(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ピラゾール誘導体の肺線維症治療剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20240816BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240816BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240816BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240816BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240816BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P11/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P31/12
A61P31/14
(21)【出願番号】P 2022562440
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 KR2021003537
(87)【国際公開番号】W WO2021210799
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0044598
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0036863
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517423811
【氏名又は名称】アプタバイオ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APTABIO THERAPEUTICS INC.
【住所又は居所原語表記】Tower-A0504,13,Heungdeok 1-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 16954,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スン・ファン・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ス・ジン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンキュン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ユ-キュン・ゴ
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03628669(EP,A1)
【文献】Oxidative Medicine and Cellular Longevity,Volume 2015,2015年,p.1-10
【文献】Pharmacology,102 (3-4),2018年,p.180-189
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4439
A61P 11/00
A61K 45/00
A61P 43/00
A61P 31/12
A61P 31/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の化合物またはこの薬学的に許容可能な塩を含む、肺線維症予防または治療用薬学的組成物:
[化学式1]
【化1】
(前記化学式1において、Rは炭素数1から
6の直鎖型または分岐型アルキル基である)。
【請求項2】
前記化学式1の化合物は
3‐フェニル‐4‐メチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールもしくはこの塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐エチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールもしくはこの塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐ノルマルプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールもしくはこの塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐イソプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールもしくはこの塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐ノルマルブチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールもしくはこの塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐tert‐ブチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールもしくはこの塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐ノルマルペンチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールもしくはこの塩酸塩;または
3‐フェニル‐4‐ノルマルヘキシル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールもしくはこの塩酸塩
である、請求項
1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記化学式1の化合物は、3‐フェニル‐4‐ノルマルプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはこの塩酸塩である、請求項
2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記肺線維症は、肺炎症性線維化疾患、慢性閉鎖性肺線維症(chronic obstructive pulmonary disease combined pulmonary fibrosis;COPD combined pulmonary fibrosis)、特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis;IPF)または喘息によって誘発される、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記肺炎症性線維化疾患は、ウイルス性肺炎(viral pneumonia)、バクテリア性肺炎(bacterial pneumonia)、真菌性肺炎、マイコプラズマ性肺炎(mycoplasmal pneumonia)、過敏性肺炎(hypersensitivity pneumonitis)、吸入性肺炎(aspiration pneumonia)、間質性肺炎(interstitial pulmonary disease)、塵肺症(pneumoconiosis)のいずれか一種またはこの組み合わせによって誘発される、請求項
4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
ウイルス性肺炎は、アデノウイルス(adenovirus)、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)、パラインフルエンザウイルス(parainfluenza virus)、ライノウイルス(rhinovirus)、水痘ウイルス(varicella Zoster Virus)、麻疹ウイルス(measle virus)、RSウイルス(respiratory syncytial virus)、デングウイルス(Dengue virus)、HIV(human immunodeficiency virus)、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(coronavirus)、SARSコロナウイルス(severe acute respiratory syndrome‐related coronavirus;SARS‐CoV)、SARSコロナウイルス2(severe acute respiratory syndrome‐related coronavirus 2;SARS‐CoV2)、MERSコロナウイルス(middle east respiratory syndrome coronavirus;MERS‐CoV)、またはこれらのウイルスの変種ウイルスから選択されるウイルスにより誘発される、請求項
