(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】送達部材取り外しを有する摂取可能な装置
(51)【国際特許分類】
A61M 31/00 20060101AFI20240816BHJP
A61J 3/07 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A61M31/00
A61J3/07 E
(21)【出願番号】P 2021572574
(86)(22)【出願日】2020-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2020065755
(87)【国際公開番号】W WO2020245448
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-26
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/052521
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フレデリクセン, モーデン レヴェスガード
(72)【発明者】
【氏名】イェンスン, ブリーアン
(72)【発明者】
【氏名】イェスペルセン, ミッケル オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ポールセン, メテ
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-529066(JP,A)
【文献】国際公開第2010/137705(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/069697(WO,A1)
【文献】特表2013-522194(JP,A)
【文献】特表2013-515576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 31/00
A61J 3/07
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の消化管の内腔内に嚥下するのに好適な摂取可能な装置であって、前記内腔が、内腔壁を有しており、前記摂取可能な装置(100、200、300)が、
- 患者が摂取するようにサイズ調整されたカプセル(110、120)と、
- 前記カプセル(110、120)内で使い捨て可能な送達部材(130)であって、前記送達部材が、前記内腔壁の組織を貫通するように成形されており、かつ組織貫通端部および前記組織貫通端部の反対側の後端部を有しており、前記送達部材が、治療ペイロードを備えるか、または治療ペイロードを貯蔵部から送達するように構成されている、送達部材(130)と、
- 前記後端部で前記送達部材に対して取り付けられている、ラム(150)と、
- 前記ラム(150)に結合されており、かつ第1の構成および第2の構成を有している、アクチュエータ(140)であって、前記送達部材(130)が、前記アクチュエータ(140)が前記第1の構成にあるときに、前記カプセル(110、120)内に前記ラム(150)によって保持され、前記送達部材(130)が、
前記ラム(150)と前記送達部材(130)が所定の軌道に沿って移動するように、前記アクチュエータ(140)を前記第1の構成から前記第2の構成へと移動させることによって、前記カプセル(110、120)から前記内腔壁の中へと前進するように構成されて
いる、アクチュエータ(140)と、を備え、
前記摂取可能な装置(100、200、300)が、前記アクチュエータ(140)が前記第2の構成に移動するときに
前記ラム(150)を前記所定の軌道に対して傾斜して、前記送達部材(130)の少なくとも一部分を前記ラム(150)から取り外し、その結果、前記送達部材(130)の前記取り外された部分が、前記内腔壁内に留まって、治療ペイロードを放出するように構成され
た傾斜機構(128、129、129’、155、158、114.1、151.1、110.1、150.1、159)をさらに備えることを特徴とする、摂取可能な装置。
【請求項2】
前記送達部材(130)が、前記治療ペイロードを含む調製物から完全に形成された固体であり、前記送達部材が、前記内腔壁の組織に挿入されたときに溶解して、前記治療ペイロードの少なくとも一部分を組織に送達する、溶解可能な材料から作製される、請求項1に記載の摂取可能な装置。
【請求項3】
前記送達部材(130)の外部部分が、前記内腔壁の組織に挿入されたときに溶解する、溶解可能な固体材料から作製される、請求項1に記載の摂取可能な装置。
【請求項4】
前記送達部材の前記外部部分が、エンクロージャを画定し、前記治療ペイロードを含む調製物が、前記エンクロージャ内に収容される液体、ゲル、または粉末を形成する、請求項3に記載の摂取可能な装置。
【請求項5】
前記送達部材が、注射針であり、前記治療ペイロードが、前記カプセル(110、120)内の貯蔵部から前記注射針を通して排出可能である液体、ゲル、または粉末として提供される、請求項3または4に記載の摂取可能な装置。
【請求項6】
前記送達部材(130)が、前記アクチュエータ(140)が前記第1の構成をとるときに、長手方向軸に沿って延在する、細長い部材を形成し、前記所定の軌道が、前記長手方向軸と同軸の軸を画定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の摂取可能な装置。
【請求項7】
前記送達部材(130)が、曲線に沿って延在する細長い部材を形成し、前記所定の軌道が、前記曲線に沿って延在している、請求項1~5のいずれか一項に記載の摂取可能な装置。
【請求項8】
前記カプセル(110、120)が、停止面(128、129、129’)を備え、前記ラム(150)が、前記カプセル(110、120)の前記停止面と係合するように構成されたカウンター停止面(155、158)を備え、前記カプセルの前記停止面、および前記ラム(150)の前記カウンター停止面が、前記アクチュエータ(140)が前記第2の構成に移動するときに、前記ラム(150)の傾斜移動を誘導するように形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の摂取可能な装置。
【請求項9】
前記カプセル(110、120)が、停止面(128)を備え、前記ラム(150)が、前記カプセル(110、120)の前記停止面と係合するように構成されたカウンター停止面(155)を備え、前記停止面および前記カウンター停止面のうちの少なくとも一方が、偏心して配置された突起部(129、129’、158)を備え、前記停止面および前記カウンター停止面のうちの他方が、実質的に平面表面として形成され、前記突起部および前記平面表面が、前記アクチュエータ(140)が前記第2の構成に移動するときに、前記ラム(150)の傾斜移動を誘導する、請求項1~8のいずれか一項に記載の摂取可能な装置。
【請求項10】
