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特許7539426ヒト混合細胞集団スフェロイドの高スループット光学アッセイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ヒト混合細胞集団スフェロイドの高スループット光学アッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/483 20060101AFI20240816BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240816BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G01N33/483 C
G01N21/64 F
G01N21/03 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022019584
(22)【出願日】2022-02-10
(62)【分割の表示】P 2020501302の分割
【原出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2022065065
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】62/532,667
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520195970
【氏名又は名称】アクソシム, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】カシアーノ カロメウ
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/141528(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/115489(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0115275(US,A1)
【文献】STEPHANIE M. RAVENSCROFT ET AL,Cardiac Non-myocyte Cells Show Enhanced Pharmacological Function Suggestive of Contractile Maturity,TOXICOLOGICAL SCIENCES,2016年04月28日,Vol.152,No.1,Page.99-112,http://dx.doi.org/10.1093/toxsci/kfw069
【文献】TERRASSO ANA PAULA ET AL,Novel scalable 3D cell based model for in vitro neurotoxicity testing: Combining human differentiate,JOURNAL OF BIOTECHNOLOGY,2015年01月05日,Vol.205,Page.82-92,http://dx.doi.org/10.1016/j.jbiotec.2014.12.011
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 1/00- 1/44
G01N 21/64
G01N 21/03
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スフェロイドに対する1又は複数の化合物の効果を検出する光学的方法であって、以下:
均一な直径のヒト細胞の1又は複数のスフェロイドと、1又は複数の試験化合物とを接触させる工程であって、ここで前記1又は複数のスフェロイドはマルチウェルプレートのウェル内にある、工程;及び
前記1又は複数のスフェロイドの自発カルシウム振動の量又は変化を前記ウェル内で光学的に検出する工程あって、ここで前記1又は複数のスフェロイドの自発カルシウム振動の量又は変化がカルシウムを検出する蛍光分子を使用して検出される、工程
を含み、
ここで前記細胞が少なくともニューロン(neurons)を含み、
各ウェルが1つのスフェロイドを有し、
ここで蛍光の量又は変化が、スフェロイド及び蛍光分子を含むが試験化合物を含まないウェル内の蛍光と比較される、方法。
【請求項2】
前記1又は複数の化合物が、前記ウェル内の前記1又は複数のスフェロイドに添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
時的な蛍光の量又は変化が、1又は複数のウェルで検出される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記蛍光の量又は変化が、蛍光のピークの量、1又は複数のピークの振幅、1又は複数のピークの間のピーク間隔、1又は複数のピークの幅、あるいはそれらの任意の組み合わせを検出することである、請求項3に記載の方法
【請求項5】
