
図7図7Aおよび7Bは、対照およびポリマー処置群に関する研究30日目の経口グルコース耐性試験の結果をそれぞれ例示する。図7Aは、グルコース投与後の各群からの210分にわたる血中グルコースレベルを示す。図7Bは、対照および処置群に関する血中グルコース曲線下増加面積における減少をそれぞれ比較している。
【0020】
図8図8Aおよび8Bは、対照およびポリマー処置群に関する研究39日目の経口グルコース耐性試験の結果をそれぞれ例示する。図8Aは、グルコース投与後の各群からの240分にわたる血中グルコースレベルを示す。図8Bは、対照および処置群に関する血中グルコース曲線下増加面積における減少をそれぞれ比較している。
【0021】
図9図9は、対照およびポリマー処置群に関する研究42日目のインスリン耐性試験の結果をそれぞれ例示する。
【0022】
図10図10Aおよび10Bは、対照およびポリマー処置群に関する研究46日目の混合餌耐性試験の結果をそれぞれ例示する。図10Aは、グルコース投与後の各群からの180分にわたる血中グルコースレベルを示す。図10Bは、対照および処置群に関する血中グルコース曲線下増加面積における減少をそれぞれ比較している。
【0023】
図11図11Aおよび11Bは、対照およびポリマー処置群に関する研究52日目の経口グルコース耐性試験の結果をそれぞれ例示する。例示する全ての他の耐性試験において、処置用ポリマーはグルコース負荷の60分前に与えられた。図11で例示する研究に関しては、最後の前処置用量は、一晩絶食の前、グルコース負荷の15時間前に与えられた。図11Aは、グルコース投与後の各群からの120分にわたる血中グルコースレベルを示す。図11Bは、対照および処置群に関する血中グルコース曲線下増加面積における減少をそれぞれ比較している。
【0024】
図12図12は、対照およびポリマー処置群に関する研究55日目のインスリン耐性試験の結果をそれぞれ例示する。
【0025】
図13図13は、対照およびポリマー処置群に関する60日の慢性投薬研究が完了したGKラットに関する正規化された体重をそれぞれ例示する。
【0026】
図14図14は、対照群に関する60日の投薬研究が完了したGKラットに関する体重減少を例示する。
【0027】
図15図15は、対照およびポリマー処置群に関する研究期間にわたる餌摂取量をそれぞれ比較している。
【0028】
図16図16A~16Cは、慢性GK齧歯動物研究の1週目の後に行った代謝試験の結果を例示する。図16Aは、対照およびポリマー処置群に関する血中グルコースをそれぞれ比較している。図16Bは、対照およびポリマー処置群に関するインスリンレベルをそれぞれ比較している。図16Cは、それぞれ対照およびポリマー処置群に関するインスリン抵抗性の恒常性モデル評価である。
【0029】
図17図17A~17Cは、慢性GK齧歯動物研究の8週目の後に行った代謝試験の結果を例示する。図17Aは、対照およびポリマー処置群に関する血中グルコースをそれぞれ比較している。図17Bは、対照およびポリマー処置群に関するインスリンレベルをそれぞれ比較している。図17Cは、それぞれ対照およびポリマー処置群に関するインスリン抵抗性の恒常性モデル評価である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本開示は、アミンまたはアミド結合を介してポリマー骨格に直接的または間接的に結合されたペンダントボロン酸基を含有するカチオン性ポリマーに関する。カチオン性ポリマーは、好ましくは、アミンまたはアンモニウム含有繰り返し単位を含み、必要に応じて他のカチオン性基、例えばイミダゾリル、ピリジニル、およびグアニジノを含有していてもよいポリカチオンである。本発明のカチオン性ボロン酸ポリマーは、カチオン性の繰り返し単位とボロン酸の繰り返し単位の両方を好ましくは含有する。一部の実施形態では、本発明のポリマーは、カチオン性基およびボロン酸基を含有する繰り返し単位を含有していてもよい。カチオン性ポリマーは、本明細書においてさらに記載するように、任意の所望の中性またはアニオン性の繰り返し単位も含有する共重合体であってもよく、ただし、ポリマーは正味のカチオン性電荷を保持する。
【0031】
これらのポリマーを含む医薬組成物、ならびに代謝障害、例えば、2型真性糖尿病(T2DM)、1型真性糖尿病(T1DM)、前糖尿病、高脂血症、肥満、体重過多、代謝症候群、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪肝および多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を処置するためのこれらのポリマーを使用した処置方法も開示する。
【0032】
例示的なポリマーは、式(I)~(III)のボロン酸部分含有繰り返し単位を含む。
【化1】
【0033】
式(I)から(III)において:
、R、RおよびRは、独立して、水素または置換もしくは非置換アルキルであり;
は、各出現において、独立して、直接結合または-L-A-L-A-であり;
は、各出現において、-NR-、-NC(O)-または-C(O)N-であり;
は、各出現において、存在しない、-NR-、-O-または-S-であり;
は、各出現において、独立して、直接結合または-L-A-L-A-であり;
は、各出現において、-C(O)-である、または存在しない;
は、各出現において、存在しない、-NR-、-O-または-S-であり;
およびAは、各出現において、独立して、存在しない、または必要に応じて置換されたC~Cアルキレンであり;
は、各出現において独立して、水素または置換もしくは非置換アルキルであり;
Zは、各出現において、
【化2】
【化3】
であり、
好ましくは-B(OH)は、環の3または4位にあり;
nは1から100,000の整数であり、
mは0から4の整数である。
【0034】
一部の好ましい態様では、ポリマーは、式(I)の繰り返し単位を含有する。
【0035】
式(I)の好ましい繰り返し単位は、式(Ia)~(If)の繰り返し単位を含む。
【化4】
【化5】
【0036】
式(Ia)から(If)において、R、R、R、A、Aおよびnは、式(I)で記載したとおりであり、好ましくは-B(OH)は、環の3または4位にある。
【0037】
一部の特定の例では、ポリマーは、式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)または(If)の繰り返し単位を含み、R、RおよびRはそれぞれ水素である。
【0038】
他の特定の例では、ポリマーは、式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)または(If)の繰り返し単位を含み、RおよびRはそれぞれ水素であり、Rはアルキルであり、好ましくはRはメチルである。
【0039】
他の好ましい態様では、ポリマーは、式(II)の繰り返し単位を含有する。式(II)の繰り返し単位を含有するポリマーの一部の例では、Yは直接結合であり、Zは
【化6】
であり、好ましくは-B(OH)は、環の3または4位にある。
【0040】
他の好ましい態様では、ポリマーは、式(III)の繰り返し単位を含有する。式(III)の繰り返し単位を含有するポリマーの一部の例では、Yは直接結合であり、Zは
【化7】
であり、好ましくは-B(OH)は、環の3または4位にある。
【0041】
ポリマーはホモポリマーであってもよい。ホモポリマーの場合、ポリマーは、窒素含有繰り返し単位(例えばポリアミンまたはポリアミドである)を含有し、繰り返し単位の窒素原子を介してポリマー骨格に直接的または間接的に結合されたペンダントボロン酸部分を伴う。したがって、ポリマーは、ボロン酸部分が結合した第二級もしくは第三級アミン、または必要に応じて第四級アンモニウムを典型的には含有する。第二級または第三級アミンは、約pH5~7でプロトン化され、カチオン性ポリマーを提供することになる。
【0042】
好ましくは、ポリマーは、式(I)~(III)のいずれか1つの繰り返し単位、1つまたは複数の他の繰り返し単位を含有する共重合体である。他の繰り返し単位は、好ましくは、カチオン性(例えば、窒素含有繰り返し単位)であるが、中性またはアニオン性であってもよく、ただし、ポリマーは全体的にカチオン性電荷を保持する。
【0043】
ペンダントボロン酸部分を含むように修飾してもよい好ましい窒素含有繰り返し単位としては、ポリ(アリルアミン)(PAAn)、ポリ(ジアリルアミン)(PDAAn)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)およびポリ(メタクリルアミドプロピルアミン)(PMAPAn)がある。
【0044】
本明細書において開示するポリマーでは、繰り返し化学的単位のうちの少なくとも約5%は、ペンダントボロン酸基、例えば、式(I)~(III)のいずれか1つの繰り返し単位を含有する。一部の場合では、ポリマー中の化学的繰り返し単位の実質的に全てが、ペンダントボロン酸基を含有する。好ましくは、繰り返し化学的単位のうちの約5%から約50%、約5%から約40%、約5%から約30%、約5%から約20%、または約5%から約15%はペンダントボロン酸基を含有する。
【0045】
ポリマー中に含むのに好適な窒素含有繰り返し単位は、当技術分野において周知であり、例えば、ポリビニルアミン、ポリ-N-アルキルビニルアミン、ポリアクリルアミド、ポリアルキルアクリルアミド(例えばポリメタクリルアミド)、ポリ-N-アルキルアクリルアミド、ポリアルキル-N-アルキルアクリルアミド、ポリアリルアミン、ポリ-N-アルキルアリルアミン、ポリジアリルアミン、ポリ-N-アルキルジアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミノスチレン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジンなどがある。
【0046】
アミノ窒素がプロトン化された場合、アミン含有繰り返し単位はカチオン性である。必要に応じて、カチオン特性は、公知の方法を使用して、例えばアミンをグアニジノ、ビグアニド、芳香族、例えばイミダゾリルおよびピリジニル、第四級アンモニウムに変換することによって、または追加のアミノ基を導入することによって、例えば、アミンをアルキルアミノもしくはアルキルアンモニウム基でアルキル化することによって変更してもよい。
【0047】
ポリアミンは、典型的には、十二指腸のpH(約pH5~6)で高度に帯電するが、近接するプロトン化アミン部位の密度が高いことに起因して、これらは、摂取後、胃(pH約2)から十二指腸(pH約5)へ通過したときにわずかに脱プロトン化する。少量の中和でさえ、ポリマーの電荷密度は効果的に低下し、pHが増加するにつれてこれらのポリマー鎖がよりコイル状になり、圧縮され、水和が不十分になることにつながる。理論に束縛されることを望むものではないが、このpH応答性が、胃よりも十二指腸において粘液が優先的に複合体化する一因になると考えられる。十二指腸のpH増加に応答し得る本発明の他のポリマーは、標準的なプロトン化脂肪族アミンのものよりも低いpKa値をもたらす誘導的または構造的特徴を有するカチオン性の繰り返し単位(例えば、プロトン化アミンを伴う繰り返し単位)を含有する。これらのプロトン化ポリマーのpKaが低いことによって、胃から十二指腸への移動と一致するpH増加に対する感度が高くなる。その結果、これらのタイプのポリマーは、近位十二指腸の緩い粘液と相互作用するように標的化することができ、そのポリマーとしては、プロトン化アミンから3炭素原子未満離れて、極性基、例えばヒドロキシル基で置換されたポリアミンがある。一部の実施形態では、ポリマーは、未修飾アミンよりも低いpKaを有するように修飾されたアミンを含む。例えば、カチオン性ポリマーは、9.0未満のpKa値、より好ましくは8.0未満のpKa、最も好ましくは7.0未満のまたはそれに等しいpKaを有していてもよい。
【0048】
本明細書において記載するポリマー中に含むのに好適なボロン酸含有繰り返し単位としては、これらに限定されないが、例えば、以下を含む、式(I)、(Ia)~(If)、(II)および(III)の繰り返し単位がある:
【化8】
【化9】
(式中、「m」は、1から100,000の整数を表す)。
【0049】
好適な窒素含有カチオン性モノマーの繰り返し単位としては、これらに限定されないが、例えば、以下のものがある:
【化10】
【化11】
【化12】
(式中、「n」は、1から100,000の整数を表す)。
【0050】
必要に応じて、ペンダントボロン酸基を含有するカチオン性ポリマーは、疎水性基、例えば、ペンダント疎水性基も含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、疎水性基は、水よりもオクタノール中で(個別の化学物質として)溶解しやすい部分である。例えば、オクチル置換基は、オクタンが水中よりもオクタノール中で溶解しやすいために疎水性基である。好適な疎水性基は、例えば、1つまたは複数のヒドロキシ、ハロ、および/またはアリール(例えば、ベンジル)基で置換されていてもよいC6またはそれを超える直鎖状、分枝状または環式炭化水素である。
【0051】
所望の場合、追加の繰り返し単位が本明細書において記載するポリマーに含まれていてもよく、ポリマーとしては、中性またはアニオン性の繰り返し単位、例えば、ポリアクリレート、ポリアルキレングリコール、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルホスフェート、ポリビニルスルフェートなどがあり得る。
【0052】
本開示のポリマーの特定の例としては、
【化13】
がある。
【0053】
一部の実施形態では、以下の構造のポリマーが本発明の組成物のポリマーから除外される
【化14】
。ポリマーが
【化15】
である場合、ポリマーは100,000もしくは75,000もしくは50,000を超える分子量を有さないか;または構造
【化16】
のポリマーが本発明から除外される。
【0054】
本開示のポリマーの追加の特定の例としては、
【化17】
【化18】
がある。
【0055】
本開示のポリマーの追加の特定の例としては、
【化19】
がある。
【0056】
本開示のポリマーの追加の特定の例としては、
【化20】
がある。
【0057】
本開示のポリマーの追加の特定の例としては、
【化21】
【化22】
がある。
【0058】
本発明の共重合体はさまざまな形態で存在していてもよい。好適な形態としては、ブロック共重合体、グラフト共重合体、櫛型共重合体、星型共重合体、デンドリマー、超分枝状共重合体、ランダム共重合体、勾配ブロック共重合体、および交互共重合体がある。
