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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】リガンドを含むガス充填微小胞
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/04 20060101AFI20240816BHJP
   C12Q 1/24 20060101ALI20240816BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B01J13/04
C12Q1/24
C12Q1/02
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021534268
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2019086434
(87)【国際公開番号】W WO2020127816
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】18215695.0
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519046281
【氏名又は名称】ブラッコ・スイス・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ブッサ フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シェルカウイ サミール
(72)【発明者】
【氏名】ラザラス デイヴィッド
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-505179(JP,A)
【文献】特表2010-502671(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0219636(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/04
C12Q 1/02
A61K 9/00
A61K 47/00
A61K 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化エンベロープを有する、生理的に許容できるガスを含んでいるガス充填微小胞の懸濁液であって、
前記エンベロープは、
a)リン脂質
b)反応性部分を含んでいる、1モル%~8モル%の第1のペグ化リン脂質であって、前記第1のペグ化リン脂質の少なくとも一部は前記反応性部分を介してリガンドに結合されている、第1のペグ化リン脂質;および
c)反応性部分を含まない、1モル%~12モル%の第2のペグ化リン脂質;
を含み、
前記懸濁液は、エンベロープ内の前記リガンドを含んでいるペグ化リン脂質のモル量に対して40モル%未満の前記リガンドを、フリー形態で、または前記ペグ化リン脂質に結合して含む、
懸濁液。
【請求項2】
請求項1に記載の懸濁液であって、
33モル%未満の前記リガンドを含む、
懸濁液。
【請求項3】
請求項1または2に記載の懸濁液であって、
リガンドを含んでいる第1のペグ化リン脂質の部分は、安定化エンベロープにおいて0.03~0.75%のモル量で存在する、
懸濁液。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の懸濁液であって、
リガンドに結合していない第1のペグ化リン脂質の部分は、前記エンベロープにおいて0.5%~7.5%のモルで存在する、
懸濁液。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の懸濁液であって、
前記第1または前記第2のペグ化リン脂質は、1000~8000g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールに共有結合したリン脂質である、
懸濁液。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の懸濁液であって、
前記リガンドは、アビジン、ニュートラアビジンおよびストレプトアビジンからなる群より選択される、
懸濁液。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の懸濁液であって、
前記リガンドは、エンベロープの表面上の密度が少なくとも8000分子/μmである、
懸濁液。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の懸濁液であって、
前記第1および前記第2のペグ化リン脂質は、2000g/mol +/- 5%の分子量を有する、
懸濁液。
【請求項9】
請求項8に記載の懸濁液であって、
前記エンベロープは、1モル%~5モル%の前記第1のペグ化リン脂質および5%~10%の前記第2のペグ化リン脂質を含む、
懸濁液。
【請求項10】
請求項9に記載の懸濁液であって、
前記第1および前記第2のペグ化リン脂質の間の相対モル比が1:1~1:8である、
懸濁液。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の懸濁液であって、
リン脂質のモル量が60%~95%である、
懸濁液。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の懸濁液であって、
脂質をさらに含む、
懸濁液。
【請求項13】
請求項12に記載の懸濁液であって、
前記脂質が脂肪酸である、
懸濁液。
【請求項14】
請求項12または13に記載の懸濁液であって、
脂肪酸のモル量が10%~30%である、
懸濁液。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の懸濁液であって、
前記第1または第2のペグ化リン脂質が、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PE-PEG)である、
懸濁液。
【請求項16】
請求項15に記載の懸濁液であって、
前記PE-PEGが、DMPE-PEG、DPPE-PEGおよびDSPE-PEGの中から選択される、
懸濁液。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の懸濁液であって、
前記リン脂質が、DMPC、DAPC、DSPC、DPPC、DMPA、DPPA、DSPA、DMPG、DPPG、DSPG、DMPS、DPPSおよびDSPSから選択される、
懸濁液。
【請求項18】
請求項1から17のいずれかに記載の懸濁液であって、
PEG=MW mol%+MW mol%であり、
ここで:
-MWおよびmol%はそれぞれ、反応性部分を含んでいる第1のペグ化リン脂質内に含まれるPEG鎖の分子量およびモル%を指し;
-MWおよびmol%はそれぞれ、第2のペグ化リン脂質内に含まれるPEG鎖の分子量およびモル%を指し、
ここでNPEGは、90よりも高い、
懸濁液。
【請求項19】
請求項18に記載の懸濁液であって、
MWおよびMWが両方とも2000 +/- 5%である、
懸濁液。
【請求項20】
請求項19に記載の懸濁液であって、
mol%が0.01~0.05であり、mol%が0.03~0.12である、
懸濁液。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに定義される懸濁液の使用であって、
細胞分離のための、
使用。
