(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】シャントデバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20240816BHJP
A61B 5/0215 20060101ALI20240816BHJP
A61B 5/026 20060101ALI20240816BHJP
A61B 5/0265 20060101ALI20240816BHJP
A61B 17/11 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A61F2/07
A61B5/0215 C
A61B5/026 120
A61B5/0265
A61B17/11
(21)【出願番号】P 2021568676
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2020063553
(87)【国際公開番号】W WO2020229636
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-11
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521500409
【氏名又は名称】トニー オハロラン
(73)【特許権者】
【識別番号】521500410
【氏名又は名称】ジョン トンプソン
(73)【特許権者】
【識別番号】521500421
【氏名又は名称】エリー ラシード バレシュ
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トニー オハロラン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン トンプソン
(72)【発明者】
【氏名】エリー ラシード バレシュ
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0281339(US,A1)
【文献】特開2014-138845(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0083076(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/02
A61F 2/06-2/07
A61F 2/24
A61B 5/0215
A61B 5/026
A61B 5/0265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓の左心房(C)から心房中隔壁(H)の開口部(J)を通して血液をシャントするように構成された埋め込み型シャントデバイス(1)であって、前記デバイスは、送達カテーテルでの送達に適した収縮送達構成と展開された半径方向に拡張された構成との間で半径方向に調整するように構成されたチューブ(2)を備え、前記チューブは、貫通管腔、遠位端(3)、および心房中隔壁の開口にまたがりおよび前記壁に固定するように構成された近位端(4)を有し、前記チューブの遠位端(3)は、奇静脈内に固定し、および流体的に緊密な方法で前記奇静脈(G)と係合し、これによって、前記デバイス(1)は、前記心臓の前記左心房(C)から前記奇静脈(G)に血液をシャントするように構成されていることを特徴とする埋め込み型シャントデバイス(1)。
【請求項2】
前記デバイスの前記遠位端(3)は、前記奇静脈の小孔で過剰拡張するように構成されて、前記デバイスの前記遠位端を前記小孔に固定し、および前記シャントデバイスと前記奇静脈との間に流体的に緊密な接続を作成することを特徴とする請求項1に記載の埋め込み型シャントデバイス(1)。
【請求項3】
前記チューブ(2)が可撓性であり、および前記デバイスの開通性を維持するのに適した構造的ワイヤ要素と、前記デバイスからの流体の漏出を防止するように構成された生体適合性閉塞シースとを含む、請求項1または2に記載の埋め込み型シャントデバイス(1)。
【請求項4】
前記デバイスは、前記シャントデバイス内のまたは前記シャントデバイスに隣接する血液のパラメータを検出するためのセンサを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項5】
前記センサは、前記センサから遠隔位置に信号を無線で送信するように構成された無線通信モジュールを備えることを特徴とする請求項4に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項6】
第2のセンサを含むことを特徴とする請求項
4または5に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項7】
前記センサは、前記左心房の血液のパラメータを検出するように構成され、および前記第2のセンサは、右心房の血液のパラメータを検出するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項8】
前記センサは、前記左心房の血圧を検出するように構成され、および前記第2のセンサが前記右心房の血圧を検出するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項9】
前記デバイスは、弁を含み、前記弁は、右
心房から左
心房または左
心房から右
心房への血流、または前記左心房への血栓の通過を制御するように任意選択で構成されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項10】
前記弁は、生体内または生体外で前記シャントデバイスに後付けするように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項11】
前記近位端(4)は、心房中隔壁(H)の両側で拡張して前記デバイスの前記遠位端を固定するように構成された2つの軸方向に離間した拡張可能な保持フランジセクション(5)を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項12】
前記保持フランジは、前記開口部(J)が配置されている前記心房中隔壁(H)の厚さにほぼ等しい距離だけ軸方向に離間されていることを特徴とする請求項11に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項13】
前記デバイスは自己拡張可能であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項14】
前記デバイスは、展開する
と湾曲形状を呈するように予備形成される
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項15】
前記デバイスは、モジュール式であり、および前記心臓内でその場で組み立てられるように構成された2つ以上の部品(15、16)で提供される
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項16】
前記デバイスは、前記遠位端(3)を含むかまたは本質的にそれからなる第1の部分と、前記近位端(4)を含むかまたはそれからなる第2の部分とを含み、ここで前記第1および第2の部分の自由端(17)は、前記心臓内にその場で係合するように構成される
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項17】
前記第1の部分は前記遠位端(3)および可撓性チューブ(2)を含み、および前記第2の部分は本質的に前記近位端(4)からなる
ことを特徴とする請求項16に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項18】
前記第1の部分は、前記遠位端(3)および前記可撓性チューブ(2)の第1のセクションを含み、および前記第2の部分は、前記近位端(4)および前記可撓性チューブ(2)の第2のセクションを含み、ここで、前記可撓性チューブの前記第1および第2のセクションの自由端(17)は、前記心臓内にその場で係合するように構成されている
ことを特徴とする請求項17に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項19】
前記デバイスは、構造的ワイヤ要素(10)と、前記構造的ワイヤ要素の内側または外側に配置された生体適合性閉塞シースと、を含む
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項20】
前記構造的ワイヤ要素は、形状記憶材料を含む
ことを特徴とする請求項19に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項21】
前記構造的ワイヤ要素は、複数の円周方向および半径方向に拡張可能なワイヤストラット(10)を含む
ことを特徴とする請求項19または20に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項22】
前記デバイスは、生分解性である
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項23】
前記デバイスは、半径方向の収縮および除去カテーテル内への撤回のために構成されている
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項24】
前記デバイスの遠位端(3)は、内側スリーブ(62)に対する軸方向または回転方向の動きのために前記内側スリーブに動作可能に接続された外側スリーブ(61)と
、前記内側スリーブに対する前記外側スリーブの軸方向または回転運動が半径方向に延長可能な固定要素を半径方向外向きに延ばすように前記外側および内側スリーブに関連付けられる半径方向に延長可能な固定要素と、を含む固定機構を備える
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項25】
前記半径方向に延長可能な固定要素(63)は、取り付け点で前記内側スリーブ(62)に取り付けられ、および前記外側スリーブ(61)は、前記固定要素の遠位端を受け入れるための開口を含み、前記開口は前記取り付け点の近位に配置されていることを特徴とする請求項
24に記載の埋め込み型シャントデバイス。
【請求項26】
請求項4から8のいずれか一項に記載のシャントデバイスと、感知されたパラメータまたは各パラメータに関連するデータを受信するように構成されたワイヤレス受信機と、前記データを表示するためのディスプレイとを含むリモートデバイスと、および/または心臓/血管系内の標的位置への前記シャントデバイス(1)の経皮的または経心尖的送達のために構成された送達デバイス(25,30,40))を含むことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャントデバイスに関する。対象における心臓病の治療方法も企図されている。
【背景技術】
【0002】
心不全(Heart failure)(HF)は、代謝性要件を満たしおよび静脈還流に対応するのに適当である心拍出量(CO)を心臓が維持することができない複雑な臨床症候群を表す。この最終的な共通のクリニカルパスにつながる複数の病因があり、これは50%の5年死亡率(50% 5-year mortality rate)をもたらし、および心血管系の原因による米国の全死亡の3分の1超の原因となる。世界的に、心血管系疾患は増加しており、および死因の第一位であり続けている。毎年、米国では500,000件超の新規症例が、および世界的にはHFと診断される200万件超の新規症例があり、米国では600万超、および世界中で3,000万人の患者数をもたらす。
【0003】
心拍出量の生理学(Physiology):一定の期間(given time period)に心臓によって送り出される血液の量は心拍出量として知られており、これはひいては、HRと1回拍出量(stroke volume)(SV)との積(product)であり、および典型的には4~8L/分である。さらに、相乗的な心室収縮(ventricular contraction)、心室壁(ventricular wall)の完全性、および弁機能(valvular competence)のような他の要因はすべてCOに影響を与える。SVは、心拍(heartbeat)ごとに心室(ventricle)から排出される血液の量として定義され、および通常は1cc/kgまたは約60~100ccである。SVは、次の3つの主な要因、拡張期の末期における心筋線維伸長(myocardial fibre stretch)の量である前負荷、心室が血液を排出するために克服されなければならない抵抗である後負荷、および前負荷または後負荷に依存しない心臓の変力状態(inotropic state)である収縮性(contractility)、によって影響を受ける。
【0004】
心不全の種類::急性心不全は突然発症し、および症状は病初では重症である。急性心不全は心臓発作に続く可能性があり、これは心臓の領域に損傷を与えている。また、慢性心不全を補うための身体による能力の突然の欠如によって引き起こされる可能性がある。急性心不全を発症した場合、病初では重症になる可能性があるが、短期間しか続かず、および急速に改善する可能性がある。それは通常、注射(静脈内)によって投与される治療および投薬を必要とする。慢性心不全は非常に一般的である。症状は時間の経過とともにゆっくりと現れ、および徐々に悪化する。慢性心不全の患者において、息切れのような症状が非常に短期間で悪化した場合、これを急性代償不全のエピソードと呼ぶ。これらのエピソードは病院で治療される必要があることが多く、およびしたがって、回避されるべきである。左側心不全は、体全体に血液を送り出す左心腔(left heart chamber)の力が低下することを意味し、したがって、左チャンバ(left chamber)は同じ量の血液を送り出すためにより懸命に働かなければならない。
