(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】回路遮断器、分電盤、及び、アーク走行板
(51)【国際特許分類】
H01H 73/18 20060101AFI20240816BHJP
H02B 1/42 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01H73/18 B
H02B1/42
(21)【出願番号】P 2022577022
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2021045115
(87)【国際公開番号】W WO2022158155
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2021007467
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中道 義也
(72)【発明者】
【氏名】毛 翔
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-003020(JP,U)
【文献】特開平06-096655(JP,A)
【文献】国際公開第2014/155442(WO,A1)
【文献】特開昭58-131635(JP,A)
【文献】特開昭56-121246(JP,A)
【文献】実開昭56-135649(JP,U)
【文献】特開平09-017315(JP,A)
【文献】特開平08-138521(JP,A)
【文献】国際公開第2014/167605(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/18
H02B 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする回路遮断器であって、
アーク走行板を備え、
前記アーク走行板は、
前記回路遮断器内の電路に接続される端子部と、
前記電路に設けられた接点部の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッドに対向配置されるアーク走行部と、
前記端子部と前記アーク走行部とを連結し、前記回路遮断器の筐体に固定される被固定部とを備え、
前記アーク走行部の幅は、前記被固定部のうち最も幅が狭い箇所の幅よりも狭く、
前記アーク走行部の少なくとも一部は、線材によって形成されている
回路遮断器。
【請求項2】
前記アーク走行部は、上記線材が前記被固定部にかしめられることによって形成されている
請求項
1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする回路遮断器であって、
アーク走行板を備え、
前記アーク走行板は、
前記回路遮断器内の電路に接続される端子部と、
前記電路に設けられた接点部の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッドに対向配置されるアーク走行部と、
前記端子部と前記アーク走行部とを連結し、前記回路遮断器の筐体に固定される被固定部とを備え、
前記アーク走行部の幅は、前記被固定部のうち最も幅が狭い箇所の幅よりも狭く、
前記アーク走行部及び前記被固定部は、一体形成されており、
前記アーク走行部は、曲がり部を有し、
前記曲がり部にはリブが設けられている
回路遮断器。
【請求項4】
負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする回路遮断器であって、
アーク走行板を備え、
前記アーク走行板は、
前記回路遮断器内の電路に接続される端子部と、
前記電路に設けられた接点部の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッドに対向配置されるアーク走行部と、
前記端子部と前記アーク走行部とを連結し、前記回路遮断器の筐体に固定される被固定部とを備え、
前記アーク走行部の幅は、前記被固定部のうち最も幅が狭い箇所の幅よりも狭く、
前記端子部の前記被固定部側の第一端部は、湾曲しており、
前記回路遮断器は、さらに、
前記端子部の前記被固定部と反対側の第二端部に接続されたバイメタル板と、
前記筐体の外部から前記第二端部を押圧するための押圧構造とを備え、
前記押圧構造の前記押圧の程度に応じて、前記バイメタル板の姿勢が変化する
回路遮断器。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の回路遮断器と、
前記回路遮断器を収容する筐体とを備える
分電盤。
【請求項6】
負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする回路遮断器に用いられるアーク走行板であって、
前記回路遮断器内の電路に接続される端子部と、
前記電路に設けられた接点部の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッドに対向配置されるアーク走行部と、