【0059】
本開示はまた、ペンダント疎水性基を含有するカチオン性ポリマー、および本明細書において開示する代謝疾患を処置するためのそのようなポリマーの使用に関する。
【0060】
好ましくは、本明細書において開示するポリマーは、被験体、例えばヒトに経口で投与した場合に、ポリマーが実質的に吸収されないように十分なサイズのものである。それを超えるとポリマーがGI管から全身循環に吸収されない分子量の閾値は、特定のポリマーおよびGI管中の条件ならびに他の因子に依存するが、1,000Daを超えるポリマーはGI管から全身循環に実質的に吸収されないことが一般的に認識されている。したがって、GI管から実質的に吸収されない本発明の組成物は、1,000Da、好ましくは5,000Da、またはより好ましくは10,000Da未満のポリマー鎖を実質的に含まず、少なくとも約10,000Da、好ましくは20,000から250,000Daの範囲、またはそれを超える平均分子量(M)を有する。本発明のポリマーは、ポリマー鎖長の分布を含有していてもよく、1.5~4.0の範囲の多分散指数(PDI)を有していてもよいが、これらは、1,000Da未満の材料を実質的に含有せず、好ましくはこれらは5,000Da未満、またはより好ましくは10,000Da未満の材料を含有しない。
【0061】
本発明のポリマーは溶解性であり、好ましくは架橋していない。一部の実施形態では、ポリマーは、わずかに架橋していてもよいが、溶解性を保持し、広範囲のネットワークまたはゲルは形成していない。
【0062】
開示するポリマーの薬学的に許容される塩も本発明に含まれる。例えば、酸官能基を有するポリマーも、アニオン性の形態またはカチオンと組み合わせて共役塩基の形態で存在していてもよい。好適なカチオンとしては、アルカリ土類金属イオン、例えばナトリウムおよびカリウムイオン、アルカリ土類イオン、例えばカルシウムおよびマグネシウムイオン、ならびに非置換および置換(第一級、第二級、第三級および第四級)アンモニウムイオンがある。塩基性基、例えばアミンを有するポリマーもプロトン化されていてもよく、薬学的に許容される対アニオン、例えばハロゲン化物(ClおよびBr)、CHOSO 、HSO 、SO 2-、HCO3-、CO 2-、ニトレート、水酸化物、ペルスルフェート、スルファイト、アセテート、ホルメート、スルフェート、ホスフェート、ラクテート、スクシネート、プロピオネート、オキサレート、ブチレート、アスコルベート、シトレート、ジヒドロゲンシトレート、タータレート、タウロコレート、グリココレート、コレート、ヒドロゲンシトレート、マレエート、ベンゾエート、フォレート、アミノ酸誘導体、ヌクレオチド、脂質、またはリン脂質を有する。同様に、アンモニウム基は、薬学的に許容される対イオンを含む。ボロン酸基は、アニオン、例えば水酸化ナトリウムもしくはカリウム、アルコキシドまたはカルボキシレートと反応して、塩、例えば-B-(OH)Na、-B-(OH)、-B-(OH)(OCH)Na、-B-(OH)(OCH)K、-B-(OH)(OCOCH)Na、-B-(OH)(OCOCH)Kなどを形成することができる。
【0063】
本明細書において開示するポリマーは、鎖長に一部の変動性を有するポリマー鎖の混合物として典型的には提供される。ポリマー鎖長のこの分布は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、およびマルチアングルレーザー光散乱(MALLS)のようなポリマーのモル質量を測定することができる検出器を使用して測定することができる。この方法によって、短い低分子量のポリマー鎖が存在しないことを確認することもできる。その方法は、多分散指数(PDI)を提供することもでき、これは典型的には、比率M/M(Mは重量分率平均分子量であり、Mは数平均分子量である)であると考えられる。
PDI=M/M
【0064】
、MおよびPDIの値は、SECによって得ることができ、MALLS検出器で得ることが好ましい。標準的なフリーラジカルプロセスから作製された合成ポリマー材料に関しては、2を超える、さらには3を超えるPDI値が認められるのが一般的である。対照的に、リビングフリーラジカル重合プロセス、例えば原子移動ラジカル重合(ATRP)または可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動(RAFT)は、2未満、またはさらに1.5未満のPDIを有する材料を生成することができる。
【0065】
本明細書において開示するポリマーは、任意の好適な方法を使用して、例えば1つ、2つもしくはそれを超えるモノマーを直接重合させることによってまたはポリマー修飾によって調製することができる。
【0066】
重合は、ポリマー合成の技術分野において公知の技術を使用して行ってもよい(例えば、Shalaby et al, ed., Water-Soluble Polymers, American Chemical Society, Washington, D.C. [1991]を参照のこと)。いくつかのカチオン性モノマーは、塩酸塩として入手可能であり、当技術分野において公知の方法によって、例えば、フリーラジカル付加プロセスを介して重合してもよい。この場合、重合混合物は、フリーラジカル開始剤を含む。好適なフリーラジカル開始剤としては、アゾビス(イソブチロニトリル)、アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、および過硫酸水素カリウムがある。他の好適な開始剤としては、電離放射線および紫外線光がある。フリーラジカル開始剤は、モノマーに対して約0.01モルパーセントから約5モルパーセントの範囲の量で反応混合物中に好ましくは存在する。
【0067】
ポリマー修飾アプローチはポリアミンを用い、共重合体アプローチはアクリルアミド誘導体を用いる。反応スキームにおける「M」はボロン酸部分を含む基を表す。
【0068】
ポリアミンは、粘液相互作用剤、ならびにボロン酸基を用いた化学的修飾のための出発材料としての役割を果たすことができる。例示的なポリアミンとしては、ポリエチレンイミン、ヒドロキシエチル化ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリ(アリルアミン)(PAAn)およびその共重合体、ポリ(ジアリルアミン)(PDAAn)およびその共重合体、ポリ(ビニルアミン)およびその共重合体、ポリ(ビニルイミダゾール)およびその共重合体、ポリ(ビニルピリジン)およびその共重合体、ポリ(ビニルアニリン)およびその共重合体、アミン含有アクリルアミドとメタクリルアミドとの共重合体などがある。好ましいポリアミンとしては、ポリ(アリルアミン)(PAAn)、ポリ(ジアリルアミン)(PDAAn)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)およびポリ(メタクリルアミドプロピルアミン)(PMAPAn)がある。
【0069】
ポリアミン誘導体は、EDCカップリングを使用したアミド形成化学によるポリアミンの化学的修飾から得ることができる(スキーム1)。
【化23】
スキーム1:EDCをカップリング試薬として使用した、ポリアミンとカルボン酸とのアミド形成反応。
【0070】
例えば、1%wt/volの所望のポリアミンは、pHが5.0に調整された脱イオン水中で調製してもよい。エタノールまたは他の好適な有機物を、最初のポリマー溶液体積の50%でポリマー溶液に添加する。カップリングされることになるM-カルボン酸を、最初のポリマー溶液体積の25%で水に入れて、溶液またはスラリーを形成する。EDCカップリング剤を、最初のポリマー溶液体積の25%でエタノールまたは他の好適な溶媒中に溶解する。次いでEDC溶液を、M-カルボン酸溶液またはスラリーと混合する。合わせたEDC/M-カルボン酸溶液を、ピペットまたは等圧滴下漏斗によっておよそ10分かけてポリマー溶液に滴下して添加する。反応溶液は、約0.5%wt/volのポリマーと、約62%volの水および約38%volのエタノールまたは他の好適な有機溶媒とを含有する。反応物を撹拌し、pHを5.0に維持する。pHを5.0に安定化させながら、反応物を室温で約18時間撹拌する。ポリマーを過剰な(体積の3倍の)アセトンで沈殿させる。
【0071】
ポリアミン誘導体は、マイケル付加反応によってポリアミンの化学的修飾から得ることができる。ポリアミンは求核剤であり、アクリルアミドはマイケルアクセプターである(スキーム2)。
【化24】
スキーム2:ポリアミン求核剤とアクリルアミドマイケルアクセプターとのマイケル付加反応。
【0072】
例えば、1%wt/volの所望のポリアミンを、脱イオン水中で調製し、pHを8.5に調整する。このpHは、所望する修飾のレベルに応じて増加させても低下させてもよい。所望のM-アクリルアミドを、最初のポリマー溶液体積の20%でエタノールまたは他の好適な溶媒中に溶解する。次いで、アクリルアミド溶液をポリマー溶液に添加して、約0.83%wt/volのポリマーと約83%volの水および約17%volエタノールまたは他の好適な溶媒とを含む反応混合物を形成する。反応混合物を70℃に加熱し、48時間撹拌する。ポリマーを過剰な(体積の3倍の)アセトンで沈殿させる。
【0073】
ポリアミン誘導体は、エポキシド開環化学を使用したヒドロキシアルキル化によってポリアミンの化学的修飾から得ることができる(スキーム3)。
【化25】
スキーム3:ポリアミンとエポキシドとの反応。
【0074】
例えば、2%wt/volの所望のポリアミンを脱イオン水中で調製し、pHを6.0に調整する。このpHは、所望する修飾のレベルに応じて増加させても低下させてもよい。所望のM-エポキシドを、最初のポリマー溶液体積の100%で水/エタノール(25%/75%)中に溶解する。次いで、この溶液をポリマー溶液に添加して、ポリマーが約1%wt/volであり、約62%volの水および約38%volのエタノールを含む反応溶液を調製する。反応混合物を60℃で48時間加熱した。エポキシドが60℃で完全な溶液ではない場合、少量の追加のエタノールを添加して溶解を補助してもよい。ポリマーを過剰な(体積の3倍の)アセトンで沈殿させる。
【0075】
ポリアクリルアミド誘導体は、例えば、3-アクリルアミドプロピルアミンと所望のM-アクリレートまたはM-アクリルアミドとの重合によって得ることができる(スキーム4)。
【化26】
スキーム4:アクリルアミドとアクリレートとの反応。
【0076】
例えば、所望の量の所望のM-アクリレートまたはM-アクリルアミドモノマーを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れる。所望のM-アクリレートまたはM-アクリルアミドモノマーを、ジメチルホルムアミドまたは他の好適な水混和性有機溶媒中に溶解する。次いで、所望の量のカチオン性、中性またはアニオン性コモノマーを添加する。2成分溶媒系中に帯電したコモノマーを十分に溶解するために少量の水が必要になる可能性があるであろう。適切な量のAIBN開始剤を添加する。コモノマー溶液を少なくとも約15分間N(g)パージする。次いで、反応物をN(g)下、65℃で加熱する。数時間加熱した後、共重合体溶液または懸濁液をアセトンから沈殿することによって単離する。アセトン中で沈殿を促進するために、いくらかの水を添加し、調整してpHを低下させることが一部のポリマーに必要であろう。最終的に、生成物を脱イオン水中に溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥してもよい。
【0077】
例で示すように、本明細書において記載するポリマーは、相当するカチオン性ポリマーと比較して粘液複合体化活性を改善し、十二指腸のpHにおいて粘液を効果的に濃縮することができる。ポリマーは、十二指腸のpHにおいて粘液と強固に結合し、粘液に結合すると、高濃度の塩(例えば、1M NaCl)または酸性条件(例えば、0.02M HCl)による除去に耐性を示す。得られたポリマー-粘液複合体は遊離粘液と比較して劇的に異なる特性を有する。例えば、本明細書において示すように、ポリマーは、粘液中の小粒子の拡散係数を約2桁(約1/100に)減少させる。糖尿病のラットモデルに投与した場合、ポリマーは、経口グルコース耐性試験において血中グルコースレベルを効果的に減少させ、血中グルコースレベルにおいて用量応答性の改善を示した。これらの結果は、消化管から十二指腸をバイパスまたは除去するための「代謝外科手術」が行われた患者において観察される、グルコースホメオスタシスの改善およびインスリン抵抗性の低下を再現しているが、外科手術または侵襲性内視鏡的手順とは異なり、本発明のポリマーは、非侵襲的様式で容易に投与される。任意の特定の理論または機序に拘束されることを望むものではないが、これらのデータは、ポリマーを経口で投与した場合に、十二指腸において粘液を複合体化することを可能にし、閉塞性非吸収性内腔バリアを形成することを実証する。十二指腸の閉塞性バリアの形成は、外科的または内視鏡的手順によって十二指腸をバイパス、除去、または切除することと機能的に類似しているかまたは同等であり、グルコースホメオスタシスの改善をもたらす(例えば、Koliaki, C. et al., BMC Endocr Disord. (2017) 17:50 DOI 10.1186/s12902-017-0202-6を参照のこと)。
【0078】
したがって、一部の態様では、本発明は、被験体の胃腸(GI)管の腸管内層と内腔内容物との間に物理的バリアを適用するための方法を提供する。方法は、治療有効量の本明細書において記載するポリマーを被験体のGI管に投与することを含む。
【0079】
本明細書で使用される場合、「物理的バリア」または「内腔バリア」という用語は、腸管内のポリマー-粘液複合体の下に位置する粘膜上皮に糜粥が接触するのを阻止または減少させるポリマーと粘液との複合体を指す。物理的バリアは、ポリマーが、腸壁を覆う粘液に含有されるアニオン性ムチンと系中で結合した場合に生成される。物理的バリアは実質的に完全であっても部分的であってもよい。実質的に完全な物理的バリアは、標的領域、例えば近位十二指腸の上皮内層全体を実質的に覆うように広がる。部分的な物理的バリアは、標的領域の一部、例えば十二指腸の上皮内層の一部を覆うように広がる。例えば、部分的バリアは、標的部位において、上皮の少なくとも約1%、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%またはそれを超えて覆っていてもよい。
【0080】