【0005】
2つのタイプの左側心不全がある。
収縮不全(Systolic failure):左チャンバは、十分な血液を循環に送り込む力に欠く。
拡張不全(Diastolic failure):筋肉が硬くなりおよび充満(filling)が損なわれるので、左チャンバは正常に弛緩できない。
右側心不全では、血液を肺に送り出す右側のポンプ室または心室が損なわれる。
これは、右心室に限局された心臓発作、心臓の右側内の弁の損傷、または肺内の圧力上昇のような筋肉の損傷に起因する可能性がある。しかしながら、心不全は一般的に心臓の両側に影響を及ぼし、およびその結果、両心室性(biventricular)心不全と呼ばれる。
【0006】
左側HFの病態生理(Pathophysiology):2つのタイプの左側心不全、すなわち、収縮不全および拡張不全がある。収縮心不全は、左心室の筋壁の収縮が機能不全に陥ったときに発生し、これはそのポンプ作用を損なう。これは、駆出率(ejection fraction)の正常範囲を下回る減少、および経時での心室の拡大を引き起こす。拡張心不全は、筋肉が硬くなったために左心室の筋壁が正常に弛緩できないときに発生する。これが起こると、心臓は適切に充満されず、駆出率は大抵、正常範囲内にとどまるが、1回拍出量は減少する。機能不全に関係なく、左側心不全は、心臓が体の要求を満たすのに十分な血液を循環に送り込むことができないままにし、および心臓内の上昇圧力は、血液が肺循環(pulmonary circulation)に逆流(backup)することを引き起こし、肺に鬱血を生じさせる。左側心不全による肺鬱血(Pulmonary congestion)は、症状の悪化および急性代償不全を引き起こす一般的なメカニズムである。埋め込み型血行力学的圧力モニタリングを用いた研究は、左心房圧を制御するための薬剤(medications)の滴定による、改善された結果(outcomes)および、HF入院(hospitalization)の減少を示している。
【0007】
右側心HFの病態生理学:右心室(RV)不全の最も一般的な原因は、LV不全である。RVが機能しなくなる(fails)につれて、心室内の血液量に同様の増加があり、これは次に、右心房圧の上昇、および大静脈系(vena cava system)内における圧力の上昇を引き起こし、これは、体からの静脈ドレナージを損なう。これは、肝臓、胃腸管(gastrointestinal tract)、および下肢の圧力の上昇、ならびに腹痛、肝腫大(hepatomegaly)、および末梢性浮腫(末梢性浮腫)の臨床的兆候および症状を引き起こす。
【0008】
駆出率::駆出率という用語は、チャンバ(chamber)の強度および各拍動(beat)で空にする能力を表すために使用される。それは多くの方法で測定され得るが、通常は心エコー検査(echocardiography)で測定され得る。メインポンプチャンバ(main pumping chamber)のポンプ能力が低下した場合、それはしばしばHFrEFまたは駆出率が低下した心不全と呼ばれる。主な問題が拡張期(diastole)の間の異常な弛緩であり、これが充満を損なう場合、HFpEF、または駆出率が維持された心不全という用語がしばしば使用される。多くの場合、これらの状態の間には重複があり、空にすることおよび充満させることの両方が減少する。
【0009】
HFpEFの病態生理学:HFpEFによる心不全は、心不全診断の約50%(~50%)を占めるが、根本的な病態生理学および診断基準は十分に定義されていない。部分的に結果として、HFpEFの患者にとって説得力のある結果の利益を示す治療法(medical treatment)はまだない。HFpEFの臨床的特徴(clinical hallmark)は、少なくとも部分的には運動中の左心房圧(LAP)の異常な上昇に起因する、労作性の息切れである。HFpEFの患者の運動耐容能(exercise tolerance)の低下につながる多くの潜在的なメカニズムがある。通常の生理学では、運動中の1回拍出量の増加は、交感神経活性化(sympathetic activation)の正の変弛緩(lusitropic consequence)によって部分的に達成され、左心室(left ventricular)(LV)弛緩は、拡張早期(early diastole)の低いLV圧によって強化される。HFpEFの患者のLV弛緩の障害およびLV硬直(stiffness)の増加は、運動中の拡張末期(end diastolic)LV容積の増加を防止し、したがって、左心房(left atrium)の圧力を増加させる。運動中の肺毛細血管楔入圧(pulmonary capillary wedge pressure)(PCWP)によって測定されるLAPの過度の増加は、HFpEFの患者に一般的に見られる所見であり、および予後が悪い者を特定する。HFpEFの患者は、通常のコントロールと比較して、増分運動テスト中に低いピークワークロード(体重1キログラムあたりのワット数)に達するが、どちらも同様のピーク運動PCWPに達する。ワークロードインデックスのピーク運動PCWPの増加は、初期段階のHFpEFの診断となる可能性がある。ワークロードに対するピーク運動PCWPのより高い比率は、HFpEFの患者の10年死亡のリスクの高さに関連付けられる。
【0010】
HFの分類::HFの機能的分類は、概して、ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)の機能的分類に依存する。クラス(I-IV)は次のとおりである。
クラスI:いかなる活動にも制限は経験されない。通常の活動による症状はない。
クラスII:活動のわずかな軽度の制限。人は安静時にまたは軽度の運動で快適である。
クラスIII:あらゆる活動の著しい制限。人は安静時にのみ快適である。
クラスIV:あらゆる身体活動は不快感を引き起こし、および症状は安静時に発生する。
このスコアは症状の重症度を記録し、および治療への反応を評価するために使用し得る。
【0011】
HFの症状:症状は非常に似ている可能性があり、たとえば、すべてのタイプの心不全は、通常は肺だけでなく、肝臓、腸、腎臓、および下肢のような体の他の部分に、息切れ、疲労、およびある程度の鬱血を引き起こすため、正確な診断は難しい場合がある。
【0012】
HFの管理:HFの治療のための一般的な対策は、ライフスタイルの変更および医学的治療の両方を含む。患者は、過体重を減らし、タバコおよびアルコールの使用を控え、ならびに許容される運動を通じて体調を改善するように奨励されるべきである。医学的治療は、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、および不整脈の治療、ならびにナトリウムおよび水分の制限を含む。血管再生可能な冠状動脈疾患は、適切に治療されるべきである。
【0013】
HFの薬理学的管理:HFの薬理学的管理は、以前に議論された代償メカニズムの有害な影響を打ち消すように設計された多くの薬剤を含む。ジゴキシン(Digoxin)は200年以上にわたってHFを治療するために使用されており、および心筋の変力作用を増強するように作用し、およびSNSおよびRAASの活性化を低下させる。フロセミド(furosemide)のような利尿薬は、体液貯留(肺鬱血および末梢性浮腫)を緩和し、および運動耐容能を改善する。カプトプリル(captopril)およびエナラプリル(enalapril)のようなACE阻害薬は、アンジオテンシンI(angiotensin I)からアンジオテンシンII(angiotensin II)への変換をブロックし、RAASの活性化を低下させる。バルサルタン(valsartan)、ロサルタン(valsartan)、およびカンデサルタン(candesartan)のようなアンジオテンシン(Angiotensin)受容体遮断薬は、ACE阻害薬療法に耐えられない患者に使用され、およびRAAS経路の最終的な下流標的であるアンジオテンシン受容体に直接作用する。カルベジロール(carvedilol)およびメトプロロール(metoprolol)のようなβ遮断剤は、SNSの過剰刺激の有害な影響から心臓および血管系(vasculature)を保護し、および心臓を遅くしてより効率的な収縮を可能にするために使用される。スピロノラクトン(spironolactone)のようなアルドステロン(Aldosterone)拮抗薬もまた、RAASを直接阻害する。ミルリノン(milrinone)のような変力剤(Inotropic agents)は、心筋の直接刺激を提供して収縮性を増大させる。
【0014】
HFの外科的管理:外科的管理は、心臓再同期療法(CRT)、冠状動脈血管再生、外科的心室リモデリング(SVR)、心室補助デバイス(VAD)埋め込み、および心臓移植を含む。可逆性虚血性心疾患は、より機能的な心筋を提供し、およびポンプ効率を改善し得る。CRTは、両方の心室を同時にペーシングすることによって心室効率を改善することを目的とする。SVRは、心室の通常の形状を外科的に復元しようとする。VADはHFの減少したCOを増加させ、および心臓移植は機能不全の心臓を新しい機能性器官に置き換える。
【0015】
HFの管理に使用される埋め込み型医療デバイス(Implantable medical devices):心臓再同期療法(CRT)のような埋め込み型医療デバイスは、心不全および駆出率低下(HFrEF)の患者のサブセットの症状および期待寿命を改善する。他のいくつかは、心臓の血行動態(haemodynamics)を監視することによって入院を回避するために医学療法の早期調整を可能にする。しかしながら、HFpEFの患者におけるCRTおよびレート適応ペーシングのような埋め込み型デバイスの役割を調査する試験は、主に人員募集の失敗に起因して行き詰まっており、おそらくいくつかの併存疾患のある高齢患者の、参加に対する嫌気を反映している。
【0016】
HFpEFは左心房圧の上昇に関連付けられる:HFpEFの臨床的特徴は、少なくとも部分的には、運動中の左心房圧(LAP)の異常な上昇に起因する労作性の息切れである。重度の肺動脈高血圧症(PAH)の患者では、右から左への心房シャントの作成は、右心房(right atrial)および心室の圧力を低下させ、および、おそらく心拍出量の増大に起因した全身酸素供給に起因して、チアノーゼにかかわらず、症状を改善させる。左心房を減圧することは、同様に、HFpEFの患者に対症療法および血行力学的改善を提供する可能性がある。経皮的に(percutaneously)送達された心房中隔(atrial septal)デバイスでLAPを低減することは、新しい潜在的な治療戦略である。
【0017】
左心房減圧の利点:左心房減圧のための心房間シャントの作成は、心筋炎(myocarditis)または末期心筋症(end-stage cardiomyopathy)および難治性肺水腫(intractable pulmonary oedema)の患者のためのブレードおよびバルーン中隔裂開術(septostomy)でうまく適用されている。より最近では、経皮的に埋め込み可能な(implantable)永久心房間シャントデバイスが慢性HFの患者を治療するために開発されており、および有望な初期の臨床的および血行力学的結果を示している。ほとんどの報告は、駆出率が保たれた(HFpEF)HF患者に焦点が当てられている。
【0018】
左心房圧を低下させるための新しい埋め込み型デバイス:LAPを変更する外科的および医学的介入は、さまざまな心臓病の病理における症状および死亡率に重大な影響を与える可能性がある。1つの例は、HeFREF(n=40)患者の医薬治療(medical therapy)のためのガイドとしてLAPの侵襲的測定を行うデバイスは、LAPの低下、症状の改善、および静脈内利尿薬治療を必要とする症状の悪化率の低下に関連付けられていたことである。先天性閉塞性(congenital obstructive)左心疾患の結果としてLAPが高く右心房圧(RAP)が低い5人の患者の観察研究では、心房間コミュニケーションの作成は、左心房高血圧を緩和し、および症状を改善した。逆に、肺水腫は、心房中隔欠損(ASD)の閉鎖後にLAPの劇的な増加に次いで二次的に一部の患者で発症し得る。
【0019】
いくつかの経皮的に埋め込み可能な心房間シャントは、医学および特許の文献に記載されている。短期間の小規模な臨床試験では、両方のタイプは、症状、寿命測定(life measurements)の質、および運動能力の改善に関連付けられることが示されている。これらのシャントはまた、観察されたおよび理論上の欠点を有し、これは、それらの効果および使用を制限する可能性がある。心房間シャントの経皮的埋め込みは、概して、シャントデバイスの挿入の直前に経中隔カテーテル法(transseptal catheterization)を必要とする。経中隔カテーテル法システムは、大腿静脈(femoral vein)の入口部位から、心房中隔の中央で最も薄い領域である卵円窩(fossa ovalis)(FO)の領域内の心房中隔を横切って配置される。成人のFOは、典型的には、その主軸の寸法が15~20mmであり、および最大10mmの厚さである場合がある。LAチャンバへのアクセスは、針穿刺、スタイレット穿刺、スクリュー針穿刺、および高周波焼灼を含むがこれらに限定されない、当業者によく知られている多くの異なる技術を使用して達成されてもよい。2つの心房の間の通路は、所望のオリフィスサイズを有するシャントデバイスの通過を容易にするために拡張される。拡張は、概して、テーパー付けられたシース/拡張カテーテルシステムを前進させること、または血管形成術(angioplasty)タイプのバルーンのFO全体にわたる膨張によって達成される。これは、先天性二次(secundum)心房中隔欠損症(ASD)が位置するであろう、同じ一般的な場所である。