前記端子部と前記アーク走行部とを連結し、前記回路遮断器の筐体に固定される被固定部とを備え、
前記アーク走行部の幅は、前記被固定部のうち最も幅が狭い箇所の幅よりも狭く、
前記アーク走行部の少なくとも一部は、線材によって形成されている
アーク走行板。
【請求項7】
負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする回路遮断器に用いられるアーク走行板であって、
前記回路遮断器内の電路に接続される端子部と、
前記電路に設けられた接点部の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッドに対向配置されるアーク走行部と、
前記端子部と前記アーク走行部とを連結し、前記回路遮断器の筐体に固定される被固定部とを備え、
前記アーク走行部の幅は、前記被固定部のうち最も幅が狭い箇所の幅よりも狭く、
前記アーク走行部及び前記被固定部は、一体形成されており、
前記アーク走行部は、曲がり部を有し、
前記曲がり部にはリブが設けられている
アーク走行板。
【請求項8】
負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする回路遮断器に用いられるアーク走行板であって、
前記回路遮断器内の電路に接続される端子部と、
前記電路に設けられた接点部の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッドに対向配置されるアーク走行部と、
前記端子部と前記アーク走行部とを連結し、前記回路遮断器の筐体に固定される被固定部とを備え、
前記アーク走行部の幅は、前記被固定部のうち最も幅が狭い箇所の幅よりも狭く、
前記端子部の前記被固定部側の第一端部は、湾曲しており、
前記回路遮断器は、さらに、
前記端子部の前記被固定部と反対側の第二端部に接続されたバイメタル板と、
前記筐体の外部から前記第二端部を押圧するための押圧構造とを備え、
前記押圧構造の前記押圧の程度に応じて、前記バイメタル板の姿勢が変化する
アーク走行板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路遮断器に用いられるアーク走行板に関する。
【背景技術】
【0002】
短絡電流などの異常電流を検知して、負荷及び電源を接続する回路を遮断する回路遮断器が知られている。特許文献1には、部品数の増加を抑え、かつ、ハンドルに対してリンク部材の位置を規制することの可能な回路遮断器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような回路遮断器は、回路の遮断時に発生するアークを消弧するための消弧装置を備えている。
【0005】
本発明は、アークの遮断性が向上された回路遮断器等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る回路遮断器は、負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする回路遮断器であって、アーク走行板を備え、前記アーク走行板は、前記電路に接続される端子部と、前記電路に設けられた接点部の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッドに対向配置されるアーク走行部と、前記端子部と前記アーク走行部とを連結し、前記回路遮断器の筐体に固定される被固定部とを備え、前記アーク走行部の幅は、前記被固定部のうち最も幅が狭い箇所の幅よりも狭い。
【0007】
本発明の一態様に係る分電盤は、前記回路遮断器と、前記回路遮断器を収容する筐体とを備える。
【0008】
本発明の一態様に係るアーク走行板は、負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする回路遮断器に用いられるアーク走行板であって、前記回路遮断器内の電路に接続される端子部と、前記電路に設けられた接点部の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッドに対向配置されるアーク走行部と、前記端子部と前記アーク走行部とを連結し、前記回路遮断器の筐体に固定される被固定部とを備え、前記アーク走行部の幅は、前記被固定部のうち最も幅が狭い箇所の幅よりも狭い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アークの遮断性が向上された回路遮断器等が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る回路遮断器の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る回路遮断器の内部構造を示す第一の図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る回路遮断器の内部構造を示す第二の図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係るコイルユニットの内部構造を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係るアーク走行板の外観斜視図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係るアーク走行板の上面図である。