4に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記肺線維症は特発性肺線維症によるものである、請求項
4に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体または賦形剤をさらに含む、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記化学式1の化合物は第2治療剤とともに使われ、前記第2治療剤は抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、またはこれらの任意の組み合わせである、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年4月13日付韓国特許出願第10‐2020‐0044598号及び2021年3月22日付韓国特許出願第10‐2021‐0036863号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明は、肺線維症の予防または治療に有用なピラゾール誘導体、この製造方法、及びこの薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
肺線維症(pulmonary fibrosis;PF)は一種の慢性間質性肺疾患として、リンパ球、大食細胞など炎症細胞の肺間質浸潤、線維芽細胞増殖及び線維性結合組織の肺間質沈積の特徴を示す。肺線維症は、各種肺内外的病因によって発生し、慢性肺損傷または疾患が末期まで進展された結果として人類の健康を深刻に脅威している。
【0004】
肺線維症の病因には、免疫機能異常、ウイルスまたは細菌感染、薬物及び化学品、放射線、空気汚染(スモッグ、タバコの煙、粉じんなど)などの要因が含まれる。
【0005】
前記のように、肺線維化の明確な理由を診断することができる患者もいるが、その原因を突き止めることができない場合もあるが、このような場合を特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis;IPF)と言う。特発性肺線維症は肺実質の線維化が段々進む間質性肺炎の一種で、診断後数年内の呼吸不全で死亡する危険が高く、予後が非常に不良なものとして知られている。5年生存率が約20%で肺癌と類似する。また、肺線維化は高齢化になりながら発病率と有病率が早く増加している。
【0006】
肺線維症は、病理的、生理的過程が複雑であるが、初期に肺炎症を中心として大量の炎症細胞が浸潤して肺胞壁が慢性的に厚くなり、中期/末期にコラーゲンのような細胞外基質要素の線維芽細胞(fibroblast)による過剰沈着によって発生される肺組織の過成長、肺胞変形、硬化及び傷あとによって正常肺組織構造が破壊されて機能が喪失される。
【0007】
線維芽細胞は炎症と組織損傷部位への免疫細胞募集(recruitment)に役立つ。さらに、線維芽細胞は多くの炎症性サイトカインを生成して、それに反応する。したがって、線維芽細胞は慢性炎症に寄与することがあって、逆に炎症性サイトカインは線維芽細胞の筋線維芽細胞への転換を促進させて線維症を促進する。したがって、肺組織の負傷や炎症は肺線維症につながることがある。
【0008】
肺線維症によって線維化が進行された肺組織を復旧できる方法は、肺移植が唯一であり、診断後5年の生存率が43%に過ぎない。
【0009】
肺線維化治療剤を開発するために多くの臨床的研究が行われているが、相変らず肺線維化治療剤はなく、一次的にステロイドや細胞毒性薬物である免疫抑制剤が主に利用される。ステロイドと細胞毒性薬物の中でステロイドが優先的に使われ、現在ステロイドとアザチオプリン(azathioprine)またはシクロホスファミド(cyclophosphamide)の併合療法を利用している。
【0010】
また、肺線維症治療剤として許可された薬物として、ピルフェニドン(pirfenidone)とニンテダニブ(nintedanib)が唯一である。ピルフェニドンは軽微な治療効果を示し、約2.4g/日(day)の非常に高用量で使われるが、生存向上結果はほとんどないか、または有意でないと報告され、胃膓障害(吐き気、下痢、消化不良)、皮膚障害(感光性発疹)及び代謝及び栄養障害(食欲不振、食欲減退)などの副作用がひどくて、患者の生の質を落と傾向があって、肝臓の機能を弱化させるので持続的な投薬が難しい。ニンテダニブは200ないし400mg/日(day)の用量で利用され、軽症から重症特発性肺線維症の急性悪化発生頻度を減らすと報告されたが、多くの副作用及び胃腸副作用のため持続的投薬が難しい。
【0011】
したがって、病症の進行を緩和ではなく、根本的な原因の治療が可能な新しい薬物の開発が切実な状況である。
【0012】
肺線維化の発病原因に対して多くの研究が行われているが、相変らず発病機構は不明であって、治療剤の開発が困難である中、生体内の酸化還元恒常性変化によって過量の活性化酸素発生による酸化ストレスが肺線維化が進行及び悪化に重要な役目をするという研究結果が報告されている。
【0013】
酸化ストレス(oxidative stress)は生体分子、細胞、組織に対する活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)生産と抗酸化防御機構の均衡が崩れることで、活性酸素種の生産が相対的に過多になって誘発される組織損傷を指す。特に、肺組織で発生される酸化ストレスは、肺線維化を誘発及び悪化させることが報告されている。肺線維化が進められる患者の肺組織でTGF‐β刺激は、活性酸素種の生成増加を誘発し、線維化に重要なコラーゲン(collagen)とα‐SMA(α‐smooth muscle actin)の発現が増加されることが報告されている。特に、特発性肺線維症患者の肺組織では活性酸素種によって肺線維症が悪化されることが報告されている。
【0014】
RNAウイルスまたはDNAウイルス感染によっても肺炎及び肺線維化を通じて致命的な肺損傷を誘発して死亡に至ったりする。一本鎖ウイルス(corona virus、Influenza virus、Respiratory syncytial virus、Rhinovirus、Dengue virus、HIVなど)、及びDNAウイルス(adenovirus、vaccinia virus、Herpes simplex virusなど)が細胞内に侵入してエンドソーム(endosome)を形成すれば、活性酸素種が発生してウイルス複製を促進し、急激に増幅されたウイルスは肺組織へ侵透して炎症と線維化を促進しながら肺損傷を誘発すると報告された。
【0015】
現在、ウイルス感染の際に、人体内での速い増幅によって急速な肺損傷を引き起こして治療を難しくしているところ、ウイルス感染及び速い増幅によって誘発される肺損傷を治療及び緩和するために、活性酸素種の発生を抑制する治療剤と抗ウイルス剤を併用して使えば、ウイルス性肺炎及び肺線維症をより効果的に治療することができる。この時、併用可能な抗ウイルス剤としては、レムデシビル(Remdesivir)、リトナビル(Ritonavir)、ロピナビル(Lopinavir)、ファビピラビル(Favilavir)などが代表的な薬物である。
【0016】
肺線維化が進行される患者の肺組織でTGF‐β刺激は活性酸素種生成増加を誘発し、線維化に重要なコラーゲン(collagen)とα‐SMA(a‐smooth muscle actin)の発現が増加されることが報告され、特発性肺線維症患者の肺組織で活性酸素種によって肺線維症が悪化されることが報告されている。
【0017】
一方、如何なる先行文献でも本発明のピラゾール系化合物が肺線維症の予防及び治療効果があると開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】韓国登録特許10‐1280160号
【文献】韓国公開特許10‐2019‐0122806号
【文献】韓国公開特許10‐2019‐0136079号
【非特許文献】
【0019】
【文献】Gabriel Laghlali、et al.Respiratory 2019、13629。
【文献】Eunice E.To et al.Nature communications、8(69)、1‐17.
【文献】Alessandro G.Fois、Panagiotis Paligiannis et al.、Respir Res.2018、19:51.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、化学式1の化合物またはこの薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0021】
