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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20240816BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20240816BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240816BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240816BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240816BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20240816BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20240816BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01L29/80 F
H01L29/06 301F
H01L29/78 301X
H01L29/78 301B
H01L29/78 301W
H01L29/80 H
H01L29/44 Y
H01L29/50 M
H01L29/44 S
H01L29/44 P
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022166319
(22)【出願日】2022-10-17
(62)【分割の表示】P 2018201619の分割
【原出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2022191421
(43)【公開日】2022-12-27
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2017213022
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近松 健太郎
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-134599(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043334(WO,A1)
【文献】特開2008-277604(JP,A)
【文献】特開2017-123432(JP,A)
【文献】特開2014-045146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0218203(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0272443(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0200818(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 29/06
H01L 21/336
H01L 29/41
H01L 29/417
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ接合を含むIII族窒化物半導体積層構造と、
前記III族窒化物半導体積層構造上の絶縁層と、
ゲート電極と、
前記ゲート電極を挟むように前記ゲート電極から離れて配置され、それぞれ前記III族窒化物半導体積層構造に電気的に接続されたソース電極およびドレイン電極と、
前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間で前記絶縁層に埋め込まれ、前記ソース電極に電気的に接続された第1導電層と、
前記第1導電層および前記絶縁層の下方に配置された第1パッシベーション膜と、
前記ソース電極に接続されるように形成され、前記第1導電層に平行な水平部を有する配線導電路とを含み、
前記第1パッシベーション膜と前記絶縁層との界面は、前記ドレイン電極の頂面よりも下方に形成されており、
前記第1導電層よりも前記ドレイン電極側の領域において、前記第1導電層よりも上側で前記絶縁層に埋め込まれ、前記ソース電極に電気的に接続された第2導電層をさらに含み、
前記第2導電層は、前記絶縁層の厚さ方向において、前記絶縁層の一部を挟んで前記第1導電層と対向する前記ゲート電極側の端部と前記ドレイン電極側の端部を有しており、
前記第2導電層の前記ゲート電極側の端部は、前記第2導電層の前記ドレイン電極側の端部よりも断面視において高い位置に形成されている、半導体装置。
【請求項2】
ヘテロ接合を含むIII族窒化物半導体積層構造と、
前記III族窒化物半導体積層構造上の絶縁層と、
ゲート電極と、
前記ゲート電極を挟むように前記ゲート電極から離れて配置され、それぞれ前記III族窒化物半導体積層構造に電気的に接続されたソース電極およびドレイン電極と、
前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間で前記絶縁層に埋め込まれ、前記ソース電極に電気的に接続された第1導電層と、
前記第1導電層および前記絶縁層の下方に配置された第1パッシベーション膜と、
前記ソース電極に接続されるように形成され、前記第1導電層に平行な水平部を有する配線導電路とを含み、
前記ドレイン電極は、前記第1パッシベーション膜と前記絶縁層との界面に跨っており、
前記第1導電層よりも前記ドレイン電極側の領域において、前記第1導電層よりも上側で前記絶縁層に埋め込まれ、前記ソース電極に電気的に接続された第2導電層をさらに含み、
前記第2導電層は、前記絶縁層の厚さ方向において、前記絶縁層の一部を挟んで前記第1導電層と対向する前記ゲート電極側の端部と前記ドレイン電極側の端部を有しており、
前記第2導電層の前記ゲート電極側の端部は、前記第2導電層の前記ドレイン電極側の端部よりも断面視において高い位置に形成されている、半導体装置。
【請求項3】
前記第2導電層よりも前記ドレイン電極側の領域において前記絶縁層上に配置され、前記ソース電極に電気的に接続された第3導電層をさらに含む、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2導電層よりも前記ドレイン電極側の領域において前記絶縁層上に配置され、前記ソース電極に電気的に接続された第3導電層をさらに含み、
前記第1導電層は、第1端面および第2端面を有し、前記第1導電層の前記第1端面が前記第1導電層の前記第2端面よりも前記ドレイン電極側に形成されており、
前記第3導電層は、第1端面および第2端面を有し、前記第3導電層の前記第1端面が前記第3導電層の前記第2端面よりも前記ドレイン電極側に形成されており、
前記第3導電層の前記第1端面と前記ドレイン電極との距離は、前記第1導電層の前記第1端面と前記第3導電層の前記第1端面との距離よりも短い、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2導電層は、断面視において前記ゲート電極の最上部よりも低い位置に形成された最下部を有する、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2導電層よりも前記ドレイン電極側の領域において、前記第2導電層よりも上側で前記絶縁層に埋め込まれ、前記ソース電極に電気的に接続された第3導電層をさらに含む、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第3導電層は、前記絶縁層の厚さ方向において、前記絶縁層の一部を挟んで前記第2導電層に対向する前記ゲート電極側の端部を有している、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第3導電層の直下の前記絶縁層の厚さが150nm~250nmである、請求項3、4、6および7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ゲート電極は、前記絶縁層の厚さ方向において、前記絶縁層の一部を挟んで前記第1導電層の前記ゲート電極側の端部に対向するように前記絶縁層上に形成されたオーバーラップ部を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記絶縁層は、前記第1導電層を覆うように形成され、前記第2導電層を支持する第2絶縁層と、前記第2導電層を覆うように形成された第3絶縁層とを含み、
