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特許7539522半導体洗浄工程に使用される高純度イソプロピルアルコールの精製方法
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  • 特許-半導体洗浄工程に使用される高純度イソプロピルアルコールの精製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】半導体洗浄工程に使用される高純度イソプロピルアルコールの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/80 20060101AFI20240816BHJP
   C07C 31/10 20060101ALI20240816BHJP
   H01L 21/304 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
C07C29/80
C07C31/10
H01L21/304 647A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023078219
(22)【出願日】2023-05-10
(65)【公開番号】P2023167013
(43)【公開日】2023-11-22
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】10-2022-0057278
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522379462
【氏名又は名称】載元産業株式會社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シム ソン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ピョン キ
(72)【発明者】
【氏名】イム ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ファン
(72)【発明者】
【氏名】シン ヨン ソ
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ テ キ
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-506431(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0085710(KR,A)
【文献】特表2016-528280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/80
C07C 31/10
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着工程によってイソプロピルアルコール中に存在するジアセトンアルコールを0.01ppt未満に除去した後、一次蒸留工程によって生成されたジアセトンアルコールを二次蒸留工程によって0.01ppt未満に除去する段階を含め、ホウ酸トリイソプロピルおよび金属不純物の含量は、半導体洗浄工程において要求される水準に下げるイソプロピルアルコールの精製方法であって、
前記一次蒸留工程は、イソプロピルアルコールより沸点が低い不純物を除去する蒸留工程であり、前記二次蒸留工程は、前記一次蒸留工程の下部ストリームを蒸留して、イソプロピルアルコールより沸点が高い前記ジアセトンアルコール、トリイソプロピルホウ素化合物および金属不純物を下部ストリームで除去し、上部で精製されたイソプロピルアルコールを得る蒸留工程であり、
前記二次蒸留工程後の精製されたイソプロピルアルコールの純度は99.999wt%以上であり、水分は10ppm以下、ホウ酸トリイソプロピルは50ppt以下、各金属は20ppt以下であることを特徴とする、
イソプロピルアルコールの精製方法
【請求項2】
前記吸着工程によってイソプロピルアルコール中の水分含量を10ppm以下に下げることを特徴とする、請求項1に記載のイソプロピルアルコールの精製方法。
【請求項3】
前記蒸留工程の間、酸素流入を抑制するために窒素をパージすることを特徴とする、請求項1に記載のイソプロピルアルコールの精製方法。
【請求項4】
前記吸着工程は、前記イソプロピルアルコールをモレキュラーシーブ3Aまたは4Aに通過させた後、連続してモレキュラーシーブ10Xまたは13Xに通過させる段階を含むことを特徴とする、請求項1に記載のイソプロピルアルコールの精製方法。
【請求項5】
前記吸着工程の前に、前記モレキュラーシーブがpH6.5~7.5を維持するように水分10ppm以下のイソプロピルアルコールで洗浄する段階をさらに含む、請求項4に記載のイソプロピルアルコールの精製方法。