【請求項22】
請求項1から20のいずれかに定義されるガス充填微小胞の懸濁液の調製のための凍結乾燥された前駆体の製造方法であって、
-リン脂質と、1モル%~8モル%の反応性部分を含んでいる第1のペグ化リン脂質と、1モル%~12モル%の反応性部分を含まない第2のペグ化リン脂質とを含む、水性エマルションを調製するステップ;
-前記反応性部分と反応することが可能な官能化リガンドを前記エマルションに添加するステップ;ここで、前記官能化リガンドは、前記反応性部分を有するペグ化リン脂質の量に対して1:4~1:40のモル比で添加される;
-前記ペグ化リン脂質を前記リガンドとカップリングさせるステップ;
-前記エマルションを凍結乾燥させてフリーズドライ残渣を得るステップ、
を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞または生物学的材料を、例えば浮力によって分離する方法において有利に用いられ得る、リガンドを含んでいるガス充填微小胞の新規の製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の複雑な混合物(例えば、血液または血漿のような生理学的流体中)から所望の細胞を単離する方法は、複数の生物医学分野において有用である。遺伝子療法の分野における1つの適用において、細胞が患者から採取されて、所望の遺伝子を発現するように処理されて、元の患者へ投与される。別のあり得る適用は、循環している腫瘍細胞(CTC)または循環しているバイオマーカー(例えば液体バイオプシー)の分離に関するものである。
【0003】
抗体または他の分子は、後の単離のために所望の細胞を標識するのに用いられ得る。抗体は、磁性微粒子またはナノ粒子にコンジュゲートされ得る。不均質な細胞混合物と混合する際、磁性粒子が標的細胞に結合され、その結果、磁場を用いて分離される。この概念は、様々な市販製品において実行されている(Dynabeads、磁気活性化細胞選別「MACS(登録商標)」)。主な欠点は、標的化細胞からビーズを除去するのが困難なことである。
【0004】
最近になって、浮力活性化細胞選別(BACS)のための試薬としてガスが封入された微小胞または微粒子を用いる、浮力に基づく方法が記載された(例えばUS2015/0219636を参照)。この場合において、微小胞/細胞相互作用は、抗体または他の分子を用いても行なわれた。US2015/0219636に記載されるように、微小胞の結合効率は、リガンド密度にともなって増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本出願人が観察したように、高いリガンド密度は、微小胞の凝集(または微小胞懸濁液の中間前駆体製剤の不安定化)を促進させ得る。
【0006】
リン脂質、および、ペグ化リン脂質と、リガンドを含んでいるペグ化リン脂質との適切な混合物を含む製剤が、特に細胞または生物学的材料を分離する方法での使用に関して、特に有利であり得ることが見いだされた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、安定化エンベロープを有する、生理的に許容できるガスを含むガス充填微小胞の懸濁液に関し、
前記エンベロープは、
a)リン脂質
b)反応性部分を含んでいる、1モル%~8モル%の第1のペグ化リン脂質(前記第1のペグ化リン脂質の少なくとも一部は、前記反応性部分を介してリガンドに結合される);および
c)1モル%~12モル%の第2のペグ化リン脂質;
を含み、
前記懸濁液は、エンベロープ内の前記リガンドを含んでいるペグ化リン脂質のモル量に対して40モル%未満の前記リガンドを、フリー形態で、または前記ペグ化リン脂質に結合して含む。
【0008】
好ましくは、前記リガンドは、ビオチンに選択的に結合することが可能である。より好ましくは、アビジン、ニュートラアビジンおよびストレプトアビジンからなる群より選択され、好ましくはストレプトアビジンである。リガンドは、ペグ化リン脂質に好ましくは共有結合される。
【0009】
好ましくは、安定化エンベロープと関連しないリガンドの量は、33%未満、より好ましくは25%未満、さらにより好ましくは20%未満である。
【0010】
リガンドを含んでいる第1のペグ化リン脂質の部分は、好ましくは、安定化エンベロープにおいて、0.03~0.75%、好ましくは0.05%~0.7%、より好ましくは0.08~0.6%のモル量で存在する。
【0011】
前記第1および第2のペグ化リン脂質(「PE-PEG」)は、同一または異なってよく、1000~8000g/mol、好ましくは2000~5000g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)に共有結合されたリン脂質である。前記第1のPE-PEGにおけるPEGの平均分子量(AMW)は、第2のPE-PEGにおけるPEGのAMWに対して同等、より高い、またはより低くてよい。好ましくは、第1のPE-PEGにおけるPEGは、第2のPE-PEGにおけるPEGのAMWと同等またはより高いAMWを有する。
【0012】
一実施態様では、第1および第2のPE-PEGにおけるPEGは約2000g/molの平均分子量を有し(PE-PEG2000);好ましくは、前記第2のPE-PEGのモル量は、少なくとも3.5%、より好ましくは少なくとも5%、さらにより好ましくは少なくとも6%である。
【0013】
別の実施態様では、第1および第2のPE-PEGにおけるPEGは、約5000g/molの平均分子量を有する(PE-PEG5000)。
【0014】
さらなる一実施態様では、第1のPE-PEGにおけるPEGは約2000g/molの平均分子量を有し(PE-PEG2000)、第2のPE-PEGにおけるPEGは約5000g/molの平均分子量を有する(PE-PEG5000)。
【0015】
さらなる一実施態様では、第1のPE-PEGにおけるPEGは約5000g/molの平均分子量を有し(PE-PEG5000)、第2のPE-PEGにおけるPEGは約2000g/molの平均分子量を有する(PE-PEG2000)。
【0016】
好ましい実施態様では、本発明のガス充填微小胞は、その表面上に、少なくとも8000分子/μm、好ましくは少なくとも12000分子/μm、より好ましくは少なくとも15000分子/μm、さらにより好ましくは少なくとも18000分子/μm、例えば50000分子/μmまでのリガンド密度を有利に有する。
【0017】
本発明の別態様は、上記に定義されたガス充填微小胞の懸濁液の調製のために、凍結乾燥された前駆体を製造する方法に関し、
-所定のモル量のリン脂質と、反応性部分を含んでいる所定のモル量のペグ化リン脂質とを含む、水性有機エマルションを調製するステップ;
-あるモル量の官能化リガンドを前記エマルションに添加するステップ(前記モル量は、前記ペグ化リン脂質のモル量よりも少ない);
-前記ペグ化リン脂質を前記リガンドとカップリングさせるステップ;
-前記エマルションを凍結乾燥させるステップ、を含む。
【0018】
本発明のさらなる一態様は、細胞を分離する方法における、上記のガス充填微小胞の懸濁液の使用を含む。好ましくは、前記方法は、前記微小胞を生理学的液体中の所望の細胞に結合させるステップ、および、浮力によって前記細胞を分離するステップを含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述のように、本発明の一態様は、安定化エンベロープを有する、生理的に許容できるガスを含むガス充填微小胞の懸濁液に関する。安定化エンベロープは、リン脂質、ならびに、リガンドを含んでいる所定の量の第1のペグ化リン脂質、および第2のペグ化リン脂質を含む。懸濁液は、前記リガンドを含んでいるペグ化リン脂質のモル量に対して40モル%未満の量の、安定化エンベロープと関連していない前記リガンドを、フリー形態で、または前記ペグ化リン脂質に結合して含むことによってさらに特徴付けられる。