記1又は複数のスフェロイドが、ニューロン(neurons)及びアストロサイトを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1又は複数のスフェロイドが、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、肺、内皮又は上皮細胞を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1又は複数のスフェロイドが、癌細胞又は不死化細胞を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1又は複数のスフェロイドが、ミクログリア細胞又はオリゴデンドロサイトを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記1又は複数のスフェロイドが、周皮細胞及び内皮細胞を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記1又は複数のスフェロイドが、内皮細胞、ミクログリア細胞、ニューロン(neurons)、オリゴデンドロサイト細胞、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞が、前駆細胞を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記前駆細胞が、ニューロン(neurons)、アストロサイト、心臓細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、肺細胞、内皮細胞、又は上皮細胞の前駆細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1又は複数のスフェロイドが、約500~約600ミクロンの直径を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1又は複数のスフェロイドが、約450~約500ミクロンの直径を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記1又は複数のスフェロイドが、前記1又は複数の試験化合物と接触する前に少なくとも4~6週間培養される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記蛍光分子が、カルシウム3、カルシウム4、カルシウム5、カルシウム6、Fluo3、又はFluo4を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ウェルを、細胞膜非透過性クエンチャーと接触させることをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2017年7月14日に出願された米国出願第62/532,667号の出願日の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
創薬のペースの加速が、生きたヒト細胞を使用した機能的なin vitroアッセイの必要性の増加を引き起こしている。しかしながら、ハイスループットシステム用にこれらのアッセイを自動化することは困難であることが判明している。ハイスループット設定で使用される最も一般的な生物学的アッセイは、ある種の蛍光測定に依存していることに留意されたい。
【0003】
FLIPRとしても知られる、蛍光イメージングプレートリーダーは、光学、自動ピペッティング、及び温度制御のユニークな組み合わせである。FLIPRは、接着細胞及び非接着細胞を使用するハイスループットスクリーニングアッセイを実行するように設計されており、細胞内カルシウムレベルや膜電位の変化を測定するなど、動的な細胞ベースのアッセイに最適である。
【0004】
FLIPRは、強力なアルゴンレーザー、CCD(電荷結合素子)イメージングカメラ、光学検出方式(optical detection scheme)、及びプログラム可能な96ウェルピペッターを統合して、マイクロプレートの96ウェルすべてを同時に蛍光分析する。システムは、1秒間隔で96個すべてのウェルを刺激して読み取ることにより、リアルタイムの動態データを生成する。通常、アルゴンレーザーは適切な蛍光色素を励起する。結果として放射される光は、統合された検出器として機能する冷却されたCCDカメラによって検出され、露光の期間にわたって信号を蓄積する。FLIPRの光学方式により感度がさらに増強され、それがCCDカメラの視野の深度を、各ウェルの底部で、又は本質的に細胞単層のレベルで数百ミクロンに制限する。この手法により、細胞外色素からのバックグラウンド蛍光が約1桁減少する。総合すると、これらのシステムは非常に高感度な蛍光検出器に統合される。
【0005】
FLIPR機器はリアルタイムの動態データをキャプチャし、アッセイへの追加から数秒以内に潜在的な薬物ヒットの識別を可能にする。実際、FLIPRテクノロジーの特徴の1つはデータの忠実性であり、研究者は単一ウェルの測定を監視できる。ソフトウェアは、データの分析と削減も実行し、スプレッドシートプログラムにデータをエクスポートできる。
