(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】MyD88を標的とするRNAi製剤及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240816BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240816BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/713
A61P27/02
(21)【出願番号】P 2022572518
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(86)【国際出願番号】 KR2020010787
(87)【国際公開番号】W WO2021241803
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0063281
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518028055
【氏名又は名称】オリックス ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン,スン ウ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン ヒュン
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-533956(JP,A)
【文献】特表2014-509511(JP,A)
【文献】国際公開第2012/078536(WO,A2)
【文献】特表2013-516190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センス鎖及びアンチセンス鎖を含む二本鎖のRNAi誘導用核酸分子であって、
前記センス鎖は、15ないし17ntの長さを有し、前記センス鎖内の少なくとも15個の連続したヌクレオチドはアンチセンス鎖と相補的であり、
前記センス鎖は、1つ以上の化学修飾(chemical modification)を含み、
前記アンチセンス鎖は、下記(A)ないし(D)からなるグループから選択され(5'→3'):
(A)P-mUGGUCUGGAAGmUmCAmC*A*mU*mU*mC、
(B)P-mUfGmGfUmCfUmGfGmAfAmGfUmCfAmC*fA*mU*fU*mC、
(C)P-mUGmGUCUmGmGmAmAmGUCAC*mA*U*U*C、及び (D)P-mUGGfUfCfUGGAAGfUfCAfC*A*fU*fU*fC、 ここで、*は、ホスホロチオエート結合であり、mは、2'-O-メチルであり、fは、2'-フルオロであり、Pは、5'-リン酸結合である、RNAi誘導用核酸分子。
【請求項2】
前記RNAi誘導用核酸分子は、siRNAである、請求項
1に記載のRNAi誘導用核酸分子。
【請求項3】
前記化学修飾は、
1つ以上のヌクレオチド結合のホスホロチオエート結合への修飾、
1つ以上のヌクレオチド内の糖構造の2'炭素位置での-OH基の-O-メチルへの置換、または
コレステロール、トコフェロール、ステアリン酸、レチノイン酸、ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid: DHA)、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸及び炭素数10個以上の長鎖脂肪酸からなるグループから選択される親油性モイエティの導入である、請求項
1に記載のRNAi誘導用核酸分子。
【請求項4】
前記RNAi誘導用核酸分子は、非対称二本鎖構造を形成し、前記アンチセンス鎖の5'末端及びセンス鎖の3'末端は、ブラント末端(blunt end)を形成する、請求項
1に記載のRNAi誘導用核酸分子。
【請求項5】
前記センス鎖は、下記(a)ないし(c)からなるグループから選択された配列を含み(5'→3'):
(a)mUmGUGACUUCCAGAC*mC*mA*Lp、
(b)mUGmUGmACmUUmCCmAGmAC*mC*A*Lp、及び
(c)mUGmUGAmCmUmUmCmCAGAmC*mC*A*Lp
ここで、*は、ホスホロチオエート結合であり、mは、2'-O-メチルであり、Lpは親油性モイエティである、請求項1に記載のRNAi誘導用核酸分子。
【請求項6】
前記RNAi誘導用核酸分子は、骨髄分化一次応答遺伝子88(Myeloid differentiation primary response gene 88: MyD88)の発現を抑制する、請求項
1に記載のRNAi誘導用核酸分子。
【請求項7】
請求項
1に記載のRNAi誘導用核酸分子を有効成分として含む、加齢黄斑変性の治療用または予防用の薬剤学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNA干渉現象を介して疾病を予防または治療する核酸分子及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢黄斑変性(Aged-related Macular Degeneration: AMD)とは、眼の黄斑内の網膜色素上皮内層の変性から惹起され、失明を起こす疾病である。黄斑は、眼の内側を覆っている光敏感性組織で構成された網膜内の小さい領域であり、中心視において重要な役割を行う。AMDは、全世界的に失明の主な原因の1つである。AMDは、「ウェット型」及び「ドライ型」で発生する。ウェット型AMDは、網膜における異常な血管成長の結果である。ウェット型AMDでは、血管内皮増殖因子(VEGF)の量の増加がそのような血管新生に寄与し、治療オプションは、VEGFインヒビターの使用を含む。しかしながら、VEGFインヒビターで治療された多くの患者が地図状萎縮(geographic atrophy: GA)を起こし、これは、治療後数年以内に後期ドライ型黄斑変性の主な症状である。ドライ型AMDの疾病の発症メカニズムは不明であり、ドライ型AMDのために利用可能な医学的治療が現在はない。従って、ドライ型黄斑変性及びウェット型黄斑変性の両方を治療することができる治療剤の開発が必要である。これにより、ドライ型黄斑変性及びウェット型AMDに同時に効力を示す治療剤の開発が要求されるが、まだ不十分である。