【0020】
V-Waveデバイスは、砂時計型のニッケルチタンフレーム上の3枚のリーフレットのブタ組織弁である。デバイスは、全身麻酔下で透視(fluoroscopic)および心臓内(intracardiac)または経食道的(transoesophageal)心エコーガイダンス(echocardiographic guidance)を使用して、大腿静脈内のシース(14F)を介して経皮的に展開される。無線周波数(radiofrequency)経中隔穿刺に続いて、砂時計(直径5mm)の中心は、卵円窩を横切って配置され、左右の心房内に位置する砂時計の両端がデバイスを所定の位置に固定する。左心房のオリフィスは、血流を改善し、およびデバイス上の新しい組織の成長を制限するように設計された拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)で裏打ちされる(lined)。血液は、RAPが2mmHgを超えたときに閉鎖するように設計されたブタの弁を介して左から右に流れ、したがって、右から左へのシャンティングを防ぐ。デバイスの埋め込み後、患者はワルファリン(warfarin)または直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)による3か月間の抗凝固療法、および低用量のアスピリンによる無期限の(indefinitely)抗凝固療法を必要とする。デバイス挿入は、症状の改善(ベースラインでのNYHA III対6か月でのII)、機能的能力(ベースラインでの6分間歩行テスト距離281m対6か月での617m)、およびNTproBNPの実質的な低下(ベースラインでの2983pg/mL対6か月での1334pg/mL)に関連付けられた。
【0021】
Corvia Medical,Inc.によって開発されたIASD(心房間シャントデバイス)システム。このニチノール(nitinol)デバイスは、左右の心房ディスク(外径19mm)で構成され、8mmの通信装置(communication)を備える。デバイスは、全身麻酔下で透視および心臓内または経食道的心エコーガイダンス(echocardiographic guidance)を使用して、大腿静脈内のシース(16F)を介して経皮的に展開される。デバイスは、卵円窩中隔の経中隔穿刺後に展開され、送達カテーテルを左心房内に配置しおよび左心房ディスクを展開し、このディスクを引っ込めおよび心房中隔に並置し、送達カテーテルの右心房位置を確認し、次いで、デバイスが心房中隔全体に固定されるように右心房ディスクを展開する。IASDは、3つの点でV-Waveデバイスと異なる:第一に、デバイスは弁組織を組み込んでおらず、第二に、心房間通信は、より大きく(V-Waveデバイスについての5mmと比較して直径8mm)、第三に、デバイスはベアメタルであり、およびePTFEでコーティングされていない。代わりに、デバイスの左心房側が心房組織と同じ高さになって、血栓形成のリスクが軽減される。REDUCE LAP-HF試験は、HFpEFおよびPCWP上昇(安静時15mm以上または運動中25mmHg以上)の患者のIASDの非盲検(open-label)非ランダム化第1相試験であった。6か月後、IASDの埋め込みは、患者の52%(n=32)で安静時のPCWPの低下と関連付けられ、および患者の58%(n=34)で仰臥位自転車運動(supine bicycle exercise)中の右心カテーテル検査によって測定されたPCWPの低下と関連付けられた。デバイスは、患者の71%(n=42)で安静または運動PCWPの低下に関連付けられ、および患者の39%(n=23)で安静および運動PCWPの低下に関連付けられた。しかしながら、12か月(n=18)の患者のサブセットの血行力学的検査は、ベースライン、6か月、および12か月の間で平均休息または運動PCWPまたはRAPに差を示さなかった。デバイスが埋め込みされた64人の患者のうち、3人の患者(5%)は、6か月から12か月のフォローアップの間に死亡し、1人は脳卒中(stroke)で、1人は肺炎(pneumonia)で、および1人は、原因は不明であった。埋め込み後1年間に13人の患者の間に17件のHF入院があり、そのうちの10件は最初の6か月に10人の患者で発生した。特許デバイスを介した左右のシャントは、高品質の画像により全ての患者で12か月の心エコー検査で確認された(n=48)。
【0022】
Amplatzらに対する米国特許第6,468,303号(特許文献1)は、折りたたみ可能な(collapsible)医療デバイス、および選択された臓器および血管をシャントするための関連する方法を記載している。Amplatzは、デバイスは、たとえば、左心低形成症候群(hypoplastic left heart syndrome)(HLHS)の新生児の心房中隔にシャントを作成することにより、患者の心臓の中隔欠損をシャントするのに適している可能性があることを記載している。その特許はまた、肺血と全身静脈血の混合を増やすことは、酸素飽和度を改善すること、および、シャントは後に閉塞デバイスで閉じられてもよいことを記載している。Amplatzは、HFの治療、または左心房圧の低下、または静脈または動脈へのシャンティングに関して、およびデバイスを通る血流の速度を規制するための手段に関して、沈黙している。
【0023】
Dobak III世(Dobak, III)に対する米国特許公開第2005/0165344号(特許文献2)は、塞栓フィルター(emboli filter)または弁を有する管状導管(tubular conduit)を含む心不全を治療するための装置を記載しており、装置は、心臓の心房中隔の開口部に配置されて、左心房を右心房内への流れを可能にする。Dobakは、血液のシャンティングが左心房圧を低下させ、それによって肺水腫および進行性左心室機能不全を予防し、および左心室拡張末期圧(end diastolic pressure)(LVEDP)を低下させる可能性があることを開示している。Dobakは、デバイスは、両側の心房中隔にわずかな力を加え、およびデバイスを中隔に挟むかクランプする金属製のアームのような、展開可能な保持支柱を含んでいてもよいことを記載している。Dobakは、左心房から奇静脈(Azygous vein)への流れを可能にすることに関して沈黙している。
【0024】
心房フローレギュレーター(AFR):
別の例は、Occlutech International AB社によって開発された心房フローレギュレーター(AFR)であり、これは、2つのフラットディスクおよび双方向フローを可能にする中央開窓(fenestration)を備えた1~2mmの接続ネックで構成されるニチノールメッシュデバイスである(
図3)。6、8、または10mmの開窓サイズで製造され、および心房中隔欠損作成術の後に10Fから12Fのシースを使用して大腿静脈アプローチで送達される。
【0025】
これらのタイプのデバイスの主な利点は、製造が簡単なことである。しかし、これらの心房間シャントデバイスは、臨床上の安全性と有効性の全体的な可能性を低下させることが予測されるいくつかの重要な弱点を有する。しかしながら、デバイスはいくつかの欠点を有する。
【0026】
パンヌス浸潤(pannus infiltration)に起因するシャントの閉塞に対する感受性:
これらのデバイスの第1の欠点は、埋め込み後の治癒期間中に狭くなったり閉じたりすることへの感受性である。埋め込み後の期間中、FOを横切って拡張することによって引き起こされる局所的な外傷は、局所的な治癒反応を引き起こし、パンヌスと呼ばれる新心内膜組織(neo-endocardial tissue)の内部成長(ingrowth)をもたらす。この組織は下層組織から成長してメッシュを覆い、およびシャントオリフィスを狭くするか部分的に閉塞するか、またはデバイス内の任意のバルブの機能を損なう。経食道エコー(TOE)によって評価される際に、シャント狭窄または閉塞は、左から右への心房シャントで1年までに治療された患者の半分で発生した。可能性のあるメカニズムは、早期の弁変性をもたらす生体人工弁尖のパンヌス浸潤であることが見出された。一連の心エコー検査の間にシャント機能を失ったこれらの患者は、その後、罹患率と死亡率の増加とともに、HFの自然史および進行性の経過に戻った。失われた管腔開存性を回復するために追加の心臓インターベンション手順が行われる場合があるが、そのような手順は、開口部閉塞物質の塞栓による死亡や脳卒中など、容認できないリスクをもたらす可能性がある。この手順の間に微小塞栓が脱落し、無症候性の脳梗塞とそれに続く認知症につながるリスクもある。
【0027】
奇異性塞栓症(paradoxical embolism)のリスクの増加:
これらのデバイスの2番目の欠点は、逆説的な塞栓形成の可能性である。逆説的な塞栓症とは、静脈血管系に起因する血栓塞栓症(静脈血栓塞栓症またはVTE)を指し、塞栓は心シャントを通って全身の動脈循環に右から左に横断する。通常の状況では、肺毛細血管床はフィルターとして機能し、静脈塞栓物質が動脈循環に到達するのを防ぐ。しかしながら、右から左へのシャントは、塞栓が肺を通過せずに動脈循環に入ることを可能にする。逆説的な塞栓形成の最も深刻な合併症は、塞栓が脳循環に留まり、脳梗塞(脳卒中)を引き起こす場合に発生する。同様に、逆説的な塞栓が冠状動脈循環に入ると、心筋梗塞(MI)が発生する可能性がある。
VTEが体循環に入るためには、血液がシャントを横切ってゆっくりと流れるか、シャントを横切って流れるのをやめるか、シャントを横切って逆行して流れるように、広く行われるLAからRAへの圧力勾配を一時的に下げるか、なくすか、逆にする必要があると主張されている。
エコー/ドップラー画像検査では、先天性ASDの患者では、LAからRAへの流れが優勢である場合でも、両方向にある程度のシャンティング(双方向シャンティング)が見られることがよくある。双方向シャントは、被験者がバルサルバ法(閉じた声門に対する呼気によって引き起こされる緊張)を実行するときに最もよく示される可能性がある。しかしながら、これは心房内血行力学の単純化である可能性があり、一部の血液がシャント内の主な流れの方向と逆に流れてもよい可能性がある。
バルサルバ法は胸腔内圧を上昇させ、これは、数秒後にRA圧とLA圧と等しくさせ、および次いで、呼気時にRA圧に一時的にLA圧を超えさせる。断続的な双方向の流れは、心房間圧力勾配が低いときに安静時に、またはRA収縮と比較してLA収縮が遅れる(心房間伝導遅延)心周期中に断続的に観察されることもある。これは、心不全など、心房が肥大したり病気になったりした場合に特に見られる。この設定では、心房間電気伝導遅延はLA収縮の遅延をもたらす。双方向シャントは、吸気中、RAへの静脈還流が増加したとき、咳中、腹部圧迫中、強制呼気中、または重度の三尖弁逆流の存在下でも一時的に見られる。慢性的に増加した肺動脈圧は、重度の肺高血圧症に見られるように、慢性肺疾患、再発性肺塞栓症、または慢性右心室体液量過剰による原発性または続発性にかかわらず、慢性およびより重度のRAからLAへのシャントと関連付けられる。
【0028】
前兆(MA)を伴う片頭痛は、非常に痛みを伴う頭痛である。前兆のある片頭痛のある人では、これらの頭痛がかすみ目や死角を引き起こす。いくつかの研究は、自然に発生する心房間シャントを片頭痛と関連付けており、および一部の患者は、シャントが閉じられた後に片頭痛がなくなることを発見している。自然に発生する心房間シャントがMAでどのように役割を果たすかを説明する考えられるメカニズムのひとつは、無症候性塞栓および/または肺を避けて体循環に直接入る高濃度のセロトニンおよびその他の代謝物の発生に関連付けられる。これは、三叉神経および脳血管系の刺激を引き起こし、片頭痛を引き起こす。したがって、人工的に作成された心房間シャントも同様のリスクを伴うと考えられる。
【0029】
心房間シャントデバイスもまた、無症候性脳梗塞を引き起こす可能性がある。無症候性(silent)梗塞は微妙な欠損(subtle deficits)と関連しており、およびその後の脳卒中や認知症のリスクを約2倍に高める。小血管疾患と比較して、心臓病に関連する無症候性脳梗塞は認識されていない。自然に発生する心房間シャントは、無症候性脳梗塞に関連していると報告されている。したがって、人工的に作成された心房間シャントも同様のリスクを伴うと考えられる。
【0030】
したがって、右心房圧の上昇による左から右へのシャントの局所的な逆転または一時的な逆転による奇異性塞栓症および無症候性脳梗塞のリスク(たとえば、重度のバルサルバ法中)は本当の可能性(real possibility)である。右心機能障害と肺血管抵抗の上昇を伴う肺高血圧症は、IASD研究の除外基準を表した。
【0031】
右心不全のリスクの増加:
先行技術で説明されているような、単に心臓の心房に血液を再分配するだけの、左から右へのシャントは、体液量過剰のために最終的に慢性右心不全につながる可能性がある。左から右へのシャントの臨床的重要性は、それらのサイズとそれらを通る血流の量に大きく依存する。血液が右心房に分流(shunted)されると、これにより右心室充満が増加し、右心室拡張末期容積が増加し、右心室拡張末期圧が増加する。時間の経過とともに、これは右心室肥大を引き起こし、右側の圧力が左側の圧力を超えると、左から右へのシャントが切り替わり、右から左へのシャントになる。呼吸困難、倦怠感、チアノーゼは、アイゼンメンゲル症候群と呼ばれる状態で発症する。
【0032】
IASDによる左右の心房シャントの導入は、ベースラインと比較して、RAPではなく、右心室容積と駆出率の増加に関連付けられた。LV拡張期容積は減少したが、LVEFおよび左心房容積への影響はなかった。
慢性的な左右のシャントは肺血流を増加させ、および若い年齢で十分に許容される可能性があり、ASDの患者はPAHと心房性不整脈のリスクが高くなるが、臨床上の問題は通常40年または50年まで現れない。しかしながら、HFpEFと心室コンプライアンスの変化を伴う高齢者(REDUCE LAP-HFの患者の平均年齢は69歳)では、左右の心房シャントが肺動脈圧の上昇とそれに続く右心室機能障害を引き起こす可能性がある。このような血行力学的変化は、腎臓など、HFpEFですでに危険にさらされている他の臓器に影響を及ぼし、その後、長期的な結果に悪影響を与える可能性がある。
【0033】
長期の抗血栓治療の要件:
血栓塞栓性デバイスに関連する合併症を防ぐために、埋め込み後に抗血栓治療が必要とされる。3ヶ月間の経口抗凝固療法とそれに続くV波の埋め込み後の生涯にわたるASA単剤療法および6ヶ月間の二重抗血小板療法とそれに続くIASD移植後の生涯にわたるASA単剤療法による経験的治療が使用された。この体の弱い人々(frail population)では、抗血栓治療中の出血のリスクの増加も考慮に入れる必要があった。
【0034】
一度植え込まれた現在のデバイスを安全に回収できないこと:
シャントが感染の病巣になったり、金属フレームワークの疲労や腐食による骨折が発生したり、他の重要な心臓構造を侵食したり衝突したりした場合、経皮的回収/除去技術では除去できない。これは、心房中隔に大きな「フットプリント」があるシャントがパンヌス組織に包まれているためである。経皮的除去を試みると、中隔、心膜が裂ける可能性があり、タンポナーデ、および体循環へのデバイス塞栓、死または緊急手術の必要性をもたらす。安全に除去するには、開心術を行う必要がある。これは、体外式膜型人工心肺(心肺バイパス)を使用して心臓をバイパスすることを必要とする。これにより、心臓を開き、シャントを取り外し、中隔を修復することができる。末梢、脳血管、冠状動脈疾患、腎(renal)機能障害、糖尿病などの頻繁に関連する併存疾患を含む、すでに確立された重度の心不全の患者にそのような外科的処置を行うと、死亡または重度の病的状態の実質的なリスクがあると予想される。
【0035】
現在の心房間シャントデバイスは、展開のために大きなアクセスシースを必要とする。IASDデバイスは、大腿静脈の16Gシースを介して経皮的に展開され、V波デバイスは、大腿静脈の14Fシースを介して経皮的に展開される。大きなアクセスシースは、心嚢液貯留やタンポナーデ、血栓塞栓症、空気塞栓症、持続性心房中隔欠損症、大動脈の不注意な穿刺などの心臓内合併症のリスクを高める。血腫や仮性動脈瘤を含むアクセス部位の合併症のリスクも高くなる。
【0036】
これらの慢性HF患者のかなりの部分が慢性腎疾患または末期腎不全を発症する。そのための最善の管理は、上腕動静脈瘻/移植片(AVG/AVF)、すなわち上腕動脈から頭静脈瘻を介した血液透析である。これにより、RA圧を上昇させる高流量回路が作成され、心房間シャントがLAを無用に減圧し、LA圧を悪化させる。
また、
日常的に介入する医師は、血栓化したAVF/AVGを除去する。これにより、肺に移動する血栓が脱落する可能性がある。これは、透析回路を再開する既知のリスクである。このシナリオで心房間シャントを行うと、奇異性塞栓症の許容できないリスクにつながる。したがって、血液透析患者は、我々が回避する競合他社のアプローチに前述の技術を利用することが、禁忌となる可能性がある。
【0037】
本発明の目的は、上記の問題の少なくとも1つを克服することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【文献】米国特許第6,468,303号
【文献】米国特許公開第2005/0165344号
【文献】米国特許出願公開第2017/0113026号
【文献】特許出願公開第2018/0263766号
【発明の概要】
【0039】
本発明は、心房中隔壁の開口部を通して左心房から奇静脈に血液をシャントするように構成された埋め込み型シャントデバイスを提供することによって、従来技術の埋め込み型デバイスの1つまたは複数の問題に対処する。奇静脈は、脱酸素化された血液を胸部と腹部の後壁から上大静脈に輸送する。このデバイスは、心臓から離れた左心房の血液量と圧力の不均衡の再分配を可能にし、右心不全のリスクと奇異性塞栓が心臓の左側に入るリスクを低減し、さらに、管腔の開通性を維持するより耐久性のある構成を長期間にわたって提供する。デバイスは、小さなアクセスシースを介して送達するように構成されており、完全に回収可能である。
【0040】
一実施形態では、デバイスは、心臓または心臓内の血液のパラメータ、例えば、左心房または右心房の血圧を検出し、パラメータに関連するデータを表示のために外部の場所に送信するように構成されたセンサを備える。デバイスは2つのセンサを含み得、1つは右心房パラメーター(例えば右心房血圧)を検出するように構成され、もう1つは左心房パラメーター(例えば左心房血圧)を検出するように構成され、検出されたパラメータに関連するデータを外部受信機に送信する。心房圧を監視する機能を使用して、シャントデバイスの有効性を監視したり、心臓の圧力の不均衡を監視したりすることができる(たとえば、左心房圧低下または左心房高血圧の早期検出)。右心房にセンサを設置することで、右心房高血圧を早期に検出し、左から右への圧力の不均衡をより適切に診断し得る。さらに、センサの精度は時間の経過とともに低下するため(いわゆる「ドリフト」)、センサを校正する必要がある。左心房センサにアクセスできないため、左心房センサのキャリブレーションには問題があるが、デバイスに右心房センサ(より簡単にアクセスできる)もある場合は、両方のセンサのドリフトが実質的に同じになるため、右心房センサからのキャリブレーションデータに基づいて、左心房センサと右心房センサの両方をキャリブレーションできる。
【0041】
デバイスはまた、デバイスを通る血流を制御するように構成された弁を含み得る。弁は、血液の圧力変化に応答して自己作動するように構成し得る。バルブは、シャントデバイスに後付けするように構成することができ、オプションで生体内に後付けすることもできる。これにより、1つまたは複数のセンサを備えたシャントデバイスを患者の心臓に植え込むことができ、心臓パラメータデータ(たとえば、左および/または右心房圧)を移植期間中に測定および/または記録し得る。心臓パラメータデータ(例えば、左心房および/または右心房血圧データ)を使用して、埋め込み期間中に検出された患者および患者の圧力不均衡を制御するように特別に調整されたシャントデバイス用の弁を設計してもよく、および、次に、特定のバルブをシャントデバイスに後付けしてもよい。
【0042】
バルブは、センサからのデータに応答して作動するように構成することができる。デバイスは、または各センサからデータを受信し、受信したデータに応答してバルブを作動させるように構成されたコントローラを含み得る。たとえば、センサが定義された閾値を下回る左心房血圧を検出した場合、コントローラはバルブを作動させて、デバイスを通る左から右への血流を制限または停止することができる。同様に、センサが定義された閾値を超える左心房血圧を検出した場合、コントローラはバルブを開いて、デバイスを通る左から右への血流を増加させることができる。コントローラは、シャントデバイスの一部であってもよく、および埋め込み可能であってもよく、その場合、コントローラは、一般に、センサをよびバルブに動作可能に接続される。コントローラはまた、デバイスから離れた場所(例えば、体の外側)およびセンサをよびバルブとの通信(例えば、無線通信および/または無線充電)のために構成され得る。
【0043】
デバイス
一般に、シャントデバイスは、貫通管腔、奇静脈(通常は奇静脈の口)内に固定するように構成された遠位端、および心房中隔壁の開口部にまたがりおよび壁に固定するように構成された近位端を有するチューブ(導管)である。
【0044】
第1の態様では、本発明は、心房中隔壁の開口部を介して心臓の左心房から奇静脈に血液をシャントするように構成された埋め込み型シャントデバイスを提供し、デバイスは、送達カテーテル内での送達に適した収縮送達構成と展開された半径方向に拡張された構成との間で半径方向調整のために構成されたチューブ(導管)を含み、チューブは、貫通管腔、奇静脈(典型的には奇静脈の口)内に固定するように構成された遠位端、および心房中隔壁の開口部にまたがり、および壁に固定するように構成された近位端を有する。
【0045】
チューブは典型的には、柔軟性がある。これにより、チューブが心房中隔壁から右心房を通って下大静脈(inferior vena cava)まで横断し、および典型的には奇静脈の小孔に向かって湾曲することを可能にする。チューブは、単一の単一チューブとして、または心臓内でその場で係合して単一のチューブを形成するように構成された2つ以上のチューブとして提供され得る。以下に記載される他の実施形態では、チューブは、モジュラー形式で提供され得る。チューブは、左心房壁から奇静脈の口まで横断するチューブを提供するためにその場で組み立てるように構成された直線部分を含み得る。直線部分は典型的には、軸方向に柔軟ではない。
【0046】
一実施形態では、デバイスは、約2.5から4.5cm、好ましくは約3.5から4.0cmの軸方向長さを有する。一実施形態では、導管は、約8から15mm、好ましくは約9から11mmの直径を有する。導管の長さおよび直径は、個々の患者に合うように調整することができることが理解されよう。一実施形態では、デバイスは、デバイスの最適な長さおよび直径を決定するのに役立つ患者の初期画像形成に基づいて選択される。
【0047】
一実施形態では、遠位端は、奇静脈の小孔に遠位端を固定するために過剰に拡張するように構成される(
図2)。一実施形態では、過剰に拡張された遠位端の直径は、展開時に、デバイスの導管部分の直径よりも約5~25%大きい。展開時の遠位端の直径は、患者の解剖学的構造に適合するように選択され、画像化によって埋め込み前に決定することができることが理解されよう。
【0048】
一実施形態では、近位端は、デバイスの遠位端を固定するために心房中隔壁の各側で拡張するように構成された2つの軸方向に離間した拡張可能な保持フランジセクションを含む(
図3)。一実施形態では、展開時の保持フランジの直径は、10から25mmの間である。通常、保持フランジは、開口部が配置されている心房中隔壁の厚さにほぼ等しい距離だけ軸方向に間隔を置いて配置される。このようにして、展開時の保持フランジは、デバイスを心房中隔壁に固定する。このタイプの心房中隔壁アンカーの例は、米国特許第6,468,303号(特許文献1)に記載されている。
【0049】
一実施形態では、デバイスは自己拡張可能である(すなわち、送達カテーテル/シースの収縮時に、デバイスは、展開された構成に自己拡張する)。これは、デバイスがニチノール材料、例えば超弾性NiTiを含み得る。典型的には、遠位端は、奇静脈の直径(すなわち、奇静脈の口)よりも大きい直径に自己拡張して、近位端を奇静脈に固定するように構成される。典型的には、遠位保持フランジは、心房中隔壁の開口の直径よりも大きい直径に自己拡張するように構成される。
【0050】
別の実施形態では、デバイスは自己拡張性ではなく、例えば、ステンレス鋼などの自己拡張性ではない材料から形成され得る。この実施形態では、デバイスは、バルーンなどの拡張部材を使用して展開することができる。
【0051】
一実施形態では、デバイスは、展開時に
図1に示される湾曲した形状をとるように事前に形成されている。
【0052】
一実施形態では、デバイスは弁を含む。弁は、例えば、右から左への血流を制御するように構成され得る(例えば、右側の圧力が事前に定義された閾値圧力を超えたときに作動するように)。また、左から右への血流を制御するように構成することもできる(たとえば、左側の圧力が事前定義された閾値圧力を下回った場合)。一実施形態では、弁は、TPU材料または動物由来の心膜(例えば、ヒツジ、ブタ、またはウシ)を含み、反応成形によって製造することができる。バルブは、概して、構造的ワイヤ要素に取り付けられている。一実施形態では、弁は、血栓が右から左に通過するのを防ぐように構成される。弁は、生体内または生体外でシャントデバイスに後付けするように構成されてもよい。
【0053】