部分的な物理的バリアは、不連続で空間的に分布していてもよく、さまざまな程度の透過性を有していてもよい。例えば、物理的バリアは、ポリマーと腸内腔表面上の、好ましくは十二指腸内の粘液またはムチンとの半透過性複合体であってもよい。
【0081】
実施形態では、物理的バリアまたはその製剤は、被験体の自然な消化プロセスを通過する。さらに他の実施形態では、物理的バリアは、液体または溶媒を摂取することによって除去可能であるかまたは元に戻すことができる。
【0082】
本明細書において記載するポリマーは、粘液およびムチンと強固に結合して、解離(例えば、高濃度の塩および低いpHによる)に耐性を示すポリマー-粘液複合体を形成する。したがって、一度形成されると、物理的バリアは、典型的には、「保持期間」または「滞留時間」の間は存在することになり、消化系の天然の作用によって除去される。典型的な保持期間は約30分から約7日の範囲であってもよく、約1時間から約3時間、約1時間から約5時間、約1時間から約24時間、約1から約3日などの範囲の時間を含む。
【0083】
所望の滞留時間は、臨床用途によって変化してもよく、投与するポリマーの量、ならびに頻度および投与間隔に基づいて調整してもよい。例えば、T2DMを呈する被験体の最大50%は胃不全麻痺または胃排出遅延を有し、前糖尿病または非糖尿病肥満被験体よりも長時間にわたって定位置に維持されるような粘膜付着性内層が必要となる場合がある。血中グルコースレベルは、食事をしてから最初の2時間以内に急上昇することが多く、大部分は最初の60分以内であることが多く;したがって、一実施形態では、内層は最低60分間付着するべきである。別の実施形態では、医薬を毎食前に摂取しない可能性があり、したがって処置に適合しない可能性があり、その行動を変える必要があるであろう前糖尿病被験体の場合、より長時間持続する粘膜付着性内層が必要な場合がある。本出願において、内層は、最低6~8時間付着してもよく、最大24時間必要な場合がある。滞留時間は、ポリマーが最も親和性を発現する粘液層によっても影響を受けるであろう。例えば、表面の緩い付着性層は、分から時間単位で脱落するが、深く固い付着性層に対する親和性は、より長時間持続する粘膜付着性のコーティングをもたらすであろう。全体的に、滞留時間は、本開示において概説する実施形態におけるさまざまな臨床的および技術的考察に合わせてもよい。
【0084】
本発明のポリマーは、近位腸、特に十二指腸内に閉塞性バリア層を形成することができる。好ましくは、閉塞性バリアは、近位十二指腸または十二指腸球部内に形成される。その結果ポリマーは、胃から放出され、近位十二指腸に入るとすぐにバリア層を完全に形成することができる。
【0085】
ポリマーは、任意の好適な投薬形態で経口投与される。経口投与に好適なさまざまな投薬形態が当技術分野において周知であり、液体製剤(例えば、液剤、懸濁剤、スラリー剤、シロップ剤)、ゲル剤、軟膏剤、散剤、錠剤、カプレット剤、カプセル剤などを含む。
【0086】
1つの例では、ポリマーは液体形態で投与してもよく、典型的には、胃内で十分に安定で溶解性であり、活性状態で十二指腸への即時送達を可能にし、さらなる膨潤、可溶化、または周囲の環境との平衡化を必要としない。本明細書において記載するポリマーは、典型的にはポリアミンであり、これは強酸性の胃(pH約2)から十二指腸(pH約5)へ移動するときにある程度の脱プロトン化を受け、これがポリマーの複合体化活性を十二指腸に対して標的化する。しかし、ポリマーは、胃内でバリア層を形成する場合もある。
【0087】
他の例では、ポリマーは、胃内で水和することができる固体形態で投与される。固体形態は、ゆっくりと溶解するように製剤化してもよく、これはポリマーを胃の酸性度から保護することができるが、ポリマーを完全な活性状態で近位十二指腸に侵入させる。他の例では、ポリマーは、腸溶性コーティング錠剤、カプレット剤、カプセル剤の形態またはポリマーを胃の酸性度から保護するための他の腸溶性コーティング投薬形態で投与される。そのような例では、腸溶性コーティングは、幽門弁を通過した後または通過中に(pHがpH約2から増加した場合に)、できるだけ早く溶解または分解し、ポリマーの即時放出を可能にするように製剤化される。そのような投薬形態は、腸管内の、例えば近位十二指腸の所望の部位でポリマーの即時放出を促進するための超崩壊剤を含んでいてもよい。好適な超崩壊添加剤は当技術分野において周知である(例えば、Mohanachandran, P.S. et al, Superdisintegrants: An Overview, Int. J. Pharma. Sci. Review and Research, (2011) 6:1 pp 105-109を参照のこと)。例えば、十二指腸への送達を標的化することができる腸溶性カプセル剤は、文献に記載されている(例えば、Reix N. et al. Intl J Pharm (2012) 422:1-2 pp. 338-340を参照のこと)。

【0088】
本発明のポリマーは、経口投与後に、胃内、十二指腸内または他の粘膜表面上で素早く溶解することができる。
【0089】
一部の態様では、本発明のポリマーの医薬製剤は、カルシウム塩、例えば塩化カルシウムまたはクエン酸カルシウムを必要に応じて含むことができる。物理的バリアの形成は、カルシウム塩の存在下で促進することができると考えられている。
【0090】
必要に応じて、ポリマーは、内視鏡、経鼻栄養管、経口栄養管、または同様のデバイスを介して被験体の胃腸管に投与してもよい。ポリマーは、所望の作用部位において粘膜上に噴霧することもでき、例えば、噴霧は内視鏡的に行うことができる。
【0091】
治療目的のために、ポリマーの「治療有効量」が投与される。治療有効量は、本明細書で使用される場合、臨床応答を含む所望の応答に投与条件下で影響を与えるのに十分な量である。治療有効量は、例えば、グルコースホメオスタシスを改善し、インスリン抵抗性を減少させ、体重減少をもたらし、ならびに/またはT1DM、T2DMもしくは他の代謝障害の他の徴候および/もしくは症状、例えば高脂血症、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪肝臓ならびに他の状態、例えば肥満および体重過多を改善するのに十分なものであってもよい。例えば、治療有効量は、血中グルコースレベルを低下させるのにおよび/またはHbA1Cを減少させるのに十分な量とすることができる。
【0092】
投与される正確な量は、年齢、体重、性別、処置されることになる特定の状態およびその重症度、薬物に対する感受性、ならびに被験体の健康全般を含むいくつかの公知の要件に依存することになる。熟練した臨床医であれば、これらおよび他の要件に基づいて投与するのに適切な量を決定することができる。典型的には、1用量当たり1から5錠/カプセルを投与し、それぞれのサイズは0または0Eまたは00または00Eまたは000である。用量は、1日当たり1、2、3または4回投与してもよい。投薬のタイミングは基本的な適応に基づくことになる。好ましくは、用量は、代謝状態の処置のために、食事の少なくとも5、10、15、30または60分前および食事前の12時間以内に投与される。他の適応に関しては、食事の直前または食事と一緒に投薬するのが好ましい場合がある。
【0093】
本明細書で使用される場合、および当技術分野においてよく理解されているように、「処置」は、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。有益なまたは所望の臨床結果としては、これらに限定されるものではないが、検出可能か不可能かにかかわらず、1つまたは複数の症状または状態の緩和または改善、疾患または苦痛の程度の減少、疾患または苦痛の安定化された(すなわち、悪化していない)状況、疾患または苦痛の拡大の阻止、疾患または苦痛の進行の遅延または鈍化、疾患または苦痛の状況の改善または緩和、および寛解(部分的か全体的かにかかわらず)があり得る。「処置」は、処置を受けなかった場合に予想される生存と比較して生存を延長することを意味する場合もある。
【0094】
本開示は、本明細書において開示する治療有効量のポリマーを、それを必要とする被験体に投与することによって代謝疾患を処置する方法に関する。方法を使用して処置することができる代謝疾患としては、例えば、グルコース不耐症(glucose intolerance)、T1DM、T2DM、前糖尿病、高脂血症、肥満、体重過多、肥満、脂質異常症、高血圧症、高血糖症、耐糖能障害、インスリン抵抗性、代謝症候群、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪肝臓疾患(NAFLD)および多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)がある。
【0095】
本開示はまた、本明細書において開示する治療有効量のポリマーを、それを必要とする被験体に投与することによって胃腸障害を処置する方法に関する。方法を使用して処置することができる胃腸障害としては、例えば、セリアック疾患、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、結腸炎、クロストリジウム・ディフィシル(clostridium difficile)、内毒素血症、下痢および便秘がある。
【0096】
本発明の方法は、リーキーガット症候群および関連する状態の対処においても有用である。リーキーガット症候群は、上皮に密接な連結の変化/損傷に起因して腸の透過性が増加し、その結果上皮バリア機能が損なわれる状態を説明する技術用語である。この障害を受けたバリアは、管腔内巨大分子および抗原のための導管として作用して、腸壁を通過させ、炎症性の免疫学的反応を引き起こし、それがさまざまな健康状態をもたらす。例えば、リーキーガット症候群はIBS(過敏性腸症候群)に関与している。食品中のある特定のタンパク質は、免疫応答を誘発する抗原としてふるまう場合がある。例えば、セリアック疾患では、グルテンが上皮と接触することを阻止すると免疫学的応答が減少する場合がある。リーキーガットは、炎症性腸疾患(クローン疾患、潰瘍性結腸炎)などの他の免疫学的状態にも関与している。腸のバリアが強化されると、胃腸管内でエンドトキシンの吸収を低下させることができる。これらのエンドトキシンの一部は、正常な細菌性代謝/分解の結果であるかまたは細菌性異常増殖に起因する。これは肝機能障害患者に特に関連しており、例えば、肝硬変では、その患者においてエンドトキシンが肝臓によって代謝(無毒化)されず、脳機能障害をもたらす(肝性脳症と称される)。したがって、本明細書において記載する方法は、腸のバリア特性を強化するために使用することができ、肝性脳症を処置するまたはその発生を減少させることができる。尿毒症は、腸のバリア機能の障害と関連する別の状態であり、これは本明細書において記載する方法を使用して処置または減少させることができる。同様に、進行した慢性腎臓疾患(CKD)を呈する患者において腸の透過性が高いことが臨床的エビデンスによって実証されているため、本明細書において記載する方法は、CKDを処置するまたはその発生を減少させるために使用することができる。
【0097】
治療方法は、さまざまな障害と関連する臨床的バイオマーカーを減少させること、例えば、全身性炎症、酸化的ストレスおよび高尿酸症を減少させることによって利益を提供することもできる。
【0098】
開示するポリマーは、薬学的に許容される担体、添加剤、緩衝剤または希釈剤を含む医薬組成物の形態で被験体に投与してもよい。
【0099】
経口投与に関しては、本発明の医薬組成物は、投薬形態、例えばカプセル剤、錠剤、カプレット剤、散剤、顆粒剤、ゲル剤、懸濁剤、液剤または他の好適な投薬形態で示していてもよい。カプセル剤は、ゼラチン、ソフトゲルまたは固形であってもよい。錠剤、カプレットおよびカプセル製剤は、1つまたは複数のアジュバント、結合剤、希釈剤、崩壊剤、添加剤、フィラー、または滑沢剤をさらに含有していてもよく、これらは当技術分野においてそれぞれ公知である。そのようなものの例としては、炭水化物、例えばラクトースまたはスクロース、無水リン酸水素カルシウム、コーンスターチ、マンニトール、キシリトール、セルロースまたはその誘導体、微結晶性セルロース、ゼラチン、ステアレート、二酸化ケイ素、タルク、デンプングリコール酸ナトリウム、アカシア、香味剤、保存料、緩衝剤、崩壊剤、および着色料がある。

【0100】
経口で投与する組成物は、薬学的に味の良い調製物を提供するために、1つまたは複数の必要に応じた薬剤、例えば、甘味剤、例えばフルクトース、アスパルテームまたはサッカリン;香味剤、例えばペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリー;着色剤;および保存剤を含有する場合がある。経口投与に好適な医薬製剤およびそれを調製するための方法は当技術分野において周知である。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, twentieth edition, 2000を参照されたい。
【0101】
経口で使用してもよい医薬調製物としては、好適な材料、例えばゼラチンで作製されたプッシュフィットカプセル剤、ならびに好適な材料、例えば、ゼラチン、および可塑剤、例えばグリセロールまたはソルビトールで作製された密封軟カプセルがある。プッシュフィットカプセル剤は、フィラー、例えばラクトース、結合剤、例えばデンプン、および/または滑沢剤、例えばタルクもしくはステアリン酸マグネシウム、および必要に応じて安定化剤と混合された活性成分も含有していてもよい。軟カプセルでは、活性化合物は、好適な液体、例えば脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコール中に溶解または懸濁してもよい。さらに、安定化剤を添加してもよい。経口投与のための全ての製剤は、そのような投与に好適な投薬量でなければならない。組成物を封入する(例えば、硬ゼラチンまたはシクロデキストランのコーティング中に)ための方法は当技術分野において公知である(Baker, et al., "Controlled Release of Biological Active Agents", John Wiley and Sons, 1986)。
【0102】