【0003】
それで、本発明者らは、ドライ型AMD、さらにはウェット型AMDの患者を治療することができる新規かつ安全な薬物の開発に鋭意研究した結果、RNA干渉技術を利用したRNA製剤を開発した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、MyD88を標的化するRNAi製剤を提供することである。
本発明の他の目的は、ドライ型及び/またはウェット型AMDの治療のためのRNAi製剤及びその医薬的用途を提供することである。
【0005】
本発明の他の目的及び利点は、添付した特許請求の範囲及び図面と共に下記の詳細な説明によって明らかになる。本明細書に記載されていない内容は、本出願の技術分野または類似した技術分野内の熟練された者であれば、十分に認識して類推することができるので、その説明を省略する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、一態様は、MyD88を標的化する二本鎖のRNAi誘導用核酸分子を提供する。
他の態様は、前記RNAi誘導用核酸分子を有効成分として含む、ドライ型及び/またはウェット型黄斑変性の予防用または治療用薬剤学的組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
一態様によるsiRNAによれば、非特異的免疫反応、オフターゲット効果のような副作用を緩和しながら、眼球疾患であるAMDと係わるタンパク質であるMyD88をエンコーディングするmRNAに結合し、それを分解することにより、前記タンパク質の発現を抑制することができる。従って、一態様による核酸分子は、ドライ型及び/またはウェット型AMDを予防及び治療するための薬剤学的組成物の有効成分として活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明によるsiRNAであるOLX301A-110-21の細胞の処理によるMyD88 mRNAレベルの変化を示す図面である。
【
図1B】本発明によるsiRNAであるOLX301A-110-22の細胞の処理によるMyD88 mRNAレベルの変化を示す図面である。
【
図1C】本発明によるsiRNAであるOLX301A-110-23の細胞の処理によるMyD88 mRNAレベルの変化を示す図面である。
【
図2A】正常マウスモデルにおいて、本発明によるsiRNAであるOLX301A-110-21、OLX301A-110-22及びOLX301A-110-23の処理によるMyD88タンパク質レベルの変化を示す図面である。
【
図2B】正常マウスモデルにおいて、本発明によるsiRNAであるOLX301A-110-21、OLX301A-110-22及びOLX301A-110-23の処理によるMyD88タンパク質レベルの変化を示す図面である。
【
図3A】Laser-induced choroidal neovascularization(CNV)マウスモデルにおいて、本発明によるsiRNAであるOLX301A-110-21、OLX301A-110-22及びOLX301A-110-23の処理によるMyD88タンパク質レベルの変化を示す図面である。
【
図3B】Laser-injuryマウスモデルにおいて、本発明によるsiRNAであるOLX301A-110-21、OLX301A-110-22及びOLX301A-110-23の処理によるMyD88タンパク質レベルの変化を示す図面である。
【
図4】CNVマウスモデルにおいて、本発明によるsiRNAであるOLX301A-110-21、OLX301A-110-22及びOLX301A-110-23の投与によるCNV体積の変化を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの異なる説明及び実施形態にも適用可能である。すなわち、本発明で開示された多様な要素の全ての組み合わせが本発明の範疇に属する。また、後述する具体的な叙述によって本発明の範疇が制限されるものではない。
一態様は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む二本鎖のRNAi誘導用核酸分子であって、
【0010】
前記センス鎖は、15ないし17ntの長さを有し、前記センス鎖内の少なくとも15個の隣接したヌクレオチドは、アンチセンス鎖と相補的であり、前記センス鎖は、1つ以上の化学的変形(chemical modification)を含み、
前記アンチセンス鎖は、下記(A)ないし(D)からなるグループから選択され(5’→3’):
(A)P-mUGGUCUGGAAGmUmCAmC*A*mU*mU*mC、
(B)P-mUfGmGfUmCfUmGfGmAfAmGfUmCfAmC*fA*mU*fU*mC、