前記第1パッシベーション膜は、SiN層からなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記SiN層は、30nm~80nmの厚さを有している、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記III族窒化物半導体積層構造の前記ヘテロ接合に形成された二次元電子ガスの濃度が、0.5×1013cm-2~1.0×1013cm-2である、請求項1~11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記絶縁層は、前記III族窒化物半導体積層構造に達するゲート開口部を有し、
前記ゲート開口部の底部および側部を覆うゲート絶縁膜をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記ゲート絶縁膜と前記ゲート開口部の側部との間に配置された絶縁性のサイドウォールをさらに含む、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記サイドウォールは、SiO、SiNおよびSiONからなる群から選択される少なくとも一種の材料を含む、請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記ゲート電極と前記第1導電層との距離LGF1が1μm以下である、請求項1~15のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記ゲート絶縁膜は、構成元素としてSi、AlおよびHfからなる群から選択される少なくとも一種の材料を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記ゲート電極は、金属電極を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記III族窒化物半導体積層構造は、前記ソース電極および前記ドレイン電極で前記ゲート電極を挟むことによって構成された素子構造を含むアクティブ領域と、前記アクティブ領域外のノンアクティブ領域とを含み、
前記ソース電極、前記第1導電層および前記第2導電層は、それぞれ、前記ノンアクティブ領域への延長部を含み、
前記ソース電極の延長部と前記第1導電層および前記第2導電層の延長部とが互いに接続されている、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記III族窒化物半導体積層構造は、前記ヘテロ接合を形成する第1半導体層および前記第1半導体層上の第2半導体層を含み、
前記第2半導体層は、前記ゲート開口部の底部に選択的に、前記第2半導体層の酸化によって形成された酸化膜を含む、請求項13~15および17のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記III族窒化物半導体積層構造は、前記ヘテロ接合を形成する第1半導体層および前記第1半導体層上の第2半導体層を含み、
前記第2半導体層が、前記ゲート開口部の底部のみ選択的にエッチングされている、請求項13~15、17および20のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記ゲート電極と前記ソース電極との間で前記絶縁層に埋め込まれ、前記ゲート絶縁膜によって前記ゲート電極から絶縁され、かつ、前記ソース電極からも絶縁されたフローティング導電層をさらに含む、請求項13~15、17、20および21のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MIS(Metal Insulator Semiconductor)構造を有するHEMTでは、ゲート電極の端部への電界集中を緩和するために、ゲート電極と一体的なゲートフィールドプレートを形成することが知られている。一方、当該電界集中を緩和する他の方策として、ゲート電極の側方に、ソース電極と電気的に接続されたソースフィールドプレートを形成することが提案されている(たとえば、特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-124440号公報
【文献】特開2008-131031号公報
【文献】特表2007-537593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、従来に比べて、ゲート電極および導電層(ソースフィールドプレート)の各端部への電界集中を緩和できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、ヘテロ接合を含むIII族窒化物半導体積層構造と、前記III族窒化物半導体積層構造に達するゲート開口部を有する、前記III族窒化物半導体積層構造上の絶縁層と、前記ゲート開口部の底部および側部を覆うゲート絶縁膜と、前記ゲート開口部内で前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、前記ゲート電極を挟むように前記ゲート電極から離れて配置され、それぞれ前記III族窒化物半導体積層構造に電気的に接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間で前記絶縁層に埋め込まれ、前記ソース電極に電気的に接続された第1導電層と、前記第1導電層よりも前記ドレイン電極側の領域において、前記第1導電層よりも上側で前記絶縁層に埋め込まれ、前記ソース電極に電気的に接続された第2導電層とを含む。
【0006】
この構成によれば、第1導電層よりもドレイン電極側の領域において、ソース電極に電気的に接続された第2導電層が絶縁層に埋め込まれている。つまり、第2導電層は、ゲート電極の上方領域にオーバーラップせず、ゲート電極の側方において、ゲート電極の頂部よりも下方位置に配置されている。これにより、ゲート-ドレイン間における電界集中の強度を緩和することができる。その結果、耐圧およびリーク特性の改善を実現できる半導体装置を提供することができる。
【0007】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記第2導電層は、前記絶縁層の厚さ方向において、前記絶縁層の一部を挟んで前記第1導電層に対向する前記ゲート電極側の端部を有していてもよい。
【0008】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、前記第2導電層よりも前記ドレイン電極側の領域において前記絶縁層上に配置され、前記ソース電極に電気的に接続された第3導電層をさらに含んでいてもよい。
【0009】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、前記第2導電層よりも前記ドレイン電極側の領域において、前記第2導電層よりも上側で前記絶縁層に埋め込まれ、前記ソース電極に電気的に接続された第3導電層をさらに含んでいてもよい。
【0010】
第3導電層を設けることによって、ゲート-ドレイン間における電界集中の強度を一層緩和することができる。
【0011】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記第3導電層は、前記絶縁層の厚さ方向において、前記絶縁層の一部を挟んで前記第2導電層に対向する前記ゲート電極側の端部を有していてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記第3導電層の直下の前記絶縁層の厚さが150nm~250nmであってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記ゲート電極は、前記絶縁層の厚さ方向において、前記絶縁層の一部を挟んで前記第1導電層の前記ゲート電極側の端部に対向するように前記絶縁層上に形成されたオーバーラップ部を含んでいてもよい。