【請求項6】
前記一次および二次蒸留工程の間、蒸留温度を82℃以下に維持し、前記二次蒸留工程のとき、還流比は1.5以上を維持することを特徴とする、請求項に記載のイソプロピルアルコールの精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソプロピルアルコールの精製方法に関し、より詳細には、半導体洗浄工程に使用される高純度のイソプロピルアルコールを精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol、以下、「IPA」)は、たとえば、半導体やLCD(Liquid crystal display)製造のような電子産業における洗浄剤などの用途を含み、様々な用途に使用されている。
【0003】
半導体洗浄工程において、ウエハ(wafer)をパターニングした後、従来は水で洗浄したが、水による洗浄時にパターンが崩れる問題点が発生した。したがって、このような問題点を解決するために水対比表面張力が低く、溶解性と揮発性に優れたIPAを使用することになった。
【0004】
半導体洗浄工程に使用されるIPAの場合、水分および不純物に対するスペックが非常に厳格である。
【0005】
半導体洗浄工程に使用されるIPAは、99.999%以上の純度(5N)を維持しなければならないが、水分は10ppm以下、金属不純物は20ppt以下、ホウ酸トリイソプロピル(以下、ホウ素化合物と称する)は50ppt以下、ジアセトンアルコール(Diacetone alcohol)は完全に除去されなければならない。
【0006】
原料である工業用IPAには、水分および不純物が半導体洗浄工程において要求されるスペックを超過して含まれているため、これを99.999%(5N)以上の純度を維持するように精製する工程が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】大韓民国登録特許第10‐1662895(2015.03.02公開)
【文献】大韓民国登録特許第10‐1582001(2014.01.09公開)
【文献】大韓民国登録特許第10‐1206214(2010.07.26公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、工業用イソプロピルアルコールを吸着工程および蒸留工程などを導入して精製することによって、ジアセトンアルコールが完全に除去され、水分、ホウ酸トリイソプロピルおよびメタル含量が半導体級の規格に符合する高純度のイソプロピルアルコールの精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、原料である工業用イソプロピルアルコール(以下、IPAとも称する)を吸着工程および蒸留工程を用いて精製する方法を提供することであり、本発明の一実施例によれば、上記精製方法は、吸着工程によってイソプロピルアルコール中に存在するジアセトンアルコール(以下、DAAとも称する)を除去した後、蒸留工程によってジアセトンアルコール、トリイソプロピルホウ素化合物(以下、ホウ素化合物とも称する)および金属不純物を下部ストリームで除去する段階を含む。
【0010】
上記吸着工程は、上記イソプロピルアルコールをモレキュラーシーブ3Aまたは4Aに通過させた後、モレキュラーシーブ10Xまたは13Xに連続的に通過させる段階を含み、上記蒸留工程は、イソプロピルアルコールより沸点が低い不純物を除去する一次蒸留工程および上記一次蒸留工程の下部ストリームを蒸留して、イソプロピルアルコールより沸点が高いDAA、ホウ素化合物および金属不純物を下部ストリームで除去し、上部で精製されたイソプロピルアルコールを得る二次蒸留工程を含む。
【0011】
上記モレキュラーシーブは、使用の前に水分が10ppm以下に含まれたIPAによって十分に洗浄することが好ましく、上記蒸留工程の間、酸素流入を抑制するために窒素をパージすることが好ましい。
【0012】
上記一次および二次蒸留工程のとき、温度は82℃以下を維持し、上記二次蒸留工程のとき、還流比は1.5以上を維持することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水分、金属およびホウ素化合物の含量が半導体洗浄工程において要求される規格を満足し、ジアセトンアルコールが存在しない高純度の半導体級イソプロピルアルコールを製造することができる。
【0014】
したがって、生産後の貯蔵タンク、顧客へ移送中の移送タンクローリー、顧客が使用するための貯蔵タンクおよび配管でメタルが溶出されることを防止することができ、半導体洗浄ラインまで高純度のイソプロピルアルコールを供給することができるため、半導体工程の不良率を下げて半導体の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例によるイソプロピルアルコールの精製工程を説明するための図である。