本発明の方法は、プロバイオティクスを含むポリマー組成物の共配合製剤を含む。プロバイオティクス製剤は、腸管内に有益なプロバイオティクス細菌を構築するのを補助する。プロバイオティクスは、糖尿病を呈する被験体において血糖、HbA1c、インスリンレベルおよびインスリン抵抗性の低下に顕著に効果を与えることは当技術分野において公知である。好適なプロバイオティクスとしては、これらに限定されないが、Lactobacillus Bifidobacteria、Saccharomyces boulardii、およびBacillus coagulans、Akkermansia muciniphila、Bifidobacterium spp.、Escherichia spp.がある。プロバイオティクスを含有する製剤を調製するための方法は当技術分野において周知である。
【0103】
必要に応じて、本明細書において記載する治療方法は、ポリマー組成物と1つまたは複数の追加の治療剤とを共投与することを含んでいてもよい。糖尿病を呈する被験体における共投与のための治療剤としては、GLP-1受容体アゴニスト、DPP-4阻害剤、SGLT-2阻害剤、グルコシダーゼ阻害剤、インスリン、メトホルミン、スルホニル尿素およびチアゾリデンジオンのクラスの薬物があり得る。
【0104】
特定の例では、追加の治療剤は、糖尿病(1型および/または2型)、前糖尿病、高血糖症、耐糖能障害またはインスリン抵抗性の処置に適応される1つまたは複数の薬剤である。そのような薬剤としては、ビグアニド(例えば、メトホルミン)、スルホニル尿素(例えば、リメピリド、グリクラジド、ギルピジド、グリメピリド、トルブタミド、グリベンクラミド(グリブリド)、グリキドン、およびグリクロピラミド)、メグリニチニド(例えば、レパグリニドおよびナテグリニド);チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾンおよびロシグリタゾン)、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボースおよびミグリトール)、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害剤(例えば、ビルダグリプチン、シタグリプチン、サクサグリプチン、およびリナグリプチン)、GLP-1類似体(例えば、エクセナチド、リキシセナチド、デュラグルチド、およびリラグルチド)、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤(例えば、ダパグリフロジン、ガナグリフロジン、およびエンパグリフロジン)、アミリン模倣体(例えば、プラムリニチド)、D2-ドーパミンアゴニスト(例えば、ブロモクリプチン)、胆汁酸封鎖剤(例えば、コレスチラミン、コレセベラム、コレスチラン、およびコレスチミド)、およびインスリン(例えば、ヒトインスリン、インスリングルリシン、インスリンリスプロ、インスリンイソファンヒト、インスリン亜鉛懸濁液混合ウシ、インスリンプロタミン亜鉛ウシ、インスリンイソファンブタ、インスリンイソファンヒトなど)がある。
【0105】
併用療法は、単独療法を上回るいくつかの利点を提供することができる。例えば、ポリマーおよび追加の治療剤を投与すると、所望の効果に必要な追加の治療剤の有効性を強化し、および/または量を減少させる場合がある。したがって、追加の治療剤の不所望の副作用を減少させるかまたは消失させる場合がある。さらに、本発明のポリマーおよび追加の治療薬は、単独療法としての各薬剤と比較して優れた治療法を提供することができ、併用療法は、相加または相乗効果を提供することができる。
【0106】
ここで開示される方法によって処置することになる被験体は、典型的には、哺乳動物、好ましくはヒト被験体である。好適な被験体としては、これらに限定されないが、霊長目、例えば、ヒト、サル、猿人類など;ウシ、例えば、畜牛、雄牛など;ヒツジ、例えば、羊など;ヤギ、例えば、山羊など;ブタ、例えば、豚、雄豚など;ウマ、例えば、馬、ロバ、シマウマなど;野生のおよび飼い猫を含むネコ;犬を含むイヌ;兎、野兎などを含むウサギ;およびマウス、ラットなどを含む齧歯動物を含む哺乳動物がある。好ましくは、被験体は、これらに限定されないが、胎児、新生児、乳児、若年、および成人を含むヒトである。
【0107】
「a」、「an」および「the」という用語は、特許請求の範囲を含む本出願において使用する場合、「1つまたは複数」を指す。したがって、例えば「被験体(a subject)」への言及は、文脈が明らかにそれとは逆である場合(例えば、複数の被験体)などを除いて、複数の被験体を含む。
【0108】
本明細書および特許請求の範囲全体にわたって、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」という用語は、文脈上別段の必要がある場合を除いて、非排他的な意味で使用される。同様に、「含む(include)」という用語およびその文法上の変形は、リスト内の項目の列挙が、挙げられた項目に置換または追加することができる他の類似の項目を除外しないように非限定的であることを意図する。
【0109】
本明細書において特定の用語が用いられるが、これらは一般的なかつ説明的な意味のみで使用されており、限定を目的としない。特に定義されない限り、本明細書において使用する全ての技術および科学用語は、ここで記載する主題が属する技術分野の当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0110】
「約」という用語は、値について言及する場合、±20%または±10を意味する。さらに、「約」という用語は、1つまたは複数の数または数値範囲に関連して使用される場合、全てのそのような数を指し、範囲内の全ての数を含むことを理解するべきであり、示される数値の上限および下限を拡大することによってその範囲を変更する。両端による数値範囲の記載には、その範囲内に含まれる全ての数、例えばこれらの端数を含む整数全体(例えば、1から5の列挙には、1、2、3、4、および5、ならびにこれらの端数、例えば、1.5、2.25、3.75、4.1などが含まれる)およびその範囲内の任意の範囲が含まれる。
【0111】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、典型的には、1から約6個の炭素原子を含有する一価の脂肪族炭化水素を指す。アルキル基は、直鎖状鎖、分枝状鎖、単環式部分もしくは多環式部分またはこれらの組合せであってもよい。アルキル基に好適な置換基としては、アリール、-OH、ハロゲン(-Br、-Cl、-Iおよび-F)、-O(R’)、-O-CO-(R’)、-CN、-NO、-COOH、-NH、-NH(R’)、-N(R’)、-COO(R’)、-CONH、-CONH(R’)、-CON(R’)、-S(O)R’、-S(O)R’、-SHおよび-S(R’)がある。各R’は、独立して、アルキル基またはアリール基である。置換アルキル基は、1つを超える置換基を有していてもよい。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル(norbornl)などがある。
【0112】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」という用語は、必要に応じて置換されていてもよい-(CH-(式中、xは1から5の間の整数である)を指す。好ましくは、xは1から3の間、より好ましくはxは1または2である。アルキレン基に好適な置換基はアルキル基に好適なものと同一である。
【0113】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、式-O-アルキルの基を指す。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(例えば、n-プロポキシおよびイソプロポキシ)、tert-ブトキシなどがある。
【0114】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、環原子の全てが炭素であり、置換されていても置換されていなくてもよい、3~7個の環原子を有する安定な芳香族単環式環系を指す。アリール置換基としては、-OH、ハロゲン(-Br、-Cl、-Iおよび-F)、-O(R’)、-O-CO-(R’)、-CN、-NO、-COOH、-NH、-NH(R’)、-N(R’)、-COO(R’)、-CONH、-CONH(R’)、-CON(R’)、-S(O)R’、-S(O)R’、-SHおよび-S(R’)がある。各R’は、独立して、アルキル基である。
【0115】
本明細書で使用される場合、「アリールオキシ」という用語は、式-O-アリールの基を指す。アリール基は必要に応じて置換されていてもよい。
【0116】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシ」という用語は、式-OHの基を指す。
【0117】
本明細書で使用される場合、「ハロ」または「ハロゲン」は、F、Cl、Br、またはIを指す。
【0118】
本明細書で使用される場合、「必要に応じて置換された」という句は、置換されていないかまたは置換されていることを意味する。本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、水素原子が除去され、置換基で置き換えられたことを意味する。所与の原子における置換は、原子価によって制限されることを理解されたい。
【0119】
以下の例は、本発明の実施形態をさらに例示するために提供されるが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。これらは、使用され得るものの典型であるが、当業者に公知の他の手順、方法論、または技術を代替で使用してもよい。
【実施例
【0120】
I.合成:
(実施例1)
ポリ(アリルアミン塩酸塩)/PAAn-HClの合成:アリルアミン26.28mlを磁気撹拌およびN(g)入口を備えた250mlの2首丸底フラスコの場所に入れた。温度を、氷浴を用いて5℃未満にした。37wt%HCl 28.74mlを等圧滴下漏斗に入れた。HClを、温度が35℃を超えないようにN(g)下で90分にわたってゆっくりと添加した。脱イオン水11.0mlを添加して、アリルアミン塩酸塩の50wt%溶液を作製した。公称の量の37wt%HClを添加して、溶液のpHを2.60に低下させた。次いでV50開始剤328mg(1wt%)を固形のまま添加した。モノマー溶液を約30分間N(g)パージした。次いで反応物を、N(g)下、60℃で24時間加熱した。粘性反応混合物をMWCO:6kから8kのセルロース透析膜に入れ、何回か水を交換しながら2から3日にわたって透析した。透析した溶液を1μmフィルターに通し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として12.79gであった。
【0121】
(実施例2)
PAAn-4CPBAアミド(高置換度)の合成:ポリ(アリルアミン塩酸塩)2.05gおよび脱イオン水200mlを、磁気撹拌を備えた500mlの1つ首丸底フラスコに入れた。エタノール100mlを添加した。4-カルボキシフェニルボロン酸(4-CPBA)2.83gおよび脱イオン水50mlを含むスラリー、ならびにEDC-HCl 3.27gおよび変性エタノール50mlを含む溶液を個別に作製した。4CPBAおよびEDC溶液を大部分が溶解するまで約5分一緒に混合した。「4CPBA-EDC」溶液を、ポリマー溶液に約5分にわたって添加した。反応物は、安定化するまで、スケールに応じて約30分から2時間、少量の飽和重炭酸塩溶液を用いてpH5を維持した。反応を、pH5で安定化させながら18時間進行させた。反応物の内容物を過剰なアセトンから2回沈殿させ、続いてMWCO:3.5kセルロース膜で何回か水を交換しながら2から3日にわたって透析した。透析した溶液を1μmフィルターに通し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として2.52gであった。
【0122】
(実施例3)
PAAn-4CPBAアミド(低置換度)の合成:ポリ(アリルアミン塩酸塩)2.08gおよび脱イオン水250mlを、磁気撹拌を備えた500mlの1つ首丸底フラスコに入れた。エタノール50mlを添加した。4-カルボキシフェニルボロン酸(4-CPBA)1.41gおよび変性エタノール50mlを含むスラリー、ならびにEDC-HCl 1.59gおよび変性エタノール50mlを含む溶液を個別に作製した。4CPBAおよびEDC溶液を大部分が溶解するまで約5分一緒に混合した。「4CPBA-EDC」溶液を、ポリマー溶液に約5分にわたって添加した。反応物は、安定化するまで、スケールに応じて約30分から2時間、少量の飽和重炭酸塩溶液を用いてpH5を維持した。反応を、pH5で安定化させながら18時間進行させた。反応物の内容物を過剰なアセトンから2回沈殿させ、続いてMWCO:3.5kセルロース膜で何回か水を交換しながら2から3日にわたって透析した。透析した溶液を1μmフィルターに通し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として2.04gであった。
【0123】
(実施例4)
グリシドールで修飾されたPAAn-4CPBAアミド(高置換度)の合成:ポリ(アリルアミン塩酸塩)-4CPBA(高置換度)100mgおよび脱イオン水10mlを、磁気撹拌を備えた30mlのガラスバイアルに入れた。pHを1N NaOHを用いて8.0に調整した。反応物を60℃に加熱した。グリシドール62.6μlを添加し、48時間加熱した。反応物の内容物を過剰なアセトンから2回沈殿させ、脱イオン水中に入れ、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として119mgであった。
【0124】
(実施例5)
PAAn-4CPBAアミド(高置換度)のグアニジニル化:ポリ(アリルアミン塩酸塩)-4CPBA(高DS)100mgおよび脱イオン水10mlを、磁気撹拌を備えた30mlのガラスバイアルに入れた。ピラゾールカルボキサミジン-HCl 92.3mgを添加した。pHを1N NaOHを用いて8.0に調整した。反応物を45℃に48時間加熱した。反応物の内容物を過剰なアセトンから2回沈殿させ、脱イオン水中に入れ、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として100mgであった。
【0125】
(実施例6)
PAAn-4CPBAアミド(低置換度)のグアニジニル化:ポリ(アリルアミン塩酸塩)-4CPBA(低DS)100mgおよび脱イオン水10mlを、磁気撹拌を備えた30mlのガラスバイアルに入れた。ピラゾールカルボキサミジン-HCl 274mgを添加した。pHを1N NaOHを用いて9.5に調整した。反応物を45℃に48時間加熱した。反応物の内容物を過剰なアセトンから2回沈殿させ、脱イオン水中に入れ、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として118mgであった。
