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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】積層体と表皮材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20240816BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240816BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20240816BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B32B27/40
B32B5/18
B60N2/58
A47C31/02 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022117016
(22)【出願日】2022-07-22
(62)【分割の表示】P 2018174726の分割
【原出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2022145714
(43)【公開日】2022-10-04
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東海 真平
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-120624(JP,A)
【文献】特開2014-184580(JP,A)
【文献】国際公開第2009/157450(WO,A1)
【文献】特開2009-084433(JP,A)
【文献】特開2016-010912(JP,A)
【文献】特表2018-509514(JP,A)
【文献】特表2016-530390(JP,A)
【文献】特開2005-301000(JP,A)
【文献】特開2006-021493(JP,A)
【文献】特開2018-184000(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0039042(KR,A)
【文献】中国実用新案第202643619(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C27/00-27/22
31/00-31/12
B32B1/00-43/00
B60N2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃剤を含む発泡ポリウレタン層に被覆層が積層され、
前記発泡ポリウレタン層と前記被覆層は、ポリウレタンホットメルト接着剤によって接着されている積層体において、
VOC値が100ppm未満であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
FOG値が250ppm未満であることを特徴とする請求項1に記載の積層体
【請求項3】
前記発泡ポリウレタン層がリン含有固体難燃剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記発泡ポリウレタン層の原料である発泡ポリウレタン樹脂組成物に、活性水素基を含むリシノール酸スズを含むことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の積層体を備える表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体とそれを用いた車両用内装材の表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のシートクッションの表面に被さる表皮材として、発泡ポリウレタン層の一方の表面に被覆層が接着されてなる積層体の他方の表面に表面層が接着されたものがある。表皮材は、裁断及び縫製によってシートクッションに被さる形状にされる。
【0003】
被覆層は、縫製時の作業や表皮材をシートクッションに被せる際の作業を良好にするための滑り性向上、及び発泡ポリウレタン層の裏面保護等のために設けられている。
他方、表面層は、車両のシートに要求される装飾性や感触性などに応じて本革や合成皮革あるいはファブリック等からなる適宜の材質で構成されている。
【0004】
また、車両のシートクッションの表面に被さる表皮材は、耐熱性が求められるため、発泡ポリウレタン層と被覆層及び表面層との接着にポリウレタン反応型ホットメルト接着剤を用いるものがある(特許文献1)。ポリウレタン反応型ホットメルト接着剤は、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応によって得られるポリウレタンプレポリマーを主成分とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-136735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車両のシートクッションの表面に被さる表皮材は、人体に悪影響を与えるVOC(揮発性有機化合物)の量が少ないものが求められる。また、車両のシートクッションの表面に被さる表皮材は、表面層の材質によってVOCの量が異なり、さらに、同一種類の本革等であっても、使用される部位によってVOCの量にバラツキを生じる。
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、材質などによってVOCの量にバラツキを生じ易い表面層が接着されていない、発泡ポリウレタン層と被覆層とからなる積層体についてVOCの量を少なくし、それにより、所定の材質からなる表面層が接着された車両用内装材の表皮材についてもVOCの量を少なくできることを目的とする。
さらに、車両用内装材の表皮材には、車両火災の場合などを考慮して難燃性が求められるため、本発明は、低VOC及び難燃性が良好な積層体と車両用内装材の表皮材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の態様は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒及び難燃剤を含む発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られた発泡ポリウレタン層に被覆層が積層されてなる積層体において、前記発泡ポリウレタン樹脂組成物は、前記触媒として活性水素基を含むリシノール酸スズと、前記難燃剤としてリン含有固体難燃剤とが含まれ、前記発泡ポリウレタン層と前記被覆層は、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート(B)を原料とするポリウレタンプレポリマーを含有するポリウレタンホットメルト接着剤によって接着され、前記ポリウレタンホットメルト接着剤における前記ポリウレタンプレポリマーは、前記ポリオール成分(A)として、炭素数10~12の脂肪族ジカルボン酸と炭素数4~6の脂肪族ジオールの縮合反応からなる結晶性ポリエステルポリオール(a-1)と、ポリエーテルポリオール(a-2)とが含まれ、前記ポリオール成分(A)における前記ポリエーテルポリオール(a-2)の含有量が、前記ポリオール成分(A)100質量部に対して30~80質量部であることを特徴とする。