図2】本発明の一実施例によって精製されたイソプロピルアルコールの成分を分析したガスクロマトグラムある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特別な定義がない限り、本明細書のすべての用語は、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する技術者が理解する当該用語の一般的な意味と同様であり、仮に本明細書に使用された用語の意味と衝突する場合には、本明細書に使用された定義に従う。明細書全体において、ある部分が、ある構成要素を「含む」としたとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0017】
本明細書に使用された用語「半導体級」とは、半導体洗浄工程において要求される程度の純度や特性を維持することを意味し、「除去」は、特定の物質の含量を下げることを意味し、「完全に除去」とは、特定の物質が存在しない状態を意味する。
【0018】
また、本発明に使用された用語「高純度」とは、純度99.999%、すなわち5N以上を意味する。
【0019】
本発明の構成要素を説明するにあたって、第一、第二、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。これらの用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語によって当該構成要素の本質や順番、または順序などが限定されない。
【0020】
本発明を説明することにあたって、関連された公知構成または機能に対する具体的な説明が、本発明の要旨を濁しかねないと判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0021】
以下、本発明の実施例を、添付の図を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施例による半導体洗浄工程に使用可能な高純度イソプロピルアルコールの精製方法を説明するための図である。
【0023】
図1を参照すると、本発明の一実施例によるイソプロピルアルコールの精製方法は、吸着工程に使用されるモレキュラーシーブ(Molecular Sieves)をIPAによって洗浄する段階(S110)、洗浄されたモレキュラーシーブ3Aまたは4Aに原料である工業用IPAを通過させ、水分およびジアセトンアルコールを除去する一次吸着段階(S120)、モレキュラーシーブ10Xまたは13XにIPAを通過させ、ジアセトンアルコールを完全に除去する二次吸着段階(S130)、蒸留してIPAより沸点が低い不純物を除去し、下部ストリームを得る一次蒸留工程段階(S140)および上記下部ストリームの供給を受けて蒸留して、IPAより高沸点である不純物を下部で除去し、上部で精製されたIPAを得る二次蒸留工程段階(S150)を含む。
【0024】
先ず、洗浄段階(S110)について説明する。
【0025】
本発明によれば、吸着工程によって原料であるIPA中に存在する水分の含量を半導体級水準に下げてDAA(ジアセトンアルコール)を完全に除去することができれば、その具体的な手段によって、本発明の権利範囲が限定されないが、本発明の一実施例の吸着工程は、モレキュラーシーブを用いる。
【0026】
モレキュラーシーブは、製造の特性上、塩基性物質が残存することがある。このような残存塩基性物質は、その後、精製工程においてIPAが酸化されて形成されたアセトンをアルドール反応によってDAAに変換させることができる。したがって、精製工程の間、DAAの生成を最小化するためにモレキュラーシーブに残存する塩基性物質を除去することが好ましいため、使用の前にモレキュラーシーブを十分に洗浄することが好ましい。
【0027】
洗浄のときに使用されるIPAは、水分が10ppm以下に含まれたものを使用することが好ましく、モレキュラーシーブがpH6.5~7.5が維持できるように、十分に洗浄することが好ましい。
【0028】
洗浄されたモレキュラーシーブに原料である工業用IPAを通過させ、水分およびDAAを除去する(S120)。一般的に原料である工業用IPAには数十~数百ppmの水分が存在し、数十pptのDAAが存在する。
【0029】
したがって、原料であるIPAをモレキュラーシーブ3Aまたは4Aに通過させ、一次吸着工程によって水分を10ppm以下に減少させることができる。
【0030】
一次吸着工程によって水分は半導体級に下げることができるが、DAAが完全に除去されることはない。したがって、DAAを完全に除去するために一次吸着工程後、IPAをモレキュラーシーブ10Xまたは13Xに連続的に通過させる必要がある。
【0031】