前記ラム(150)が、接合部分(156、156.I、156.II、156.III)を備え、前記送達部材(130)の前記後端部が、前記ラムの前記接合部分に対して取り付けられている、請求項1~9のいずれか一項に記載の摂取可能な装置。
【請求項11】
前記送達部材(130)の前記後端部が、接着剤によって、前記ラム(150)の前記接合部分(156、156.I、156.II、156.III)に対して取り付けられている、請求項10に記載の摂取可能な装置。
【請求項12】
前記送達部材(130)の前記後端部が、摩擦嵌合およびプレス嵌合のうちの一方によって、前記ラム(150)の前記接合部分(156、156.I、156.II、156.III)に対して取り付けられている、請求項10に記載の摂取可能な装置。
【請求項13】
前記ラム(150)が、前記送達部材(130)の大部分が前記内腔壁内の標的場所の組織に挿入されるように、発射時に前記ラムを第1の位置から第2の位置へと移動させるように構成されており、前記送達部材(130)の少なくとも一部分が、前記ラムが前記ラムの前記傾斜により第2の位置をとるときに、前記ラム(150)の前記接合部分(156、156.I、156.II、156.III)に対して取り外されるように構成されている、請求項10~12のいずれか一項に記載の摂取可能な装置。
【請求項14】
前記アクチュエータ(140)が、圧縮ばねなどの駆動ばねであり、前記ばねが、前記ラム(150)に動力供給するために、引っ張られているか、または引っ張られるように構成されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の摂取可能な装置。
【請求項15】
前記摂取可能な装置が、自己復元カプセル装置として構成されており、前記自己復元カプセル装置が前記内腔壁の前記組織によって少なくとも部分的に支持されるときに、前記自己復元カプセル装置は、前記送達部材(130)が前記内腔壁内に挿入されて、前記治療ペイロードの少なくとも一部分を前記組織内に送達することを可能にする方向に配向している、請求項1~14のいずれか一項に記載の摂取可能な装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の内腔に嚥下され、内腔壁の組織を貫通するように成形されている送達部材を有するように適合された摂取可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、主にインスリンの送達による糖尿病治療が参照されるが、これは本発明の例示的な使用に過ぎない。
【0003】
多くの人々が、糖尿病などの疾患に罹り、日常的に、および多くの場合、毎日のように薬物の注射を受けることを必要としている。それらの人々の疾患を治療するために、これらの人々は、複雑であると考えられ得、不快感を感じ得る、異なるタスクを実施することを必要とされる。さらに、その人々は、外出時に注射装置、針、薬物を持参することが必要となる。したがって、治療が錠剤またはカプセルの経口摂取に基づき得る場合、そのような疾患の治療の有意な改善とみなされることになる。
【0004】
しかしながら、タンパク質ベースの薬物は、摂取時に吸収されるのではなく、分解および消化されることになるため、そのような溶液は、実現が非常に困難である。
【0005】
経口摂取を通してインスリンを血流中に送達するための作用溶液を提供するために、薬物は、まず消化管の内腔に送達され、さらに消化管の壁(内腔壁)内に送達されなければならない。これは、以下の数個の課題を提示する:(1)薬物は、胃内の酸による分解または消化から保護されなければならない。(2)薬物は、胃内、または下部消化管、すなわち、胃の後に放出されなければならず、これは、薬物放出の絶好の機会を制限する。(3)薬物は、胃および下部消化管内の流体の分解環境に曝露される時間を制限するために、内腔壁に送達されなければならない。壁で放出されない場合、薬物は、放出点から壁への移動中に分解され得るか、または分解流体から保護されない限り、吸収されずに下部消化管を通過し得る。
【0006】
活性薬剤の経口投与および上記の課題のうちの1つ以上への対処に関する先行技術文献は、特許文献1および特許文献2を含む。
【0007】
治療ペイロードを含む調製物から形成される固体として形成される送達部材を含む摂取可能なカプセルが提案されており、ここで送達部材は、ペイロードを送達するためにカプセルから内腔壁の組織に押し込まれる。ペイロードは組織内に挿入され、経時的に溶解し、患者の体内に吸収される。カプセルは標的部位に対して適切に配向することが可能であり得るが、ペイロードの展開後には、依然として別の場所に移動することができる。これにより、カプセルの移動により、ペイロードが部分的にまたは完全に標的部位から取り除かれるリスクが生じる。
【0008】
上記に関して、本発明の目的は、消化管の内腔内に嚥下するための摂取可能な装置を提供することであり、これは、送達部材の組織への適切な沈着を高度で効果的かつ確実に保証するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2018/213600 A1号
【文献】国際公開第2017/156347 A1号
【0010】
[課題を解決するための手段]
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処する、または例示的な実施形態の説明と同様に下記の開示から明らかな目的に対処する、実施形態および態様が説明される。
【0011】
したがって、本発明の第1の態様では、患者の消化管の管腔に嚥下するのに適した摂取可能な装置が提供されており、内腔は、内腔壁を有する。摂取可能な装置は、患者が摂取するようにサイズ調整されたカプセルを含み、送達部材は、カプセル内で使い捨て可能であり、または使い捨てされ、送達部材は、内腔壁の組織を貫通するように成形されており、組織貫通端部および組織貫通端部の反対側の後端部を有している。送達部材は、治療ペイロードを備えるか、または治療ペイロードを貯蔵部から送達するように構成されている。摂取可能な装置は、後端部で送達部材に対して取り付けられている、ラムと、ラムに結合されており、かつ第1の構成および第2の構成を有している、アクチュエータであって、送達部材が、アクチュエータが第1の構成にあるときに、カプセル内にラムによって保持され、送達部材が、送達部材が所定の軌道に沿って移動するように、アクチュエータを第1の構成から第2の構成へと移動させることによって、カプセルから、内腔壁の中へと前進するように構成されている、アクチュエータと、をさらに備える。ラムは、アクチュエータが第2の構成に移動するときに所定の軌道に対して傾斜して、送達部材の少なくとも一部分をラムから取り外し、その結果、送達部材の取り外された部分が、内腔壁内に留まって、治療ペイロードを放出するように構成されている。
【0012】
すでに組織に挿入されている送達部材に対するラムの傾斜移動のため、所定の部分、またはペイロード全体は、ラムから効果的に取り外され、したがって、摂取可能な装置の残りの部分から効果的に取り外される。したがって、カプセルが不注意により挿入された送達部材に引っ張り力を提供するリスクを防止する。