【0006】
目的の細胞がマイクロプレートウェルに追加され、ウェル底全体に単層を形成する2次元細胞形式を用いたFLIPRの使用は、細胞がウェルを常に均一に満たしていなかったり、高忠実度で付着したりするわけではないため、問題があることが判明している。これは、プレート内及びプレート間でFLIPRによって測定される一貫性のないデータ生成につながる。96、384又は1536ウェルプレートでハイスルーアウトスクリーンを実施する場合、薬物相互作用又は薬物動態データに関する意味のある情報を生成するには、データの一貫性が必要である。
【発明の概要】
【0007】
概要
驚くべきことに、3Dスフェロイド上の薬物分子によるカルシウム振動の変調を監視することができ、結果のデータは非常に一貫性がある。たとえば、スフェロイド神経細胞シナプスは長期間にわたって予測可能かつ一貫して興奮する。一実施形態では、本開示は、3Dヒト細胞スフェロイド、例えば混合集団ヒト細胞ニューロンスフェロイドの光学アッセイ、例えば機能的FLIPRアッセイ又は高含有量高倍率光学顕微鏡法を提供する。一実施形態では、試験前に、スフェロイドを4~16週間培養して、成熟したヒト様脳機能を模倣するために、堅牢な同期シナプスネットワークを誘導する。これらの混合集団のスフェロイドは、長期間にわたって予測可能かつ一貫して興奮する。一実施形態では、本開示は、FLIPR及びカルシウム取り込み蛍光振動(calcium uptake fluorescence oscillations)を利用する、ヒト細胞3Dスフェロイドの混合集団のハイスループット光学アッセイを提供する。振動は化学化合物で調整でき、振動性の興奮はアゴニスト又はアンタゴニストで変更可能である。
【0008】
一実施形態では、本開示は、スフェロイドに対する1又は複数の化合物の効果を検出する光学的方法を提供する。当該方法は、均一な直径のものなどのヒト細胞の1又は複数のスフェロイドを含む組織培養プレート、例えば、ウェルを有するプレートを、1又は複数の試験化合物と接触させること;及び、スフェロイドにおける振動の量又は変化を光学的に検出すること、を含む。一実施形態では、プレートはマルチウェルプレートである。一実施形態では、スフェロイドは、カルシウムを検出するのに有用な蛍光分子とさらに接触され、経時的な蛍光の量又は変化が検出される。一実施形態では、蛍光の量又は変化は、蛍光のピークの量、1又は複数のピークの振幅、1又は複数のピーク間のピーク間隔、1又は複数のピークの幅、又は任意のそれらの組み合わせを介して検出される。一実施形態では、スフェロイドは神経細胞(neurons)を含む。一実施形態では、スフェロイドは神経細胞及びアストロサイトを含む。一実施形態では、スフェロイドは、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、肺、内皮又は上皮細胞を含む。一実施形態では、スフェロイドは、癌細胞又は不死化細胞を含む。一実施形態では、スフェロイドは、ミクログリア細胞又はオリゴデンドロサイトを含む。一実施形態では、スフェロイドは周皮細胞及び内皮細胞を含む。一実施形態では、スフェロイドは、内皮細胞、ミクログリア細胞、神経細胞、オリゴデンドロサイト、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一実施形態では、細胞は分化細胞である。一実施形態では、細胞は、ヒトiPSCなどの前駆細胞である。一実施形態では、前駆細胞は、神経細胞、アストロサイト、心臓細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、肺細胞、内皮細胞、又は上皮細胞の前駆細胞である。一実施形態では、1又は複数のスフェロイドは、約500~約600ミクロンの直径を有する。一実施形態において、1又は複数のスフェロイドは、約450~約500ミクロンの直径を有する。一実施形態では、1又は複数のスフェロイドは、1又は複数の試験化合物と接触させる前に少なくとも4~6週間培養される。一実施形態では、蛍光分子は、カルシウム3、カルシウム4、カルシウム5、カルシウム6、Fluo3、若しくはFluo4、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態において、1又は複数のスフェロイドは、細胞膜非透過性クエンチャーとさらに接触される。一実施形態において、蛍光の変化の量は、1又は複数のスフェロイド及び蛍光分子を含むが、試験化合物を含まない蛍光と比較される。一実施形態では、マルチウェルプレートでは、各ウェルは1つのスフェロイドを有する。
【0009】
