(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 1/42 20060101AFI20240816BHJP
F16K 1/36 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F16K1/42 G
F16K1/36 D
F16K1/36 J
(21)【出願番号】P 2021543058
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032662
(87)【国際公開番号】W WO2021039984
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2019158708
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】末永 博士
(72)【発明者】
【氏名】吉野 研郎
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-116070(JP,U)
【文献】特開2017-133542(JP,A)
【文献】特開2015-215028(JP,A)
【文献】特開2012-127487(JP,A)
【文献】特開2016-89885(JP,A)
【文献】米国特許第4840347(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
F16K 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室と該弁室に連通する第1の流路及び第2の流路とが形成されたバルブ本体と、第1の流路から前記弁室への開口の周囲に形成された環状の弁座と、該弁座と対向して配置される端面を有し且つ駆動部により弁座に対して接離する弁体とを備えるバルブ装置であって、
前記弁座及び前記弁体の前記端面の一方に、当接面が設けられ、前記弁座及び前記弁体の前記端面の他方に、隆起した環状のリブが設けられており、該リブが前記当接面に当接して前記弁体の端面と前記弁座との間を封止する環状のシール部を頂部に有し、該シール部が、前記当接面と平行に延びる環状のフラット面と、該フラット面の両側に隣接して設けられ前記フラット面に対して前記当接面から離れる方向に傾斜して延びる二つの環状の傾斜面とを含み、前記弁座に対する前記弁体の押し付け力の増加に伴ってフラット面に加えて前記傾斜面が前記当接面に当接するようになっていることを特徴としたバルブ装置。
【請求項2】
前記リブが前記弁座に設けられ、前記当接面が前記弁体の前記端面に設けられている、請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記傾斜面が平面によって形成されている、請求項1又は請求項2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記駆動部によって駆動されて前記弁座に対して接近及び離反する方向に移動するステムの先端部に前記弁体が接続され、前記ステムが前記先端部に押圧部を有しており、前記ステムが該押圧部を介して前記弁体を前記弁座へ向かって押圧する力を作用させる、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記ステムの移動方向に見たときに、前記押圧部が前記シール部の前記フラット面の内側に位置する、請求項4に記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記ステムの移動方向に見たときに、前記押圧部が前記シール部の前記フラット面の外側に位置する、請求項4に記載のバルブ装置。
【請求項7】
前記ステムの前記押圧部の押し面の中央に肉盗み部が形成されている、請求項4に記載のバルブ装置。
【請求項8】
前記傾斜面は前記フラット面に対して前記当接面から離れる方向へ1°から10°の範囲の傾斜角をなして延びている、請求項1から
請求項7の何れか一項に記載のバルブ装置。
【請求項9】
前弁体の周囲から半径方向外方に延びるダイヤフラムをさらに備え、前記弁体が前記ダイヤフラムを介して前記バルブ本体に支持されている、請求項1から
請求項8の何れか一項に記載のバルブ装置。
【請求項10】
前記駆動部は、手動式、空気駆動式及びばね駆動式の何れか一つである、請求項1から
請求項9の何れか一項に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁座に対して弁体を接離させて開閉を行うバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学工場、農業・水産業、半導体製造分野、液晶製造分野、食品分野などの各種産業では、弁座に対して弁体を垂直方向に移動させて接離させ、流路の開閉を行うバルブ装置が使用されている。このようなバルブ装置として、例えば特許文献1に記載のようなダイヤフラムバルブがある。
【0003】
ダイヤフラムバルブでは、一般的に、流路からバルブ本体内の弁室への開口の周囲に弁座が形成されていると共に、バルブ本体に外縁部を固定されたダイヤフラムによって弁体が支持されており、弁体に接続されたステムを駆動部によって駆動することによって、弁座に対して垂直な方向に弁体を移動させ、弁座に対して弁体を接離させて流路の開閉を行う。さらに、弁体と弁座とのシール性を高めるために、特許文献1に開示のバルブ装置(ダイヤフラムバルブ)のように、弁座と対向する弁体の底面に環状リブを設けて、弁体と弁座との接触面積を小さくし、比較的小さい押付力の作用下でも弁座と弁体との間に大きな面圧が得られるようにすることが一般的である。
【0004】
高い清浄性が求められる分野では、バルブ装置内で発生するパーティクルが問題となる場合がある。例えば半導体ウエハの製造工程では、パーティクル、種々の金属やポリマー化合物などの汚染物質が生じ、これが半導体ウエハ上に残存したり付着すると品質に大きな影響を与える。このため、半導体ウエハの製造工程では、洗浄液を用いて半導体ウエハの洗浄が行われる。しかしながら、特許文献1に記載のバルブ装置のように、弁座に当接する弁体の底面領域に、環状リブを設けると、リブが弁座に当接したときにリブが変形したり擦れて、パーティクルを発生させることがある。このようなパーティクルを含んだ洗浄液がバルブ装置から排出されて半導体ウエハの洗浄のために用いられると、十分な洗浄を行うことができず、半導体ウエハの清浄性が低下するという問題が生じる。このようなパーティクルの発生を抑制するために、例えば特許文献2は、弁体の弁座側端面に設けられた環状シール突起すなわちリブの先端部にフラットなシール面を設けると共に、シール面の変位を抑制することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-291911号公報