【0013】
例示的な実施形態では、送達部材は、治療ペイロードを含む調製物から部分的に、または完全に形成された固体であり、送達部材は、内腔壁の組織に挿入されたときに溶解して、治療ペイロードの少なくとも一部分を組織に送達する、溶解可能な材料から作製される。
【0014】
他の例示的な実施形態では、送達部材の外部部分は、内腔壁の組織に挿入されたときに溶解する、溶解可能な固体材料から作製される。
【0015】
送達部材の外部部分は、エンクロージャを画定するように構成され得、治療ペイロードを含む調製物は、エンクロージャ内に収容される液体、ゲル、または粉末を形成する。
【0016】
なおもさらなる実施形態では、送達部材は、内腔を有する注射針であり、治療ペイロードは、カプセル内の貯蔵部から注射針の内腔を通して排出可能である液体、ゲル、または粉末として提供される。
【0017】
いくつかの例示的な実施形態では、送達部材は、アクチュエータが第1の構成をとるときに、長手方向軸に沿って延在する、細長い部材を形成し、所定の軌道は、長手方向軸と同軸の軸を画定する。
【0018】
あるいは、送達部材は、曲線に沿って延在する細長い部材の形態で提供されてもよく、所定の軌道は、その曲線に沿って延在している。
【0019】
いくつかの実施形態では、摂取可能な装置は、アクチュエータが第2の構成に移動するときにラムを傾斜させるための傾斜機構を備える。いくつかの実施形態では、ラムは、カプセル、またはカプセルに関連付けられた構造と協働して、アクチュエータが第2の構成に移動するときに、傾斜運動をラムに課す。いくつかの実施形態では、アクチュエータは、ラムを傾斜させるための力を提供する。他の実施形態では、前述のアクチュエータに加えて、アクチュエータが第2の構成に移動するときに、ラムの傾斜移動を課す別個のアクチュエータ構成要素が提供されている。
【0020】
例示的な実施形態では、カプセルは、停止面を備え、ラムは、カプセルの停止面と係合するように構成されたカウンター停止面を備え、カプセルの停止面、およびラムのカウンター停止面は、アクチュエータが第2の構成に移動するときに、ラムの傾斜移動を誘導するように形成されている。
【0021】
いくつかのさらなる実施形態は、停止面を備えるカプセルを提供しており、ラムは、カプセルの停止面と係合するように構成されたカウンター停止面を備え、停止面およびカウンター停止面のうちの少なくとも一方は、偏心して配置された突起部を備え、停止面およびカウンター停止面のうちの他方は、実質的に平面表面として形成され、突起部および平面表面は、アクチュエータが第2の構成に移動するときに、ラムの傾斜移動を誘導する。
【0022】
他の実施形態では、ガイドシステムは、ラムとカプセルとの間に配設されており、ガイドシステムは、アクチュエータが第2の構成に移動するときに、ラム上に傾斜移動を課すように構成されている。
【0023】
なおも他の実施形態では、アクチュエータが第2の構成に移動するときに、ラムに偏心して配設されたブレーキ手段が、ラム上に傾斜移動を課すように提供される。
【0024】
なおもさらなる実施形態では、ラムは、アクチュエータが第2の構成に移動するときに、ラムの移動の最終部分においてラムを傾斜させるのに役立つ放射状に配置される隆起または突起部を含み得る。
【0025】
なおもさらなる実施形態では、ラムは、アクチュエータと協働することによって傾斜されるように構成されており、アクチュエータは、ラム上に偏心して配置された力構成要素と作用するように構成された少なくとも1つの部材を含む。
【0026】
特定の実施形態では、ラムは、接合部分を備え、送達部材の後端部は、ラムの接合部分に対して取り付けられている。
【0027】
いくつかの実施形態では、送達部材の後端部は、接着剤によってラムの接合部分に対して取り付けられてもよい。
【0028】
代替的な実施形態では、送達部材の後端部は、摩擦嵌合およびプレス嵌合のうちの一方によって、ラムの接合部分に対して取り付けられている。
【0029】
いくつかの実施形態では、ラムは、送達部材の大部分が内腔壁内の標的場所の組織に挿入されるように、発射時にラムを第1の位置から第2の位置へと移動させるように構成されており、送達部材の少なくとも一部分は、ラムがラムのその傾斜により第2の位置をとるときに、ラムの接合部分に対して取り外されるように構成されている。
【0030】
いくつかの構成では、ラムは、所定の送達ストロークにおける変位によって第1の位置から第2の位置へと移動可能である。いくつかの実施形態では、ラムの傾斜移動は、例えば、送達ストロークの最終20%の変位内のみ、例えば、送達ストロークの最終10%の変位内のみ、または例えば、送達ストロークの最終5%の変位内のみなど、送達ストロークの最終30%の変位内のみで発生する。
【0031】
アクチュエータは、圧縮ばねなどの駆動ばねを備えてもよく、ばねは、ラムに動力供給するために、引っ張られているか、または引っ張られるように構成されている。
【0032】
摂取可能なデバイスのなおも他の形態では、装置は、自己復元カプセル装置として構成されており、自己復元カプセルが内腔壁の組織によって少なくとも部分的に支持されるときに、自己復元カプセルは、送達部材が、内腔壁内に挿入されて、治療ペイロードの少なくとも一部分を組織内に送達することを可能にする方向に配向している。
【0033】
アクチュエータは、ラムに動力供給して、治療ペイロードを排出または送達するためのラムに関連付けられたエネルギー源として提供されてもよい。いくつかの形態では、カプセルおよびラムは、発射前構成にラムを維持するために、ラッチおよび保持部分の少なくとも1つの対を備える。ラッチおよび保持部分の各対について、摂取可能な装置は、溶解可能な発射部材を画定し、溶解可能な発射部材は、生体液などの流体内で少なくとも部分的に溶解され、保持部分が、カプセルおよびラムのうちの一方によって構成され、偏向可能なラッチが、カプセルおよびラムのうちの他方によって構成される。偏向可能なラッチは、軸に対する横方向移動のために構成され、偏向可能なラッチは、閉塞部分を有する第1の表面と、第1の表面に対向して配設され、溶解可能な発射部材と相互作用するように構成された、支持表面と、を画定する。発射前構成では、偏向可能なラッチの閉塞部分が、ラッチ係合において保持部分に係合し、偏向可能なラッチの支持表面が、溶解可能な発射部材と相互作用して、偏向可能なラッチの移動を制限し、それによって、ラッチ係合の解放を防止する。溶解可能な発射部材が少なくとも部分的に溶解されている発射構成では、偏向可能なラッチが移動することを可能にし、それによって、偏向可能なラッチの閉塞部分と保持部分との間のラッチ係合を解放して、エネルギー源がラムを発射することを可能にする。
【0034】
この配置によって、エネルギー源の全動力または荷重を担持する溶解可能な部材を有する代わりに、溶解可能な部品は、単に機械的作動システムを閉塞するように設計される。機械的作動システムは、プラスチックなどの好適な高強度材料から作製された部品に依存するように設計され得、機械的作動システムを潜在的に妨害し得る未溶解片を残さない。
【0035】