ウェルごとに1又は複数の混合ヒト細胞スフェロイドを含むマルチウェルプレートも提供される。一実施形態では、スフェロイドは神経細胞及びアストロサイトを含む。一実施形態では、スフェロイドは、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、肺、内皮又は上皮細胞を含む。一実施形態では、スフェロイドは、ミクログリア細胞又はオリゴデンドロサイトを含む。一実施形態では、スフェロイドは、周皮細胞及び内皮細胞を含む。一実施形態では、スフェロイドは、内皮細胞、ミクログリア細胞、神経細胞、オリゴデンドロサイト、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一実施形態では、スフェロイドは、神経細胞、アストロサイト、心臓細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、肺細胞、内皮細胞、又は上皮細胞の前駆細胞を含む。
【0010】
本発明のこれら及び他の目的及び利点は、以下の詳細な説明を読み、理解することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本主題の一実施形態を示すために、各ウェルに1つの混合細胞スフェロイドが配置された例示的な384ウェルマイクロプレートの画像である。
図2図2は、本主題の適用の一例における、384ウェルマイクロプレートの多数のカラムにわたる平均の混合細胞スフェロイドサイズのプロットである。
図3図3は、混合集団神経細胞スフェロイドの画像である。
図4図4は、マイクロプレートウェルからのスフェロイドによって生成された蛍光のFLIPRコントロールプロットである。
図5図5は、スフェロイドコントロールウェル対薬物曝露ウェルのFLIPRデータプロットであり、本主題の1つの適用を実証するための、薬物曝露ウェル対コントロ-ルウェルの応答の変動を示している。
図6図6は、本主題の一適用例において、FLIPRにより測定された、スフェロイドに対する種々のグルタミン酸作動性及びGABA作動性アンタゴニスト及びアゴニスト効果の要約である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
以下の議論は、本発明の様々な実施形態に向けられている。これらの実施形態の1つ以上が好ましい場合があるが、本発明は開示された実施形態に限定されない。加えて、当業者は、以下の説明が広範な用途を有し、任意の実施形態の議論はその実施形態の例示に過ぎず、開示又は特許請求の範囲をその実施形態に限定することを意図しないことを理解するであろう。
【0013】
図1は、各ウェルに1つの混合細胞スフェロイドが配置された例示的な384ウェルマイクロプレートの画像であり、本主題の一実施形態を示す。この例では、マイクロプレートの16セルの24列が384ウェルを提供する。図1は、直径約500ミクロンの構造を形成するアストロサイトと神経細胞の混合集団を有するスフェロイド20が各ウェルに形成される384ウェルマイクロプレート10全体の実際の白黒画像を示す。マイクロプレートは、一実施形態では、96、384又は1536ウェルを有し得る。本主題の範囲から逸脱することなく、他の数のウェルが可能である。スフェロイド20は、個々の細胞を各ウェルに追加することにより形成され、その後、最初に追加される細胞の数に応じて、異なるサイズのスフェロイドに自然に形成される。各ウェルに挿入される細胞の数は、ウェルのサイズとアッセイに必要なスフェロイドの直径に応じて、数百~数十万の範囲であり得る。一実施形態では、約20,000個のヒトiPS細胞がウェルに添加され、直径約500ミクロンのスフェロイドを形成する。
【0014】
図1では、マイクロプレートを示すために、microBrain(商標)3Dプレートが使用されている。しかしながら、複数のウェルを作製するために、他のマイクロプレート及び構造が使用されてもよいことが理解される。
【0015】
図2は、スフェロイド20の直径(つまり、「幅」)対384ウェルマイクロウェルプレートの24列にわたる位置のプロットを示している。データからわかるように、直径の均一性とサイズは非常に一貫している。混合集団におけるアストロサイトと神経細胞の比率は、約5~約95パーセント、約10~約90パーセント、約20~約80パーセント、約40~約60パーセント、約60~約40パーセント、約80~約20パーセント、約90~約10パーセント、又は約95~約5パーセントの範囲であり得、例えば、50/50の比率は、人間の脳で見られるものを模倣しているかもしれない。スフェロイドを形成するために使用される細胞は、ヒト初代細胞株、ヒトiPScs又はヒト工学的に作製された不死化細胞株に由来し得る。また、スフェロイドは神経細胞のみに限定されず、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、肺、内皮及び上皮細胞、ならびに固形腫瘍細胞株でもあり得る。本主題の範囲から逸脱することなく、他の細胞が使用されてもよい。
【0016】
図3は、マイクロウェルプレート内の個々のウェルからの実際の混合集団神経細胞スフェロイド20の白黒画像を示している。神経細胞スフェロイドのユニークな点は、非常に均一な丸い形状に自己組織化されることである。スフェロイドの直径は、約100ミクロン~約10ミリメートル、例えば、直径約200~600ミクロン、例えば、直径約300~約500ミクロン、直径約400~約600ミクロン、又は約450~約650ミクロン、又は直径約475~約525、例えば、平均直径約500ミクロンの範囲であり得る。この特定の例では、アストロサイトと神経細胞の比率は約50/50である。