【0009】
第2の発明の態様は、第1の発明の態様において、前記発泡ポリウレタン樹脂組成物における前記難燃剤は、前記リン含有固体難燃剤と、平均粒子径0.1~0.5μmのメラミン粉末とが含まれることを特徴とする。
【0010】
第3の発明の態様は、第1または第2の発明の態様において、前記発泡ポリウレタン樹脂組成物における前記リン含有固体難燃剤は、リン酸エステル化合物であることを特徴とする。
【0011】
第4の発明の態様は、第1から第3の発明の態様の何れか一態様において、前記ホットメルト接着剤における前記ポリウレタンプレポリマーの前記結晶性ポリエステルポリオール(a-1)は、数平均分子量が1000~5000であり、前記ポリエーテルポリオール(a-2)は、数平均分子量が1000~4000であることを特徴とする。
【0012】
第5の発明の態様は、第1から第4の発明の態様の何れか一態様において、前記ホットメルト接着剤における前記ポリウレタンプレポリマーの前記ポリオール成分(A)は、その他のポリオール(a-3)として、非晶性ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、数平均分子量500以下の低分子量ジオールからなる群より選択される1以上のポリオールが含まれることを特徴とする。
【0013】
第6の発明の態様は、第1から第5の発明の態様の何れか一態様において、前記発泡ポリウレタン層における前記被覆層とは反対側の面に前記ポリウレタンホットメルト接着剤によって表面層が接着されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6に記載された前記積層体を用いてなる車両用内装材の表皮材に係る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低VOC及び難燃性が良好な積層体と車両用内装材の表皮材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の積層体を示す断面図である。
図2】本発明の他の実施形態の積層体を示す断面図である。
図3】本発明の実施例と比較例の構成と燃焼性及びVOC等を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示す本発明の一実施形態に係る積層体10は、発泡ポリウレタン層11の一方の表面に被覆層15が積層されたものからなる。
発泡ポリウレタン層11は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒及び難燃剤を含む発泡ポリウレタン樹脂組成物が発泡して得られたたものである。
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールが用いられる。ポリエーテルポリオールは、多価アルコールにアルキレンオキシドを付加重合させて得られる化合物のほか、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。多価アルコールとしては、グリセリン、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン等が用いられる。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が用いられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールは、グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合させたトリオール、それにさらにエチレンオキシドを付加重合させたトリオール、ジプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加重合させたジオール等が挙げられる。
【0019】
ポリエーテルポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオールに、ポリカルボン酸無水物と環状エーテル基を有する化合物とを反応させて得られるポリエーテルエステルポリオールでもよい。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。ポリカルボン酸無水物としては、コハク酸、アジピン酸、フタル酸等の無水物が挙げられる。環状エーテル基を有する化合物(アルキレンオキシド)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が挙げられる。ポリエーテルポリオールはポリエステルポリオールに比べ、ポリイソシアネート類との反応性に優れているという点と、加水分解をしないという点から好ましい。
【0020】
ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、フタル酸等のポリカルボン酸を、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のポリオールと反応させることによって得られる縮合系ポリエステルポリオールのほか、ラクトン系ポリエステルポリオール及びポリカーボネート系ポリエステルポリオールが用いられる。
【0021】
ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等を使用することができる。例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、水素添加MDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)水素添加XDI、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、及びこれらの変性体、誘導体等が挙げられる。また、その他プレポリマーも使用することができる。ポリイソシアネートは単独でもよく、あるいは2種以上を用いてもよい。
【0022】
