(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】流体エネルギ捕集ユニット
(51)【国際特許分類】
F03D 1/04 20060101AFI20240816BHJP
F03B 11/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F03D1/04 B
F03B11/02
(21)【出願番号】P 2022562325
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 BR2021050111
(87)【国際公開番号】W WO2021203183
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-08-19
(31)【優先権主張番号】BR1020200072242
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522397570
【氏名又は名称】ケイロス,マウリシオ
【氏名又は名称原語表記】QUEIROZ,Mauricio
(74)【代理人】
【識別番号】100165434
【氏名又は名称】小林 克行
(74)【代理人】
【識別番号】100134234
【氏名又は名称】日向 麻里
(72)【発明者】
【氏名】ケイロス,マウリシオ
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-504227(JP,A)
【文献】特表2014-503048(JP,A)
【文献】特開2016-050575(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0063567(KR,A)
【文献】特開2018-028283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/04
F03B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のエンベロープ(3)を有する反動タービン(2)を備え、
水平方向の上流の流体(10)による運動エネルギによって押されて前記エンベロープを通過する流れが、衝突領域の形成によって課される障害
領域を克服して、前記反動タービンを強制的に回転させ、前記反動タービン(2)に備えられた軸(5)及び
複数のブレード(4)が、流体の断面内に、前記反動タービンの射影の全体を含む前記衝突領域を形成
し、前記複数のブレード(4)は、前記上流の流体(10)の側からみた直交正面視において、各ブレード間に間隙がないように設けられている、ことを特徴とする流体エネルギ捕集ユニット(1)。
【請求項2】
前記反動タービン(2)
の各ブレード(4)は、
前記反動タービン(2)の半径方向の第1半径(r1)が前記軸から前記反動タービンの端部に向かって増加し、前記反動タービン(2)の軸方向の第2半径(r2)が前記軸から前記反動タービンの端部に向かって減少するような輪郭を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の流体エネルギ捕集ユニット(1)。
【請求項3】
前記反動タービン(2)
の前記軸(5)は、楕円形のキャップの幾何学的形状を有
し、流体の方向に沿って増加する断面を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の流体エネルギ捕集ユニット(1)。
【請求項4】
前記エンベロープ(3)は、前記反動タービン(2)を
収容する仕事区画(7)と、前記上流の流体(10)を受け入れる負荷区画(6)と、前記上流の流体(10)を排出する排出区画(8)とを備え、
前記仕事区画(7)は、前記上流の流体(10)の流れ方向に沿って、前記負荷区画(6)と前記排出区画(8)との間に位置しており、
前記負荷区画(6)は、前記流れ方向の延長(er)と、前記流れ方向の延長(er)に沿って第2の直径(dτ)へ減少する第1の直径(dc)とを有し、
前記仕事区画(7)は、前記負荷区画(6)の前記第2の直径(dτ)と同じである直径(dτ)を持つ前記流れ方向の延長(eτ)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の流体エネルギ捕集ユニット(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[序論]
発明の特許についての本出願は、浮上式又は水中式の発電機に接続される海中水力タービンを備えることを特徴とする流体エネルギ捕集ユニットに関し、クリーンで再生可能かつ持続可能なエネルギ源として、発電の一つのモデルとなるものである。
【0002】
さらに、指摘されるべきは、流体構造の革新的な概念であり、圧力下の液体において固体状物質の特性のいくつかを認識し、海水の組成における固体の割合を考慮に入れるものである。
【背景技術】
【0003】
[適用分野]
流体エネルギ捕集ユニットの適用分野は、電力セクタであり、設置された国又は地域の電力システムは、生成された電力エネルギを受け入れ、それを既存の供給源からの電力エネルギに追加して、商業配電へのエネルギの供給を強化し、又は、ローカル及び独立した電力ネットワークに給電する。
【0004】
[最終目的]
この流体エネルギ捕集ユニットの目的は、海や大洋の流れにおける広大な水塊に関連する大量の運動エネルギを捕捉し、それを、送電、配電、消費のための電力エネルギに変換する発電機に移送することである。
【0005】
[従来技術]