【0017】
図4を参照すると、このプロットは、時間の関数として、混合集団神経細胞スフェロイド20に対するFLIPRアッセイによって生成されたデータのタイプを示している。測定されるパラメーターは、ピークカウント1、ピーク振幅2、ピーク間隔3、及びピーク幅4である。FLIPRアッセイによって生成されたデータを解釈する場合、これらの変数はすべて使用されてもよい。それらは、細胞が定常状態(薬物曝露なし)でどのように振る舞うか、及び薬物がスフェロイド20の細胞とどのように相互作用するかの間接的な測定である。ピーク30は、培養液中のスフェロイドによって生成される自発蛍光カルシウム振動を表す。FLIPRを使用して、各セルのデータを取得及び保存できる。
【0018】
図5は、スフェロイド20対コントロールでの不規則(irregular)で迷走性(erratic)カルシウム摂取挙動の誘導に対する50マイクロモル濃度のGABA作動性アンタゴニストである薬物ビククリン(Bicuculline)の効果を示している。図の軸は「相対光単位」及び「時間(秒)」を示している。ビククリン薬物ピークとコントロールのピークの比較は、ピーク数、間隔、高さなどの測定パラメーターのほとんどすべてが変化していることを示している。同じタイプの応答がグルタミン酸作動性アンタゴニスト(Glutametergic antagonist)を使用しても同様に観察されたが、より高い用量濃度であった。スフェロイドの年齢が薬物相互作用に影響を与える可能性があることに注意する必要がある。一実施形態では、スフェロイドは、インビボモデルで見られる、より成熟した細胞をシミュレートするために、2~52週齢までの年齢の範囲であり得る。一実施形態では、5~10週齢のスフェロイド20が使用される。例えば、神経細胞で形成された高齢スフェロイド、例えば、約8週齢は、より多くのシナプス接続を可能にする。
【0019】
図6は、FLIPRアッセイとスフェロイドを使用して得られた結果の一部をまとめたものである。左側のグラフは、右側の表から使用されている、よく知られているグルタミン酸作動性(Glutametergic)及びGABA作動性(Gabaergic)アゴニスト及びアンタゴニスト小分子薬物化合物への暴露前(コントロール)及び暴露後に生成されたカルシウム振動ピークの数の変化を示している。右側のグラフからわかるように、記載されている薬物化合物への曝露により、スフェロイド20のカルシウム振動が有意かつ即時の変調されている。このタイプの化学的に誘発された反応は、ヒトで観察されるものを模倣するてんかん発作モデルの基礎となり得る。したがって、この3Dスフェロイドモデルは、例えば、発作やその他の病気の基礎となる不安定な神経細胞シナプスの興奮を救うことができる薬物の高スループットスクリーニングツールとして使用され得る。
【0020】
したがって、一実施形態において、本開示は、一実施形態では、蛍光イメージングプレートリーダーを使用して、三次元ヒト細胞スフェロイドの混合集団に対する機能アッセイを実施する方法を提供する。例えば、非常に均一で一貫した混合集団スフェロイド、例えばアストロサイト及び神経細胞スフェロイドは、分化した細胞、例えばヒトiPS細胞などから生成されてもよい。スフェロイドの直径は、一実施形態では、約500~約600ミクロンの範囲であってもよく、マルチウェルプレートのウェルに形成されてもよく、例えば384ウェルマイクロプレートに形成されてもよい。次いで、スフェロイドは、1又は複数の分子、例えば、GABA作動性及びグルタミン酸作動性調節小分子と接触される。スフェロイドのカルシウム振動蛍光強度の時間応答は、リアルタイムでキャプチャ及び定量化されてもよく、薬物曝露及び濃度勾配に対する細胞スフェロイド応答の尺度である。
【実施例
【0021】
現在の主題のいくつかの例
スフェロイド、例えば2つ以上の異なる細胞タイプから形成されたものは、任意に1又は複数の異なる成長因子を含む任意の適切な培地、及び任意の適切な条件を使用して調製され得る。例えば、神経細胞及びアストロサイトから形成されたスフェロイドは、一実施形態では、1又は複数の以下の培地及び/又は条件を使用して調製されてもよい:SM1 Neuronal Supplement(BrainPhys(商標) Neuronal Medium及びSM1 Kit(Cat.#05792; StemCell Technologies))、20ng/mL BDNF(cat.#78005; StemCell Technologies)、20ng/mL GDNF(cat.#78058; StemCell Technologies)及びペニシリン/ストレプトマイシン(cat.#SV30010; GE Healthcare Life Sciences)で1倍補足されたBrainPhys(商標)Neuronal Medium(StemCell Tech)。細胞は、5%CO及び高湿度のインキュベーター内で37℃に維持される。