【0014】
この構成によれば、ドレイン電極に電気的につながる二次元電子ガスとゲート電極との間の容量(ゲート-ドレイン間容量Cgd)を低減することができる。その結果、半導体装置の寄生容量を低減することができるので、窒化物半導体系デバイスの特徴である高速スイッチング動作、高周波動作等を良好に発揮することができる。
【0015】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記絶縁層は、前記第1導電層を支持する第1絶縁層と、前記第1導電層を覆うように形成され、前記第2導電層を支持する第2絶縁層と、前記第2導電層を覆うように形成された第3絶縁層とを含み、前記第1絶縁層は、SiN層からなっていてもよい。
【0016】
この構成によれば、第1絶縁層としてSiO層を使用する場合に比べて、第1導電層のドレイン電極側の端部にかかる電界強度を低減することができる。
【0017】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記SiN層は、30nm~80nmの厚さを有していてもよい。
【0018】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記III族窒化物半導体積層構造の前記ヘテロ接合に形成された二次元電子ガスの濃度が、0.5×1013cm-2~1.0×1013cm-2であってもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、前記ゲート絶縁膜と前記ゲート開口部の側部との間に配置された絶縁性のサイドウォールをさらに含んでいてもよい。
【0020】
この構成によれば、ゲート電極と第1導電層との距離を、主にサイドウォールの厚さによって制御することできる。そのため、ゲート絶縁膜の厚さを、主に、意図したゲートしきい値電圧に合わせて設計することができる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記サイドウォールは、SiO、SiNおよびSiONからなる群から選択される少なくとも一種の材料を含んでいてもよい。
【0022】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記ゲート電極と前記第1導電層との距離LGF1が1μm以下であってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記ゲート絶縁膜は、構成元素としてSi、AlおよびHfからなる群から選択される少なくとも一種の材料を含んでいてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記ゲート電極は、金属電極を含んでいてもよい。
【0025】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記III族窒化物半導体積層構造は、前記ソース電極および前記ドレイン電極で前記ゲート電極を挟むことによって構成された素子構造を含むアクティブ領域と、前記アクティブ領域外のノンアクティブ領域とを含み、前記ソース電極、前記第1導電層および前記第2導電層は、それぞれ、前記ノンアクティブ領域への延長部を含み、前記ソース電極の延長部と前記第1導電層および前記第2導電層の延長部とが互いに接続されていてもよい。
【0026】
この構成によれば、ソース電極と、第1導電層および第2導電層とを電気的に接続するための構造として、ゲート電極の上方を跨いでソース電極および各導電層のそれぞれに電気的に接続される導電構造をアクティブ領域に設ける必要がない。このような導電構造がアクティブ領域に設けられると半導体装置の寄生容量を増加させる要因になり得るが、上記のようにノンアクティブ領域でソース電極と各導電層とを接続することによって、寄生容量の増加を抑制することができる。
【0027】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記III族窒化物半導体積層構造は、前記ヘテロ接合を形成する第1半導体層および前記第1半導体層上の第2半導体層を含み、前記第2半導体層は、前記ゲート開口部の底部に選択的に、前記第2半導体層の酸化によって形成された酸化膜を含んでいてもよい。
【0028】
この構成によれば、ゲート電極の直下の二次元電子ガスを低減させることができるので、ノーマリオフ型のHEMTを実現することができる。
【0029】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記III族窒化物半導体積層構造は、前記ヘテロ接合を形成する第1半導体層および前記第1半導体層上の第2半導体層を含み、前記第2半導体層が、前記ゲート開口部の底部のみ選択的にエッチングされていてもよい。
【0030】
この構成によれば、エッチングによるリセス構造によって、ゲート電極の直下におけるヘテロ接合の形成が防止される。これにより、ゲートバイアスを印加しないとき(ゼロバイアス時)には当該直下領域に二次元電子ガスが形成されないので、ノーマリオフ型のHEMTを実現することができる。
【0031】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、前記ゲート電極と前記ソース電極との間で前記絶縁層に埋め込まれ、前記ゲート絶縁膜によって前記ゲート電極から絶縁され、かつ、前記ソース電極からも絶縁されたフローティング導電層をさらに含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1A図1Aは、本発明の一実施形態に係る半導体装置の模式的な平面図である。
図1B図1Bは、本発明の一実施形態に係る半導体装置の模式的な平面図である。
図2図2は、前記半導体装置の模式的な断面図である。
図3図3は、図2の半導体装置の要部拡大図である。
図4A図4Aは、前記半導体装置の製造工程の一部を示す図である。
図4B図4Bは、図4Aの次の工程を示す図である。
図4C図4Cは、図4Bの次の工程を示す図である。
図4D図4Dは、図4Cの次の工程を示す図である。
図4E図4Eは、図4Dの次の工程を示す図である。
図4F図4Fは、図4Eの次の工程を示す図である。
図4G図4Gは、図4Fの次の工程を示す図である。
図4H図4Hは、図4Gの次の工程を示す図である。
図4I図4Iは、図4Hの次の工程を示す図である。
図4J図4Jは、図4Iの次の工程を示す図である。
図4K図4Kは、図4Jの次の工程を示す図である。
図4L図4Lは、図4Kの次の工程を示す図である。
図4M図4Mは、図4Lの次の工程を示す図である。
図4N図4Nは、図4Mの次の工程を示す図である。
図4O図4Oは、図4Nの次の工程を示す図である。
図4P図4Pは、図4Oの次の工程を示す図である。
図4Q図4Qは、図4Pの次の工程を示す図である。
図4R図4Rは、図4Qの次の工程を示す図である。
図5図5は、フィールドプレートの数とブレークダウン電圧との関係を示す図である。
図6図6は、本発明の他の実施形態に係る半導体装置の模式的な断面図である。
図7図7は、本発明の他の実施形態に係る半導体装置の模式的な断面図である。
図8図8は、本発明の他の実施形態に係る半導体装置の模式的な断面図である。
図9図9は、本発明の他の実施形態に係る半導体装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
図1Aおよび図1Bは、本発明の一実施形態に係る半導体装置1の模式的な平面図である。明瞭化のために、図1Aおよび図1Bでは、後述する第1ソースフィールドプレート8、第2ソースフィールドプレート59および第3ソースフィールドプレート60のうち、代表例として第1ソースフィールドプレート8の形状を示す。また、図1Aでは第1ソースフィールドプレート8およびフローティングプレート9の領域をハッチングで示し、図1Bではドレイン電極3およびソース電極5の領域をハッチングで示している。また、図1Aおよび図1Bでは、ゲート電極4の領域を一点鎖線で示している。図1Aおよび図1Bは、ハッチングが付された領域が異なる点以外は同一である。