従来技術において、また、一般に知られているように、いくつかの海洋水力タービンの市場モデルを見ることができるが、これらは、ベッツの法則の概念に関連してそれに比例する機械力をもって、単位時間当たりで海水粒子の運動エネルギを捕捉して変換するものである。しかし、これらは、風力タービンの設計に基づいており、ブレードの数、形状及び配置の組合せにより、一定量の流体がブレード間の間隙を介して相互作用することなく流れることができるため、タービンは、流れのエネルギを全体的に捕集することはできず、また、流体構造に関連する大量のエネルギを捕集することもできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[技術的進歩]
本発明に係る流体エネルギ捕集ユニット(1)は、人類が利用できる豊富なエネルギ源の1つを形成するところの流体構造に関連するエネルギについて、その捕捉技術を始動させることを目的とするものであり、以下のような技術的な差異が設定された装置として開発された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
- ブレードの数、形状及び配置の構成において、タービンの軸及びエンベロープとともに、流線群に対して全体的に不透過であってそれらを課す射影を覆っており、前方領域の全体において、ブレードへの移動を誘導する経路が、タービンと直接接触する粒子のみならず、圧力、粘度、圧縮率、密度及び物質の状態を含む海水の化学組成と物理的属性によって特徴付けられる、水平方向のコントロールボリュームと呼ばれる上流構造の質量を構成するすべての粒子のエネルギを呼び出すための必須条件となる。
【0008】
- 先行技術における有効機械力Pの概念は、タービンによって覆われている範囲の、又は、管状のエンベロープの付属物を伴う場合には負荷区画の入口の断面の面積Aに比例しており、次式で与えられるが、
【数1】
これを、次式に置き換える。
【数2】
【0009】
ここで、この機械力の概念は、トルクと、タービンの角速度の積に比例しており、負荷区画の半径(Re)、タービンの半径(Rt)、及び、軸の基部の半径(Rx)を含む固有の諸元、並びに、流体の速度(v)、水の密度(ρ)、及び、流体構造の延長(c)によって決定される
【0010】
- タービンの軸の楕円形のキャップの形状において、負荷領域における断面が小さく、排出領域における断面が大きいことにより、粒子は、ブレードの端部に向かって半径方向に押し出される間に、結果として仕事領域内で加速されるものであり、抗力と増加した作用半径との間の積について、速度当たりのトルクの増加によって効率向上がもたらされる。
【0011】
- 軸方向の輪郭が楕円弧であるタービンブレードの態様において、負荷領域側が流体の方向に沿って始まり、排出領域側が流体の方向に対して垂直に終わることにより、流れに90°の回転を生じさせるものであり、これは、運動量保存の法則における反作用として、タービンの回転に有利な軸力の追加を意味する。
【0012】
流れの通常の方向における仕事区画内のトラフィックは、タービンの体積の増加に伴う通水断面の面積の低減に応じて、すでに加速されている。ただし、この方向の流速は、粒子の絶対速度の成分であって、流れがブレードの楕円弧の長い経路に沿って移動することによるものであり、これは、新しい加速度に、ひいては軸方向に変換され、タービンの回転をさらに促進する。
【0013】
- 寿命を犠牲にして機械的効率を高めることが意図されている場合には、ブレードの表面は粗くしてよく、一方、機械的効率を犠牲にして寿命を延ばすことが意図されている場合には、ブレードの表面は滑らかにすればよい。
【0014】
- 流れに対して垂直なタービンの自然で自律的な配置において、タービンは、海底の設置ベース又は水面の浮遊プラットフォームに固定された支持軸上で自由に回転するものである。この機能により、当該システムは、該当する場合には、潮汐振動に起因する流体についての変形例に適応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の主題である流体エネルギ捕集ユニット(1)がどのように構成されているかを、水平方向のコントロールボリュームとしての流体構造の革新的な概念とともに、十分かつ完全に視覚化するため、添付の非比例寸法の図面が、以下のように参照される。
【0016】
【
図1a】
図1aは、動作配置における流体エネルギ捕集ユニット(1)の全体を示す正面図である。
【0017】
【
図1b】
図1bは、動作配置における流体エネルギ捕集ユニット(1)の全体を示す背面図である。
【0018】
【
図1c】
図1cは、動作配置における流体エネルギ捕集ユニット(1)の全体を示す側面図である。
【0019】
【
図1d】
図1dは、動作構成における流体エネルギ捕集ユニット(1)の全体を示す斜視図である。
【0020】
【
図2】
図2は、流体エネルギ捕集ユニット(1)のタービン(2)及びエンベロープ(3)を強調して示す分解図である。
【0021】
【
図3】
図3は、流体の方向に沿って示すエンベロープ(3)の縦断面図であって、水平方向のコントロールボリュームの構成区画、すなわち、負荷(6)、仕事(7)及び排出(8)、並びに、流れがない自由区画(9)を強調して示す。仕事区画(7)は、ブレード(4)と楕円形のキャップの形状をした軸(5)とから構成されるタービン(2)を備える。
【0022】
【
図4】
図4は、
図5と比較するため、完全なタービン(2)と、エンベロープ(3)のセグメントを斜視図で示す。
【0023】
【
図5】
図5は、タービンの軸(5)に対応する部分と、エンベロープ(3)のセグメントを斜視図で示すものであり、流体の方向に沿って断面の面積を低減させる様子に留意されたい。
【0024】
【