【
図7】
図7は、変形例1に係るアーク走行板の外観斜視図である。
【
図8】
図8は、変形例2に係るアーク走行板の第一の外観斜視図である。
【
図9】
図9は、変形例2に係るアーク走行板の第二の意外観斜視図である。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る分電盤の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0013】
また、以下の実施の形態で説明に用いられる図面においては座標軸が示される場合がある。Z軸方向プラス側は、上側(上方)と表現され、Z軸方向マイナス側は、下側(下方)と表現される場合がある。また、X軸方向及びY軸方向は、Z軸方向に垂直な平面上において、互いに直交する方向である。
【0014】
(実施の形態)
[回路遮断器の構成]
以下、実施の形態に係る回路遮断器について説明する。
図1は、実施の形態に係る回路遮断器の外観斜視図である。
図2及び
図3は、実施の形態に係る回路遮断器の内部構造を示す図である。
図1及び
図2は、接点部11(
図3に図示)が開極状態であるときの回路遮断器10を示しており、
図3は、接点部11が閉極状態であるときの回路遮断器10を示している。
【0015】
回路遮断器10は、分電盤などに使用され、負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする装置である。回路遮断器10の差込口21には、負荷に接続された電線の端部が差し込まれ、当該端部は差込口21内に設けられた負荷側端子構造30に電気的に接続される。また、差込口21と反対側に位置する差込口22には、電源に接続された電線の端部が差し込まれ、当該端部は、差込口22に設けられた電源側端子構造70に電気的に接続される。
【0016】
回路遮断器10は、主として、筐体20と、負荷側端子構造30と、コイルユニット40と、開閉機構50と、バイメタル板60と、電源側端子構造70と、消弧装置80とを備える。以下、これらの各構成要素について具体的に説明する。
【0017】
筐体20は、負荷側端子構造30、コイルユニット40、開閉機構50、バイメタル板60、電源側端子構造70、及び、消弧装置80を収容する。筐体20は、図中のX軸方向を厚み方向として扁平な形状を有し、筐体20をX軸方向から見た形状は凸字状である。筐体20は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により形成される。
【0018】
負荷側端子構造30は、ねじ33の回動によって電線の端部が押圧固定される、いわゆるピラー端子(ねじ式端子)である。負荷側端子構造30は、筐体20内の差込口21の近傍に取り付けられる。負荷側端子構造30は、負荷側端子板31と、端子金具32と、ねじ33とを備える。
【0019】
負荷側端子板31は、一方の端部(Y軸方向マイナス側の端部)が角筒状の端子金具32内に位置し、他方の端部(Y軸方向プラス側の端部)がコイル41に電気的に接続される金属板である。
【0020】
端子金具32は、Y軸方向に沿う筒軸を有する角筒状の構造体であり、金属材料によって形成される。ねじ33は、ねじ先が端子金具32のねじ孔にねじ込まれた状態で、筐体20内に収容される。
【0021】
電線の端部は、端子金具32と負荷側端子板31との間の空間に差し込まれる。ねじ33が回動されると、端子金具32は、ねじ33の頭側へ移動し、端子金具32と負荷側端子板31との間の空間が狭くなる。これにより、電線の端部は、端子金具32と負荷側端子板31とによって挟持される。
【0022】
コイルユニット40は、短絡電流などの異常電流を検知したときに、開閉機構50を駆動することによって接点部11を開極させる。
図4は、コイルユニット40の内部構造(コイルボビン42内の構造)を示す図である。コイルユニット40は、具体的には、コイル41と、コイルボビン42と、固定プランジャ43と、可動プランジャ44と、コイルばね45と、プッシングピン46と、ヨーク47とを備える。
【0023】
コイル41は、巻回軸がY軸方向に沿うようにコイルボビン42に巻き付けられた電線である。コイル41は、負荷及び電源の短絡電流を検知するために用いられる。コイル41の一方の端部は、負荷側端子板31に電気的及び構造的に接続され、コイル41の他方の端部は、ヨーク47の本体部47aに電気的及び構造的に接続される。コイルボビン42は、Y軸方向に沿う筒軸を有する円筒状の構造体であり、筐体20に取り付けられている。
【0024】
