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▶ シルク・ロード・メディカル・インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】経頸動脈アクセスの方法とデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
A61M25/00 650
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023039669
(22)【出願日】2023-03-14
(62)【分割の表示】P 2020500085の分割
【原出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2023072042
(43)【公開日】2023-05-23
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】15/641,966
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510015338
【氏名又は名称】シルク・ロード・メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SILK ROAD MEDICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100206140
【弁理士】
【氏名又は名称】大釜 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100221589
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 俊博
(72)【発明者】
【氏名】ステュワート・エム・クメ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・チャン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ピー・ウォレス
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0158502(US,A1)
【文献】特表2008-532673(JP,A)
【文献】特表2011-510744(JP,A)
【文献】特表2009-528876(JP,A)
【文献】米国特許第05084022(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科的に露出した血管の管腔内に、直接的な視覚ガイダンスを使用して直接アクセスするためのマイクロパンクチャーキットであって、前記マイクロパンクチャーキットは
内腔を規定する細長いシャフトに結合された近位ハブと、前記細長いシャフトの遠位先端から距離をあけて前記細長いシャフト上に配置された可視針深度インジケータとを含むマイクロパンクチャーアクセス針であって、前記細長いシャフトの前記遠位先端から前記可視針深度インジケータまでの距離は、前記血管の壁厚より長く、前記血管の前記壁厚と血管径との合計よりも短くされており、これにより、前記可視針深度インジケータは、前記マイクロパンクチャーアクセス針が、前記血管に挿入されたときに、前記血管の血管壁の裏側に接触することなく前記血管の壁厚を貫通するかどうかについての表示を提供する、マイクロパンクチャーアクセス針と、
前記マイクロパンクチャーアクセス針の前記内腔を通して受容されるサイズのアクセスガイドワイヤであって、前記アクセスガイドワイヤは、遠位先端と、前記アクセスガイドワイヤの前記遠位先端から第1の距離をあけて前記アクセスガイドワイヤ上に配置された第1の可視ガイドワイヤ深度インジケータと、前記アクセスガイドワイヤの前記遠位先端から第2の距離をあけて前記アクセスガイドワイヤ上に配置された第2の可視ガイドワイヤ深度インジケータとを含む、アクセスガイドワイヤと、
内腔を規定する細長い本体と、前記細長い本体上に形成された複数の可視カニューレ深度インジケータとを含むマイクロアクセスカニューレであって、前記複数の可視カニューレ深度インジケータのそれぞれは、前記マイクロアクセスカニューレの遠位先端からそれぞれの可視カニューレ深度インジケータまでの距離を特定する、マイクロアクセスカニューレと、を含み、
前記マイクロアクセスカニューレを通して前記アクセスガイドワイヤが挿入されたとき、前記第1の可視ガイドワイヤ深度インジケータと前記マイクロアクセスカニューレの近位端との位置合わせは、前記アクセスガイドワイヤの前記遠位先端が前記マイクロアクセスカニューレを出ようとしていることをユーザに視覚的に示し、
前記マイクロパンクチャーアクセス針を通して前記アクセスガイドワイヤが挿入されたとき、前記第2の可視ガイドワイヤ深度インジケータは、前記アクセスガイドワイヤの前記遠位先端が前記マイクロパンクチャーアクセス針を出ようとしていることをユーザに視覚的に示す、マイクロパンクチャーキット。
【請求項2】
前記アクセスガイドワイヤは、前記アクセスガイドワイヤの前記遠位先端を含む最遠位フレキシブルセクションと、前記最遠位フレキシブルセクションの近位の移行セクションと、前記移行セクションから近位に延在する、より硬いコアセクションとを含む、請求項1に記載のマイクロパンクチャーキット。
【請求項3】
前記最遠位フレキシブルセクションは、1cm~2cmであり、前記移行セクションは2cm~3cmである、請求項2に記載のマイクロパンクチャーキット。
【請求項4】
前記移行セクションおよび前記コアセクションは、前記血管内に挿入された前記マイクロアクセスカニューレを支持するように構成されている、請求項2に記載のマイクロパンクチャーキット。
【請求項5】
前記アクセスガイドワイヤは0.014インチから0.018インチの範囲内の外径であり、前記マイクロパンクチャーアクセス針は21Gから24Gの範囲内である、請求項1に記載のマイクロパンクチャーキット。
【請求項6】
前記アクセスガイドワイヤ上に配置された前記第1の可視ガイドワイヤ深度インジケータは、近位端と、遠位端と、前記近位端と前記遠位端との間に延在する幅と、を有する請求項1に記載のマイクロパンクチャーキット。
【請求項7】
前記マイクロアクセスカニューレ上の前記複数の可視カニューレ深度インジケータのうちの第1が、前記マイクロアクセスカニューレの前記遠位先端から10mm離れている1つのマークを含む、請求項1に記載のマイクロパンクチャーキット。
【請求項8】
前記マイクロアクセスカニューレ上の前記複数の可視カニューレ深度インジケータのうちの第2が、前記マイクロアクセスカニューレの前記遠位先端から20mm離れている2つのマークを含む、請求項7に記載のマイクロパンクチャーキット。
【請求項9】
前記マイクロアクセスカニューレ上の前記複数の可視カニューレ深度インジケータのうちの第3が、前記マイクロアクセスカニューレの前記遠位先端から30mm離れている3つのマークを含む、請求項8に記載のマイクロパンクチャーキット。
【請求項10】
前記マイクロアクセスカニューレ上の前記複数の可視カニューレ深度インジケータのうちの第4が、前記マイクロアクセスカニューレの前記遠位先端から40mm離れている4つのマークを含む、請求項9に記載のマイクロパンクチャーキット。
【請求項11】
前記マイクロアクセスカニューレ上の前記複数の可視カニューレ深度インジケータのうちの第5が、前記マイクロアクセスカニューレの前記遠位先端から50mm離れており且つ固体バンドを含み、該固体バンドは、前記マイクロアクセスカニューレの長手方向軸の幅が、前記第1の可視カニューレ深度インジケータの前記1つのマークの幅より大きい、請求項10に記載のマイクロパンクチャーキット。
【請求項12】
前記マイクロパンクチャーアクセス針の前記可視針深度インジケータが前記細長いシャフトの前記遠位先端から離れている前記距離は、3mm~7mmである、請求項1に記載のマイクロパンクチャーキット。
【請求項13】
前記可視針深度インジケータは、化学エッチングされたマーカー、レーザーエッチングされたマーカーまたはパッド印刷されたマーカーである、請求項1に記載のマイクロパンクチャーキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権書類の参照)
本願は、2017年7月5日に出願された米国特許出願第15/641966号の優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、概して、血管内インターベンション(又は血管内治療:endovascular interventions)を実施するための医療方法、システムおよびデバイスに関する。より詳細には、本開示は、頸動脈内に直接アクセスして、血管疾患および血管系(又は脈管構造:vasculature)に関連する他の疾患の治療においてインターベンション処置(又は介入処置:interventional procedures)を行うための方法およびシステムに関する。
【0003】
インターベンション処置が行われて、血管疾患、例えば狭窄、閉塞、動脈瘤、またはフィステル(fistulae)が治療される。インターベンション処置は、血管を介してアクセス可能な器官または組織標的に対して処置、例えば、神経伝導に介入する組織の除神経またはアブレーション、腫瘍または他の組織への血流を制限する血管の塞栓、および薬物、造影剤または治療もしくは診断目的の血管内または血管外標的に対する他の物質の送達を行うためにも使用される。インターベンション処置は典型的に、冠動脈、神経血管および末梢血管のカテゴリーに分類される。ほとんどの処置は、動脈アクセス部位を介して動脈系内で行われる。
【0004】
これらの処置を実行するための動脈アクセスを得る方法は十分に確立されており、経皮アクセス(percutaneous access)と外科的切断(surgical cut-down)という2つの広いカテゴリーに分類される。インターベンション処置の大部分は、経皮アクセスを利用する。このアクセス方法では、皮膚から皮下組織および筋肉層を通って血管壁まで、血管内自体に針穿刺がなされる。血管および周囲の構造を画像化し、血管内への針の正確な挿入を容易にするために、血管超音波がよく使用される。動脈とアクセスデバイスのサイズに応じて、方法は様々であろう。例えば、セルディンガー法または改良セルディンガー法は、針を通して血管内にシースガイドワイヤを配置することからなる。典型的には、シースガイドワイヤは0.035インチまたは0.038インチである。いくつかのケースでは、マイクロパンクチャー技術またはマイクロアクセス技術が使用され、それにより血管は、最初に小さなゲージの針でアクセスされ、それを通してシースガイドワイヤが配置される4Fのマイクロパンクチャーカニューレにより引き続き拡張される。一旦ガイドワイヤが配置されると、アクセスシースとシース拡張器がガイドワイヤを越えて(又はガイドワイヤ上から:over the guide wire)動脈内に挿入される。他の例では、例えば、橈骨動脈がアクセス部位として使用されている場合、最初の針穿刺を通して、より小さなシースガイドワイヤ、例えば0.018インチのガイドワイヤが使用される。橈骨のアクセスシースの拡張器は、このより小さなサイズのガイドワイヤに対応するように設計されるため、アクセスシースと拡張器を0.018インチのワイヤを越えて動脈内に挿入することができる。
【0005】
外科的切断では、皮膚切開が行われ、組織が標的動脈のレベルまで切開される(又は解剖される:dissected)。この方法は、処置に大きなアクセスデバイスを要する場合、経皮アクセスでは血管にリスクがある場合、および/または処置の完了時にアクセス部位で信頼性の低い閉鎖(又は閉塞、又は縫合:closure)の可能性がある場合によく使用される。動脈とアクセスデバイスのサイズに応じて、ブレードで血管壁を切開するか、アクセス針で血管壁を直接穿刺し、それを通してシースガイドワイヤが配置される。マイクロパンクチャー技術を使用して、シースガイドワイヤを配置することもできる。上記のように、アクセスシースとシース拡張器は、シースガイドワイヤを越えて動脈内に挿入される。一旦アクセスシースが配置されると、拡張器とシースガイドワイヤが取り外される。これで、アクセスシースを介してデバイスを動脈内に導入し、標準のインターベンション技術とX線透視法(又は蛍光透視法:fluoroscopy)を使用して標的部位に進めて、処置を実行できる。
【0006】
標的部位へのアクセスは、皮膚から簡単に進入される動脈アクセス部位から達成される。通常、これは比較的大きく、比較的表層であり、直接圧迫またはさまざまな血管閉鎖デバイスのうちの1つのいずれかを使用して、処置の完了時に閉鎖するのが容易な大腿動脈である。このため、血管内デバイスはこの大腿骨アクセス部位専用に設計されている。しかし、大腿動脈とその周辺は時々疾患し、この部位から血管系内に安全にアクセスしたり、血管系内にデバイスを導入することが困難または不可能となる。加えて、治療標的部位は、大腿骨アクセスポイントからかなり離れている場合があり、デバイスは非常に長くて扱いにくいものである必要がある。さらに、大腿骨アクセスポイントから標的部位に到達することは、曲がりくねった(tortuous)動脈および/または疾患のある動脈を横断することを含み得、それにより、処置に時間とリスクが追加される。これらの理由により、代替アクセス部位が採用される場合がある。これらには、橈骨動脈、上腕動脈、および腋窩動脈が含まれる。ただし、これらのアクセス部位は、それらがより小さい動脈を含み得、且つ曲がりくねった部分およびアクセス部位と標的部位との間のある程度の距離を含み得るため、必ずしも理想的ではない。
【0007】
(現在の技術に関するいくつかの例示的な問題)
いくつかの例では、望ましいアクセス部位は頸動脈である。例えば、頸動脈分岐部および内頸動脈の疾患を治療する処置は、このアクセス部位に非常に近い。同様に、頭蓋内動脈内および脳動脈内の処置は、大腿動脈よりもこのアクセス部位にはるかに近い。この動脈はまた、上記の代替アクセス動脈のいくつかよりも大きい。(総頸動脈の直径は典型的には6~10mm、橈骨動脈の直径は2~3mmである。)
【0008】