本発明は、化学式1の化合物またはこの薬学的に許容可能な塩を含む、活性酸素種生成を効果的に抑制する薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0022】
本発明は、化学式1の化合物またはこの薬学的に許容可能な塩を含む、肺線維症治療または予防のための薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0023】
本発明は、化学式1の化合物またはこの薬学的に許容可能な塩を個体に投与して肺線維症の予防または治療する方法を提供することを目的とする。
【0024】
本発明は、化学式1の化合物またはこの薬学的に許容可能な塩の肺線維症の予防または治療用途を提供することを目的とする。
【0025】
本発明は、化学式1の化合物またはこの薬学的に許容可能な塩及び抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤またはこれらの任意の組み合わせをさらに含む肺線維症治療及び予防のための薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0026】
本発明は、化学式1の化合物またはこの薬学的に許容可能な塩及び抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤またはこれらの任意の組み合わせをさらに個体に投与して肺線維症の予防または治療する方法を提供することを目的とする。
【0027】
本発明は、化学式1の化合物またはこの薬学的に許容可能な塩及び抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤またはこれらの組み合わせをさらに含んで肺線維症の予防または治療用途を提供することを目的とする。
【0028】
本発明は、化学式1の化合物またはこの薬学的に許容可能な塩を含む抗ウイルス剤を提供することを目的とする。
【0029】
本発明は、化学式1の化合物またはこの薬学的に許容可能な塩を個体に投与してウイルス性疾患の予防または治療する方法を提供することを目的とする。
【0030】
本発明は、化学式1の化合物またはこの薬学的に許容可能な塩を含んでウイルス性疾患の予防または治療用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前記目的を達成するために、本発明では下記化学式1で表されるピラゾール系化合物、またはこの薬剤学的に許容可能な塩を含む肺線維症またはウイルス性疾患の予防及び改善または治療用薬学組成物を提供する。
【0032】
[化学式1]
【化1】
(前記化学式1において、Rは炭素数1ないし10の直鎖型または
分岐型アルキル基である。)
【発明の効果】
【0033】
本発明によるピラゾール系化合物、またはこの薬剤学的に許容可能な塩は肺で生成される活性酸素種生成を効果的に抑制することができるので、特別な副作用なく酸化ストレスに誘発される肺線維症の予防または治療に有用に使われることができる。
【0034】
また、本発明によるピラゾール系化合物、またはこの薬剤学的に許容可能な塩は抗ウイルス能を持つので、ウイルス性疾患の予防または治療に有用に使われることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】人間肺線維芽細胞(NHLF)にPMA刺激で誘導された活性酸素種の発現が化合物1を処理した時に効果的に抑制される結果を示す。
【
図2】TGF‐β1による人間肺線維芽細胞の筋線維細胞分化の時化合物1によってαSMAの発現が抑制される結果を示す。
【
図3】TGF‐β1による人間肺線維芽細胞の筋線維細胞分化の時化合物1によってコラーゲンIの発現が抑制される結果を示す。
【
図4】人間肺線維芽細胞にLPS処理で誘導されたIL‐1β発現が化合物1を処理した時効果的に抑制される結果を示す。
【
図5】ブレオマイシン(BLM)投与による肺線維症動物モデルでニンテダニブ(Nintedanib)または化合物1を処理した時の肺胞(alveolar)及び細気管支(bronchiole)のH&E染色写真で、化合物1処理時の肺胞及び細気管支に侵透する免疫細胞の量が減少する結果を示す。
【
図6】ブレオマイシン(BLM)投与による肺線維症動物モデルでニンテダニブ(Nintedanib)または化合物1を処理した時の細気管支(bronchiole)のコラーゲン沈着染色写真で、化合物1処理時にコラーゲン沈着が減少する結果を示す。
【
図7】ブレオマイシン(BLM)投与による肺線維症動物モデルでニンテダニブ(Nintedanib)または化合物1を処理した時のαSMAの染色写真で、化合物1処理時のαSMAの発現減少を示す。
【
図8】ブレオマイシン(BLM)投与による肺線維症動物モデルでニンテダニブ(Nintedanib)または化合物1を処理した時のコラーゲンI染色写真で、化合物1処理時のコラーゲンIの発現減少を示す。
【
図9】ブレオマイシン(BLM)投与による肺線維症動物モデルでニンテダニブ(Nintedanib)または化合物1を処理した時の肺線維化度合いを改善されたアシュクロフト点数で定量化した結果で、化合物1を処理時にニンテダニブに比べて肺線維症を効果的に改善することを示す。
【
図10】人間肺上皮細胞で化合物1を処理した時に抗ウイルス効能に優れ、細胞毒性が低いことを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明について具現例を挙げて詳細に説明する。
【0037】
ただし、これは例示として提示するものであって、これによって本発明が制限されることなく、本発明は後述する請求項の範疇によって定義されるだけである。また、本発明を実施するに必要な構成であっても通常の技術者が公知技術から容易に実施できる構成については具体的な説明を省略する。
【0038】
本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は、通常的や辞書的な意味で限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。
【0039】
本発明で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使われたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明らかに異なる意味を持たない限り、複数の表現を含む。本発明において、「含む」または「持つ」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0040】
肺線維症は肺の炎症による炎症細胞の肺間質浸潤、線維芽細胞増殖及び線維性結合組織の肺間質沈着で肺実質の線維化によるものであって、正常な肺組織構造が破壊されて肺機能が喪失される。すなわち、肺線維症は各種肺内外的病因によって発生し、慢性肺損傷または疾患が末期まで進展された結果で、最近の高齢化傾向に合わせて発病率と有病率が速く増加している。最近は特にその発病原因がわからない特発性肺線維症が問題となっている。
【0041】
肺線維症によって線維化が進んだ肺組織を復旧できる方法は、肺移植が唯一で、肺線維症に許可された薬物としては、ピルフェニドン(Pirfenidon)及びニンテダニブ(Nintedanib)が唯一であるが、二つの薬物はいずれも多くの副作用及び胃膓障害のため持続的投薬が難しい問題がある。
【0042】
したがって、肺線維症の治療方法は、ステロイドまたは免疫抑制剤を使って症状を緩和させる対症療法が一般的であるが、根本的な治療法が必要である。
【0043】
本発明者らは肺組織の酸化ストレス発生を効果的に抑制すれば肺線維化疾病治療剤を開発できるという点に着目して研究した結果、本発明のピラゾール誘導体がブレオマイシン投与による肺損傷を減らし、αSMA及びコラーゲンIの蓄積による肺線維化を抑制して肺線維症が減少することを見つけ出し、肺線維症治療剤として利用することができることを確認して本発明を完成した。
【0044】
ここで、本発明では化学式1で表されるピラゾール系化合物、またはこの薬剤学的に許容可能な塩から選択された1種以上の化合物を含む肺線維症を予防または治療できる薬学的組成物を提供する。
【0045】
また、本発明は化学式1で表されるピラゾール系化合物、またはこの薬剤学的に許容可能な塩から選択された1種以上の化合物を含む特発性肺線維症を予防または治療できる薬学的組成物を提供する。
【0046】
本発明で使われるピラゾール系化合物は下記化学式1で表される。