一実施形態では、デバイスは、典型的には、デバイスまたは心臓の組織を通過する血液のパラメータを検出するように構成されたセンサを備える。パラメータの例には、温度、圧力、pH、血流、インピーダンス、電気伝導率が含まれる。センサは、光学センサであり得る。一実施形態では、センサ(またはデバイス)は、センサから遠隔地(例えば、信号およびディスプレイ用の受信機を含む遠隔デバイス)に信号を無線で送信するように構成された無線通信モジュールを備える。センサは、右心房または左心房の血液または組織のパラメータを検出するように構成されてもよい。一実施形態では、センサは、左心房内の血液のパラメータを検出するように構成される。一実施形態では、センサは、右心房内の血液のパラメータを検出するように構成される。一実施形態では、デバイスは2つのセンサを含む。一実施形態では、センサの1つは、左心房の血液のパラメータを検出するように構成され、センサの別のセンサは、右心房の血液のパラメータを検出するように構成される。一実施形態では、パラメータは圧力である。左心房血液のパラメータを検出するためのセンサは、シャントデバイス上に配置され、左心房内またはそれに隣接して突出し得る。左心房センサは、シャントデバイスの内腔内に少なくとも部分的に配置され得、シャントデバイス内の血液のパラメータを測定するように構成され得る(このデータは、適切なアルゴリズムを使用して左心房圧と相関され得る)。右心房血液のパラメータを検出するためのセンサは、一般に、少なくとも部分的に右心房に配置され、および/または右心房のシャントデバイスの外面に配置され得る。
【0054】
デバイスは、または各センサに動作可能に接続されたエネルギー貯蔵モジュール、および任意選択でバルブを備え得る。典型的には、エネルギー貯蔵モジュールはワイヤレス充電用に構成される(これにより、デバイスが心臓にあるときにバッテリーを再充電できる)。
【0055】
バルブは、または各センサから受信したデータに応答して作動するように構成されてもよい。例えば、コントローラは、または各センサからデータを受信し、受信されたデータに応答して弁を作動させるように提供および構成され得る。したがって、コントローラは、左心房血圧が閾値左心房圧よりも低いことを検出した場合、または右心房血圧が右心房血圧を超えた場合に、左から右への血流を制限または低減するようにバルブを作動させるように構成することができる。コントローラは、デバイスの一部として提供されてもよく、または体外または体から離れて使用するように構成されたリモートコントローラであってもよい。コントローラは、センサをよび/またはバルブとの無線通信用に構成することができる。コントローラは、センサから受信したデータ(例えば、左心房血圧データ)を参照データ(例えば、参照左心房血圧)と比較し、その比較に基づいて弁を作動させるように構成されたプロセッサを備え得る。
【0056】
一実施形態では、弁は、シャントデバイスに後付けするように構成されており、特に生体内で後付けするように構成されている。これにより、1つまたは複数のセンサを備えたシャントデバイスを患者の心臓に植え付けることが可能になり、心臓パラメータデータ(例えば、左および/または右心房圧)を、埋め込み期間中に測定および/または記録することができる。心臓パラメータデータ(例えば、左心房および/または右心房血圧データ)を使用して、埋め込み期間中に検出された患者および患者の圧力不均衡を制御するように特別に調整されたシャントデバイス用の弁を設計することができる。次に、特定のバルブをシャントデバイスに後付けすることができる。後付けは、外部で実行することも(シャントデバイスを引き出し、患者固有のバルブをデバイスに後付けしてから、デバイスにバルブを再埋め込みすることによって)、または生体内で実行することもできる。弁は、好ましくは、生体内でシャントデバイスに後付けするように構成されている。患者固有の弁は、高い閾値の左側圧力に応答して開くように構成することができ(すなわち、左側圧力を低下させ、シャントを介して右側に圧力を再分配するために)、低い閾値の左側の圧力、または右側の閾値の圧力に応答して閉じるように構成することもできる。バルブを後付けする前の圧力監視の期間は、これらの閾値圧力または複数の圧力を決定するために有用に使用され得る。
【0057】
一実施形態では、デバイスは、生体内で組み立てるために構成された2つ以上の部分(すなわち、2つの部分のシャントデバイス)で提供される。例えば、デバイスは、可撓性チューブおよび遠位端を含む第1の部分、および近位端を含むかまたは近位端からなる第2の部分を含み得、ここで、第1および第2の部分の自由端は、生体内で係合するように構成される。この実施形態では、近位端は一般に最初に心房中隔壁の開口部に固定され、次に第2の部分が展開されて奇静脈に固定され、および次に部分の自由端が右心房に接続されて組み立てられたデバイスを形成する。別の実施形態では、デバイスは、可撓性チューブ(導管)の近位端および近位セクションを含む第1の部分と、可撓性チューブ(導管)の遠位端および遠位セクションを含む第2の部分とを含み得、それにより、フレキシブルチューブセクションは、生体内で係合するように構成される。第1および第2の部分の自由端のための様々な係合手段、例えば、摩擦嵌合端、磁気コネクタ、ねじ付きコネクタ、縫合糸クリップ、またはリエントラントスロットコネクタを使用することができる。両端は、可逆的または非可逆的な係合に構成することができる。一実施形態では、テザリング要素の各自由端は、テザリング要素が引っ張られると、自由端が互いに向かって引っ張られ、一緒に紐で結ばれて連続管を形成するように、ループ間をひもで締めるように構成されたループ部材およびテザリング要素を含む。
【0058】
別の実施形態では、デバイスはモジュール式であり、心臓のその場で一緒に適合するように構成された部品を含む。デバイスは、2、3、4またはそれ以上の部品を含み得る。部品は、直線または湾曲した導管を含み得る。部品は、展開時に剛性になるように構成されてもよい。一実施形態では、部品は、摩擦嵌合またはねじれ/ロック手段、または他の機械的係合手段によって互いに適合するように構成される。一実施形態では、部品の1つは、別の部品の遠位端を受け入れるように構成された近位開口を含み得る。一実施形態では、遠位端は、2つの部分を一緒にロックし、単一の導管を形成するために、近位開口に展開されるときに半径方向に拡張するように構成される。一実施形態では、部品は、互いに直角に相互係合するように構成される。一実施形態では、一方の部品の近位端は、他方の部品の近位端を受け入れるように構成された対向する開口を含み、部品間の流体連絡を提供する。これらの実施形態は、
図7および8に示されている。
【0059】
一実施形態では、デバイスの遠位端は、追加の固定手段、例えば、展開可能なフックまたはバーブを含む。一実施形態では、デバイスの遠位端は、内側スリーブに対して軸方向または回転方向に移動するために内側スリーブに動作可能に接続された外側スリーブと、内側スリーブに対する外側スリーブの(軸方向または回転方向の)移動時に半径方向に拡張/収縮するために構成されたに固定要素と、を含む。一実施形態では、固定要素は、内側スリーブに取り付けられ、取り付けの近位の外側スリーブの開口を通って突出し、その結果、外側スリーブに対する内側スリーブの近位軸方向移動により、固定要素が半径方向外向きに突出して、デバイスを接合静脈に固定する。これは、
図9Bから9Dに示される。別の実施形態では、固定手段は、一方のスリーブを他方に対して回転させることによって固定手段を展開するように構成される。これは
図9Eから9Gに示される。典型的には、固定要素は棘、理想的には湾曲した棘である。
【0060】
デバイスは、管状の布または管状のメッシュから形成することができる。例は、米国特許第6,4648,303号(特許文献1)の特に列1および2、および米国特許出願公開第2017/0113026号(特許文献3)に詳細に説明されている。したがって、デバイスは、典型的には金属(形状記憶材料であり得る)または適切なポリマーから形成される構造的ワイヤ要素、および構造的ワイヤ要素の内側または外側に配置された生体適合性閉塞シースを含み得る。ワイヤ要素は、単一のワイヤ要素(例えば、らせん状ワイヤ)であり得るか、または複数の接続されていない(または相互接続された)ワイヤ要素を含み得る。ワイヤ要素は、一般に円周方向であり得、それらの円周に沿って拡張可能なセクションを含み得る(
図2に示されるように)。構造的ワイヤ要素は、デバイスの管要素に柔軟性を提供して、装置の管腔をねじったり閉塞したりすることなく、その長さに沿って曲げることができるように構成される。体内で半径方向に拡張するように構成された構造的ワイヤ要素の例は、心臓ステント分野で十分に説明されている。デバイスは、レーザーカットデバイス、または3Dプリントデバイスであってもよい。生体適合性の閉塞シースまたはコーティングは、ポリエチレン、TPU、PTFEステントカプセル化、またはポリウレタン、ウレタンコポリマー、PETなどのエレクトロスピニングされた材料、またはPLGA、PLLA、PLAなどの吸収性材料から形成されてもよい。繊維サイズ、材料の厚さ、および繊維配向は、必要に応じて構成され得る。
【0061】
デバイスは、例えば、送達シースなどの拘束の収縮時に自己拡張することができる。典型的には、遠位端は、送達カテーテルから奇静脈の直径(好ましくは奇静脈の口の直径)よりも大きい直径に展開されるときに自己拡張するように構成される。典型的には、デバイスの近位端の保持フランジは、送達カテーテルから心房中隔壁の開口の直径よりも大きい直径に展開されるときに自己拡張するように構成される。
【0062】
一実施形態では、デバイスは生分解性であり、典型的には、8~15、10~13、または11~12週間の期間にわたって生体内で分解するように構成される。生分解性ステント材料の例は当業者に知られており、ポリジオキサノンステント材料が含まれる。
【0063】
一実施形態では、デバイスは完全に格納式であり、半径方向の収縮および除去カテーテルへの収縮するように構成される。一実施形態では、デバイスの端部は、デバイスを除去カテーテルに収縮させて本体(body)を除去する前に、デバイスを拘束された構成に収縮させるように作動させることができるフェイスプル同期収縮機構を組み込むことができる。一実施形態では、デバイスの端部は、一連のループと、ループに通され、テザーを引っ張るとデバイスの端部が半径方向に収縮するように構成されたテザーとを含む。
【0064】
一実施形態では、デバイスは、心臓への経皮送達用に構成されている。一実施形態では、デバイスは、心臓への経心尖送達用に構成されている。
【0065】
システム
一実施形態では、本発明は、
本発明によるシャントデバイスであって、センサからのデータの無線通信用に構成された無線通信モジュールを含む少なくとも1つのセンサを備える、シャントデバイスと、
無線通信モジュールからデータを受信するように構成された受信機と、データを表示するためのディスプレイとを備えるリモートデバイスと、
を含むシステムを提供する。
【0066】
一実施形態では、リモートデバイスは、センサから受信したデータ(例えば、左心房血圧データ)を参照データ(例えば、参照左心房血圧)と比較し、比較に基づいて出力を提供するように構成されたプロセッサを備える。一実施形態では、参照データは、デバイス上の第2のセンサ(例えば、右心房内のセンサ)からのデータであり得る。出力は、心臓の機能状態の指標である、疾患、状態、または病状の診断であってもよい。出力はディスプレイに表示されてもよい。
【0067】
シャントデバイスが弁を含む一実施形態では、リモートデバイスは、受信機によって受信されたデータに応答して弁を作動させるためのコントローラを備え得る。したがって、コントローラは、左心房血圧が閾値左心房圧よりも低いことを検出した場合、または右心房血圧が右心房血圧を超えた場合に、左から右への血流を制限または低減するようにバルブを作動させるように構成することができる。コントローラは、センサをよび/またはバルブとの無線通信用に構成されてもよい。
【0068】
一実施形態では、コントローラは、プロセッサに動作可能に接続され、プロセッサの出力に基づいてシャントデバイスの弁を作動させるように構成される。
【0069】
一実施形態では、システムは、センサまたは各センサのエネルギー貯蔵モジュールを充電するためのワイヤレス充電モジュールを含む。
【0070】
配送装置を含むキット
一実施形態では、本発明は、本発明のシャントデバイスと、心臓/血管系の標的位置へのシャントデバイスの経皮的または経心尖的送達のために構成された送達デバイスと、を含むキットを提供する。一実施形態では、送達デバイスは、送達カテーテルを含む。一実施形態では、送達デバイスはガイドワイヤを含み、カテーテルは、心臓または血管系へのワイヤを介した経皮的送達のために構成される。
【0071】
一実施形態では、本発明のシャントカテーテルは、心臓、典型的には心臓の右心房でその場で組み立てるために構成された2つの部分からなるデバイスである。一実施形態では、送達デバイスは、外側シースと、それぞれが送達管腔を提供する2つの内側シースと、を含み、外側シースは、内側シースに対して軸方向に調整可能であり、分岐構成で内側シースの遠位端を展開する(
図12)。通常、デリバリーデバイスの分岐端を形成する内部シースの1つは、他のシースよりも長くなる。内側シースの第1の遠位端は、典型的には、展開時に上大静脈内に延在し、奇静脈の口に隣接して終端するように寸法が決められている。内側シースの第2の遠位端は、展開時に、心房中隔壁に向かって延在し、それに隣接して終端するように寸法が決められている。一実施形態では、送達カテーテルは、大腿骨および下大静脈アプローチを介して心臓の右心房に送達するように構成される。この配信デバイスの使用については、以下に詳述する。
【0072】
処置方法
別の態様では、本発明は、左心房から心房中隔壁の開口部を通って奇静脈への血流のための導管を提供するように構成されたシャントデバイスを哺乳動物の心臓に埋め込むステップを含む方法を提供する。
【0073】
一実施形態では、この方法は、左心房の血液量を再分配すること、または左心房の血圧を修正または低減することである。
【0074】