インターベンション処置で使用されるほとんどのアクセスデバイスは大腿骨アクセス用に設計されているため、これらのデバイスは、長さと機械的特性の両方において、代替頸動脈アクセス部位には理想的ではない。これにより、頸動脈アクセス処置で大腿骨アクセス用に設計されたデバイスを使用する場合、処置がより面倒になり、いくつかのケースではよりリスクが高くなる。例えば、いくつかの処置では、例えば頸動脈分岐部にステントを配置することを含む処置では、アクセスシースの遠位先端を頸動脈分岐点の下に維持するまたは遠ざけておくことが望ましい。低分岐、短い頸部、または非常に深い頸動脈の患者では、動脈内へのシースの進入角度(動脈の長手方向軸(又は縦軸:longitudinal axis)に対して)は、動脈の長手方向軸に対して非常に鋭角である。すなわち、動脈の長手方向軸に対して平行よりも垂直に近い。この鋭角は、シースの挿入およびシースを通したデバイスの挿入の困難さとリスクを高める。これらの処置では、最小限の長さのシースしか挿入できないため、シースが外れてしまうリスクもある。大腿骨または橈骨のアクセスの場合、シースは典型的には、シースのハブの最後まで動脈内に挿入され、シースの位置が非常に安全で動脈に平行になるため、急な挿入角度とシースが外れる問題は、大腿骨または橈骨のアクセス部位において発生しない。
【0009】
他の処置では、例えば脳血管へのアクセスを必要とする処置で、シース先端を内頸動脈の錐体部まで、場合によってはそれを含む位置に配置することが望ましい。従来のインターベンションシースとシース拡張器は、この部位に安全に配置するのに十分なフレキシブル性がない。
【0010】
さらに、作業領域がアクセス部位に近い場合、経頸動脈アクセス部位を利用する処置のための術者の手にとって、放射線被曝が問題になり得る。
【発明の概要】
【0011】
総頸動脈内への動脈アクセスの容易さと安全性を最適化するデバイスのシステムが必要とされている。また、術者への放射線被曝を最小化するデバイスのシステムも必要である。また、末梢血管および神経血管インターベンション処置を実行するために頸動脈に安全かつ容易にアクセスするための方法も必要とされている。
【0012】
冠動脈、末梢血管および神経血管の疾患状態を治療するために、動脈血管系への安全で迅速かつ比較的短く、ストレートな(又は真っ直ぐな:straight)経頸動脈アクセスを可能にする方法およびデバイスが開示されている。デバイスおよび関連する方法には、特に、経頸動脈アクセス部位を介して標的の組織(又は生体構造:anatomy)に到達するために、経頸動脈アクセスデバイス、ガイドカテーテル、カテーテル、およびガイドワイヤが含まれる。本開示には、複数のタイプの経頸動脈インターベンション処置を容易にするためのこれらのデバイスのさまざまな組み合わせのキットが含まれる。
【0013】
一態様では、シースガイドワイヤ、動脈アクセスシースおよびシース拡張器を含む、頸動脈壁の直接穿刺を介して頸動脈にアクセスするためのデバイスのシステムであって、動脈アクセスシースおよびシース拡張器は、組み合わせて、シースガイドワイヤを越えて直接総頸動脈内に挿入されるようなサイズおよび構成であり、シースは内腔および近位ポートを有し、その管腔は、インターベンションデバイスが近位ポートを介して頸動脈内に挿入される通路を提供する、システムが開示される。
【0014】
別の態様では、頸動脈にアクセスするためのシステムは、アクセス針、アクセスガイドワイヤおよびアクセスカニューレも含み、全て、頸動脈壁を通してシースガイドワイヤを挿入するようにサイズ設定および構成されており、それにより動脈アクセスシースおよび拡張器は、経皮または外科的切開を介して頸動脈内に配置され得る。
【0015】
別の態様では、頸動脈壁に貫通部を形成する工程と、貫通部を通して動脈内への動脈アクセスシースを配置する工程と、治療デバイスを使用して標的部位を治療する工程とを含む、冠動脈、末梢血管または神経血管の疾患の治療方法が開示されている。
【0016】
別の態様では、インターベンションデバイスを動脈内に導入するための動脈アクセスシースが開示されている。動脈アクセスシースは、頸部のアクセス位置で総頸動脈内に経頸管的(transcervically)に導入されるサイズおよび形状の細長い本体と、細長い本体の近位領域に近位開口部を有し、且つ細長い本体の遠位領域に遠位開口部を有する細長い本体内の内腔とを含む。内腔は、細長い本体が総頸動脈内に配置されたときに、インターベンションデバイスを総頸動脈内に導入するための通路を提供する。細長い本体は、近位セクションと、近位セクションよりもフレキシブルな(又は柔軟な:flexible)最遠位セクションとを有する。シース本体の全長に対する最遠位セクションの全長の比率は、シース本体の全長の10分の1から2分の1である。
【0017】
相互に関連する態様では、外科的に露出した血管の管腔内に、直接的な視覚ガイダンスを使用して直接アクセスするためのマイクロパンクチャーキットが開示される。キットは、内腔を規定する細長いシャフトに結合された近位ハブを有するマイクロパンクチャーアクセス針と、細長いシャフトの遠位先端から距離をあけて細長いシャフト上に配置された可視深度インジケータとを含む。キットは、マイクロパンクチャーアクセス針の内腔を通して受容されるサイズのアクセスガイドワイヤを含む。ガイドワイヤは、遠位先端と、ガイドワイヤの遠位先端から距離をあけてアクセスガイドワイヤ上に配置された少なくとも1つの可視深度インジケータとを含む。キットは、内腔を規定する細長い本体と、細長い本体上に形成された複数の可視深度インジケータとを有するマイクロアクセスカニューレを含み、複数の可視深度インジケータのそれぞれは、カニューレの遠位先端からの距離を特定する。
【0018】
アクセスガイドワイヤは、ガイドワイヤの遠位先端を含む最遠位フレキシブルセクション、最遠位フレキシブルセクションの近位の移行セクション(transition section)、および移行セクションから近位に延在するより硬いコアセクション(core section)を含み得る。最遠位フレキシブルセクションは1cmから2cmの間であり得、移行セクションは2cmから3cmの間であり得る。移行セクションおよびコアセクションは、血管内に挿入されたマイクロアクセスカニューレを支持するように構成され得る。ガイドワイヤの外径は0.014~0.018インチの範囲であってもよく、マイクロパンクチャー針は21G~24Gの範囲であってもよい。アクセスガイドワイヤ上に配置された少なくとも1つの可視深度インジケータは、近位端、遠位端、および近位端と遠位端との間に延在する幅を有し得る。ガイドワイヤの遠位先端からの距離は、少なくとも1つの可視深度インジケータの遠位先端から遠位端までで測定することができる。遠位端がアクセス針の近位ハブの後端と並ぶまで、細長いシャフトの内腔を通してアクセスガイドワイヤを挿入すると、ガイドワイヤの遠位先端は、細長いシャフトの遠位先端を越えて、延伸長(extension length)だけ延在し得る。近位端がアクセス針の近位ハブの後端と並ぶまで、細長いシャフトの内腔を通してアクセスガイドワイヤを進めと、ガイドワイヤの遠位先端は、細長いシャフトの遠位先端を越えて、延伸長と、少なくとも1つの表示可能な深度インジケータの幅とを加えた分だけ延在し得る。延伸長は3cmであってもよく、少なくとも1つの可視深度インジケータの幅は2cmであってもよい。アクセス針の可視深度インジケータは、化学エッチングされたマーカー、レーザーエッチングされたマーカー、またはパッド印刷されたマーカーであり得る。複数の可視深度インジケータのそれぞれは、いくつかのマーク(又はマークの数:a number of marks)によって形成され得る。いくつかのマークは、カニューレの遠位先端からのいくつかの増分を特定し得る。各増分は10mmであってもよく、いくつかのマークは少なくとも1つのマークであってもよい。カニューレ上の複数の可視深度インジケータの第1は、1つのマークを含んでもよく、第1の可視深度インジケータはカニューレの遠位先端から10mm離れていてもよい。カニューレ上の複数の可視深度インジケータの第2は、2つのマークであってもよく、第2の可視深度インジケータはカニューレの遠位先端から20mm離れていてもよい。カニューレ上の複数の可視深度インジケータの第3は、3つのマークであってもよく、第3の可視深度インジケータはカニューレの遠位先端から30mm離れていてもよい。カニューレ上の複数の可視深度インジケータの第4は、4つのマークであってもよく、第4の可視深度インジケータはカニューレの遠位先端から40mm離れていてよい。カニューレ上の複数の可視深度インジケータの第5は、カニューレの遠位先端から50mm離れていてもよく、1つのマークの幅よりも大きい幅を有する固体バンド(solid band)であってもよい。アクセス針の可視深度インジケータが細長いシャフトの遠位先端から離れている距離は、3mm~7mmであってもよい。アクセス針の可視深度インジケータは、化学エッチングされたマーカー、レーザーエッチングされたマーカー、またはパッド印刷されたマーカーであってもよい。
【0019】
他の特徴および利点は、例として本発明の原理を示す様々な実施形態の以下の説明から明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、経頸動脈初期アクセスシステムを示す。
図2図2は、経頸動脈アクセスシースシステムを示す。
図3図3は、頸動脈処置のために頸動脈にアクセスするのに使用されている経頸動脈アクセスシステムの構成要素を示す。
図4図4は、頭蓋内処置または神経血管処置のために内頸動脈にアクセスするために使用される経頸動脈アクセスシステムのアクセスシースを示す。
図5図5は、動脈アクセスシースの実施形態を示す。
図6図6および図7は、動脈アクセスシースの遠位領域を示す。
図7図6および図7は、動脈アクセスシースの遠位領域を示す。
図8図8図11Eは、動脈アクセスシースの実施形態を示す。
図9図8図11Eは、動脈アクセスシースの実施形態を示す。
図10図8図11Eは、動脈アクセスシースの実施形態を示す。
図11A図8図11Eは、動脈アクセスシースの実施形態を示す。
図11B図8図11Eは、動脈アクセスシースの実施形態を示す。
図11C図8図11Eは、動脈アクセスシースの実施形態を示す。
図11D図8図11Eは、動脈アクセスシースの実施形態を示す。
図11E図8図11Eは、動脈アクセスシースの実施形態を示す。
図12図12は拡張器の実施形態を示す。
図13図13および図14は、拡張器の近位領域の拡大図を示す。
図14図13および図14は、拡張器の近位領域の拡大図を示す。
図15図15および図16は、二部分拡張器の実施形態を示す。
図16図15および図16は、二部分拡張器の実施形態を示す。
図17図17は、2つのガイドワイヤ管腔を有する拡張器の遠位領域を示す。
図18図18は、図17の遠位領域の断面図を示す。
図19A図19Aは、経頸動脈初期アクセスシステムの実装を示す。
図19B図19Bは、円B-Bでとった図19Aのアクセス針の詳細図を示す。
図20A図20Aは、アクセスガイドワイヤの実装の遠位端領域を示す。
図20B図20B~20Cは、図20Aのアクセスガイドワイヤおよび図19Aのアクセス針の相対的な伸長を示す。
図20C図20B~20Cは、図20Aのアクセスガイドワイヤおよび図19Aのアクセス針の相対的な伸長を示す。
図21A図21Aはマイクロアクセスカニューレの実装である。
図21B図21Bは、図21Aの円B-Bでとったマイクロアクセスカニューレの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(詳細な説明)
頸動脈の領域内の経頸動脈アクセスポイントを介して血管系にアクセスし且つ治療するための方法、システム、およびデバイスが開示される。
【0022】
図1は、頸動脈内へのガイドワイヤの導入を可能にする目的で、頸動脈への初期アクセスを確立するデバイスの経頸動脈初期アクセスシステム100の第1の実施形態を示す。頸動脈へのアクセスは、患者の頸動脈の領域など、患者の頸部内にあるアクセス部位で行われる。経頸動脈初期アクセスシステム100の実施形態は、総頸動脈壁を通して頸動脈に直接アクセスするのに特に適している。
【0023】
図1に示すように、経頸動脈初期アクセスシステム100は、アクセス針120、アクセスガイドワイヤ140およびマイクロパンクチャーカニューレ160を含む。以下でさらに説明するように、アクセス針120、アクセスガイドワイヤ140およびマイクロパンクチャーカニューレ160はすべて、頸動脈穿刺を介して頸動脈内に導入されるように適応される。頸動脈穿刺は、例えば、経皮的にまたは外科的切開により達成され得る。初期アクセスシステム100の実施形態は、以下でさらに説明するように、穿刺の1つまたは他の方法に向けて適応され得る。
【0024】
初期アクセスシステム100を使用して頸動脈へのアクセスが確立されると、アクセスシースがアクセス部位で頸動脈内に挿入され得、アクセスシースは経頸動脈アクセスシースシステムの一部であり得る。図2は、シースガイドワイヤを越えて頸動脈内にアクセスシースを挿入するためのデバイスの経頸動脈アクセスシースシステム200の第1の実施形態を示す。頸動脈内に挿入されるとき、アクセスシースは、血管系の領域上でインターベンション処置を実行する目的で、アクセスシースの管腔を介して少なくとも1つのインターベンションデバイスを頸動脈内に導入することを可能にし、または許容する。経頸動脈アクセスシースシステム200は、アクセスシース220、シース拡張器260およびシースガイドワイヤ300を含む。以下でさらに説明するように、アクセスシース220、シース拡張器260およびシースガイドワイヤ300はすべて、頸動脈穿刺を介して頸動脈内に導入されるように適応される。頸動脈穿刺は、経皮的にまたは外科的切開により達成され得る。システム200の実施形態は、以下でさらに説明するように、穿刺の1つまたは他の方法に向けて適応され得る。
【0025】
一実施形態では、経頸動脈初期アクセスシステム100および経頸動脈アクセスシースシステム200の構成要素の一部またはすべては、構成要素を単一のパッケージ、容器または共に取り扱われる容器の集合体に組み合わせることなどにより、1つの経頸動脈アクセスシステムキットに組み合わせることができる。
【0026】