イソシアネートインデックスは80~100が好ましい。イソシアネートインデックスが80未満では、引張強さ、伸び等の機械的物性の良い発泡ポリウレタン層11が得られ難くなる一方、100を越えると発泡ポリウレタン層11の柔軟性が低下する。なお、イソシアネートインデックス(INDEX)は、ウレタン原料中に含まれる活性水素基1モルに対するイソシアネート基のモル数を100倍した値であり、[(発泡ポリウレタン樹脂組成物中のイソシアネート当量/発泡ポリウレタン樹脂組成物中の活性水素の当量)×100]で計算される。
【0023】
発泡剤としては、水、代替フロンあるいはペンタンなどの炭化水素を、単独または組み合わせて使用できる。水の場合は、ポリオールとポリイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤としての水の量は、ポリオール100質量部に対して2~5質量部程度が好ましい。また、水と共に他の発泡剤を併用する場合における他の発泡剤の量は適宜決定される。
【0024】
触媒としては、活性水素基を含むリシノール酸スズが好適であり、アミン触媒と併用されるのがさらに好適である。触媒にリシノール酸スズを含むことにより、発泡ポリウレタン層11及び積層体10のVOCの量を減らすことができる。アミン触媒としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等を挙げることができる。
【0025】
難燃剤としては、リン含有固体難燃剤が使用される。リン含有固体難燃剤は、揮発性の低い化合物であり、非ハロゲン、含ハロゲンの何れも使用することができ、リン酸エステル化合物が使用される。具体的には、トリフェニルホスフェート(白色、フレーク状)、芳香族縮合リン酸エステル(白色粉体~粒状)、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート(白色、結晶状、粉体)等を使用することができる。リン含有固体難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部当たり3~15質量部であることが好ましい。この含有量が3質量部未満の場合には、発泡ポリウレタン層11の低燃焼性を十分に向上させることができなくなる。一方、15質量部を越える場合には、発泡のバランスが崩れて良好な発泡ポリウレタン層11を得難くなる傾向がある。
【0026】
なお、リン含有難燃剤には、本発明で使用するリン含有固体難燃剤の他にリン含有液体難燃剤がある。しかし、リン含有液体難燃剤は、リン含有固体難燃剤と比べ、揮発性が高いため、発泡ポリウレタン層11及び積層体10のVOC量が多くなる。
【0027】
本発明の難燃剤には、リン含有固体難燃剤と共にメラミン樹脂粉末を併用するのが好ましい。メラミン〔C(NH〕は、酸素を含まないため燃焼の進行を抑えることができる。メラミン粉末の平均粒子径は0.1~0.5μmが好ましい。平均粒子径が0.1~0.5μmという微細なメラミン粉末が発泡ポリウレタン層11中に分散され、発泡ポリウレタン層11の燃焼時に溶融して皮膜となり、酸素が遮断されて燃焼が抑えられるものと推測される。メラミン粉末の平均粒子径が0.1μm未満の場合には、メラミン粉末の製造が煩雑になり、製造コストが上昇する。一方、0.5μmを越える場合には、発泡ポリウレタン層11中におけるメラミン粉末の分散性が低下し、低燃焼性を向上させる作用を十分に果たすことができなくなる。
【0028】
メラミン粉末の含有量は、ポリオール100質量部当たり3~13質量部が好適である。その含有量が3質量部未満の場合には、発泡ポリウレタン層11の低燃焼性を促す作用を十分に果たすことができなくなる。一方、13質量部を越える場合、発泡のバランスが崩れやすくなり、良好な発泡ポリウレタン層11を得ることができなくなるおそれがある。
【0029】
発泡ポリウレタン層11の密度及び厚みは適宜決定されるが、積層体10を車両のシートクッションなどの車両用内装材の表皮材に使用する場合、車両用内装材の表面に沿わせて撓ませることができるようにするため、例えば、密度20~35kg/m、厚み3~10mm程度が好ましい。
【0030】
発泡ポリウレタン樹脂組成物には、その他の添加剤として、例えば整泡剤を含むのが好ましい。整泡剤としては、シリコーン化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が挙げられる。整泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して0.5~2.5質量部を例示する。
さらにその他の添加剤の例として、必要に応じて充填剤、安定剤、着色剤、可塑剤、抗菌剤等、公知の添加剤を挙げることができる。
【0031】
発泡ポリウレタン層11の製造は、公知のポリウレタン発泡体の製造方法によって行われる。公知のポリウレタン発泡体の製造方法として、モールド発泡とスラブ発泡がある。モールド発泡は、モールドに発泡ポリウレタン樹脂組成物を充填してモールド内で発泡させる方法である。一方、スラブ発泡は、発泡ポリウレタン樹脂組成物を混合させてベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。本発明の発泡ポリウレタン層としては、スラブ発泡で製造された発泡ポリウレタンを所定厚みに裁断したスラブ発泡体が、より好ましい。
【0032】
被覆層15としては、不織布や織布あるいは編物が好ましい。特に編物の中でもトリコットは、弾力及び伸縮性があるために被覆層15として用いた場合、積層体11を車両用内装材の表皮材に使用する際に、車両用内装材の表面に沿って変形し易く、表皮材に皺を生じ難くできる。また、被覆層15の材質は、ナイロン、ポリエステル等を挙げる。
【0033】
発泡ポリウレタン層11と被覆層15は、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート(B)を原料とするポリウレタンプレポリマーを含有するポリウレタンホットメルト接着剤13によって接着されている。ポリウレタンプレポリマーは、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート(B)を原料とし、ポリイソシアネート(B)を化学量論的に過剰量にしてポリオール成分(A)と反応させることで得られ、末端にイソシアネート基(NCO)を有するポリウレタンプレポリマーである。
【0034】
ポリオール成分(A)は、炭素数10~12の脂肪族ジカルボン酸と炭素数4~6の脂肪族ジオールの縮合反応からなる結晶性ポリエステルポリオール(a-1)と、ポリエーテルポリオール(a-2)とが含まれる。
【0035】
ポリオール成分(A)における結晶性ポリエステルポリオール(a-1)の含有量は、ポリオール成分100質量部に対して10~60質量部であるのが好適であり、20~40質量部がより好適である。このような範囲とすることにより、良好な固化時間、高い剥離強度(接着強度)を維持することが可能となる。