【0126】
(実施例7)
PAAn-ベンジルアミド(高置換度)の合成:ポリ(アリルアミン塩酸塩)2.01gおよび脱イオン水200mlを、磁気撹拌を備えた1Lの1つ首丸底フラスコに入れた。pHを、少量の1N NaOHを用いて約3.6から5.2に調整した。安息香酸(Bz)2.36gおよび変性エタノール100mlの溶液、ならびにEDC-HCl 4.18gおよび変性エタノール100mlの溶液を個別に作製した。BzおよびEDC溶液を大部分が溶解するまで約5分混合した。「Bz-EDC」溶液を、ポリマー溶液に約5分にわたって添加した。反応物は、安定化するまで、スケールに応じて約30分から2時間、少量の飽和重炭酸塩溶液を用いてpH5を維持した。反応を、pH5で安定化させながら18時間進行させた。反応物の内容物を、過剰なアセトンから1回沈殿させ、続いてMWCO:6kから8kセルロース膜で何回か水を交換しながら2から3日にわたって透析した。透析した溶液を1μmフィルターに通し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として1.82gであった。
【0127】
(実施例8)
PAAn-APBA(高置換度)の合成:ポリ(アリルアミン塩酸塩)250mgおよび脱イオン水25mlを、磁気撹拌を備えた100mlの2つ首丸底フラスコに入れた。pHを、少量の1N NaOHを用いて約3.5から約8.5に調整した。3-アクリルアミドフェニル-ボロン酸(APBA)128mgおよび変性エタノール5mlを含む溶液を個別に作製した。APBA溶液をポリマー溶液に添加し、70℃で48時間加熱した。反応物の内容物を、過剰なアセトンから1回沈殿させ、固形物を脱イオン水中に入れ、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量はオフホワイト色固形物として308mgであった。
【0128】
(実施例9)
PAAn-APBA(低置換度)の合成:ポリ(アリルアミン塩酸塩)250mgおよび脱イオン水25mlを、磁気撹拌を備えた100mlの2つ首丸底フラスコに入れた。pHを、少量の1N NaOHを用いて約3.5から約8.5に調整した。3-アクリルアミドフェニル-ボロン酸(APBA)52mgおよび変性エタノール5mlを含む溶液を個別に作製した。APBA溶液をポリマー溶液に添加し、70℃で48時間加熱した。反応物の内容物を、過剰なアセトンから1回沈殿させ、固形物を脱イオン水中に入れ、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量はオフホワイト色固形物として218mgであった。
【0129】
(実施例10)
PAAn-C8(低置換度)の合成:ポリ(アリルアミン塩酸塩)250mgおよび脱イオン水18mlを、磁気撹拌を備えた100mlの2つ首丸底フラスコに入れた。pHを、少量の1N NaOHを用いて約3.5から約6.0に調整した。1,2-エポキシオクタン(C8)409μlおよび変性エタノール12mlを含む溶液を個別に作製した。C8溶液をポリマー溶液に添加し、60℃で24時間加熱した。反応物の内容物を過剰なアセトンから2回沈殿させ、固形物を脱イオン水中に入れ、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量はオフホワイト色固形物として169mgであった。
【0130】
(実施例11)
ポリ(メタクリルアミドプロピルアミン-塩酸塩)/PMAPAn-HClの合成:メタクリルアミドプロピルアミン-塩酸塩2.01gおよび脱イオン水6mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れた。pHを、少量の5N NaOHを用いて2.3に調整した。「V50」開始剤20mg(1wt%)を添加した。モノマー溶液を約15分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、60℃で24時間加熱した。固形物を、アセトンから1回沈殿させることによって単離し、新鮮な水中に入れ、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として1.74gであった。
【0131】
(実施例12)
PMAPAn-4CPBA(高置換度)の合成:PMAPAn-HCl 250mgおよび脱イオン水25mlを、磁気撹拌を備えた100mlの1つ首丸底フラスコに入れた。pHを、少量の1N NaOHを用いて約4から約5に調整した。4-カルボキシフェニルボロン酸(4-CPBA)232mgおよび脱イオン水12.5mlを含むスラリー、ならびにEDC-HCl 268mgおよび変性エタノール12.5mlを含む溶液を個別に作製した。4CPBAおよびEDC溶液を、大部分が溶解するまで、約2分混合した。「4CPBA-EDC」溶液を、ポリマー溶液に約2分にわたって添加した。反応物は、安定化するまで、スケールに応じて約30分から2時間、少量の飽和重炭酸塩溶液を用いてpH5を維持した。反応を、pH5で安定化させながら18時間進行させた。固形物をアセトンから2回沈殿させることによって単離し、脱イオン水中に入れ、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として1.74gであった。
【0132】
(実施例13)
ポリ(ビニルアミン)/PVAnの合成:N-ビニルホルムアミド25.0mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた500mlの3つ首丸底フラスコ中に含有されるIPA 125mlおよび脱イオン水42mlの溶液に入れた。「V50」開始剤1.00g(4wt%)を添加した。モノマー溶液を約45分間N(g)パージした。次いで反応物を、N(g)下、60℃で2時間加熱した。ポリ(N-ビニルホルムアミド)が、この特異的な共溶媒組成で沈殿した。母液を、ポリマーを一切失わないように慎重にデカント除去し、次いで等体積の脱イオン水(約150ml)で置き換えた。固形NaOHペレット14.07gを添加し、加水分解反応を75℃で24時間加熱した。最後に、1N HClを添加してpHを13未満に低下させ、粗製PVAをMWCO:6kから8kセルロース膜で何回か水を交換しながら2から3日にわたって透析することによって精製し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量9.4gで遊離塩基形態の粘着性の金色固形物を得た。
【0133】
(実施例14)
PVAn-4CPBA(高置換度)の合成:PVA(遊離塩基)250mgおよび脱イオン水28mlを、磁気撹拌を備えた100mlの1つ首丸底フラスコに入れた。溶解したら、pHを、1N HCl約2mlを用いて約12から約5に調整した。4-カルボキシフェニルボロン酸(4-CPBA)770mgおよび変性エタノール5mlを含むスラリー、ならびにEDC-HCl 890mgおよび変性エタノール5mlを含む溶液を個別に作製した。4CPBAおよびEDC溶液を、大部分が溶解するまで、約2分混合した。「4CPBA-EDC」溶液を、ポリマー溶液に約2分にわたって添加した。反応物は、安定化するまで、スケールに応じて約30分から2時間、少量の飽和重炭酸塩溶液を用いてpH5を維持した。反応を、pH5で安定化させながら18時間進行させた。固形物をアセトンから2回沈殿させることによって単離し、脱イオン水中に入れ、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量はオフホワイト色固形物として378mgであった。
【0134】
(実施例15)
PVAn-4CPBA(低置換度)の合成:PVAn(遊離塩基)250mgおよび脱イオン水28mlを、磁気撹拌を備えた100mlの1つ首丸底フラスコに入れた。溶解したら、pHを、1N HCl約2mlを用いて約12から約5に調整した。4-カルボキシフェニルボロン酸(4-CPBA)309mgおよび変性エタノール5mlを含むスラリー、ならびにEDC-HCl 357mgおよび変性エタノール5mlを含む溶液を個別に作製した。4CPBAおよびEDC溶液を、大部分が溶解するまで、約2分混合した。「4CPBA-EDC」溶液を、ポリマー溶液に約2分にわたって添加した。反応物は、安定化するまで、スケールに応じて約30分から2時間、少量の飽和重炭酸塩溶液を用いてpH5を維持した。反応を、pH5で安定化させながら18時間進行させた。固形物をアセトンから2回沈殿させることによって単離し、脱イオン水中に入れ、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量はオフホワイト色固形物として286mgであった。
【0135】
(実施例16)
ポリ(HPMA-co-APBA)、92.5/7.5の合成:2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)500mgおよびジメチルホルムアミド3.14mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)54mgおよびAIBN開始剤5mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約10分間N(g)パージし、次いで反応物をN(g)下、65℃で加熱した。数時間加熱した後、反応によって共重合体が沈殿した。反応混合物を、脱イオン水約3mlを添加して完全に溶解し、過剰なアセトンを用いて共重合体を1回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として475mgであった。
【0136】
(実施例17)
ポリ(HPMA-co-APBA)、85/15の合成:2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)500mgおよびジメチルホルムアミド3.50mlを、磁気撹拌およびN2(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)118mgおよびAIBN開始剤6mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約10分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、65℃で加熱した。数時間加熱した後、反応によって共重合体が沈殿した。反応混合物を、脱イオン水約3mlを添加して完全に溶解した。共重合体を過剰なアセトンを用いて1回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として488mgであった。
【0137】
(実施例18)
ポリ(HPMA-co-APBA)、70/30の合成:2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)500mgおよびジメチルホルムアミド4.45mlを、磁気撹拌およびN2(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)286mgおよびAIBN開始剤8mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約10分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、65℃で加熱した。数時間加熱した後、反応によって共重合体が沈殿した。この材料は水溶性ではなく、水を添加してもポリマーは完全に溶解しない。
【0138】
(実施例19)
ポリ(MAPAn-co-APBA)、92.5/7.5の合成:メタクリルアミド-3-プロピルアミンHCl(MAPAn)508mg、ジメチルホルムアミド3.08mlおよび脱イオン水0.924mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)43mgおよびAIBN開始剤5mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約15分間N(g)パージした。次いで、反応物をN(g)下、65℃で約18時間加熱した。粘性共重合体溶液を過剰なアセトン中で1回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として245mgであった。
【0139】
(実施例20)
ポリ(MAPAn-co-APBA)、85/15の合成:メタクリルアミド-3-プロピルアミンHCl(MAPAn)500mg、ジメチルホルムアミド3.37mlおよび脱イオン水1.01mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)94mgおよびAIBN開始剤6mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約15分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、65℃で約18時間加熱した。粘性共重合体溶液を過剰なアセトン中で1回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として357mgであった。
【0140】
(実施例21)
ポリ(MAPAn-co-APBA)、70/30の合成:メタクリルアミド-3-プロピルアミンHCl(MAPAn)505mg、ジメチルホルムアミド4.13mlおよび脱イオン水1.24mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)229mgおよびAIBN開始剤7mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約15分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、65℃で約18時間加熱した。粘性共重合体溶液を過剰なアセトン中で1回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として400mgであった。
【0141】
(実施例22)