例示的な実施形態では、偏向可能なラッチは、軸に対する半径方向移動のために構成される。いくつかの例では、発射軸およびラム移動は、直線状である。他の例示的な実施形態では、発射軸は、直線状ではなく、例えば、ラムの発射軌道は、弓状もしくは湾曲していてもよく、または弓状もしくは湾曲した軌道を含んでもよい。本明細書では、ラッチは、ラムを解放するためのラムの軌道に対する横方向移動のために構成され得る。
【0036】
例示的な実施形態では、ラッチおよび保持部分の2つ、3つ、4つ、5つ以上の対などの、ラッチおよび保持部分の複数の対が提供され、ラッチおよび保持部分の対は、軸の周囲に等しく配設される。
【0037】
いくつかの実施形態では、溶解可能な発射部材は、ラッチおよび保持部分の全ての対に共通である。
【0038】
さらなる実施形態では、溶解可能な発射部材が、軸に沿って配置され、ラッチおよび保持部分の少なくとも1つの対が、溶解可能な発射部材の半径方向外側に配設される。
【0039】
他の変形例では、1つ以上の溶解可能な発射部材が、軸の周囲のリング状構成などに配設され、1つ以上の溶解可能な発射部材が、ラッチおよび保持部分の少なくとも1つ対を取り囲んでいる。
【0040】
カプセルは、胃液などの生物学的流体が溶解可能な発射部材を溶解するためにカプセルに入ることを可能にする、1つ以上の開口部を備え得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は、駆動ばねとして構成された少なくとも1つのばねであるか、またはそれを備える。例示的なばねは、圧縮ばね、ねじりばね、板ばね、または定力ばねを含む。ばねは、ラムに動力供給するために、引っ張られているか、または引っ張られているように構成され得る。アクチュエータについての他の非限定的な例示的なタイプのエネルギー源としては、圧縮ガスアクチュエータまたはガス発生器が挙げられる。いくつかの実施形態では、発射前構成では、エネルギー源は、ラム上に荷重を及ぼし、それによって、軸に沿ってラムを付勢する。他の実施形態では、エネルギー源は、トリガー部材または摂取可能な装置の機構のトリガー時にのみ、ラム上に負荷をかけるように構成されている。
【0042】
例示的な実施形態では、摂取可能な装置は、患者による嚥下、胃、小腸、または大腸などの、患者の消化管の内腔内への移動のために構成されている。装置のカプセルは、ヒトなどの被験体によって嚥下されることを可能にするように形状決めおよびサイズ決めされ得る。
【0043】
またさらなる例示的な実施形態では、摂取可能な装置は、自己復元カプセルとして構成され、自己復元カプセルが内腔壁の組織によって少なくとも部分的に支持されるとき、自己復元カプセルは、送達部材が、内腔壁内に挿入されて、治療ペイロードの少なくとも一部分を組織内に送達することを可能にする方向に配向する。特定の実施形態では、摂取可能な装置は、幾何学的中心および軸に沿った幾何学的中心からオフセットされる質量中心を有する、自己復元カプセル装置として構成されてもよく、質量中心は幾何学的中心から横方向にオフセットされるように配向されながらカプセル装置が内腔壁の組織によって支持されるとき、カプセル装置は、送達部材が標的場所で内腔壁と相互作用することを可能にするために、重力の方向に沿って配向された軸を有するカプセル装置を配向するように、重力作用に起因する、外部から適用されるトルクを受ける。
【0044】
上記の配設によって、経口投与された原薬は、生存哺乳類被験体の胃壁または腸壁内に安全に、かつ確実に送達され得る。原薬は、例えば、固体、封入された固体、液体、ゲル、もしくは粉末、またはそれらの任意の組み合わせの形態であってもよい。
【0045】
本明細書で使用される場合、「薬物」、「原薬」、または「ペイロード」という用語は、指定された標的部位内またはその上に送達されることができる任意の薬物製剤を包含することを意味する。薬物は、単一の薬物化合物、または予混合もしくは予配合された複数の薬物化合物であってもよい。代表的な薬物としては、固体、粉末または液体の両方の形態における、ペプチド(例えば、インスリン、インスリン含有薬剤、GLP-1含有薬剤ならびにその誘導体)、タンパク質、およびホルモンなどの医薬品、生物由来または活性物質、ホルモンおよび遺伝子に基づく物質、栄養製剤、ならびに他の物質が挙げられる。具体的には、薬物は、インスリンまたはGLP-1含有薬剤であってもよく、これは、その類似体、および1つ以上の他の薬物との組み合わせを含む。
【0046】
以下の本発明の実施形態は、図面を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1a-1b】
図1aおよび
図1bは、固体用量送達のために構成された本発明によるカプセル装置の第1の実施形態の断面正面図を各々示し、装置は、それぞれ、発射前構成および発射構成を想定する。
【
図2】
図2は、本発明の態様によるカプセル装置で使用するためのラムおよび固形用量送達部材のアセンブリの3つの異なる構成を概略的に示す。
【
図3】
図3は、本発明によるカプセル装置内のラムを発射する際に使用するための変形可能なラッチおよび保持部分アセンブリの対の4つの異なる構成を概略的に示す。
【
図4】
図4は、固体送達部材とラムとの間の固体用量送達の取り外しを可能にするための、カプセルおよびラムアセンブリの3つの異なる構成を概略的に示す。
【
図5a-5b】
図5aおよび
図5bは、固体用量送達のために構成された本発明によるカプセル装置の第2の実施形態の断面正面図を各々概略的に示し、装置は、それぞれ、発射前構成および発射構成を想定する。
【
図6a-6b】
図6aおよび
図6bは、固体用量送達のために構成された本発明によるカプセル装置の第3の実施形態の断面正面図を各々概略的に示し、装置は、それぞれ、発射前構成および発射構成を想定する。
【0048】
図において、同様の構造物は、主として同様の参照番号によって特定される。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下で「上」および「下」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」などの用語、または同様の相対表現が使用されるとき、これらは、添付の図に言及するだけであり、必ずしも実際の使用状況ではない。示された図は、概略表現であり、そのため、異なる構造の構成、およびそれらの相対寸法は、例示的な目的のみを果たすことが意図される。部材または要素という用語が所与の構成要素に対して使用されるとき、これは一般的に、説明される実施形態においてこの構成要素が単一の構成要素であることを示すが、代替的に、説明される構成要素のうちの2つ以上が単一の構成要素として、例えば、単一の射出成形部品として製造される可能性があるように、同一の部材または要素がいくつかの下位構成要素を備えてもよい。「アセンブリ」および「サブアセンブリ」という用語は、説明された構成要素が所与の組み立て手順の間に単一の、または機能アセンブリまたはサブアセンブリを提供するために組み立てられる必要があることを暗示しておらず、機能的により密接に関連するものとして共にグループ化される構成要素を説明するために使用されるに過ぎない。