【文献】特許第6193955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バルブ装置は、様々な流体圧力の下で使用される。このため、バルブ装置を流通する流体の圧力が高い場合には、弁体に流体圧が作用し、弁座から弁体を押し離す方向の力が大きくなる。したがって、駆動部によって弁体を弁座に押し付ける閉弁時に、弁体を弁座に押し付けてリブと弁座との間をシールさせる力(以下、シール推力と記載する。)が低くなって、リブを弁座に押し付ける方向の応力(単位面積当たりの力)が小さくなり、リブの変形量が少なくなる。これに伴って、弁座に対するリブの横方向(弁座と平行な方向)の変位量も小さくなる。一方、流体圧力が低い場合には、流体圧力が弁体に作用して、弁座から弁体を押し離す方向の力が小さくなる。したがって、駆動部によって弁体を弁座に押し付ける閉弁時に、シール推力が高くなって、リブを弁座に押し付ける方向の応力が大きくなり、リブの変形量が多くなる。これに伴って、弁座面に対するリブの横方向の変位量も大きくなる。したがって、流体圧力が低い場合、流体圧力が高い場合と比較して、リブと弁座との摩擦によりパーティクルが発生しやすくなる。すなわち、流体圧力の変動に伴って、リブの変位量の変動が発生し、パーティクルの発生量が変動するという問題が生じる。
【0007】
よって、本発明の目的は、従来技術に存する課題を解決して、流体圧力が変動しても、パーティクルの発生量の変動を抑制することができるバルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み、本発明は、弁室と該弁室に連通する第1の流路及び第2の流路とが形成されたバルブ本体と、第1の流路から前記弁室への開口の周囲に形成された環状の弁座と、該弁座と対向して配置される端面を有し且つ駆動部により弁座に対して接離する弁体とを備えるバルブ装置であって、前記弁座及び前記弁体の前記端面の一方に、当接面が設けられ、前記弁座及び前記弁体の前記端面の他方に、隆起した環状のリブが設けられており、該リブが前記当接面に当接して前記弁体の端面と前記弁座との間を封止する環状のシール部を頂部に有し、該シール部が、前記当接面と平行に延びる環状のフラット面と、該フラット面の両側に隣接して設けられ前記フラット面に対して前記当接面から離れる方向に傾斜して延びる二つの環状の傾斜面とを含み、前記弁座に対する前記弁体の押し付け力の増加に伴ってフラット面に加えて前記傾斜面が前記当接面に当接するようになっているバルブ装置を提供する。
【0009】
上記バルブ装置では、流体圧力が高い場合、流体圧力が弁体に作用して、弁座から弁体を押し離す方向の力が大きくなる。したがって、閉弁時に、シール推力が低くなって、リブのシール部に発生する応力(単位断面積当たりの力)が小さくなり、リブの変形量が少なくなる。これに伴って、当接面に対するリブの縦方向(当接面に対して垂直な方向)の変形量も少なくなる。この結果、シール部のうちフラット面のみが当接面に当接し、シール部と当接面との接触面積が小さくなるので、当接面に対するリブの接触圧力(面圧)が大きくなって、十分なシール性能を確保することができる。また、当接面に対するリブのシール部の横方向の変位量も小さくなるので、パーティクルも発生しにくくなる。一方、流体圧力が低い場合には、流体圧力が弁体に作用して、弁座から弁体を押し離す方向の力が小さくなる。したがって、閉弁時に、シール推力が高くなって、リブに発生する応力(単位断面積当たりの力)が大きくなり、リブの変形量が多くなる。これに伴って、当接面に対するリブの縦方向(当接面に対して垂直な方向)の変形量も多くなる。この結果、シール部のフラット面に加えて、傾斜面も当接面に当接するようになり、流体圧力が高い場合と比較してシール部と当接面との接触面積が増加するので、シール推力が分散される。したがって、リブに発生する応力が減少して、当接面に対するリブのシール部の横方向の変位量も大きくなりにくくなり、パーティクルの発生が抑制される。
【0010】
上記バルブ装置の一つの実施形態として、前記リブが前記弁座に設けられ、前記当接面が前記弁体の前記端面に設けられているようにすることができる。
【0011】
また、上記バルブ装置では、前記傾斜面が平面によって形成されていることが好ましい。これにより、シール推力の増加に伴ってリブの変形量が増加したときに、シール部と当接面との接触面積を増加させることができ、リブに発生する応力の増加を抑制することができる。
【0012】
さらに、上記バルブ装置の一つの実施形態として、前記駆動部によって駆動されて前記弁座に対して接近及び離反する方向に移動するステムの先端部に前記弁体が接続され、前記ステムが前記先端部に押圧部を有しており、前記ステムが該押圧部を介して前記弁体を前記弁座へ向かって押圧する力を作用させるようにしてもよい。この場合、前記ステムの移動方向に見たときに、前記押圧部が前記シール部の前記フラット面の内側に位置するようにしてもよく、前記ステムの移動方向に見たときに、前記押圧部が前記シール部の前記フラット面の外側に位置するようにしてもよい。前者の場合、押圧部から弁体への力の作用点に近いフラット面の内側の傾斜面が当接面に当接しやすくなり、後者の場合、押圧部から弁体への力の作用点に近いフラット面の外側の傾斜面が当接面に当接しやすくなる。
【0013】
上記バルブ装置では、前記傾斜面は前記フラット面に対して前記当接面から離れる方向へ1°から10°の範囲の傾斜角をなして延びていることが好ましい。
【0014】
上記バルブ装置は、前弁体の周囲から半径方向外方に延びるダイヤフラムをさらに備え、前記弁体が前記ダイヤフラムを介して前記バルブ本体に支持されているようにすることができる。
【0015】
また、前記駆動部は、例えば、手動式、空気駆動式及びばね駆動式の何れか一つとすることができる。
【0016】