【0035】
半導体装置1は、ベースとなるIII族窒化物半導体積層構造2上に、ドレイン電極3、ゲート電極4、ソース電極5およびプレート膜6を有している。たとえば、図1Aおよび図1Bに示すように、ドレイン電極3(D)、ゲート電極4(G)およびソース電極5(S)は、DGSGDの順に周期的に配置されている。これにより、ドレイン電極3およびソース電極5でゲート電極4を挟むことによって素子構造7が構成されている。プレート膜6は、ゲート-ソース間およびドレイン-ゲート間それぞれ配置されている。本発明の第1導電層の一例としての第1ソースフィールドプレート8がドレイン-ゲート間に配置され、本発明のフローティング導電層の一例としてのフローティングプレート9がゲート-ソース間に配置されている。
【0036】
III族窒化物半導体積層構造2の表面には、当該素子構造7を含むアクティブ領域10と、アクティブ領域10外のノンアクティブ領域11とを定義できる。ノンアクティブ領域11は、図1Aおよび図1Bに示すようにアクティブ領域10に隣接しているだけでもよいし、アクティブ領域10を取り囲んでいてもよい。
【0037】
ソース電極5は、ノンアクティブ領域11上の本発明の延長部の一例としてのベース部12と、当該ベース部12に一体的に接続された複数の電極部13とを含む。この実施形態のソース電極5は、複数の電極部13が互いに平行なストライプ状に延びる櫛歯状である。ベース部12は、ノンアクティブ領域11内に、電極部13用の接続端部14を有している。複数の電極部13は、当該接続端部14からアクティブ領域10へ向かって延びている。つまり、複数の電極部13は、アクティブ領域10およびノンアクティブ領域11の間に跨っている。
【0038】
隣り合う電極部13の間のスペース15は、ドレイン電極3が配置された領域である。この実施形態では、各スペース15に直線状のドレイン電極3が配置されることによって、二つの櫛歯状のソース電極5およびドレイン電極3が、互いに係合している。なお、図示はしていないが、ドレイン電極3は、ソース電極5と同様に、ノンアクティブ領域11上のベース部と、当該ベース部に一体的に接続された複数の電極部(スペース15に配置される部分)とを含んでいてもよい。
【0039】
ゲート電極4は、ノンアクティブ領域11上のベース部16と、当該ベース部16に一体的に接続された複数の電極部17とを含む。この実施形態のゲート電極4は、複数の電極部17が互いに平行なストライプ状に延びる櫛歯状である。ベース部16は、ノンアクティブ領域11内に、電極部17用の接続端部18を有している。接続端部18は、アクティブ領域10とノンアクティブ領域11との境界(素子分離ライン19)を基準に、ソース電極5の接続端部14よりも外側(相対的にアクティブ領域10から遠い側)に設けられている。複数の電極部17は、当該接続端部18からアクティブ領域10へ向かって延びている。つまり、複数の電極部17は、アクティブ領域10およびノンアクティブ領域11の間に跨っている。また、ゲート電極4のベース部16は、ソース電極5のベース部12よりも外側の引き出し部20を含む。たとえば、引き出し部20は、ゲート電極4に対するコンタクトを形成するための領域である。
【0040】
第1ソースフィールドプレート8は、ノンアクティブ領域11上に本発明の延長部の一例としてのベース部21と、当該ベース部21に一体的に接続された複数の電極部54とを含む。この実施形態の第1ソースフィールドプレート8は、ベース部21の両端部から一対の電極部54が延びるアーチ状である。ベース部21は、ノンアクティブ領域11内に、電極部54用の接続端部22を有している。接続端部22は、素子分離ライン19を基準に、ソース電極5の接続端部14とほぼ同じ位置に設けられている。一対の電極部54は、当該接続端部22からアクティブ領域10へ向かって延びている。つまり、一対の電極部54は、アクティブ領域10およびノンアクティブ領域11の間に跨っている。
【0041】
ソース電極5のベース部12と第1ソースフィールドプレート8のベース部21は、ノンアクティブ領域11内で部分的に重なっている。この重なり部分において、ソース電極5および第1ソースフィールドプレート8は、ソースコンタクト23を介して接続されている。たとえば、ソースコンタクト23は、図1Aおよび図1Bに示すように、スペース15に対向する位置(電極部13の延長部を避けた位置)に設けられている。
【0042】
このようにソースコンタクト23をノンアクティブ領域11に設ければ、ソース電極5と第1ソースフィールドプレート8とを電気的に接続するための構造として、ゲート電極4の上方を跨いでソース電極5および第1ソースフィールドプレート8のそれぞれに電気的に接続される導電構造をアクティブ領域10に設ける必要がない。このような導電構造がアクティブ領域10に設けられると半導体装置1の寄生容量を増加させる要因になり得るが、上記のようにノンアクティブ領域11でソース電極5と第1ソースフィールドプレート8とを接続することによって、寄生容量の増加を抑制することができる。
【0043】
フローティングプレート9は、ノンアクティブ領域11上にベース部51と、当該ベース部51に一体的に接続された複数の電極部55とを含む。この実施形態のフローティングプレート9は、ベース部51の両端部から一対の電極部55が延びるアーチ状である。ベース部51は、ノンアクティブ領域11内に、電極部55用の接続端部52を有している。接続端部52は、素子分離ライン19を基準に、ソース電極5の接続端部14とほぼ同じ位置に設けられている。一対の電極部55は、当該接続端部52からアクティブ領域10へ向かって延びている。つまり、一対の電極部55は、アクティブ領域10およびノンアクティブ領域11の間に跨っている。
【0044】
なお、図1Aおよび図1Bでは、第1ソースフィールドプレート8とソース電極5との接続形態のみを示したが、後述する第2ソースフィールドプレート59および第3ソースフィールドプレート60も、第1ソースフィールドプレート8と同様に、ソース電極5と接続されている。たとえば、第2ソースフィールドプレート59および第3ソースフィールドプレート60は、第1ソースフィールドプレート8と相似なアーチ状に形成され、ノンアクティブ領域11において、ソースコンタクト23とは異なる位置で、ソース電極5にコンタクトされていてもよい。
【0045】
次に、図2および図3を主に参照して、半導体装置1の断面構造を説明する。
【0046】
図2は、半導体装置1の模式的な断面図である。図3は、図2の半導体装置1の要部拡大図である。なお、図2は、図1の特定の位置における断面を示すものではなく、あくまでも、本発明を実施形態の理解を助けるために模式化したものである。また、図2では、明瞭化のため、半導体装置1の構成要素のうち導電体のみにハッチングを付し、必要な参照符号のみを示している。
【0047】
III族窒化物半導体積層構造2は、本発明の第1半導体層の一例としての電子走行層24と、電子走行層24上の本発明の第2半導体層の一例としての電子供給層25とを含む。電子走行層24および電子供給層25は、互いにAl組成の異なるIII族窒化物半導体からなっている。たとえば、電子走行層24は、GaN層からなっていてもよく、その厚さは、0.1μm~3μmであってもよい。たとえば、電子供給層25は、AlN層からなっていてもよく、その厚さは、1nm~7nmであってもよい。なお、電子走行層24および電子供給層25は、ヘテロ接合を形成して二次元電子ガスを発生させることができる組成であれば特に限定されず、それぞれ、AlGa1-xN層(0≦x≦1)およびAlGa1-yN層(0≦y≦1)からなっていてもよい。
【0048】
このように、電子走行層24と電子供給層25とは、互いにAl組成の異なる窒化物半導体からなっており、それらの間には格子不整合が生じている。そして、この格子不整合に起因する分極のために、電子走行層24と電子供給層25との界面に近い位置(たとえば界面から数Å程度の距離の位置)には、その分極に起因する二次元電子ガス26が広がっている。二次元電子ガス26の濃度は、たとえば、0.5×1013cm-2~1.0×1013cm-2であってもよい。