【0050】
図1aおよび
図1bを参照すると、本発明の態様による薬物送達装置の第1の実施形態が説明され、実施形態は、固形用量カプセル装置からの固形用量の展開のための所望の発射原理を有するカプセル装置100を提供するように設計される。開示された発射原理は例示に過ぎず、本発明に従い、他の発射原理を代替的な実施形態で使用し得ることに留意されたい。開示される実施形態は、カプセル装置100であって、患者によって摂取されて、カプセル装置が、胃内腔に入り、その後、胃壁に対して配向し、最終的に胃壁の組織内の標的位置における挿入のための固形用量ペイロードを展開することを可能にするために好適な、カプセル装置100に関する。カプセル装置100について、胃壁に対してカプセルを配向するための一般原理は、WO2018/213600(A1)に開示されている原理のいずれかを利用してもよい。
【0051】
摂取可能な自己復元カプセル装置100は、ある平均密度を有する第1の部分100Aと、第1の部分100Aの平均密度とは異なる平均密度を有する第2の部分100Bと、を備える。カプセル装置100は、物品を摂取する被験体ユーザの内部放出のために薬剤を担持するためのペイロード部分130を収容する。示される実施形態では、展開前のカプセル装置の平均密度は、消化液の密度よりも大きく、カプセル装置が胃内腔の底部まで沈むことを可能にする。自己復元物品の外形は、ゴンボック形状、すなわち、形状の単一の安定した配向以外の任意の配向で表面上に配置されたとき、形状がその単一の安定した配向に再配向する傾向がある、ゴンボックタイプの形状である。
【0052】
示されるカプセル装置は、上部(近位)カプセル部品110を含み、これは、下部(遠位)カプセル部品120に嵌合して取り付く。上部カプセル部品110および下部カプセル部品120は、装置のカプセルを共に形成する。カプセルは、ペイロード部分130を収容する内部中空と、ペイロード部分130を保持して前方に駆動するラム150と、薬物送達のためにペイロードと共にラムを前方に発射および駆動するように構成されたアクチュエータを含む発射および推進機構と、を画定する。ペイロード部分130は、発射軸に沿って配向され、発射軸に沿った移動のために構成される。示される実施形態では、上部カプセル部品110および下部カプセル部品120は、発射軸の周囲に対称である回転対称部品を形成する。図面では、装置は、発射軸が垂直に向き、ペイロード部分130が下部カプセル部品120の中央に配置された出口孔124に向かって垂直に下向きに向いた状態で配向され、出口孔は、ペイロード部分130が、出口孔を通って輸送され、カプセル装置100の外側に移動されることを可能にする。下部部品120は、出口孔124を取り囲む、実質的に平坦な下部外面として形成される、組織係合表面123を含む。
【0053】
図1aおよび
図1bに示される実施形態のカプセル部品に好適な材料について、上部部品は、ポリカプロラクトン(PCL)などの低密度材料から好適に作製され得るが、一方、下部部品120は、316Lステンレス鋼などの高密度材料から好適に作製され得る。
【0054】
示される実施形態では、カプセル装置100全体の密度分布に起因して、および装置の外部形状に起因して、カプセル装置100は、発射軸が表面(例えば、重力に実質的に直交する表面、消化管の壁などの組織の表面)に対して実質的に垂直な状態で、それ自体を配向する傾向がある。したがって、カプセル装置は、組織係合表面123が垂直に下向きに面するように、重力の方向に対して配向する傾向がある。
【0055】
上部カプセル部分110の内部は、上部カプセル部品110の上部部品から、下部カプセル部品120に形成された内側底面によって画定されるラム停止表面128、すなわち、近位に面する停止表面に向かって、発射軸と同心状に延在するスリーブ状ラムガイド構造115を含む。さらに、示される実施形態では、第2のスリーブ状構造114は、発射軸と同心状に延在し、ラムガイド構造115内で上部カプセル部品110から半径方向に延在し、発射軸に沿って下向きに延在する。第2のスリーブ状構造114は、カプセル内に配置された引っ張られた駆動ばね140から放出する駆動力に対抗して、ラム150を保持するための保持構造としての役割を果たし、すなわち、駆動ばねは、ラムを第1の位置から第2の位置に前進させるためのアクチュエータとしての役割を果たす。示される実施形態では、保持構造は、保持構造の下端に配置された半径方向内向きに突出する保持部分113を有する。示される実施形態では、保持部分113は、2つの対向する半径方向内向きに突出する弧状突起として提供される。
【0056】
図1aおよび
図1bに示される第1の実施形態では、ペイロード部分130は、治療ペイロードを含む調製物から完全にまたは部分的に形成される固体送達部材を画定する。示される実施形態では、固体送達部材は、内腔壁の組織を貫通するように形状決めされた薄い円筒形ロッドとして形成され、円筒形ロッドは、組織貫通端および組織貫通端の反対側の後端を有する。ロッドの組織貫通端は、内腔壁の組織内への容易な挿入を促進するために向けられるが、示される実施形態では、後端は、90度の切断によって切断された切頭円筒を画定する。カプセル装置100による送達に好適な薬物の非限定的な例は、インスリンなどの乾燥圧縮APIである。
【0057】
ラム150は、上部保持部品151と、ペイロード部分130の後端を定位置に保持するために構成された下部接合部品155と、を備える。示される実施形態では、接合部品は、ペイロード部分130が孔内に堅固に取り付けられるように、ペイロード部分130の後端部を受容する下向き開口孔を含む。下部接合部品155は、ラムガイド構造115の直径よりもわずかに小さい直径を有する環状外側フランジをさらに画定する。示される実施形態では、ラム150は、
図1aに示す発射前構成から
図1bに示される発射構成まで、ラムガイド構造115によって軸方向移動のためにガイドされている間、移動可能である。
【0058】
上述の駆動ばね140に関して、カプセル装置100では、螺旋圧縮ばねが、発射軸と同軸に配置される。駆動ばね140の近位端は、上部カプセル部品110のばね座に対して着座し、すなわち、ラムガイド構造115と保持構造との間に半径方向に位置する。駆動ばね140の遠位端は、ラム150の下部接合部品155によって画定されたフランジの近位表面によって形成されたばね座に対して着座する。カプセル装置100の組み立ての一部として、駆動ばね140は、2つのばね座の間で駆動ばね140を軸方向に圧縮することによって付勢される。したがって、ラムは、最初、10~30N程度などの、駆動ばねからの荷重下にある。駆動力を生成するために圧縮ばねを使用する代替例として、ねじりばね、板ばね、定力ばね、または類似のものなどの、カプセル装置100を付勢するために、他のばね構成が使用されてもよい。さらなる代替例では、ガスばねまたはガス発生器が使用されてもよい。
【0059】