さらに、前記ステムの前記押圧部の押し面の中央に肉盗み部が形成されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバルブ装置によれば、流体圧力が高い場合には、シール部のフラット面のみが当接面に当接して、シール部と当接面との接触面積が小さくなるので、十分なシール性能を確保することができる。また、シール推力が低くなるので、当接面に対するリブのシール部の横方向の変位量が小さくなって、パーティクルが発生しにくくなる。一方、流体圧力が低い場合には、シール部のフラット面に加えて、傾斜面も当接面に当接して、流体圧力が高い場合と比較してシール部と当接面との接触面積が増加する。したがって、リブのシール部に発生する応力が減少して、当接面に対するリブのシール部の横方向の変位量も大きくなりにくくなり、パーティクルの発生が抑制される。このように流体圧力が変動したときのリブのシール部に発生する応力の変動を低減させて、当接面に対するリブのシール部の横方向の変位の変動を抑制することによって、パーティクルの発生量の変動が小さい安定した高品質のバルブ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のバルブ装置の第1の実施形態であるダイヤフラムバルブの開状態を示す縦断面図である。
【
図2】
図1に示されているダイヤフラムバルブの閉状態を示す縦断面図である。
【
図3】
図1に示されているダイヤフラムバルブの弁座に設けられたリブを拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図4】
図1に示されているダイヤフラムバルブの弁座に設けられたリブを拡大して示す部分拡大斜視図である。
【
図5A】ステムの押圧部の押し面平均径を説明するための説明図であり、押圧部の押し面が円形状の場合を示している。
【
図5B】ステムの押圧部の押し面平均径を説明するための説明図であり、押圧部の押し面が環状になっている場合を示している。
【
図6】
図1に示されているダイヤフラムバルブにおけるステムの押圧部から弁体への力の作用を説明するための説明図である。
【
図7A】
図6に示されているダイヤフラムバルブにおける弁座に対する弁体の着座時の変形の説明図であり、開状態を示している。
【
図7B】
図6に示されているダイヤフラムバルブにおける弁座に対する弁体の着座時の変形の説明図であり、低いシール推力時における弁座に対する弁体の着座状態を示している。
【
図7C】
図6に示されているダイヤフラムバルブにおける弁座に対する弁体の着座時の変形の説明図であり、高いシール推力時における弁座に対する弁体の着座状態を示している。
【
図8】第1の実施形態の変形形態のダイヤフラムバルブにおけるステムの押圧部から弁体への力の作用を説明するための説明図である。
【
図9A】
図8に示されているダイヤフラムバルブにおける弁座に対する弁体の着座時の変形の説明図であり、低いシール推力時における弁座に対する弁体の着座状態を示している。
【
図9B】
図8に示されているダイヤフラムバルブにおける弁座に対する弁体の着座時の変形の説明図であり、高いシール推力時における弁座に対する弁体の着座状態を示している。
【
図10】本発明のバルブ装置の第2の実施形態であるダイヤフラムバルブの開状態を示す縦断面図である。
【
図11】本発明のバルブ装置の第3の実施形態であるダイヤフラムバルブの開状態を示す縦断面図である。
【
図12】第1の実施形態の他の変形形態のダイヤフラムバルブにおけるステムの押圧部を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明によるバルブ装置の実施の形態を説明する。
最初に、
図1及び
図2を参照して、バルブ装置の第1の実施形態であるダイヤフラムバルブ11の全体構成を説明する。
【0020】
ダイヤフラムバルブ11は、バルブ本体13と、弁体15と、弁体15を駆動するための駆動部17とを備え、バルブ本体13の上部に駆動部17が取り付けられている。
【0021】
バルブ本体13には、上部中央に弁室19が形成されていると共に、弁室19に連通する第1の流路及び第2の流路が形成されており、第1の流路から弁室19への開口の周囲に、弁体15が接離する環状の弁座21が形成されている。図示されている実施形態では、第1の流路として、バルブ本体13の一方の側面に形成された流入口23から延び且つ弁室19の底部中央に開口する流入路25が形成されていると共に、第2の流路として、バルブ本体13の他方の側面に形成された流出口27から延び且つ弁室19の側面に開口する流出路29が形成されており、流入路25から弁室19への開口の周囲に環状の弁座21が形成されている。
【0022】
弁体15は、円柱上に円錐台が連結されたような上端部がテーパ状になった錘形状を有しており、底側の端面が弁座21に対向するようにバルブ本体13に支持されている。
【0023】
駆動部17は、バルブ本体13の上部に取り付けられ且つ内部にシリンダ部の空間が形成されているシリンダ本体31と、シリンダ本体31の上部に取り付けられる蓋部材33と、シリンダ部内に収容されているピストン35と、付勢部材としての圧縮コイルばね37(37a,37b)とを備えている。
【0024】
ピストン35は、シリンダ本体31のシリンダ部内に摺動可能に収容されるピストン本体35aと、ピストン本体35aの上面から上方に延びる案内軸35bと、ピストン本体35aの下面から下方に延びるステム35cとを有している。ピストン本体35aは、外周面がシリンダ部の内周面に上下方向に摺動可能に接触しており、シリンダ部の内部空間を、ピストン本体35aの上面とシリンダ部の内周壁とシリンダ部の天井面(すなわち蓋部材33の下面)によって囲まれた上部空間39と、ピストン本体35aの下面とシリンダ部の内周壁とシリンダ部の底面(すなわちシリンダ本体31の底部)とによって囲まれた下部空間41とに区画している。案内軸35bは、蓋部材33を貫通して設けられた貫通孔に摺動可能に挿入されており、ピストン35の上下動を案内するようになっている。ステム35cは、シリンダ本体31の底部を貫通して設けられた貫通孔に摺動可能に挿入されて、弁室19まで延びており、その先端に位置する接続端35dに弁体15が接続されている。
【0025】