ポリ(AMPS-co-APBA)、92.5/7.5の合成:2-アクリルアミド-2メチルプロパンスルホン酸(AMPS)504mgおよびジメチルホルムアミド3.04mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに添加し、溶解するまで撹拌した。3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)37mgおよびAIBN開始剤5mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約15分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、65℃で約18時間加熱した。粘性共重合体溶液を過剰なアセトン中で1回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として309mgであった。
【0142】
(実施例23)
ポリ(AMPS-co-APBA)、85/15の合成:2-アクリルアミド-2メチルプロパンスルホン酸(AMPS)508mgおよびジメチルホルムアミド3.29mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)81mgおよびAIBN開始剤6mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約15分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、65℃で約18時間加熱した。粘性共重合体溶液を過剰なアセトン中で1回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として255mgであった。
【0143】
(実施例24)
ポリ(AMPS-co-APBA)、70/30の合成:2-アクリルアミド-2メチルプロパンスルホン酸(AMPS)500mgおよびジメチルホルムアミド3.95mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)197mgおよびAIBN開始剤7mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約15分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、65℃で約18時間加熱した。粘性共重合体溶液を過剰なアセトン中で1回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として250mgであった。
【0144】
(実施例25)
ポリ(VI-co-APBA)、80/20の合成:3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)254mgおよびジメチルホルムアミド3.02mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。1-ビニルイミダゾール(VI)482μlおよびAIBN開始剤7mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約15分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、65℃で加熱した。数分間加熱した後、反応によって共重合体が沈殿した。反応混合物を、脱イオン水約12mlを添加し、1N HClを用いてpHを約3.0に調整して完全に溶解した。共重合体を、ロータリーエバポレーションによって大部分の水を最初に除去した後に、過剰のアセトンから2回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として59mgであった。
【0145】
(実施例26)
ポリ(VPy-co-APBA)、80/20の合成:3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)227mgおよびジメチルホルムアミド2.91mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。4-ビニルピリジン(VPy)520μlおよびAIBN開始剤7mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約15分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、70℃で加熱した。数時間加熱した後、反応によって共重合体が沈殿した。反応混合物を、脱イオン水約12mlを添加し、1N HClを用いてpHを約3.0に調整して完全に溶解した。共重合体を、ロータリーエバポレーションによって大部分の水を最初に除去した後に、過剰のアセトンから1回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として670mgであった。
【0146】
(実施例27)
ポリ(APDMAn-co-APBA)、70/30の合成:3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)262mgおよびジメチルホルムアミド3.05mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。アクリルアミドプロピル-3-ジメチルアミン(APDMAn)526μlおよびAIBN開始剤8mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約15分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、65℃で加熱した。数分間加熱した後、反応によって共重合体が沈殿した。反応混合物を、脱イオン水約12mlを添加し、1N HClを用いてpHを約3.0に調整して完全に溶解した。共重合体を、ロータリーエバポレーションによって大部分の水を最初に除去した後に、過剰のアセトンから2回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として154mgであった。
【0147】
(実施例28)
ポリ(APTAC-co-APBA)、70/30の合成:3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)199mgおよびジメチルホルムアミド1.95mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。脱イオン水675μl、75%アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩化物(APTAC)665μlおよびAIBN開始剤7mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約15分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、65℃で加熱した。数分間加熱した後、反応物は、高粘性な半固形物のようになった。反応混合物は、脱イオン水約4mlを添加するだけで完全に溶解した。共重合体を、ロータリーエバポレーションによって大部分の水を最初に除去した後に、過剰なアセトンから1回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として583mgであった。
【0148】
(実施例29)
ポリ(アクリルアミド-co-APBA)、70/30の合成:3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)253mgおよびジメチルホルムアミド2.83mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。アクリルアミド243mgおよびAIBN開始剤6mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約15分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、65℃で加熱した。約18時間加熱した後、粘性反応混合物を過剰なアセトン中で1回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として170mgであった。
【0149】
(実施例30)
ポリ(アクリル酸-co-APBA)、70/30の合成:3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)249mgおよびジメチルホルムアミド2.83mlを、磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。アクリル酸224μlおよびAIBN開始剤5mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約15分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、65℃で加熱した。約18時間加熱した後、粘性反応混合物を過剰なアセトン中で1回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として168mgであった。
【0150】
(実施例31)
ポリ(HEAAm-co-APBA)、80/20の合成:3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)145mgおよびジメチルホルムアミド2.84mlを磁気撹拌およびN(g)入口を備えた30mlのガラスバイアルに入れ、溶解するまで撹拌した。2-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAAm)319μlおよびAIBN開始剤5mgを添加し、溶解するまで撹拌した。コモノマー溶液を約15分間N(g)パージした。次いで反応物をN(g)下、65℃で加熱した。約18時間加熱した後、粘性反応混合物を過剰なアセトン中で1回沈殿させた。固形物を単離し、脱イオン水を用いて溶解し、IPA/ドライアイス凍結し、凍結乾燥した。収量は白色固形物として483mgであった。
【0151】
(実施例32)
CPBAで修飾された(PAAn-HCl)の合成:材料:ポリ(アリルアミン塩酸塩)をニットーボーメディカル、日本(PAAn-HCl、カタログ番号PAA-HCl-3L、50.3%溶液、水中)から得て、入手したままの状態で使用した。材料を1H-NMR、TGA、およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-MALLS)によって定性化した。4-カルボキシフェニルボロン酸をChem-Impex International、Wood Dale、IL(CPBA、カタログ番号28086、99.7%)から得て、入手したままの状態で使用した。材料を1H-NMR、FT-IR、および融点によって定性化した。1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩をChem-Impex International、Wood Dale、IL(EDC-HCl、カタログ番号00050、99.8%)から得て、入手したままの状態で使用した。材料を1H-NMR、FT-IR、および融点によって定性化した。1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物をChem-Impex International、Wood Dale、IL(HOBt、カタログ番号24755、99.8%(odb)、21.3%水)から得て、入手したままの状態で使用した。材料を1H-NMR、およびFT-IRによって定性化した。
【0152】
反応を、5リットル体積のPAAn-HCl 114gを使用して行った。これに基づいて、反応を2.3%のポリマー固形物で行った。反応を室温で行い、その室温は22±3℃であった。熱電対で反応温度をモニタリングすると、反応中はこの範囲外の発熱または温度変動はないことが示された。
【0153】
合成:50.3%PAAn溶液(225.92g、1.215アミン当量)を、磁気撹拌子および脱イオン水(4,333ml)を含む10リットルビーカーに入れた。得られた透明溶液を磁気撹拌し、pH電極を入れた。pHを、5N NaOH溶液を撹拌しながら滴下して添加することによって8.0に調整した。固形の99.7%CPBA粉末(32.35g、0.194mol)を反応混合物に添加し、得られた懸濁液を撹拌した。20分撹拌した後、pHは6.7に低下し、一部の固形CPBAは溶液中に懸濁されたままであった。追加のNaOH溶液を撹拌しながら分けて添加して、CPBA懸濁液を完全に溶解させた。得られた透明溶液のpHは7.5であった。次いで固形の78.7%HOBt水和物粉末(1.67g、0.010mol)を透明反応溶液に添加し、20分撹拌した後にそれが溶解した。塩酸(4N)を反応混合物に添加して、pHを5.5に低下させた。反応溶液は透明なままであった。次いで、脱イオン水100ml中に溶解した固形の99.8%EDC-HCl粉末(41.06g、0.214mol)を、よく撹拌しながら反応混合物にゆっくりと注ぎ入れた。透明反応混合物の最終体積は5リットルであり、pHは5.5~5.7であった。この反応混合物を18時間撹拌した。塩化ナトリウム(125g)を反応混合物に添加し、1N HClを添加して、pHを2.5にした。次いで、反応混合物を、0.2ミクロンPESフィルターデバイスに通して、5リットルのスクリューキャップ瓶に濾過し、2~5℃で保存した。
【0154】
精製:上記で調製した濾過した反応混合物を、2つのCentramate(商標)(Pall Corp.)30kDa MWCO TFFカセットを直列に使用したタンジェンシャルフロー濾過(TFF)で精製した。最初の反応混合物5,000mlを、最初にTFFによって2,500mlの作業体積に濃縮した。次いで、この濃縮溶液を、2.5%(wt/vol)塩化ナトリウムを含有し、濃HClでpH2.5に酸性化した脱イオン水溶液を使用して連続的に補充しながら、TFFによって透析濾過した。TFFは、4倍体積(10リットル)の濾液が収集されるまで継続した。その時点で、TFFを停止し、リザーバー中の作業溶液を、1N NaOHを添加することによってpH7.9にした。次いで、この溶液の脱塩を、6リットルの濾液が収集され、濾液の導電率が100マイクロジーメンス毎センチメートル(uS/cm)になるまで、脱イオン水を補充しながらTFFで行った。精製したポリマー溶液を、デバイスの少量の脱イオン水すすぎ液(50~60ml)とともにTFFデバイスから回収した。収集した透明溶液は重量が2,357gであり、pHが7.5であることが認められた。精製したポリマー溶液を2~5℃で保存した。このポリマー溶液の少量の試料(3×0.5ml)を、重さを量ったバイアルに入れ、凍結乾燥すると、4.91%の固形物含有量が明らかになった。これに基づいて、回収された精製ポリマーの量は116gであった。固形物判定のために凍結乾燥した試料のうちの1つを、DO/DCl中に溶解し、1H-NMRで検討した(図5)。