【0036】
ポリオール成分(A)におけるポリエーテルポリオール(a-2)の含有量は、ポリオール成分(A)100質量部に対して30~80質量部であるのが好適であり、40~60質量部にすることがより好適である。このような範囲とすることにより、高い柔軟性と良好な剥離強度(接着強度)が可能になる。
【0037】
また、結晶性ポリエステルポリオール(a-1)とポリエーテルポリオール(a-2)の含有量の比は、20:80~70:30が好適であり、30:70~50:50がより好適である。
【0038】
結晶性ポリエステルポリオール(a-1)は、炭素数10~12の脂肪族ジカルボン酸と炭素数4~6の脂肪族ジオールの縮合反応で得られるポリオールである。具体的には、脂肪族ジカルボン酸としては、デカン二酸(セバシン酸、C10)、ウンデカン二酸(C11)及びドデカン二酸(C12)が挙げられる。一方、炭素数4~6の脂肪族ジオールとしては、ブタンジオール(例えば、1,3-ブタンジオール、1,4ブタンジオール等)、ペンタンジオール(例えば、1,5-ペンタンジオール等)及びヘキサンジオール(例えば、1,6-ヘキサンジオール)等が挙げられる。
【0039】
「結晶性ポリエステルポリオール」とは、融点が30℃以上であることを示し、一方、「非晶性ポリエステルポリオール」とは、融点が30℃以下もしくは存在しないものを示す。このような結晶性は、酸・グリコール成分を適宜選択することによって調整可能である。融点は、示差走査熱量計を用いて、温度プログラム25℃→-80℃→100℃(昇温速度5℃/min)における-80℃→100℃範囲での融解ピークを融点とする。
【0040】
結晶性ポリエステルポリオール(a-1)は、数平均分子量が1000~5000の範囲内であることが好適であり、2000~4500の範囲内であることがより好適である。
【0041】
ポリエーテルポリオール(a-2)としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及びこれらのコポリエーテルが挙げられる。また、ポリエーテルポリオール(a-2)は、グリセリンやトリメチロールエタン等の多価アルコールを用い、前記の環状エーテルを重合させて得ることもできる。
【0042】
ポリエーテルポリオール(a-2)は、数平均分子量が1000~4000の範囲であることが好適であり、1500~3000の範囲であることがより好適である。
【0043】
ポリオール成分(A)は、その他のポリオール(a-3)として、非晶性ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及び数平均分子量500以下の低分子量ジオールからなる群より選択される1つ以上のポリオールを更に含有することが好ましい。
【0044】
非晶性ポリエステルポリオールとしては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等、芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等、脂環族ジカルボン酸、例えばヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸及びヘキサヒドロイソフタル酸等、またはこれらの酸エステルもしくは酸無水物と、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等、もしくは、これらの混合物との脱水縮合反応で得られるポリエステルポリオール、;ε-カプロラクトン、メチルバレロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンジオール等が挙げられる。
【0045】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、脂環式ジヒドロキシ化合物等の多価アルコールの少なくとも1種と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等とを反応させて得られるものが挙げられる。
【0046】
低分子量ジオールとしては、数平均分子量500以下のジオールであれば特に限定されない。例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールが挙げられる。
【0047】
その他のポリオール(a-3)は、単独でも2種以上でもよい。また、その他のポリオール(a-3)として、前記以外のポリオールを含んでもよい。ポリオール成分(A)におけるその他のポリオール(a-3)の含有量は、ポリオール成分(A)100質量部に対して30質量部以下が好適である。このような範囲とすることにより、耐湿熱老化性・剥離強度(接着強度)等を良好にすることができる。なお、ポリオール成分(A)におけるその他のポリオール(a-3)の含有量の下限値は特に限定されないが、例えば、ポリオール成分(A)100質量部に対して5質量部を挙げる。
【0048】
ポリイソシアネート(B)としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、水素添加MDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)水素添加XDI、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、及びこれらの変性体、誘導体等が挙げられる。ポリイソシアネート(B)、は単独でもよく、あるいは2種以上を用いてもよい。
【0049】
末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーのNCO基含有率は、特に限定されないが、好ましくは1.0~2.5%である。このような範囲にすることで、作業中の発泡を抑制しつつも、湿気による硬化を促進することが可能となる、NCO基含有率は、JIS K1603-1に従って測定された値である。
【0050】
ポリウレタンプレポリマーの含有量は、ポリウレタンホットメルト接着剤13の全体に対して、好ましくは70~100質量%であり、より好ましくは80~100質量%である。
【0051】
ポリウレタンホットメルト接着剤13には、ポリウレタンプレポリマーと共に他の成分を添加剤として配合してもよい。配合する添加剤として、オイル成分(可塑剤)、粘着付与樹脂、酸化防止剤、ワックス、熱安定剤、充填剤、触媒等を例示することができる。これらの添加剤は、単独でも2種以上を用いてもよい。
【0052】
オイル成分としては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル等を例示することができる。オイル成分は、植物性油等を用いてもよい。