本実施形態では、ステム35cの接続端35dに拡径された係止部が設けられており、弁体15に設けられた連結孔15aにステム35cの接続端(係止部)35dを圧入することによって、ステム35cの接続端35dに弁体15が接続されている。しかしながら、ステム35cの接続端35dへの弁体15の接続は、圧入に限定されるものではなく、例えばステム35cの接続端35dの外周面に雄ねじ部を設けると共に弁体15の連結孔15aの内周面に雌ねじ部を設け、螺合によってステム35cの接続端35dに弁体15を接続してもよい。
【0026】
蓋部材33には、上部空間39を区画するシリンダ部の天井面に連通する第1の連通口43が形成されており、第1の連通口43を通して上部空間39に対する作動流体の供給及び排出を行うことができるようになっていると共に、シリンダ本体31の側部には、下部空間41を区画するシリンダ部の底面に連通する第2の連通口45が形成されており、第2の連通口45を通して下部空間41に対する作動流体の供給及び排出を行うことができるようになっている。また、ピストン本体35aの上面と蓋部材33の下面(シリンダ部の天井面)には、それぞれ、ばね座47,49が形成されており、蓋部材33の下面(シリンダ部の天井面)とピストン本体35aの上面との間に圧縮コイルばね37を配置できるようになっている。
【0027】
なお、駆動部17は、ピストン35の案内軸35b及びステム35cが弁座面に対して垂直に延びるように、バルブ本体13に取り付けられる。また、ピストン本体35aの外周面、シリンダ本体31の底部の貫通孔に挿入されたステム35cの外周面、及び案内軸35bの外周面にそれぞれOリング51,53,55が装着されている。これにより、ピストン本体35aの外周面とシリンダ部の内周面との間、ステム35cの外周面とシリンダ本体31の底部(シリンダ部の底面)の貫通孔の内周面との間、及び案内軸35bの外周面と蓋部材33の貫通孔の内周面との間から、下部空間41及び上部空間39に供給された作動流体が外部に漏出することが防止される。
【0028】
このような構成により、通常時には、ピストン本体35aが圧縮コイルばね37によって下方に付勢されて押し下げられ、これに伴って、ステム35cを介してピストン本体35aに連結されている弁体15が下方に移動させられ、弁座21に圧接される。なお、第1の連通口43を通してシリンダ部の上部空間39に作動流体(例えば圧縮空気)を供給することによってピストン本体35aの上面に下向きの流体圧力を作用させて、ステム35cを介して弁体15に作用させる力を変化させ、弁体15を弁座21に圧接させる力を調整することもできる。弁体15が弁座21に圧接される結果、
図2に示されているように、流入路25が閉止され、ダイヤフラムバルブ11が閉状態となる。この状態から第2の連通口45に作動流体(例えば圧縮空気)を供給すると、シリンダ部の下部空間41に作動流体が流入して、ピストン本体35aの下面に上向きの流体圧力が作用し、ピストン本体35aが圧縮コイルばね37の付勢力(場合によっては、これに加えて、上部空間39内の作動流体がピストン本体35aに作用させる下向きの流体圧力)に抗して押し上げられる。このとき、シリンダ部の上部空間39内の作動流体は第1の連通口43から外部へ排出される。ピストン本体35aが上方へ移動すると、ステム35cを介してピストン本体35aに連結されている弁体15が上方へ移動して弁座21から離間する。この結果、流入路25からの開口が開放され、
図1に示されているように、ダイヤフラムバルブ11が開状態となる。開状態では、ダイヤフラムバルブ11の流入口23から流入路25に流入した流体は弁室19及び流出路29を経て流出口27から外部へ流出する。
【0029】
ダイヤフラムバルブ11では、弁体15の上端部の外周部から半径方向外方にダイヤフラム57が延設されており、弁体15は、ダイヤフラム57を介してバルブ本体13に支持されている。詳細には、
図2に詳細に示されているように、ダイヤフラム57の外周縁部に、最外縁部に位置し且つ水平方向に延びる環状の第1の水平支持部57aと、第1の水平支持部57aよりも内側に位置し且つ上下方向(鉛直方向)に延びる環状の垂直支持部57bと、垂直支持部57bよりも内側に位置し且つ水平方向に延びる環状の第2の水平支持部57cとが設けられており、バルブ本体13の弁室19の上部開口に、段差部が設けられている。シリンダ本体31の底部中央から延びる突出部31aをバルブ本体13の弁室19の上部開口内に挿入したときに、突出部31aよりも外側に位置するシリンダ本体31の底面とバルブ本体13の弁室19の上部開口の周囲領域の上面との間に第1の水平支持部57aを挟持し、シリンダ本体31の突出部31aの外周面とバルブ本体13の弁室19の上部開口の段差部の垂直面との間に垂直支持部57bを挟持し、さらにシリンダ本体31の突出部31aの先端面(底面)とバルブ本体13の弁室19の上部開口の段差部の水平面との間に第2の水平支持部57cを挟持することにより、ダイヤフラム57をバルブ本体13に固定するようになっている。また、垂直支持部57bの外側表面に、断面半円形状の環状突起57dが設けられている一方、バルブ本体13の弁室19の上部開口の段差部の垂直面に、断面台形状の環状溝13aが設けられている。環状突起57dは環状溝13aよりも僅かに大きく形成されており、垂直支持部
57bの外側表面の環状突起57dを弁室19の上部開口の段差部の垂直面の環状溝13aに係合させた状態で、シリンダ本体31の突出部31aをバルブ本体13の弁室19内に挿入してシリンダ本体31をバルブ本体13の上部に取り付けたときに、環状突起57dが変形して環状溝13aに密着嵌合し、シール性が高まるようになっている。
【0030】
本実施形態では、上述したように、ダイヤフラム57の垂直支持部57bに環状突起57dを設け、環状突起57dをバルブ本体13の上部開口の段差部の環状溝13aに係合させている。しかしながら、ダイヤフラムバルブ11の構成は上記構成に限定されるものではない。例えば、ダイヤフラム57の垂直支持部57bに環状溝を設け、設けた環状溝をバルブ本体13の上部開口の段差部の垂直面に設けた環状突起に係合させるようにしてもよい。また、第1の水平支持部57aと垂直支持部57bの両方に環状突起又は環状溝を設けて、バルブ本体13の上部開口の周囲領域の上面と段差部の垂直面の両方に環状溝又は環状突起を設けるようにしてもよい。
【0031】
なお、バルブ本体13、弁体15、シリンダ本体31、ピストン35、ダイヤフラム57の材質は、例えば、PVC(塩化ビニル樹脂)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PP(ポリプロピレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシエチレン)などとすることができる。