【0049】
電子供給層25には、その表面から電子走行層24に至るように、酸化膜27が選択的に形成されている。酸化膜27は、電子供給層25とほぼ等しい膜厚を有している。たとえば、酸化膜27は、熱酸化膜であり、電子走行層24との界面に損傷を与えることなく形成された酸化膜である。電子供給層25がAlN層である場合、酸化膜27は、AlON膜からなっていてもよい。
【0050】
なお、III族窒化物半導体積層構造2は、シリコン基板等の基板上に、バッファ層を介して積層されていてもよい。
【0051】
半導体装置1は、図3に示すように、III族窒化物半導体積層構造2上に形成された、下地膜28と、本発明の絶縁層の一例としてのパッシベーション膜29と、層間絶縁膜30とをさらに含む。
【0052】
下地膜28は、ドレイン電極3およびソース電極5の形成領域を含むIII族窒化物半導体積層構造2の表面全体に形成されている。たとえば、下地膜28は、SiN膜からなっていてもよく、その厚さは、1nm~200nmであってもよい。
【0053】
パッシベーション膜29は、下地膜28を覆っており、本発明の第1絶縁層の一例としての第1パッシベーション膜56、本発明の第2絶縁層の一例としての第2パッシベーション膜57、および本発明の第3絶縁層の一例としての第3パッシベーション膜58を含む。
【0054】
第1パッシベーション膜56、第2パッシベーション膜57および第3パッシベーション膜58は、SiN膜、SiO膜からなっていてもよいが、電界集中を緩和する観点から、SiN膜からなっていることが好ましい。また、パッシベーション膜29は、180nm~330nmの厚さを有していてもよい。個別には、第1パッシベーション膜56が30nm~80nmの厚さを有し、第2パッシベーション膜57が75nm~125nmの厚さを有し、第3パッシベーション膜58が75nm~125nmの厚さを有していてもよい。
【0055】
パッシベーション膜29および下地膜28には、III族窒化物半導体積層構造2に達するゲート開口部32が形成されている。ゲート開口部32の底部には、酸化膜27が露出している。ゲート開口部32の底部および側部を覆うようにゲート絶縁膜33が形成されている。ゲート絶縁膜33は、ゲート開口部32内に加えて、パッシベーション膜29の上面(この実施形態では、最上層の第3パッシベーション膜58の上面)を覆うように形成されている。
【0056】
たとえば、ゲート絶縁膜33は、構成元素としてSi、AlおよびHfからなる群から選択される少なくとも一種の材料膜からなっていてもよい。より具体的には、ゲート絶縁膜33は、SiN、SiO、SiON、Al、AlN、AlON、HfSiOおよびHfO等からなる群から選択される少なくとも一種の材料膜からなっていてもよい。これらのうち、好ましくは、Al膜が挙げられる。また、ゲート絶縁膜33は、10nm~100nmの厚さを有していてもよい。
【0057】
ゲート電極4は、ゲート開口部32に埋め込まれ、さらに、ゲート開口部32の周縁でゲート絶縁膜33(パッシベーション膜29)上に形成されたオーバーラップ部34を含んでいる。このオーバーラップ部34は、パッシベーション膜29の厚さ方向において、第2パッシベーション膜57および第3パッシベーション膜58を挟んで第1ソースフィールドプレート8(この実施形態では、第1ソースフィールドプレート8のゲート電極4側の端部61)に対向している。
【0058】
なお、ゲート電極4は、ゲート開口部32の開口端よりも上方に出っ張らないようにゲート開口部32に充填されていてもよい。たとえば、ゲート電極4は、Mo、Ni等の金属電極からなっていてもよいし、ドープトポリシリコン等の半導体電極からなっていてもよい。金属電極はポリシリコンに比べて埋め込み性に劣るので、金属電極を用いた場合に、特にオーバーラップ部34が形成され易い。
【0059】
第1ソースフィールドプレート8およびフローティングプレート9は、ゲート開口部32の側部を部分的に形成するように、ゲート電極4の側方に配置されている。具体的には、第1ソースフィールドプレート8およびフローティングプレート9は、ゲート開口部32の側部の下側で露出するように、下地膜28上に、第1パッシベーション膜56を介して形成されている。つまり、ゲート開口部32の側部は、下側が第1ソースフィールドプレート8およびフローティングプレート9で形成され、上側がパッシベーション膜29の一部(具体的には、第2パッシベーション膜57および第3パッシベーション膜58)で形成されることによって、導電層/絶縁層の積層界面を有している。
【0060】
そして、第1ソースフィールドプレート8およびフローティングプレート9に接するように、ゲート開口部32の側部に絶縁性のサイドウォール35が形成されている。つまり、サイドウォール35は、ゲート開口部32の側部とゲート絶縁膜33との間に配置されている。たとえば、サイドウォール35は、SiO、SiNおよびSiONからなる群から選択される少なくとも一種の材料膜からなっていてもよい。これらのうち、好ましくは、SiO膜が挙げられる。また、サイドウォール35は、10nm~200nmの厚さを有していてもよい。
【0061】
第1ソースフィールドプレート8およびフローティングプレート9は、サイドウォール35およびゲート絶縁膜33によって、ゲート電極4から絶縁されている。たとえば、ゲート電極4と第1ソースフィールドプレート8およびフローティングプレート9との距離LGF1は、1μm以下であり、好ましくは、50nm~200nmであってよい。距離LGF1は、この実施形態ではゲート絶縁膜33およびサイドウォール35の総厚さで定義されるが、サイドウォール35を有しない構成では、距離LGF1=ゲート絶縁膜33の厚さであってもよい。また、第1ソースフィールドプレート8の長さLFP1は、たとえば、半導体装置1の耐圧が200V以下の場合、0.3μm~0.6μmであってよい。また、第1ソースフィールドプレート8およびフローティングプレート9は、Mo膜からなっていてもよく、その厚さは、10nm~200nmであってもよい。
【0062】
第2パッシベーション膜57は、第1ソースフィールドプレート8およびフローティングプレート9を覆うように、第1パッシベーション膜56上に積層されている。これにより、第1ソースフィールドプレート8およびフローティングプレート9は、第1パッシベーション膜56と第2パッシベーション膜57との間に挟まれ、パッシベーション膜29に埋め込まれた状態となっている。
【0063】
第2パッシベーション膜57、第1パッシベーション膜56および下地膜28を貫通するように、III族窒化物半導体積層構造2に達するソースコンタクトホール37およびドレインコンタクトホール38が形成されている。ソースコンタクトホール37およびドレインコンタクトホール38は、ゲート開口部32から横方向に離れた位置に形成されている。ソースコンタクトホール37およびドレインコンタクトホール38には、それぞれ、ソース電極5およびドレイン電極3が埋め込まれている。ソース電極5およびドレイン電極3は、それぞれ、ソースコンタクトホール37およびドレインコンタクトホール38内でIII族窒化物半導体積層構造2に電気的に接続されている。
【0064】
ソース電極5およびドレイン電極3は、それぞれ、パッシベーション膜29内に埋め込まれ、III族窒化物半導体積層構造2にオーミック接続されている。図1Aおよび図1Bに示すように、ソース電極5およびドレイン電極3は、スペース15の奥行き方向における端部が互いに同じ位置に配置されているが、たとえば、ドレイン電極3の端部が、ノンアクティブ領域11からアクティブ領域10に向かう方向に、選択的に後退していてもよい。また、ソース電極5およびドレイン電極3は、その頂部が第2パッシベーション膜57の表面から露出している。また、ソース電極5およびドレイン電極3は、Ti/Alの積層膜からなっていてもよい。
【0065】