【0047】
[化学式1]
【化2】
(前記化学式1において、Rは炭素数1ないし10の直鎖型または
分岐型アルキル基である。)
【0048】
本発明の薬学組成物に含有されるピラゾール系化合物の薬剤学的に許容可能な塩は親化合物(parent compounds)の生物学的有効性及び特性を保有し、1回用量(dosage)が投与される時、生物学的にまたは他の方向に有害でない塩を意味することができる。また、医薬業界で通常使われる塩を意味する。
【0049】
具体的には、薬剤学的に許容可能な付加塩は無機及び有機塩基から製造されることができる。無機塩基から誘導された塩は、これに制限されるものではないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、及びマグネシウム塩を含むことができる。有機塩基から誘導された塩は、これに制限されるものではないが、一次、二次及び三次アミン;天然的に発生する置換されたアミンを含む置換されたアミン;及びイソプロピルアミン(isopropylamine)、トリメチルアミン(trimethylamine)、ジエチルアミン(diethylamine)、トリエチルアミン(triethylamine)、トリプロピルアミン(tripropylamine)、エタノールアミン(ethanolamine)、2‐ジメチルアミノエタノール(2‐dimethylaminoethanol)、トロメタミン(tromethamine)、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン(procaine)、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン(choline)、ベタイン(betaine)、エチレンジアミン(ethylendiamine)、グルコサミン(glucosamine)、N‐アルキルグルカミン(N‐alkylglucamine)、テオブロミン(theobromine)、プリン、ピペラジン、ピペリジン、及び/またはN‐エチルピペリジンを含むサイクリックアミンの塩を含むことができる。
【0050】
他のカルボン酸誘導体、具体的には、カルボキサミド(carboxamides)、低級アルキルカルボキサミド、ジ(低級アルキル)カルボキサミドなどを含むカルボン酸アミドも本発明の実施において有用であることも理解しなければならない。
【0051】
さらに、薬学的に許容可能な酸付加塩は、無機及び有機酸から製造されることができる。無機酸から誘導された塩は、塩酸、ブロム酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、ヨード酸、酒石酸などを含む。有機酸から誘導された塩は、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、カルボン酸、バニリン酸、ハイドロヨウ素酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸(malic acid)、マロン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸(maleic acid)、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、けい皮酸(cinnamic acid)、マンデル酸(mandelic acid)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p‐トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸及び/またはサリチル酸などを含むことができるが、これに制限されない。
【0052】
前記薬剤学的に許容可能な塩は塩酸塩であってもよい。
【0053】
本発明の薬学的組成物に含有される前記化学式1で表されるピラゾール系化合物またはこの薬剤学的に許容可能な塩を具体的に例示すれば下記のとおりである。
3‐フェニル‐4‐メチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはこの塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐エチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはこの塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐ノルマルプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはこの塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐イソプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはこの塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐ノルマルブチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはこの塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐tert‐ブチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはこの塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐ノルマルペンチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはこの塩酸塩;
3‐フェニル‐4‐ノルマルヘキシル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはこの塩酸塩;
具体的には、本発明の薬学組成物に含有されるピラゾール系化合物は、3‐フェニル‐4‐ノルマルプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールまたはこの塩酸塩であってもよい。
【0054】
本発明の化学式1の化合物は活性酸素種の生成を抑制することができる。
【0055】
本発明において、酸化ストレス(oxidative stress)は、生体分子、細胞、組織に対する活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)の生産と抗酸化防御機構の均衡が崩れることで活性酸素種の生産が相対的に過多になって誘発される組織損傷を指す。ここで「活性酸素種(reactive oxygen species)」は活性化酸素、活性酸素、活性化酸素種と言及されることができ、同じ物質を意味する。
【0056】
本発明のピラゾール系化合物、特に3‐フェニル‐4‐ノルマルプロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールの塩酸塩(化合物1)は、人間肺上皮細胞で効果的に活性酸素種を減少させ、肺線維芽細胞を筋線維細胞に分化させる場合、筋線維細胞分化マーカーであるαSMA及びコラーゲンIの発現を効果的に抑制した。
【0057】
また、ブレオマイシン投与肺線維症動物モデル実験で確認したように、既存の肺線維症の治療剤として許可されたニンテダニブに比べて本発明の化合物は肺組織内の炎症細胞の浸透を減少させ、肺上皮細胞肥大の減少、肺構造の変形低下及び非正常的な組織沈着部位を減少させた。
【0058】
本発明の化合物は、ニンテダニブに比べて肺組織でコラーゲンI及びaSMAの発現及び蓄積を減少させ、肺組織内の活性酸素種の発現も減少させた。このような結果に基づいて改善しされたアシュクロフト点数で線維証の深刻度を定量化した時、既存の肺線維症の治療剤として許可されたニンテダニブに比べて著しい肺線維症改善効果を示した。
【0059】
したがって、本発明の化合物は人間肺細胞及び肺線維症モデルで肺組織内の活性酸素種を抑制して炎症反応を抑制するだけでなく、コラーゲンI及びαSMAの発現及び蓄積を減少させて、肺線維化を予防したり緩和する効果を確認した。
【0060】
肺線維症は肺炎症性線維化疾患、慢性閉鎖性肺線維症(chronic obstructive pulmonary disease combined pulmonary fibrosis;COPD combined pulmonary fibrosis)、特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis;IPF)または喘息によって誘発されることがある。
【0061】