【0032】
本発明によるバルブ装置では、さらに、弁座21と対向する弁体15の端面及び弁座21の一方に、他方へ向かって隆起した環状のリブ59が設けられ、弁体15の端面及び弁座21の他方に、環状の当接面61が設けられている。リブ59は、頂部に設けられ且つ当接面61に当接して弁体15の端面と弁座21との間を封止する環状のシール部63と、シール部63の内側及び外側の両側にそれぞれ設けられた内側面65及び外側面67とを有している。さらに、シール部63は、当接面61と平行に延びる環状のフラット面63aと、フラット面63aの内側と外側にそれぞれ隣接して設けられ且つフラット面63aに対して当接面61から離れる方向に傾斜して延びる環状の内側傾斜面63b及び外側傾斜面63cとを含んでいる。シール部63は、弁体15の端面を弁座21に押し付ける力(以下、シール推力と記載する。)が低いときには、フラット面63aのみが当接面61と当接し、シール推力が増加するにつれて、弁体15やリブ59の変形により、フラット面63aに加えて内側傾斜面63b及び外側傾斜面63cが当接面61に当接するようになっている。なお、内側面65及び外側面67がフラット面63aに対して当接面61から離れる方向になす角度は、それぞれ内側傾斜面63b及び外側傾斜面63cよりも急になっている。
【0033】
図1に示されている第1の実施形態のバルブ装置に係るダイヤフラムバルブ11では、
図3及び
図4に詳細に示されているように、弁体15へ向かって隆起した円環形状のリブ59が弁座21に設けられる一方、弁座21と対向する弁体15の端面に円環形状の当接面61が設けられている。また、リブ59の頂部に設けられたシール部63が、当接面61と平行に延びる円環形状のフラット面63aと、フラット面63aの内側と外側の両側に隣接して設けられフラット面63aに対して当接面61から離れる方向に傾斜して延びる円環形状の内側傾斜面63b及び外側傾斜面63cとを含んでいる。
【0034】
内側傾斜面63b及び外側傾斜面63cは、シール推力の変動による弁体15及びリブ59の変形により、内側傾斜面63b及び外側傾斜面63cの一方又は両方が当接面61に当接する状態と内側傾斜面63b及び外側傾斜面63cの両方が当接面61に当接しない状態を切り換えることが容易となるように、フラット面63aに対して当接面61から離れる方向に緩やかな角度で傾斜している。傾斜角度は、フラット面63aに対して当接面61から離れる方向に1°から10°の範囲であることが好ましい。これは、傾斜角度が1°以下では、加工精度の観点から加工の困難性が増すからであり、傾斜角度が10°を超えると、当接面61と内側傾斜面63b及び外側傾斜面63cの一方又は両方とが当接するために、より大きなリブ59の縦方向の変形及び弁体15の変形が必要となって、当接面61とシール部63との接触面積を増加させにくくなるからである。後述するように、シール推力が高くなったときに、当接面61とシール部63との接触面積が増加しないと、リブ59に発生する応力が大きくなって、横方向へのリブ59の変形も大きくなり、リブ59と当接面61との摩擦によりパーティクルが発生しやすくなる。
【0035】
また、低シール推力時にフラット面63aのみが当接面61に当接しているときに、十分なシール性能を確保できるように当接面61とフラット面63aとの接触面積を減らすために、フラット面63aの幅d(径方向の長さ)は、狭くなっており、フラット面63aの外径の0.04倍以下となっていることが好ましい。これは、フラット面63aの幅dがフラット面63aの外径の0.04倍を超えると、フラット面63aのみが当接面61に当接した状態になったときの当接面61とシール部63の接触面積が相対的に大きくなるので、シール推力が低いときにシール時の面圧が小さくなってしまい、十分なシール性能を確保しにくくなるからである。この結果、十分なシール性能を確保するために、シール推力を高めるべく駆動部17を大型化する必要が生じてしまう。
【0036】
さらに、
図3及び
図4に示されているダイヤフラムバルブ11の内側傾斜面63b及び外側傾斜面63cは傾斜した平面によって構成されているが、フラット面63aに対して当接面61から離れる方向に傾斜していれば、凸状の湾曲面によって構成されていてもよい。なお、
図3及び
図4に示されているダイヤフラムバルブ11では、内側面65が平面によって構成されており、外側面67が凹状湾曲面によって構成されている。しかしながら、内側面65及び外側面67はこれらの構成に限定されるものではなく、内側面65及び外側面67が、ともに平面によって構成されていてもよく、ともに凹状湾曲面によって構成されていてもよい。
【0037】
ステム35cの接続端35dは、弁体15を弁座21へ押し付ける方向の力をステム35cから弁体15に作用させる押圧部として機能する。押圧部は、
図1に示されている実施形態では、
図5A及び
図5Bに示されているように、ステムの移動方向すなわち当接面に垂直な方向に見たときに、押圧部がリブ59のシール部63のフラット面63aの内側に位置するように構成されている。しかしながら、押圧部は、
図1に示されている構成に限定されるものではない。例えば、押圧部は、ステム35cの移動方向すなわち当接面61に垂直な方向に見たときに、押圧部がリブ59のシール部63のフラット面63aの外側に位置するように構成されていてもよく、フラット面63aの内側と外側に跨って位置するように構成されていてもよい。
【0038】
なお、リブ59のフラット面63aの外径は、押圧部の押し面平均径の1~2倍の範囲となっていることが好ましい。これは、1倍以下では、ステム35cの接続端35dが大きくなり、バルブ全体のサイズが大きくなるからであり、2倍以上では、弁体15の中央部が反った形で変形しやすくなり、当接面61に対するリブ59の横方向(当接面61に平行な方向)の変位量も大きくなるので、リブ59と当接面61との摩擦によりパーティクルが発生しやすくなるからである。ここで、押圧部の押し面平均径とは、弁体15側の押圧部の端面のうち弁体15に接触してステム35cの移動方向に弁体15に力を作用させる押し面35eの内径と外径との平均を意味し、第1の実施形態のように押し面35eが円形状の場合、
図5Aに示されているように、押し面35eの半径Y1の中央点を結んだ円の直径Xが押し面平均径となり、後述する