【0020】
リン脂質
本明細書において用いられる用語「リン脂質(単数または複数)」は、リン酸残基と1個または好ましくは2個の(等しい、または異なる)脂肪酸残基とグリセロールのエステルを含み、ここで、リン酸残基は、続いて、例えば、コリン(ホスファチジルコリン-PC)、セリン(ホスファチジルセリン-PS)、グリセロール(ホスファチジルグリセロール-PG)、エタノールアミン(ホスファチジルエタノールアミン-PE)、イノシトール(ホスファチジルイノシトール)などの親水性基に結合される。ただ1つの脂肪酸残基とリン脂質のエステルは一般に、当該分野において、リン脂質の「リゾ」形態または「リゾリン脂質」と呼ばれる。リン脂質内に存在する脂肪酸残基は一般に、典型的に12~24個の炭素原子、好ましくは14~22個を含んでいる長鎖脂肪酸であり;脂肪族鎖は、1つまたは複数の不飽和を含んでよく、または、好ましくは完全に飽和である。リン脂質に含まれる適切な脂肪酸の例は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸である。好ましくは、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびアラキジン酸のような飽和脂肪酸が用いられる。
【0021】
本明細書において用いられる用語「リン脂質」は、天然起源、半合成または合成的に調製される生成物を含み、それらは単独または混合物として用いられ得る。
【0022】
天然起源リン脂質の例は、天然レシチン類(ホスファチジルコリン(PC)誘導体)、例えば、典型的に、大豆または卵黄レシチン類である。
【0023】
半合成リン脂質の例は、天然起源レシチン類の部分的または完全に水素化された誘導体である。好ましいリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)またはスフィンゴミエリンの脂肪酸ジエステルである。
【0024】
好ましいリン脂質の例は、例えば、ジラウロイル-ホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイル-ホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイル-ホスファチジルコリン(DPPC)、ジアラキドイル-ホスファチジルコリン(DAPC)、ジステアロイル-ホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイル-ホスファチジルコリン(DOPC)、ジペンタデカノイル-ホスファチジルコリン(DPDPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン(MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイル-ホスファチジルコリン(PMPC)、1-パルミトイル-2-ステアロイル-ホスファチジルコリン(PSPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン(SPPC)、1-パルミトイル-2-オレイルホスファチジルコリン(POPC)、1-オレイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン(OPPC)、ジラウロイル-ホスファチジルグリセロール(DLPG)およびそのアルカリ金属塩類、ジアラキドイルホスファチジル-グリセロール(DAPG)およびそのアルカリ金属塩類、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)およびそのアルカリ金属塩類、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)およびそのアルカリ金属塩類、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)およびそのアルカリ金属塩類、ジオレオイル-ホスファチジルグリセロール(DOPG)およびそのアルカリ金属塩類、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)およびそのアルカリ金属塩類、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)およびそのアルカリ金属塩類、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジアラキドイルホスファチジン酸(DAPA)およびそのアルカリ金属塩類、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、ジオレイルホスファチジル-エタノールアミン(DOPE)、ジアラキドイルホスファチジル-エタノールアミン(DAPE)、ジリノレイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジアラキドイルホスファチジルセリン(DAPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(DPSP)、およびジステアロイルスフィンゴミエリン(DSSP)、ジラウロイル-ホスファチジルイノシトール(DLPI)、ジアラキドイルホスファチジルイノシトール(DAPI)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジオレオイル-ホスファチジルイノシトール(DOPI)である。
【0025】
特に好ましいリン脂質は、DMPC、DAPC、DSPC、DPPC、DMPA、DPPA、DSPA、DMPG、DPPG、DSPG、DMPS、DPPSおよびDSPSである。最も好ましいものは、DMPC、DAPC、DSPCおよびDPPCである。
【0026】
例えば、DSPS、DPPS、DSPA、DPPA、DSPGおよびDPPGと、DPPEおよび/またはDSPE、DPPC、DSPCおよび/またはDAPCとの混合物のような、リン脂質の混合物を用いてもよい。
【0027】
ペグ化リン脂質
本明細書において用いられる表現「ペグ化リン脂質(単数または複数)」は、その意味の中に、上記に例示したもののようなリン脂質残基に共有結合された任意のポリエチレングリコール残基(「PEG」)を含む。
【0028】
ポリエチレングリコールは典型的に、その平均分子量(「AMW」、例えば数平均分子量「Mn」)を用いて特定され;例えば、本明細書において用いられるPEG2000は、約2000g/mol(典型的に+/-5%)のAMWを有するポリエチレングリコールを特定する。
【0029】
適切なペグ化リン脂質(単数または複数)は、約1000g/mol(すなわちPEG1000)から約8000g/mol(PEG8000)まで、好ましくは2000から5000g/mol(PEG5000)までの平均分子量を有するPEG残基を含むものである。上記に定義されるペグ化リン脂質を形成するのに有用であるPEGポリマーの具体例は、PEG750、PEG1000、PEG2000、PEG3400、PEG4000、PEG5000、PEG6000、PEG7000およびPEG8000を含む。好ましくは、PEGは、それぞれの脂質鎖、例えばミリストイル、パルミトイルまたはステアロイル(steaoryl)を有するホスファチジルエタノールアミン(「PE」)残基に共有結合される。