固定プランジャ43及び可動プランジャ44は、コイルボビン42内に位置する。
図4に示されるように、固定プランジャ43は、コイルボビン42のY軸方向プラス側に固定されている。可動プランジャ44は、固定プランジャ43よりもY軸方向マイナス側に位置し、固定プランジャ43及び可動プランジャ44の間には、コイルばね45が位置する。可動プランジャ44は、コイルボビン42内をY軸方向に沿って移動することが可能である。可動プランジャ44は、通常時には、コイルばね45の弾性力によってコイルボビン42内のY軸方向マイナス側に位置している。固定プランジャ43及び可動プランジャ44は、磁性材料によって形成される。
【0025】
プッシングピン46は、固定プランジャ43に設けられた開口に挿入され、Y軸方向マイナス側の端部が可動プランジャ44に固定されており、可動プランジャ44と一体的に動く。プッシングピン46及び可動プランジャ44は、コイル41に短絡電流が流れることで生じる電磁力により、コイルばね45の弾性力に抗してY軸方向プラス側に移動し、開閉機構50の第一アーム52aをY軸方向プラス側に押し出す。これにより、接点部11が開極される。接点部11が開極されると短絡電流が停止し、コイルばね45の弾性力により、可動プランジャ44及びプッシングピン46は元の位置に戻る。
【0026】
ヨーク47は、接点部11の固定接点を構成し、かつ、アーク走行板としても機能する部材である。ヨーク47は、磁性体材料によって形成される。ヨーク47は、本体部47aと、アーク走行部47bと、連結部47cとを備える。本体部47aは、コイル41のZ軸方向マイナス側に位置し、コイル41に対向する。本体部47aには、コイル41の他方の端部が電気的に接続される。
【0027】
アーク走行部47bは、本体部47aよりもZ軸方向マイナス側に位置し、消弧グリッド82と対向する。アーク走行部47bは、アークの足(アークの起点)が生じる部分である。連結部47cは、本体部47a及びアーク走行部47bのY軸方向プラス側に位置し、本体部47a及びアーク走行部47bを連結する。連結部47cは接点部11の固定接点を構成する。
【0028】
開閉機構50は、相互に連動する、ハンドル51、第一リンク52、及び、第二リンク53を有する。開閉機構50は、ハンドル51をY軸方向マイナス側に倒す開操作(オフ操作)に応じて、接点部11を開極する。また、開閉機構50は、ハンドル51をY軸方向プラス側に倒す閉操作(オン操作)に応じて、接点部11を閉極する。
【0029】
ハンドル51は、開閉機構50のうちユーザによって操作される部分であり、筐体20の外部に露出している。ハンドル51は、Y軸方向マイナス側にトーションばね(図示せず)によって付勢されており、トーションばねの付勢力に抗してハンドル51がY軸方向プラス側に動かされるとハンドル51が保持される構造となっている。ハンドル51は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料によって形成される。
【0030】
第一リンク52は、上述のようにコイル41に短絡電流が流れたときにプッシングピン46によって押される第一アーム52a、及び、後述のように過電流が流れたときにバイメタル板60によって押される第二アーム52bを有する。ハンドル51がオンの位置で保持されているときに第一アーム52aまたは第二アーム52bが押されると保持が解除され、トーションばねの付勢力によりハンドル51はオフの位置に戻る。そして、第二リンク53が動き、接点部11が開極する。
【0031】
第二リンク53は、接点部11の可動接点を構成し、ハンドル51及び第一リンク52と連動する。上述のようにハンドル51がオンの位置である場合には、第二リンク53はヨーク47の連結部47cに接触し、接点部11が構成される。ハンドル51がオフの位置である場合には、第二リンク53はヨーク47の連結部47cから離れる。第二リンク53は、金属材料によって形成され、編組銅線61によってバイメタル板60と電気的に接続される。
【0032】
バイメタル板60は、過負荷による過電流を検知したときに、開閉機構50を駆動することによって、接点部11を開極させる。バイメタル板60は、長尺板状の部材であり、材料が異なる金属板の貼り合わせによって形成される。バイメタル板60は、例えば、自己発熱によって湾曲する直熱型であるが、ヒータによって加熱されることで湾曲する傍熱型であってもよい。
【0033】
バイメタル板60のY軸方向マイナス側の面の中央部には編組銅線61が接続され、バイメタル板60は編組銅線61によって第二リンク53に電気的に接続される。バイメタル板60のZ軸マイナス方向の端部には編組銅線62が接続され、バイメタル板60は、編組銅線62によって電源側端子板71に電気的に接続される。また、バイメタル板60のZ軸マイナス方向の端部にはアーク走行板81が接続され、バイメタル板60はアーク走行板81にも電気的に接続される。
【0034】