半導体工程に使用されるIPAは、不純物である金属(Metal)に対するスペックが非常に厳しく、すべての項目がppt単位で制御されている。半導体洗浄工程に使用されるIPAに許容可能金属の含有量は、各金属ごとに50ppt以下、好ましくは20ppt以下であることが要求される。
【0032】
一般的に金属は、沸点が非常に高いため、蒸留工程の下部ストリームで除去可能であるが、極少量のDAAでも残存する場合、ステンレススチールで構成されている蒸留タワー、配管、貯蔵タンクなどからメタルを溶出させる問題点をもたらす。DAAは金属、特にFeとキレートを形成するため、金属の溶出を加速化させる問題点がある。
【0033】
したがって、原料であるIPA中に存在するDAAを完全に除去するために本発明の一実施例においては、一次吸着工程を通じて水分が顕著に減少したIPAをモレキュラーシーブ10Xまたは13Xに通過させる二次吸着工程を行う(S130)。
【0034】
IPAを10Xまたは13Xモレキュラーシーブに通過させると、2つのメカニズムによってDAAが吸着除去される。第一に、モレキュラーシーブ表面に付着しているNa+や、K+と塩(salt)の形態で吸着して除去され、第二に、モレキュラーシーブの気孔より分子サイズが若干小さいDAAの分子が気孔に挿入/吸着して除去される。
【0035】
上記のように、一次および二次吸着工程を経たIPA中には半導体洗浄工程において許容される水準の水分が含まれており、DAAは完全に除去されて存在しなくなる。
【0036】
上述のように、半導体製造工程に金属(metal)が流入すれば、不良の原因となるため、IPA中に含まれた20種余りのメタルを金属別に50ppt以下になるように精製する必要がある。
【0037】
半導体用IPAで管理する金属は、Feを含み、Ag、Al、As、Au、B、Ba、Ca、Cd、Cr、Cs、Cu、Ga、Ge、Hf、In、K、La、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Ni、Pb、Sb、Sn、Sr、Ta、Ti、V、W、Y、Zn、Zrなどであり、これらのそれぞれは20ppt以下に含まれなければならず、特にFeイオンは、最も注意深く管理すべき金属の一つである。
【0038】
一般的に金属は、IPAより沸点が高いため、一般蒸留で除去することが容易である。したがって、蒸留工程によって不純物である金属を半導体級水準に下げることができる。
【0039】
一方、水分の含量を下げてDAAを完全に除去するために使用するモレキュラーシーブのバインダーには、ホウ酸トリイソプロピル(以下、ホウ素化合物と称する)が含まれており、また精製工程中のガラス材質からホウ素化合物が溶出されることがある。このようなホウ素化合物も半導体の固有の特性に影響を及ぼすため、ppt単位で管理される項目の一つである。半導体洗浄工程に使用されるIPAには、ホウ素化合物が50ppt以下に含まれることが要求される。
【0040】
ホウ素化合物は、沸点が約140℃のため、蒸留工程によって除去が可能であるが、一部はイソプロピルアルコールと共沸蒸留を行うため、完全に除去することは困難である。したがって、金属およびホウ素化合物を除去するために蒸留工程を行うものの、ホウ素化合物の含量を下げるために蒸留工程を2回実施することが好ましい。
【0041】
蒸留工程段階は、一次蒸留工程段階(S140)および二次蒸留工程段階(S150)を含むことができる。
【0042】
このような蒸留工程は、高温で行うため、蒸留タワーに供給されるIPAが酸素と熱に露出されて反応式1のように、アセトンが生成されてアセトンが酸または塩基性触媒下でDAAに変換され得る問題点がある。
【0043】
<反応式1>
【0044】
【化1】
【0045】
したがって、精製工程中にIPAが酸化されることを防止するためにタワー内部および付属運転装置に窒素を十分に供給し、蒸留工程を行う。すなわち、蒸留工程の過程において窒素を十分にパージして、酸素流入を最大限に防止するのが好ましい。
【0046】
一次蒸留工程は、IPAより沸点が低い不純物を除去する工程であり、二次蒸留工程は、IPAより沸点が高い不純物を除去する工程である。
【0047】
窒素をパージし、蒸留工程を行っても蒸留工程の過程においてDAAが追加的に生成されることもある。微量のDAAでも残存すれば、問題になることがあるため、蒸留タワーの温度を適切に調節して、DAAを完全に除去することが必要である。
【0048】
蒸留工程の段階における蒸留温度および還流回数によってDAAの残存量が影響を受ける。一次蒸留工程において蒸留タワーの内部温度を82℃以下、好ましくは78~82℃に維持すれば、DAAが生成されず、二次蒸留工程において蒸留タワー内部温度を82℃以下、好ましくは78~82℃に維持し、二次蒸留タワーでの還流回数を1.5以上、好ましくは1.5~2以上を維持すれば、DAAが完全に除去されたIPAが得られる。
【0049】