【0155】
単離:精製したポリマー溶液を、50mlのバイアルのセット(1バイアル当たり溶液20ml)にピペットで移し、棚式凍結乾燥機で凍結乾燥した。バイアルを乾燥窒素下で密閉し、白色固形物として精製ポリマー製品を得た。
II.ムチン混合アッセイ:
【0156】
水溶性ムチン糖タンパク質溶液をある特定の水溶性ポリマーと水溶液中で混合した場合、ポリマーとムチンとの間の複合体形成は、混合物の物理的状態における変化から明白である。その結果、どのポリマーがムチンと複合体化できるかを判定し、単純な等級付けスケールを使用して得られた混合物の外観を分類するためのムチン混合観察アッセイが確立された。ポリマー/ムチン複合体の物理的な見た目は、複合体の粘着性性質に関する有益な洞察を提供し、広範囲のネットワーク特性を有する閉塞性バリアが、そのようなポリマーをin-vivoに経口投薬することによって、粘液とともに腸内で形成され得るかどうかを評価するのに役立つ。
【0157】
例えば、ある特定の場合では、試験ポリマーをムチンと混合すると、最初の2つの溶液と外観が同等の透明溶液が得られる。複合体が形成されていないことは明白である。他の場合では、微粒子材料が認められない、かすんでいるかまたは濁った分散液が形成される場合がある。そのような分散液は、典型的には、凝集またはフィルム形成することなく数日間は安定である。他の場合では、粒子が認められる濁った懸濁液が形成される場合がある。これらの懸濁液は、経時的に(数時間、数日で)沈殿する場合があるが、粒子は一般的に付着性でも粘着性でもなく、これらは混合することによって一般的に再懸濁することができる。他の場合では、ポリマー/ムチン複合体は、混合容器の壁を被覆する一体化したゲルまたはフィルムを形成することになる。強力な粘着性特性を示すそのような複合体は、最も好ましい結果と本発明者らによって考えられ、粘膜表面に閉塞性バリア層を形成することが潜在的に可能な複合体が形成されていることを示す。
【0158】
ムチン混合アッセイの目的は、一連の標準的な条件下で溶解性ムチン糖タンパク質と混合した場合に試験ポリマーが不溶性複合体を形成するかどうかを判定し、得られた混合物の一般的な特性を観察することである。アッセイ結果は:1)透明度記述子の割付、2)物理的状態記述子の割付、3)必要に応じたコメント、写真またはビデオである。
【0159】
ブタ胃3型(MPS-3)からのSigma(カタログ番号1778)ムチンの水溶性画分の単離:ムチン混合アッセイに関するスキームを図1に示す。プロトコールは次のとおりである。MPS-3 1.0gとMilliQ脱イオン水40mlとを50mLのコニカル管中で混合する。管を、回転式カルーセル混合機に取り付けることによって懸濁液を一晩放置した。次いで50mlのコニカル管を、Beckman Avanti遠心分離機で遠心分離した(5,300rpm、60分間)。上澄みを、底部の固形ペレットをかき乱さないように新しい50mlのコニカル管に慎重に注ぎ入れた。次いで、上澄みの遠心分離を繰り返した(Beckman Avanti遠心分離機、5,300rpm、60分間)。上澄みを、重さを量った50mlコニカル管中に再び収集した。ムチン溶液を-80℃で少なくとも2時間凍結した。凍結した試料を、凍結乾燥機に少なくとも3日間入れた。凍結乾燥された生成物を収集し、管を秤量し、%収率を計算し、0.60~0.65gの回収率を予想した。固形物は、冷蔵庫内で2~5℃で保存した。
【0160】
ポリマー/ムチン混合アッセイプロトコール:ムチン混合アッセイに関するスキームを図1に示す。1.0%w/w溶液を、PBS(Gibco 20012-027)を使用してpHを6.0に調整し、各試験ポリマーから作製した。水溶性MPS-3の1.0%w/w溶液を、PBS(Gibco 20012-027)を使用してpHを6.0に調整し、作製した。ムチン溶液はわずかにかすんでいた。MPS-3溶液0.25~0.5mLを、2ドラム(4mL)のバイアルに入れた。等体積の試験ポリマー溶液をバイアルにゆっくりと添加した。バイアルに蓋をし、ゆっくりと回転させて混合し、同時に任意の物理的変化を観察した。混合物の透明度に関する以下の記述子のうちの1つを選択して、得られた混合物を読み取ることができる:透明(わずかにかすんでいるだけ、最初のムチン溶液と同様である);かすんでいる(最初のムチン溶液よりもかすんでいる、それを通して文字列を読み取ることができる);濁っている(透明ではない、それを通して読み取ることはできないが、光は十分に透過する);不透明(牛乳様、透明ではない、光はあまり透過しない)、および該当なし(材料は全体的な相分離を示す)。混合物の物理的状態に関する以下の記述子ののうちの1つを選択して得られた混合物を読み取ることができる:透明;分散液(粒子は認められない);懸濁液(非常に細かい微粒子が観察可能)、沈殿物(大きく不規則な粒子、付着性の場合がある)および相分離(フィルム、ゲルが堆積している、透明なまたはかすんでいる上澄み流体が認められる場合がある)。蓋をしたバイアル中の混合物をおよそ1時間観察して任意の変化を記録した。
【0161】
ムチン混合アッセイの結果:PAAnの化学的修飾(表1)によって、疎水性置換基を付加させると、一部の場合では不溶性の複合体を形成する傾向が高まる場合があることが明らかになった。多くの修飾されたPAAn誘導体が、ムチンと混合した場合に濁った微粒子懸濁液(物理的状態「B」または「C」)を生成した。予想外なことに、本発明者らは、PAAnのフェニルボロン酸置換によって、粘着性および付着性ゲルおよびフィルムの形成が生じ、それが試験バイアルの壁を被覆するのが一貫して認められた(物理的状態「E」)ことを見出した。この挙動は、カルボキシフェニルボロン酸(3-CPBAおよび4-CPBA)を用いたアミド形成化学を使用して、ならびに3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)を用いたマイケル付加の生成物に関して認められた。興味深いことに、PAAn-4-CPBAを、グリシドールを使用してさらに修飾するか、またはグアニジニル化によって修飾した場合、この粘着性ムチン複合体の形成は持続した。
【0162】
【表1】
【0163】
アクリルアミドフェニル-3-ボロン酸(APBA)といくつかの水溶性アクリルアミドモノマーとの共重合体は、ムチン混合アッセイで試験を行った(表2)。中性、アニオン性およびカチオン性の例を試験することができるように、APBA共重合体の電荷は多様であった。アニオン性コモノマーに関しては、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)およびアクリル酸(AA)を使用した。中性モノマーに関しては、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAm)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAm)およびヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)を使用した。カチオン性共重合体に関しては、メタクリルアミド-3-プロピルアミン(MAPAn)、アクリルアミド-3-プロピル-ジメチルアミン(APDMAn)、アクリルアミド-3-プロピルトリメチルアンモニウム塩化物(APTAC)、1-ビニル-イミダゾール(1-VI)、および4-ビニルピリジン(4-VP)を使用した。
【0164】
表2は、ボロン酸含有共重合体に関しては、ボロン酸基およびカチオン性基を組み合わせて存在させた結果として、カチオン性電荷を有するポリマーのみがムチン複合体を形成し、いくつかは明白な広範囲のネットワーク特性を有する複合体を生成したことを示す。
【0165】
【表2】
【0166】
水溶液中のムチンとの複合体形成の一次評価に関するアッセイは、ムチン相互作用薬剤としての一連の合成ポリマーをスクリーニングするために利用されている。アッセイ結果は、透明度の記述子の割付および物理的状態の記述子の割付である。アッセイは、ムチンと完全に混和性である化合物と、分散液または粒子懸濁液を形成するものとを区別し、広範囲のネットワーク特性を有する複合体を形成することができる化合物を明確に同定することができる。
【0167】
ムチンの粘着性塊への完全な沈殿(相分離)は、フェニルボロン酸基(4-CPBAまたは3-CPBA)を有するある特定のポリカチオン誘導体のみで観察された。4-CPBAとポリ(アリルアミン)とのアミドは特に頑強であり、CPBA置換のレベルが5mol%まで減少した場合でさえ、相分離したムチン/ポリマー複合体が実証された。PAAn-4-CPBAを含む粘着性ムチン複合体の形成はpH依存性であり、pH=2で阻害され、pHが増加するとともに頑強性が構築されるように思われた。補完的な結果が、3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)の共重合体で認められた。APBAの、ある特定のカチオン性共重合体のみが、相分離した粘着性ムチン複合体を形成することができることが見出された。
III.遠心分離アッセイ:
【0168】
遠心分離アッセイに関するスキームを図2に示す。ポリマー-ムチン複合体が遠心分離フィルターデバイスのカップ内で形成され、標準的な一連の条件下で遠心分離が行われた場合、流体混合物は、遠心力の下でフィルター膜を通過する。しかし、ポリマー-ムチン複合体が溶液様ではない物理的性質を表した場合、この濾過プロセスは阻害されることがある。これらの場合で、混合物の大部分は、フィルターカップ内に保持される場合がある。保持された材料の画分は重量測定法で測定することができ、ポリマー-ムチン複合体の物理的性質と相関し得る。
【0169】
ムチンまたはポリマーのみの溶液を完全に濾過することができる一連の実験条件を定義することができる。しかし、ムチンおよびポリマー溶液がフィルターカップ内で一緒に混合されて複合体を形成した場合、遠心分離濾過は、ポリマー-ムチン複合体の物理的性質に応じてさまざまな程度で阻害される場合がある。本発明者らは、一部の場合で、ポリマー-ムチン複合体の濁った分散液が、フィルターを完全に通過する場合があることを見出した。対照的に、ゲル様または他の複雑な形態を有するポリマー-ムチン複合体は、フィルターカップ内に強力に保持されることがある。材料は、ポリマー/ムチン複合体が付着性のゲル状のまたは他の非溶液の物理的性質を表した場合のみフィルターカップ内に保持される。
【0170】
本発明者らは、この単純なアッセイは、流動性を維持し、溶液中に十分に分散したままのポリマー-ムチン複合体を、粘弾性の物理的性質および広範囲のネットワーク構造を示すものと区別することができると考える。濾過に対するこの抵抗性は、粘液を閉塞性バリア材料に濃縮するポリマーの能力と正の相関があり得ることが提唱される。
【0171】
遠心分離アッセイの目的は、遠心分離フィルターデバイスのカップ内で試験ポリマーと溶解性ムチン糖タンパク質とを混合し、一連の標準的な条件下で遠心分離した後にフィルターカップ内に保持された材料の質量を定量化することである。アッセイ結果は、フィルターカップ内に保持された画分である(保持された画分、または%R)。
【0172】
遠心分離フィルターアッセイプロトコール:PBS(Gibco 20012-027)を使用した各試験ポリマーの1.0%w/w溶液を作製し、pHを6.0にした。PBS(Gibco 20012-027)を使用して水溶性MPS-3の1.0%w/w溶液を作製し、pHを6.0にした。ムチン溶液はわずかにかすんでいた。全ての溶液のpHを、1M NaOHおよび1M HClを用いて6に調整した。COSTAR、Spin-X遠心分離管フィルター、0.45μm酢酸セルロース、2ml管、非滅菌(Corning Inc.)を入手した。各遠心分離フィルター管にラベルを付け、フィルターカップを除いた各管の質量を記録した。これは、濾過前の管の風袋重量であった。ムチン溶液75μLを各フィルターカップに入れ、フィルターが完全にコーティングされていることを確実にした。試験ポリマー溶液75μLをフィルターカップに入れた。各ポリマーならびにムチン溶液75μLおよびPBS75μLを含み、pH=6.0に調整したブランクに関して、所望の反復数(典型的には、n=4)の反復を行った。全ての遠心分離カップには溶液150μLが含有されており、重量は150mgであると想定される。全ての管をincubating mini shakerに300rpm、37℃で30分間入れた。管をBeckman Microfuge-R遠心分離機(または同様の機器)に入れ、6000×重力、21℃で12分間遠心分離した。管を収集し、フィルターカップを外した後に慎重に秤量した。これは、濾過後の管の重量であった。管に濾過された流体の重量を、濾過後の管の重量から濾過前の管の重量を差し引くことによって計算した。カップ内に保持された材料の画分(保持された画分、またはfR)を、ポリマー-ムチン混合物(0.150g)の合計重量から濾液の重量を差し引き、0.150で割ることによって計算した。「保持された画分」エンドポイントに関する平均値、標準偏差、および反復数を計算することができる。
【0173】
ポリカチオン、例えばポリ(ジアリルアミン)(PDAAn)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ(メタクリルアミドプロピルアミン)(PMAPAn)およびポリ(アリルアミン)(PAAn)を化学的に修飾するとアミド誘導体が生成され、一部の場合では、濾過に対するそれらの抵抗性によって認められるように、広範囲のネットワーク構造特性を有する、ムチンとの不溶性複合体を形成する傾向が強く示された(表3)。この結果は、これらのポリマーをムチンと溶液中で混合した場合に生じた全体的な相分離の観察結果と一致する。一般的に、遠心分離アッセイにおいて大量の保持された材料をもたらすポリマーは、未修飾の親ポリカチオンによって形成された濁った分散液または懸濁液から視覚的に区別することができる相分離した沈殿物を形成した。特に顕著なものは、4-カルボキシフェニルボロン酸のアミドであり、一貫して良好に機能した(fRは0.42から0.70)。
【0174】
【表3】
【0175】