図3は、頸動脈ステント処置のために総頸動脈310にアクセスするのに使用されるアクセスシース220を示す。アクセスシース220は、外科的切開部315を介して総頸動脈310内に挿入される。以下でさらに説明するように、アクセスシース220は、アクセスシース220の近位および遠位の先端または領域に開口を有する内部管腔を有する。頸動脈内のアクセスシース220の遠位部分および患者の外部の近位部分とともに、内部管腔は、インターベンションデバイスを動脈内に挿入するための通路を提供する。
【0027】
図4は、頭蓋内処置または神経血管処置のために内頸動脈405にアクセスするのに使用される経頸動脈アクセスシステムのアクセスシース200を示す。動脈アクセスシース200は、経頸部穿刺を通した挿入を介して総頸動脈310にアクセスする。総頸動脈310内に挿入されると、アクセスシース220の遠位先端は、内頸動脈ICA320内に進入し、(図4の穿刺に対して)遠位頸部または遠位錐体ICA405に向かってまたはそれを越えて進められる。
【0028】
図3および図4は両方とも、患者の頸部を通って患者の脳に向かって上向きに進められている動脈アクセスシース220を示す。別の実施形態では、動脈アクセスシース220は、例えば大動脈に向かってなど、患者の心臓に向かって(図3~4のアクセス位置に対して)下向きに進められてもよい。「経カテーテル大動脈弁治療のためのシステムおよび方法」という発明名称の米国特許第8545552号(参照により本明細書に組み込まれる)は、アクセスシースを頸動脈内に直接挿入し、インターベンションデバイスを大動脈に向かって、最終的に大動脈弁に向かって進める例示的な方法を記載する。
【0029】
(動脈アクセスシース)
再び図2を参照すると、経頸動脈アクセスシース220の実施形態は、細長いシース本体222と、アクセスシース220の細長いシース本体222の近位端にある近位アダプタ224とを含む。細長いシース本体222は、動脈内に挿入されるサイズおよび形状である動脈アクセスシース220の一部であり、処置中に細長いシース本体の少なくとも一部が実際に動脈内に挿入される。近位アダプタ224は、止血弁226と、シース本体222の内腔と連通する内腔を有する細長いフラッシュライン228とを含む。近位アダプタ224は、シース本体222よりも大きな直径または断面寸法を有してもよい。止血弁226は、シース本体222の内腔と連通して、処置中の内腔を介した失血を防止または最小化しながら、デバイスの導入を可能にする。一実施形態では、止血弁226は、静的シールタイプの受動弁である。動脈アクセスシース220の代替実施形態(図5に示す)では、止血弁226は、Tuohy-Borst弁227または回転止血弁(RHV)などの調節可能な開口弁である。あるいは、アクセスシース220は、別個の止血弁構成要素、受動シール弁、Tuohy-Borst弁、または回転止血弁(RHV)のいずれかが取り付けられ得る雌型ルアーアダプタの近位端で終端してもよい。
【0030】
動脈アクセスシース220の細長いシース本体222は、頸動脈への動脈アクセスを提供するのに適したまたは特に最適化された直径を有する。一実施形態では、細長いシース本体222は、5から9フレンチのサイズ範囲にあるか、あるいは、0.072インチから0.126インチの内径範囲にある。一実施形態では、細長いシース本体222は、6または7フレンチのシースである。吸引または逆流のために、またはより大きなデバイスを導入するためにもシースが使用される実施形態では、シースは8フレンチのシースである。
【0031】
動脈アクセスシース220の細長いシース本体222は、近位アダプタ224から細長いシース本体222の遠位先端までの長さを有し、それは、総頸動脈CCA内の動脈アクセス部位に対して脳内にまたは脳に向かって位置する治療部位に到達するのに適している。例えば、CCAアクセス部位から頸動脈分岐部または近位内頸動脈ICAにアクセスするために、アクセスシース220の細長いシース本体222(すなわち、動脈内に挿入され得る部分)は、7~15cmの範囲の長さを有し得る。一実施形態では、細長いシース本体222は、10~12cmの範囲の長さを有する。大腿骨アクセス部位から同じ標的部位にアクセスするためには、典型的なアクセスシースは80~110cmでなければならず、もしくは、ガイドカテーテルを動脈アクセスシースに挿入して標的部位に進めなければならない。アクセスシースを通るガイドカテーテルは、管腔領域を占有し、従って標的部位に導入され得るデバイスのサイズを制限する。従って、ガイドカテーテルなしでインターベンションデバイスが標的部位に到達することを可能にするアクセスシースは、標的部位へのインターベンションデバイスを可能にするためにガイドカテーテルの使用を必要とするアクセスシースよりも優れている。
【0032】
あるいは、例えばCCAアクセス部位から頭蓋内処置または神経血管処置を行うために、アクセス部位に対してより遠位のシース本体222の遠位先端を配置するために、アクセスシース220の細長いシース本体222は、シースの遠位先端の所望の標的位置に応じて、10cmから30cmの範囲の長さを有してもよい。例えば、標的位置が遠位CCAまたは近位ICAである場合、細長いシース本体222は10cmから15cmの範囲にあってもよい。所望の標的位置がICAの中間から遠位の頸部、錐体部、または海綿体(cavernous)部である場合、細長いシース本体222は15~30cmの範囲にあってもよい。
【0033】
あるいは、動脈アクセスシース220は、アクセス部位が総頸動脈内にあるとき、動脈アクセス部位の近位に(すなわち大動脈に向かって)位置する治療部位または標的位置に構成または適応される。例えば、治療部位は、CCA、CCA口、上行もしくは下行大動脈または大動脈弓、大動脈弁、冠状動脈、あるいは他の末梢動脈の近位領域であり得る。これらの標的位置について、細長いシース本体222の適切な長さは、標的位置からアクセス部位までの距離に依存する。この構成では、細長いシース本体222は、動脈アクセス部位を通して配置され、大動脈に向かって下方に向けられる。
【0034】
アクセスシース220は、放射線不透過性先端マーカー230も含んでもよい。一例では、放射線不透過性先端マーカーは、アクセスシース220のシース本体222の遠位端付近に埋め込まれた金属バンド、例えば白金イリジウム合金である。あるいは、アクセスシース先端材料は、別個の放射線不透過性材料、例えばバリウムポリマーまたはタングステンポリマーブレンドであってもよい。シース先端自体は、アクセスシース220がシース拡張器260と組み立てられてシースアセンブリを形成するとき、シースアセンブリが最小の抵抗で動脈穿刺を通してシースガイドワイヤ300を越えてスムーズに挿入され得るように構成される。一実施形態では、アクセスシース220の細長いシース本体222は、動脈内への挿入中の摩擦を低減するために潤滑性または親水性コーティングを有する。一実施形態では、遠位コーティングは、細長いシース本体222の最遠位0.5~3cmに制限され、それにより、挿入中に、穿刺部位におけるシースの安全性または術者がシースをしっかりと把持する能力を損なうことなく挿入は容易となる。別の実施形態では、シースはコーティングを有していない。
【0035】
図2を参照すると、一実施形態では、動脈アクセスシース220は、処置中のシースの固定を補助する特徴を有する。例えば、アクセスシース220は、術者が患者へのシースハブを縫合する(suture tie)ことを可能にする、アダプタ224(細長いシース本体222の近位端に位置する)に成形または取り付けられる縫合アイレット234または1つ以上のリブ236を有してもよい。
【0036】
頸動脈分岐部にアクセスする目的で総頸動脈に挿入されるように適合されたシースの場合、細長いシース本体222の長さは7~15cmの範囲であってもよく、通常10cm~12cmであり得る。内径は典型的に5Fr(1Fr=0.33mm)から10Frの範囲で、通常は6~8Frである。頭蓋内血管または脳血管へのアクセスを目的として、総頸動脈を介して中間または遠位の内頸動脈に挿入されるように適応されたシースの場合、細長いシース本体222の長さは10~30cmの範囲であってもよく、通常は15cm~25cmであり得る。内径は典型的に5Fr(1Fr=0.33mm)から10Frの範囲で、通常は5~6Frである。
【0037】
特に、シースが鎖骨上であるが頸動脈分岐部の下の経頸動脈アプローチを通して導入されるとき、ねじれ(kinking)または座屈(bucking)に抵抗するために、フープ強度を保持しながら細長いシース本体222がフレキシブルであることが望ましい。これは、動脈内へのシースの挿入量が限られている処置では特に重要であり、深い頸動脈および/または短い頸部の患者内の経頸動脈アクセスと同様に、急な挿入角度がある。これらの例では、シースの剛性のために、シース本体の先端が動脈の後壁に向けられる傾向がある。これにより、シース本体自体の挿入から、またはガイドワイヤなどの、シースを通して動脈に挿入されるデバイスからの負傷のリスクが生じる。あるいは、シース本体の遠位領域は、錐体状ICAなどの1つ以上の屈曲部を含む遠位頸動脈内に配置されてもよい。従って、それが動脈内に挿入されたときに、ねじれずに、屈曲できるようにシース本体222を構築することが望ましい。一実施形態では、シース本体222は、ステンレス鋼またはニチノール編組、ヘリカルリボン、ヘリカルワイヤ、カットステンレス鋼またはニチノールハイポチューブ、カット剛性ポリマーなど、および内側ライナーなどによって円周方向に補強され、その結果、補強構造は、外側ジャケット層と内側ライナーの間に挟まれる。内側ライナーは、PTFEなどの低摩擦材料であってもよい。外側ジャケットは、Pebax、熱可塑性ポリウレタン、またはナイロンを含む材料のグループの1つ以上であり得る。
【0038】
一実施形態では、シース本体222は、その長さにわたってフレキシブル性が異なってもよい。このフレキシブル性の変化は、さまざまな方法で実現され得る。例えば、外側のジャケットは、さまざまなセクションでデュロメータおよび/または材料が変化し得る。あるいは、補強構造または材料は、シース本体の長さにわたって変化し得る。一実施形態では、シース本体222の最遠位セクションがあり、シース本体の残りのセクションよりもフレキシブルである。例えば、最遠位セクションの曲げ剛性は、シース本体222の残りのセクションの曲げ剛性の3分の1から10分の1である。一実施形態では、最遠位セクションは、50~300N-mmの範囲の曲げ剛性(E×I)を有し、シース本体222の残りの部分は、500~1500N-mmの範囲の曲げ剛性を有し、ここで、Eはデバイスの弾性率であり、Iはデバイスの面積慣性モーメントである。CCAアクセス部位用に構成されたシースの場合、フレキシブルな最遠位セクションは、比率として表され得るシース本体222のかなりの部分を含む。一実施形態では、シース本体222の全長に対する可撓性の最遠位セクションの長さの比率は、シース本体222の全長の少なくとも10分の1から最大で半分である。
【0039】
いくつかの例では、動脈アクセスシースは、CCAアクセス部位から頸動脈分岐部または近位内頸動脈ICAにアクセスするように構成されている。この例では、シース本体222の実施形態は、3~4cmの最遠位セクション223を有し、シース本体222全体は10~12cmである。この実施形態では、シース本体222の全長に対するフレキシブルな最遠位セクションの長さの比は、シース本体222の全長の約1/4から1/2である。別の実施形態では、最遠位セクションと近位セクション231との間に、移行セクション225があり、最遠位セクションとシース本体の残りとの間でフレキシブル性が異なる1つ以上のセクションを有する。この実施形態では、最遠位セクションは2~4cmであり、移行セクションは1~2cmであり、シース本体222全体は10~12cmであり、または比として表され、最遠位のフレキシブルセクションと移行セクションは、シース本体の全長の少なくとも4分の1、最大で半分を集合的に形成する。
【0040】
いくつかの例では、動脈アクセスシースのシース本体222は、動脈アクセス位置に対してより遠位に内頸動脈内に、おそらく内頸動脈の頭蓋内セクション内に挿入されるように構成される。例えば、細長いシース本体222の最遠位部分223は2.5~5cmであり、シース本体222全体の長さは20~30cmである。この実施形態では、シース本体の全長に対するフレキシブルな最遠位セクションの長さの比は、シース本体222全体の1/10から1/4である。別の実施形態では、最遠位のフレキシブルセクションと近位セクション231との間に移行セクション225があり、最遠位セクションが2.5~5cmであり、移行セクションが2~10cmであり、シース本体222全体が20~30cmである。この実施形態では、最遠位のフレキシブルセクションおよび移行セクションは、シース本体の全長の少なくとも6分の1から最大で半分を集合的に形成する。
【0041】
他の実施形態は、最遠位シース先端が後部動脈壁に面し、接触することによって引き起こされる動脈の損傷のリスクを低減、最小化または排除するように適応される。いくつかの実施形態では、シースは、シース本体の遠位領域の長さ方向の軸が血管の管腔の長手方向軸または中心軸とほぼ平行になるように、シース本体の先端を動脈の管腔の中心に配置するように構成された構造を有する。図6に示す実施形態では、シース位置合わせ機構は、動脈アクセスシース220の外壁に配置された、例えばバルーン608などの膨張可能または拡大可能なバンパーである。バルーン608は、動脈アクセスシースの細長い本体222に接触してそれを動脈壁から押し離す力を動脈内に加えるためにサイズを大きくすることができる。
【0042】
別の実施形態では、シース位置合わせ機構は、シース先端から外向きに延在するように作動させることができるシース本体上の1つ以上の機械的構造である。一実施形態では、シース本体222は、動脈アクセスの特定の端部が動脈の後壁に接する(又は対する:against)ように、動脈内に挿入されるように構成される。この実施形態では、シース位置合わせ機構は、シース先端を持ち上げて後部動脈壁から押し離すために、シース本体222の長手方向軸に対する一方向から外向きに延在するだけでよい。例えば、図6に示すように、膨張可能なバンパー608は、シース本体の片側のブリスターである。別の例では、機械的機構はシース本体の片側のみに延在している。