【0053】
粘着付与樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、水添脂肪族系石油樹脂、水添芳香族系石油樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、ロジン系樹脂及びこれらの変性樹脂からなる群より選択される1種以上の粘着付与樹脂等を例示することができる。
【0054】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤(例えば、Irganox1010(BASF社製))、イオウ系酸化防止剤(例えば、SUMILIZER TP-D(住友化学社製))及びリン系酸化防止剤等(例えば、Irgafos168(BASF社製)、JP-650(城北化学社製)を例示することができる。
【0055】
ワックスとしては、天然ろう{例えば、動物系ろう(みつろう、鯨ろう等)、植物系ろう(木ろう等)、石油系ろう(パラフィンワックス等)等}、及び合成ろう{例えば、合成炭化水素(低分子ポリエチレン等)、脂肪酸エステル(ポリエチレングリコール等)等}を例示できる。
【0056】
触媒としては、金属系触媒やアミン触媒等を例示することができる。触媒は、単独でも2種以上を用いてもよい。
【0057】
ポリウレタンホットメルト接着剤13の製造方法は、公知のポリウレタンホットメルト接着剤の製造方法で行うことができる。例えば、(1)所定量のポリオール成分(A)の入った反応容器に、所定量のポリイソシアネート(B)を滴下した後に加熱し、ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基が、ポリオール成分(A)の水酸基に対する過剰となる条件で反応させることによりポリウレタンプレポリマーを調製する。(2)ポリウレタンプレポリマーに、必要に応じて配合される添加剤を所定量滴下し、撹拌することにより、ポリウレタンホットメルト接着剤を製造する方法が挙げられる。ポリイソシアネート(B)のイソシアネートとポリオール成分(A)の水酸基との反応は、例えば50~120℃、好ましくは60~100℃の温度で行われる。反応時間は、例えば1~15時間である。
【0058】
積層体10の製造は、発泡ポリウレタン層11の片面と被覆層15との何れか片方又は両方にポリウレタンホットメルト接着剤13を所定量塗布し、その後、発泡ポリウレタン層11の片面と被覆層15を重ね合わせ、その状態でポリウレタンホットメルト接着剤13を冷却硬化させることにより行う。
【0059】
ポリウレタンホットメルト接着剤13の塗布方法は、スプレー塗布などの非接触方式、あるいはロールコータ塗布などの接触方式のいずれでもよい。ポリウレタンホットメルト接着剤13の塗布量は、5~50g/mが好適であり、10~30g/mがより好適である。非接触方式の場合の条件とし、圧力0.01~0.4MPa、温度100~160℃を例示する。
【0060】
ポリウレタンホットメルト接着剤13は、冷却硬化後、ポリウレタンプレポリマーにおける未硬化の末端イソシアネートが、空気中の水分と反応して架橋構造を形成することで、より強固な接着強度を発揮する。
【0061】
図2に示す他の実施形態の積層体20は、発泡ポリウレタン層11の一方の表面に被覆層15が積層され、被覆層15とは反対側の発泡ポリウレタン層11の表面に表面層19が積層されたものからなる。被覆層15と発泡ポリウレタン層11とはポリウレタンホットメルト接着剤13によって接着され、また表面層19と発泡ポリウレタン層11とはポリウレタンホットメルト接着剤17によって接着されている。ポリウレタンホットメルト接着剤13及び17は、図1の積層体10で説明したホットメルト接着剤13と同一である。
【0062】
表面層19は、天然革、合成革、ファブリック(プラスチックフィルム裏打品)等、適宜の材質で構成される。
【0063】
積層体20の製造は、図1の積層体10と同様にして発泡ポリウレタン層11の片面と被覆層15とをポリウレタンホットメルト接着剤13で接着した後、発泡ポリウレタン層11の他方の面と表面層19の何れか片方又は両方にポリウレタンホットメルト接着剤17を所定量塗布し、その後、発泡ポリウレタン層11の表面と表面層19を重ね合わせ、その状態でポリウレタンホットメルト接着剤19を冷却硬化させることにより行うことができる。ポリウレタンホットメルト接着剤19は、冷却硬化後、ポリウレタンプレポリマーにおける未硬化の末端イソシアネートが、空気中の水分と反応して架橋構造を形成することで、より強固な接着強度を発揮する。なお、先に表面層19をポリウレタンホットメルト接着剤17によって発泡ポリウレタン層11の片面に接着し、その後に被覆層15をポリウレタンホットメルト接着剤13によって発泡ポリウレタン層11の反対面に接着してもよい。
【0064】
積層体20は、車両のシートクッションやヘッドレストあるいはインストルメントパネルのような車両用内装材の表皮材として好適なものである。車両用内装材は、発泡ポリウレタンなどからなるクッション材を主要構成材とするものであり、クッション材の表面に表皮材が被せられる。積層体20を車両用内装材の表皮材として用いる場合、積層体20を所定サイズに裁断して得た複数の積層体片を、表面層19が表側となるようにして縫製することにより、車両用内装材に被さる形状にする。
【実施例
【0065】
以下の原料を使用し、図3に示す各実施例及び各比較例の配合からなる発泡ポリウレタン樹脂組成物を調製し、スラブ発泡させた後に厚み5mmに裁断して実施例1~実施例6及び比較例1~比較例6の発泡ポリウレタン層を製造した。なお、図3の発泡ポリウレタン樹脂組成物欄における原料の数値は質量部である。
【0066】
ポリオール:ポリエーテルポリオール、官能基数3、分子量3000、水酸基価56mgKOH/g、品名;GP3050NS、三洋化成工業(株)製
難燃剤1:メラミン粉末、平均粒子径0.3μm、品名;メラミン、三井化学株式会社製
難燃剤2:リン含有固体難燃剤、脂肪族リン酸アミデート、品名;DAIGURD-850、大八化学工業株式会社製
難燃剤3:リン含有液体難燃剤、縮合リン酸エステル、品名;DAIGURD-880、大八化学工業株式会社製
発泡剤:水
整泡剤:シリコーン系整泡剤、品名;B-8244、Evonik社製
アミン触媒:N,N-ジメチルアミノヘキサノール、品名;No.25、花王株式会社製
金属触媒1:活性水素基を含むリシノール酸スズ、品名;KOSMOS EF、Evonik社製
金属触媒2:オクチル酸第1スズ、城北化学工業(株)製
【0067】
各実施例及び各比較例の発泡ポリウレタン層について、密度(見掛け密度、JIS□K 7222準拠)、引張強度(JIS K 6700-5 3準拠)、伸び(JIS K 6400-5 3準拠)を測定した。