図12に示されている変形形態のように押す面35eの中央に肉盗み部(すなわち凹部)69を設けることにより押し面35eが環状になっている場合、
図5Bに示されているように、環状の押し面35eの幅Y2の中央点を結んだ円の直径Xが押し面平均径となる。
【0039】
次に、
図1及び
図2に示されているダイヤフラムバルブ11の動作を説明する。
【0040】
第2の連通口45から駆動部17に作動流体が供給されていない通常時は、駆動部17のピストン本体35aが圧縮コイルばね37によって下方に付勢されて押し下げられ、これに伴って、弁体15もステム35cを介してピストン本体35aと共に下方へ移動する。この結果、弁体15の弁座側端面の当接面61が弁座21のリブ59のシール部63に圧接されて、ダイヤフラムバルブ11が
図2に示されているように閉状態となる。シール推力を増加させたい場合には、第1の連通口43から駆動部17のシリンダ部の上部空間39に作動流体を供給し、圧縮コイルばね37による付勢力に加えて、上部空間39に流入した作動流体の流体圧力をピストン本体35aの上面に下向きに作用させる。これにより、ステム35cを介して弁体15の当接面61を弁座21のリブ59のシール部63に圧接させる力すなわち押し付ける力を増加させるようにすることができる。
【0041】
第1の連通口43からの作動流体の供給を停止させた後に駆動部17の第2の連通口45に作動流体を供給すると、第2の連通口45からシリンダ部の下部空間41に流入した作動流体の流体圧力がピストン本体35aに上向きに作用し、圧縮コイルばね37の付勢力及び上部空間39内の作動流体の流体圧力に抗してピストン本体35aが押し上げられる。このとき、上部空間39内の作動流体は第1の連通口43を通じて外部に排出される。ピストン本体35aが上方へ押し上げられることにより、ステム35cを介して弁体15が上方へ移動させられ、弁体15の当接面61が
図1に示されているように弁座21のリブ59のシール部63から離間して、ダイヤフラムバルブ11が開状態となる。
【0042】
第2の連通口45への作動流体の供給を停止すると、圧縮コイルばね37により、再びピストン本体35aが下方に付勢されて押し下げられ、上述した通り、ダイヤフラムバルブ11が閉状態となる。
【0043】
このように、ダイヤフラムバルブ11では、第1の連通口43へ作動流体を供給することにより、駆動部17が弁体15を弁座21に押し付ける力を変化させることができ、シール推力を調整することができる。また、閉状態では、弁室19の底面の開口を封鎖する弁体15の端面に流入路25内の流体の圧力が作用して、弁体15を押し上げる。したがって、駆動部17が弁体15を弁座21に押し付ける力を一定に保っている場合でも、流体圧力の変動により、シール推力が変動する。すなわち、流体圧力が高くなると、弁体を押し上げる力が増加して、シール推力が減少し、流体圧力が低くなると、弁体を押し上げる力が減少して、シール推力が増加する。
【0044】
ダイヤフラムバルブ11では、シール部63が、当接面61と平行に延びる円環形状のフラット面63aと、フラット面63aの両側に隣接してフラット面63aに対して当接面61から離れる方向に傾斜した内側傾斜面63b及び外側傾斜面63cを含んでいる。このため、弁体15に作用するシール推力が低いときには、当接面61がシール部63のフラット面63aのみと当接し、シール推力が増加するにつれて、弁体15やリブ59の変形により、当接面61がフラット面63aに加えて内側傾斜面63bや外側傾斜面63cとも当接するようになっている。すなわち、上述のような要因によるシール推力の変動により、当接面61とシール部63との接触面積を変化させる。
【0045】
詳細には、シール推力が低いときは、当接面61をリブ59に押し付ける力も小さくなって、リブ59に発生する応力(単位断面積に作用している力)も小さくなるので、リブ59の縦方向(当接面に垂直な方向)の変形量が少なくなり、当接面61がフラット面63aのみと接触して当接面61とリブ59のシール部63との接触面積が小さくなる。この結果、シール推力が低くても一定の接触圧力(面圧)を確保でき、弁体15と弁座21との間の十分なシール性能を確保することが可能となる。なお、シール推力が低いときには、当接面61をリブ59に押し付ける力が小さくなって、リブ59の変形による当接面61に対する横方向(当接面61に平行な方向)の変位量も少なくなるので、パーティクルは発生しにくくなる。また、シール推力が増加して高くなると、シール推力の増加に伴って当接面61をリブ59に押し付ける力も大きくなり、リブ59の変形による縦方向の変形量が増加すると共に弁体15の変形量が増加する。このため、当接面61がフラット面63aに加えて内側傾斜面63b及び外側傾斜面63cの一方又は両方にも当接するようになり、当接面61とリブ59のシール部63との接触面積が増加する。この結果、リブ59に発生する応力が小さくなり、横方向へのリブ59の変形が抑えられて当接面61に対するシール部63の横方向への変位量も抑制される。これにより、リブ59と当接面61との摩擦によるパーティクルの発生が抑制される。このようにして、シール推力の変動によるパーティクルの発生量の変動が抑制される。
【0046】
次に、
図6、
図7Aから
図7Cを参照して、シール推力の変動によるシール部と当接面との接触面積の変動をより詳細に説明する。
【0047】
上述したように、駆動部17の第1の連通口43からの作動流体の供給を停止させた状態で、第2の連通口45に作動流体を供給すると、
図7Aに示されているように、弁体15の当接面61が弁座21のリブ59のシール部63から離間して、ダイヤフラムバルブ11が開状態となる。この状態で、第2の連通口45への作動流体の供給を停止すると、ピストン本体35aが再び下方に付勢されて押し下げられて、
図6に示されているように、弁体15の当接面61が弁座21のリブ59のシール部63に圧接し、
ダイヤフラムバルブ11が閉状態となる。
【0048】
第1の実施形態のダイヤフラムバルブ11では、
図6に示されているように、ステム35cの接続端35dに係止部が設けられ、弁体15に設けられた連結孔15aに接続端35dを圧入することによって、ステム35cの接続端35dに弁体15が接続されており、接続端35dの下端面を通してステム35cから弁体15に力を作用させるようになっている。すなわち、接続端35dが弁体15を弁座21に押し付ける押圧部として機能している。また、第1の実施形態のダイヤフラムバルブ11では、ステム35cの移動方向に見たときに、押圧部が円環形状のリブ59のフラット面63aの内側に位置するようになっている。