バイメタル板60に過電流が流れると、バイメタル板60の温度が上昇しバイメタル板60は湾曲する。この結果、バイメタル板60のZ軸プラス方向の端部は、Y軸方向プラス側に変位し、第二アーム52bをY軸方向プラス側に押し出す。これにより、接点部11が開極される。接点部11が開極されると過電流が停止し、バイメタル板60の温度が低下する。この結果、バイメタル板60は元の形状に戻る。
【0035】
電源側端子構造70は、ねじ73の回動によって電線の端部が押圧固定される、いわゆるピラー端子(ねじ式端子)である。電源側端子構造70は、筐体20内の差込口22の近傍に取り付けられる。電源側端子構造70は、電源側端子板71と、端子金具72と、ねじ73とを備える。
【0036】
電源側端子板71は、一方の端部(Y軸方向プラス側の端部)が角筒状の端子金具72内に位置し、他方の端部(Y軸方向マイナス側の端部)が編組銅線62を介してバイメタル板60及びアーク走行板81に電気的に接続される金属板である。電源側端子板71は、L字状に曲がった板状である。
【0037】
端子金具72は、Y軸方向に沿う筒軸を有する角筒状の構造体であり、金属材料によって形成される。ねじ73は、ねじ先が端子金具72のねじ孔にねじ込まれた状態で、筐体20内に収容される。
【0038】
消弧装置80は、接点部11の開極時に発生するアークを引き伸ばすと共に分断して消弧する。消弧装置80は、アーク走行板81と、消弧グリッド82とを備える。消弧装置80には、ヨーク47の本体部47a及びアーク走行部47bがさらに含まれると考えてもよい。
【0039】
アーク走行板81は、長尺板状の金属部材(金属板)を折り曲げ加工することによって形成される。アーク走行板81は、筐体20の底壁に沿って配置される。アーク走行板81のY軸方向プラス側の端部は、バイメタル板60のZ軸方向マイナス側の端部に接続されている。アーク走行板81のY軸方向マイナス側の端部は、消弧グリッド82と対向する。
【0040】
消弧グリッド82は、Z軸方向に間隔を空けて配置された複数の消弧板と、複数の消弧板を指示する支持部とを備える。複数の消弧板は、金属材料によって形成される。支持部は、絶縁材料によって形成されている。なお、筐体20には、アークにより発生したガスを排出するための排出口23が設けられている。なお、消弧装置80によって弱められたアークによって生じる電流は、アーク走行部47bを介して回路遮断器10内の電路に流れる。
【0041】
[アーク走行板の具体的構成]
次に、アーク走行板81の具体的構成について説明する。
図5は、アーク走行板81の外観斜視図であり、
図6は、アーク走行板81の上面図(Z軸方向プラス側から見た図)である。なお、
図5では、バイメタル板60、編組銅線62、及び、電源側端子板71も合わせて図示されている。
【0042】
アーク走行板81は、例えば、銅めっきが施された鋼板などの金属材料によって形成された長尺状の平板(つまり、金属板)を折り曲げ加工することにより形成される。アーク走行板81は、端子部83と、被固定部84と、アーク走行部85とを備える。
【0043】
端子部83は、アーク走行板81のうち回路遮断器10内の電路に接続される部分である。回路遮断器10内の電路は、電源から負荷への電流の経路であり、具体的には、電源側端子構造70、編組銅線62、バイメタル板60、編組銅線61、第二リンク53、ヨーク47、コイル41、及び、負荷側端子構造30によって構成される。端子部83は、具体的には、被固定部84側の第一端部86と、被固定部84と反対側の第二端部87とを含み、第二端部87において上記電路を構成するバイメタル板60に接続される。
【0044】
端子部83の第一端部86は、湾曲している。第一端部86は、言い換えれば、折れ曲がっている。回路遮断器10においては、端子部83を第一端部86を起点として弾性変形させることで、バイメタル板60の位置調整を実現している。回路遮断器10は、筐体20(回路遮断器10)の外部から第二端部87を押圧するための押圧構造63(
図2及び
図3に図示)を備え、押圧構造63による押圧の程度に応じて、アーク走行板81は第一端部86を起点として弾性変形する。この結果、第一端部86の折れ曲がり度合が変化し、バイメタル板60の姿勢が変化する。押圧構造63は、具体的には、調整ねじ構造であり、外部から差し込まれるドライバーによりでねじが回動されることでY軸方向の位置が変化する。
【0045】
このようにアーク走行板81の端子部83、及び、押圧構造63によれば、バイメタル板60の位置の調整が可能である。つまり、バイメタル板60の変形によって接点部11が開極されるときの電流値の調整が可能である。
【0046】
被固定部84は、アーク走行板81のうち端子部83とアーク走行部85とを連結する部分であり、端子部83及びアーク走行部85の間に位置し、アーク走行板81の中で最も幅の広い部分である。つまり、被固定部84の幅W1(
図6に図示)は、アーク走行板81の中で最も広い。ここでの幅とは、アーク走行板81の長手方向(Y軸方向)と交差する方向(X軸方向)における幅を意味する。被固定部84は、筐体20の内壁に設けられた凹部(溝)に差し込まれることで、筐体20に固定される。なお、被固定部84は、アーク走行部85と同様の機能も有している。