また、肺線維症の主原因と言える肺炎は、ウイルス性肺炎、バクテリア性肺炎、真菌性肺炎、過敏性肺炎(hypersensitivity pneumonitis)、吸入性肺炎(aspiration pneumonia)、間質性肺炎(interstitial pulmonary disease)、塵肺症(pneumoconiosis)などによって誘発されることがある。
【0062】
前記ウイルス性肺炎は、アデノウイルス(adenovirus)、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)、パラインフルエンザウイルス(parainfluenza virus)、ライノウイルス(rhinovirus)、水痘ウイルス(varicella Zoster Virus)、麻疹ウイルス(measle virus)、RSウイルス(respiratory syncytial virus)、デングウイルス(Dengue virus)、HIV(human immunodeficiency virus)、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(coronavirus)、SARSコロナウイルス(severe acute respiratory syndrome‐related coronavirus;SARS‐CoV)、SARSコロナウイルス2(severe acute respiratory syndrome‐related coronavirus 2;SARS‐CoV2)、MERSコロナウイルス(middle east respiratory syndrome coronavirus;MERS‐CoV)、またはこれらのウイルスの変種ウイルスによって発生されることができる。
【0063】
本発明の薬学的組成物は、化学式1の化合物またはこの塩の他にさらに抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎剤またはこれらの任意の組み合わせを第2治療剤としてさらに含むことができる。
【0064】
具体的に、第2治療剤で含まれる抗生剤は、アミノグリコシド(aminoglycoside)系抗生剤の中で、ゲンタマイシン(gentamycin)、カナマイシン(kanamycin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、アミカシン(amikacin)、ネオマイシン(neomycin)など;マクロライド(macrolide)系抗生剤の中で、エリスロマイシン(erythromycin)、アジスロマイシン(azithromycin)、クラリスロマイシン(clarithromycin)など;ベータラクタム(beta‐lactam)系抗生剤の中で、ペニシリン(penicillin)、セファロスポリン(cephalosporin)、カルバペネム(carbapenem)、モノバクタム(monobactam)など;リンコマイシン(lincomycin)系抗生剤としてクリンダマイシン(clindamycin)など;オキサゾリジノン(oxazolidinone)系抗生剤としてリネゾリド(linezolid)など;キノロン(quinolone)系抗生剤としてシプロフロキサシン(ciprofloxacin)、 レボフロキサシン(lebofloxacin)、モキシフロキサシン(moxifloxacin)、フルオロキノロン(fluoroquinolone)など;テトラサイクリン系(tetracycline)抗生剤としてテトラサイクリン(tetracycline)、ドキシサイクリン(doxycycline)、チゲサイクリン(tigecycline)など;スルホンアミド(sulfonamide)系抗生剤としてトリメトプリム/スルファメトキサゾール(trimethoprime/sulfamethoxazole;TMX/SMX)またはこの組み合わせである。
【0065】
第2治療剤で含まれる抗ウイルス剤は、チオセミカルバゾン(thiosemicarbazone)、メチサゾン(metisazone)、アシクロビル(acyclovir)、レムデシビル(remdecivir)、リトナビル(ritonavir)、ロピナビル(lopinavir)、ファビピラビル、イドクスウリジン(idoxuridine)、ビダラビン(vidarabine)、リバビリン(ribavirin)、ガンシクロビル(ganciclovir)、ファムシクロビル(famciclovir)、バラシクロビル(valaciclovir)、シドフォビル(cidofovir)、バルガンシクロビル(valganciclovir)、ブリブジン(brivudine)、リバビリン(ribavirin)、リマンタジン(rimantadine)、トロマンタジン(tromantadine)、ホスカルネット(foscarnet)、サキナビル(saquinavir)、インジナビル(indinavir)、ネルフィナビル(nelfinavir)、アンプレナビル(amprenavir)、ホスアンプレナビル(fosamprenavir)、アタザナビル(atazanavir)、チプラナビル(tipranavir)、ジドブジン(zidovudine)、ジダノシン(didanosine)、ザルシタビン(zalcitabine)、スタブジン(stavudine)、ラミブジン(lamivudine)、アバカビル(abacavir)、テノホビルジソプロキシル(tenofovir disoproxil)、アデホビルジピボキシル(adefovir disoproxil)、エムトリシタビン(emtricitabine)、エンテカビル(entecavir)、ネビラピン(nevirapine)、デラビルジン(delavirdine)、エファビレンツ(efavirenz)、ザナミビル(zanamivir)、オセルタミビル(oseltamivir)、イノシンプラノベクス(inosine pranobex)、プレコナリル(pleconaril)、エンフビルチド(enfuviritide)またはこの組み合わせである。
【0066】
第2治療剤で含まれる抗真菌剤は、アルリルアミン、テルビナフィン(terbinafine)、5‐フルオロシトシン(5‐fluoro cytosine)、フルコナゾール(fluconazole)、イトラコナゾール(itraconazole)、ケトコナゾール(ketoconazole)、ラブコナゾール(ravuconazole)、ポサコナゾール( posaconazole);ボリコナゾール(voriconazole)、カスポファンギン(caspofungin)、ミカファンギン(micafungin)、アニデュラファンギン(Anidulafungin)、アムホテリシンB(Amphotericin B)、 アムホテリシンB脂質複合体(amphotericin B lipid complex;ABLC)、アムホテリシンBコロイド性分散液(amphotericin B colloidal dispersion ABCD)、リポソームアムホテリシンB(liposome‐amphotericin B;L‐AMB);リポソームニスタチン(liposome nystatin)、グリセオフルビン(griseofulvin)またはこの組み合わせである。
【0067】
本発明の化学式1の化合物は多様なウイルスに対する抗ウイルス能を持つので、本発明の化合物はそれ自体で抗ウイルス剤として使われることができる。したがって、本発明の化学式1の化合物は、ウイルス性疾患の予防または治療に効果的である。前記ウイルス性疾患は、アデノウイルス(adenovirus)、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)、パラインフルエンザウイルス(parainfluenza virus)、ライノウイルス(rhinovirus)、水痘ウイルス(varicella Zoster Virus)、麻疹ウイルス(measle virus)、RSウイルス(respiratory syncytial virus)、デングウイルス(Dengue virus)、HIV(human immunodeficiency virus)、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(coronavirus)、SARSコロナウイルス(severe acute respiratory syndrome‐related coronavirus;SARS‐CoV)、SARSコロナウイルス2(severe acute respiratory syndrome‐related coronavirus 2;SARS‐CoV2)、MERSコロナウイルス(middle east respiratory syndrome coronavirus;MERS‐CoV)、またはこれらのウイルスの変種ウイルスによって誘発されることがあるが、これに制限されない。特に、本発明の化合物1はSARAコロナウイルス2(SARS‐CoV2)の増殖を効果的に抑制することができるので、これと係るウイルスのSARS‐CoV、MERS‐CoVまたはこれらのコロナウイルスの変種ウイルスの増殖も抑制することができる。