【0030】
適切なペグ化リン脂質の例は、例えば、DMPE-PEG、DPPE-PEGおよびDSPE-PEGであり、それらは、上記に示される平均分子量を有するPEGを有するペグ化リン脂質として、例えば、DMPE-PEG2000、DMPE-PEG3400、DMPE-PEG5000、DPPE-PEG2000、DPPE-PEG3400、DPPE-PEG5000、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG3400またはDSPE-PEG5000として一般に市販される。
【0031】
必要な場合は、ペグ化リン脂質は、反応性部分、特に、官能化リガンド上の対応する反応性部分(例えばアビジン、ニュートラアビジンまたはストレプトアビジン部分)と反応することが可能なものによって適切に官能化されてよい。適切な反応性部分は、例えば、NHS(N-ヒドロキシ-スクシンイミド)、アミノ、スルフヒドリル、マレイミド、アジドまたはDBCO(ジベンゾシクロオクチン)を含む。
【0032】
例えば、2つの反応する構成要素のうちの一方が反応性アミノ基を含むならば、適切な対応する反応性部分、例えばイソチオシアネート基(チオカルバミド結合を形成する)、反応性エステル(アミド結合を形成する)、またはアルデヒド基(イミン結合を形成し、アルキルアミン結合に還元され得る)を含んでいる他方の構成要素と反応することができる。あるいは、2つの反応する構成要素のうちの一方が反応性チオール基を含むならば、他方の構成要素上の適切な相補反応性部分は、ハロアセチル誘導体、マレイミド(チオエーテル結合を形成する)、または、チオール保有構成要素に由来するチオールとの反応の際に2つの構成要素間に安定したジスルフィド結合の形成をもたらす2-ピリジルチオ基の形態でのスルフィドを含む混合ジスルフィドを含んでよい。さらに、2つの反応する構成要素のうちの一方が反応性カルボン酸基を含むならば、他方の構成要素上の適切な反応性部分は、アミンおよびヒドラジド(アミドまたはN-アシル、N’-アルキルヒドラジド官能基を形成する)であってよい。一実施態様によれば、マレイミドによって誘導体化されたペグ化リン脂質(例えばPE-PEG2000-MalまたはPE-PEG5000-Mal)は、例えばSulfo-LC-SPDP(スルホスクシンイミジル6-(3’-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド)ヘキサン酸)との反応によってリガンドに導入されたチオール(-SH)反応性部分を有するリガンドと反応し得る。
【0033】
リガンド
PE-PEGに結合され、微小胞のエンベロープ内に取り込まれるリガンドは、別のそれぞれの分子と特定の「結合ペア」を形成するリガンドである。リガンド(およびそれぞれの結合ペア)の例は、例えば、ビオチンと結合ペアを形成することのできるアビジン、ニュートラアビジンおよびストレプトアビジンを含む。ストレプトアビジンが本発明に好ましい。
【0034】
リガンドは、官能化PE-PEG上のそれぞれの反応性部分と共有結合的に反応することが可能な反応性部分を導入するために、適切に誘導体化される。例えば、マレイミド官能化PE-PEGが用いられる場合は、チオール部分がリガンド内に導入されて、マレイミド/チオールのカップリングを可能にする。DBCO官能化脂質が用いられた場合は、アジド部分がストレプトアビジン内に導入されて、クリック・ケミストリー・カップリングを可能にする。
【0035】
調製方法および製剤化
本発明の微小胞は、WO2004/069284に開示される製造方法に従って有利に調製することができる。
【0036】
調製方法は、フリーズドライ残渣の最初の調製を含み、
a)リン脂質と、反応性部分を含んでいる第1のペグ化リン脂質と、第2のペグ化リン脂質とを含む、水性有機エマルションを調製するステップ;
b)このエマルションに、前記反応性部分と反応することが可能な官能化リガンドを添加するステップ;
c)前記リガンドと前記ペグ化リン脂質をカップリングするステップ;および
d)前記エマルションを凍結乾燥して、フリーズドライ残渣を得るステップを含む。
【0037】
フリーズドライ残渣(例えばガラスバイアル内に回収される)をそれから、生体適合性ガスと接触させて、続いて、生理的に許容できる担体液体中に溶解させることによって再構成して、所望のガス充填微小胞の懸濁液が得られる。
【0038】
水性有機エマルションは、水性媒体および水非混和性溶媒(例えば分岐または直鎖アルカン類、アルケン類、シクロ-アルカン類、芳香族炭化水素類、アルキルエーテル類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類、ペルフルオロ化炭化水素類、またはそれらの混合物;例えば(instance)、シクロオクタン、シクロヘキサンまたはシクロヘプタン)を、少なくとも1つのリン脂質の存在下で、当技術分野で知られている任意の適切なエマルション生成技術、例えば、高圧ホモゲナイズまたはマイクロ混合に供することによって調製することができる。
【0039】
適切なリン脂質は、上記に示されるものである。さらに、水性有機エマルションは、脂質、好ましくは、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸またはオレイン酸のような脂肪酸をさらに含んでよい。
【0040】
典型的に、リン脂質は、エンベロープを形成する構成要素のより大きな部分、例えば98%mol/molまでを表わす。特定の実施態様では、リン脂質のモル量は、60%~95%、好ましくは70%~90%の範囲であってよい。オプショナルの脂質(特に脂肪酸)は、例えば、10%~30%、より好ましくは15%~25%のモル量で存在してよい。
【0041】
官能化されたペグ化リン脂質は、以前に述べられたように適切に官能化された、前に挙げられた任意のPE-PEGであってよい。
【0042】
それは、0.5%~8%、好ましくは1%~6%のモル量で存在してよい。
【0043】
同様に、官能化PE-PEGに結合される官能化リガンドは、前に挙げられたものの中から選択してよい。
【0044】
本出願人によって観察されたように、ステップb)において添加される官能化リガンドのモル量は、好ましくは、前記リガンドがカップリングされなければならない反応性部分を含んでいるペグ化リン脂質のモル量よりも少ない。実際のところ、BACS方法における特定の使用に関し、標的化(例えばビオチン化)抗体とのカップリングの競合の可能性を最小限にするために、懸濁液においてフリーのままであるリガンド(それ自体として、またはペグ化リン脂質に結合して)は、制限された量であることが好ましい。上述のように、本発明による懸濁液においては、安定化エンベロープと関連しないリガンドの量は、40%未満、例えば20%未満までである。「フリー」のリガンドの量をそのように制限するために、本発明の方法によれば、官能化リガンドの量は、好ましくは、対応する反応性部分を有するペグ化リン脂質の量に対して1:4またはそれ未満(例えば1:40まで)のモル比で添加される。より好ましくは、前記モル比は、1:5~1:25、さらにより好ましくは1:7~1:20である。
【0045】
これらの相対モル比によって、PE-PEGとリガンドのカップリング収率は一般に、少なくとも70%(すなわち、リガンドの30%未満が微小胞の最終的な安定化エンベロープに組み込まれない)、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは80%、さらにより好ましくは少なくとも85%である。