【0043】
別の実施形態では、シース本体222の少なくとも一部は、シース挿入後、急なシース挿入角度であっても、先端が血管の長軸により並ぶように事前に成形されている。この実施形態では、シースガイドワイヤを越えてシース挿入中に拡張器がシースと組み立てられるとき、シース本体はほぼ直線であるが、拡張器とガイドワイヤが取り外されると、シース本体の最遠位セクションは湾曲したまたは傾斜した形状をとる。一実施形態では、シース本体は、シース本体の主軸から測定して、最遠位の0.5~1cmのセクションが10~30度の角度であるような曲率半径が約0.5インチの形状である。挿入中に真っ直ぐになった後、シース本体の湾曲形状または傾斜形状を保持するために、製造中にシースを傾斜形状または湾曲形状にヒートセットしてもよい。あるいは、補強構造をニチノールで構築し、製造中に熱成形して湾曲形状または傾斜形状にしてもよい。あるいは、追加のバネ要素をシース本体に追加してもよく、例えば、正確な形状のバネ鋼またはニチノールのストリップをシースの補強層に追加してもよい。
【0044】
別の実施形態では、Changの米国特許第7998104号およびCriadoの米国特許第8157760号(両方とも参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、アクセスシースを通る流れ抵抗を最小化することが望ましい処置がある。図7は、シース本体222のそのような実施形態を示しており、シース本体は、)減少した直径(減少した直径は、シースの残りに対して相対的である)の遠位領域705を有する階段状またはテーパー状の構成を有する。階段状シースの遠位領域705は、頸動脈内への挿入用にサイズ設定することができ、典型的には0.065インチから0.115インチの範囲の内径を有し、シースの残りの近位領域はより大きな外径および管腔径を有し、内径は典型的に0.110インチから0.135インチの範囲であり得る。シース本体の残りのより大きな管腔径は、シースを通る全体の流れ抵抗を最小化する。一実施形態では、減少した直径の遠位セクション705は、約2cmから4cmの長さを有する。減少した直径の遠位セクション705の比較的短い長さは、このセクションが経頸動脈アプローチを介して総頸動脈CCA内に配置されることを可能にし、シース本体の遠位端が分岐部Bに接触するであろうリスクを低減する。さらに、減少した直径のセクションはまた、流れ抵抗のレベルに最小限の影響を与えながら、シースを動脈内に導入するための動脈切開のサイズの縮小を可能にする。さらに、減少した遠位直径セクションは、よりフレキシブルであってもよく、従って、血管の内腔により適合(conformal)していてもよい。
【0045】
いくつかの例では、例えば遠位塞栓を生じさせ得る処置において、シース本体222が配置されている動脈を閉塞できることも望ましい。これらのケースでは、動脈を閉塞すると、動脈内の順行性血流が停止し、TIAまたは脳卒中などの神経症状を引き起こす可能性のある遠位塞栓のリスクが減少する。図8は、シース本体222の内部膨張管腔をストップコック229に接続し、順に膨張デバイスに接続し得る、膨張ライン810を介して膨張する、遠位領域上に膨張可能なバルーン805を有する動脈アクセスシース220の実施形態を示す。この実施形態では、遠位塞栓のリスクをさらに低減するために、受動的または能動的吸引源に接続することができるYアーム815もある。
【0046】
いくつかの例では、シースの挿入可能なシース本体222の長さを維持しながら、シースの遠位先端から止血弁を遠ざけることが望ましい。この実施形態は、術者の手を、実際には彼または彼女の全身を標的部位から遠ざけ、従って標的部位をX線透視法で撮像するために使用されるイメージインテンシファイア(image intensifier)から遠ざけ、従って処置中のユーザーへの放射線曝露を低減するように構成される。本質的に、これは、体外にある動脈アクセスシース220の部分を長くする。この部分は、シース本体222よりも大きい内径および外径であり得る。シース内に挿入されるカテーテルの外径がシース本体の内径に近い例では、流れに利用できる管腔の環状空間の制限がある。従って、シースを生理食塩水または造影剤で洗い流す間、またはシースからの吸引または逆流の間など、シース本体の長さを最小にすることは、流れに対するこの抵抗を最小限に抑えるのに有利である。一実施形態では、図9に示すように、動脈アクセスシース220は、挿入可能な細長いシース本体222(すなわち、動脈内に挿入するように構成された部分)および近位延長部分905を有する。一実施形態では、シース本体222は、6フレンチシースサイズに対応する、約0.087インチの内径および約0.104インチの外径を有し、近位延長部分は、約0.100インチから0.125インチの内径および約0.150インチから0.175インチの外径を有する。別の実施形態では、シース本体222は、8フレンチシースサイズに対応する、約0.113インチの内径および約0.136インチの外径を有し、近位延長部分は、約0.125インチの内径および約0.175インチの外径を有する。さらに別の実施形態では、シース本体222は、図7のように、流れ制限をさらに低減するために、より小さい直径の遠位セクション705で段付けされる(stepped)。一実施形態では、近位延長部分905は、経頸動脈アクセス処置中にユーザーへの放射線曝露を有意に低減するのに適した長さである。例えば、近位延長部分905は、10~25cm、または15~20cmである。あるいは、近位延長部分905は、アクセスシースの挿入可能な長さに応じて、止血弁226とシース本体の遠位先端との間に約30cm~60cmの距離を提供するように構成された長さを有する。コネクタ構造915は、細長いシース本体222を近位延長部分905に接続することができる。この実施形態では、コネクタ構造915は、アクセスシースを患者に固定するのを補助する縫合糸アイレット920および/またはリブ925を含んでもよい。一実施形態では、止血弁226は、静的シールタイプの受動弁である。別の実施形態では、止血弁226は、Tuohy-Borst弁227または回転止血弁(RHV)などの調節可能な開口弁である。あるいは、近位延長部は、受動シール弁、Tuohy-Borst弁または回転止血弁(RHV)のいずれかである別個の止血弁コンポーネントが取り付けられ得るメス型ルアーアダプタ内の近位端で終端してもよい。
【0047】
典型的には、血管閉鎖デバイスは、シース本体の遠位先端と止血弁の近位側面との間の最大距離が約15cmで、シース本体222が約11cmで残りの4cmが近位止血弁の長さを含む動脈アクセスシースを必要とし;従って、アクセスシースが15cmを超える距離を有する場合、処置の終わりに近位延長部分905を除去することが望ましい。一実施形態では、近位延長部分905は、取り外し後に止血が維持されるように、取り外し可能である。例えば、シース本体222と近位延長部分905との間のコネクタ915に止血弁が組み込まれる。近位延長部分905が取り付けられるとき、止血弁が開かれ、流体連通およびデバイスの挿入を可能にするが、近位延長部分905が取り外されるときにシースからの血液の流出を防ぐ。処置が完了した後、近位延長部分905を取り外して、止血弁の近位側面とシース先端との間の距離を15cm以上から15cm以下に減らすことができ、従ってアクセスシース220と共に使用される血管閉鎖デバイスによりアクセス部位を閉鎖することができる。
【0048】
いくつかの処置では、Changoの米国特許第7998104号およびCriadoの米国特許第8157760号(両方とも参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、低抵抗(大口径)フローラインまたはシャントをアクセスシースに接続することが望ましい場合がある。図10に示す動脈シースの実施形態は、コネクタ915のYアーム1015への内部管腔を備えたフローライン1005を有する。このフローラインは、シース本体内の管腔に流体的に接続された管腔を有する。フローライン1005は、静脈リターン部位またはリザーバーなどのより低い圧力リターン部位に接続されてもよい。フローライン1005はまた、ポンプまたはシリンジなどの吸引源に接続されてもよい。一実施形態では、閉塞要素、例えば閉塞バルーンをシース本体222の遠位端上に含めてもよい。これは、血管ループまたは血管クランプなどの血管外科的手段によって血管を閉塞することができない経皮的処置において望ましい場合がある。
【0049】
いくつかの処置では、例えば標的領域が動脈アクセス部位に非常に近い処置で、動脈内へのシース本体の挿入量を制限することが望ましい場合がある。例えば、頸動脈分岐部のステント処置では、シースの先端を治療部位の近位に配置して(アクセス位置に対して)、ステントの展開を妨げたりしないように、または疾患領域に侵入しないようにして、塞栓が緩まないようにする必要がある。図11Aおよび図11Bに示される動脈シース220の実施形態では、シースストッパー1105は、シース本体の遠位部分の外側にわたってスライド可能に接続または取り付けられる(図11Cおよび図11Dも参照)。シースストッパー1105は、シースの遠位部分よりも短く、シース本体222に沿った、ある長さで確実に(positive)停止させることにより、シース本体222の挿入可能部分を効果的に短くする。シースストッパー1105は、シース本体222上に配置されたときにシース本体の遠位部分を露出したままにする長さで、シース本体222にわたってスライド可能に適合する(又は収まる:fits)チューブであってもよい。この長さは2~4cmの範囲であり得る。より具体的には、長さは2.5cmである。図11に示すように、シースストッパー1105の遠位端は、角度が血管と同一平面上にあり、血管が動脈内に挿入されるときに、シースが動脈に挿入されると動脈壁に対するストッパーとして機能するように、角度を付けて配向され得る。あるいは、シースストッパーの遠位端は、図11B、11Cおよび11Dに示すように、動脈壁に接触する傾斜フランジ1115内に形成されてもよい。フランジ1115は、動脈壁に対してより確実なかつ非外傷性の停止をさせるために、丸みを帯びている(又は曲線状の:rounded)か、非外傷性形状を有する。シースストッパー1105は、動脈シースに永久的に固定されてもよく、例えば、シースストッパーの近位端は、動脈アクセスシースのコネクタ915に接着されてもよい。あるいは、シースストッパー1105は、ユーザーによって動脈アクセスシース220から取り外し可能であってもよく、それにより処置中で任意に利用することができる。この例では、シースストッパー1105は、コネクタ915上に対応するロック機構、例えばコネクタ上の突起と係合する近位シースストッパー上にスロットまたは凹部と係合するロック機構1110を、近位部分に有してもよい。他のロック機能も利用することができる。
【0050】
再び図11C~11Dに関して、シースストッパー1105は、シースストッパー1105の長さに沿って、例えばシースストッパー1105の前面に沿って、1つ以上の切り欠き、くぼみ、または凹溝1120aまたは他の特徴を含むことができる。溝1120aは、シース220を患者に固定するために使用される縫合糸を受容するサイズであり、シースの安定性を改善し、シースを外れにくくする。シースストッパー1105上の1つ以上の凹溝1120aは、シースストッパー1105の長手方向軸の周りの円弧に沿って延在することができる。前面上の1つ以上の凹溝1120aは、シースストッパー1105の後面上の対応する1つ以上の凹溝1120bと交互にまたは互い違いのパターンであり得、動脈壁に対するシースストッパーの前進力を可能にする軸方向強度を維持しながら、前方から後方の平面でシースアセンブリにさらなるフレキシブル性を提供する。シースアセンブリのフレキシブル性の向上により、血管にかかり得るストレス(又は応力:stress)の量を減らすことができる。いくつかの実装では、視覚インジケータ1125をシースストッパー1105の前面に配置することができる。視覚インジケータ1125は、パッド印刷されたテキスト、線、または他のパターンとすることができる。視覚的インジケータ1125は、シースストッパー1105の本体に直接成形することができる。インジケータ1125は、血管に対するシースストッパーの回転方向(したがって、遠位フランジ1115の方向)の外部視覚基準を提供することができる。使用中、インジケータ1125は、患者に対して前方を向くことができる。この向きを使用して、遠位フランジ1115は、血管、すなわち総頸動脈の前壁に対してほぼ平らに横たわることができる。シースストッパー1105が組み込むことができる追加の特徴は、参照により本明細書に組み込まれる米国公開第2016/0296690号に記載されている。
【0051】
上述のように、アクセスシース220は、放射線不透過性先端マーカー230を含んでもよい。アクセスシース220は、以下に詳細に説明するように、挿入の深さを評価するための特別な画像なしに、シース220の挿入中に外部視覚ガイダンスを提供するシース本体222に配置される1つ以上のマーカー265(図11E参照)を組み込むこともできる。いくつかの実装では、マーカー265は、1cmから最大約5cmの増分で挿入深さを指定するパッド印刷されたマーカーとすることができる。シース本体222上の外部視覚参照マーカー265は、放射線不透過性先端マーカー230およびシースストッパー1105により提供される物理的深さ制限を補完することができる。外部視覚参照マーカー265は、例えば、ユーザーがシース220を、シースストッパー1105によって規定されるよりも浅い深さまで挿入したいとき、またはユーザーがシース本体222からシースストッパー1105を取り外すときに、有用であり得る。
【0052】