【0068】
本発明の薬学的組成物は本発明の効果を害しない範囲内で薬学的に許容可能な担体を含むことができる。
【0069】
前記「薬学的に許容される担体」は当業者に公知されたように、任意の、及び全ての種類の溶媒、分散媒質、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(抗バクテリア剤または航真菌剤)、等張化剤、希釈剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、安定化剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、染料など、及びその組み合わせを含む。任意の通常の担体が活性成分と常用的ではない場合を除いては、治療または製薬組成物での使用が考慮される。
【0070】
前記希釈剤は、未結晶セルロース、ラクトースモノハイドレート、ラクトース無水物、乳糖、澱粉、マンニトール、カルボキシメチルセルロース、ソルビトール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0071】
崩壊剤は低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカメロースナトリウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、F‐melt、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0072】
結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニル酢酸、ポビドン、ポリビニルピロリドン、コポビドン、マクロゴール、ラウリル硫酸ナトリウム、硬質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウムまたはマグネシウムメタシリケートアルミネートのような珪酸塩誘導体、リン酸水素カルシウムのようなリン酸塩、炭酸カルシウムのような炭酸塩、アルファー化デンプン、アカシアガムのようなガム類、ゼラチン、エチルセルロースのようなセルロース誘導体、及びこれらの混合物からなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0073】
潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、二酸化珪素、タルク、硬質無水ケイ酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0074】
pH調節剤は、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エーテル酸ナトリウム、りんご酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸(シトル酸)のような酸性化剤とアンモニア水、炭酸ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、三塩基カルシウムリン酸塩のような塩基性化剤などを使うことができる。
【0075】
酸化防止剤は、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムなどを使うことができる。
【0076】
他にも着色剤、香料の中で選択された多様な添加剤として薬学的に許容可能な添加剤を選択使用して本発明の製剤を製剤化することができる。
【0077】
本発明において、添加剤の範囲が前記添加剤を利用することに限定されるものではなく、前記添加剤を選択することで通常範囲の用量を含有して製剤化することができる。
【0078】
本発明による薬剤学的組成物は、通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ及びエアロゾルなどの経口形剤形、外用剤、座剤または滅菌注射溶液の形態で剤形化して利用されることができる。
【0079】
本発明の一側面において、前記有効成分は薬学組成物の総重量を基準にして0.00001ないし100重量%、0.0001ないし95重量%、または0.001ないし90重量%範囲で含有された肺線維症の予防、改善または治療用薬学組成物である。
【0080】
本発明による肺線維症の予防または治療剤において、前記化学式1で表されるピラゾール系化合物またはこの薬剤学的に許容される塩の投与量は、患者の年齢や体重、症状、投与経路などによって適切に変更することが可能である。
【0081】
本発明の化学式1で表されるピラゾール系化合物またはこの薬剤学的に許容される塩の投与量は、0.00001mg/kg/日~2000mg/kg/日、0.0001mg/kg/日ないし1000mg/kg/日、0.001mg/kg/日ないし800mg/kg/日、0.001mg/kg/日ないし500mg/kg/日、0.001mg/kg/日ないし100mg/kg/日、または0.001mg/kg/日ないし80mg/kg/日または0.01mg/kg/日ないし70mg/kg/日である。
【0082】
本発明の化学式1で表されるピラゾール系化合物またはこの薬剤学的に許容される塩の含量は、単位剤形当たり0.00001ないし100重量 %、0.0001ないし95重量%、0.0001ないし90重量 %、0.001ないし70重量 %または0.001ないし50重量%である。
【0083】
本発明の化学式1で表されるピラゾール系化合物またはこの薬剤学的に許容される塩の投与濃度は、0.0001ないし500μM、0.001ないし300μM、0.001ないし150μM、0.001ないし130μM、0.001ないし100μM、0.001ないし80μMまたは0.01ないし70μMである。
【0084】
本発明の薬学的組成物は一般的な経路を通じて投与されることができるが、具体的には筋肉内、脊髓康内、消化器内、心血管内、腎臓内、または静脈内投与用で製剤化されることができる。製剤化方法は当業者に公知された通常の方法を利用する。
【0085】
通常的な筋肉内または脊髓康内投与用組成物は、例えば、活性成分とデキストロースまたは塩化ナトリウム、またはデキストロース及び塩化ナトリウムを含有する滅菌された等張水溶液からなることができるが、これに制限されない。他の例は、乳酸点滴注射液(lactated Ringer’s injection)、乳酸点滴+デキストロース注射液、ノルモゾル(Normosol‐M)及びデキストロース、イソレイトE(Isolyte E)、アシル化された点滴注射液などがあるが、これに制限されない。選択的に、ポリエチレングリコールのような共溶媒;エチレンジアミンテトラ酢酸のようなキレート化剤;ピロ亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulphite)のような酸化防止剤を本製剤に含ませることができるが、これに制限されない。選択的に、溶液は冷凍乾燥されてもよく、その後、投与直前に適当な溶媒で再構成されることができるが、これに制限されない。
【0086】
本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記実施例は本発明をより容易に理解させるために提供されるものであって、これらの実施例によって本発明の範囲が限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0087】
<合成例1> 3‐フェニル‐4‐エチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールの合成
【0088】
【0089】
丸底フラスコに2‐エチル‐3‐オキソ‐3‐フェニルプロピオン酸エチルエステル(10.7g、49mmol)と2‐ヒドラジノピリジン(5.6g、51.4mmol)を溶媒なしに1日間窒素条件下で加熱還流させた。生成された固体をヘキサンとエチルアセテートで精製した後、真空乾燥させて表題化合物を70%の収率で収得した。
【0090】
1H NMR(300MHz、DMSO‐d6)δ 8.25‐8.24(1H、d)、8.00‐7.97(1H、d)、7.84‐7.82(1H、t)、7.73‐7.71(2H、m)、7.46‐7.37(3H、m)7.12‐7.11(1H、t)、2.62‐2.57(2H、m)、1.23‐1.17(3H、m);ESI(m/z) 266.1[M+H]+