一次蒸留タワーの温度が82℃を超えると、微量のDAAが生成されることがあるが、微量の生成されたDAAの沸点は166℃であり、IPAより高いため、二次蒸留タワーの下部ストリームで除去されるが、大部分は濃縮運転をするため、下部にDAAが濃縮されて上部ストリームに上がることができる。
【0050】
したがって、一次蒸留タワーの下部ストリームから二次蒸留タワーに供給されるIPAには、DAAが0.5ppt以下に含まれるように、一次蒸留タワーの温度を82℃以下に維持することが好ましい。
【0051】
二次蒸留タワーに供給されたIPAには、極少量のDAA、ホウ素化合物および金属化合物が含まれている。したがって、DAAを完全に除去し、ホウ素化合物を50ppt以下に下げるため、蒸留タワーの内部温度を82℃以下、好ましくは78~82℃に維持し、還流回数は1.5以上、好ましくは1.5~2以上を維持する。
【0052】
二次蒸留工程によって下部ストリームでDAA、ホウ素化合物および金属化合物などのような不純物を除去することができ、DAAは完全に除去することができ、上部ストリームで高純度のIPAを得ることができる。
【0053】
したがって、吸着および蒸留工程によって水分10ppm以下、ホウ酸トリイソプロピル50ppt以下、各金属が20ppt以下に含まれ、ジアセトンアルコールが存在しない純度99.999wt%以上の半導体級精製IPAを得ることができる。
【0054】
以下、本発明の具体的な実施例を説明する。下記実施例は、本発明を説明するための例に過ぎないものであり、本発明の権利範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
モレキュラーシーブ3Aおよび13Xを水分が10ppm以下のIPAによってモレキュラーシーブ体積比で50倍洗浄する。水分が120ppm、ジアセトンアルコール18ppt、ホウ素化合物が100ppt含まれた工業用IPAを洗浄したモレキュラーシーブ3Aおよび13Xに連続的に通過させる。
【0056】
その後、一次蒸留タワーのリボイラー温度を78℃に維持しながら、上部ストリームで投入量対比5wt%を除去し、下部ストリームを二次蒸留タワーに供給する。
【0057】
二次蒸留タワーのリボイラーも78℃を維持しながら、還流比を1.5~2に維持し、下部ストリームでジアセトンアルコール、ホウ素化合物、金属などの沸点が高い物質を除去し、上部ストリームで高純度の半導体級IPAを得る。
【0058】
[実施例2]
一次蒸留タワーと二次蒸留タワーのリボイラー温度をそれぞれ80℃に維持したことを除いては、上記実施例1と同様の方法によって精製した。
【0059】
[実施例3]
一次蒸留タワーと二次蒸留タワーのリボイラー温度をそれぞれ82℃に維持したことを除いては、上記実施例1と同様の方法によって精製した。
【0060】
[比較例1]~[比較例6]
一次蒸留タワーと二次蒸留タワーのリボイラー温度および還流比を下記表1のような条件下で行ったことを除いては、上記実施例1と同様の方法によって精製した。
【0061】
[比較例7]
原料であるIPAを洗浄せずに使用したことを除いては、上記実施例1と同様の方法によって精製した。
【0062】
[比較例8]および[比較例9]
一次蒸留工程の温度を下記表1のように維持したことを除いては、上記比較例7と同様の方法によって精製した。
【0063】
[比較例10]
原料であるIPAをモレキュラーシーブ3Aだけに通過させた後、蒸留工程に投入したことを除いては、上記実施例3と同様の方法によって精製した。
【0064】
[比較例11]
還流比を2.5~3に維持したことを除いては、上記比較例10と同様の方法によって精製した。
【0065】
上記実施例1~3および比較例1~11の精製工程に使用された原料および各工程段階の遂行後にIPAに含まれた水分、ジアセトンアルコール(DAA)およびホウ素化合物の含量を測定した結果は、下記表1の通りである。下記表1において、水分含量の単位はppm、DAAおよびホウ素化合物の含量の単位はpptである。
【0066】
【表1】
【0067】
M/S: Molecular Sieves、N/D: Not detected
【0068】
上記表1で分かるように、本発明の実施例1~3によれば、水分が10ppm以下、ホウ素化合物が50ppm以下に含まれ、ジアセトンアルコールが完全に除去された高純度のIPAを得ることができる。
【0069】
実施例1~3、比較例1~9のように、モレキュラーシーブ3Aと13Xを連続的に使用すれば、水分を10ppm以下に下げることができ、DAAが完全に除去されるが、比較例10および比較例11によれば、吸着工程においてDAAが完全に除去されないことを確認することができる。
【0070】
実施例3の場合、一次蒸留タワーの下部ストリームには、ジアセトンアルコールが0.5ppt含まれたことから、蒸留工程においてDAAが追加生成され得ることを確認することができる。しかし、追加生成されたDAAは、二次蒸留工程において下部ストリームで除去されるため、二次蒸留タワーの上部ストリームでDAAが観察されない。