シース本体の挿入が2~3cmに制限されている場合、特にシース本体が急な角度で挿入されているときに、シースは患者に固定されるときに差込形状(又はバヨネット形状:bayonet shape)に適合してもよい。例えば、差込形状は、第1軸に沿って延在する第1部分と、第1軸から軸方向にオフセットである(offset)および/または第1軸に非平行である第2軸に沿って延在する第2部分とを含み得る。シース本体の弾力性により、この形状が挿入部位で血管に力を加え、適切に固定されていない場合、シースが血管から抜ける傾向を高める。血管への応力を低減するために、シースストッパーを湾曲形状または差込形状に事前に成形して、湾曲時のシース本体の応力が血管ではなくシースストッパーに与えられるようにしてもよい。シースストッパーは、弾力性はあるが曲げ可能な材料で作られるか、ステンレス鋼若しくはニチノールのワイヤ又はストリップなどのバネ要素を含むことができ、そのため、拡張器をシースおよびシースストッパーアセンブリ内に挿入するとき、シースは比較的まっすぐになるが、拡張器が取り外されるとき、シースストッパーは、シースが血管壁に与える力を低減するために、あらかじめ湾曲した形状をとる。あるいは、シースが所望の曲率に挿入された後、シースが血管壁に与える応力を低減するように再成形できるように、シースストッパーは可鍛性材料で作られていてもよく、曲げ可能なワイヤまたはストリップなどの可鍛性要素を含んでいてもよい。
【0053】
(シース拡張器)
再び図2を参照すると、シース拡張器260は、経頸動脈アクセスシースシステム200の構成要素である。シース拡張器260は、動脈内に挿入され、シースガイドワイヤ300を越えて動脈壁内の穿刺部位を通してアクセスシース220をスムーズに挿入できる細長い本体である。従って、拡張器260の遠位端は、拡張器を、シースガイドワイヤ300を越えて動脈内に挿入することを可能にし、アクセスシース220自体の挿入のために針穿刺部位をより大きな直径に拡張するように一般にテーパー形状(又は先細:tapered)になっている。これらの機能に対応するために、拡張器260は、(拡張器の長手方向軸に対して)全てが含まれる角度(total included angle)が概して6~12度である前縁半径を有するテーパーを備えたテーパー状端部268を有する。シース拡張器は典型的に、動脈内への挿入用に組み立てられたときにアクセスシースに固定される(又は固定される:locked)。例えば、シース拡張器260の近位ハブ264は、動脈アクセスシース220の止血弁226上の対応する構造内に、またはその構造にわたってスナップするように構成される。拡張器260の内部管腔は、例えば、シースガイドワイヤのサイズに応じて、0.037~0.041インチの内径を有するシースガイドワイヤ300を収容する。
【0054】
経頸動脈アクセスシースシステム200の場合、アクセスシース220のフレキシブル性が増大したセクションに対応するために、シース拡張器260の遠位セクションをよりフレキシブルにすることが望ましい場合がある。例えば、シース拡張器260の遠位2~5cmは、シース拡張器260の近位部分より、20%~50%よりフレキシブルであり得る。この実施形態は、経頸動脈アクセス処置の場合によくあるように、拡張器の円柱状支持体を維持しながら、ガイドワイヤを越えてのよりスムーズな挿入により、シースおよび拡張器を挿入して急な挿入角度に適応させることができる。円柱状支持体は、穿刺部位を拡張し、アクセスシースを挿入するのに必要な挿入力を提供するために望ましい。
【0055】
いくつかの経頸動脈アクセスシースシステムでは、シースと拡張器を動脈内に誘導するために、より小さな直径(例えば、直径0.014インチから0.018インチの範囲)のアクセスガイドワイヤも使用することが望ましい場合がある。この実施形態では、シース拡張器のテーパー状端部268は、より小さいワイヤサイズからアクセスシースへのスムーズな移行を提供するように構成される。一変形例では、シースガイドワイヤは0.018インチであり、内部拡張器管腔は0.020インチ~0.022インチの範囲にある。別の変形例では、シースガイドワイヤは0.014インチであり、内部拡張器管腔は0.016インチから0.018インチの範囲にある。テーパーも同様に変更され、例えばテーパーの長さは、アクセスシースのより小さい直径から内径までのテーパーに対応するようにより長くなり、または、テーパーの全長を過度に長くすることなく、より小さい直径のワイヤからアクセスシースへのスムーズな移行を提供する2つのテーパー角度を含んでもよい。
【0056】
いくつかの処置では、動脈アクセスシース220のシース本体222の遠位先端を、上記のようにICAの中間から遠位の頸部、錐体部、または海綿状のセグメント内に配置することが望ましい。これらのセグメントの曲率は、しばしば90度を超える。動脈を傷つけるリスクなしにこれらの屈曲部を簡単に操縦(navigate)できるように、より柔軟で長いテーパーを備えたシース拡張器を使用することが望ましい場合がある。しかしながら、動脈穿刺を通してシースを挿入するために、拡張器は、望ましくは、一定の剛性とテーパーを有して拡張力を提供する。一実施形態では、経頸動脈アクセスシースシステム200は、2つ以上のテーパー状拡張器260Aおよび260Bを含むキット内に供給されるか、または含まれる。第1のテーパー状拡張器260Aは、動脈アクセスデバイスと共に使用されて動脈内に進入し、従って、標準的な導入シース拡張器(introducer sheath dilators)と同様の方法でサイズ設定および構築される。テーパー状拡張器に使用できる材料の例には、例えば、高密度ポリエチレン、72D Pebax、90D Pebax、または同等の剛性および潤滑性の材料が含まれる。キットの第2のテーパー状拡張器260Bは、第1のテーパー状拡張器の遠位セクションに比べて、より柔らかい遠位セクションまたはより低い曲げ剛性を有する遠位セクションを備えた動脈アクセスデバイスと共に供給され得る。すなわち、第2の拡張器は、第1の拡張器の対応する遠位領域よりも、より柔らかく、よりフレキシブルであるか、または関節運動(articulates)しやすいもしくは屈曲しやすい遠位領域を有する。従って、第2の拡張器の遠位領域は、第1の拡張器の対応する遠位領域よりも容易に曲がる。一実施形態では、第1の拡張器260Aの遠位セクションは、50~100N-mmの範囲の曲げ剛性を有し、第2の拡張器260Bの遠位セクションは、5~15N-mmの範囲の曲げ剛性を有する。
【0057】
第2の拡張器260B(曲げ剛性がより低い遠位セクションを有する)は、第2の拡張器の遠位セクションが柔らかいため、血管への過度の力または外傷なしに、動脈アクセスデバイスが内頸動脈内に挿入され、動脈内の屈曲部の周りに挿入され得るように、初期の第1の拡張器と交換することができる。柔らかい第2の拡張器の遠位セクションは、例えば、35または40D Pebaxであってもよく、近位部分が、例えば、72D Pebaxでできていてもよい。第2の拡張器上に中間部分を含むことにより、柔らかい遠位セクションとより硬い近位セクションとの間の滑らかな移行が提供されてもよい。一実施形態では、拡張器の先端位置を蛍光透視法で可視化できるように、一方または両方の拡張器は放射線不透過性の先端マーカーを有してもよい。ある変形例では、放射線不透過性マーカーは、拡張器の遠位先端に熱溶接されたタングステン充填Pebaxまたはポリウレタンのセクションである。同様に他の放射線不透過性材料を使用して、遠位先端に放射線不透過性マーカーを作製してもよい。
【0058】
第1拡張器の第2拡張器への交換を容易にするために、拡張器の遠位セクションがテーパー状単一管腔チューブで構成され得るように、一方または両方の拡張器が構成され得るが、拡張器の近位部分および近位端上のアダプタは側面開口部を有する。図12は、動脈内に挿入されるサイズおよび形状の細長い部材と、近位ハブ1210とで形成された拡張器1205の例を示す。拡張器は、細長い本体および近位ハブ1210に沿ってなど、拡張器1205の長さの少なくとも一部に沿って延在するスロットなどの側面開口部1215を有する。一実施形態では、側面開口部1215は、拡張器1205の近位領域上にのみ、近位ハブ1210を通して配置されるが、これは変化してもよい。側面開口部1215は、管腔内または管腔からガイドワイヤを挿入および/または除去するなど、拡張器1205の内腔へのアクセスを提供する。片側にスロットを備えた環状の可動スリーブ1220は、拡張器1205の近位ハブ1210にまたはその近くに配置されている。スリーブ1220は、以下に説明するように、ハブ1210の長手方向軸について回転するなどにより移動できる。拡張器1205の遠位端は、組織を拡張するためのテーパー状の構成を有することに注意されたい。
【0059】
図13は、拡張器1205の近位領域の拡大図を示す。上述のように、拡張器1205は、拡張器1205および近位ハブ1210の長さに沿って延在するスロットの形態内の側面開口部1215を有する。スリーブ1220は、拡張器の外周に配置され、それが側面開口部1215の少なくとも一部を覆うような形状をとる。従って、スリーブ1220は、拡張器1205の内側に位置するガイドワイヤが、側面開口部1215を介して拡張器から出るのを防ぐことができる。上述のように、スリーブ1220は、拡張器1205および近位ハブ1210に対して回転可能である。図示の実施形態では、スリーブ1220は、拡張器1205の長手方向軸の周りに回転可能であるが、他のタイプの相対運動も本開示の範囲内である。図14に示すように、スリーブ1220は、側面開口部1215と並び得るスロット1225を有する。このように並ぶとき、スロット1225および側面開口部1215は、拡張器の内腔に挿入される、または内腔から除去されるガイドワイヤの開口部を集合的に提供する。スリーブ1220は、図13に示される位置(それが側面開口部1215を覆っている)と図14に示される位置(スロット1225が側面開口部1215と並んでいるため、側面開口部は覆われていない)との間で回転することができる。
【0060】
アクセスシースキットのこの実施形態の使用方法をここで説明する。0.035インチのガイドワイヤなどのシースガイドワイヤを、改良セルディンガー法またはマイクロパンクチャー法を使用して総頸動脈内に挿入する。ガイドワイヤの遠位端は、内頸動脈または外頸動脈内に配置するか、または分岐部の手前の総頸動脈内で停止させることができる。第1の、より硬い拡張器を備えた動脈アクセスシースを、0.035インチワイヤを越えて動脈内に挿入する。動脈アクセスシースは、シース本体222の少なくとも2.5cmが動脈内にあるように挿入される。追加の手段(又は購入:purchase)が必要な場合は、動脈アクセスシースをさらに、内頸動脈内に向けることができる。動脈アクセスシースと0.035インチワイヤの両方を所定の位置に保ちながら、第1の拡張器を取り外す。拡張器の近位部分の側面開口部1215により、拡張器の取り外し中にアクセスデバイスの外側のガイドワイヤのほとんどを直接つかむことができるように、拡張器を「急速交換」方式で取り外すことができる。次に、第2の拡張器を0.035インチワイヤ上に装着し、シース内に挿入する。再び、拡張器の近位部分内に側面開口部1215を有する拡張器を使用して、「急速交換」技術でのガイドワイヤ挿入中に0.035インチのワイヤを直接つかむことができる。第2の拡張器が動脈アクセスデバイス内に完全に挿入されると、先端がより柔らかい第2の拡張器を備えた動脈アクセスシースを、過度の力または血管外傷の心配なしに、内頸動脈および動脈の屈曲部まで進める。この構成により、動脈内へのデバイスの挿入能力を損なうことなく、動脈アクセスシースをより遠位に配置できる。
【0061】
あるいは、側面開口部なしで1つ以上の標準的な拡張器を使用することもできる。側面開口部のない標準的な拡張器を使用する場合、アクセスデバイスを第1の拡張器でガイドワイヤを介して動脈内に挿入した後、第1の拡張器をガイドワイヤと一緒に取り外して、アクセスデバイスのみを所定位置に残し得る。中央管腔内に事前に装着されたガイドワイヤを備えた第2の拡張器は、動脈アクセス装置内に一緒に挿入されてもよい。完全に挿入されると、上記のように、アクセスデバイスおよび先端がより柔らかい第2の拡張器を、内頸動脈まで遠位方向に前進させることができる。この代替方法では、初期のガイドワイヤを両方の拡張器で使用するか、または第2のより柔らかい先端の拡張器で挿入するときは、より柔らかい先端のガイドワイヤに交換できる。
【0062】
いくつかの例では、0.035インチのワイヤを越えて頸動脈内にアクセスシースシステムを挿入することが望ましい場合があるが、その後、ワイヤを0.014インチから0.018インチの範囲のより小さなガイドワイヤに交換する。頸動脈内へのアクセスには急な進入角度が必要な場合があるため、アクセスシースを最初にCCA内に導入するには、0.035インチワイヤなどの良好な支持を提供できるワイヤが望ましい場合がある。ただし、一旦シースが動脈内にあるが、ユーザーがそれをより小さなガイドワイヤを越えてさらに進めたい場合、0.035インチのワイヤをより小さなガイドワイヤに交換することが望ましい場合がある。あるいは、ユーザーは、拡張器と0.035インチのワイヤの両方を、より柔軟な拡張器と、0.014インチから0.018インチの範囲のより小さなガイドワイヤと交換してもよい。あるいは、ユーザーは、シースと拡張器がまだ所定の位置にある間に、インターベンションデバイスを導入するために後で使用するであろう0.014インチのガイドワイヤを配置したい場合がある。拡張器は、このガイドワイヤへのアクセスとサポートを提供し、厳しいアクセスシース角度の例では、ワイヤを管腔損傷の危険なしに血管内腔に安全に進めることができるように、ワイヤを動脈の後壁から遠ざけるのに役立ち得る。
【0063】