【0046】
PE-PEG上の未反応の反応性部分は、それから、適切な対応する不活性化部分と反応させることによって「不活化」され得る。例えば、PE-PEG上の反応性部分がマレイミド(PE-PEG-Mal)ならば、システインと反応させることによって不活化することができる。あるいは、反応性部分は、特定の不活性化部分を添加する必要なく天然の不活性化プロセス、例えば加水分解を受け得る。
【0047】
「不活化」PE-PEGは、したがって、安定化エンベロープ内へ、リガンドに共有結合されたPE-PEGとともに取り込まれ、この後者は、0.03~0.75%、好ましくは0.05%~0.7%、より好ましくは0.08~0.6%、さらにより好ましくは0.1~0.5%のモル量で安定化エンベロープ内に有利に存在する。「不活化」(未反応)PE-PEGは、0.5%~7.5%、好ましくは1%~6%、より好ましくは1.5%~5%のモル量で安定化エンベロープ内に存在してよい。
【0048】
出願人によってさらに観察されたように、本発明によれば、上記ステップa)~c)の水性有機エマルション内に、反応性部分を含んでいるペグ化リン脂質と、前記反応性部分を含まないさらなるペグ化リン脂質との混合物を有することが有利である。
【0049】
出願人によって観察されたように、PE-PEGの量および前記PE-PEG内に含まれるPEG鎖の分子量は、所望の微小胞の懸濁液を提供するために、2つの適切な選択を可能にする方法で相関している。前記相関は、以下に定義される「NPEG」として本明細書において定義される数字によって有利に表わすことができる:
PEG=MW mol%+MW mol%
ここで、MWおよびmol%はそれぞれ、ペグ化リン脂質内に含まれる反応性部分を含んでいるPEG鎖の分子量およびモル%を指し、MWおよびmol%はそれぞれ、ペグ化リン脂質内に含まれる反応性部分を含んでいないPEG鎖の分子量およびモル%を指す。
【0050】
例えば、組成物が、2.5%の官能化PE-PEG2000および1%のPE-PEG5000を含むならば、NPEGの数字は以下である:
PEG=20000.025+50000.01=100
【0051】
出願人によって観察されたように、安定したエマルションを得るためには、Nの数字は、好ましくは90よりも高く、より好ましくは95よりも高く、例えば300まで、好ましくは280までである。好ましくは、MWはMWと似ていて、より好ましくは両方とも約2000(+/-5%)である。好ましくは、mol%は0.01~0.05、より好ましくは0.02~0.03である。好ましくは、mol%は、0.03~0.12、より好ましくは0.05~0.10である。
【0052】
本発明の一実施態様によれば、反応性部分を含むペグ化リン脂質は、官能化PE-PEG2000(例えばDSPE-PEG2000-Mal)であり、第2のペグ化リン脂質は、PE-PEG2000(例えばDSPE-PE2000)である。2つのそれぞれのPE-PEGの間の相対モル比は、好ましくは1:1~1:8、好ましくは1:1.5~1:5、さらにより好ましくは1:2~1:4である。
【0053】
本発明の別の実施態様によれば、反応性部分を含んでいるペグ化リン脂質は、官能化PE-PEG2000、例えばDSPE-PEG2000-malであり、他方のペグ化リン脂質は、PE-PEG5000、例えばDPPE-である。官能化PE-PEG2000とPE-PEG5000の間の相対モル比は、好ましくは5:1~1:3、より好ましくは4:1~1:2、さらにより好ましくは3:1~1:1である。さらなる一実施態様によれば、反応性部分を含んでいるペグ化リン脂質と第2のペグ化リン脂質の両方ともPE-PEG5000である。2つのPE-PEGの間の相対モル比は、好ましくは5:1~1:2.5、好ましくは3:1~1:2、さらにより好ましくは2.5:1~1:1.5である。
【0054】
好ましい一実施態様では、水性有機エマルションは、凍結乾燥添加剤、例えば、凍結保護(cryoprotective)および/または溶解保護(lyoprotective)効果を有する薬剤および/または充填剤、例えばグリシンのようなアミノ酸;炭水化物、例えば、スクロース、マンニトール、マルトース、トレハロース、グルコース、ラクトースまたはシクロデキストリンのような単糖、または、デキストラン、キトサンおよびその誘導体(例えば:カルボキシメチルキトサン、トリメチルキトサン)のような多糖類;または、ポリエチレングリコールのようなポリオキシアルキレングリコールをさらに含んでよい。微小胞の安定化エンベロープの形成に実質的に関与しない凍結乾燥添加剤は、好ましくは水溶液として添加される。エマルションの形成の前、形成されたエマルションに対して、または、その形成の部分的に前および部分的に後に、添加されてよい。例えば、PEG4000の10%(w/w)水溶液を用いてよい。典型的に、凍結乾燥前のエマルション内の凍結乾燥添加剤の量は5~20重量%である(一方で、エンベロープを形成する構成要素の合計量は、典型的に約0.5重量%~約1重量%である)。
【0055】
出願人によって観察されたように、上記に示されるように調製される好ましい水性有機エマルションは、凍結乾燥ステップを受けるまでの相対的に長い時間、典型的に少なくとも2~3時間またはそれよりも長い時間、安定であり得る。
【0056】
エマルションの安定性は、例えば、ステップc)のカップリングのステップの完了後に、最終エマルション中の微小滴の濃度(微小滴の合計数として)を測定して、2時間半後のエマルション中の微小滴の濃度と比較することによって決定することができる。典型的に、残存する微小滴のパーセンテージは、最初の量に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%である。
【0057】
エマルションはそれから、それぞれのガラスバイアル(例えばDIN4、DIN8またはDIN20R)内に満たされてよく、そして凍結乾燥ステップに供せられる。
【0058】
凍結乾燥の完了後、バイアル(フリーズドライ残渣を含む)のヘッドスペースを生理的に許容できるガスで飽和させて、バイアルを密封する(例えばラバーストッパーを用いる)。
【0059】
任意の生体適合性ガス、ガス前駆体(例えば、周囲温度で液体である)、またはそれらの混合物を、上記の微小胞を充填するために用いてよい(以後、「微小胞形成ガス」とも特定される)。
【0060】
フッ素化ガスが好ましく、特にペルフルオロ化ガスが好ましい。好ましい化合物は、SFまたはペルフルオロカーボン類(ペルフルオロ化炭化水素類)、すなわち全ての水素原子がフッ素原子によって置き換えられた炭化水素類のようなペルフルオロ化ガスであり、それらは、例えば参照により本明細書中に援用されるEP 0554 213に開示されるように、特に安定した微小胞懸濁液を形成することが知られている。
【0061】
好ましいペルフルオロカーボン類は、例えば、CF、C、C、C、C10、C12、C12およびC14、より好ましくはCF、C、C、CおよびC10を含む。
【0062】
上記の任意のガスの混合物を任意の比で使用することも有利であり得る。例えば、混合物は窒素、空気または二酸化炭素のような従来のガス、および、安定した微小胞懸濁液を形成するガス、例えば、六フッ化硫黄または上記のペルフルオロカーボンを含んでよい。適切なガス混合物の例は、例えばWO94/09829に見ることができ、それは参照により本明細書中に援用される。以下の組み合わせが特に好ましい:ガス(A)および(B)の混合物であって、ここでガス(B)は、前に例示されたもの(それらの混合物を含む)の中から選択されるフッ素化ガスであり、(A)は、空気、酸素、窒素、二酸化炭素またはそれらの混合物から選択される。ガス(B)の量は、合計混合物の約0.5%~約95%(v/v)、好ましくは約5%~80%を表わし得る。