図6】
図6は、直交正面図であって、まったく間隙がなく、流線群に対してタービンによって位置取りされ、軸を備えたブレードの数、形状及び配置によって構成された衝突領域、すなわち、流体構造に関連するエネルギを捕捉するための必須条件として流体に対する全体的な不透過性を示す。
【0025】
【
図7】
図7は、流線群に類似した平行光線の概念を用いて、タービンの不透過性を斜視図で示す。光のボリュームは、コントロールボリュームを象徴する。
【0026】
【
図8】
図8は、単に概念的に、設置状態における流体エネルギ捕集ユニット(1)におけるコントロールボリューム(10)を強調して示したもの、すなわち、運動エネルギが関連付けられている上流の流体における流体構造又は水塊の概念に関したものであり、運動エネルギは、惑星規模の自然の絶え間のない力の作用によって再生可能であり、
図1aに示した本発明のタービンの前面で遠近方向に形成された流線群(11)の自然な方向に垂直であって密に不透過な円形領域の直前で電気に変換される。
【0027】
【
図9】
図9は、カバーする範囲が角度(θ)である、軸(5)に固定された1枚のブレード(4)の正面図であって、
図12に示されたスキームの参照として、切断弧A-Bを線と点で強調して示す。
【0028】
【
図10】
図10は、軸(5)に固定された1枚のブレード(4)の輪郭を横方向の側面図で強調して示す。
【0029】
【
図11】
図11は、軸(5)に取り付けられた単一のブレード(4)の表面を縦方向の側面図で強調して示す。
【0030】
【
図12】
図12は、切断弧A-Bとして
図9で参照されたブレード(4)の軸方向の輪郭を、半径方向の位置に関係なく、平面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書に添付され、その不可欠な一部を形成する図面からも理解されるように、流体エネルギ捕集ユニットは、エンベロープ(3)の仕事区画(7)内に位置取りされた反動タービン(2)から構成されることを特徴とする。
【0032】
タービン(2)は、流体の断面平面に平行で完全な円形領域を射影する軸とブレードで構成された水中の回転機械であり、上流の流体(10)の運動量の変動と、仕事区画を通過する流体の粒子の通過時間との間の比率の結果として生じる力によって作動し、このプロセスで捕集された機械エネルギを水中又は水上のプラットフォームにある発電機に移送する。
【0033】
回転の方向は、ユニットごとの設計で決定されればよいが、エネルギ捕捉の最大効率を保証するためには一意として、もっぱら時計回り又はもっぱら反時計回りである必要があり、可逆性は、非効率的となる。
【0034】
楕円形のキャップ形状である軸(5)は、滑らかな表面を有するとともに、ブレード(4)を支持して各ブレードからトルクの寄与を受ける。
【0035】
ブレード(4)は、衝突領域の全体、すなわち、流体の断面平面に平行な直径dtを有するタービンの円形領域の射影を完成させる。ここで、ブレードの数は、円周と各ブレードのアーチの角度(θ)(
図9参照)の比率であり、次式で表され、
【数3】
ここで、nはブレードの数であり、n ∈ Nである。
【0036】
この特徴により、流体中で運搬される海水の各粒子をして、その経路を軸の接線方向に偏向させ、逆方向へのブレードの反動を促す。
【0037】
ブレードの軸方向の輪郭は、中心角90°の楕円弧である(
図12参照)。半径r
1と半径r
2は半径方向の位置に応じて変化し、半径r
1は軸からタービンの端部まで規則的に増加する。一方、半径r
2は、逆に、軸上のr
2 maxからr
2 minまで、タービンの端部に向かって半径方向の線の50%へ(
図11参照)、タービンの個々の部品や接続部の構成材料の機械的強度によって決定される曲線を描いて、減少する。
【0038】
例えばナイフのようなブレードは、内部構造と表面の間における構成材料の機械的強度によって決定される厚さを有し、求められる効果に応じて変化する。
【0039】
タービンは、連続環境を扱う力学の科学分野の下、スイスの数学者ダニエル・ベルヌーイが述べたように、エネルギ保存の法則を満たす付属物としてエンベロープが設けられている。エンベロープは、直径dcと全延長eeを備えた円筒状の管であり、その内側では負荷区画(6)が角度αをもって先細りになっており、低減用の延長erを介して直径dcを仕事直径dτに低減させる。仕事区画(7)は、タービン(2)を保護し、仕事用の延長eτを有する。自由区画(9)は、流れのないエンベロープの内部の部位であり、仕事区画のために負荷区画の直径の低減を課すことになる。排出区画(8)は、すでに仕事を行った流れを排出へと導き、流体へ戻す。
【0040】
流体エネルギ捕集ユニットは、以下の点に留意しつつ、完全にスケール調整可能である。
・満たすべき個々の電力目標又は標準化された発電機の定格電力。
・設置場所に関連する海洋調査結果。
・構成材料の機械的強度。
【0041】
次のルールに達している限り、寸法は自由である。
・負荷区画(6)の入力直径が仕事区画(7)の直径よりも大きいこと。
【数4】
・低減用の延長は、低減用の角度と負荷区画(6)の入力直径の間の関数となること。
【数5】
・仕事区画(6)の直径は、タービンがエンベロープ(3)に触れることなく自由に回転できるのに十分なだけ、タービン(2)の直径よりもわずかに大きいこと。
【数6】
【0042】
[結語]
本発明は、流体エネルギ捕集ユニットとして説明され、かつ、図示された、一つのエネルギ捕集ユニットに関するものであり、発明の特許を規定する基準に完全に適合し、市場における重要なギャップを埋め、公開されたこと、その結果として、固有の権利に値すべきものである。