【0071】
実施例1~3と比較例1および2を見ると、一次蒸留タワーの温度によって下部ストリーム中に含まれたDAAの量が変わることを確認することができる。特に、実施例3と比較例1および2を比較してみると、一次蒸留タワーの下部ストリームに含まれたDAAが0.5ppt以下の場合は、二次蒸留工程によってDAAが完全に除去されるが(実施例3)、0.9ppt以上のDAAが含まれた下部ストリームの場合には、二次蒸留を行なってもDAAが完全に除去されないことが分かる。したがって、一次蒸留工程の段階においてDAAが0.5ppt以下に含まれ得るように一次蒸留タワーの温度条件を設定することが重要であることが分かる。
【0072】
また、比較例3は、一次蒸留タワーの下部ストリームにDAAが0.5ppt含まれているが、二次蒸留タワーの上部ストリームに依然として0.01pptのDAAが存在することから、二次蒸留タワーでの還流比がDAAの残存量に影響を及ぼすことが分かる。すなわち、二次蒸留タワーの還流比が1であれば、DAAが完全に除去されないことが分かる。なお、この場合は、ホウ素化合物の量も51pptとして半導体級で要求される許容数値である50pptを超過することを確認することができる。
【0073】
比較例4~6は、一次および二次蒸留タワーの温度が82℃以上であり、二次蒸留タワーの還流比が1以下の場合であり、二次蒸留タワーの上部ストリーム中にDAAが存在し、ホウ素化合物も50ppt以上存在することを確認することができる。
【0074】
比較例7と比較例8は、吸着工程に使用されるモレキュラーシーブを洗浄しないことを除いては、それぞれ実施例1および実施例3と同様の条件で精製したにもかかわらず、一次蒸留タワーの下部ストリーム中にジアセトンアルコールがそれぞれ1.2ppt、6.9ppt存在し、二次蒸留工程後の上部ストリームに依然としてジアセトンアルコールがそれぞれ0.4ppt、1.8ppt存在することが分かる。したがって、DAAを完全に除去するためには、吸着工程に使用されるモレキュラーシーブをIPAによって必ず洗浄した後に使用することが必要であることが分かる。
【0075】
比較例9は、洗浄しないモレキュラーシーブを使用し、蒸留工程の温度が85℃のため、二次蒸留タワーの上部ストリームにDAAが残存する。
【0076】
比較例10は、原料であるIPAをモレキュラーシーブ3Aだけに通過させた後、蒸留工程に投入したということを除いては、実施例3と同様の方法によって精製したが、蒸留工程の上部ストリームには依然としてDAAが2.1ppt存在し、比較例11を通じて還流比を高めても吸着工程においてDAAが完全に除去されなければ、二次蒸留タワーの上部ストリームに依然としてDAAが残存できることが分かる。したがって、吸着工程の段階においてDAAを完全に除去した後、蒸留工程に投入する必要がある。
【0077】
上記実施例1~3、比較例1~6、比較例10および11によって得られた精製IPAに含まれた金属の含量を分析(ICP-MS分析)した結果は、下記表2および表3の通りである。下記表2および表3において、各金属の含量単位はpptである。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
上記表2および表3で確認できるように、本発明の実施例1~3によって得られた精製IPAだけでなく、比較例1~6、比較例10および比較例11によって得られた精製IPAにも各金属が20ppm以下に含まれていることが分かる。
【0081】
したがって、本発明の実施例によって精製されたIPAに含まれた金属の含有量は、半導体規格に符合する。
【0082】
また、本発明の実施例1によって二次蒸留タワーの上部ストリームで得た高純度精製IPAの成分を分析した結果は、図2の通りである。
【0083】
図2は、本発明の上記実施例1によって精製されたイソプロピルアルコールの成分を分析したGCチャートであり、成分分析結果は、下記表4の通りである。
【0084】
【表4】
【0085】
上記表4および図2を通じて分かるように、本発明の精製方法に従う場合、99.999%以上(5N以上)の純度を有するIPAが得られることが分かる。すなわち、本発明の精製方法によれば、水分、ホウ素化合物およびメタル含有量が半導体級で要求される水準を満足させながら、DAAが存在しない純度5N以上の高純度IPAが得られる。
【0086】
以上の説明は、本発明を例示的に説明したものに過ぎず、本発明に属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な変形が可能であろう。したがって、本明細書に開示されている実施例は、本発明を限定するものではなく、説明するためのものであり、そのような実施例によって本発明の思想と範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内のすべての技術は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0087】