一実施形態では、この方法は、調節不全の(典型的には上昇した)左心房血圧を特徴とする疾患または状態を治療することである。一実施形態では、この方法は、心不全を治療または予防することである。一実施形態では、この方法は、心不全を特徴とする状態を治療または予防することである。
【0075】
一実施形態では、シャントデバイスは、本発明によるシャントデバイスである。
【0076】
一実施形態では、デバイスは、無線通信モジュールを含むセンサを含み、この方法は、
心臓(通常は心臓の左心房または右心房)の血液または組織のパラメータをセンサで感知するステップ、
感知されたパラメータに関連する無線通信モジュールデータによって遠隔通信装置へ無線通信するステップ、および
ディスプレイにデータを表示するステップ、
を含む。
【0077】
一実施形態では、デバイスは、2つのセンサをよび無線通信モジュールを含み、この方法は、
心臓の左心房の血液または組織のパラメータを最初のセンサで感知するステップ、
心臓の右心房の血液または組織のパラメータを第2のセンサで感知するステップ、
感知されたパラメータに関連する無線通信モジュールデータによって遠隔通信装置へ無線通信するステップ、および
ディスプレイにデータを表示するステップ、
を含む。
【0078】
一実施形態では、パラメータは、心臓の左心房または右心房の血圧である。
【0079】
一実施形態では、デバイスは、デバイスを通る血流を制御するための弁を含み、この方法は、シャントデバイスを通る血流を制御する弁のステップを含む。一実施形態では、この方法は、センサまたは各センサによって感知されたデータに応答して弁を作動させるステップを含む。一実施形態では、弁はコントローラによって作動される。一実施形態では、弁は、血液パラメータ値に応答して、例えば、左心房または右心房の閾値血圧に応答して、自己作動可能である。
【0080】
一実施形態では、この方法は、シャントデバイスのセンサを使用して一定期間血液パラメータデータ(例えば、左および/または右心房血圧)を監視し、弁作動パラメータ値(例えば、閾値左心房圧)を識別し、識別された弁作動パラメータ値に応答して生体内で作動するように構成された弁を作成し、生体内または生体外のいずれかでシャントデバイスに弁を後付けするステップを含む。
【0081】
一実施形態では、遠隔通信デバイスは、弁用の無線コントローラを含み、この方法は、または各センサによって感知されたデータに応答して、無線コントローラによって弁を無線で作動させることを含む。
【0082】
送達方法:
一実施形態では、この方法は、デバイスを心臓に送達し、デバイスの近位端を展開してデバイスの近位端を奇静脈に固定し、および次にデバイスの第2の端を展開してデバイスの遠位端を心房中隔壁に固定するステップを含む。一実施形態では、この方法は、最初に近位端を固定することを含む。別の実施形態では、この方法は、最初に遠位端を固定することを含む。
【0083】
本発明の方法は、概して、心房中隔壁に開口を作るステップを含む。これは、経皮的または経心尖的に実行することができる。心臓の壁に開口を作るための装置および方法(壁穿刺装置)が知られており、壁穿刺針を含む装置、およびエネルギー送達装置(すなわち、組織切除電極)を使用する。一実施形態では、この方法は、壁に開口部を作り、次にその開口部にバルーンを配置し、バルーンを膨張させて開口部を開くことを含む。
【0084】
一実施形態では、シャントデバイスは、送達カテーテルで送達され、デバイスの展開は、デバイスを展開するためのデバイスに対する送達カテーテルの収縮を含む。
【0085】
経心尖部送達
一実施形態では、シャントデバイスは、経心尖的に送達される。この実施形態では、この方法は、概して、
左心室に経心尖的にアクセスするステップ、
展開されていないシャントデバイスを含む送達カテーテルを、左心室、左心房、心房中隔壁の開口部、右心房、および下大静脈を介して奇静脈の小孔に前進させるステップ、
シャントデバイスに対して送達カテーテルを引っ込めて、シャントデバイスの近位端を展開して、遠位端を奇静脈に固定するステップ、
シャントデバイスに対して送達カテーテルをさらに引っ込めて、チューブを展開するステップ、
シャントデバイスに対して送達カテーテルをさらに引っ込めて、心房中隔壁の右側に近位保持フランジを展開するステップ、および
シャントデバイスに対して送達カテーテルをさらに引っ込めて、心房中隔壁の左側に遠位保持フランジを展開し、デバイスの遠位端を心房中隔壁に固定するステップ、
を含み、展開され固定されたデバイスは、左心房から奇静脈への血流のための導管を提供する。
【0086】
一実施形態では、この方法は、心房中隔壁に開口を作成するステップを含む。これは、経心尖的または経皮的に実施することができ、従来の方法、例えば、壁貫通針、超音波プローブ、または組織切除電極を使用して生成することができ、その詳細は当業者に知られることとなり、より詳細には説明しない。
【0087】
一実施形態では、この方法は、左心室に経心尖的にアクセスし、デバイスを、左心室を介して左心房に前進させ、デバイスを作動させて心房中隔壁に開口を作成し、ガイドワイヤを接合静脈トランスに前進させるステップを含む。心尖部では、左心室、左心房、心房中隔壁の開口部、および右心房を経由して、ガイドワイヤを介して送達カテーテルを奇静脈に進める。
【0088】
経皮的送達-IVC+大動脈
別の実施形態では、シャントデバイスは経皮的に送達される。デバイスは、下大静脈アプローチ、大動脈アプローチ、または両方の組み合わせを介して送達されてもよい。
【0089】
一実施形態では、シャントデバイスは、組み立てられたシャントデバイスを形成するために心臓内でその場で係合するように構成された2つの部分で提供される。
【0090】
好ましい実施形態では、方法は、
最初の部分を心臓に送り、最初の部分を(すなわち心房中隔壁に)固定するステップ、
2番目の部分を心臓に送り、2番目の部分を(すなわち奇静脈に)固定するステップ、および
2つの部分の自由端を接続して、奇静脈と左心房との間の流体連通を提供するステップ、
を含む。
【0091】
一実施形態では、第1の部分は近位端であり、この方法は、下大静脈を介して右心房に送達カテーテルで近位端を送達すること、および心房中隔壁に形成された開口の両側に近位端の保持フランジを展開することを含む。
【0092】
一実施形態では、第2の部分は遠位端を含み、方法は、大動脈を介して左心房に、心房中隔壁の開口部に固定された近位端を介して、送達カテーテル内の第2の部分を送達するステップを含む。右心房を介して奇静脈に送達し、第2の部分に対して送達カテーテルを引っ込めて、遠位端を奇静脈の口に固定した状態で第2の部分を展開し、第2の部分の自由端を、心房中隔壁の開口部に固定された近位端に接続する。典型的には、この方法は、大動脈アプローチを介してガイドワイヤを奇静脈に前進させ、次に送達カテーテルをガイドワイヤを介して奇静脈に前進させる最初のステップを含む。適切には、ガイドワイヤを前進させるステップは、ガイドワイヤを含むガイドシースを奇静脈に前進させ、次にガイドシースを後退させることを含む。
【0093】
経皮的送達-既存のシャント
一実施形態では、治療される対象は、心房中隔壁に既存の開口を有し、開口に固定された既存のシャントを有する。この状況では、対象に埋め込まれるシャントデバイスは、既存の「シャント」を利用することができ、既存のシャントに流体的に接続して本発明の組み立てられたシャントを形成するように構成することができる。この状況では、この方法は、デバイスの第2の部分を患者の心臓に移植し、第2の部分の遠位端を奇静脈に固定し、おおび第2の部分の自由端を既存のシャントに接続して、左心房と奇静脈を流体的に接続することを含む。
【0094】
経皮的デリバリー-IVCおよび分岐送達カテーテル
別の実施形態では、本発明の方法は、外側シース、それぞれが送達管腔を提供する2つの内側送達シースを含む送達デバイスを使用し、ここで、外側シースは、分岐構成内で内側送達シースの遠位端を展開するために、内側送達シースに対して軸方向に調整可能である。好ましい実施形態では、方法は、以下のステップを含む。
下大静脈を介した大腿静脈アプローチを介して、送達デバイスを左心房に前進させるステップ、
内側シースに対して外側シースを引っ込めて、内側シースの遠位端を分岐構成で展開するステップ、
シャントデバイスの最初の部分を最初の内部シースを介して送達するステップ、および
シャントデバイスの2番目の部分を、2番目の内部シースを介して送達するステップ、
を含む。
【0095】
一実施形態では、内側シースの遠位端は、展開時に、第1の内側シースが大静脈に突出し、第2の内側シースが心房中隔壁に向かって突出するように分岐するように構成され、方法は、第2の部分を送達するステップを含む。シャントデバイス(シャントデバイスの近位端を含む)を第1の内部シースを介して接合静脈に送り、シャントデバイスの第1の部分(シャントデバイスの遠位端を含む)を2番目の内部シースを介して心房中隔壁に送達する。
【0096】
一実施形態では、送達デバイスの送達の前に、方法は、第2の内部シースを介して左心房の心房中隔壁に壁穿刺装置を送達するステップ、壁穿刺装置を作動させて心房中隔壁に開口(apertue)を形成するステップ、および壁穿刺装置を引き抜くステップを含む。
【0097】
本発明の他の態様および好ましい実施形態は、以下に記載される他の特許請求の範囲で定義および説明される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1】心臓に埋め込まれ、心房中隔壁に形成された開口部を介して心臓の左心室と奇静脈との間の流体通信を提供する、本発明のシャントデバイスを示す断面図であるヒトの心臓の図である。
【
図2】(A)は、
図1のシャントデバイスの一部の図であり、拘束された構成(左側)および展開された半径方向に拡張された構成(右側)のシャントデバイスの遠位端を示す図であり、(B)は、
図1のシャントデバイスの一部の図であり、拘束構成(左側)および展開された半径方向に拡張された構成(右側)の保持フランジセクションを備えたシャントデバイスの近位端を示す図であり、(C)は、本発明のシャントデバイスの一部を形成するフェイスプル同期収縮機構の図であり、(D)は、本発明による2つの部分からなる
図1のシャントデバイスの一部を示し、それぞれが自由端を有する第1の部分、第2の部分、各自由端で正弦波リング支柱の間にひもでつながれるテザリング要素を有する図である。
【
図3A】本発明のシャントデバイスを送達および固定する経心尖法を示す図である。
【
図3B】本発明のシャントデバイスを送達および固定する経心尖法を示す図である。
【
図3C】本発明のシャントデバイスを送達および固定する経心尖法を示す図である。
【
図4A】大腿静脈/IVCおよび大動脈アプローチの組み合わせを介して、本発明の2つの部分からなるシャントデバイスを送達および固定する経皮的方法を示す図である。
【
図4B】大腿静脈/IVCおよび大動脈アプローチの組み合わせを介して、本発明の2つの部分からなるシャントデバイスを送達および固定する経皮的方法を示す図である。
【
図4C】大腿静脈/IVCおよび大動脈アプローチの組み合わせを介して、本発明の2つの部分からなるシャントデバイスを送達および固定する経皮的方法を示す図である。
【
図5A】本発明の分岐送達デバイス、および大腿静脈/IVCアプローチを介して分岐送達デバイスを使用して本発明の2つの部分からなるシャントデバイスを送達および固定する経皮的方法を示す図である。
【
図5B】本発明の分岐送達デバイス、および大腿静脈/IVCアプローチを介して分岐送達デバイスを使用して本発明の2つの部分からなるシャントデバイスを送達および固定する経皮的方法を示す図である。
【
図6】総腸骨静脈および右上行腰静脈を介したアプローチを介して奇静脈に経皮的にアクセスする方法を示す静脈構造の図である。
【
図7】本発明によるモジュラーシャントデバイスを示す図である。
【
図8】本発明による別のモジュラーシャントデバイスを示す図である。
【
図9A】本発明の固定メカニズムを示す図であり、心臓の奇静脈に展開される固定メカニズムを示す。
【
図9B】本発明の固定メカニズムを示す図であり、内側チューブおよび外側チューブならびに固定棘を示す固定機構の一実施形態を示す。
【
図9C】本発明の固定メカニズムを示す図であり、内側スリーブに対する内側スリーブの軸方向の動きが、固定棘を半径方向外向きにどのように延ばすかを示す。
【
図9D】本発明の固定メカニズムを示す図であり、
図9Eと同様であり、奇静脈の小孔に棘を固定することを示す。
【
図9E】本発明の固定メカニズムを示す図であり、展開が外側スリーブに対する内側スリーブの回転運動を伴うことを除いて、
図9B~Dの固定システムと実質的に同じである固定機構の第2の実施形態を示す。
【
図9F】本発明の固定メカニズムを示す図であり、展開が外側スリーブに対する内側スリーブの回転運動を伴うことを除いて、
図9B~Dの固定システムと実質的に同じである固定機構の第2の実施形態を示す。
【
図9G】本発明の固定メカニズムを示す図であり、展開が外側スリーブに対する内側スリーブの回転運動を伴うことを除いて、
図9B~Dの固定システムと実質的に同じである固定機構の第2の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本明細書に記載のすべての刊行物、特許、特許出願および他の参考文献は、個々の刊行物、特許または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示され、その内容が完全に列挙されているかのように、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