図15に示す実施形態では、シース拡張器260は、同軸配置で互いにスライド可能に取り付けられる内側拡張器269および外側拡張器270を備えた2部分拡張器アセンブリ(two-part dilator assembly)である。両方の拡張器は、近位ハブ264aおよび264bを有する。2つの拡張器が一緒に組み立てられるとき、2つのハブ264aおよび264bは、2つの拡張器を1つのユニットとして扱うことができるように、それらが一緒に固定されることを可能にする特徴、例えばスナップフィットまたはネジ式フィットを有する。一実施形態では、内側拡張器269は、外側拡張器270の近位ハブ264a上の外側ねじ山と係合する内側ねじ山を有する回転カプラーを含む近位ハブ264bを有する。内側拡張器269は、拡張器アセンブリを0.035インチワイヤまたは0.038インチワイヤの互換性拡張器から0.018インチワイヤまたは0.014インチワイヤの互換性拡張器に効果的に変換し、外部拡張器の遠位端から外に延在する。図16に示す実施形態では、内側拡張器は、拡張器の残りの長手方向軸に対して屈曲または傾斜した傾斜先端276を有する。一実施形態では、その角度は45度の角度である。この傾斜先端276により、ユーザーはガイドワイヤを1つまたは別の分岐血管にさらに容易に向けることができる。内側拡張器は、図15に示すように真っ直ぐなテーパー状の先端を有してもよく、図16に示すように傾斜した先端を有していてもよい。あるいは、内側拡張器は、曲線状の前端を備えた、遠位端に対して一定の外径を有してもよい。一実施形態では、内部拡張器は、蛍光透視法の下での拡張器の視覚化を補助するために、遠位先端またはその近くに放射線不透過性マーカー274を有する。一実施形態では、内側拡張器は、特定の方向に傾斜先端を向けるのを補助するように、それによりトルクがかかるように強化される。例えば、拡張器はコイルまたは編組補強層を有してもよい。一旦インターベンションワイヤを配置したら、2部拡張器を取り外し、それからワイヤを使用して、インターベンションデバイスを、動脈シースを通して動脈内に挿入し、治療部位に進める。
【0064】
図17に示す代替実施形態は、2つの別個のワイヤサイズを拡張器で使用できる。この実施形態は、デバイスの長さに沿って延在する2つのガイドワイヤ内腔を備えた拡張器1705を含む。図17は、この実施形態の遠位端を示す。断面図18でより明確に見られるように、一方の管腔1805は、0.035インチまたは0.038インチのガイドワイヤ用に構成され、他方の管腔1815は、0.014インチから0.018インチのガイドワイヤ用である。この実施形態では、より大きな管腔1805は、テーパー268の中心線の周りに中心があり、一方、より小さな管腔1815は、テーパーの中心線からオフセットしている(offset)。この構成では、アクセスシースは、より大きな管腔1805内に配置されたより大きなガイドワイヤを越えて動脈内に導入される。一旦配置されると、インターベンションワイヤは第2の管腔1815を通して配置され得る。次に、より大きなガイドワイヤおよび拡張器をアクセスシースから取り外し、その後、インターベンションワイヤを使用して、インターベンションデバイスを、動脈シースを通して動脈内に挿入し、上記のように治療部位まで前進させ得る。
【0065】
(シースガイドワイヤ)
動脈アクセスシースは、典型的には、直径0.035インチまたは0.038インチのシースガイドワイヤを越えて動脈内に導入される。拡張器の遠位先端の内径とテーパー長さは、そのようなガイドワイヤに適合するサイズである。例えば、橈骨動脈アクセス用のいくつかのシースは、直径0.018インチのシースガイドワイヤを収容できるサイズで、対応する拡張器は遠位先端の内径とテーパー長さを有する。シースガイドワイヤは、非外傷性の真っ直ぐの、傾斜したまたはJ-先端を有してもよい。ガイドワイヤは、近位端上のより硬いセグメントにスムーズに移行する。この構成は、シースがワイヤを越えて動脈内に導入されるときにシースの支持を可能にしながら、動脈内へのワイヤの非外傷性の進入および前進を可能にする。典型的に、非外傷性先端から硬い部分への移行は約4~9cmである。シースは通常、シースを挿入するときに、ワイヤのより硬いセグメントが動脈進入部位にあるように、動脈内に15~20cm挿入される。
【0066】
ただし、経頸動脈アクセス侵入ポイントのケースでは、潜在的に遠位血管に損傷を引き起こす前に挿入できるワイヤの量は、15cmをはるかに下回る。頸動脈ステントまたはPTA処置のための経頸動脈アクセスのケースでは、頸動脈疾患の部位でシースガイドワイヤによって遠位塞栓が生成されるリスクを回避するために、ワイヤ挿入長を制限することが非常に重要である。従って、挿入の長さを制限しながら、潜在的に急なシース進入角度をサポートできるガイドワイヤを提供することが望ましい。一実施形態では、経頸動脈シースガイドワイヤは、非外傷性の先端セグメントを有するが、より硬いセグメントへの非常に遠位の短い移行部を有する。例えば、柔らかい先端部は1.5~2.5cmで、長さ3~5cmの移行部が続き、さらに硬い近位セグメントが続き、より硬い近位部が残りのワイヤを含む。いくつかの実装では、柔らかい先端部(すなわち、ガイドワイヤの遠位先端を含む最遠位フレキシブルセクション)は1cm~2cmであり、フレキシブル最遠位セクションと移行セクションから近位に延在するより剛性のコアセクションとの間に位置する移行セクションは3cm~5cmである。
【0067】
シースガイドワイヤは、ユーザーが、ワイヤの先端が拡張器に対してどこにあるかを判断するのに役立つガイドワイヤマーキング318を有してもよい。例えば、ワイヤの先端がマイクロアクセスカニューレの先端から出ようとしているときに対応する、ワイヤの近位端上にマーキングがあり得る。このマーキングは、迅速なワイヤ位置フィードバックを提供し、ユーザーがワイヤ挿入量を制限するのに役立つ。別の実施形態では、ワイヤは、ワイヤが設定距離、例えば5cmだけカニューレを出たことをユーザーに知らせるための追加のマークを含んでもよい。
【0068】
(マイクロアクセスコンポーネント)
図1を参照すると、初期の経頸動脈アクセスのためのマイクロアクセスキット100は、アクセス針120、アクセスガイドワイヤ140およびマイクロアクセスカニューレ160を含む。マイクロアクセスカニューレ160は、本体162および本体162の管腔内にスライド可能に配置される内側拡張器168を含む。典型的に動脈アクセスの場合、初期の針穿刺は21Gまたは22Gアクセス針であってもよく、または改良セルディンガー法を使用する場合は18G針が使用される。経頸動脈アクセスの場合、さらに小さな針穿刺でアクセスすることが望ましい場合がある。頸動脈の経皮的アクセスは、典型的に、大腿動脈の経皮的アクセスよりも困難である。頸動脈はより厚い壁の動脈であり、頸動脈シースとして知られる組織スリーブによって囲まれており、周囲の筋肉組織によってあまり固定されていないため、初期の針刺しはより難しく、安定性の低い動脈により多くの力をかけて行う必要があり、従って穿刺の誤配置、動脈解離または後壁穿刺のリスクが高まる。例えば、23Gまたは24G針などの初期の針穿刺が小さいほど、針の進入が容易になり、これらのリスクが軽減される。シースガイドワイヤは、結果的に、例えば0.016インチまたは0.014インチのワイヤなど、より小さな針に収まるサイズにすべきである。アクセス針120は、動脈内への針の超音波ガイド下での挿入を補助するために、遠位端上にテクスチャ表面を含んでもよく、超音波でそれを可視可能にすることができる。針の長さは、4cmから8cmの範囲の長さであり得る。
【0069】
図19Aおよび19Bで最もよく示されるように、アクセス針120はまた、針シャフトの遠位端の近くに配置された可視深度インジケータ124を含み得る。可視深度インジケータ124は、超音波または放射線撮影、または他の画像化技術の補助なしにユーザーに可視可能にすることができ、針挿入中の基準と血管内への直接挿入中のガイドワイヤの操作をユーザーに提供する。21G、22G、23G、または24G針であり得るアクセス針120は、内部管腔を規定し、近位ハブ122に結合した細長いシャフトを有することができる。針ハブ122の遠位端からそのシャフトの遠位先端までのシャフト長さは30mmから約100mmの間であり得る。いくつかの実装では、シャフト長さは約40mmまたは70mmである。可視深度インジケータ124は、針120の遠位先端から距離D、例えば約3mmから約7mm、または好ましくは4.5mmから5mm離れて、針120の細長いシャフト上に配置することができる。いくつかの実装では、深さインジケータ124は、総頸動脈(CCA)内への直接アクセスなどの使用中にインジケータ124が肉眼で容易に視覚できるように、約1mmから約2mmの幅Wを有することができる。深さインジケータ124の存在は、術者がアクセス針120を血管の反対側の壁の中にまたはそれを通して進めるリスクを低減する。血管内への針120の前進は、遠位先端から既知の距離である、血管内への深度インジケータ124の前進を評価することにより視覚的に測定することができる。深度インジケータ124は、化学エッチング、レーザーエッチング、パッド印刷または他のマーキング方法を使用して作製され得る。
【0070】
マイクロパンクチャーキット内で典型的に使用されるアクセスガイドワイヤは、例えば30~50mm長の比較的長い遠位のフロッピーセクション(又は柔軟セクション:floppy sections)を有することができる。しかし、経頸動脈血行再建術(TCAR)などのいくつかの用途では、ガイドワイヤの先端が動脈の病変部内に進入するのを避けるために、術者はガイドワイヤを血管内に30~40mmだけ進めたい場合がある。長い遠位フロッピーセクションを備えたガイドワイヤの場合、ガイドワイヤの最初の30~40mmのみを挿入することは、ガイドワイヤの支持部が血管の外側に残り、ガイドワイヤの非支持部のみがカニューレと拡張器を前進させることができることを意味する。ガイドワイヤの非支持部を越えてマイクロアクセスカニューレと拡張器を進めることにより、血管の内面に損傷を引き起こすリスクが高くなる。従って、本明細書で記載するアクセスガイドワイヤは、血管内に挿入されるより短い長さを可能にし、カニューレおよび拡張器がそれを越えて前進するために血管内でより剛性の近位支持部が利用可能であることを保証する、より短い、遠位のフロッピーセクションを有する。
【0071】
本明細書に記載のガイドワイヤ140は、遠位先端で終端するより短い最遠位のフレキシブルセクション、例えば、ちょうど1cmから2cmの長さのフレキシブルセクションを有することができる。最遠位のフレキシブルセクションに近位の移行セクションは、移行セクションから近位に延在するより硬いコアセクションに向かって剛性が近位に移行する。そのようなマイクロアクセスガイドワイヤは、典型的に、直径が0.018インチであり、約1~2cmの最遠位のフレキシブルセクション、5~6cmの移行セクションがガイドワイヤの長さの残りの部分に延在する、より堅いコアセクションにつながる。一実施形態では、経頸動脈アクセスガイドワイヤは、直径が0.014インチから0.018インチであり、1cmの最遠位のフレキシブルセクション、2~3cmの移行セクションを有し、遠位先端に硬い支持コアセクションをより近づける。これにより、ユーザーは、急なアクセス角度およびワイヤ挿入長の制限があっても、マイクロアクセスカニューレの挿入を適切にサポートできる。
【0072】
シースガイドワイヤと同様に、マイクロアクセスガイドワイヤ140は、ユーザーがガイドワイヤ140の先端を、血管ならびにマイクロアクセスシステム100の他の構成要素、例えば、アクセス針120、マイクロカニューレ160、および/または内側拡張器168(図1および図19Aを参照)に対して、どこにあるかを判断するのを助けるために、ガイドワイヤ140の遠位先端から既知の距離に配置された、肉眼で見える少なくとも1つのガイドワイヤマーキングまたは深度インジケータ143を有してもよい。深度インジケータ143は、ユーザーがワイヤ挿入量を制限するのを助けるために、超音波または放射線撮影などの特別な視覚化技術なしで、迅速なワイヤ位置フィードバックを提供することができる。例えば、深さインジケータ143は、ワイヤ140の先端がマイクロカニューレ160に出ようとしているときに対応する、カニューレ160の近位端などのシステム100の別の部分と並ぶときに、ガイドワイヤ140の遠位先端から離れたガイドワイヤ140の第1の位置に配置することができる。別の実施形態では、ガイドワイヤ140は、追加のマーキング143を含んでもよく、ガイドワイヤ140が拡張器を出ようとしている、または例えば5cmの設定距離だけ拡張器から出たことをユーザーに知らせることができる。別の実施形態では、ガイドワイヤ140は、ガイドワイヤ140がアクセス針120を通して挿入されるとき、ガイドワイヤ140がアクセス針120を出ようとしている、または設定距離だけ出たことをユーザーに知らせるためにより遠位に配置されるさらなるマーキング143を含んでもよい。従って、ガイドワイヤ140は、挿入の深さおよび他のシステム構成要素に対するガイドワイヤ140の相対的な延長に関連する視覚的ガイダンスを共に提供する複数のマーキング143を含むことができる。
【0073】
図20A~20Cは、アクセスガイドワイヤ140上の少なくとも1つの可視深度インジケータを使用する実装を示し、深度インジケータの一部がシステム100の別の部分に対して配置されるとき、ユーザー自身の目以外の特別な視覚化を必要とせずに、ユーザーに迅速なワイヤ位置フィードバックおよび血管およびシステム100の他の構成要素に対するガイドワイヤの前進の計測を提供できる。この視覚的基準は、ガイドワイヤ140が例えばアクセス針120を越えて、例えば血管内に延在する距離に関する情報を提供する。ガイドワイヤ140は、ガイドワイヤ140の最遠位端または遠位先端から既知の距離Dにある少なくとも1つの可視深度インジケータ143を含むことができる。可視深度インジケータ143は、近位端と遠位端との間に延在する既知の幅Wを有することができる。例えば、1つの深度インジケータ143は、幅2cmであり得、深度インジケータ143の近位端がガイドワイヤ140の遠位先端から12cmで配置されるように、深度インジケータ143の遠位端は、ガイドワイヤ140の遠位先端から10cmで配置され得る。ガイドワイヤ140の遠位先端からの距離は、ガイドワイヤ140の遠位先端から少なくとも1つの可視深度インジケータ143の遠位端までで測定される。アクセスガイドワイヤがアクセス針120の細長いシャフトの内腔を通して挿入されるとき、深度インジケータ143の遠位端がアクセス針120の近位ハブ122の後端と並ぶと、ガイドワイヤ140の遠位先端が、細長いシャフトの遠位先端を越えて、一定の長さ延在する。近位端が針120の近位ハブ122の後端と並ぶまで、アクセス針120の細長いシャフトの内部管腔を通してアクセスガイドワイヤ140をさらに前進させると、ガイドワイヤ140の遠位先端がアクセス針120の細長いシャフトの遠位先端を越えて、延伸長と深度インジケータ143の幅とを足した分だけ延在する。例えば、ガイドワイヤ140が前進する針120は、近位ハブ122の後端から針の遠位先端まで7cmを測定することができる。深度インジケータの遠位端が針ハブ122の後端と並ぶまでアクセス針120を通してガイドワイヤ140を前進させると、ガイドワイヤ140の延伸長141が提供され、ガイドワイヤ140の一部は、針120の遠位先端まで遠位に、すなわち3cmの長さ延在する(図20Bを参照)。深度インジケータの近位端が針ハブ122の後端と並ぶまで、針120を通してガイドワイヤ140を前進させると、針120の遠位先端に対して遠位のガイドワイヤ140の延伸長141、すなわち追加の2cmまたは合計5cmの長さ(図20Cを参照)が提供される。 ガイドワイヤ140は、様々な延伸長141を示し、従って血管内の深さ(例えば、1cm、2cm、3cmなど)を示すために、複数の別個のマーキング143を有し得ることを理解されたい。1つ以上のマーキング143は、化学エッチング、レーザーマーキング、パッド印刷、または他の方法により作製することができる。
