(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】スズ-亜鉛コーティングを有するスタッド/ナット接地装置
(51)【国際特許分類】
H01R 4/64 20060101AFI20240816BHJP
H01R 4/58 20060101ALI20240816BHJP
H01R 13/03 20060101ALI20240816BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20240816BHJP
C25D 5/30 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01R4/64 C
H01R4/58 A
H01R13/03 D
H01R43/00 D
C25D5/30
(21)【出願番号】P 2021567031
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2020063390
(87)【国際公開番号】W WO2020229570
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-13
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504075577
【氏名又は名称】ニューフレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ドレクスラー フランク
(72)【発明者】
【氏名】ピンパー ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】フォルンハルス ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】ベナー フランク
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-034666(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0222027(US,A1)
【文献】特開2016-136494(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0176628(US,A1)
【文献】特開2016-207432(JP,A)
【文献】特開平11-257323(JP,A)
【文献】特開平07-174122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/64
H01R 4/30-4/36
H01R 13/03
F16B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地装置を製造する方法であって、
a.フランジとネジ切りセグメントとを含むアルミニウム細長スタッド(12)を与える段階と、
b.雌ネジ山を含むアルミニウムナット(16)を与える段階と、
c.不純物を脱脂又は除去するために前記
アルミニウムナット(16)、又は前記
アルミニウム細長スタッド(12)及び該
アルミニウムナット(16)を前処理する段階と、
d.スズ及び亜鉛を有するコーティング層を前記
アルミニウムナット(16)又は前記
アルミニウム細長スタッド(12)及び該
アルミニウムナット(16)上に設け、該
スズ及び亜鉛を有するコーティング層におけるスズが、該
スズ及び亜鉛を有するコーティング
層の重量で60と80%の間であり、該スズ-亜鉛
を有するコーティング
層が、約5から16ミクロンの平均厚みを有するものとする段階と、
e.前記
アルミニウムナット(16)、又は前記
アルミニウム細長スタッド(12)及び該
アルミニウムナット(16)を後処理する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記スズ及び亜鉛を有するコーティング層は、酸性スズ-亜鉛電気メッキによって前記
アルミニウムナット(16)、又は前記
アルミニウム細長スタッド及び該
アルミニウムナット上に設けられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
銅又は亜鉛を有するコーティング層が、前記前処理する段階の後かつ前記スズ-亜鉛
を有するコーティング
層の前に前記
アルミニウムナット(16)、又は前記
アルミニウム細長スタッド(12)及び該
アルミニウムナット(16)上に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
銅又は亜鉛
を有する前記
コーティング層は、200nmと3ミクロンの間の厚みを有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記後処理する段階は、面不動態化及び/又は潤滑剤を用いる更に別のコーティングを含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