【0063】
特に好ましいガスは、SF、C、C10またはそれらの混合物(空気、酸素、窒素、二酸化炭素またはそれらの混合物との混合であってもよい)、例えば、ペルフルオロブタンまたはペルフルオロプロパンと窒素の35/65(v/v)混合物である。
【0064】
それから、フリーズドライ残渣は、バイアル中に水性担体を添加して、その内容物を穏やかに振とうすることによって再構成され得て、所望のガス充填微小胞懸濁液が提供される。得られる微小胞の数、寸法およびサイズ分布は、製剤エマルション内の微小滴の数、寸法およびサイズ分布と実質的に同程度である。
【0065】
本発明の一実施態様では、ガス充填微小胞の最終的な安定化エンベロープは、(i)リン脂質;(ii)任意選択で、脂肪酸;(iii)リガンドを含んでいるPE-PEG;(iv)「不活化」PE-PEG(リガンドと未反応の官能化PE-PEGに由来する);および(v)任意選択で、さらなる(非官能化)PE-PEGの混合物を含んでよい。
【0066】
一実施態様によれば、上記の構成要素は、安定化エンベロープ内に以下のモル量で存在し得る:
(i)リン脂質:60~98%、好ましくは70~85%
(ii)脂肪酸:0~30%、好ましくは10~25%
(iii)リガンドを含んでいるPE-PEG:0.03~0.75%、好ましくは0.1~0.7%
(iv)「不活化」PE-PEG:0.5~7.5%、好ましくは1%~6%、より好ましくは1.5~5%;
(v)第2の(非官能化)PE-PEG:0.5~12%、好ましくは1%~10%。
【0067】
好ましい一実施態様では、「不活化」PE-PEGと第2の(非官能化)PE-PEGの合計モル量は、2%~12%、好ましくは5%~10%である。
【0068】
本発明のガス充填微小胞、特に、上記調製方法によって得られるものは、その調製に用いられる相対的に少ない量の官能化PE-PEGにもかかわらず、相対的に多い量のリガンドを表面上に含む。微小胞の表面上のリガンドの量は、微小胞表面のμmあたりのリガンドの密度として有利に表すことができる。リガンドの密度は、例えば、実施例において詳細に記載されるように、洗浄された微小胞懸濁液中のリガンド濃度を測定して(例えば蛍光によって、例えば、ストレプトアビジンを含んでいる微小胞のために4-ビオチンフルオレセインを用いる)、微小胞の全表面をコールターカウンター測定によって計算することによって決定され得る。
【0069】
本発明による微小胞は典型的に、少なくとも8000分子/μm、好ましくは少なくとも12000分子/μm、より好ましくは少なくとも15000分子/μm、さらにより好ましくは少なくとも18000分子/μm、例えば50000分子/μmまでのリガンド密度を有する。
【0070】
使用方法
本発明のガス充填微小胞は、典型的に浮力によって、細胞を分離する方法において有利に用いられ得る(浮力活性化細胞選別「BACS」としても知られる)。当該方法は、生理学的液体(例えば血液または血漿)中の他の細胞から所望のタイプの細胞を分離するのに有用であり得る。
【0071】
特に、分離方法は、分離されるべき所望の細胞を、前記細胞上の特異的(および選択的)な受容体に結合することが可能な適切な標識抗体を用いて標識化するステップを含む。それから、本発明の微小胞を、分離されるべき細胞(標識抗体を有するものを含む)の懸濁液に添加して;本発明の微小胞はそれから、リガンドを介して、抗体/細胞構築物に結合した標識化残基と関連し、したがって、浮力による細胞の分離を可能にする(例えばWO2017/117349を参照)。好ましい一実施態様では、標識抗体はビオチン化抗体であり、ビオチン残基は、ガス充填微小胞上の例えばアビジン、ニュートラアビジンまたはストレプトアビジン残基のようなそれぞれの部分と関連することが可能である。したがって、本発明の微小胞は、細胞がそれぞれの標識(ビオチン化)抗体を用いて適切に標識され得るという条件ならば、広範な数の細胞を生理学的液体から分離するために用いることができる。
【0072】
第1のペグ化リン脂質(官能化PE-PEG2000(例えばDSPE-PEG2000-Mal))および第2のペグ化リン脂質(PE-PEG2000(例えばDSPE-PE2000))を含んでいるガス充填微小胞の製剤が特に好ましい。好ましくは、第1のペグ化リン脂質は、1~5%、より好ましくは1.5%~4%のモル量で存在し;第2のペグ化リン脂質は、好ましくは3%~12%、より好ましくは5%~10%のモル量で存在する。
【0073】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するのを助ける。
【実施例
【0074】
【0075】
方法
エマルションのサイズおよび濃度:
エマルション微小滴のサイズ分布および濃度を、30μmの開き口が付いたコールターカウンターMultisizer3を用いて測定した(100mLのNaCl 0.9%溶液中20μLのサンプル希釈-分析容量=100μL)。個数平均径および体積平均径(DNおよびDV(それぞれμm))、微小滴の合計濃度(Conc.T.(部/mL))、微小滴(>2μm)の濃度(部/mL)、合計微小滴表面(Surf.T.(μm/mL))、合計微小滴容量(MVC(μL/mL))のようなパラメータを決定した。
【0076】
エマルション微小滴の濃度を、希釈直後および希釈の2時間半後(穏やかに混合)に決定した。エマルションの安定性を、2時間半後の濃度を希釈直後の濃度で割ることによって決定した。
【0077】
微小胞のサイズおよび濃度:
微小胞(MV)のサイズ分布および濃度を、30μmの開き口が付いたコールターカウンターMultisizer3を用いて測定した(100mLのNaCl 0.9%溶液中50μLのサンプル希釈-分析容量=100μL)。個数平均径および体積平均径(DNおよびDV(それぞれμm))、微小胞の合計濃度(Conc.T.(MV/mL))、微小胞(>2μm)の濃度(MV/mL)、合計微小胞表面(Surf.T.(μm/mL))、合計微小胞容量(MVC(μL/mL))のようなパラメータを得た。
【0078】
ストレプトアビジン濃度の決定:
STV含有量を、ネイティブの微小胞懸濁液および洗浄した微小胞懸濁液において、4-ビオチンフルオレセインアッセイを用いて決定した。
【0079】
手短には、コールター測定後、微小胞を超音波タンク内で崩壊させて(Branson 5200-3×2分)、透明の溶液を得た。それから溶液を、8本の5mLのガラス管内に50μLポーションでサンプリングした。適切な容量のPBSおよび適切な容量の4-ビオチンフルオレセイン溶液(2803pmoles/mL)を、各サンプルが理論ビオチン・キャパシティの0.1、0.2、0.4、0.75、1.5、2、2.5および3倍を有するように計算した。PBSをサンプル溶液に添加して、さらに対応する4-BF溶液を添加した。
【0080】
それから、溶液を混合して(ボルテックス)、暗所で室温にて30分インキュベートした。それから、各混合物を96ウェルプレート内にサンプリングして(100μL/ウェルで1つの条件あたり2ウェル)、Cytation 5リーダー(λexc 480nm-λem 525nm)を用いて蛍光を読み取った。4-BF濃度の関数としての曲線蛍光を、4つの最初の点(first points)(低4-BF)については二次多項式フィットを用いて、4つの最後の点(last points)(高4-BF)については線形フィットを用いて描いた。-交点を2つの曲線の間で決定して、STV濃度を、(フリーのストレプトアビジン溶液による)検量線を用いて決定した。