定義および一般的な設定
本明細書で使用される場合、特に別段の指示がない限り、以下の用語は、その用語が当技術分野で享受する可能性のあるより広い(またはより狭い)意味に加えて、以下の意味を有することを意図する。
【0101】
文脈上別段の必要がない限り、ここでの単数形の使用は複数形を含むように読まれ、その逆も同様である。物に関連して使用される「a」または「an」という用語は、その物の1つまたは複数を指すと解釈される。すなわち、「a」(または「an」)、「1つ以上」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では同義的に使用できる。
【0102】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」という用語、または「含む(comprises)」または「含む(comprising)」などのその変形は、列挙されたインテジャー(integer)(例えば、特徴、要素、特性、プロパティ、方法/プロセスステップまたは限定)またはインテジャーのグループ(例えば、特徴、要素、特性、プロパティ、方法/プロセスステップまたは限定)の包含を示すために読まれるべきである。ただし、他のインテジャーまたはインテジャーのグループを除外しない。したがって、本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、包括的またはオープンエンドであり、追加の、列挙されていないインテジャーまたは方法/プロセスステップを除外しない。
【0103】
本明細書で使用される場合、「疾患」という用語は、生理学的機能を損ない、特定の症状に関連する異常な状態を定義するために使用される。この用語は、病因の性質(または実際に疾患の病因的根拠が確立されているかどうか)に関係なく、生理学的機能が損なわれている障害、病気、異常、病状、病気、状態または症候群を包含するように広く使用される。したがって、感染、外傷、傷害、手術、放射線焼灼、中毒、または栄養不足から生じる状態が含まれる。
【0104】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療」という用語は、疾患の症状を治癒、改善または軽減するか、またはその原因を除去(または影響を軽減)する介入(例えば、対象への薬剤の投与)を指す。(s)(例えば、リソソーム酵素の病理学的レベルの蓄積の減少)。この場合、この用語は「治療(therapy)」という用語と同義で使用される。
【0105】
さらに、「治療(treatment)」または「治療(treating)」という用語は、疾患の発症または進行を予防または遅延させるか、または治療された集団内でのその発生率を低減(または根絶)する介入(例えば、対象への薬剤の投与)を指す。この場合、治療という用語は「予防」という用語と同義語として使用される。
【0106】
本明細書で使用される場合、有効量または治療有効量薬剤の量は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題や合併症なしに、合理的な利益/リスク比に見合った、対象に投与できる量を定義するが、望ましい効果を提供するのに十分な量である。対象の状態の永続的または一時的な改善によって現れる治療または予防。量は、個人の年齢および全身状態、投与方法および他の要因に応じて、対象ごとに異なる。したがって、正確な有効量を指定することは不可能であるが、当業者は、日常的な実験および背景の一般知識を使用して、個々の場合において適切な「有効」量を決定することができるであろう。この文脈での治療結果には、症状の根絶または軽減、痛みまたは不快感の軽減、生存期間の延長、可動性の改善、およびその他の臨床的改善のマーカーが含まれる。治療結果は完全な治療法である必要ない。生物学的/分子マーカー、臨床的または観察的改善で改善が観察される場合がある。好ましい実施形態では、本発明の方法は、ヒト、大型競走動物(馬、ラクダ、犬)、および家畜のコンパニオンアニマル(猫および犬)に適用可能である。
【0107】
上記で定義された治療および有効量の文脈において、対象という用語(文脈が許す場合、「個体」、「動物」、「患者」または「哺乳動物」を含むと読まれるべきである)は、治療が必要な任意の対象、特に哺乳動物対象を定義する。哺乳類の対象には、ヒト、家畜、農場の動物、動物園の動物、スポーツ動物、ペット動物、例えば、犬、猫、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、馬、牛(cattle)、牛(cow);類人猿、サル、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類;犬やオオカミなどのイヌ科動物;猫、ライオン、トラなどのネコ科動物;馬、ロバ、シマウマなどの馬;牛、豚、羊などの食用動物;鹿やキリンなどの有蹄動物;マウス、ラット、ハムスター、モルモットなどのげっ歯類;が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、対象はヒトである。本明細書で使用される場合、「馬」という用語は、家族の哺乳動物を指す。ウマ科、馬、ロバ、ロバ、キャン、シマウマが含まれる。
【0108】
本明細書で使用される場合、「移植可能なシャントデバイス」という用語は、心房中隔壁の開口を介して、左心房と奇静脈との間の流体接続を提供するように構成された導管を意味する。この装置は、心臓の左側の体液圧を低下させるために使用することができ、それにより、左側圧の上昇を特徴とする疾患または状態を治療または予防することができる。デバイスは、典型的には流体的にタイトな方法で奇静脈(一般に奇静脈の口)に係合するように構成された遠位端を有する。一実施形態では、デバイスの近位端は、奇静脈の口内で過剰に拡張するように構成され、デバイスの端を静脈に固定し、シャントデバイスと静脈との間に流体的に緊密な接続を作成する。近位端は、典型的には、心房中隔壁に固定するように構成された当技術分野で知られているタイプの「シャントのような」端を有し(
図3Aおよび3Bを参照)、壁を壁に固定するが、心房中隔壁に固定し、開口部を介して左心房との流体接続を確立する他の方法を使用することができる。デバイスは、一般に柔軟性があり、一般に自己拡張可能であるが、半径方向拡張デバイス(すなわち、バルーン)を使用して拡張を必要とする非自己拡張可能デバイスを使用することができる。デバイス(または少なくともデバイスのフレキシブルチューブ部分)は、一般に、構造ワイヤ要素(デバイスの開通性を維持するのに適している)および生体適合性閉塞シース(デバイスからの流体の漏れを防ぐように構成されている)を含む。展開時のデバイスは、一般に、その長さに沿って湾曲できるように十分な柔軟性がある(
図1に示されている)が、心房中隔壁の開口部から奇静脈までのルートを提供するために、角度を付けて接続された、またはヒンジで接続された多数の直線セクションを含む場合もある(
図7および8に示すように)。デバイスは、組み立てられた形で配送される場合もあれば、部品で配送され、心臓のその場で組み立てられる場合もある。
【0109】
本明細書で使用される場合、「奇静脈」という用語は、脱酸素化された血液を胸部および腹部の後壁から上大静脈に輸送する肺静脈系の部分を指す。それは、上行腰静脈と第12胸椎のレベルでの右肋骨下静脈との結合によって形成され、後縦隔で上行し、右肺の根元で右主気管支を後方にアーチ状に曲がって上大静脈に合流する。大静脈。主な支流は、脊柱の反対側にある同様の構造である半奇静脈である。他の支流には、気管支静脈、心膜静脈、および後部右肋間静脈が含まれる。それは脊椎静脈叢と連通する。奇静脈へのアクセスは、大腿静脈へのカテーテルの挿入、患者のかなりのサブセット、右総腸骨静脈との右上行腰静脈(RAL)静脈吻合、および高排尿状態(すなわちHF)の患者によって達成することができ、より堅牢に形成される。造影剤静脈造影で簡単に確認できるRAL静脈にカテーテルを進める。ワイヤを奇静脈のRAL静脈まで進め、最終的に奇静脈まで進め、奇静脈を通過すると、カテーテルは上大静脈に入り、次に心臓の右心房に入る。
【0110】
本明細書で使用される場合、「2つの部分からなるシャントデバイス」という用語は、心臓のインサイチュで接続されて組み立てられたシャントデバイスを形成するように構成される2つの部分で提供される本発明のシャントデバイスを指す。例えば、デバイスは、可撓性チューブおよび遠位端を含む第1の部分、および近位端を含むかまたは近位端からなる第2の部分を含み得、ここで、第1および第2の部分の自由端は、生体内で係合するように構成される。この実施形態では、近位端は、一般に、最初に心房中隔壁の開口部に固定され、次に展開された奇静脈の第2の部分に固定され、次にこれらの部分が右心房に接続されて組み立てられたデバイスを形成する。別の実施形態では、デバイスは、可撓性チューブ(導管)の近位端および近位セクションを含む第1の部分と、可撓性チューブ(導管)の遠位端および遠位セクションを含む第2の部分とを含み得、それにより、フレキシブルチューブセクションは、生体内で係合するように構成される。第1および第2の部品の自由端のための様々な係合手段、例えば、摩擦嵌合端、磁気コネクタ、ねじ付きコネクタ、縫合糸クリップ、またはリエントラントスロットコネクタを使用することができる。両端は、可逆的または非可逆的な係合に構成することができる。
【0111】
本明細書で使用される場合、「構造ワイヤ要素」という用語は、デバイスの構造骨格を指し、これは、一般に、デバイスが心房中隔壁から奇静脈まで横断することを可能にするのに十分な柔軟性を可能にするように構成されるが、開存性を維持する。ワイヤ要素は、単一のワイヤ要素、または接続されていても接続されていない場合もある複数のワイヤ要素を含み得る。適切な構造ワイヤ要素は、心臓ステントの先行技術に記載されており、その詳細は、当業者に知られているであろう。例としては、米国特許第6,468,303(特許文献1)、米国特許出願公開第2017/0113026号(特許文献3)、米国特許出願公開第2018/0263766号(特許文献4)などがある。一実施形態では、ワイヤ要素は、チューブに沿って軸方向に配置された、半径方向に拡張可能な複数の円周支柱を含む。構造ワイヤ要素は、金属、例えばステンレス鋼またはニチノールなどの形状記憶材料から、またはレーザー切断され得るポリマー材料から形成され得る。
【0112】
本明細書で使用される場合、「生体適合性閉塞シース」という用語は、ワイヤ要素の内腔を閉塞し、ワイヤ要素の内側または外側に形成され得る構造ワイヤ要素のカバーを指す。生体適合性の閉塞シースまたはコーティングは、ポリエチレン、TPU、PTFEステントカプセル化、またはポリウレタン、ウレタンコポリマー、PETなどのエレクトロスピニングされた材料、またはPLGA、PLLA、PLAなどの吸収性材料から形成することができる。繊維サイズ、材料の厚さ、および繊維配向は、必要に応じて構成できる。
【0113】
本明細書で使用される場合、「経管的送達」という用語は、体腔を介した標的部位(例えば心臓)心臓へのシャントデバイスの送達、例えば動脈または静脈を介した送達を意味する。それは一般的に介入心臓専門医によって実行される。一実施形態では、本発明のデバイスは、動脈または静脈を通って前進し、デバイスをヒア(hear)の右心房に送達する。
【0114】
本明細書で使用される場合、「経心尖送達」という用語は、心臓の壁を介した送達を意味する。これには通常、心臓外科医が必要であり、開心術、または胸郭を介してアクセスできる鍵穴手術によって行うことができる。
【0115】
本明細書で使用される場合、「送達デバイス」という用語は、収縮構成でシャントデバイス(またはシャントデバイスの一部)を受容し、デバイスを心臓に輸送するように構成された少なくとも1つの管腔を有するデバイス、一般に送達カテーテルを指す。経皮的または経心尖的に、心臓の標的位置にデバイスを送達する。一実施形態では、送達デバイスは、送達デバイスの遠位端からデバイスを展開するために、含まれるデバイスに対して収縮するように構成される。
【0116】
「エネルギー送達要素」とは、エネルギーを受け取り、エネルギーを組織に向け、理想的にはエネルギーを熱に変換して組織を加熱し、コラーゲン変性(組織切除)を引き起こすように構成された装置を指す。組織切除装置は当業者に知られており、熱エネルギー(熱または冷)、マイクロ波エネルギー、高周波エネルギー、組織の切除に適した他のタイプのエネルギー、または組織を切除するように構成された化学物質の放出に基づいて動作する。組織焼灼装置は、STARBURST高周波焼灼システムおよびACCULISマイクロ波焼灼システムを含むANGIODYNAMICSによって販売されている。一実施形態では、組織切除デバイスは、隣接する組織に熱を送達するように典型的に構成された電極または電気部品のアレイを含む。一実施形態では、1つまたは複数の電極は、電極と電気的に連絡している少なくとも1つまたは2つの熱電対を含む。一実施形態では、1つまたは複数の電極は、RFまたはマイクロ波エネルギーを送達するように構成される。
【0117】