フランジとネジ切りセグメントとを有するアルミニウム細長スタッド(12)と、
雌ネジ山を有し、かつ前記
アルミニウム細長スタッド(12)の対応する接触区域の導電体の小穴(28)を締め付けるようになったアルミニウムナット(16)と、
を含み、
前記
アルミニウムナット(16)が、少なくとも亜鉛を含有する少なくとも1つのコーティング
層(30)を有する、
接地装置であって、
前記コーティング
層は、スズを更に含み、
前記コーティング
層は、前記アルミニウムナット(16)上のスズ-亜鉛メッキ層で構成され、かつ前記スズが該コーティング
層の重量で60と80%の間であり、該スズ-亜鉛
を有する前記コーティング層が約5から16ミクロンの平均厚みを有するものである、
ことを特徴とする接地装置。
【請求項7】
前記スズ-亜鉛
を有する前記コーティング
層は、第1の層(30)を形成し、銅又は亜鉛の第2の層(32)が設けられ、該第2の層は、200nmと3ミクロンの間の厚みを有することを特徴とする請求項6に記載の接地装置。
【請求項8】
前記第1の層(30)は、外部層であり、かつ前記
アルミニウム細長スタッド(12)に面するようになっていることを特徴とする請求項7に記載の接地装置。
【請求項9】
第1の層の前記亜鉛は、前記
スズ-亜鉛を有する前記コーティング
層の重量で20と40%の間であることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の接地装置。
【請求項10】
前記
アルミニウム細長スタッド(12)は、溶接スタッド(12)であり、かつ該
アルミニウム細長スタッド(12)の端部上に位置付けられた溶接可能セグメント(22)を含むことを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の接地装置。
【請求項11】
前記
アルミニウム細長スタッド(12)又は該
アルミニウム細長スタッド(12)の少なくとも一部分が、該アルミニウム
細長スタッド(12)上の酸性スズ-亜鉛電気メッキで構成された少なくとも1つのスズ-亜鉛
を有する前記コーティング
層を含み、かつ前記スズが該
スズ-亜鉛を有する前記コーティング
層の重量で60と80%の間であり、該スズ-亜鉛
を有する前記コーティング
層が約5から16ミクロンの平均厚みを有する層を形成するものであることを特徴とする請求項6から請求項10のいずれかに記載の接地装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、接地装置を製造する方法及び電気接続部を形成するようになった接地装置に関するものであり、より具体的には接地スタッドを使用する自動車車両のための電気接続部を形成する方法及び接地装置に関する。この場合の接地装置は、アルミニウムで作られたスタッド及びナットを含む。
【背景技術】
【0002】
いくつかの産業では、取りわけ自動車及び産業用途において、ファスナは不可欠な構成要素である。例えば自動車業界では、ファスナは、車体パネル及び/又は異なる構成要素を車体に組み付けるのに不可欠な構成要素である。
【0003】
自動車製造業者の主要な目標は、乗用車の重量を低減することである。車両の構造本体は、車両の最大の構造であり、従って、環境問題に応じるため、取りわけ炭素放出を低減するための重量低減対策に理想的である。車両の車体重量を最小にする組立工程又は組立要素(例えば、ファスナ)を採用することは、車両力学、耐久性、及び衝撃適性を犠牲にすることなく軽量化を達成するのに重要な特性である。
【0004】
軽量の具体的手段として、鋼部品をアルミニウム合金のような軽量合金によって置換することは有効である。
【0005】
例えば車体パネルを通って接地のための戻り経路を与える目的に対して自動車のような機器の品目の板金車体パネルの上にネジ切り金属スタッドの細長円形端部をアーク溶接するか、又は他の手段により取り付けることは、一般的である。様々な電気端子接続部又は他の部品が、次に単一のネジ切りスタッドの上に挿入され、雌ネジ切りナットが、スタッドの上に回転的に挿入され、それによってスタッドを通じて端子端部を機器と締結する。従来のネジ切りスタッドは、エンジン区画フレーム又は車体パネルへの車両ワイヤハーネスのための電気接地点としても使用されている。典型的な自動車には、20から30の接地スタッドが使用される場合がある。
【0006】
鋼で作られたナットは、低い電気抵抗を可能にする。電流は、主としてナット及びネジ山の擦り面を通って流れる。本発明の目標は、同じ低い電気抵抗を可能にするアルミニウムで作られたナットを提供することである。
【0007】
従来技術は、取りわけ自動車車両に電気接地を提供するための多くシステムを提供する。