ラム150の上部保持部品151は、ラムの上部端から出口開口部124に向かって遠位方向に延在する、2つの偏向可能なアーム152の形態で提供される偏向可能なラッチを含み、各アームは、半径方向内向き方向に弾性的に偏向可能である。各偏向可能なアーム152の端は、弾性アームから半径方向外向きに突出する閉塞部分153を含む。
図1aに示される発射前構成では、閉塞部分153の各々の遠位表面は、保持部分113の対応する1つの近位表面に係合する。閉塞部分153は、最初、保持部分113の近位に位置するため、ラム150は、偏向可能なアーム152が半径方向内向き方向に十分に偏向されない限り、保持部分113を通過して遠位に移動することができない。
【0060】
発射前構成では、溶解可能なペレット160が、2つの偏向可能なアーム152の間に配置され、それにより、ペレット160の半径方向に対向する表面が、2つの偏向可能なアーム152の半径方向内向きに面する支持表面に係合する。示される実施形態では、ペレット160は、上部カプセル部品110内の区画内に配置され、上部カプセル部品110内の近位に配置された上部開口部は、カプセル装置が流体中に浸漬されたときに、溶解可能なペレットへの流体曝露を促進する。
図1aに示される発射前構成では、溶解可能なペレット160が非圧縮状態をとるため、ペレットは、2つの偏向可能なアームが内向きに曲がることを防止する。しかしながら、患者の胃の中に存在する胃液などの流体に曝露すると、溶解可能なペレットは、溶解し始める。ペレット160は、事前定義された起動時間の後、ペレットがある程度溶解されて、2つの偏向可能なアーム152が、内向きに十分に偏向されることを可能にして、ラム150の閉塞部分153が保持部分113を遠位に通過して移動することを可能にするように、徐々に溶解されるように設計される。この条件、すなわち、発射構成では、ラム150は、駆動ばね140の荷重で発射されて、ラム150を出口孔124に向かって遠位に付勢する。ラム150は、ペイロード先端がカプセルから最初に突出して、残りのペイロード部分130を徐々に押し出すことを伴って、ペイロード部分130を遠位に駆動する。ペイロード部分130の前方移動は、ラム150が下部カプセル部品120の底部から出るときに停止される。この条件が
図1bに図示される。
【0061】
示される実施形態では、保持部分113と閉塞部分153との間の接合部は、溶解可能なペレットが溶解されたときに、偏向可能なアームが内向きに摺動するように、およそ30°だけ勾配を有している。角度は、ペレット上の剪断力を決定し、その程度に対して、偏向可能なアームは、荷重力に供されたときに、内向きに摺動する傾向がある。発射されたときのラムの加速長と関連すると、最適な角度は、0°であるが、そのような構成を起動するためにはるかに高いばね力を必要とする。勾配を有する部分について、他の実施形態では、30°以外の角度が使用されてもよい。
【0062】
図1bは、示される実施形態では、ラム150およびペイロード部分130が、発射軸に対して多少傾いた配向に入り得ることを明らかにする。この効果は、ラムがその最終目的地、すなわち、ストローク位置の終わりに到達すると、ラム150を傾ける傾動機構によって得られる。しかしながら、
図1bに概略的に示される条件は、開口内に発射されるカプセル装置について、または流体内に発射されるペイロード部分を伴う、単なる代表的なものであるため、多少仮説的である。
【0063】
意図される使用の状況では、ペイロード部分130は、内腔壁の組織内に挿入され、概して発射軸に沿った方向にアンカー固定されることになる。しかしながら、駆動ストロークの終了時に、およびラム150の傾動作用に起因して、ペイロード130とラム150との間の接続を破壊するか、または別様に解放する傾向がある屈曲トルクが、ペイロード部分130上に適用される。この効果は、ペイロード部分130がラム150から強制的に分離されることを可能にして、ペイロード部分130が組織内に適切に滞留した後に組織から引き出されることを防止するように導入される。
【0064】
この時点で、カプセル装置100は、意図される用量を送達しており、組織壁の内側に安着する堆積したペイロード部分130に対して放出することになる。その後、カプセル装置の残りの部品は、ユーザの消化器系を通って移動し、処分されることになる。
【0065】
ペイロード130が、ラム150に、したがって、カプセル装置100の残りの部品にも依然として固定的に接続されている場合、標的場所に対するカプセル装置の移動によってペイロード部分が組織から後退される可能性が高くなる。
【0066】
示される実施形態では、最終目的地到達時のラム150の傾動運動は、ラム150の接合部品155の遠位に面する表面上に偏心して配置された突起158を形成することによって得られる。下部カプセル部品120内に形成された内側底面によって画定された近位に面するラム停止表面128は、平坦であり、発射軸に直交して配向されるため、傾動効果は、ラム150がラム停止表面128と交わるときに得られる。以下でさらに考察されるように、傾動効果は、様々な代替的な幾何学的設計によって得られ得る。また、
図5aおよび5bに関連して示されるように、例えば、誘導構造115とラム150との間のカプセル部品とラムとの間のガイドシステムは、代替的に形成されて、同様の傾斜効果を得てもよい。
【0067】
上で考察された溶解可能な部材、すなわち、溶解可能な発射部材を形成する溶解可能なペレット160について、異なる形態および組成物が使用されてもよい。非限定的な例としては、射出成形イソモルトペレット、圧縮造粒イソマルトペレット、クエン酸/NaHCO3の顆粒組成物から作製された圧縮ペレット、またはイソマルト/クエン酸/NaHCO3の顆粒組成物から作製された圧縮ペレットが挙げられる。溶解可能ペレットの非限定的な例示的なサイズは、製造時に
を測定するペレットである。
【0068】
ラム150の示される例では、上部保持部品151は、チャンバとして形成され、溶解可能なペレット160が、締まり嵌めを有するチャンバ内で受容される。示される実施形態では、カプセル装置100の中央上部部品は、カプセル内に胃液を導入するための単一の開口部を含む。他の実施形態では、カプセルは、カプセルの周囲に分布する複数の開口部などの、流体入口開口部の他の設計を含み得る。いくつかの設計では、ペイロード部分130は、溶解可能なペレットのチャンバから流体的に封止されたチャンバ内に収容される。また、出口孔124は、カプセル装置100の発射前に、水分がペイロード部分チャンバに入ることを防止するシールを含み得る。
【0069】
ここで、
図2を参照すると、ラムおよびペイロード部分に対する3つの代替的な好適な設計が概略的に図示されており、各設計は、ラム150とペイロード部分130との間の所望の取り付けを得て、ラム150からのペイロード部分130の所望の制御された取り外しを可能にする。
【0070】
設計番号Iは、ラム150の下部接合部品155から延在する中央ピン156.Iを有するラム150を含む。ペイロード部分130は、中央ピン156.Iを受容するために構成された中央開口部と対応して形成される。
【0071】