第2パッシベーション膜57上には、さらに、第2ソースフィールドプレート59が形成されている。第2ソースフィールドプレート59は、第1ソースフィールドプレート8よりもドレイン電極3側の領域に配置されている。この実施形態では、第2ソースフィールドプレート59は、パッシベーション膜29の厚さ方向において、第2パッシベーション膜57を挟んで第1ソースフィールドプレート8(この実施形態では、第1ソースフィールドプレート8のドレイン電極3側の端部62)に対向するゲート電極4側の端部63を有している。また、第2ソースフィールドプレート59の長さLFP2(第1ソースフィールドプレート8と重複している場合は、図3に示すように、第1ソースフィールドプレート8の端部62からの長さ)は、たとえば、半導体装置1の耐圧が200V以下の場合、0.3μm~1.0μmであってよい。また、第2ソースフィールドプレート59は、ソース電極5およびドレイン電極3と同じ材料からなっていてもよく、その厚さは、50nm~400nmであってもよい。
【0066】
第3パッシベーション膜58は、第2ソースフィールドプレート59、ドレイン電極3およびソース電極5を覆うように、第2パッシベーション膜57上に積層されている。これにより、第2ソースフィールドプレート59、ドレイン電極3およびソース電極5は、第2パッシベーション膜57と第3パッシベーション膜58との間に挟まれ、パッシベーション膜29に埋め込まれた状態となっている。
【0067】
なお、この実施形態では図3と異なる位置での切断面に現れる構成であるが、パッシベーション膜29には、第1ソースフィールドプレート8に達するコンタクトホール46が形成されていてもよい。このコンタクトホール46には、図1に示したソースコンタクト23が埋め込まれ、第1ソースフィールドプレート8に接続されていてもよい。
【0068】
パッシベーション膜29上(この実施形態では、第3パッシベーション膜58上)には、ゲート絶縁膜33を介して、第3ソースフィールドプレート60が形成されている。第3ソースフィールドプレート60は、第2ソースフィールドプレート59よりもドレイン電極3側の領域に配置されている。この実施形態では、第3ソースフィールドプレート60は、パッシベーション膜29の厚さ方向において、第3パッシベーション膜58を挟んで第2ソースフィールドプレート59(この実施形態では、第2ソースフィールドプレート59のドレイン電極3側の端部64)に対向するゲート電極4側の端部65を有している。一方、第3ソースフィールドプレート60のドレイン電極3側の端部66は、ドレイン電極3と重複しておらず、ドレイン電極3に対してゲート電極4側に離れた位置に配置されている。また、第3ソースフィールドプレート60の長さLFP3(第2ソースフィールドプレート59と重複している場合は、図3に示すように、第2ソースフィールドプレート59の端部64からの長さ)は、たとえば、半導体装置1の耐圧が200V以下の場合、0.3μm~1.0μmであってよい。また、第3ソースフィールドプレート60は、ゲート電極4と同じ材料からなっていてもよく、その厚さは、50nm~1000nmであってもよい。
【0069】
層間絶縁膜30は、第1層間絶縁膜67および第2層間絶縁膜68を含む。第1層間絶縁膜67および第2層間絶縁膜68は、たとえば、SiO膜からなっていてもよい。また、第1層間絶縁膜67および第2層間絶縁膜68は、それぞれ、0.3μm~1.5μmおよび0.3μm~1.5μmの厚さを有していてもよい。
【0070】
第1層間絶縁膜67は、ゲート電極4および第3ソースフィールドプレート60を覆うように、パッシベーション膜29上(この実施形態では、パッシベーション膜29上のゲート絶縁膜33の表面)に積層されている。第1層間絶縁膜67には、ソース電極5の一部を露出させるコンタクトホール69が形成されている。なお、図示しないが、第1層間絶縁膜67には、図示しない位置でドレイン電極3の一部を露出させるコンタクトホールが形成されていてもよい。
【0071】
第1層間絶縁膜67上には、第1ソース配線70が形成されている。第1ソース配線70は、コンタクトホール69を介して、ソース電極5に接続されている。また、第1ソース配線70は、たとえば、AlまたはAl合金からなっていてもよい。
【0072】
第2層間絶縁膜68は、第1ソース配線70を覆うように、第1層間絶縁膜67上に積層されている。第2層間絶縁膜68には、第1ソース配線70の一部を露出させるコンタクトホール71が形成されている。
【0073】
第2層間絶縁膜68上には、第2ソース配線72が形成されている。第2ソース配線72は、コンタクトホール71を介して、第1ソース配線70に接続されている。また、第2ソース配線72は、たとえば、AlまたはAl合金からなっていてもよい。
【0074】
そして、第2ソース配線72(この実施形態では、最上層配線)を覆うように、表面保護膜75が形成されている。表面保護膜75は、第2ソース配線72の一部をソースパッド73として露出させる開口74を有している。また、表面保護膜75は、第2ソース配線72の側から順に第1表面保護膜76および第2表面保護膜77が積層された構造を有していてもよい。第1表面保護膜76は、たとえば、SiO膜からなっていてもよい。また、第1表面保護膜76は、たとえば、0.2μm~2.0μmの厚さを有していてもよい。第2表面保護膜77は、たとえば、ポリイミド膜からなっていてもよい。また、第2表面保護膜77は、たとえば、1.0μm~20μmの厚さを有していてもよい。
【0075】
次に、図4A図4Rを参照して、半導体装置1の製造方法を説明する。
【0076】
図4A図4Rは、半導体装置1の製造工程を工程順に示す図である。
【0077】
半導体装置1を製造するには、たとえば、基板(図示せず)上に、バッファ層(図示せず)および電子走行層24が順にエピタキシャル成長させられ、図4Aに示すように、さらに電子走行層24上に電子供給層25がエピタキシャル成長させられる。これにより、III族窒化物半導体積層構造2が形成される。
【0078】
次に、図4Bに示すように、電子供給層25上の全面を覆うように、たとえば、CVD法(化学的気相成長法)によって、下地膜28が形成される。
【0079】
次に、図4Cに示すように、電子供給層25上の全面を覆うように、たとえば、CVD法(化学的気相成長法)によって、第1パッシベーション膜56が形成される。
【0080】
次に、図4Dに示すように、たとえば、スパッタ法、蒸着法等によって、第1パッシベーション膜56上にプレート膜6が形成される。そして、たとえば、ドライエッチングによって、プレート膜6が選択的に除去される。これにより、ソース電極5の形成領域とドレイン電極3の形成領域との間に、プレート膜6が形成される。
【0081】
次に、図4Eに示すように、第1パッシベーション膜56上の全面を覆うように、たとえば、CVD法(化学的気相成長法)によって、第2パッシベーション膜57が形成される。
【0082】
次に、図4Fに示すように、たとえば、ドライエッチングによって、第2パッシベーション膜57、第1パッシベーション膜56および下地膜28が選択的に除去される。これにより、ソースコンタクトホール37およびドレインコンタクトホール38が同時に形成される。
【0083】
次に、図4Gに示すように、たとえば、スパッタ法、蒸着法等によって、第2パッシベーション膜57上に導電膜が形成され、たとえば、ドライエッチングによって、当該導電膜が選択的に除去される。これにより、第2ソースフィールドプレート59、ソース電極5およびドレイン電極3が、同時に形成される。
【0084】
次に、図4Hに示すように、第2パッシベーション膜57上の全面を覆うように、たとえば、CVD法(化学的気相成長法)によって、第3パッシベーション膜58が形成される。
【0085】
次に、図4Iに示すように、プレート膜6に対向する領域を含むエッチング領域からパッシベーション膜29およびプレート膜6をエッチングすることによって、ゲート開口部32が形成される。これにより、プレート膜6は、ゲート開口部32に対して自己整合的に、ドレイン側の第1ソースフィールドプレート8とソース側のフローティングプレート9とに分離される。したがって、第1ソースフィールドプレート8およびフローティングプレート9は、この段階では、ゲート開口部32の側部に露出することになる。