【0008】
WO2017041919は、アルミニウム構成要素、特に車体構成要素のための接地接続部を開示しており、接地接続部は、その面にわたって延びるアダプタの介在を用いてこの構成要素に締結された接地ボルトを有し、接地ボルトは、アルミニウム構成要素よりも大きい強度を示して電気化学電位系列が異なる材料、特に鋼で構成され、かつ接地接続部の対応する接触区域上の接地導体のケーブルシューを締め付けるネジ切り要素を有する。この接地接続部は、システムの重量及び製造複雑性を増大する可能性がある更に別の部品を使用する。
【0009】
文献US20150176628は、表面処理層を含む摩擦溶接された鉄接地アセンブリを開示している。そのような接地アセンブリは、本発明の用途、取りわけ自動車産業では重すぎる。
【0010】
文献USは、アルミニウム溶接ナットを有する摩擦溶接された接地アセンブリを開示している。アルミニウム合金は、より早期の世代の車両に使用された鋼に比べて耐食性及び軽量化を提供し、これらのアルミニウムベースの車両のための電気接地を準備するのに使用する手法は、鋼又は他の鉄ベースの金属構成要素を使用する車両に対して過去に開発されたものに基づくことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2017041919
【文献】US20150176628
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が提案して解決する課題は、簡単な製造方法によって恒久的に高い機能信頼性を保証し、取りわけ、低い電気抵抗を可能にするアルミニウムスタッド及びアルミニウムナットを有する接地装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明により、請求項1に記載の接地装置を製造する方法を提供する。特に、本方法は、a.フランジとネジ切りセグメントとを含むアルミニウム細長スタッドを与える段階と、b.雌ネジ山を含むアルミニウムナットを与える段階と、c.ナット又はスタッド及びナットを前処理して不純物を脱脂又は除去する段階と、d.スズ及び亜鉛を有するコーティング層をナット又はスタッド及びナット上に設ける段階とを含み、スズがコーティングの重量で60と80%の間であり、スズ-亜鉛コーティングが約5から16ミクロンの平均厚みを有するものとする段階と、e.ナット又はスタッドとナットとを後処理する段階とを含む。
【0014】
そのような方法は、容易に行われ、かつ鋼部品を置換して同じか又は同等の電気抵抗を有するアルミニウム部品を有する接地コネクタの製造を可能にする。スズ亜鉛コーティングは、腐食に対する抵抗を提供し、アルミニウム-鉄接触を通した腐食を回避し、かつ取りわけ1ミリオーム(mΩ)よりも低く、特に0.1ミリオーム(mΩ)よりも低い電気抵抗を有する良好な伝導性を可能にする。接地装置は、スタッドの上に装着されることになる小穴と協働してネジ切りナットがスタッドの上に挿入された電気接続部又は接地接続部を形成するようになっている。実施形態では、スズは、コーティングの重量で70%よりも少ない。
【0015】
スズ及び亜鉛を有するコーティング層は、酸性スズ-亜鉛電気メッキによって作られる。
【0016】
実施形態では、銅又は亜鉛を有するコーティング層が、前処理段階の後かつスズ-亜鉛コーティングの前にナット又はスタッド及びナット上に与えられる。
【0017】
実施形態では、銅又は亜鉛の層は、200nmと3ミクロンの間の厚みを有する。
【0018】
実施形態では、後処理段階は、面不動態化及び/又は潤滑剤による更に別のコーティングを含む。
【0019】
実施形態では、ナット(16)の電気抵抗は、1ミリオーム(mΩ)よりも低い。
【0020】
本発明はまた、フランジとネジ切りセグメントとを有するアルミニウム細長スタッドと、雌ネジ山を有してスタッドの対応する接触区域上で導電体の小穴を締め付けるようになったアルミニウムナットとを含み、ナットが、少なくとも亜鉛を含有する少なくとも1つのコーティングを有し、コーティングが、スズを更に含み、コーティングが、アルミニウムナット上のスズ-亜鉛メッキ層で構成され、かつスズがコーティングの重量で60と80%の間であり、スズ-亜鉛コーティングが約5から16ミクロンの平均厚みを有する層を形成するようなものであることを特徴とする接地装置に関する。
【0021】
上記で言及したように、スズ亜鉛コーティングは、腐食に対する抵抗を提供し、アルミニウム-鉄接触を通した腐食を回避し、かつ取りわけ1ミリオーム(mΩ)よりも低く、特に0.1ミリオーム(mΩ)よりも低い電気抵抗を有する良好な伝導性を可能にする。接地装置は、スタッドの上に装着されることになる小穴と協働してネジ切りナットがスタッドの上に挿入された電気接続部又は接地接続部を形成するようになっている。そのような接地装置は、それが機能安全性を高めることを可能にするので、自動運転乗用車又は電気自動車に対して特に有利である。