本開示に係る態様は以下の態様も含む。
<A-1>
ジアセトンアルコール、ホウ酸トリイソプロピル、金属不純物、および水分を含む不純物を含む工業用イソプロピルアルコールからイソプロピルアルコールを精製する方法であって、
前記工業用イソプロピルアルコール中に存在するジアセトンアルコールを吸着工程によって除去すること、
ジアセトンアルコールの前記除去の後に、蒸留工程を行うことにより、前記工業用イソプロピルアルコール中のホウ酸トリイソプロピル及び金属のレベルを減少させること、および
前記蒸留工程の間に生成したジアセトンアルコールを除去して、99.999wt%以上の純度を有する精製されたイソプロピルアルコールを得ること、
を含む。前記方法。
<A-2>
前記吸着工程によって、前記精製されたイソプロピルアルコール中の水分含有量は10ppm以下である、<A-1>に記載の方法。
<A-3>
前記蒸留工程の間、酸素流入を抑制するために窒素をパージする、<A-1>または<A-2>に記載の方法。
<A-4>
前記吸着工程は、前記工業用イソプロピルアルコールを第1のモレキュラーシーブ3A又は4Aに通過させた後、連続して第2のモレキュラーシーブ10Xまたは13Xに通過させることを含む、<A-1>~<A-3>のいずれか1つに記載の方法。
<A-5>
前記吸着工程の前に、前記第1のモレキュラーシーブおよび前記第2のモレキュラーシーブを、pH6.5~7.5を維持するように水分10ppm以下のイソプロピルアルコールで洗浄することをさらに含む、<A-4>に記載の方法。
<A-6>
前記蒸留工程は、
イソプロピルアルコールの沸点よりも低い沸点を有する第1の不純物を除去する一次蒸留工程、および
前記一次蒸留工程の下部ストリームを蒸留して、イソプロピルアルコールの沸点より高い沸点を有する前記ジアセトンアルコール、ホウ酸トリイソプロピル、および金属不純物を下部ストリームで除去し、蒸留タワーの上部で精製されたイソプロピルアルコールを得る二次蒸留工程、
を含む、<A-1>~<A-5>のいずれか1つに記載の方法。
<A-7>
前記一次および二次蒸留工程の間、蒸留温度を82℃以下に維持し、前記二次蒸留工程の際の還流比を1.5以上に維持する、<A-6>に記載の方法。
<A-8>
前記精製されたイソプロピルアルコールにおいて、水分は10ppm以下、ホウ酸トリイソプロピルは50ppt以下、金属不純物の各金属は20ppt以下である、<A-1>~<A-7>のいずれか1つに記載の方法。
また、本開示に係る態様は以下の態様も含む。
<1>
吸着工程によってイソプロピルアルコール中に存在するジアセトンアルコールを完全に除去した後、蒸留工程によって生成されたジアセトンアルコールを完全に除去する段階を含め、ホウ酸トリイソプロピルおよび金属不純物の含量は、半導体洗浄工程において要求される水準に下げることを特徴とする、イソプロピルアルコールの精製方法。
<2>
前記吸着工程によってイソプロピルアルコール中の水分含量を10ppm以下に下げることを特徴とする、<1>に記載のイソプロピルアルコールの精製方法。
<3>
前記蒸留工程の間、酸素流入を抑制するために窒素をパージすることを特徴とする、<1>に記載のイソプロピルアルコールの精製方法。
<4>
前記吸着工程は、前記イソプロピルアルコールをモレキュラーシーブ3Aまたは4Aに通過させた後、連続してモレキュラーシーブ10Xまたは13Xに通過させる段階を含むことを特徴とする、<1>に記載のイソプロピルアルコールの精製方法。
<5>
前記吸着工程の前に、前記モレキュラーシーブがpH6.5~7.5を維持するように水分10ppm以下のイソプロピルアルコールで洗浄する段階をさらに含む、<4>に記載のイソプロピルアルコールの精製方法。
<6>
前記蒸留工程は、イソプロピルアルコールより沸点が低い不純物を除去する一次蒸留工程および前記一次蒸留工程の下部ストリームを蒸留して、イソプロピルアルコールより沸点が高い前記ジアセトンアルコール、トリイソプロピルホウ素化合物および金属不純物を下部ストリームで除去し、上部で精製されたイソプロピルアルコールを得る二次蒸留工程を含む、<1>に記載のイソプロピルアルコールの精製方法。
<7>
前記一次および二次蒸留工程の間、蒸留温度を82℃以下に維持し、前記二次蒸留工程のとき、還流比は1.5以上を維持することを特徴とする、<6>に記載のイソプロピルアルコールの精製方法。
<8>
蒸留工程によって精製されたイソプロピルアルコールの純度は99.999wt%以上であり、水分は10ppm以下、ホウ酸トリイソプロピルは50ppt以下、各金属は20ppt以下であることを特徴とする、<1>に記載のイソプロピルアルコールの精製方法。
図1
図2