【0047】
アーク走行部85は、アーク走行板81のうちアークの足(アークの起点)が生じる部分であり、消弧グリッド82と対向配置される。
図6に示されるように、アーク走行部85の幅W2は、端子部83の幅W3及び被固定部84の幅W1よりも狭い。
【0048】
このように、アーク走行部85の幅W2が狭ければ、アークが広がることを抑制する(つまり、アークの走行性を向上する)ことでアーク電圧を高めることができる。アーク電圧が高められれば、アークの遮断性が向上される。また、一般的なアーク走行部には、筐体20に差し込まれる幅広部が設けられる場合があるが、アーク走行部85は、幅広部を設けずにシンプルな長尺板状とされており、これにより、アーク走行板81のコストダウンを図っている。
【0049】
アーク走行部85の幅W2は、例えば、2mm以上3mm以下程度である。2mm以上とすることでアーク走行板81を製造する際にアーク走行部85の形状を安定させることができる。また、発明者らの鋭意検討の結果によれば、アーク走行部85の幅が3mm以下とされれば、アークの遮断性を向上する効果が確実に得られると考えられる。
【0050】
なお、アーク走行板81においては、被固定部84の幅W1、及び、アーク走行部85の幅W2は一定であるが、一定でなくてもよい。この場合、例えば、アーク走行部85の幅が最大となる箇所の幅が、被固定部84の幅が最小となる箇所の幅よりも狭くなるように構成される。
【0051】
[アーク走行板の変形例1]
アーク走行板81において、アーク走行部85には、被固定部84寄りの位置に曲がり部88が設けられる。曲がり部88には、リブが設けられてもよい。
図7は、このような変形例1に係るアーク走行板の外観斜視図である。
【0052】
図7に示されるように、変形例1に係るアーク走行板81aは、曲がり部88にリブ88aが設けられている。アーク走行板81aはこの点のみがアーク走行板81と異なる。リブ88aは、例えば、曲がり部88をさらに凹ませるリブ加工によって形成される。このようなリブ88aによれば、曲がり部88を補強することができる。また、このようなリブ88aによれば、アークをリブ88aの部分に集中させることができ、アークが広がることをさらに抑制することができる。つまり、アークの遮断性が向上される。
【0053】
[アーク走行板の変形例2]
アーク走行板81においては、端子部83、被固定部84、及び、アーク走行部85は、一体形成されるが、アーク走行部85は、端子部83及び被固定部84とは別体の部材が端子部83に取り付けられることで形成されてもよい。
図8は、このような変形例2に係るアーク走行板の外観斜視図である。
図9は、アーク走行部に相当する部材が分離された状態の、変形例2に係るアーク走行板の外観斜視図である。なお、
図8では、バイメタル板60、編組銅線62、及び、電源側端子板71も合わせて図示されている。
【0054】
図8及び
図9に示されるように、変形例2に係るアーク走行板81bは、アーク走行部85bを備え、アーク走行部85bは、端子部83及び被固定部84とは別体の線材が端子部83に取り付けられることにより形成される。アーク走行部85bの元の線材は、例えば、ニッケルメッキが施された鋼線であるが、特に限定されない。線材の直径は、例えば、1.6mm程度である。なお、アーク走行板81bにおいては、アーク走行部85bの少なくとも一部が線材によって形成されていればよく、アーク走行部85bの一部は、端子部83と一体形成される金属板であってもよい。
【0055】
図9に示されるように、アーク走行部85bは、アーク走行部85bの元の線材の端部が被固定部84に設けられた切欠き部84b(スリット部)に挿入された後、かしめ加工されることによって形成される。なお、アーク走行部85bは、アーク走行部85bの元の線材の端部が被固定部84に溶接されることによって形成されてもよく、この場合、被固定部84に切欠き部84bは設けられなくてもよい。
【0056】
アーク走行板81bにおいても、アーク走行部85bの幅は、端子部83の幅及び被固定部84の幅よりも狭い。このように、アーク走行部85bの幅が狭ければ、アークが広がることを抑制することでアーク電圧を高めることができる。アーク電圧が高められれば、アークの遮断性が向上される。また、かしめ加工は、比較的容易な加工方法であり、線材についても材料費は比較的安価である。したがって、アーク走行板81bによれば、低コストで回路遮断器10のアークの遮断性の向上を図ることができる。
【0057】
[分電盤の構成]
本発明は、回路遮断器10を備える分電盤として実現されてもよい。
図10は、実施の形態に係る分電盤の外観斜視図である。
【0058】