(C)P-mUGmGUCUmGmGmAmAmGUCAC*mA*U*U*C、及び
(D)P-mUGGfUfCfUGGAAGfUfCAfC*A*fU*fU*fC、
【0011】
ここて、*は、ホスホロチオエート結合への変形であり、mは、2’-O-メチルへの置換であり、fは、2’-フルオロへの置換であり、Pは、5’-リン酸基の結合である、RNAi誘導用核酸分子を提供する。
他の態様は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む二本鎖のRNAi誘導用核酸分子であって、
【0012】
前記アンチセンス鎖は、19ないし21ntの長さを有し、前記アンチセンス鎖内の少なくとも15個の隣接したヌクレオチドは、センス鎖と相補的であり、前記アンチセンス鎖は、1つ以上の化学的変形を含み、
前記センス鎖は、下記(a)ないし(c)からなるグループから選択され(5’→3’):
(a)mUmGUGACUUCCAGAC*mC*mA*Lp、
(b)mUGmUGmACmUUmCCmAGmAC*mC*A*Lp、及び
(c)mUGmUGAmCmUmUmCmCAGAmC*mC*A*Lp、
ここて、*は、ホスホロチオエート結合への変形であり、mは、2’-O-メチルへの置換であり、Lpは、親油性モイエティの導入である、RNAi誘導用核酸分子を提供する。
さらに他の態様は、MyD88の発現を抑制する、二本鎖のsiRNAを含むRNAi誘導用核酸分子であって、
【0013】
前記二本鎖のsiRNAは、配列番号1の塩基配列(5’-UGGUCUGGAAGUCACAUUC-3’)を有するアンチセンス鎖、及び配列番号2の塩基配列(5’-UGUGACUUCCAGACCA-3’)を有するセンス鎖を含み、
【0014】
前記アンチセンス鎖とセンス鎖は、互いに相補的に結合し、アンチセンス鎖の5’末端及びセンス鎖の3’末端は、ブラント末端(blunt end)を形成し、
【0015】
前記センス鎖の3’末端には、コレステロール、トコフェロール、ステアリン酸、レチノイン酸、ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid: DHA)、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸及び炭素数10個以上の長鎖脂肪酸からなるグループから選択される親油性モイエティが導入された、RNAi誘導用核酸分子を提供する。
【0016】
RNAi誘導用核酸分子
本明細書において、用語「RNA干渉(RNA interference)」または「RNAi」とは、一般的に特定標的RNAの破壊を誘発し、配列特異的核酸分子によって媒介されることにより、細胞において遺伝子発現を抑制または下向き調節する技術分野において一般的に知られた生物学的過程を指称する。また、RNAiという用語は、転写後遺伝子サイレンシング、翻訳抑制、転写抑制、または後成遺伝学(epigenetics)のような配列特異的RNA干渉を記述するために使用された他の用語と同等なものであり得る。例えば、前記siRNA分子は、転写後レベルまたは転写前レベルで遺伝子をサイレンシングさせるのに使用されうる。非制限的な例において、siRNA分子による遺伝子発現の調節は、RISCを介するmRNAのsiRNA-媒介された切断からもたらされる。
【0017】
本明細書において、用語「RNAi誘導用核酸分子」、「短い干渉RNA(short interfering RNA)」、「siRNA分子」または「siRNA」とは、配列特異的方式によって前記RNA干渉を媒介することにより、遺伝子発現またはウイルス複製を抑制または下向き調節することができる任意の核酸分子を指称する。前記用語は、個々の核酸分子、複数の前記核酸分子、または前記核酸分子のプール(pool)を全て指称する。前記siRNAは、自己相補的な(self-complementary)センス鎖及びアンチセンス鎖を含む非対称二本鎖核酸分子であり得る。
【0018】
本明細書において、用語「遺伝子」とは、最広義の意味と見なされなければならず、構造タンパク質または調節タンパク質を暗号化することができる。このとき、調節タンパク質は、転写因子、熱衝撃タンパク質、またはDNA/RNA複製、転写及び/または翻訳に係わるタンパク質を含む。本発明において、発現抑制の対象になる目的遺伝子は、ウイルスゲノムに内在されたものであり、動物遺伝子に統合されるか、あるいは染色体外の構成要素として存在することができる。
【0019】
本明細書において、用語「アンチセンス鎖(antisense strand)」とは、当業界で通常許容される意味を指称する。本明細書に記載されたsiRNA分子と係わり、前記用語は、MyD88 RNAに相補性を有するsiRNA分子のヌクレオチド配列を指称されえる。また、前記siRNA分子のアンチセンス鎖は、siRNA分子のセンス鎖(sense strand)に相補性を有する核酸配列を含む。前記siRNA分子のアンチセンス鎖は、アンチセンス領域(antisense region)またはガイド鎖(guide strand)とも指称されえる。
【0020】
本明細書において、用語「センス鎖(sense strand)」とは、当業界で通常許容される意味を指称する。本明細書に記載されたsiRNA分子と係わり、前記用語は、siRNA分子のアンチセンス鎖に相補性を有する、前記siRNA分子のヌクレオチド配列を指称され得る。また、前記siRNA分子のセンス鎖は、標的核酸配列と相同性または配列同一性を有する核酸配列を含む。また、一具体例において、前記siRNA分子のセンス鎖は、センス領域(sense region)またはパッセンジャー鎖(passenger strand)とも指称されえる。