【0022】
本主題は、スフェロイドに対する1又は複数の化合物の効果を分析するための複数のアプローチを可能するものであり、均一な直径のヒト細胞の1又は複数のスフェロイドを含むプレート(例えばウェルを有するマルチウェルプレート)を、カルシウムを検出するのに有用な蛍光分子、及び1又は複数の試験化合物に接触すること;及び任意に、経時的に、例えば各ウェルにおいて、蛍光の量又は変化を検出すること、を含む。様々な例において、この方法は、蛍光のピーク量、1又は複数のピークの振幅、1又は複数のピーク間のピーク間隔、1又は複数のピークの幅、又はそれらの任意の組み合わせを介して、蛍光の量又は変化を検出する。様々な例において、前述の方法は、スフェロイドが神経細胞を含むか、スフェロイドが神経細胞及びアストロサイトを含むか、スフェロイドが心臓、肝臓、腎臓、膵臓、肺、内皮又は上皮細胞を含むか、又はスフェロイドが癌細胞を含んでもよい。前述の様々な例では、スフェロイドは複数の異なる細胞タイプを含んでもよい。前述の例では、いくつかの例には、細胞がヒトiPSCに由来する場合を含んでいる。いくつかの例では、細胞は分化した細胞である。いくつかの例では、細胞は前駆細胞である。前駆細胞を使用するいくつかの例では、前駆細胞は、神経細胞、アストロサイト、心臓細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、肺細胞、内皮細胞、又は上皮細胞の前駆細胞である。前述の例のいくつかでは、細胞は不死化細胞である。
【0023】
前述の様々な方法において、スフェロイドは、約500~約600ミクロンの直径又は約450~約500ミクロンの直径を有してもよい。前述の様々な方法では、スフェロイドは少なくとも6週間培養されているものであってもよい。蛍光分子を含む、前述の様々な方法では、分子は、カルシウム3、カルシウム4、カルシウム5、カルシウム6、Fluo 3、又はFluo4を含む。
【0024】
一実施形態では、光学アッセイが提供され、例えば、3Dヒト細胞スフェロイド(例えば、神経細胞、オリゴデンドロサイト、ミクログリア細胞、内皮細胞、又は任意のそれらの組合せの混合集団から形成されるスフェロイド)の機能的FLIPRアッセイ又は高含量高倍率光学顕微鏡(high content high magnification optical microscopy)が提供される。
【0025】
一実施形態では、マルチウェルフォーマット、例えば96、384、又は1536マイクロプレートウェルの3D混合集団ヒト細胞スフェロイド、例えば丸底ウェルフォーマットのスフェロイドの機能的FLIPRアッセイなどのマルチウェル光学アッセイが提供される。
【0026】
さらに提供されるのは、各マイクロプレートウェルのスフェロイドが均一なサイズ、例えば+/-50又は+/-25ミクロンの直径である3D混合集団スフェロイドの光学的アッセイ、例えば機能的FLIPRアッセイである。一実施形態では、FLIPRは、マイクロプレート内、例えばウェル間、及びプレート間で非常に一貫性のある3D神経細胞ベースの細胞スフェロイドに関するリアルタイム機能データを生成する。
【0027】
一実施形態では、本開示は、アゴニスト又はアンタゴニスト薬物曝露にリアルタイムで応答する3D混合集団スフェロイドの機能的FLIPRアッセイを含む光学アッセイを提供する。
【0028】
一実施形態では、本開示は、ヒト初代細胞、iPSc、分化細胞、又は様々な不死化ヒト細胞株に由来する3D混合集団スフェロイドの光学アッセイ、例えば機能的FLIPRアッセイを提供する。
【0029】
前述の様々な方法において、ウェルを細胞膜非透過性クエンチャーと接触させることをさらに含む。前述の方法のいずれにおいても、蛍光の変化量は、スフェロイド及び蛍光分子を含むが試験化合物を含まないウェル内の蛍光と比較され得る。
【0030】
当業者は、本主題の範囲から逸脱することなく、他の例及び変形が可能であることを理解するであろう。
【0031】
上記の説明は、本発明の原理及び様々な実施形態を例示することを意図している。前述の明細書では、本発明をその特定の好ましい実施形態に関連して説明し、多くの詳細を例示の目的で説明してきたが、本発明は、追加の実施形態に影響を受けやすいものであり、そして本明細書の詳細のいくつかは、本発明の基本原理から逸脱することなく大幅に変更されてもよいことは当業者には明らかであろう。したがって、上記の開示が完全に理解されると、当業者には多数の変形及び修正が明らかになるだろう。例えば、本発明は神経細胞又は神経細胞の混合集団に限定されない。本発明は、いくつか例を挙げると、心臓、肺、肝臓、腎臓、結腸、膵臓及び癌混合集団細胞スフェロイドなど、ヒトに見られるすべての臓器タイプに適用することができる。以下の特許請求の範囲は、そのようなすべての変形及び修正を包含すると解釈されることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6