【0086】
次に、図4Jに示すように、パッシベーション膜29上の全面を覆うように、たとえば、CVD法(化学的気相成長法)によって、絶縁膜47が形成される。絶縁膜47を形成する工程は、パッシベーション膜29に接する下層膜48を形成する工程と、絶縁膜47の最表面を形成する上層膜49を形成する工程とを含むことによって、絶縁膜の積層構造を形成する工程を含んでいてもよい。当該積層構造は、二層構造からなっていてもよいし、三層以上の構造からなっていてもよい。たとえば、下層膜48は、SiO膜からなっていてもよく、上層膜49は、Al膜からなっていてもよい。パッシベーション膜29および下層膜48が共にSiO膜である場合、パッシベーション膜29に対する絶縁膜47(下層膜48)の密着性を高めることができる。そのため、後の工程において、サイドウォール35の膜剥がれを防止することができる。
【0087】
次に、図4Kに示すように、たとえば、エッチバックによって、絶縁膜47のパッシベーション膜29上の部分が選択的に除去され、ゲート開口部32の側部上にサイドウォール35が形成される。上層膜49としてAl膜を採用していると、エッチバック後に、エッチングされ難いAl膜の一部がゲート開口部32から上方への突出部50として残ることがある。
【0088】
次に、図4Lに示すように、たとえば、ドライエッチングによって、ゲート開口部32の底部における下地膜28が選択的に除去される。これにより、ゲート開口部32の底部にIII族窒化物半導体積層構造2の電子供給層25が露出する。下地膜28がSiN膜であり、上層膜49がAl膜である場合、下地膜28用のエッチャント(たとえば、CFガス等)に対して上層膜49のエッチング選択比を小さくすることができる。したがって、下地膜28をエッチングする際に、下層膜48を上層膜49で保護できるので、サイドウォール35(下層膜48)が下地膜28と一緒にエッチングされて薄くなることを抑制することができる。そのため、下地膜28のエッチング後においても、設計値に近い厚さを有するサイドウォール35を維持することができる。
【0089】
次に、図4Mに示すように、たとえば、ドライエッチングによって、サイドウォール35の表面部が選択的に除去される。この実施形態では、最表面を形成する上層膜49が選択的に除去されることによって、下層膜48がサイドウォール35として残ることとなる。上層膜49がAl膜である場合、たとえば、BClガスがエッチャントとして使用されてもよい。その後、電子供給層25のゲート開口部32に露出した部分が選択的に酸化されることによって、電子供給層25の一部が酸化膜27となる。
【0090】
次に、図4Nに示すように、パッシベーション膜29上の全面を覆うように、たとえば、CVD法(化学的気相成長法)によって、ゲート絶縁膜33が形成される。
【0091】
次に、図4Oに示すように、たとえば、スパッタ法、蒸着法等によって、パッシベーション膜29(第3パッシベーション膜58)上に導電膜が形成される。当該導電膜は、ゲート開口部32に埋め込まれると共に、パッシベーション膜29の表面にも形成される。そして、たとえば、ドライエッチングによって、当該導電膜が選択的に除去される。これにより、ゲート電極4および第3ソースフィールドプレート60が、同時に形成される。
【0092】
次に、図4Pに示すように、パッシベーション膜29上の全面を覆うように、たとえば、CVD法(化学的気相成長法)によって、第1層間絶縁膜67が形成される。
【0093】
次に、図4Qに示すように、たとえば、ドライエッチングによって、第1層間絶縁膜67が選択的に除去される。これにより、コンタクトホール69が形成される。
【0094】
次に、図4Rに示すように、たとえば、スパッタ法、蒸着法等によって、第1層間絶縁膜67上に第1ソース配線70が形成される。
【0095】
その後は、第2層間絶縁膜68、第2ソース配線72および表面保護膜75等が形成されることによって、半導体装置1が得られる。
【0096】
以上、この半導体装置1では、前述したように、電子走行層24上にAl組成の異なる電子供給層25が形成されてヘテロ接合が形成されている。これにより、電子走行層24と電子供給層25との界面付近の電子走行層24内に二次元電子ガス26が形成され、この二次元電子ガス26をチャネルとして利用したHEMTが形成されている。ゲート電極4は、酸化膜27およびゲート絶縁膜33の積層膜を挟んで電子走行層24に対向しており、ゲート電極4の直下には、電子供給層25は存在しない。したがって、ゲート電極4の直下では、電子供給層25と電子走行層24との格子不整合による分極に起因する二次元電子ガス26が形成されない。よって、ゲート電極4にバイアスを印加していないとき(ゼロバイアス時)には、二次元電子ガス26によるチャネルはゲート電極4の直下で遮断されている。こうして、ノーマリオフ型のHEMTが実現されている。ゲート電極4に適切なオン電圧(たとえば5V)を印加すると、ゲート電極4の直下の電子走行層24内にチャネルが誘起され、ゲート電極4の両側の二次元電子ガス26が接続される。これにより、ソース-ドレイン間が導通する。
【0097】
使用に際しては、たとえば、ソース電極5とドレイン電極3との間に、ドレイン電極3側が正となる所定の電圧(たとえば200V~400V)が印加される。その状態で、ゲート電極4に対して、ソース電極5を基準電位(0V)として、オフ電圧(0V)またはオン電圧(5V)が印加される。
【0098】
酸化膜27と電子走行層24との界面は、電子供給層25と電子走行層24との界面に連続していて、ゲート電極4の直下における電子走行層24の界面の状態は、電子供給層25と電子走行層24との界面の状態と同等である。そのため、ゲート電極4の直下の電子走行層24における電子移動度は高い状態に保持されている。こうして、この実施形態は、ノーマリオフ型のHEMT構造を有する窒化物半導体装置を提供する。
【0099】
一方、半導体装置1がオフ状態のときに、ゲート-ドレイン間の第1ソースフィールドプレート8のドレイン側端部に電界集中し易いが、上記の構成によれば、第1ソースフィールドプレート8よりもドレイン電極3側の領域において、ソース電極5に電気的に接続された第2ソースフィールドプレート59がパッシベーション膜29に埋め込まれている。つまり、第2ソースフィールドプレート59は、ゲート電極4の上方領域にオーバーラップせず、ゲート電極4の側方において、ゲート電極4の頂部よりも下方位置に配置されている。これにより、ゲート-ドレイン間における電界集中の強度を緩和することができる。その結果、耐圧およびリーク特性の改善を実現できる半導体装置1を提供することができる。
【0100】
上記の効果は、たとえば、次に示すシミュレーションによって説明できる。シミュレーションで設定した構造は、概ね、前述の実施形態で説明した構造ではあるが、図3に示した各ソースフィールドプレート8,59,60の端部同士がパッシベーション膜29の厚さ方向において重複している構成については考慮されていない。
(1)耐圧特性の向上について
まず、第1ソースフィールドプレート8のみの構成と、第2ソースフィールドプレート59ありの構成とのブレークダウン電圧を比較した(いずれも、第3ソースフィールドプレート60はなし)。その結果、図5に示す結果が得られた。
【0101】
図5に示すように、第2ソースフィールドプレート59を挿入することによって、耐圧特性が大きく向上する結果が得られた。
(2)膜種変更による効果
次に、第1パッシベーション膜56の種類によって、ゲート電極4のドレイン側の端部、第1ソースフィールドプレート8のドレイン側の端部62、および第2ソースフィールドプレート59のドレイン側の端部64にかかる電界強度がどのように変化するかを検証した。なお、二次元電子ガスの濃度は1×1013cm-2とし、第1パッシベーション膜56の厚さは40nmとし、Vg=0V、Vd=100Vとした。結果を表1に示す。表1から、第1パッシベーション膜56をSiNとすることで、ゲート電極4のドレイン側の端部、および第1ソースフィールドプレート8のドレイン側の端部62にかかる電界強度が弱まっていることが分かる。