【0074】
典型的には、マイクロアクセスカニューレ160は、その管腔を通して内側拡張器168を受容するように構成されたカニューレ本体162を含み、拡張器168はテーパー状先端を有する。内側拡張器168は、カニューレ160とアクセスガイドワイヤ140との間のスムーズな移行を提供する。カニューレ160は、内径が約0.037インチから約0.041インチの範囲で、0.035インチのワイヤを受容するサイズである。一実施形態では、マイクロアクセスカニューレ160は、経頸動脈アクセス用に構成される。例えば、カニューレ160の拡張器168は、より小さい0.014インチのアクセスガイドワイヤ140用のサイズとすることができる。さらに、カニューレ160は、以下でより詳細に説明するように、肉眼以外の特別な画像化なしに、カニューレ160の挿入量の評価を補助する1つ以上の可視深度インジケータ165を有することができる。放射線不透過性材料(例えば、バリウム、ビスマス、タングステン)をマイクロアクセスカニューレ160および/または拡張器168のシャフトポリマー全体に追加して、X線透視法の間の視認性を提供することができる。代替的に又は追加的に、マイクロアクセスカニューレ160及び/又は拡張器168は、例えばカニューレ162又は拡張器168の遠位先端に1つ以上の放射線不透過性マーカー164を有することができ、ユーザーがX線透視下で先端位置を視覚化するのを助け得る。これは、例えば、ユーザーがICAまたはECA内にカニューレを配置したい場合に有益である。
【0075】
図21A~21Bに示すように、マイクロアクセスカニューレ160は、既知の幅Wを有し、カニューレ160の最遠位先端から既知の距離Dに配置された複数の深度インジケータ165を含むことができる。複数の可視深度インジケータ165のそれぞれは、カニューレ160の遠位先端からの距離を特定することができる。インジケータ165は、超音波または放射線撮影などの特別な視覚化なしに、血管およびシステム100の他の構成要素内への挿入点に対するカニューレ160の前進の迅速な計量を提供することができる。追加的にまたは代替的に、複数の可視深度インジケータ165のそれぞれは、円周リングなどのいくつかのマーク2165によって形成することができる。本明細書ではマーク2165を円周リングとして記載するが、マーク2165はカニューレを完全に囲む必要はなく、ドット、ダッシュ、または他の可視マークなどの他の形状をとることができることを理解すべきである。
【0076】
各深度インジケータ165は、少なくとも1つのマーク2165を有する。複数の深度インジケータ165のそれぞれを形成するいくつかのマーク2165は、深度インジケータ165がカニューレ160の遠位先端から配置される増分の数を特定することができる。これにより、単に各深度インジケータ165を構成するいくつかのマーク2165を見るだけで、合計距離を容易かつ簡単に推測することができる。言い換えれば、各深度インジケータ165は、特定の深度インジケータ165を形成するいくつかのマーク2165(ドット、ダッシュ、バンドまたは円周リング)に基づいてカニューレ160の遠位先端からの距離を示すことができる。例えば、図21A図21Bに最もよく示されるように、第1の深度インジケータ165aは、リング2165の中心が遠位先端から第1の距離(例えば10mm)になるように配置された単一の円周リング2165によって形成され得る。第2の深度インジケータ165bは、一対のリング2165間の中心が遠位先端から第2の距離(例えば20mm)になるように配置された2つの円周リング2165によって形成され得る。第3の深度インジケータ165cは、3つのリング2165の中心が遠位先端から第3の距離(例えば30mm)になるように配置された3つの円周リング2165によって形成され得る。第4の深さインジケータ165dは、4つの中心が遠位先端から第4の距離(例えば40mm)になるように配置された4つの円周リング2165によって形成され得る。深度インジケータ165は、このパターンで継続することができ、それにより、ユーザーが容易に視認でき、瞬時に理解できるように、標準的な増分で遠位先端からの距離を測定することができる。
【0077】
測定距離は、上記のように遠位先端からリングの中心までである必要はなく、代わりに遠位先端からマーク2165の遠位端まで、または遠位先端からマーク2165の近位端まででもよい。さらに、深度インジケータ165eのうちの1つは、既知の幅の固体マーカーであり得、その中央(または遠位端または近位端)は、一般に深さの上限と考えられているカニューレ160の遠位先端からの既知の距離を特定する。いくつかの実装では、マイクロアクセスカニューレ160は20~30mmの間で挿入されるのみであり、深さの上限は一般に約50mmであり得る。これらの距離は変化する可能性があり、本明細書ではより多いまたはより少ない深度インジケータ165が考慮される。例えば、追加の外部深度インジケータ165が望まれる場合、マーカーの増分は、上記のように1マーク、2マーク、3マーク、4マーク、固体バンドなど、および1マーク、2マーク、3マーク、4マーク、固体バンドなどを越えて始まるマークのパターンによって特定できる。マークパターンを分割する固体バンドは、ユーザーがあまりにも多くのリングを数える必要なく、シリーズの5番目のマーカーの増分に到達したことをすばやく簡単に特定できる表示を提供する。例えば、深さインジケータ165当たり4つを超えるマークは、ユーザーにとって区別するのが面倒であり、読み取りエラーにつながる可能性がある。さらに、10mmの増分サイズは、一般に迅速に簡単に計算される。ただし、カニューレがより長い場合は、5mm、15mmまたは20mmなどの他の増分サイズも考慮されることを理解すべきである。深度インジケータ165のうちの1つ以上は、その色ならびにマークの数および/またはパターンに基づいて区別可能であり得る。例えば、第1マークは第1の色、第2マークは第2の色、第3マークは第3の色などであり得る。マークは、挿入の深さを示す簡単に区別できる色にすることができる(白、黄色、オレンジ、赤、緑、青、黒など)。マークは同様のカラーファミリ内であり得るが、挿入の深さを区別するために強度またはトーンが(例えば、淡いピンクの第1のマークから、濃い赤の最後のマークに向かって)増加し得る。
【0078】
深度インジケータ165は、パッド印刷、レーザーマーキング、カニューレ材料への着色剤の添加、または他の方法によって作製されてもよい。マイクロアクセスキット100の他の構成要素は、上記と同様の計量マーキングを含むことができる。例えば、ガイドワイヤ140の深度インジケータ143はまた、インジケータ143ごとのマークの数(または色、サイズ、形状)に応じて遠位先端からの距離を示すために計測されてもよい。上記のように、シース本体および/またはシースストッパー1105は、シース220の挿入の深さの表示を提供する1つ以上のマーキングを組み込むことができる。
【0079】
(代表的なキット)
上記のデバイスのいずれかまたはすべては、システムの1つ以上の構成要素が共通のパッケージまたはパッケージの集合体内に含まれるように、キットの形でユーザーに提供され得る。アクセスシースキットの実施形態は、アクセスシース、シース拡張器、およびシースガイドワイヤを含み、これらはすべて上記のように経頸動脈アクセス用に構成されている。
【0080】
一実施形態では、マイクロアクセスキットは、アクセス針、マイクロアクセスガイドワイヤ、およびマイクロアクセスカニューレならびに拡張器を含み、ガイドワイヤは0.014インチであり、マイクロアクセスカニューレおよび拡張器は0.014インチガイドワイヤと適合するサイズである。
【0081】
一実施形態では、アクセスキットは、アクセスシース、シース拡張器、シースガイドワイヤ、アクセス針、マイクロアクセスガイドワイヤ、マイクロアクセスカニューレおよび拡張器を含み、すべて頸動脈アクセス用に構成されている。
【0082】
別の実施形態では、アクセスガイドワイヤはシースガイドワイヤとしても使用される。この実施形態では、アクセスキットは、アクセス針、アクセスガイドワイヤ、アクセスシース、および拡張器を含む。シースと拡張器は、アクセスガイドワイヤを使用して血管内に挿入され、それにより、より大きなシースガイドワイヤまで交換するために必要な工程を回避できる。この実施形態では、拡張器のテーパー長さおよび内腔は、より小さいアクセスガイドワイヤと適合するサイズである。一実施形態では、アクセスガイドワイヤは0.018インチである。別の実施形態では、アクセスガイドワイヤは0.016インチである。別の実施形態では、アクセスガイドワイヤは0.014インチである。
【0083】
(例示的な方法)
ここで、経頸動脈アクセスシステムの例示的な使用方法について説明する。頸動脈狭窄を治療するための例示的な経頸動脈処置では、ユーザーは総頸動脈への切開を行うことから始める。次に、ユーザーは、所望のアクセス部位で総頸動脈内にアクセス針120を挿入する。経頸動脈アクセス用に構成されたテーパーを備えたアクセスガイドワイヤ140が、針を通して総頸動脈内に挿入され、CCA内に進められる。アクセス針120が除去され、マイクロアクセスカニューレ160がワイヤ140を越えてCCA内に挿入される。マイクロアクセスカニューレは、カニューレ上のマーク165をガイドとして使用して所望の深さに挿入され、過剰挿入を防止する。
【0084】
ユーザーは、カニューレ162を所定位置に残したまま、カニューレ内部拡張器168およびガイドワイヤ140を取り外す。必要に応じて、ユーザーはカニューレ162を通して血管造影を行う。次に、ユーザーは、ガイドワイヤマーキング318を使用してカニューレを通してシースガイドワイヤ300を配置し、ワイヤを所望の挿入長さに挿入するのを補助する。カニューレ162がガイドワイヤから取り外され、アクセスシース220およびシース拡張器260がアセンブリとしてシースガイドワイヤ300を越えてCCA内に挿入される。シースストッパー1105のシースストッパーフランジ1115は、動脈シースの挿入長さを制限する。一旦配置されると、拡張器260とガイドワイヤ300は取り外される。次いで、固定アイレット234、リブ236、および/または縫合溝1120aを使用して、シースが患者に縫合される。次に、動脈シースの近位端にある止血弁226を通して所望の治療部位にインターベンションデバイスを導入することにより、インターベンション処置が実行される。動脈シース220上のフラッシュアーム228を介して、処置中に所望に応じて造影剤注入を行うことができる。
【0085】
あるいは、ユーザーは、アクセス針120を総頸動脈内の所望のアクセス部位に直接挿入し、針120上の深度インジケータ124を視覚的に監視する。血管壁の厚さは典型的に1~2mmであり、総頸動脈の血管径は典型的に8~9mmである。従って、血管の外側から見て遠位先端から5mmに配置された深度インジケータ124を維持することにより、針が挿入される距離が血管壁の裏側に接触することなく壁厚を完全に貫通することが保証される。
【0086】
代替的または追加的に、経頸動脈アクセス用に構成されたアクセスガイドワイヤ140は、深さマーカー143の一部が針120の別の部分と並ぶまで針120のハブ122を通して挿入され、ガイドワイヤ140の所望の量の延伸長141が総頸動脈内に配置されることを特定する。例えば、ガイドワイヤ140上の深さマーカー143の近位端は、針ハブ122の後端と並び得、5cmのワイヤが針120の遠位先端を越えて総頸動脈内に前進したことを示す。あるいは、深さマーカー143の遠位端は、針ハブ122の後端と並び得、針の遠位先端を越えて総頸動脈内への3cmのワイヤを示す。
【0087】
アクセスガイドワイヤ140を所定位置に残したまま、アクセス針120を血管から慎重に引き抜く。その管腔を通して延在する内部拡張器168を有するマイクロパンクチャーカニューレ160は、穿刺を通してアクセスガイドワイヤ140を越えて血管内に進められる。マイクロパンクカニューレ160の深さマーキング165は、マイクロパンクチャーカニューレ挿入の所望の深さを確認し、過剰挿入を防止するために、ユーザーによって視覚的に監視される。一旦所望の深さに達すると、マイクロパンクチャーカニューレ160は所定の位置に残され、拡張器168およびアクセスガイドワイヤ140は慎重に引き抜かれる。
【0088】
あるいは、シースガイドワイヤ300は、より大きなアクセス針、例えば18G針での単一針穿刺を介してCCA内に配置される。この実施形態では、アクセスカニューレおよびアクセスガイドワイヤは不要である。この実施形態は、動脈にアクセスするために必要なステップの数を削減し、いくつかの状況ではユーザーにとって望ましい場合がある。
【0089】
あるいは、シース拡張器は、図15に示されるように、内側拡張器269および外側拡張器270を備えた、2部分シース拡張器アセンブリ260である。外側拡張器270は、0.035インチのシースガイドワイヤ300を受容し、0.035インチのワイヤからアクセスシース220へのスムーズな移行を提供するように構成されている。内側拡張器269は、0.014インチから0.018インチの範囲のより小さなガイドワイヤを受容し、より小さなガイドワイヤから外側拡張器270へのスムーズな移行を提供するように構成されている。一旦シースガイドワイヤがCCA内に配置されると、アクセスシースおよび外側シース拡張器270は、0.035インチのシースガイドワイヤ300を越えてCCA内に挿入される。次いで、ガイドワイヤが取り除かれ、内側シース拡張器269が外側シース拡張器内に挿入される。一実施形態では、内側シース拡張器は、図16に見られるように、傾斜先端276を有する。インターベンショナル0.014インチガイドワイヤは内側シース拡張器を通して挿入され、傾斜先端を使用して標的となる治療部位に向けられ、ガイドワイヤの位置決めを補助する。あるいは、内側シース拡張器はまっすぐな先端を有し、CCA内へのガイドワイヤの安全な配置の補助に使用される。一旦、0.014インチのワイヤが標的治療部位に、またはそれにわたって配置されると、シース拡張器260およびシース0.035インチのガイドワイヤ300が取り除かれ、インターベンションが進行する。