【0049】
このような構成のダイヤフラムバルブ11の弁体15に駆動部
17からステム35cを介して弁体15に力を作用させると、第1の連通口43への作動流体の供給を停止した状態や流体圧力が高い場合のようにシール推力が低い場合、弁体15の当接面61を弁座21のリブ59に押し付ける力が小さくなってリブ59の縦方向の変形量も少なくなるので、
図7Bに示されているように、当接面61がリブ59のフラット面63aのみと接触する。したがって、当接面61とリブ59のシール部63との接触面積が小さくなり、シール推力が低くても一定の接触圧力(面圧)を確保でき、弁体15と弁座21との間の十分なシール性能を確保することが可能となる。なお、シール推力が低いときには、リブ59の変形による当接面61に対する横方向の変位量も少なくなるので、パーティクルは発生しにくくなる。
【0050】
一方、圧縮コイルばね37の付勢力に加えて第1の連通口43から上部空間39へ流入させた作動流体の流体圧力でピストン本体35aを下方へ押し下げた状態や流体圧力が低い場合のようにシール推力が高い場合、弁体15の当接面61を弁座21のリブ59に押し付ける力が大きくなってリブ59の縦方向の変形量も多くなる。また、当接面61がリブ59のシール部63の環状のフラット面63aに当接した状態からさらに強い力で、ステム35cの移動方向に見たときにフラット面
63aの内側に位置する押圧部(接続端35d)により弁体15が下方へ押し下げられるので、
図7Cに示されているように、弁体15の中央部が弁座
21へ向かって凸状に変形しやすい。この結果、当接面61がフラット面63aに加えて、内側傾斜面63bにも(シール推力が非常に高い場合、さらには外側傾斜面63cの少なくとも一部にも)当接するようになる。したがって、当接面61とリブ59のシール部63との接触面積が大きくなって、力が分散され、リブ59に発生する応力が小さくなり、横方向へのリブ59の変形が抑えられて当接面61に対するシール部63の横方向への変位量も抑制される。これにより、リブ59と当接面61との摩擦によるパーティクルの発生が抑制される。
【0051】
このようにして、ダイヤフラムバルブ11は、リブ59のシール部63の構成により、シール推力の変動によるパーティクルの発生量の変動を抑制する効果を奏する。
【0052】
ここでは、ステム35cの移動方向に見たときに、押圧部が円環形状のリブ59のフラット面63aの内側に位置するようになっているダイヤフラムバルブ11を例にして動作を説明した。しかしながら、ステム35cの移動方向に見たときに、押圧部が円環形状のリブ59のフラット面63aの外側に位置するようになっているダイヤフラムバルブでも同様の効果を奏することができる。
【0053】
図8は、第1の実施形態の変形形態のダイヤフラムバルブ11´において、第1の実施形態のダイヤフラムバルブ11と構成が異なっている部分を拡大して示している。
図8において、
図1に示されている第1の実施形態のダイヤフラムバルブ11の構成要素と同じ部分については同じ参照符号を付している。以下では、変形形態のダイヤフラムバルブ11´の構成について、第1の実施形態のダイヤフラムバルブ11と異なっている点を中心に説明し、共通する部分についての説明を省略する。
【0054】
ダイヤフラムバルブ11´は、バルブ本体13と、弁体15と、弁体15を駆動するための駆動部17とを備え、バルブ本体13の上部に駆動部17が取り付けられている点、バルブ本体13において、上部中央に弁室19が形成されていると共に、弁室19に連通する流入路25及び流出路29が形成されており、流入路25から弁室19への開口の周囲に、弁体15が接離する環状の弁座21が形成されている点において、ダイヤフラムバルブ11と共通している。一方、ダイヤフラムバルブ11´は、ダイヤフラム57の外周縁部をバルブ本体13に固定するための突出部31aに代えてダイヤフラムバルブ押え71が配置されていると共に、ピストン35のステム35cの先端に位置する接続端35d´の中央部に、弁体15の頂部に設けられた突出部と嵌合させるための嵌合凹部が設けられている点において、ダイヤフラムバルブ11と異なっている。弁体15は、接続端35d´の嵌合凹部に弁体15の頂部の突出部を嵌合させて螺合などにより、ステム35cの接続端35d´に接続される。接続端35d´の嵌合凹部の直径は、リブ59のフラット面63aの外径よりも大きくなるように形成されている。このため、ステム35cの接続端35d´における嵌合凹部を取り囲む周囲面が、弁体15を弁座21へ押し付ける方向の力をステム35cから弁体15に作用させる押圧部の押し面35e´として機能する。すなわち、ステム35cの移動方向に見たときに、押圧部の押し面35e´が円環形状のリブ59のフラット面63aの外側に位置するようになっている。
【0055】
このようなダイヤフラムバルブ11´では、シール推力が低い場合、ダイヤフラムバルブ11と同様に、当接面61が
図9Aに示されているようにリブ59のフラット面63aのみと当接する。したがって、当接面61とリブ59のシール部63との接触面積が小さくなり、シール推力が低くても一定の接触圧力(面圧)を確保でき、弁体15と弁座21との間の十分なシール性能を確保することが可能となる。一方、シール推力が高い場合、当接面61がリブ59のシール部63の環状のフラット面63aに当接した状態からさらに強い力で、ステム35cの移動方向に見たときにフラット面
63aの外側に位置する押圧部(接続端35d´)の押し面35e´により、弁体15が押し下げられるので、弁体15の外側部分が
図9Bに示されているように弁座
21へ向かって押し下げられ、全体として凹状に変形しやすい。この結果、当接面61がフラット面63aに加えて、外側傾斜面63cにも(シール推力が非常に高い場合、さらには内側傾斜面63bの少なくとも一部にも)当接するようになる。したがって、当接面61とリブ59のシール部63との接触面積が大きくなって、力が分散され、リブ59に発生する応力が小さくなり、横方向へのリブ59の変形が抑えられて当接面61に対するシール部63の横方向への変位量も抑制される。これにより、リブ59と当接面61との摩擦によるパーティクルの発生が抑制される。このようにして、ダイヤフラムバルブ11´は、ダイヤフラムバルブ11の場合と同様に、シール推力の変動によるパーティクルの発生量の変動を抑制する効果を奏する。