【0022】
実施形態により、スズ-亜鉛コーティングは、第1の層を形成し、銅の第2の層が設けられ、第2の層は、200nmと3ミクロンの間の厚みを有する。銅を有する層は、蛍光を通して第1及び第2の層の間の良好な区別を可能にする。代替実施形態では、亜鉛の第2の層が設けられる場合がある。
【0023】
実施形態により、第1の層は、外部層であり、かつスタッドに面するようになっている。第2の層は、ベースコーティングを形成する。
【0024】
実施形態により、第1の層の亜鉛は、コーティングの重量で20と40%の間である。避けられない不純物及び偶発的な元素は別として、第1の層は、スズ及び亜鉛のみで構成される。
【0025】
実施形態により、スタッドは、溶接スタッドであり、かつスタッドの端部上に位置付けられた溶接可能セグメントを含む。別の実施形態では、スタッドは、ホック又は留めスタッドである場合がある。溶接スタッドは、典型的には、ロッド材料から冷間圧造されるような標準ファスナスタンピング方法によって形成された中実非圧縮性本体である。そのような溶接スタッドは、円形犠牲溶接物要素、並びに構成要素ベース材料の一部分の両方を溶融するためのエネルギを溶接スタッドを通して提供する公知の溶接デバイスを使用することによって構成要素面に溶接される。溶接スタッドは、液化金属の混入及び冷却に起因してベース材料に固定される。溶接デバイス、特に溶接ガンは、スタッドの肩部と溶接される面の端部との間の領域に溶接スタッドを締め付けジョーを使用して把持する。各溶接スタッドは、溶接の直前に一度に1つずつ溶接ガンの口部の中に置かれる。溶接可能セグメントは、例えば、環状溶接物区域である。
【0026】
実施形態により、スタッド又はスタッドの少なくとも一部分は、アルミニウムスタッド上の酸性スズ-亜鉛電気メッキで構成された少なくとも1つのスズ-亜鉛コーティングを含み、かつスズがコーティングの重量で60と80%の間であり、スズ-亜鉛コーティングが約5から16ミクロンの平均厚みを有する層を形成するようなものである。すなわち、ナット及びスタッドの両方に同じか又は類似のコーティングが設けられる。
【0027】
本発明の他の特性及び利点は、添付図面を参照して非限定的例として提供される実施形態の以下の説明から直ちに明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明によるナット及びスタッド及び小穴を有する接地装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
異なる図に関して、同じ参照符号は同一又は類似の要素を指定している。
【0030】
図1は、アルミニウムで作られた細長スタッド12、雌電気コネクタ14、及びアルミニウムで作られたナット16を有する電気コネクタ又は接地コネクタ10を概略的に示している。
【0031】
スタッド12は、長手軸線Xを延び、かつナット16の雌ネジと協働するようになったネジ切りセグメント18を含む。スタッド12には、例えば固定セグメント22を有するフランジ20が更に設けられる。固定セグメントは、ワークピース24に固定されるようになっている。固定セグメント22は、例えば、引き抜きアーク溶接によってワークピース24に溶接される。
【0032】
電気コネクタ10は、ワイヤ26を含み、ワイヤは、ワイヤハーネスから分岐し、その端部の上に打ち抜き金属小穴28が圧着されている。
【0033】
ナット16は、スタッドのネジ切りセグメント18に係合するための雌ネジ山を有する円筒セクションを有することができる。
【0034】
ナット16及びスタッド12は、接地装置を形成する。
【0035】
電気接地スタッド用途では、電着及び塗料侵入を防止するためにナット14が予め組み付けられたスタッド12は、最初にパネル又はワークピース24に溶接又は固定される。その後に、ナット14は取り外される。次に、小穴28が、スタッドのネジ切りセグメント18の周りに手作業で置かれる。ナット16は、その後にスタッドの上に回転可能に押し込まれる。
【0036】
ナット16には、
図2に概略的に示すようにコーティング30、取りわけ、完全なコーティングが設けられる。コーティングは、スズ及び亜鉛混合結晶を含み、かつアルミニウムナットに塗布される。特に、雌ネジにも、スズ及び亜鉛混合コーティングが設けられる。コーティングは、酸性スズ-亜鉛電気メッキを用いて電解的にナットに塗布される。酸性電解質は、より高い電流効率及び従ってより迅速な堆積速度を可能にする。
【0037】