設計番号IIは、ラム150の下部接合部品155から延在する中央円錐形突起156.IIを有するラム150を含む。ペイロード部分130は、円錐形突起156.IIと嵌合し、それを受容するために構成された中央円錐形陥凹と対応して形成される。
【0072】
設計番号IIIは、ラム150の下部接合部品155の遠位に面する表面に中央円錐形陥凹156.IIIを有するラム150を含む。ペイロード部分130は、円錐形突起156.IIIと嵌合し、それを受容するために構成された中央円錐形突起と対応して形成される。
【0073】
上記のペイロード部分130とラム150との間の接合部の4つの異なる変形例は、単に例示的であり、他の構成が代わりに使用されてもよい。ペイロード部分とラムとの間の取り外し可能な取り付けは、摩擦嵌めまたは圧入を使用することによって得られ得る。あるいは、スクロースなどの接着剤が、接合部で使用されてもよい。さらに代替的に、取り付けは、最初にペイロード部分を湿潤させ、ラムとペイロード部分との間の固有スティクションを利用することによって得られ得る。使用の状況では、ラムがその最終目的地に到達すると、ペイロード部分とラムとの間の接合部で取り外しが生じ得る。他の実施形態では、所望の取り外しは、ペイロード部分の大部分を、ラムに依然として接着または固定されている残りのペイロード部分から取り外すことによって得られ得る。いくつかの実施形態では、ペイロード部分は、分離点を決定する脆弱点を含む。またさらなる実施形態では、以下でさらに考察されるように、ラムおよびペイロード部分は、APIを含有する組成物で全て作製された一体構成要素として形成され得、カプセル装置から押し出される意図されたペイロード部分は、ラム部分から分離される。
【0074】
図3は、さらなる例示的なカプセル装置で使用される、偏向可能なラッチおよび保持構成の1つまたは2つの対のための4つの追加設計を概略的に示す。容易に明らかであろうように、偏向可能なラッチ要素の数、偏向可能なラッチ要素の場所および配向、溶解可能な発射部材の数および構成、ならびにラムの設計は、より優れた作用モードを有する発射機構を依然として得ながら、本発明の態様と一致して変更され得る。簡略化のために、ラム150の上部保持部品151のみが示されている。同様に、カプセル部品の保持構造のみが示されている。
【0075】
図3では、設計番号Iの2つの偏向可能なアーム152上の閉塞要素と協働するために上向きに延在する保持構造113を有する保持部分が示される。この設計では、
図1aに示されるような全体構造を有するラムおよび溶解可能な発射部材160が使用され得る。
【0076】
設計番号IIはまた、ラムの大部分が懸架されている、上向きに延在する保持構造113を含む。この実施形態では、ラムは、偏向可能なアーム152の近位端上に閉塞要素を有する近位に延在する快いアームを含み、アームの近位端は、中央に位置する溶解可能な発射部材160が十分に溶解されたときに半径方向内向きに曲がるように設計される。
【0077】
設計番号IIIを図示する図は、関連する構成を示すが、ラムは、単一の偏向可能なアームのみを含む。この設計では、偏向可能ではない構造が、単一の偏向可能なアームから離れて面する側部上の溶解可能な発射部材160の側部上に配置される。偏向可能ではない構造は、その一方側上で溶解可能な発射部材160を連続的に支持するが、一方、対向する側部は、単一の屈曲可能なラッチアームが半径方向内向きに移動し、保持部分113を通過する余地を作る。
【0078】
最後に、設計番号IVは、偏向可能なラッチおよび保持部分が交換された場所を有する例を概略的に示す。この設計では、ラムは、作動機構の発射中にいかなる屈曲も呈さないように設計されている保持部分153’を有する上部保持部分151’を含む。代わりに、保持構造(上部カプセル部品または下部カプセル部品のいずれかと関連付けられた)は、遠位の延在する偏向可能なラッチアーム112’の形態の2つの偏向可能なラッチを含み、各々が、その最遠位端に閉塞部分153’を有する。各偏向可能なアーム112’は、それぞれの溶解可能な発射部材160’に係合するように構成されている。したがって、それぞれの溶解可能な発射部材160’は、共通のリング状部材として提供され得るか、または発射軸の周囲にリング構成に配置された複数の別個の部材として提供され得る。上述のように、いくつかの実施形態では、ペイロードは、カプセル装置の残りの部分から部分的または完全に接続解除されるように、それ自体によってラムとして作用し得る。そのようなAPIベースのラムは、作動機構の発射中にいかなる屈曲も呈さないように設計されている保持部分を含み得、保持部分は、カプセルのハウジング、例えば、上部または下部カプセル部品と関連付けられた、協働する偏向可能なラッチを通過することを可能にする。
【0079】
図4は、上記のように、ラム150の傾動効果を得るための3つの設計を概略的に示す。設計番号Iでは、偏心して配設された突起158は、ラム150の接合部品155の遠位に面する表面、すなわち、ラム停止表面128に面する表面上に形成される。設計番号IIでは、ラム停止表面128上に偏心して配設された突起129は、ラム150の接合部品155の下面に向かって近位方向に突出するように位置する。設計IIIとして示される変形例では、ラム停止表面128は、段付き表面129’として形成され、すなわち、ラム停止表面128に到達すると、ラム150の傾動移動を誘発する、2つ以上のレベルを含む。
図4に概略的に示されるもの以外の最終目的地に到達した際にラムを傾動させる他のやり方が、他の手段によって実施され得ることに留意されたい。
【0080】
図5aおよび
図5bを参照すると、本発明による薬物送達装置の第2の実施形態が概略的に示されており、第2の実施形態は、
図1aおよび
図1bおよび
図4に関連して記載される傾斜機構の代替を提供する傾斜機構を備えたカプセル装置200を提供する。
【0081】
自己復元能力および発射原理に関して、第2の実施形態のカプセル装置200は、概して第1の実施形態100の全体的な設計に対応するが、ラムが第1の位置から第2の位置に移動する方法は異なる。示される第2の実施形態では、ラム150は、
図5aに示す発射前構成から
図5bに示される発射構成まで、トラックおよびトラックフォロアのシステムによって移動のためにガイドされている間、移動可能である。図面では、主に発射原理に関連する詳細が簡略化のために省略されている。
【0082】
上部カプセル部分110の内部は、この場合もやはり、上部カプセル部分110の上部部分から、下部カプセル部品120に向かって、発射軸と同心状に延在するスリーブ状ラムガイド構造115を含む。さらに、第2の実施形態では、第2のスリーブ状構造114は、発射軸と同心状に延在し、ラムガイド構造115内で上部カプセル部品110から半径方向に延在し、発射軸に沿って下向きに延在する。第2のスリーブ状構造は、この場合もやはり、カプセル内に配置された引っ張られた駆動ばね140から放出する駆動力に対抗して、ラム150を保持するための保持構造としての役割を果たし、すなわち、駆動ばねは、ラムを第1の位置から第2の位置に前進させるためのアクチュエータとしての役割を果たす。さらに、この実施形態では、第2のスリーブ形状構造114は、第1の位置から第2の位置へのその移動中にラムを誘導するための追加のガイドとしての役割を果たす。第1の対の対向する誘導トラック115.1は、ラム誘導構造115内に形成されており、第2の対の対向誘導トラック114.1は、第2のスリーブ形状構造114内に形成されている。対向する第1および第2の誘導トラックの各対は、発射軸と平行に延在する比較的長い軸方向に延在するセグメントを含み、発射軸に対して傾斜する比較的短い傾斜したセグメントを含む。