【0056】
次に、本発明によるバルブ装置の他の実施形態を説明する。
図10は、本発明のバルブ装置の第2の実施形態によるダイヤフラムバルブ81の開状態を示す縦断面図を示しており、
図11は、本発明のバルブ装置の第3の実施形態によるダイヤフラムバルブ91の開状態を示す縦断面図を示している。
図10及び
図11では、第1の実施形態と共通する構成要素に第1の実施形態と同じ参照符号を付している。第2の実施形態のダイヤフラムバルブ81の構造及び第3の実施形態のダイヤフラムバルブ91は、リブが設けられている場所を除いて、第1の実施形態のダイヤフラムバルブ11と同じであるので、ここでは、リブが設けられている場所を中心に説明する。
【0057】
ダイヤフラムバルブ81及びダイヤフラムバルブ91は、共に、バルブ本体13と、弁体15と、弁体15を駆動するための駆動部17とを備え、バルブ本体13の上部に駆動部17が取り付けられている。バルブ本体13の上部中央には、弁室19が形成され、さらに、バルブ本体13の一方の側面に形成された流入口23から延び且つ弁室19の底部中央に開口する流入路25及びバルブ本体13の他方の側面に形成された流出口27から延び且つ弁室19の側面に開口する流出路29が形成されている。また、流入路25から弁室19への開口の周囲には、弁体15が接離する環状の弁座21が形成されている。ダイヤフラムバルブ81及びダイヤフラムバルブ91の駆動部17の構成は、ダイヤフラムバルブ11の駆動部17と同じであるのでここでは説明を省略する。
【0058】
ダイヤフラムバルブ11では、弁体15へ向かって隆起した円環形状のリブ59が弁座21に設けられる一方、弁座21と対向する弁体15の端面に円環形状の当接面61が設けられており、リブ59の頂部に設けられたシール部63が当接面61と平行に延びる円環形状のフラット面63aと、フラット面63aの内側と外側の両側に隣接して設けられフラット面63aに対して当接面61から離れる方向に傾斜して延びる円環形状の内側傾斜面63b及び外側傾斜面63cとを含んでいる。
【0059】
これに対して、ダイヤフラムバルブ81では、弁座21へ向かって隆起した円環形状のリブ83が弁座21と対向する弁体15の端面(底面)に設けられている一方、弁座21においてリブ83と対向する部分に当接面85が形成されている。また、リブ83の頂部に設けられたシール部87が当接面85と平行に延びる円環形状のフラット面と、フラット面の内側と外側の両側に隣接して設けられフラット面に対して当接面85から離れる方向に傾斜して延びる円環形状の内側傾斜面及び外側傾斜面とを含んでいる。
【0060】
ダイヤフラムバルブ81でも、ダイヤフラムバルブ11と同様の作用で、シール推力が低い場合、リブ83のフラット面のみが当接面85と当接し、当接面85とリブ83のシール部87との接触面積が小さくなる。また、シール推力が高い場合、リブ83のフラット面に加えて内側傾斜面及び外側傾斜面の少なくとも一部が当接面85と当接し、リブ83のシール部87と当接面85との接触面積が大きくなる。したがって、ダイヤフラムバルブ81は、ダイヤフラムバルブ11と同様の効果を奏することができる。
【0061】
また、ダイヤフラムバルブ91では、弁体15へ向かって隆起した円環形状のリブ93が弁座21に設けられていると共に、弁座21へ向かって隆起した円環形状のリブ95が弁座21と対向する弁体15の端面(底面)に設けられている。また、リブ93とリブ95の両方の頂部にそれぞれ設けられたシール部97,99が、何れも、弁座21と平行に延びる円環形状のフラット面と、フラット面の内側と外側の両側に隣接して設けられフラット面に対して互いのリブ93及びリブ95から離れる方向に傾斜して延びる円環形状の内側傾斜面及び外側傾斜面とを含んでいる。ダイヤフラムバルブ91では、リブ93及びリブ95の一方のシール部97,99が他方のシール部99,97の当接面としても機能する。
【0062】
ダイヤフラムバルブ91でも、ダイヤフラムバルブ11と同様の作用で、シール推力が低い場合、リブ93のフラット面のみがリブ95のフラット面すなわち当接面と当接し、リブ93のシール部97とリブ95のシール部99との接触面積が小さくなる。また、シール推力が高い場合、リブ93のシール部97のフラット面に加えて内側傾斜面及び外側傾斜面の少なくとも一部がリブ95のシール部99と当接し、リブ93のシール部97とリブ95のシール部99との接触面積が大きくなる。したがって、ダイヤフラムバルブ91は、ダイヤフラムバルブ11と同様の効果を奏することができる。
【0063】
以上、図示されている実施形態を参照して、本発明を説明したが、本発明は、図示されている実施形態に限定されるものではない。例えば、図示されている実施形態では、バルブ装置として、ダイヤフラムバルブが例示されているが、弁室への流入路の開口を弁体で封鎖するタイプのバルブであれば、本発明を適用することが可能であり、グローブバルブなどに本発明を提供することも可能である。また、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態では、押圧部の押し面35eが円形状となっているが、
図12に示されているように、押し面35eの中央部に肉盗み部69を形成して、押し面35eが環状(リング状)になっていてもよい。このような形状になっている場合、ステム
35cの押圧部の押し面35eがリブ59のシール部63の内側傾斜面63b及び外側傾斜面63cに近い部分に集中して弁体15を押圧するため、低いシール推力でも十分なシール性能を確保することが可能となる。さらに、小さな力でのダイヤフラム57へのステム
35cの先端の挿入が可能となって組立性が向上し、また、不要な力がダイヤフラム57の当接面61にかからないため、パーティクルの発生が抑制される。
【符号の説明】
【0064】
11 ダイヤフラムバルブ
13 バルブ本体
15 弁体
17 駆動部
19 弁室
21 弁座
25 流入路
29 流出路
57 ダイヤフラム
59 リブ
61 当接面
63 シール部
63a フラット面
63b 内側傾斜面
63c 外側傾斜面
81 ダイヤフラムバルブ
83 リブ
85 当接面
87 シール部
91 ダイヤフラムバルブ
93 リブ
95 リブ
97 シール部
99 シール部