電解コーティングは、メッキ浴内で行うことができる。メッキ浴を形成するための好ましい材料は、商標SLOTOLOY ZSNの下でSchlotter Galvanotechnicsから市販されている。特に、SLOTOLOY ZSN 10は、金属ファスナにスズ及び亜鉛合金コーティングを塗布するのに使用することができる弱酸性(3.8から4.2のpH)電解質である。被覆金属ファスナを生成するための考えられる方法では、メッキ浴は、アンモニウム塩を含有するSLOTOLOY ZSN 10から形成されて組み合わされる。浴の温度は、好ましくは、コーティング層が金属ファスナの上に堆積される間は約40度Cに保たれる。堆積は、スズアノード(DIN 1704 Material NR.2-3501による少なくとも99.9%スズ)及び微細亜鉛アノード(DIN EN 29453による99.99%亜鉛)を使用して行われる。スズ及び亜鉛アノードのための別々の電気回路内のアンペア数は、電解質濃度及び望ましい合金組成に適する比にある。
【0038】
コーティング30は、スズがコーティング層の重量で60と80%の間であるようなものである。亜鉛は、コーティング層の重量で20と40%の間である。コーティング又は混合結晶層は、好ましくは、約5から16ミクロン(μm)の平均厚みを有する。スズ-亜鉛コーティング層は、第1のコーティング層30を形成することができる。
【0039】
実施形態では、ナットは、最初に、銅で作られた第2のコーティング層32で被覆することができる。これに代えて、第2のコーティング層32は、亜鉛を用いて作ることができる。第2のコーティング層は、好ましくは、約200ナノメートル(nm)から3ミクロン(μm)の平均厚みを有する。第2の層は、スズ-亜鉛の第1の層の塗布の前に材料及びナットの面を安定させる。すなわち、スズ-亜鉛コーティングは、必要な性能を達成するために、取りわけ、鋼ナットの電気抵抗と比較することができるアルミニウムナットに関する低い電気抵抗を可能にするためにより良く反応する。
【0040】
第1の層30は、外部層であり、かつスタッドに面するようになっている。第2の層32は、すなわち、ナットの未加工面と第1の層の間を延びる。
【0041】
実施形態では、アルミニウムスタッド12にも、ナット16と同じか又は類似のコーティングを設けることができる。例えば、スタッド12又はスタッドの少なくとも一部分(取りわけ、スタッドのネジ切り部分)は、アルミニウムスタッド上の酸性スズ-亜鉛電気メッキで構成された少なくとも1つのスズ-亜鉛コーティングを含み、かつスズがコーティングの重量で60と80%の間であり、スズ-亜鉛コーティングが約5から16ミクロンの平均厚みを有する層を形成するようなものである。しかし、同様のコーティングによるスタッドのコーティングは必須ではなく、他のスタッドコーティングを使用することができる。
【0042】
本発明による方法では、被覆アルミニウムナットは、以下のように製造される。
【0043】
第1の段階では、雌ネジ山を含むアルミニウムナット16が与えられる。アルミニウムナットは、次に、あらゆる不純物を脱脂又は除去するために前処理される。すなわち、ナットの面が、コーティングに対して準備される。ナットの面は、コーティングが面に接着することになるように十分に清浄かつ粗面である。脱脂アルミニウムナット16は、次に、スズ-亜鉛混合物で電解的に被覆される前に銅又は亜鉛合金で被覆することができ、スズは、スズ-亜鉛コーティングの重量で60と80%の間である。スズ-亜鉛コーティングは、次に、5から16ミクロンの平均厚みを有する層を形成する。次に、面不動態化及び/又は潤滑化を用いて、得られたアルミニウムナット上に後処理を行うことができる。このコーティングは、アルミニウム/鉄接触に起因して腐食を低減することを可能にする。
【0044】
こうして得られたアルミニウムナットは、取りわけ1マイクロオームよりも低い電気抵抗により、鋼ナットよりも電気抵抗に関してかなり類似の性能を可能にする。鋼ナットは、すなわち、スズ-亜鉛コーティングに起因してアルミニウムによって置換することができ、これは、かなりの重量低減を可能にする。
【0045】
アルミニウムスタッド又はスタッドの少なくとも一部分も同じ処理を受けることができる。最初に、フランジとネジ切りセグメントとを含むアルミニウム細長スタッドが与えられる。次に、アルミニウムスタッド又はその一部分、例えば、ネジ切りセグメントは、スズ-亜鉛混合物で電解的に被覆される前に銅又は亜鉛合金で被覆することができ、スズは、スズ-亜鉛コーティングの重量で60と80%の間である。スズ-亜鉛コーティングは、次に、5から16ミクロンの平均厚みを有する層を形成する。次に、面不動態化及び/又は潤滑化を用いて、得られたアルミニウムナット上に後処理を行うことができる。
【0046】
得られたアルミニウムナット又はアルミニウムスタッドは、摂氏135度の温度で安定であり、かつ摂氏150度までの温度で安定に留まることができると考えられる。そのようなコーティングを有する得られたアルミニウムナットは、1ミリオームよりも低い電気抵抗を可能にする。
【符号の説明】
【0047】
12 スタッド
10 電気コネクタ、接地コネクタ
16 ナット
18 ネジ切りセグメント
28 小穴