【0021】
本明細書において、用語「相補性(complementarity)」または「相補的な(complementary)」とは、当業界で通常許容される意味を指称する。前記用語は、一般的に伝統的なワトソン・クリック(Watson-Crick)または本明細書に記述された他の非伝統的類型の結合によって、1つの核酸配列と他の核酸配列との間での水素結合の形成または存在を指称する。完璧な相補性は、核酸配列の全ての隣接残基が第2核酸配列で同数の隣接残基と水素結合するということを意味する。部分相補性は、核酸分子内で、多様なミスマッチ(mismatch)または非塩基対ヌクレオチド(non-based paired nucleotides)(例えば、1,2,3,4,5,6,7,8,9または10個以上のミスマッチ、非ヌクレオチドリンカー(non-nucleotide linker)または非塩基対ヌクレオチド)を含む。前記部分相補性は、核酸分子のセンス鎖またはセンス領域と、アンチセンス鎖またはアンチセンス領域との間で、あるいは核酸分子のアンチセンス鎖またはアンチセンス領域と、それと相応する標的核酸分子との間で、バルジ(bulges)、ループ(loops)、突出(overhang)またはブラント末端(blunt end)をもたらすことができる。
【0022】
本明細書において、用語「ブラント末端(blunt end)」とは、当業界で通常許容される意味を指称する。本明細書の核酸分子と係わり、前記用語は、突出ヌクレオチドがない二本鎖siRNA分子の末端を指称されえる。本明細書に記載されたsiRNA分子において、アンチセンス鎖の5’-末端及びセンス鎖の3’-末端は、ブラント末端を形成するものでもある。
【0023】
MyD88の発現を抑制するためのRNAi誘導用核酸分子
「MyD88(Myeloid differentiation primary response gene 88)」とは、骨髄分化一次応答遺伝子88または先天性免疫信号変換アダプター(innate immune signal transduction adaptor)とも指称される。前記MyD88は、免疫細胞内の信号伝達に寄与し、黄斑変性のような眼球疾患と密接な関連性があるものと知られている。前記MyD88タンパク質は、天然的に存在する野生型MyD88及びその機能的変異体を含むものとも解釈され、前記MyD88タンパク質またはそれをコーディングする遺伝子の配列は、アメリカ国立生物工学情報センターのGenBankなど、公知のデータベースから得られる。
【0024】
本明細書において、用語「発現(expression)」とは、当業界で通常許容される意味を指称する。前記用語は、一般的に、遺伝子が窮極的にタンパク質を生成する過程を意味する。前記発現は、転写、スプライシング、転写後変形または翻訳を含むが、それらに制限されない。本明細書で使用されているように、発現レベルは、mRNAレベルまたはタンパク質レベルの検出によって決定またはモニタリングされえる。
【0025】
対象体におけるMyD88遺伝子発現と係わって使用された用語「抑制」または「減少」とは、非処理群または正常対照群に対して統計的に有意な減少を指称する。前記減少は、例えば、最小30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上であるが、これは、検出方法または測定方法によって、検出レベル以下であってもよい。
【0026】
siRNAは、短い干渉RNA(small interfering RNA)であり、RNAi(RNA interference)作用に関与する。RNAiは、1998年にカエノラブディティス・エレガンスで最初に発見された細胞内遺伝子調節メカニズムであり、作用メカニズムは、細胞内に投入されたRNA二本鎖のうちアンチセンス鎖が標的遺伝子のmRNAに相補的に結合することにより、標的遺伝子分解を誘導すると知られており、近年、最も脚光を浴びている新薬開発候補技術である。
【0027】
但し、このような可能性に対し、siRNAの副作用及び短所が継続的に報告されている。RNAi基盤の治療剤の開発がなされるためには、1)効果的な伝達システムの不在、2)オフターゲット効果、3)免疫反応誘導、4)細胞内RNAi機構飽和のような障壁を克服しなければならない必要性がある。siRNAが標的遺伝子の発現を直接的に調節することができる効果的な方法であるにもかかわらず、このような問題によって、治療剤の開発に困難がある。これと係わり、非対称siRNA(asymmetric shorter duplex siRNA: asiRNA)は、従来のsiRNAが有する19+2構造に比べて短い二重らせん構造の長さを有する非対称RNAi誘導構造である。既存のsiRNA構造技術において確認されるオフターゲット効果、RNAiメカニズムの飽和、TLR3による免疫反応などの問題点を克服した技術であり、これによって副作用が低いRNAi新薬開発が可能である。
【0028】
これに基づいて、本実施形態において、センス鎖、及び前記センス鎖と相補的なアンチセンス鎖を含む非対称siRNA(asiRNA)を提示し、一実施形態によるsiRNAは、オフターゲット効果、RNAiメカニズムの飽和などの問題を発生させず、安定的に高い伝達効率を維持し、かつ目的とする程度に有効にMyD88遺伝子に対する発現を抑制することができる。
【0029】
一実施形態においては、MyD88を標的とするasiRNAをデザイン及び製作し、MyD88を発現する細胞に前記asiRNAをトランスフェクションした後、ノックダウン効率に優れたRNAi誘導用核酸分子、すなわち、MyD88 asiRNAを選別した。