【0068】
また、実施例1~実施例3及び比較例1~比較例4の発泡ポリウレタン層の片面に、ホットメルト接着剤1によって被覆層を接着して実施例1~実施例3及び比較例1~比較例4の積層体を製造した。被覆層は、ナイロントリコット15d、桐生トリコット株式会社製であり、ホットメルト接着剤1を塗布量20g/mでスプレー塗布した。
【0069】
ホットメルト接着剤1は、以下のポリオール成分(A)を反応容器に投入し、ポリイソシアネートと、アミン触媒とを添加し、100℃にて3~4時間反応させてNCO%=2.0%のポリウレタンプレポリマーを製造し、ホットメルト接着剤1とした。
【0070】
(ホットメルト接着剤1)
・ポリオール成分(A)
結晶性ポリエステルポリオール(a-1):セバシン酸/ブタンジオール、融点60℃、数平均分子量4000、35質量部
ポリエーテルポリオール(a-2):ポリプロピレングリコール(付加形式PO単独)、数平均分子量2000、50質量部
その他のポリオール(a-3):非晶性ポリエステルポリオール、フタル酸/ネオペンチルグリコール、数平均分子量1000、15質量部
・ポリイソシアネート(B)
ジフェニルメタンジイソシアネート、NCO%=33%、24質量部
・アミン触媒:N,N-ジメチルドデシルアミン、0.05質量部
【0071】
実施例4の発泡ポリウレタン層については、その片面に、ホットメルト接着剤2によって被覆層を接着して実施例4の積層体を製造した。被覆層は、ナイロントリコット15d、桐生トリコット株式会社製であり、ホットメルト接着剤2を塗布量20g/mでスプレー塗布した。
【0072】
ホットメルト接着剤2は、以下のポリオール成分(A)を反応容器に投入し、ポリイソシアネートと、アミン触媒とを添加し、100℃にて3~4時間反応させてNCO%=2.0%のポリウレタンプレポリマーを製造し、ホットメルト接着剤2とした。
【0073】
(ホットメルト接着剤2)
・ポリオール成分(A)
結晶性ポリエステルポリオール(a-1):ドデカン二酸/ヘキサンジオール、融点70℃、数平均分子量4000、35質量部
ポリエーテルポリオール(a-2):ポリプロピレングリコール(付加形式PO単独)、数平均分子量2000、50質量部
その他のポリオール(a-3):ポリカーボネートジオール(付加形式PO単独)、融点50℃、数平均分子量1000、15質量部
・ポリイソシアネート(B)
ジフェニルメタンジイソシアネート、NCO%=33%、24質量部
・アミン触媒:N,N-ジメチルドデシルアミン、0.05質量部
【0074】
実施例5の発泡ポリウレタン層については、その片面に、ホットメルト接着剤3によって被覆層を接着して実施例5の積層体を製造した。被覆層は、ナイロントリコット15d、桐生トリコット株式会社製であり、ホットメルト接着剤3を塗布量20g/mでスプレー塗布した。
【0075】
ホットメルト接着剤3は、以下のポリオール成分(A)を反応容器に投入し、ポリイソシアネートと、アミン触媒とを添加し、100℃にて3~4時間反応させてNCO%=2.0%のポリウレタンプレポリマーを製造し、ホットメルト接着剤3とした。
【0076】
(ホットメルト接着剤3)
・ポリオール成分(A)
結晶性ポリエステルポリオール(a-1):ドデカン二酸/ヘキサンジオール、融点70℃、数平均分子量4000、35質量部
ポリエーテルポリオール(a-2):ポリプロピレングリコール(付加形式PO単独)、数平均分子量2000、50質量部
その他のポリオール(a-3):ブチルエチルプロパンジオール(付加形式PO単独)、融点43℃、15質量部
・ポリイソシアネート(B)
ジフェニルメタンジイソシアネート、NCO%=33%、40質量部
・アミン触媒:N,N-ジメチルドデシルアミン、0.05質量部
【0077】
実施例6の発泡ポリウレタン層については、その片面に、ホットメルト接着剤4によって被覆層を接着して実施例6の積層体を製造した。被覆層は、ナイロントリコット15d、桐生トリコット株式会社製であり、ホットメルト接着剤4を塗布量20g/mでスプレー塗布した。
【0078】
ホットメルト接着剤4は、以下のポリオール成分(A)を反応容器に投入し、ポリイソシアネートと、アミン触媒とを添加し、100℃にて3~4時間反応させてNCO%=2.0%のポリウレタンプレポリマーを製造し、ホットメルト接着剤6とした。
【0079】
(ホットメルト接着剤4)
・ポリオール成分(A)
結晶性ポリエステルポリオール(a-1):セバシン酸/ヘキサンジオール、融点65℃、数平均分子量4000、20質量部
ポリエーテルポリオール(a-2):ポリプロピレングリコール(付加形式PO単独)、数平均分子量2000、80質量部
・ポリイソシアネート(B)
ジフェニルメタンジイソシアネート、NCO%=33%、18質量部
・アミン触媒:N,N-ジメチルドデシルアミン、0.05質量部
【0080】
比較例5の発泡ポリウレタン層については、フレームラミネーションによって被覆層(ナイロントリコット15d、桐生トリコット株式会社製)を接着して比較例5の積層体を製造した。
【0081】
比較例6の発泡ポリウレタン層については、ホットメルト接着剤5により被覆層を接着して、比較例6の積層体を製造した。被覆層は、ナイロントリコット15d、桐生トリコット株式会社製であり、ホットメルト接着剤5を塗布量20g/mでスプレー塗布した。
【0082】
ホットメルト接着剤5は、ポリオール成分として、結晶性ポリエステルポリオール(アジピン酸/ブタンジオール)、融点58℃、数平均分子量2000、30質量部と、ポリプロピレングリコール、数平均分子量1000、70質量部を反応容器に投入し、ポリイソシアネートとしてジフェニルメタンジイソシアネート、NCO%=33%、20質量部と、アミン触媒(N,N-ジメチルドデシルアミン)、0.05質量部とを添加し、100℃にて3~4時間反応させてNCO%=2.0%のポリウレタンプレポリマーを製造し、ホットメルト接着剤5とした。
【0083】
実施例1~6及び比較例1~6の積層体について、燃焼性と、VOC値、FOG値、TVOC値を測定した。
燃焼性の測定は、FMVSS302に基づき行った。燃焼性の判定は、燃焼距離51mm以内且つ60秒以内で炎が消える場合に「自消」、試験片に着火しないまたはA標線手前で炎が消える場合に「不燃」、燃焼速度が102mm/min以下の場合に「合格」であり、「合格」→「自消」→「不燃」の順に難燃性が高くなり、「不燃」が最も難燃性に優れる。
【0084】