図10に示されるように、分電盤100は、筐体101を備え、筐体101の内部に回路遮断器10を少なくとも1つ備える。分電盤100は、回路遮断器10を複数備えてもよい。回路遮断器10は、分岐回路における負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする分岐ブレーカとして使用されてもよいし、主幹回路における負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする主幹ブレーカとして使用されてもよい。なお、回路遮断器10は、上述のいずれのアーク走行板を備えていてもよい。
【0059】
このような分電盤100は、アークの遮断性が向上された分電盤として有用である。
【0060】
[効果等]
以上説明したように、回路遮断器10は、負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする回路遮断器である。回路遮断器10は、回路遮断器10内の電路に設けられた接点部11の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッド82と、アーク走行板81と、消弧グリッド82及びアーク走行板81を収容する筐体20とを備える。アーク走行板81は、上記電路に接続される端子部83と、消弧グリッド82に対向配置されるアーク走行部85と、端子部83とアーク走行部85とを連結し、筐体20に固定される被固定部84とを備える。アーク走行部85の幅は、被固定部84のうち最も幅が狭い箇所の幅よりも狭い。
【0061】
このような回路遮断器10は、アークの遮断性が向上された回路遮断器10として有用である。
【0062】
また、アーク走行部85及び被固定部84は、一体形成されている。
【0063】
このように、アーク走行板81は、金属板の折り曲げ加工などによって単一の部材から作製することができる。
【0064】
また、端子部83の被固定部84側の第一端部86は、湾曲している。回路遮断器10は、さらに、端子部83の被固定部84と反対側の第二端部87に接続されたバイメタル板60と、筐体20の外部から第二端部87を押圧するための押圧構造63とを備える。押圧構造63の押圧の程度に応じて、バイメタル板60の姿勢が変化する。
【0065】
このような押圧構造63によれば、バイメタル板60の変形によって接点部11が開極されるときの電流値の調整が可能である。
【0066】
また、アーク走行板81aにおいては、アーク走行部85は、曲がり部88を有し、曲がり部88にはリブ88aが設けられている。
【0067】
このようなリブ88aによれば、曲がり部88を補強することができる。また、このようなリブ88aによれば、アークをリブ88aの部分に集中させることができ、アークが広がることをさらに抑制することができる。
【0068】
また、例えば、アーク走行板81bにおいては、アーク走行部85bの少なくとも一部は、線材によって形成されている。
【0069】
このように、アーク走行板81bは、線材によって実現することができる。
【0070】
また、例えば、アーク走行部85bは、上記線材が被固定部84にかしめられることによって形成されている。
【0071】
このように、アーク走行板81bは、線材を被固定部84にかしめることで作製することができる。
【0072】
また、分電盤100は、回路遮断器10と、回路遮断器10を収容する筐体101とを備える。
【0073】
このような分電盤100は、アークの遮断性が向上された分電盤として有用である。
【0074】
また、アーク走行板81は、負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする回路遮断器10に用いられるアーク走行板である。アーク走行板81は、アーク走行板81を、回路遮断器10内の電路に接続される端子部83と、上記電路に設けられた接点部11の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッド82に対向配置されるアーク走行部85と、端子部83とアーク走行部85とを連結し、回路遮断器10の筐体20に固定される被固定部84とを備える。アーク走行部85の幅は、被固定部84のうち最も幅が狭い箇所の幅よりも狭い。
【0075】
このようなアーク走行板81は、回路遮断器10のアークの遮断性能を向上することができる。
【0076】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0077】
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法のいずれによって実現されてもよい。例えば、本発明は、回路遮断器、分電盤、または、アーク走行板の製造方法として実現されてもよい。
【0078】
その他、各実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
10 回路遮断器
11 接点部
20、101 筐体
60 バイメタル板
63 押圧構造
81、81a、81b アーク走行板
82 消弧グリッド
83 端子部
84 被固定部
85、85b アーク走行部
86 第一端部
87 第二端部
88 曲がり部
88a リブ
100 分電盤