【0030】
一具体例において、前記RNAi誘導用核酸分子は、配列番号1のアンチセンス鎖及び配列番号2のセンス鎖を含み、それぞれの鎖は、化学的変形が導入されているものでもある。
また、前記アンチセンス鎖の5’-末端、及びセンス鎖の3’-末端は、ブラント末端(blunt end)を形成するものでもある。
【0031】
化学的変形が導入されたRNAi誘導用核酸分子
前記RNAi誘導用核酸分子において、前記センス鎖またはアンチセンス鎖は、1つ以上の化学的変形(chemical modification)を含むものでもある。
【0032】
一般的なsiRNAは、フォスフェートバックボーン構造による高い陰電荷及び高い分子量などの理由によって、細胞膜を通過できず、血液から速く分解及び除去され、実際標的部位にRNAi誘導のための十分な量を伝達するのに困難がある。現在、in vitro伝達の場合、陽イオン性脂質と陽イオン性ポリマーを利用した高効率の伝達方法が多く開発されているが、in vivoの場合には、in vitroほどの高効率でsiRNAを伝達しがたく、生体内に存在する多様なタンパク質との相互作用によってsiRNA伝達効率が低下するという問題点がある。
【0033】
それで、本実施形態においては、非対称siRNA構造に化学的変形を導入して細胞浸透能(cell-penetrating ability)を有するRNAi誘導用核酸分子を提示し、より具体的には、別途の伝達体なしに効果的に細胞内伝達が可能なasiRNA構造体(cell penetrating asymmetric siRNA: cp-asiRNA)を提示する。
一方、前述の化学的変形は、以下のような機能性を付与することができる:
【0034】
(1)センス鎖の3’末端への親油性モイエティの導入は、siRNAが細胞膜を容易に透過可能にし、(2)センス鎖またはアンチセンス鎖の末端に隣接したフォスフェートバックボーンのホスホロチオエートなどへの置換は、核酸外部の加水分解酵素に対する抵抗性を付与し、細胞への吸収と、in vivoでsiRNAの生物学的利用とを可能にする。(3)糖構造の2’炭素位置で-OH基に対するメチル、メトキシなどへの置換は、核酸加水分解酵素に対する抵抗性を付与し、siRNA免疫原性を低め、オフターゲット効果を低下させることができ、(4)糖構造の2’炭素位置で-OH基に対するフルオロへの置換は、二本鎖に安定性を付与し、血清での安定性を高め、in vitroとin vivoで効率的なサイレンシングを可能にする。
【0035】
一具体例において、前記アンチセンス鎖は、下記(A)ないし(D)のうちいずれか1つの配列を含み(5’→3’)、ここで、*は、ホスホロチオエート結合への変形であり、mは、2’-O-メチルへの置換であり、fは、2’-フルオロへの置換であり、Pは、5’-リン酸基の結合である:
(A)P-mUGGUCUGGAAGmUmCAmC*A*mU*mU*mC、
(B)P-mUfGmGfUmCfUmGfGmAfAmGfUmCfAmC*fA*mU*fU*mC、
(C)P-mUGmGUCUmGmGmAmAmGUCAC*mA*U*U*C、または
(D)P-mUGGfUfCfUGGAAGfUfCAfC*A*fU*fU*fC。
【0036】
一具体例において、前記センス鎖は、15ないし17ntの長さを有し、前記センス鎖内の少なくとも15個の隣接したヌクレオチドは、アンチセンス鎖と相補的であり、前記センス鎖は、少なくとも1つ以上の化学的変形を含む。前記センス鎖は、下記(a)ないし(c)のうちいずれか1つの配列を含み(5’→3’)、ここで、*は、ホスホロチオエート結合への変形であり、mは、2’-O-メチルへの置換であり、Lpは、親油性モイエティの導入である:
(a)mUmGUGACUUCCAGAC*mC*mA*Lp、
(b)mUGmUGmACmUUmCCmAGmAC*mC*A*Lp、または
(c)mUGmUGAmCmUmUmCmCAGAmC*mC*A*Lp。
【0037】
前記親油性モイエティは、コレステロール、トコフェロール、ステアリン酸、レチノイン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸及び炭素数10個以上の長鎖脂肪酸から選択され、好ましくは、コレステロール、DHAまたはパルミチン酸である。最も好ましくは、パルミチン酸である。
【0038】
一具体例において、前記センス鎖は、下記から選択されるいずれか1つのセンス鎖を含み、ここで、*は、ホスホロチオエート結合への変形であり、mは、2’-O-メチルへの置換であり、cholは、3’-コレステロールの結合であり、PAは、3’-パルミチン酸の結合である:
(d)mUmGUGACUUCCAGAC*mC*mA*chol、
(e)mUGmUGmACmUUmCCmAGmAC*mC*A*chol、
(f)mUGmUGAmCmUmUmCmCAGAmC*mC*A*chol、
(g)mUmGUGACUUCCAGAC*mC*mA*PA、
(h)mUGmUGmACmUUmCCmAGmAC*mC*A*PA、または
(i)mUGmUGAmCmUmUmCmCAGAmC*mC*A*PA。
他の態様は、RNAi誘導用核酸分子を有効成分として含む、眼球疾患の予防用または治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0039】
前記薬剤学的組成物は、前述のRNAi誘導用核酸分子をそのまま含むか、あるいはそれを利用するので、それら間に共通の内容は、本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0040】