「センサ」は、シャントデバイス内またはシャントデバイスに隣接する環境パラメータ、例えば、血流、電気信号活動、圧力、インピーダンス、水分などを検出するように構成された電気センサを意味する。センサは、左心房または右心房、あるいはその両方の血液または組織のパラメータを検出するように構成することができる。センサは、適切に離間された放出センサをよび検出センサを含み得る。一実施形態では、センサは電極である。一実施形態では、センサは、流体の流れを検出するように構成される。一実施形態では、センサは、電気伝導率を検出するように構成される。一実施形態では、センサは、電気インピーダンスを検出するように構成される。一実施形態では、センサは、音響信号を検出するように構成される。一実施形態では、センサは、典型的には周囲組織の血流の変化を示す光信号を検出するように構成される。一実施形態では、センサは、伸びを検出するように構成される。一実施形態では、センサは、水分を検出するように構成される。一実施形態では、センサは、検出された信号をプロセッサに無線送信するように構成される。適切なセンサの例には、光学センサ、無線周波数センサ、マイクロ波センサ、低周波数電磁波(すなわち、DCからRF)に基づくセンサ、無線周波数波(RFからMW)、およびマイクロ波センサ(GHz)が含まれる。一実施形態では、デバイスは2つのセンサを有し、1つは左心房のパラメータを検出するためのものであり、もう1つは右心房のパラメータを検出するためのものである。
【0118】
「光学センサ」とは、組織に光を向け、反射/透過光を測定するように構成されたセンサを意味する。これらのセンサは、隣接する組織の血流の変化を検出するのに特に敏感であるため、LAAなどの組織の血管新生除去を検出するのに適する。例としては、パルスオキシメトリ、フォトプラスモグラフィー、近赤外分光法、コントラスト強調超音波検査、拡散相関分光法(DCS)、透過率または反射率センサ、LED RGB、レーザードップラー流量測定、拡散反射率、蛍光/自己蛍光、近赤外(NIR)イメージング、拡散相関分光法、および光コヒーレンストモグラフィーを使用した光学プローブがある。フォトピーズモグラフィーセンサの例は、2つの波長の光を組織に通して、各波長で変化する吸光度を測定する光検出器に送るデバイスである。これにより、静脈血を除く、脈動する動脈血のみによる吸光度を測定できる。筋肉、脂肪など)。フォトプレズモグラフィーは、単一のLEDからの光で組織を照らし、フォトダイオードに反射された光の量を測定することによって検出される心拍によって引き起こされる組織の体積の変化を測定する。
【0119】
実施例
次に、本発明を特定の実施例を参照して説明する。これらは単なる例示であり、説明のみを目的としている。これらは、主張されている独占の範囲または記載されている発明に限定することを意図するものではない。これらの例は、本発明を実施するために現在考えられている最良のモードを構成する。
【0120】
図面を参照し、最初に
図1から2を参照すると、右心房A、右心房B、左心房Cおよび左心房D、下大静脈E、上大静脈F、接合静脈G、および心房中隔壁Hを有するヒトの心臓が示されている。概して参照番号1によって示される本発明のシャントデバイスは、心房中隔壁に形成された開口Jを介して左心房Cと奇静脈Gとの間の流体連絡を提供する心臓Aに埋め込まれて示される。
【0121】
シャントデバイス1は、送達カテーテルでの送達に適した収縮送達構成と展開された半径方向拡張構成との間の半径方向調整用に構成された可撓性チューブ2を含み、チューブは、貫通管腔、奇静脈G内に固定するように構成された遠位端3、および心房中隔壁の開口部にまたがり、壁に固定するように構成された近位端4を有する。展開時の除氷剤(deice)の長さは約Xcm、直径(フレキシブルチューブに沿って)は約Ycmである。遠位端3は、約Zcmの拡張時に直径を有する奇静脈の小孔内に固定するための過拡張セクション3Aを有する。近位端4は、心房中隔壁Hの両側で直径約Xcmまで拡張するように構成された2つの軸方向に離間した拡張可能な保持フランジセクション5を含み、デバイスの遠位端を壁に固定し、デバイス1と左心房Cとの間に開口部Jを介した流体連通を確立する。
【0122】
図2Aおよび2Bに示されるように、示されるデバイスは、自己拡張可能であり、
図2A(左)に示される拘束構成から
図2A(右)に示される非拘束(展開済み)構成への半径方向拡張のために構成された複数の正弦波リング要素10を含む構造ワイヤ要素から形成される。ワイヤ要素は、NITIなどの形状記憶金属を含む。この装置はまた、構造的ワイヤ要素を覆い、ポリエチレンで形成された閉塞シースを含む。
【0123】
より詳細には、および
図2Aに示されるように、デバイスの遠位端は、奇静脈と係合するように構成され、この実施形態では、展開されたときの直径が奇静脈の口の直径よりも大きい自己拡張可能な過拡張セクション3Aを含む。
図2Bを参照すると、デバイスの近位端は「シャント」の形態をとり、約Xcmの距離で軸方向に分離された2つの半径方向に拡張可能な保持フランジセクションを有し、および、拘束された構成(左側)および展開された放射状に拡張された構成(右側)で示される。フランジは、展開時に、心房中隔壁の反対側に対向する関係で隣接し、デバイスの近位端を壁に固定するような寸法になっている。
【0124】
図2Cに示されるように、デバイスの端部は、デバイスを除去カテーテルに収縮させて本体(body)を除去する前に、デバイスを拘束された構成に収縮させるように作動させることができるフェイスプル同期収縮機構を組み込むことができる。示される実施形態では、デバイスの端部は、一連のループ12およびループに通され、テザーを引っ張るとデバイスの端部が半径方向に収縮するように構成されたテザー13を含む。
【0125】
図2Dは、本発明による2つの部分からなるシャントデバイスの一部を示し、第1の部分15、第2の部分16、それぞれが自由端17を有し、各自由端で正弦波リングストラット10の間にひもでつながれるテザリング要素18を有する。テザリング要素18が引っ張られると、自由端17は互いに向かって引っ張られ、一緒にひもで締められて連続チューブを形成する。
【0126】
図3は、心臓における本発明のシャントデバイスの送達および移植の経心尖法を示している。
図3Aに示される第1のステップでは、左心室Dの壁が適切な穿刺装置を使用して穿刺され、カテーテル20が穴を通って左心室を介して左心房Cに進められる。次に、穿刺装置(図示せず)がカテーテルを通って前進し、作動して、心房中隔壁Hに開口Jを形成する。次に、ガイドワイヤ22を含むガイドシース21が、カテーテル20を通り、開口Jを通り、右心房B、上大静脈E、および接合静脈G内へ前進する。次に、ガイドワイヤが展開され、ガイドシースが引き込まれ、ガイドワイヤ22をその場に残す。
図3Bに示されるように、次に、送達カテーテル25は、ガイドワイヤ22を介して同じ経路に沿って奇静脈に進められ、そこでシャントデバイスの遠位端3が奇静脈の口に展開され、そこで拡張して、デバイスの遠位端を静脈に固定している奇静脈の口と接触する。シャントデバイスの展開は、
図3Cに示されるようにデバイスの近位端が展開されるまで、デバイス1に対してカテーテル25を引っ込めることによって継続される。これは通常、透視室などの心臓画像技術を使用して実行される。
【0127】
図4は、心臓における本発明の2つの部分からなるシャントデバイスの送達および移植の完全に経皮的な方法を示し、前の実施形態を参照して説明されたステップには、同じ参照番号が割り当てられる。
図4Aに示される第1のステップにおいて、シャントデバイスの第1の部分(保持フランジセクション5を有する近位端4)を含む送達カテーテル30は、大腿静脈/ IVCアプローチを介して右心房Aに向かって経皮的に前進し、および心房中隔壁Hを横切る(前述の手法を使用して以前に開口部が形成されている場合)。次に、近位端4は、壁の両側に展開されると保持フランジが自己拡張し、近位端4を壁に固定するように、開口を横切って展開される。
図4Bは、2つの部分からなるデバイスの第2の部分(この実施形態では、遠位端3および可撓性チューブ2を含む)の大動脈を介した左心室への経皮的送達を示す。送達ステップは、送達カテーテルが固定された近位端4の管腔を通って右心房に前進し、一旦展開されるとチューブ2の自由端15は
図2Dを参照して前述したように固定された近位端4に接続されることを除いて、
図3Aから3Cを参照して説明したものと実質的に同じである。
【0128】
図5は、一般に参照番号40によって示され、本発明の2つの部分からなるシャントデバイスを対象の心臓に送達および移植する際に使用するための、本発明による送達カテーテルを示す。送達カテーテル40は、外側シース41、および外側シース41に対して軸方向に移動可能であり、展開時に内側シース42Aおよび42Bが
図5Aに示される分岐構成をとるように構成された2つの内側送達シース42A、42Bを備える。内側シース42Aは、シース42Bよりも長く、展開および前進時に、上大静脈Fおよび奇静脈Gに突出するように構成される。内側シース42Bは、展開時に、心房中隔壁Hに向かって突出するように構成される。使用中、カテーテル40は、大腿静脈/IVCアプローチを介して心臓内に進められ、右心房B内に進められ、そこで内側鞘が展開され、
図5Aに示される分岐構成をとる。次に、アブレーションカテーテル(図示せず)を内側シース42Bに沿って前進させ、作動させて壁Hに開口を形成してから、引っ込めることができる。次に、デバイスの第1の部分(近位端4を含む)は、前述のように、内側シース42Bに沿って前進し、心房中隔壁Hを横切って展開される。次に、第2の部分(遠位端3を含む)は、内側鞘42Aに沿って奇静脈の小孔内に進められ、前述のように展開される。次に、2つの部分の自由端17は、前述のようにテザリング要素18を使用して互いに噛み合わされて、左心房と奇静脈との間の流体接続を提供する、組み立てられ埋め込まれたシャントデバイスを形成する。
【0129】
図6は、総腸骨静脈と右上行腰静脈を介したアプローチにより、奇静脈に経皮的にアクセスする方法を示す静脈構造の図である。
【0130】
図7および
図8を参照すると、本発明のモジュール式デバイスが示され、前の実施形態を参照して識別された部品には、同じ参照番号が割り当てられている。
図7の実施形態では、デバイス50は、開口Hで心房中隔壁Hと係合するように構成された近位端52を有する第1のチューブ51と、奇静脈に固定するように構成された遠位端54を有する第2のチューブ53とを備える。静脈G。第2のチューブ53の近位端は、第1のチューブの展開中に第1のチューブ51の遠位端56を受け入れるように構成された開口55を有し、それにより、開口55における第1のチューブの遠位端の半径方向の拡張が、2つのチューブを一緒にロックする。
図8の実施形態は、第1のチューブの遠位端が、第2のチューブ53の遠位端を受け入れるように構成された貫通開口58を含むことを除いて、
図7の実施形態と同様である。両方の実施形態は、心臓のインサイチュで組み立てられて、組み立てられたデバイスを通って左心房から奇静脈への血流のための導管を提供するように構成される。
【0131】
図9を参照すると、デバイスのための追加の固定手段、典型的にはデバイスの遠位端が示されている。両方の実施形態のデバイスは、デバイスの遠位端の作動によって展開可能である固定手段(フックまたはバーブ)を含む。
図9Aは、展開可能な固定要素が展開された後、奇静脈の口に固定されたデバイスを示している。両方の実施形態において、デバイスの遠位端は、互いに作動可能に結合され、相対的な軸方向運動(
図9Bおよび9C)または相対的な回転運動(
図9Eおよび9F)のために構成された外側スリーブ要素61および内側スリーブ要素62を含む。湾曲した固定バーブ63は、内側スリーブ要素62の遠位端に取り付けられ、外側スリーブに対する内側スリーブの軸方向の動きがバーブを外向きに突出させるように、外側スリーブ要素61の開口部に通される。奇静脈の口(
図9bから9D)、または外側のスリーブに対する内側のスリーブの回転運動により、棘が奇静脈の口に外側に突き出る(
図9Eから9G)。
【0132】
本発明のシャントデバイスは、心臓、例えば左心房および/または右心房の血圧を検出するように構成することができる。シャントデバイスに1つまたは複数のセンサを提供すると、心房圧を監視できる。これにより、シャントデバイスの有効性に関する情報が提供されるだけでなく、心臓の圧力不均衡を早期かつ正確に検出できる(たとえば、左心房の圧力低下または右心房の心房高血圧症の早期検出)。一実施形態では、デバイスは、デバイスの左心房側に配置され、左心房血圧を監視するように配置された第1の血圧センサと、デバイスの右心房側に配置され、右心房血圧を測定するように配置された第2の血圧センサとを有する。センサは、CardioMEMSHFシステムであってもよい。CardioMEMS(ジョージア州アトランタ)は、収縮期、拡張期、および平均の圧力を継続的に測定できるバッテリー不要のセンサで構成されている。センサは、血圧データを、無線受信機および血圧を表示するためのディスプレイを有する遠隔監視装置に無線で送信するように構成されている。データは、患者の心臓専門医がセンサによって収集された測定値を確認できるオンラインポータルに送信される場合がある。監視デバイスは、データを参照データと比較して、データを処理するように構成されたプロセッサを有することができ、およびシャント治療の有効性および/または心臓に関連する診断情報、または生体内または生体外でシャントデバイスに後付けすることができるシャントデバイス用の患者固有の後付け可能な弁の設計に関連する出力を提供する。
【0133】
等価物
前述の説明は、本発明の現在好ましい実施形態を詳述している。これらの説明を考慮すると、当業者には、その実際における多数の修正および変形が生じることが予想される。これらの修正および変形は、本明細書に添付された特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。