【0081】
微小胞上のSTV密度を、コールターカウンター測定によって決定された合計MV表面を用いて計算した(分子/μm)。
【0082】
ストレプトアビジンのカップリング収率の決定:
カップリング収率を、洗浄した微小胞懸濁液に対して決定されたストレプトアビジン密度をネイティブの微小胞懸濁液に対して決定されたストレプトアビジン密度で割ることによって計算した(微小胞の特定のパーセンテージは洗浄中に取り除かれ得るので)。
【0083】
[実施例1]
ストレプトアビジン(STV)誘導体化
ストレプトアビジン溶液を、1.62mLの蒸留水および1.08mLのバッファーA(50mMリン酸、150mM生理食塩水pH7.4)中に、54mgの凍結乾燥されたストレプトアビジン(0.85mgのSTV/粉末mg(IBA由来)-860.76nmoles)を溶解させることによって調製した。透明の溶液が得られた(濃度約20mg/mL)。
【0084】
Sulfo-LC-SPDP(2.5mg)を、250μLのmilliQ水中に溶解させた。この溶液(19μmoles/mL)は、実験の直前に新たに調製された。
【0085】
sulfo-LC-SPDP溶液(160μL-3μmoles-3.5当量)のサンプルを、STV溶液に添加した。得られた溶液を混合して(ボルテックス)、40分間室温でインキュベートした(5分ごとにボルテックスを用いてかき混ぜた)。
【0086】
2つの5mL-Zebaカラムを、バッファーB(5mMリン酸pH7.4)を用いて平衡化させた。
【0087】
インキュベーション後、STV-SPDP溶液を2つのzebaカラム(2×1.43mL)上で精製した。精製された回収溶液の容量は約2.9mLであった。
【0088】
TCEP(5.4mg)を、250μLのバッファーC(Tris 500mM、EDTA 50mM pH:7)中に溶解させて、75mM溶液を得た。
【0089】
TCEP溶液(103μL-約10当量)のサンプルをSTV-SPDP溶液に添加した。混合(ボルテックス)後、溶液を室温で30分間インキュベートして、STV-SDPDを脱保護してチオール化STV(STV-SH)を得た。
【0090】
2つの5mL-Zebaカラムを、バッファーBを用いて平衡化させた。インキュベーション後、STV-SH溶液を2カラム(2×1.5mL)で精製した。回収溶液の容量は約3mLであり、STV-SHの濃度は約185nmoles/mlであった。
【0091】
STV-SHを含む溶液を、その後のPE-PEG-Malとのカップリング反応に用いた。
【0092】
[実施例2]
DSPE-PEG2000-マレイミドを用いたSTV微小胞の調製
有機相の調製:60mgのDSPC/パルミチン酸ブレンド(8/2モル比)を、4.8mLのシクロオクタン中に70℃で溶解させた。
【0093】
水相の調製:60mLのPEG4000(10%、水中)
【0094】
乳化前に、400μLの100mMリン酸バッファー(pH6)中に溶解させた6.7mgのDSPE-PEG2000-マレイミドを水相に添加した。
【0095】
2つの相を、Megatron MT3000ミキサーを高速回転で4分間用いて乳化させた。それから、エマルションを穏やかに混合しながら60℃で1時間加熱して、それから室温まで冷却した。
【0096】
エマルションを、15mLチューブ(Falcon)中に、4つの14mL画分に分けた。STV-SH溶液(実施例1において調製)を、表1に示されるように、エマルション(ml)あたり所望の量のSTV-SH(nmoles)を得るような容量でエマルションに添加した。エマルションを混合して、室温で2時間半インキュベートした。
【0097】
エマルションを、水中PEG4000 10%溶液を用いて2回希釈した。エマルションのサイズおよび濃度を、コールターカウンターMultisizer3(Beckman Coulter)を用いて測定した。希釈エマルションの一部を穏やかに混合しながら室温にて2時間半維持してエマルションの安定性を確認し、最初の微小滴濃度(C)に対する2時間半後の微小滴濃度(C)の間の比として表した。
【0098】
希釈エマルションを、DIN20Rバイアル中にサンプリングした(3mL/バイアル)。それからバイアルを予め凍らせた凍結乾燥機(Telstar Lyobeta 35)上に置いて凍結乾燥させた。バイアルのヘッドスペースをC10/N混合物(35/65v/v)で満たしてバイアルを密封した。
【0099】
6mLの生理食塩水(0.9%)を用いた再分散および穏やかな混合後、微小胞懸濁液が得られた。微小胞のサイズおよび濃度を、コールターカウンターMultisizer3(Beckman Coulter)を用いて測定した。
【0100】
【0101】
上記の結果から推察されるように、2時間半後のエマルションの安定性は、エマルション中のSTVの量の増加によって劇的に低減する。
【0102】
[実施例3]
様々な量のDPPE-PEG5000とともにDSPE-PEG2000-マレイミドを用いた、STV微小胞の調製
250μLの蒸留水中に溶解した2.5mg、5.1mgまたは10.3mgのDPPE-PEG5000(それぞれ、0.5%、1%または2%のモル量に相当する)を乳化前に水相にさらに添加する点を除き実施例2に従って、微小胞を調製した。
【0103】
表2~4は、それぞれの結果を示す。
【0104】
【0105】
【0106】
上記の結果から推察されるように、0.5% PE-PEG5000の存在は、少なくとも低濃度の添加STVでは、PE-PEG2000-malのみを含んでいる製剤と比べてエマルションの安定性を増大させ;1% PE-PEG5000の存在下では、2% PE-PEG5000の存在下と同様に、全てのエマルションが、時間内に(in time)安定となるが、この後者の場合は、STVの密度および収率のわずかな低減が観察され得た。
【0107】
[実施例4]
様々な量のDSPE-PEG2000とともにDSPE-PEG2000-マレイミドを用いた、STV微小胞の調製
【0108】
実施例4a
400μLの蒸留水中に溶解した5.1mgまたは10.6mgのDSPE-PEG2000(1.9%または3.8%モル比に相当する)を乳化前に水相にさらに添加する点を除き実施例2に従って、微小胞を調製した。
【0109】
結果を以下の表5に報告する。
【0110】
【0111】
1.9% STVのPE-PEG200のモル濃度については収率および密度は相対的に良いが、エマルションの安定性は相対的に低い。
【0112】
PE-PEG2000のモル量を増大させることにより(3.8%)、エマルションの安定性の実質的な増大を達成することができる。
【0113】
実施例4b
1mLの蒸留水中に溶解した16.1mg、22mgまたは28.1mgのDSPE-PEG2000(それぞれ、6%、8%および10%モル比に相当する)を乳化前に水相に添加する点を除き実施例4aに従って、微小胞を調製した。全ての組成物は、エマルション(mL)あたり3nmolesのSTVを添加することによって調製された。
【0114】
結果を以下の表6に報告する。
【0115】
【0116】
上記表から観察されるように、増加するモル量のDSPE-PEG2000は、より多い量の微小胞(合計MV)をもたらす。さらに、DSPE-PEG2000の量を増加させることにより、STVカップリング収率は相対的に高いままである。