VOC値の測定は、実施例1~6及び比較例1~6の積層体から、7mgの試験片(被覆層付き)を作製し、その試験片をガラスチューブ内に入れ、熱脱着装置(品名:TDSA(KAS、KAS-3+、KAS-4を含む);Gestel製)を使用することで、「ドイツ自動車工業会 VDA278」に規定されるVOC測定法を実施した。具体的には、各試験片を温度90℃、時間30分の条件下で加熱し、該加熱時に発生したガスをガスクロマトグラフ質量分析計(品名:ガスクロマトグラフ質量分析計(品番:6890-5973N);アジレント製)により分析し、VOC値を算出した。また「ドイツ自動車工業会 VDA278」の規定に従い、前記VOC値測定に引き続き、温度120℃、時間1時間の条件下で加熱し、該加熱時に発生したガスを同様にガスクロマトグラフ質量分析計で分析するFOG値についても、併せて算出した。FOGは、揮発した物質がガラスに付着して白く曇る現象である。
【0085】
TVOC値は、揮発性有機化合物の総放散量であり、PV-3341に基づいて測定した。具体的には、温度120℃、時間5時間の条件下で加熱し、該加熱時に発生したガスをガスクロマトグラフで分析したピーク面積により算出する。
また、VOC等の評価を行った。評価基準は、VOC<100ppm、FOG<250ppm、TVOC<30μgC/gを全て満たす場合に「〇」、いずれかひとつでも満たさない場合に「×」とした。
【0086】
また、実施例1~6の積層体及び比較例1~6の積層体について総合評価を行った。総合評価の基準は、燃焼性の判定が不燃、且つVOC等の評価が「○」の場合に総合評価「〇」、燃焼性判定が不燃ではない、又はVOC評価が「×」の場合に総合評価「×」とした。
なお、図3におけるFOG、TVOCの結果欄における「-」は未測定を意味する。
【0087】
(実施例1)
実施例1の発泡ポリウレタン層は、ポリオール100質量部、難燃剤2(リン含有固体難燃剤)5質量部、発泡剤(水)3.9質量部、整泡剤1.1質量部、アミン触媒0.18質量部、金属触媒1(活性水素基を含むリシノール酸スズ)0.8質量部、イソシアネートインデックス103からなる発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものである。実施例1の発泡ポリウレタン層は、密度25.0kg/m、引張強度97kPa、伸び198%である。
【0088】
実施例1の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面に、ホットメルト接着剤1によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値79ppm、FOG値30ppm、TVOC値18μgC/g、VOC等の評価「〇」、総合評価「〇」である。実施例1の積層体は、難燃性が良好、かつ低VOCである。
【0089】
(実施例2)
実施例2の発泡ポリウレタン層は、ポリオール100質量部、難燃剤1(メラミン粉末)4重量部、難燃剤2(リン含有固体難燃剤)4質量部、発泡剤(水)3.95質量部、整泡剤1.1質量部、アミン触媒0.18質量部、金属触媒1(活性水素基を含むリシノール酸スズ)1.3質量部、イソシアネートインデックス103からなる発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものである。実施例2の発泡ポリウレタン層は、密度25.7kg/m、引張強度90kPa、伸び216%である。
【0090】
実施例2の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にホットメルト接着剤1によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値74ppm、FOG値42ppm、TVOC値15μgC/g、VOC等の評価「〇」、総合評価「〇」である。実施例2の積層体は、難燃性が良好、かつ低VOCである。
(実施例3)
実施例3の発泡ポリウレタン層は、ポリオール100質量部、難燃剤1(メラミン粉末)4重量部、難燃剤2(リン含有固体難燃剤)4質量部、発泡剤(水)3質量部、整泡剤1.5質量部、アミン触媒0.1質量部、金属触媒1(活性水素基を含むリシノール酸スズ)2.75質量部、イソシアネートインデックス110からなる発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものである。実施例3の発泡ポリウレタン層は、密度34.9kg/m、引張強度132kPa、伸び204%である。
【0091】
実施例3の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にホットメルト接着剤1によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値86ppm、FOG値59ppm、TVOC値3μgC/g、VOC等の評価「〇」、総合評価「〇」である。実施例3の積層体は、難燃性が良好、かつ低VOCである。
【0092】
(実施例4)
実施例4の発泡ポリウレタン層は、実施例2と同一の発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものであり、物性値は実施例2の発泡ポリウレタン層と同じである。
実施例4の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にホットメルト接着剤2によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値70ppm、FOG値34ppm、TVOC値14μgC/g、VOC等の評価「〇」、総合評価「〇」である。実施例4の積層体は、難燃性が良好、かつ低VOCである。
【0093】
(実施例5)
実施例5の発泡ポリウレタン層は、実施例2と同一の発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものであり、物性値は実施例2の発泡ポリウレタン層と同じである。
実施例5の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にホットメルト接着剤3によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値69ppm、FOG値41ppm、TVOC値8μgC/g、VOC等の評価「〇」、総合評価「〇」である。実施例5の積層体は、難燃性が良好、かつ低VOCである。
【0094】
(実施例6)
実施例6の発泡ポリウレタン層は、実施例2と同一の発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものであり、物性値は実施例2の発泡ポリウレタン層と同じである。