眼球疾患
前記薬剤学的組成物は、MyD88遺伝子の発現を抑制することにより、異常な血管新生を阻害する機能を有するので、血管異常を伴う眼球疾患の予防または治療のための薬剤学的組成物の有効成分として活用可能である。
【0041】
前記眼球疾患は、例えば、黄斑変性であり、ここで、「黄斑変性」とは、新生血管が異常に成長して、黄斑が損傷され、視力に影響を及ぼす症状を伴う眼球疾患である。黄斑変性は、50歳以上の年齢層で主に発生し、非滲出性(ドライ型)または滲出性(ウェット型)に分けられる。特に、ウェット型黄斑変性の場合は、失明を誘発し、その原因に対してはまだ正確に明らかになっていないが、危険因子と知られているのは年齢であり、環境的要因としては、喫煙、高血圧、肥満、遺伝的素因、過度な紫外線露出、低い血中抗酸化剤濃度などがある。
【0042】
薬剤学的組成物
本明細書において、用語「有効成分(effective ingredient)」とは、有益であるか、または望ましい臨床的結果または生化学的結果に影響を与える適切な有効量の成分を意味する。具体的には、有効量の製剤、活性剤または核酸分子を意味する。
【0043】
前記有効量は、1回またはそれ以上投与可能であり、疾病を予防するか、あるいは疾病状態を非制限的に、症状の緩和、疾病範囲の減少、疾病状態の安定化(すなわち、悪くならない)、疾病進行の遅延または速度の減少、あるいは疾病状態の改善または一時的緩和及び軽減(部分的または全体的)のための適切な量でありえる。
【0044】
本明細書において、用語「予防(prevention)」とは、疾患の発生をあらかじめ遮断するか、疾患を抑制するか、あるいは疾患の進行を遅延させるあらゆる行為を意味する。例えば、前記眼球疾患またはその特徴的な特性の発生を阻むか、発生を妨害するか、あるいは前記眼球疾患またはその特徴的な特性の発生から防御または保護することを指称する。
【0045】
本明細書において、用語「治療(treatment)」とは、治療学的治療及び予防的または予防措置方法を全て意味する。また、疾患の症状が好転するか、あるいは有益に変更されるあらゆる行為を意味する。例えば、前記眼球疾患またはその特徴的な特性を予防、減少または改善するか、あるいは対象体において前記眼球疾患またはその特徴的な特性の進行を遅延(弱化)させることである。
【0046】
本明細書において、用語「有効量(effective amount)」とは、当業界で通常許容される意味を指称する。前記用語は、一般的に、研究者、獣医師、医師またはその他臨床医師などが追い求める細胞、組織、システム、動物または人間の意図された生物学的反応(例えば、有益な反応)を導出する分子、化合物または構成物の量を意味する。具体的には、「治療学的有効量(therapeutically effective amount)」とは、例えば、疾病や障害と係わる測定可能なパラメータにおいて治療的に関連した変化があり、特定臨床的治療が効果的であると見なされるほどの望ましい医学的反応を導出可能な分子、化合物または構成物の量を意味する。前記疾病または障害の治療のための薬物の治療学的有効量は、前記パラメータにおいて治療的に関連した変化をもたらすのに必要な量でもある。
【0047】
本発明による核酸分子を含む薬剤学的組成物は、眼球内(intraocular)投与が行われる。前記核酸分子の眼球内投与は、当該投与経路が前記核酸分子を眼に入るようにする限り、眼に対する注射または直接(例えば、局所)投与によっても行われる。前述の眼への局所投与経路以外に、適する眼球内投与経路は、硝子体内(intravitreal)、網膜内、網膜下、テノン嚢下(subtenon)、眼球周囲(peri-orbital)及び眼球後方(retro-orbital)、結膜嚢内、結膜下、角膜通過(trans-corneal)及び強膜通過(trans-scleral)の投与を含む。
【0048】
前記「製薬上許容される組成物」または「製薬上許容される剤型」とは、前記核酸分子が目的とする活性を発揮するのに最適の物理的位置に効果的に分配されるようにする組成物または剤型を指称する。
他の態様は、治療学的有効量の前記薬剤学的組成物を個体に投与する段階を含む、眼球疾患を治療する方法を提供する。
【0049】
前記眼球疾患を治療する方法は、前述のRNAi誘導用核酸分子または薬剤学的組成物をそのまま含むか、あるいはそれを利用するので、それら間に共通の内容は、本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0050】
本明細書において、用語「個体」とは、疾病、具体的には、眼球疾患の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、人間または非人間である霊長類、マウス、犬、猫、馬、牛、洋、豚、ヤギ、ラクダ、羚羊などの哺乳類をいずれも含む。
【0051】
以下、本発明を、実施例を介してより詳細に説明する。しかしながら、当該実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲が当該実施例に限定されるものではない。
【0052】
実施例1.siRNA配列及び合成
本実施例においては、MyD88を標的とするsiRNAを合成したが、多様な化学的変形(2’OMe、PS、フルオロ)と、センス鎖の3’末端にコレステロール、パルミチン酸のような親油性モイエティを導入したsiRNAを製造したが(表1参照)、このような方法は当業界に広く公知されている。具体的には、本実施例においては、親油性モイエティであるコレステロール及びPAを導入するために、コレステロール-TEG-CPG(LGC Prime Synthesis社製)及びPA-リンカー-CPG(LGC LINK社製、下記表3参照)をそれぞれ使用した。