【0090】
代替実施形態では、シース拡張器は2つの管腔を有する(または2管腔:two lumen)シース拡張器1705である。この実施形態では、シースおよび拡張器はシースガイドワイヤ300を越えて挿入され、シースガイドワイヤは拡張器1705のより大きい管腔1805内に配置される。一旦シースおよび拡張器が所定位置にあると、インターベンショナル0.014インチガイドワイヤがより小さな管腔1815を通して配置される。拡張器は遠位のサポートを提供し、血管管腔の軸方向内にシース先端の位置を維持し、従って拡張器を取り外してシースの先端を少なくとも部分的に動脈の後壁に向けた場合よりも、0.014インチのワイヤをより安全に且つより簡単に前進させることができる。一旦0.014インチワイヤが標的治療部位に、または標的治療部位にわたって配置されると、次にシース拡張器1705およびシースガイドワイヤ0.035インチが取り除かれ、インターベンションが進行する。
【0091】
さらに別の実施形態では、インターベンション中にCCAを閉塞して、塞栓の順行性の流れを最小化することが望ましい場合がある。この実施形態では、閉塞ステップは、血管ループ、止血帯または血管クランプなどの血管外科的手段を介して実行されてもよい。代替実施形態では、アクセスシース220は、遠位先端上に閉塞バルーン805などの閉塞要素を有する。この実施形態では、CCA閉塞が望まれるときにバルーンが膨張する。さらなる変形例では、CCAが外科的にまたはバルーン閉塞を介して閉塞されるが、例えば、治療部位の領域の周りに逆流システムを作成して遠位塞栓を最小化するために、動脈シースをフローシャントに接続することが望ましい場合がある。この実施形態では、動脈シース220は、フローライン1005へのY接続を有する。フローライン1005は、動脈圧よりも低い圧力でリターン部位(又は戻り部位:return site)に接続されて、シャント、例えば、外部リザーバーまたは大腿静脈もしくは内頸静脈のような中心静脈リターン部位を通る逆流をもたらす圧力勾配を生成し得る。あるいは、フローラインは、吸引ポンプまたはシリンジなどの吸引源に接続されてもよい。
【0092】
別の実施形態では、経皮的神経インターベンション処置を実行するために経頸動脈アクセスシステムが使用される。この実施形態では、ユーザーは、所望のアクセス部位でアクセス針120を用いて総頸動脈CCAの経皮的穿刺を行う。適切なアクセス部位を正確に特定し、針穿刺を誘導するために、超音波が使用される場合がある。アクセスガイドワイヤ140が針を通して総頸動脈内に挿入され、CCA内に進められる。アクセス針120が取り除かれ、マイクロアクセスカニューレ160がワイヤ140を越えてCCA内に挿入される。ユーザーは、カニューレ162を所定位置に残したまま、カニューレ内部拡張器168およびガイドワイヤ140を取り除く。必要に応じて、ユーザーはカニューレ162を通して血管造影を行う。次に、ユーザーは、所望の挿入長さを補助するのにガイドワイヤマーキング318を使用して、カニューレを通してシースガイドワイヤ300を配置する。カニューレ162がガイドワイヤから取り外され、アクセスシース220およびシース拡張器260がアセンブリとしてシースガイドワイヤ300を越えてCCA内に挿入される。
【0093】
あるいは、アクセスシース220およびシース拡張器260をCCA内に配置するために、より小さいアクセスガイドワイヤ140が使用される。この実施形態では、シース拡張器のテーパー先端268は、アクセスガイドワイヤ140からアクセスシース220に滑らかに移行するように構成されている。一変形形態では、アクセス針は21Gであり、アクセスガイドワイヤは0.018インチである。別の変形例では、アクセス針は24Gであり、アクセスガイドワイヤは0.014インチである。一旦シースが配置されると、ガイドワイヤとシース拡張器が取り除かれ、その後、動脈シースの近位端上の止血弁226を通して所望の治療部位にインターベンションデバイスを導入することにより、インターベンション処置が行われる。処置中に所望に応じて、動脈シース220上のフラッシュアーム228を介して造影剤注入を行ってもよい。
【0094】
あるいは、シースを一旦CCA内に配置して、例えば、中間~遠位の子宮頸部ICA、錐体状ICAまたはさらに遠位に、それをICA内にさらに進めることが望ましい場合がある。この実施形態では、シース拡張器をより柔らかいシース拡張器に置き換えて、遠位ICAを損傷するリスクなしにシースを前進させることができる。この実施形態では、より柔らかい拡張器は遠位放射線不透過性マーカーを有しているため、ユーザーは、シースの配置中にシースおよび拡張器アセンブリの前端を容易に視覚化することができる。一旦アクセスシースを配置すると、拡張器とシースガイドワイヤを取り外して、インターベンションを進めることができる。あるいは、一旦シースをCCA内に配置すると、0.035インチのガイドワイヤを取り外し、0.014インチから0.018インチの範囲のより小さいガイドワイヤを備えた内側拡張器をシース拡張器内に挿入してもよい。次に、内側拡張器とより小さいガイドワイヤを備えたシース拡張器アセンブリを、血管外傷のリスクを低減してICA内でより遠位に配置することができる。
【0095】
一実施形態では、遠位塞栓が脳に流れる機会を減らすために、処置の一部の間にCCAまたはICAを閉塞することが望ましい場合がある。この実施形態では、CCAまたはICAは、アクセスシース220上の閉塞バルーン805によって閉塞される。動脈シースをフローシャントに接続して、例えば、遠位塞栓を最小限にするために治療部位の領域周辺に逆流システムを作製することが望ましい場合もある。この実施形態では、動脈シース220は、フローライン1005へのY接続を有する。フローラインは、動脈圧よりも低い圧力でリターン部位に接続され、シャントを通る逆流をもたらす圧力勾配を生成し得る。あるいは、フローラインは、吸引ポンプまたはシリンジなどの吸引源に接続されてもよい。
【0096】
本明細書は多くの詳細(又は特定事項:specifics)を含むが、これらは特許請求の範囲に記載された発明または特許請求の範囲に記載される可能性のある発明の範囲に対する制限としてではなく、特定の実施形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施形態の文脈で本明細書に記載されている一定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で説明される様々な特徴は、複数の実施形態で別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで実装することもできる。さらに、特徴は一定の組み合わせで機能するものとして上記で記載されてもよく、最初にそのように特許請求の範囲に記載されてもよいが、いくつかのケースでは、特許請求の範囲に記載された組み合わせから1つ以上の特徴を、特許請求の範囲に記載された組み合わせから削除することができ、特許請求の範囲に記載された組み合わせがサブコンビネーションまたはサブコンビネーションのバリエーションを対象としてもよい。同様に、操作は特定の順序で図面に描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような操作が示された特定の順序もしくは順番で実行されること、またはすべての説明された操作が実行されることを要求するものとして理解されるべきではない。
【0097】
本明細書では、一定のバージョンを参照して様々な方法およびデバイスの実施形態を詳細に記載するが、他のバージョン、実施形態、使用方法およびそれらの組み合わせも可能であることを理解すべきである。従って、添付の特許請求の範囲の思想および範囲は、本明細書に含まれる実施形態の記載に限定されるべきではない。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
外科的に露出した血管の管腔内に、直接的な視覚ガイダンスを使用して直接アクセスするためのマイクロパンクチャーキットであって、前記キットは
内腔を規定する細長いシャフトに結合された近位ハブと、前記細長いシャフトの遠位先端から距離をあけて前記細長いシャフト上に配置された可視深度インジケータとを含むマイクロパンクチャーアクセス針と、
前記マイクロパンクチャーアクセス針の前記内腔を通して受容されるサイズのアクセスガイドワイヤであって、前記ガイドワイヤは、遠位先端と、前記ガイドワイヤの前記遠位先端から距離をあけて前記アクセスガイドワイヤ上に配置された少なくとも1つの可視深度インジケータとを含む、アクセスガイドワイヤと、
内腔を規定する細長い本体と、前記細長い本体上に形成された複数の可視深度インジケータとを含むマイクロアクセスカニューレであって、前記複数の可視深度インジケータのそれぞれは、前記カニューレの遠位先端からの距離を特定する、マイクロアクセスカニューレと、を含むマイクロパンクチャーキット。
(態様2)
前記アクセスガイドワイヤは、前記ガイドワイヤの前記遠位先端を含む最遠位フレキシブルセクションと、前記最遠位フレキシブルセクションの近位の移行セクションと、前記移行セクションから近位に延在する、より硬いコアセクションとを含む、態様1に記載のキット。
(態様3)
前記最遠位フレキシブルセクションは、1cm~2cmであり、前記移行セクションは2cm~3cmである、態様2に記載のキット。
(態様4)
前記移行セクションおよび前記コアセクションは、前記血管内に挿入された前記マイクロアクセスカニューレを支持するように構成されている、態様2に記載のキット。
(態様5)
前記ガイドワイヤは0.014インチから0.018インチの範囲内の外径であり、前記マイクロパンクチャー針は21Gから24Gの範囲内である、態様1に記載のキット。
(態様6)
前記アクセスガイドワイヤ上に配置された前記少なくとも1つの可視深度インジケータは、近位端と、遠位端と、前記近位端と前記遠位端との間に延在する幅と、を有する態様1に記載のキット。
(態様7)
前記ガイドワイヤの前記遠位先端からの前記距離は、前記遠位先端から前記少なくとも1つの可視深度インジケータの前記遠位端までで測定される、態様6に記載のキット。
(態様8)
前記遠位端が前記アクセス針の前記近位ハブの後端と並ぶまで、前記アクセスガイドワイヤを、前記細長いシャフトの前記内腔を通して挿入すると、前記ガイドワイヤの前記遠位先端は、前記細長いシャフトの前記遠位先端を越えて、延伸長だけ延在する、態様6に記載のキット。
(態様9)
前記近位端が前記アクセス針の前記近位ハブの前記後端と並ぶまで、前記アクセスガイドワイヤを、前記細長いシャフトの前記内腔を通して前進させると、前記ガイドワイヤの前記遠位先端は、前記細長いシャフトの前記遠位先端を越えて、前記延伸長と、前記少なくとも1つの可視深度インジケータの幅とを加えた分だけ延在する、態様8に記載のキット。
(態様10)
前記延伸長は3cmであり、前記少なくとも1つの可視深度インジケータの幅は2cmである、態様9に記載のキット。
(態様11)
前記アクセス針の前記可視深度インジケータは、化学エッチングされたマーカー、レーザーエッチングされたマーカーまたはパッド印刷されたマーカーである、態様1に記載のキット。
(態様12)
前記複数の可視深度インジケータのそれぞれは、いくつかのマークによって形成され、前記いくつかのマークは、前記カニューレの前記遠位先端からのいくつかの増分を特定する、態様1に記載のキット。
(態様13)
各増分は10mmであり、前記いくつかのマークは少なくとも1つのマークである、態様12に記載のキット。
(態様14)
前記カニューレ上の前記複数の可視深度インジケータのうちの第1が1つのマークを含み、前記第1の可視深度インジケータは前記カニューレの前記遠位先端から10mm離れている、態様1に記載のキット。
(態様15)
前記カニューレ上の前記複数の可視深度インジケータのうちの第2が2つのマークを含み、前記第2の可視深度インジケータは前記カニューレの前記遠位先端から20mm離れている、態様14に記載のキット。
(態様16)
前記カニューレ上の前記複数の可視深度インジケータのうちの第3が3つのマークを含み、前記第3の可視深度インジケータは前記カニューレの前記遠位先端から30mm離れている、態様15に記載のキット。
(態様17)
前記カニューレ上の前記複数の可視深度インジケータのうちの第4が4つのマークを含み、前記第4の可視深度インジケータは前記カニューレの前記遠位先端から40mm離れている、態様16に記載のキット。
(態様18)
前記カニューレ上の前記複数の可視深度インジケータのうちの第5が、前記カニューレの前記遠位先端から50mm離れており、1つのマークの幅より大きい幅を有する固体バンドを含む、態様17に記載のキット。
(態様19)
前記アクセス針の前記可視深度インジケータが前記細長いシャフトの前記遠位先端から離れている前記距離は、3mm~7mmである、態様1に記載のキット。
(態様20)
前記アクセス針の前記可視深度インジケータは、化学エッチングされたマーカー、レーザーエッチングされたマーカーまたはパッド印刷されたマーカーである、態様1に記載のキット。
図1
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図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
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図19A
図19B
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図20B
図20C
図21A
図21B