【0091】
<合成例2> 3‐フェニル‐4‐ブチル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールの合成
【0092】
【0093】
丸底フラスコに2‐ブチル‐3‐オキソ‐3‐フェニルプロピオン酸エチルエステル(12.1g、49mmol)と2‐ヒドラジノピリジン(5.6g、51.4mmol)を溶媒なしに1日間窒素条件下で加熱還流させた。生成された固体をヘキサンとエチルアセテートで精製した後、真空乾燥させて表題化合物を75%の収率で収得した。
【0094】
1H NMR(300MHz、DMSO‐d6)δ 8.25‐8.24(1H、d)、8.03‐8.02(1H、d)、7.85‐7.83(1H、t)、7.70‐7.69(2H、m)、7.44‐7.35(3H、m)7.12‐7.11(1H、t)、2.56‐2.53(2H、t)、1.58‐1.52(2H、m)、1.38‐1.24(2H、m)、0.89‐0.86(3H、t);ESI(m/z)294.0[M+H]+
【0095】
<合成例3> 3‐フェニル‐4‐プロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オールの合成
【0096】
【0097】
丸底フラスコに2‐プロピル‐3‐オキソ‐3‐フェニルプロピオン酸エチルエステル(2.52g、10.7mmol)とエタノール10mlを入れた後、2‐ヒドラジノピリジン(1.29g、1.18mmol)をエタノール3mlに希釈させた溶液を0℃でゆっくり滴加した。3日間100℃で加熱還流させた。減圧蒸溜して溶媒を取り除いた後、生成された固体をヘキサンとエチルアセテートで洗浄した後、真空乾燥させて表題化合物を82%の収率で収得した。
【0098】
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ12.50(1H、s)、8.27‐8.25(1H、m)、8.01(1H、d、J=8.5 Hz)、7.81(1H、m)、7.69(2H、m)、7.48‐7.34(3H、m)、7.12‐7.10(1H、m)、2.54(2H、d、J=7.5 Hz)、1.64(2H、m)、0.93(3H、t、J=7.3 Hz);EIMS(70eV)m/z(rel intensity)279(M+、37)、250(100)
【0099】
<合成例4> 3‐フェニル‐4‐プロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オール塩酸塩(化合物1)の合成
【0100】
【0101】
丸底フラスコに前記合成例3で製造した3‐フェニル‐4‐プロピル‐1‐(ピリジン‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐5‐オール(280mg、1.0mmol)をエチルエーテル4mlに溶解させた後、ここに2MのHClが溶解されたエチルエーテル0.55mlを0℃でゆっくり滴加した。前記反応溶液から生成された固体を減圧ろ過して溶媒を取り除いた後、ヘキサンとエチルアセテートで洗浄した後、真空乾燥して前記表題化合物(270mg、0.85mmol)を収得した。
【0102】
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ 8.44(1H、d、J=4.2 Hz)、8.0‐8.03(2H、m)、7.66‐7.64(2H、m)、7.48‐7.42(3H、m)、7.34‐7.30(1H、m)、2.49(2H、brs)、2.43(2H、t、J=7.5 Hz)、1.48(2H、m)、0.48(3H、t、J=7.3 Hz)
【0103】
<実施例1> 人間肺線維芽細胞で活性酸素種生成変化分析
合成例の化合物が肺線維芽細胞からの活性酸素種生成に及ぼす影響を確認するために、人間肺線維芽細胞(normal human lung fibroblast;NHLF、Lonza)細胞を対象にしてPMA刺激を通じて活性酸素種生成を誘導し、この条件下で化合物1の活性酸素種生成抑制効能を観察した。
【0104】
各細胞は10%FBSが含まれた培養培地に懸濁して96well plateに分株した後、5% CO2、37℃条件で24時間培養した。化合物1を30分から1時間先処里した後、TGF‐β1またはPMA(Phorbol 12‐myristate 13‐acetate)刺激を細胞と薬物を含む各ウェルに処理した。30分または48時間さらに培養した後、活性酸素種生成度合いをL‐012(8‐Amino‐5‐chloro‐7‐phenyl‐2,3‐dihydro‐pyrido[3,4‐d]pyridazine‐1,4‐dione)またはDCF‐DA(2',7'‐dichlorodihydrofluoresencein diacetate)を使って確認した。
【0105】
PMA刺激によって誘導された活性酸素種生成は、化合物1の処理によって濃度依存的に抑制されることを確認した(
図1)。
【0106】
<実施例2> 人間肺線維芽細胞でTGF‐β1によって誘導されたaSMA及びtypeIcollagenの発現様相
肺線維芽細胞(lung fibroblast)の筋線維細胞(myofibroblast)への分化において、化合物1の影響を分析するために、人間肺線維芽細胞(normal human lung fibroblast;NHLF、Lonza)を対象にしてTGF‐β1で誘導されたaSMA(α‐smooth muscle actin)及びコラーゲンI(collagen type I)の発現増加に対する化合物1の抑制効能を観察した。NHLF細胞は培養培地(FGM‐2 Bulletkit media、Lonza)に懸濁して4‐well chamber slide(Nunc)に1x104細胞/wellの濃度で接種した。
【0107】
CO2培養器で24時間培養した後、培地を無血清培地に交替して12時間さらに培養した。以後、vehicle及び2mMの化合物1を該当のウェルに1時間先処里した後、negative control(vehicleグループ)を除いた各ウェルに10ng/mlのTGF‐β1を72時間処理した。
【0108】
用意した細胞でのaSMA及びコラーゲンIの発現確認は次のように免疫細胞染色(immunocytochemistry)を通じて遂行した。細胞を4%のパラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)で10分間固定(fixation)、0.1% Triton X‐100を利用して透過(permeabilization)した後、1次抗体(anti‐aSMA Ab、1:200;anti‐collagen I Ab、1:500、常温で3時間反応)及び2次抗体(Alexa‐594 conjugated Ab、1:1000、常温で1時間反応)処理過程を順次進行した後、aSMAとコラーゲンIの発現は蛍光顕微鏡を利用して観察した。
【0109】
この時、aSMA及びコラーゲンIの発現度合いを定量的に確認するために、各フィールド当たりDAPI(細胞核染色マーカー)陽性細胞とaSMA及びコラーゲンI陽性細胞数をそれぞれ計数した後、下記数式を利用してaSMA及びコラーゲンI陽性細胞数のパーセントを算出することで比べた。
【0110】
% aSMA(またはコラーゲンI)positive cells/field
=aSMA(またはコラーゲンI)positive cells/DAPI positive cells x100/field
【0111】
図2及び
図3に示すように、NHLFを対象にして10ng/ml TGF‐β1処理時、aSMAとコラーゲンIの発現が対照群に比べて有意に増加し、2つのマーカーの発現増加は化合物1の処理によって顕著に抑制されることが観察された。
【0112】
この結果を通じて、化合物1がTGF‐β1処理で誘導された肺線維芽細胞の筋線維細胞への分化を効果的に抑制することができることを確認した(
図2及び3参照)。
【0113】
<実施例3> LPSによって誘導されたIL‐1βの発現変化分析
人間肺線維芽細胞(normal human lung fibroblast;NHLF、Lonza)で本発明の合成例化合物の炎症反応に対する影響を確認するためにLPS 処理で発現が増加されたIL‐1β街化合物1によって発現が抑制されるのか観察した。
【0114】