【0102】
【表1】
(3)膜厚変更による効果
次に、第1パッシベーション膜56の厚さによって、ゲート電極4のドレイン側の端部、第1ソースフィールドプレート8のドレイン側の端部62、および第2ソースフィールドプレート59のドレイン側の端部64にかかる電界強度がどのように変化するかを検証した。なお、二次元電子ガスの濃度は1×1013cm-2とし、第1パッシベーション膜56の種類はSiNとし、Vg=0V、Vd=100Vとした。結果を表2に示す。表2から、第1パッシベーション膜56の厚さの変更に伴い、ゲート電極4のドレイン側の端部、および第1ソースフィールドプレート8のドレイン側の端部62にかかる電界強度の割り振りが変わっていることが分かる。
【0103】
【表2】
(4)二次元電子ガスの濃度変更による効果
次に、二次元電子ガス26の濃度によって、ゲート電極4のドレイン側の端部、第1ソースフィールドプレート8のドレイン側の端部62、および第2ソースフィールドプレート59のドレイン側の端部64にかかる電界強度がどのように変化するかを検証した。なお、第1パッシベーション膜56の種類および厚さはSiN:40nmとし、Vg=0V、Vd=100Vとした。結果を表3に示す。表3から、二次元電子ガス26の濃度が下がれば下がるほど、電界強度が弱まっていることが分かる。
【0104】
【表3】
(5)第3ソースフィールドプレートの効果
次に、第3ソースフィールドプレートの有無によって、ゲート電極4のドレイン側の端部、第1ソースフィールドプレート8のドレイン側の端部62、第2ソースフィールドプレート59のドレイン側の端部64、および第3ソースフィールドプレート60のドレイン側の端部66にかかる電界強度がどのように変化するかを検証した。なお、二次元電子ガスの濃度は1×1013cm-2とし、第1パッシベーション膜56の種類および厚さはSiO:40nmとし、Vg=0V、Vd=100Vとした。結果を表4に示す。表4から、第3ソースフィールドプレート60の挿入によって、第2ソースフィールドプレート59のドレイン側の端部64にかかる電界強度が弱まっていることが分かる。
【0105】
【表4】
(6)第3ソースフィールドプレートとその直下の絶縁膜の膜厚との関係
次に、第3ソースフィールドプレートの直下の絶縁膜(このシミュレーションではSiO)の膜厚によって、ゲート電極4のドレイン側の端部、第1ソースフィールドプレート8のドレイン側の端部62、第2ソースフィールドプレート59のドレイン側の端部64、および第3ソースフィールドプレート60のドレイン側の端部66にかかる電界強度がどのように変化するかを検証した。なお、二次元電子ガスの濃度は1×1013cm-2とし、第1パッシベーション膜56の種類および厚さはSiN:40nmとし、Vg=0V、Vd=100Vとした。結果を表5に示す。表5から、第3ソースフィールドプレート60の直下の絶縁膜の厚さは、各ソースフィールドプレートにかかる電界強度のバランスを考慮すれば、200nm前後が好ましいことが分かる。
【0106】
【表5】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することも可能である。
【0107】
たとえば、図6に示す半導体装置80では、第3ソースフィールドプレート60が、パッシベーション膜29上に形成されず、パッシベーション膜29に埋め込まれている。この場合、パッシベーション膜29は、第3パッシベーション膜58上に第4パッシベーション膜81を有しており、第3ソースフィールドプレート60は、第3パッシベーション膜58と第4パッシベーション膜81との間に挟まれていてもよい。
【0108】
また、たとえば、図7に示す半導体装置82は、ノーマリオフ型のHEMTを実現する構造として、酸化膜27に代えて、リセス53を有している。リセス53は、たとえば、ゲート開口部32の底部のみを選択的にエッチングすることによって、電子供給層25を貫通し、電子走行層24の表層部に至るように形成されていてもよい。リセス53によって、ゲート電極4の直下における電子走行層24と電子供給層25とのヘテロ接合の形成が防止される。これにより、ゲートバイアスを印加しないとき(ゼロバイアス時)には当該直下領域に二次元電子ガス26が形成されないので、ノーマリオフ型のHEMTを実現することができる。
【0109】
また、たとえば、図8に示す半導体装置91のように、断面視において、第1ソースフィールドプレート8およびフローティングプレート9は、互いに略同じ幅を有していてもよい。また、ドレイン電極3、ゲート電極4、ソース電極5および第2ソースフィールドプレート59の表面部には、それぞれ、側面が曲面で構成された段部92,93,94,95が形成されていてもよい。また、第2ソースフィールドプレート59の段部95には、当該段部95よりもさらに窪んだ凹部96が形成されていてもよい。また、ゲート開口部32は、前述のように、その底部から開口端に向かって一定の幅を有していてもよいが、底部から開口端に向かって幅が広がる断面視テーパ状であってもよい。
【0110】
また、たとえば、図9に示す半導体装置101のように、断面視において、フローティングプレート9は、第1ソースフィールドプレート8よりも広い幅を有していてもよい。また、ソース電極5は、パッシベーション膜29の厚さ方向において、第2パッシベーション膜57を介してフローティングプレート9にオーバーラップするように形成されていてもよい。つまり、ソース電極5は、第2パッシベーション膜57を挟んでフローティングプレート9上に配置された部分を有していてもよい。一方、第2ソースフィールドプレート59の端部63は、パッシベーション膜29の厚さ方向において、第1ソースフィールドプレート8に対向していなくてもよい。
【0111】
また、半導体装置1は、サイドウォール35を備えていなくてもよい。この場合、ゲート絶縁膜33のみの厚さに基づいて、ゲート電極4と第1ソースフィールドプレート8との距離LGFを制御することができる。
【0112】
また、半導体装置1は、ソース-ゲート間のフローティングプレート9を備えていなくてもよい。つまり、ソース-ゲート間およびゲート-ドレイン間のうち、後者のみに選択的にフィールドプレート(第1ソースフィールドプレート8、第2ソースフィールドプレート59および第3ソースフィールドプレート60)が設けられていてもよい。このような構成は、たとえば、図4Jに示すエッチング時に、エッチング領域を、プレート膜6の端部の内外に跨る領域として設定すればよい。
【0113】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0114】
1 半導体装置
2 III族窒化物半導体積層構造
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 ソース電極
7 素子構造
8 第1ソースフィールドプレート
9 フローティングプレート
10 アクティブ領域
11 ノンアクティブ領域
12 (ソース電極)ベース部
21 (第1ソースフィールドプレート)ベース部
23 ソースコンタクト
24 電子走行層
25 電子供給層
26 二次元電子ガス
27 酸化膜
28 下地膜
29 パッシベーション膜
32 ゲート開口部
33 ゲート絶縁膜
34 オーバーラップ部
35 サイドウォール
53 リセス
56 第1パッシベーション膜
57 第2パッシベーション膜
58 第3パッシベーション膜
59 第2ソースフィールドプレート
60 第3ソースフィールドプレート
61 (第1ソースフィールドプレート)端部
62 (第1ソースフィールドプレート)端部
63 (第2ソースフィールドプレート)端部
64 (第2ソースフィールドプレート)端部
65 (第3ソースフィールドプレート)端部
66 (第3ソースフィールドプレート)端部
80 半導体装置
81 第4パッシベーション膜
82 半導体装置
91 半導体装置
101 半導体装置
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図4K
図4L
図4M
図4N
図4O
図4P
図4Q
図4R
図5
図6
図7
図8
図9