【0117】
表6における3つの製剤に関するNPEGはそれぞれ、170、210および250である。
【0118】
[実施例5]
DSPE-PEG5000-マレイミドを用いたSTV微小胞の調製
13.4mgのDSPE-PEG5000-マレイミド(2.5%mol,Sunbright DSPE-050MA-NOF)をDSPE-PEG2000-マレイミドの代わりに添加する点を除き実施例2に従って、微小胞を調製した。
【0119】
結果を表7に報告する。
【0120】

【0121】
上記の結果から推察されるように、PE-PEG5000-malのみの存在は、エマルションの良好な安定性ならびに許容できるSTV収率およびSTV密度を得ることを可能にする。それにもかかわらず、相対的により少ない量の気泡合計数(total number of bubbles)が観察される(それにより、STV密度の増加が付随的に(incidentally)決定される)。
【0122】
[実施例6]
DSPE-PEG5000-マレイミドおよびDPPE-PE5000またはDSPE-PEG2000を用いた、STV微小胞の調製
250μlの蒸留水に溶解した5.1mgのDPPE-PEG5000またはDSPE-PEG2000(それぞれ、1%または2%のモル量に相当する)を乳化前に水相にさらに添加する点を除き実施例5に従って、微小胞を調製した。
【0123】
結果を以下の表8に示す。
【0124】
【0125】
【0126】
上記の結果から推察されるように、より多い量のSTV-SHは一般に微小胞上のSTV密度を増加させるが、それにもかかわらず、過剰な量は微小胞の合計量のような他のパラメータに悪影響を及ぼし得る。
【0127】
[実施例7]
DSPE-PEG2000-マレイミドを用いたSTV微小胞の調製
13.6mgのDSPE-PEG2000-Mal(5%モル)を用いる点が異なるが実施例2に従って、微小胞を調製した。
【0128】
【0129】
上記の結果は、相対的に良好なSTV収率および密度が得られるが、PE-PEG2000-malのみでは、相対的に多い量でさえも、相対的に低い安定性を有するエマルションをもたらし得ることを示す。
【0130】
[実施例8]
DSPE-PEG2000-マレイミドおよびDPPE-PE5000またはDSPE-PEG2000を用いた、STV微小胞の調製
300μlの蒸留水に溶解した2.5mgのDPPE-PEG5000(0.5%モル)または3.8mgのDSPE-PEG2000(1.5%モル)を乳化前に水相にさらに添加する点は異なるが実施例7に従って、微小胞を調製した。
【0131】

【0132】
【0133】
[実施例9]
変数のDSPE-PEG2000-マレイミドおよび0.5% DPPE-PE5000を用いた、STV微小胞の調製
様々なモル量のDSPE-PEG2000-マレイミドおよびDPPE-PEG 0.5%molを用いて、実施例4aに従って微小胞を調製した。エマルション処理後、エマルション(mL)あたり3nmolesのSTV-SHを各エマルションに添加した。結果は表8である。
【0134】
【0135】
上記結果は、同じ最初の量のSTV-SHを用いることにより、2.5% DSPE-PEG2000-マレイミドを含む製剤は、より高い収率のSTVカップリングを得ることができたことを示す。
【0136】
[実施例10]
最終的な微小胞懸濁液に対するエマルション安定性の影響
DSPE-PEG2000-マレイミド(2.5%モル比)および様々な量のDPPE-PEG5000(0、0.5、1および2%モル比)を含む製剤を、上述のとおりに、3nmoles STV/エマルション(mL)で調製した。
【0137】
カップリングおよびエマルション希釈後、エマルションの半分をバイアル内にサンプリングして凍結乾燥した。エマルションのもう半分を2時間半、穏やかに混合し、それから、サンプリングして凍結乾燥した(産業または試験規模でのサンプリングの可能性のある時間を模擬するため)。
【0138】
再分散後、微小胞の特徴を比較した。結果を表14に示す。
【0139】

【0140】
上記の結果から推察されるように、より高いモル量のPE-PEG5000(実施例14cおよび14d)では、エマルションのより良好な安定化を得ることができた。エマルション形成から2時間半後のフリーズドライ残渣から得られた微小胞の特徴は、エマルションの即時の凍結乾燥後に得られたものと実際に似ていた。
【0141】
[実施例11]
8% DSPE-PEG2000を用いた製剤と比較した、1% DPPE-PEG5000を用いた製剤
5mgのDPPE-PEG5000(1%モル、300中に溶解)または22mgのDSPE-PEG2000(8%モル、または1mlの蒸留水)を、それぞれ、乳化前に水相にさらに添加し;3nmolesのSTV-SH/エマルション(mL)を各エマルションに添加する点は違うが実施例2に従って、微小胞を調製した。それぞれの調製を8回(n=8)繰り返した。
【0142】
結果を以下の表15に示し(報告される値は、それぞれの製剤の8回の調製の平均である)、2つの製剤が同等の特徴を有することを示す。
【0143】
【0144】
[実施例12]
細胞回収試験
試験プロトコル
CCRF-CEM細胞(ATTC由来)を、最初に、供給元のプロトコルに従って培養および拡大した。試験の直前に、細胞を、BSA/EDTAバッファー(1%BSAおよび2mM EDTA(DPBS中)、w/o Ca/Mg)中に、5×10細胞/mLで再懸濁させた。
【0145】
細胞懸濁液(1mL、約5×10細胞)を、2mLの低結合エッペンドルフ内に移して、160μLのビオチン化マウス抗-ヒトCD45抗体(#555481-BD Pharmigen)を細胞に添加した。混合物を回転ミキサー上で室温にて30分間インキュベートして、それから、細胞を遠心分離(400g/5分)によって洗浄し;上清を捨てて細胞を1mL BSA/EDTAバッファー中に再懸濁させた(回転ミキサー上で5分混合)。
【0146】
それから、微小胞懸濁液(0.5ml)を細胞懸濁液に添加して、混合物を回転ミキサー上で室温にて20分間インキュベートした。それから、混合物を遠心分離して(400g/5分)、上清(細胞/微小気泡複合体)を、液体のメニスカスにおいて手によるピペッティングによって回収した。
【0147】
それから、ガス充填微小胞を(陽圧を加えることにより)崩壊させて、血球計数器を用いて、上清画分および下澄液(infranatant)画分中の細胞をカウントした。
【0148】
細胞回収量を以下のように決定した:細胞上清/(細胞上清+細胞下澄液)(%で表わす)。細胞バランスも決定した:(細胞上清+細胞下澄液)/最初の細胞。試験は、細胞バランスが90~110%である場合にのみ確証された。
【0149】
結果
実施例11において調製した微小気泡懸濁液の有効性を、上述の細胞回収試験プロトコルを用いて評価した。各製剤(15aまたは15b)のそれぞれ8回の調製を2回試験した(n=2)。
【0150】
結果を以下の表16に提供する。
【0151】
【0152】
上記の結果から推察されるように、PE-PEG2000-MalとPE-PEG2000の組み合わせを含んでいる製剤は、PE-PEG2000-MalおよびPE-PEG5000を含んでいる製剤よりも増大した細胞回収を提供する。
【0153】
同様の結果が、製剤6aおよび6c(PE-PEG2000-Mal 2.5%およびPE-PEG2000を、それぞれ6%または10%含む)を用いることによって得られた。