【0053】
【0054】
一方、前記表1に「*」、「m」、「f」、「chol」及び「PA」で表記された化学的変形は、表2に示した通りであり、「chol」及び「PA」で表記された化学的変形は、それぞれ3’-末端にコレステロール及びパルミチン酸(パルミトイル形態に導入)が添加された形態を意味する。
【0055】
【0056】
【0057】
実施例2.cp-asiRNA処理によるMyD88 mRNAレベル評価-in vitroノックダウン分析
(1)OLX301A-110-3、OLX301A-110-5、OLX301A-110-7、OLX301A-110-13及びOLX301A-110-14処理による分析
MyD88 mRNAに対する発現抑制効果を確認するために、それぞれ100nMのsiRNAであるOLX301A-110-3、OLX301A-110-5、OLX301A-110-7、OLX301A-110-13及びOLX301A-110-14それぞれをARPE-19細胞に処理し、これをインキュベーション(free uptake)した後、リアルタイムqPCRでMyD88 mRNAの発現レベルを測定した。具体的には、ARPE-19細胞は24ウェルプレートに3×104cells/wellでシーディングされ、24時間後、そこに100nMのcp-siRNAを添加した後、Opti-MEM medium条件で細胞をインキュベーションした。24時間後、Tri-RNA試薬(FAVORGEN)を利用してトータルRNAを抽出した後、High-capacity cDNA reverse transcription kit(Applied Biosystems)を利用してcDNAを合成した。その後、TB Green Premix Ex Taq(Takara,RR420A)と表4のプライマーとを利用して、CFX Connect Real-Time PCR Detection System(BioRad)でMyD88遺伝子の発現レベルを確認した(表5参照)。
【0058】
【0059】
【0060】
(2)OLX301A-110-21、OLX301A-110-22及びOLX301A-110-23処理による分析
実施例1で合成されたsiRNAであるOLX301A-110-21、OLX301A-110-22及びOLX301A-110-23のMyD88発現を抑制するか確認するために、以下のような実験を遂行した。
【0061】
それぞれ25、50、100、500、1000nMのsiRNAをY79細胞に処理し、これをインキュベーション(free uptake)した後、リアルタイムqPCRでMyD88 mRNAの発現レベルを測定した。具体的には、Y79細胞は24ウェルプレートに6×10
4cells/wellでシーディングされ、24時間後、そこに25、50、100、500、1000nMのsiRNAを添加した後、Opti-MEM media条件、すなわち、RPMI 1640(10%FBS)で細胞をインキュベーションした。24時間後、Tri-RNA試薬(FAVORGEN)を利用してトータルRNAを抽出した後、High-capacity cDNA reverse transcription kit(Applied Biosystems)を利用してcDNAを合成した。その後、TB Green Premix Ex Taq(Takara,RR420A)と表6のプライマーとを利用して、CFX Connect Real-Time PCR Detection System(BioRad)でMyD88遺伝子の発現レベルを確認した(表7、
図1Aないし
図1C参照)。
【0062】
【0063】
【0064】
実施例3.siRNA処理によるMyD88タンパク質レベルの評価
(1)OLX301A-110-3、OLX301A-110-5、OLX301A-110-7、OLX301A-110-13、OLX301A-110-14処理による分析
実施例1で合成されたsiRNAのMyD88タンパク質に対する発現抑制効果を確認するために、それぞれ1nMのsiRNAをARPE-19細胞(ATCC)に形質感染させた後、ウェスタンブロットを介してMyD88タンパク質の発現レベルを測定した。具体的には、ARPE-19細胞を12ウェルプレートに5×104cells/wellでシーディングし、24時間後、そこに2μMのsiRNAを添加した後、Opti-MEM media条件で細胞をインキュベーションした。24時間後、培地を、10% fetal bovine serum(FBS,Gibco)を添加したDulbecco’s Modified Eagle’s Medium/F-12 Nutrient Mixture Ham(DMEM/F-12)1:1 Mixtures(Gibco)に交替し、48時間後、MyD88タンパク質の発現レベルを測定した。
【0065】
【0066】
その結果、前記表8に示したように、前記siRNAの処理によるMyD88タンパク質の発現抑制効果を確認した。特に、相対的に優秀なMyD88タンパク質発現抑制効率を示した。
【0067】
(2)OLX301A-110-21、OLX301A-110-22及びOLX301A-110-23の処理によるin vivoでのMyD88タンパク質のノックダウン分析
1)正常マウスにおけるMyD88タンパク質発現抑制の効能