6 well plateに2×105数の細胞を接種後、24時間培養した後でserumがない培養液で16時間さらに培養した後、各条件に合わせて化合物1を30分間前処理してLPSで6時間炎症反応を誘導させた。IL‐1βの発現は、RT‐PCRを利用して確認した。細胞からRNeasy mini kit(Qiagen)を利用してtotal RNAを分離し、分離したRNA 2μgをPrimeScriptTMII 1st strand cDNA synthesis kit(TaKaRa)を利用してcDNAを合成した後、AccuPower PCR PreMix (Bioneer)でPCRを遂行して遺伝子を増幅させた。Target primerに対する塩基配列は以下のとおりである。IL‐1β(forward: 5´‐CCACAGACCTTCCAGGAGAATG‐3´、reverse: 5´‐GTGCAGTTCAGTGATCGTACAGG‐3´);GAPDH(forward: 5´‐GTGGCTGGCTCAGAAAAAGG‐3´、reverse: 5´‐GGTGGTCCAGGGGTCTTACT‐3´);β‐actin(forward: 5´‐CACCATTGGCAATGAGCGGTTC‐3’、reverse: 5´‐AGGTCTTTGCGGATGTCCACGT‐3’。PCRの産物は1.5% agarose gelで電気永同して確認した。
【0115】
実験結果、
図4で確認することができるように、LPSで誘導されたIL‐1βは化合物1処理によって濃度依存的で、効果的に抑制されることが観察された(
図4参照)。
【0116】
<実施例4> ブレオマイシン誘導肺線維症マウスモデルで肺線維症治療効果確認
ブレオマイシン誘導肺線維症マウスモデルは、5週齢、体重20g前後のC57BL/6J系雄マウスを利用した。C57BL/6J マウスにペントバルビタール(pentobarbital、40mg/kg)を腹腔内注射して痲酔させた状態で、前頚部の肌を切開して開創器で器官を露出させた後、後頭部側から肺の方向へとmicro syringeを挿入して呼吸状態を確認しながらブレオマイシン(bleomycin;2mg/kg)をゆっくり投与した。注入直後切開した前頚部の肌を縫合した後、恒温(22~26℃)恒湿(55~60%)の無菌動物室で飼育した。この方法によって、通常3週処理後、肺に顕著な線維化が発生した。
【0117】
実験動物は各群当たり7匹ずつ蒸溜水を経口投与した対照群(Control)、ブレオマイシンで肺線維化を誘発させた群(BLM)、ブレオマイシンを投与して3週後陽性対照群として100mg/kgのニンテダニブ(nintedanib)を毎日経口投与した実験群(BLM+Nintedanib)、及びブレオマイシンを投与して3週後60mg/kgの化合物1を毎日経口投与した実験群(BLM+化合物1)に分けて実験を行った。
【0118】
ニンテダニブと化合物1は、28日間1日1回経口投与した。ニンテダニブあるいは化合物1の最後の投与の翌日、それぞれの動物を痲酔した後、心臓尖刺法で採血後犠牲した。
【0119】
組織病理学的検査のために全動物に対して肺組織を摘出した。摘出した肺組織は、10%中性ホルマリン(neutral buffered formalin、NBF)に固定した。固定された肺組織はパラフィンで包埋し、4μm厚さで薄く切って組織スライドを製作した。
【0120】
前記組織スライドは細胞染色であるHematoxylin & Eosin(H&E)染色と、線維化を確認するためのMasson's trichrome(MT)染色を実施した。製作された組織スライドに対する組織病理学的検査は光学顕微鏡(Carl Zeiss、Oberkochen、Germany)を利用して確認した。線維症の深刻度は反定量的組織病理学的スコアリングの改善されたアシュクロフト点数(modified Ashcroft scale)で評価した。
【0121】
免疫組織化学的染色は、前に製作した組織スライドを脱‐パラフィン(Paraffin)化した後、ウサギ抗α‐SMA(smooth muscle actin)抗体、またはウサギ抗コラーゲンタイプ1(collagen type I)抗体を1次抗体で使用し、Vectastatin ABC kit(Vector Laboratories、Inc、Burlingame、CA)を使用して各抗体と反応した抗原に対する発現を確認した。
【0122】
パーオキシダーゼの基質として3,3'‐diaminobenzidine(DAB)を使って5分間反応させた後、光学顕微鏡で400倍率の視野で観察した。染色結果、読み取りは細胞質に全体的にまたは部分的に赤い茶色で着色されれば免疫反応があるものと見て陽性で読み取った。
【0123】
実験結果はSPSS ver.22.0統計プログラム(SPSS Inc.、Chicago、IL、USA)を利用して平均と標準偏差を求め、実験群間の差の有意性はstudent t‐testによってp<0.05水準で検証した。
【0124】
H&E染色法を通じた組織学的分析結果、ブレオマイシンで肺線維化を誘発させた実験群(BLM)、ニンテダニブ(Nintedanib)を投与した陽性対照群(BLM+Nintedanib)、化合物1投与群(BLM+化合物1)中、化合物1投与群(BLM+化合物1)から肺胞(alveolar)及び細気管支(bronchiole)に炎症細胞の浸透度合いが実験群及び陽性対照群に比べて著しく低いことを確認した。また、肥大化された上皮細胞減少、肺構造変形の低下及び非正常的な組織沈着部位が減少されたことを確認した(
図5参照)。
【0125】
図6では肺線維化に特異的なMasson's trichrome(MT)染色法を通じてブレオマイシンで肺線維化を誘発させた実験群(BLM)とニンテダニブを投与した陽性対照群(BLM+Nintedanib)対比化合物1投与群(BLM+化合物1)での肺線維化度合いを分析した。その結果、化合物1投与群(BLM+化合物1)で実験群及び陽性対照群対比、線維化領域の大きさ及び線維化によるコラーゲン沈着が著しく減少されたことを確認された。
【0126】
図7及び8では、ブレオマイシンで肺線維化を誘発させた実験群(BLM)とニンテダニブを投与した陽性対照群(BLM+Nintedanib)対比化合物1投与群(BLM+化合物1)でα‐SMA発現が減少したことを確認することができ(
図7)、コラーゲンI(Collagen Type I)発現も実験群(BLM)及び陽性対照群(BLM+Nintedanib)対比化合物1投与群(BLM+化合物1)で著しく減少されたことを確認した(
図8)。
【0127】
総合的に、上記組織学的、免疫学的結果に基づいて、肺線維化組織分析分野で広く使われる改善されたアシュクロフト点数(modified Ashcroft scale)で定量化して陰性対照群(control)、実験群(BLM)、陽性対照群(BLM+Nintedanib)対比化合物1投与群(BLM+化合物1)それぞれの肺線維症の深刻度を評価した。
【0128】
図9に示すように、正常所見を示す陰性対照群(PBS)では点数が0であり、ブレオマイシンによって肺線維化を誘発させた実験群(BLM)は5.5±0.8であった。ニンテダニブを投与した陽性対照群(BLM+Nintedanib)の改善されたアシュクロフト点数は5.2±0.45に減少し、化合物1が投与された実験群(BLM+化合物1)での改善されたアシュクロフト点数は4.0±1.1として本発明の化合物が既存の特発性肺線維症の治療剤として使われたニンテダニブに比べて効果的に肺線維症を改善することが確認された。
【0129】
<実施例5> 人間肺上皮細胞でウイルス抑制効果確認
合成例化合物の抗ウイルス能を分析するためにSARSコロナウイルス2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2;SARS‐CoV‐2)と、人間肺上皮細胞であるCalu‐3細胞を利用してreal time qRT‐PCR(quantitative RT‐PCR)で分析した。人間肺上皮細胞(Calu‐3)をDMEM(dulbecco modified eagle medium)培地下で37℃、5% CO
2で培養した。化合物1の濃度は、15、12.5、6.25、3.125、1.563、0.781、0.391、0.195、0.098、0.049、0.024、0.012μMの濃度にした。濃度別に細胞に処理した後、24時間、48時間目、薬物濃度による抗ウイルス効能(IC
50;50% inhibition concentration)と細胞に及ぼす毒性(CC
50;50% cytotoxic concentration)を測定して表1及び
図10に示す。
【0130】
【0131】
表1及び
図10で分かるように、抗ウイルス効能は48時間にIC
50 1.67μMを示し、細胞毒性は48時間CC
50 164.5μMであって非常に低い細胞毒性を示す。したがって、化合物1がSARS‐CoV‐2の複製を阻害することができることを確認し、細胞毒性は非常に低い薬物なのを確認した。