実施例6の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にホットメルト接着剤4によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値88ppm、FOG値53ppm、TVOC値10μgC/g、VOC等の評価「〇」、総合評価「〇」である。実施例6の積層体は、難燃性が良好、かつ低VOCである。
【0095】
(比較例1)
比較例1の発泡ポリウレタン層は、ポリオール100質量部、難燃剤1(メラミン粉末)15質量部、発泡剤(水)4.3質量部、整泡剤1.1質量部、アミン触媒0.18質量部、金属触媒2(オクチル酸第1スズ)0.31質量部、イソシアネートインデックス103からなる発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものである。比較例1の発泡ポリウレタン層は、密度24.6kg/m、引張強度70kPa、伸び97%である。
【0096】
比較例1の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にホットメルト接着剤1によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離10mm、燃焼性の判定「自消」、VOC値446ppm、FOG値43ppm、VOC等の評価「×」、総合評価「×」である。比較例1は、難燃剤にリン含有固体難燃剤を含まず、かつ金属触媒に活性水素基を含むリシノール酸スズを含まないため、難燃性に劣り、かつ高VOCである。
【0097】
(比較例2)
比較例2の発泡ポリウレタン層は、ポリオール100質量部、難燃剤1(メラミン粉末)20質量部、発泡剤(水)4.7質量部、整泡剤1.1質量部、アミン触媒0.18質量部、金属触媒2(オクチル酸第1スズ)0.31質量部、イソシアネートインデックス103からなる発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものである。比較例1の発泡ポリウレタン層は、密度25.5kg/m、引張強度56kPa、伸び64%である。
【0098】
比較例2の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にホットメルト接着剤1によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値434ppm、FOG値61ppm、VOC等の評価「×」、総合評価「×」である。比較例2は、比較例1よりもメラミン粉末の含有量が多いため、燃焼性の判定が「不燃」となったが、金属触媒に活性水素基を含むリシノール酸スズを含まないため、高VOCである。
【0099】
(比較例3)
比較例3の発泡ポリウレタン層は、実施例1における金属触媒1(活性水素基を含むリシノール酸スズ)に代えて金属触媒2(オクチル酸第1スズ)0.31質量部を用い、他を実施例1と同一にした例である。比較例3の発泡ポリウレタン層は、密度25.6kg/m、引張強度114kPa、伸び206%である。
【0100】
比較例3の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にホットメルト接着剤1によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値639ppm、FOG値78ppm、VOC等の評価「×」、総合評価「×」である。比較例3は、実施例1と比べると、金属触媒1(活性水素基を含むリシノール酸スズ)を含まないため、VOC値が極めて大になった。
【0101】
(比較例4)
比較例4の発泡ポリウレタン層は、実施例2における難燃剤2(リン含有固体難燃剤)4質量部に代えて難燃剤3(リン含有液体難燃剤)4質量部を使用し、他を実施例2と同様とした例である。比較例4の発泡ポリウレタン層は、密度24.8kg/m、引張強度105kPa、伸び201%である。
【0102】
比較例4の積層体は、ポリウレタン発泡層の片面にホットメルト接着剤1によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値219ppm、FOG値1242ppm、VOC等の評価「×」、総合評価「×」である。比較例4は、実施例2と比べると、難燃剤2(リン含有固体難燃剤)に代えて難燃剤3(リン含有液体難燃剤)を使用したため、VOC値及びFOG値が非常に大になった。
【0103】
(比較例5)
比較例5の発泡ポリウレタン層は、実施例3と同一の発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものであり、物性値は実施例3の発泡ポリウレタン層と同じである。
【0104】
比較例5の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にフレームラミネーションによって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」であったが、VOC値は260であり、VOC等の評価「×」、総合評価「×」である。比較例5は、フレームラミネーションによる接着であるため、実施例3と比べると、VOC値が非常に大になった。
【0105】
(比較例6)
比較例6の発泡ポリウレタン層は、実施例3と同一の発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものであり、物性値は実施例3の発泡ポリウレタン層と同じである。
【0106】
比較例6の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にホットメルト接着剤5によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」であったが、VOC値128ppm、FOG値219ppm、TVOC値16μgC/g、VOC等の評価「×」、総合評価「×」である。比較例6は、実施例3と比べると、本発明のポリウレタンホットメルト接着剤とは異なるホットメルト接着剤を使用したため、VOC値及びFOG値が非常に大きくなった。
【0107】
このように、本発明の発泡ポリウレタン層の片面に本発明のポリウレタンホットメルト接着剤で被覆層が接着された実施例1~6の積層体は、低VOC及び難燃性が良好なものであるため、車両用内装材の表皮材を構成する部材として好適である。
さらに、実施例1~6の積層体は、低VOC及び難燃性が良好なものであるため、本革や合成皮革、ファブリック等からなる表面層が本発明のポリウレタンホットメルト接着剤により接着された積層体も、フレームラミネートで表面層が接着されたものと比べて低VOC及び難燃性が良好なものになり、車両用内装材の表皮材として好適である。
【符号の説明】
【0108】
10、20 積層体
11 発泡ポリウレタン層
13、17 ポリウレタンホットメルト接着剤
15 被覆層
19 表面層
図1
図2
図3