本実施例においては、in vivoでの実施例1で合成されたsiRNAであるOLX301A-110-21、OLX301A-110-22及びOLX301A-110-23がMyD88タンパク質の発現を抑制するか確認するために、以下のような実験を遂行した。正常マウスにおけるMyD88タンパク質発現抑制効能を確認するために、9週齢のC57BL/6雄マウス(グループ当たり3匹、眼球6個)に8μgのOLX301A-110-21、OLX301A-110-22及びOLX301A-110-23を含む10mM PBS混合液0.8μlを製造して硝子体内注射(intravitreal injection: IVT)(Day 0)した。投与7日目、マウスからRPEを分離してRIPAバッファ(SIGMA,R0278)を入れ、tissue grinder pestle(Scienceware,199230001)とソニケータ(Sonics,VC505)を利用して均質化した。その後、遠心分離して得た上澄液からBCA Protein Assay Kit(Thermo,23225)を利用してタンパク質を定量し、各サンプルごとに20μgのタンパク質を8-16%Precast Gel(Bio-rad,456-1106)を使用して電気泳動し、PVDFメンブレン(Bio-rad,1620177)に転写した。SuperBlock(商標)(TBS)ブロッキングバッファ(Thermo,37535)でブロッキングし、MyD88抗体(1:500; Cell signaling,4283)とVinculin抗体(1:2,000; Santa Cruz,sc-73614)、及びHRP-conjugated anti-rabbitとanti-mouse IgG(1:5,000; Santa Cruz,sc-2357とBethyl laboratories,A90-116P)を使用して各製造社のプロトコルに従って反応させた。ECL(Thermo,34580 or 34095)を処理し、ChemiDoc XRS+(Bio-Rad,1708265)でMyD88とVinculinタンパク質発現程度を確認した。当該試験の陰性対照群には、scrambled cp-asiRNA(SCR)投与群が使用された。その結果、MyD88タンパク質のレベルが約35~45%低くなったことを認めた(表9、
図2A及び
図2B参照)。
【0068】
【0069】
2)Laser-induced CNVマウスモデルにおけるMyD88タンパク質発現抑制の効能
OLX301A-110-21、OLX301A-110-22及びOLX301A-110-23のLaser-injuryマウスモデルにおけるMyD88タンパク質発現抑制効果を確認するために、9週齢のC57BL/6雄マウス(グループ当たり6匹、眼球12個)にLaser induced CNV(パワー:130mW、持続時間:80ms、サイズ:75μm、6レーザ/眼球)を与えた直後、4μgのOLX301A-110-21、OLX301A-110-22及びOLX301A-110-23を含む10mM PBS混合液0.8μlを製造して硝子体内注射(intravitreal injection: IVT)(Day 0)した。投与7日目、前記と同じ方法によってマウスRPEを分離し、各サンプルごとに20μgのタンパク質に対するウェスタンブロット解析を介してMyD88タンパク質発現レベルを測定した。当該試験の陰性対照群には、scrambled cp-asiRNA(SCR)投与群が使用された。その結果、MyD88タンパク質のレベルが約30~35%低くなったことを認めた(表10、
図3A及び
図3B参照)。
【0070】
【0071】
3)CNVモデルにおけるCNV体積減少の確認
本実施例においては、レーザ光凝固による脈絡膜新生血管(Choroidal neovascularization: CNV)が誘導されたマウスにおけるOLX301A-110-21、OLX301A-110-22及びOLX301A-110-23の投与による治療効能を評価した。具体的には、9週齢のC57BL/6雄マウス(グループ当たり8匹、8眼球)にレーザ光凝固(パワー:130mW、持続時間:80ms、サイズ:75μm、4レーザ/眼球)を誘導した直後、1及び2μgのOLX301A-110-21、OLX301A-110-22及びOLX301A-110-23を含む10mM PBS混合液0.8μlを製造して硝子体内注射(intravitreal injection: IVT)(Day 0)した。それから6日目にマウスの眼球から分離したRPE flatは、血管内皮細胞に特異的なIsolectin B4(Vector laboratories,FL-1201)蛍光染色を行った。その後、共焦点顕微鏡(Leica,TCS SP8)を利用して、蛍光が観察される開始地点から終了地点まで撮影した。Image J softwareを介して撮影されたイメージから、IB4染色が行われた領域を数値化してCNV体積を測定し、陰性対照群との相対的な%比較を介して治療効能を評価した。当該試験の陰性対照群には、10mM PBS投与群が使用され、陽性対照群には、1及び2μgのOLX10020投与群が使用された。その結果、CNV体積が約30~40%減少することを確認し、陽性対照群に比べてもその効能が優秀であることを認めた(表11、
図4参照)。
【0072】
【0073】
前述の本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更せずにも他の具体的な形態に容易に変形可能であるということを理解できるであろう。従って、前述の実施形態は、あらゆる面において例示的なものであり、限定的ではないものと理解しなければならない。
【配列表】