【0083】
ラム150は、この場合もやはり、上部保持部品151と、ペイロード部分130の後端を定位置に保持するために構成された下部接合部品155と、を備える。下部接合部品155は、ラムガイド構造115の直径よりもわずかに小さい直径を有する環状外側フランジを画定する。示される実施形態では、前述の誘導トラックおよび協働トラックフォロアは、
図5aに示される発射前構成から
図5bに示される発射構成に移動するときに、ラム150の移動を画定する。
【0084】
第2の実施形態のカプセル装置200では、下部接合部品155のフランジは、2つの対向するトラックフォロアを有し、各トラックフォロアは、対向する誘導トラック115.1の第1の対のそれぞれの1つによって誘導されるように配設されるガイドピン155.1として提供される。さらに、ラムの上部保持部分151は、2つの対向トラックフォロアを有し、各トラックフォロアは、対向ガイドトラック114.1の第2の対のそれぞれの1つによって誘導されるように配設されるガイドピン151.1として提供されている。
【0085】
カプセル装置が初期の発射前構成にあるとき(
図5aを参照のこと)、ガイドピン155.1は、ガイドトラック115.1の軸セグメントに位置し、一方でガイドピン151.1は、ガイドトラック114.1の軸セグメントに位置する。カプセル装置200の発射時に、摂取後、ラム150は、ラムが経験するように設計されているストローク全体の実質的な部分のために、発射軸に沿って軸方向に移動する。移動のこの部分の間、ラム150は、ペイロード先端がカプセルから最初に突出して、残りのペイロード部分130を徐々に押し出すことを伴って、ペイロード部分130を遠位に駆動する。
【0086】
ラムがストローク位置の終わりに到達する直前に、すなわち、ラムが
図5bに示す位置をとる直前に、ガイドピン155.1および151.1は、ガイドトラック115.1および114.1の傾斜セグメントに到達する。誘導トラックの傾斜方向のために、ラムの下部接合部分155は、第1の方向(
図5bの右)に横方向に移動し、一方で、ラムの上部保持部分151は、第1の方向に対向する第2の方向(
図5bの左)に横方向に移動する。これは、ラムが示されるストローク位置の終わりに到達する直前に、ラムの傾斜運動を誘発する。
【0087】
以前に指摘されたものと同様に、
図5bに概略的に示されている条件は、開口内に発射されるカプセル装置について、または流体内に発射されるペイロード部分を伴う、単なる代表的なものであるため、多少仮説的である。意図される使用の状況では、ペイロード部分130は、内腔壁の組織内に挿入され、概して発射軸に沿った方向にアンカー固定されることになる。しかしながら、駆動ストロークの終了時に、およびラム150の傾動作用に起因して、ペイロード130とラム150との間の接続を破壊するか、または別様に解放する傾向がある屈曲トルクが、ペイロード部分130上に適用される。この効果は、ペイロード部分130がラム150から強制的に分離されることを可能にして、ペイロード部分130が組織内に適切に滞留した後に組織から引き出されることを防止するように導入される。他の実施形態では、本発明の態様によれば、ラムの所望の傾斜運動を提供するために、異なるトラックおよびトラックフォロア構成を想定することができる。
【0088】
本発明によるカプセル装置300の第3の実施形態を示す、さらなる代替的な傾斜機構が
図6aおよび6bに概略的に示されている。この実施形態では、傾斜機構は、カプセルとラムとの間に取り付けられ、ペイロード部分の組織内への展開のためにラムが移動することを可能にするのに十分な長さを有するワイヤまたはストリング159によって提供されるが、ストローク位置の所望の端でラムの一部分を停止して、ストローク位置の終わりの直前にラムの傾斜運動を誘導する。ストリング159の第1の端部は、ラム150の下部接合部分155のフランジ上の第1のアンカー点150.1に偏心して固定される。ストリング159の第2の端部は、上部カプセル部分110に配置された第2のアンカー点110.1に固定される。
【0089】
図6aに示すように、カプセル装置300が発射前構成をとるとき、ストリング159は、上部カプセル部分110内の、第1のアンカーポイント150.1と第2のアンカーポイント110.1との間に緩く配設される。カプセル装置300の発射時に、摂取後に、ラム150は、ラムが経験するように設計されているストローク全体の実質的な部分について、発射軸に沿って軸方向に移動される。移動のこの部分の間、ラム150は、ペイロード先端がカプセルから最初に突出して、残りのペイロード部分130を組織に徐々に押し出すことを伴って、ペイロード部分130を遠位に駆動する。
【0090】
ラムがストローク位置の終わりに到達する直前に、すなわち、ラムが
図6bに示す位置をとる直前に、ストリング159は、アンカー点150.1と110.1との間に延伸され、それによって、アンカー点150.1が位置するラムの側面を停止する。アンカー点150.1と直径の方向に反対に位置するラムの側面は、下部接合部分155のフランジがラム停止表面128に対して外れるまで、わずかに遠位に移動するため、駆動ばね140によってさらに押し付けられる。これは、ラム150が示されるストローク位置の終わりに到達する直前に、ラム150の傾斜移動を誘導する。したがって、駆動ストロークの終了時に、およびラム150の傾動作用に起因して、ペイロード130とラム150との間の接続を破壊するか、または別様に解放することを引き起こす屈曲トルクが、ペイロード部分130上に適用される。
【0091】
例示的な実施形態の上記説明は、主に胃における送達のための摂取可能なカプセルに関するものであるが、本展開原理は、概して、カプセル装置が送達部材の展開のために本体内腔内に位置する、内腔挿入のためのカプセル装置に有用性を見出す。カプセル装置の非限定的な例としては、小腸の内腔または大腸の内腔などの腸内腔の組織壁への送達による薬物の腸内送達のためのカプセル装置を含み得る。薬物送達は、針などの送達部材を使用して、またはマイクロニードルを介して実施されてもよく、マイクロニードルは、組織壁に挿入され、例えば、マイクロニードルアレイは、ラムに対して取り外されている。
【0092】
例示的実施形態の上記の説明では、異なる構成要素について説明された機能を提供する異なる構造および手段を、本発明の概念が当業者にとって明らかである程度まで、説明してきた。異なる構成要素に対する詳細な構築および仕様は、本明細書に記載されるラインに沿って当業者によって実施される通常の設計手順の対象とみなされる。