遠心分離アッセイにおける共重合体の評価:単純な市販されている重合性フェニルボロン酸は、3-アクリルアミドフェニルボロン酸(APBA)である。APBA自体は水溶性ではなく、そのホモポリマーも水溶性ではない。アクリルアミドモノマーを含むAPBA共重合体を、粘液相互作用剤としてのその潜在力に関して評価した(図3)。APBA共重合体は、中性(2-ヒドロキシプロピル-メタクリルアミド、HPMA)、アニオン性(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、AMPS)、およびカチオン性((3-メタクリルアミド)プロピルアミン、MAPAn)コモノマーを用いて調製した。この一連の共重合体の範囲内で、APBAのモル比を7.5%から15%、30%に増加させた。
【0176】
最も高いAPBA含有量を有する中性共重合体を除いて、全ての共重合体が溶解性であることが認められた。1wt%のPBS(pH=6)中でムチンと混合した場合、中性およびアニオン性共重合体は、複合体形成の徴候を伴わない透明溶液をもたらした。対照的に、カチオン性MAPAn共重合体は、7.5%および15%APBA組成物に関しては濁った分散液をもたらした。30%APBA共重合体は、全体的な相分離および白色付着性沈殿物を生成した。図3および表4は、この一連の共重合体に関する遠心分離アッセイ評価の結果を示す。
【0177】
【表4】
【0178】
4つの追加のカチオン性共重合体を、APBAを用いて調製し、遠心分離アッセイで試験を行った。これらは、(3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアミン(APDMAn)、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム塩化物(APTAC)、4-ビニルピリジン(4-VPy)および1-ビニルイミダゾール(1-VI)を含んでいた。これらの4つの材料およびカチオン性((3-メタクリルアミド)プロピルアミン、MAPAn)共重合体に関する遠心分離アッセイの結果を図4に示す。
【0179】
APBAの全てのカチオン性共重合体に関しては、ムチン複合体化によって、遠心分離アッセイにおいて顕著に保持された材料が得られた。APBAを含まないカチオン性ホモポリマーは、アッセイにおいてスコアが高くなかったことも一貫して観察された。表3の修飾ポリアミンと同様に、遠心分離アッセイで得られた正の結果(一般的にfR>0.4)は、ポリマーを希釈溶液中でムチンと混合した場合の全体的な相分離の観察結果と一致した。
IV.多粒子追跡(MPT)アッセイ:
【0180】
リアルタイム多粒子追跡(rtMPT)は、胃腸粘液を介した拡散を測定するための強力な方法である。rtMPTは十分に確立された技術であり、これはいくつかの薬物および遺伝子担体輸送研究において利用されている。rtMPTでは、ビデオ顕微鏡検査を使用して、高時空間分解と同時に、数百個の個々のポリスチレンナノ粒子の微視的運動を追跡する。個々の粒子とアンサンブル粒子の両方のデータを分析すると、粒子-環境相互作用およびバルク、ならびにマイクロ輸送特性に関する重要な洞察が明らかになる。定量的および定性的情報、例えば、拡散係数、粘弾性、孔径、速度、方向性、および輸送様式は、粒子の軌道から判定することができる。
【0181】
本発明者らは、rtMPTを使用した新鮮ブタ腸粘液のバリア特性に対する本発明の粘液結合ポリマーの効果を研究した。PEG化表面を有する直径200nmの蛍光性ポリスチレンナノスフェアを、モデル拡散プローブとして使用した。表面をPEG化すると、表面電荷がなく、粘液またはポリマー試料との顕著な化学的相互作用がない容易に拡散可能な粒子が得られる。これらの「ステルス」粒子の拡散を、天然のブタ小腸粘液において研究した。粒子の軌道を使用して、時間平均二乗平均変位(MSD)を計算し、その後これを使用して、時間依存拡散係数を判定し、個々の粒子輸送様式を特徴付けた。
【0182】
多粒子追跡アッセイプロトコール:腸の粘液収集:現地の食肉処理場(Research 87 Inc.、Boylston MA)で、天然のブタ小腸粘液を採取し、冷水ですすいで、バルク材料を除去した。粘液層を、金属スパチュラを使用して徐々にこすり落とし、次いでマイクロ遠心分離管中に-80℃で保存した。凍結粘液は、室温で30分間解凍してから使用した。
【0183】
ナノ粒子調製物および特性評価:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC、Sigma)架橋化学物質を使用して、2000分子量(MW)のアミン末端PEG(PEG-NH4、Laysan Bio,Inc.)をカルボキシル修飾粒子(FluoSpheres(登録商標)、Life Technologies)に共有結合させた。簡潔には、カルボキシル修飾粒子を、50mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES緩衝剤、pH6.5、Sigma)で希釈し、次いでPEG-NH4 20mgおよびEDC 10mgを粒子溶液に添加し、室温で2時間混合した。反応をクエンチするために、100mMグリシン(Sigma)を添加し、30分間混合した。粒子溶液を、Slide-A-Lyzer(登録商標)Mini Dialysis Devices、10kDaカットオフ(ThermoFisher Scientific)を使用して一晩透析した。
【0184】
ナノ粒子および粘液試料の調製:PEG表面官能化を伴う200nmの蛍光性粒子の輸送特性を、多粒子追跡技術を使用して調査した。粒子懸濁液を調製するために、1%ポリマー溶液または対照としての水の存在下で粒子を希釈して、最終濃度を0.0025%wt/volとした。新鮮なブタ腸粘液(150μL)をLab-Tek(登録商標)Chamber Slide(商標)(Nunc(商標))に添加した。1%ポリマー溶液または水(対照)中の粒子懸濁液(7.5μL、PEG修飾粒子)をボルテックスし、粘液表面に最小限の摂動で滴下して添加した。試料を、暗い加湿されたチャンバー内で室温で2時間インキュベートしてからイメージングを行った。
【0185】
多粒子追跡:粒子ビデオを、Olympus IX51倒立顕微鏡に取り付けられた、X-Cite 120蛍光照明システムおよびOlympus DP70デジタルカラーカメラを使用して得た。簡潔には、20秒の軌跡ビデオを、1秒当たり30フレームのフレーム速度で記録した。粒子の軌道を、Northeastern University(Boston、MA)のProf.Rebecca Carrierの研究グループで以前に開発されたカスタムMATLAB(登録商標)ソフトウェアを使用して分析して、二乗平均変位および有効拡散係数(Deff)を計算した。実験は、公開されている文献[Lock, J. Y., Carlson, T. L., Wang, C.-M., Chen, A. & Carrier, R. L. Acute Exposure to Commonly Ingested Emulsifiers Alters Intestinal Mucus Structure and Transport Properties. Sci. Rep. 8, 10008 (2018).]に記載されている十分に確立されたプロトコールに従って行った。
【0186】
4-カルボキシフェニルボロン酸(4-CPBA)で修飾された、ポリアリルアミン(PAAn)およびポリ(メタクリルアミドプロピルアミン)(PMAPAn)のrtMPTアッセイにおける試験を、適切な対照および比較化合物とともに行った(表5)。
【0187】
リアルタイム多粒子追跡アッセイの結果:中性粘膜付着性のポリマーであるポリ(ビニルピロリドン)を対照として使用した。未修飾ポリ(アリルアミン)に関する相対的なDeff値は、同日の対照の23%(1/4.4の減少)であった。グリシドールで修飾されたポリ(アリルアミン)に関して、同様の結果が認められた(Deffにおいて、同日の対照の27%、1/3.8の減少)。カルボキシフェニル-4-ボロン酸で修飾されたポリ(アリルアミン)に関しては、さらに低い拡散係数が得られた(Deffにおいて、同日の対照の9%、または1/11の減少)。
【0188】
ポリ(メタクリルアミドプロピルアミン)(PMAPAn)に関しては、未修飾ポリカチオンは、同日の対照の17%(1/6の減少)のDeff値を示した。比較すると、カルボキシフェニル-4-ボロン酸修飾ポリマーは、同日の対照のわずか1%のDeff値(Deffにおいて1/100の減少)を示した。
【0189】
【表5】
【0190】
V.慢性ラットの研究:慢性ラットの研究を、4-カルボキシフェニルボロン酸(CPBA)で修飾されたポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAAn-HCl)の60日の毎日の投薬に起因する代謝改善を調べるために行った。
【0191】
慢性GK齧歯動物の研究を、実施例32のポリ(アリルアミン)誘導体を使用して、Goto-Kakazaki(GK)ラットにおいて8週間にわたって毎日投与することによって行った。動物を少なくとも1週間馴化させ、12時間の明暗サイクルで19℃~22℃および40%~60%の湿度で飼育した。研究の開始時に、ラットを2つの群:0.9%生理食塩水が与えられる対照群(n=7)、および生理食塩水中に溶解したポリマー(80mg/ml)が与えられるポリマー処置群(n=7)に無作為に割り付けた。8週の研究期間全体にわたって、対照および処置溶液を、経口経管栄養を介した1.5mLのボーラスで、1日1回経口経管栄養によって投与した。ラットは、午後2:00~5:00で毎日絶食させ、水は自由に摂取させた。経管栄養の投薬は、1日1回午後6:00に行った。
【0192】
代謝試験は、8週の研究全体にわたって数回行った。3つのカテゴリーの試験:(1)研究8日目(図6A~6B)、30日目(図7A~7B)、39日目(図8A~8B)、および52日目(図11A~11B)に経口グルコース耐性試験(oGTT)、(2)研究46日目(図10A~10B)に混合餌耐性試験(mmTT)、ならびに(3)研究42日目(図9)および55日目(図12)にインスリン耐性試験(ITT)を使用した。
【0193】
研究の主要評価項目は、各試験日の血中グルコース曲線下増加面積における減少であり、これを、各時点においておよび全体的に有意な値に関して互いに比較した。
【0194】
研究の副次評価項目には、体重増加プロファイルおよびインスリン抵抗性の恒常性モデル評価(HOMA-IR)が含まれていた(図13および図14)。
【0195】
計画したoGTTまたはmmTTの前夜に、全てのラットを、ハンギングケージ内で一晩、12~16時間絶食させ、水は自由に摂取させた。絶食後の研究の朝に、ラットの尾に切れ目を入れて、血中グルコース測定を可能にし、全ての動物に関してベースライン血中グルコースを測定した。次いで試験物品の経口経管栄養を投与した。1時間後、40%グルコース溶液(2.0g/kg体重)の経口経管栄養を投与した。次いで、グルコースを投与してから0、30、60、90、120分に、必要に応じて180、210、および240分に、血中グルコース測定値を各動物から得た。各時点における各群からの血中グルコース値を計算し、プロットしてoGTT曲線をプロファイルし、対照と処置群との間で比較した。
【0196】
ITTの場合、研究のための準備は、絶食を行わず、インスリンを0.75U/kgラットで腹腔内注射した(経口で投薬されたグルコースの代わりに)という点において異なっていた。耐性試験研究の残りの部分は、2時間にわたって尾から採取する血中グルコース測定に記載されているとおりに行った。
【0197】
CPBAで修飾されたPAAn-HClの1日1回の慢性投与は、この十分に検証されたGKラットモデルにおいて血糖ホメオスタシスの頑強で統計的に有意な効果が実証された。一元ANOVA、続いて多重比較を用いた各耐性試験に関するデータを、平均±SEMとして示す。有意性を:
p<0.05、**p<0.005、***p<0.001、および****p<0.0001として示す。
【0198】
慢性GK齧歯動物研究によって、実施例32のポリ(アリルアミン)誘導体の8週間にわたる有効性および忍容性が実証される(図16A~16Cおよび図17A~17C)。
【0199】
グルコースホメオスタシスに対する経時的なポリ(アリルアミン)誘導体の効果は有意に強化された。これは、慢性十二指腸を除去することによって、改善された全身性代謝環境に対する代謝リセットが生じるという所見と一致する。また、空腹時血糖に対する効果は、慢性的なポリマー処置によって(ITTの結果に基づく)、全身性グルコースホメオスタシスにおける持続的な変化が刺激され、これは肝性グルコース産生の抑制を介したと思われることを示唆する。しかし、異なる空腹時血糖にもかかわらず、ITT曲線は、正常な逆調節性応答が維持されることを示唆する。要するに、これらのデータは、ポリ(アリルアミン)誘導体を用いた慢性的な処置は、グルコース耐性における大幅な強化を刺激し、これは、インスリン作用における全身性の強化とは無関係と思われるが、グルコース刺激インスリン分泌の強化および肝性グルコース産出の抑制を含み得ることを示唆する。
【0200】
研究をさらに継続した場合、処置群におけるインスリン抵抗性の継続的な改善および体重のさらなる減少が認められるであろうと仮定する。GK-ラットは痩せている糖尿病の表現型であるため、本発明者らの慢性的な研究において観察された6%の体重減少は、有意な所見である。この体重減少の規模は、同様の実験条件下でGK-ラットモデルにおけるSGLT2阻害剤で観察されたものと同等である(Takasu T, et al, Biological and Pharmaceutical Bulletin, 40(5), pp.675-680, 2017)。興味深いことに、この同じSGLT2阻害剤は、肥満ラットモデルにおいて合計で約15%の体重減少をもたらした(Yokono M, et al, European Journal of Pharmacology, 727, pp.66-74, 2014)。対照とポリ(アリルアミン)誘導体を用いた処置群との間の餌摂取量に差が認められなかったことに留意することも重要である(図15)。これは、糖尿に起因して餌摂取量を増加させるSGLT2阻害剤と非常に対照的である。
【0201】
本発明は、特定の好ましい実施形態を参照しながら特に示し、記載してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく形態および詳細におけるさまざまな変更がその中で行われてもよいことは当業者によって理解されるべきである。
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