(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】時計ムーブメントによって駆動される可撓性表示針の作動機構
(51)【国際特許分類】
G04B 19/04 20060101AFI20240816BHJP
G04B 19/02 20060101ALI20240816BHJP
G04B 45/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G04B19/04 Z
G04B19/02 Z
G04B45/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023079113
(22)【出願日】2023-05-12
【審査請求日】2023-05-12
(32)【優先日】2022-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ストランツル
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・マテ-ドゥ-ランドロワ
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-189163(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1710637(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメントが第1の角度的回転(θ1)を印加する可撓性針(44)のための、作動機構(60)であって、
前記可撓性針(44)は、それぞれ第1の可撓性アーム(48)及び第2の可撓性アーム(52)によって前記可撓性針(44)の先端(54)に接続された第1の駆動用筒状部(46)及び第2の駆動用筒状部(50)を備え、
前記第1の駆動用筒状部(46)は第1の歯部(56)を備え、前記第2の駆動用筒状部(50)は第2の歯部(58)を備え、
前記第1の駆動用筒状部(46)及び前記第2の駆動用筒状部(50)は、前記可撓性針(44)が非応力下の自由な状態にあるときには互いから離間しており、
前記可撓性針(44)が所定の形状及び長さを有する動作位置は、前記第1の駆動用筒状部(46)が所定の第1のプレストレス角度で設置され、かつ前記第2の駆動用筒状部(50)が前記第1の駆動用筒状部(46)とは反対方向の所定の第2のプレストレス角度で設置される、応力印加位置であり、
前記第1の駆動用筒状部(46)及び前記第2の駆動用筒状部(50)は、前記可撓性針(44)の前記応力印加位置において、前記第1の駆動用筒状部(46)の前記第1の歯部(56)が前記第2の駆動用筒状部(50)の前記第2の歯部(58)と係合するように配設され、
前記可撓性針(44)は、前記第2の駆動用筒状部(50)の角度位置が、前記第1の駆動用筒状部(46)に対して枢動によって変化したときに、形状及び長さを所望の様式で変化させるように配設され、
前記時計ムーブメントによって前記作動機構(60)に印加される前記角度的回転(θ1)は、前記作動機構(60)によって、回転角度(φ)だけ変調され、
前記第1の駆動用筒状部(46)の前記第1の歯部(56)が前記第2の駆動用筒状部(50)の前記第2の歯部(58)と噛合することによって、前記可撓性針(44)の前記第1の可撓性アーム(48)及び前記第2の可撓性アーム(52)に反対方向に印加される、前記回転角度(φ)は、前記可撓性針(44)の形状及び長さの前記変化を決定する、作動機構(60)。
【請求項2】
前記作動機構(60)は、前記時計ムーブメントが前記第1の角度的回転(θ1)を印加する遊星歯車保持フレーム(62)を備え、
前記遊星歯車保持フレーム(62)は、第1のチューブ(64)及び第2のチューブ(66)を備え、前記第1のチューブ(64)及び前記第2のチューブ上(66)には、それぞれ第1の駆動用筒かな(68)及び第2の駆動用筒かな(70)が、自由に回転できるように設置され、
前記作動機構(60)は、カム(76)のプロファイル(74)に沿って動くように配設されたカム従動子フィンガ(72)も備え、前記カム従動子フィンガ(72)は、前記可撓性針(44)の弾性によって、前記カム(76)に当接した状態で保持され、
前記カム(76)は、前記作動機構(60)の固定された要素であり、
前記カム従動子フィンガ(72)は、前記カム(76)の前記プロファイル(74)をたどるように配設され、これにより、前記時計ムーブメントによって前記遊星歯車保持フレーム(62)に印加される前記第1の角度的回転(θ1)が、前記第1の歯部(56)と前記第2の歯部(58)との係合により、前記第1の可撓性アーム(48)によって前記第2の可撓性アーム(52)の反対方向に印加される回転角度(φ)だけ、更に変調され、
この角度の変調(φ)は、前記可撓性針(44)の形状及び長さの前記変化を決定する
ことを特徴とする、請求項1に記載の作動機構(60)。
【請求項3】
前記駆動用筒かな(68、70)のうちの一方が、前記カム従動子フィンガ(72)を備えることを特徴とする、請求項2に記載の作動機構。
【請求項4】
前記第1の可撓性アーム(48)又は前記第2の可撓性アーム(52)のうちの一方が前記カム従動子フィンガ(72)を備えることを特徴とする、請求項2に記載の作動機構。
【請求項5】
時計ムーブメントが第1の角度的回転(θ1)を印加する可撓性針(44)のための、作動機構(60)であって、
前記可撓性針(44)は、それぞれ第1の可撓性アーム(48)及び第2の可撓性アーム(52)によって前記可撓性針(44)の先端(54)に接続された第1の駆動用筒状部(46)及び第2の駆動用筒状部(50)を備え、
前記第1の駆動用筒状部(46)は第1の歯部(56)を備え、前記第2の駆動用筒状部(50)は第2の歯部(58)を備え、
前記第1の駆動用筒状部(46)及び前記第2の駆動用筒状部(50)は、前記可撓性針(44)が非応力下の自由な状態にあるときには互いから離間しており、
前記可撓性針(44)が所定の形状及び長さを有する動作位置は、前記第1の駆動用筒状部(46)が所定の第1のプレストレス角度で設置され、かつ前記第2の駆動用筒状部(50)が前記第1の駆動用筒状部(46)とは反対方向の所定の第2のプレストレス角度で設置される、応力印加位置であり、
前記第1の駆動用筒状部(46)及び前記第2の駆動用筒状部(50)は、前記可撓性針(44)の前記応力印加位置において、前記第1の駆動用筒状部(46)の前記第1の歯部(56)が前記第2の駆動用筒状部(50)の前記第2の歯部(58)と係合するように配設され、
前記可撓性針(44)は、前記第2の駆動用筒状部(50)の角度位置が、前記第1の駆動用筒状部(46)に対して枢動によって変化したときに、形状及び長さを所望の様式で変化させるように配設され、
前記時計ムーブメントは前記第1の角度的回転(θ1)を、フィーラースピンドル(80)が支承されているカム(76)に対して印加し、
前記フィーラースピンドル(80)は、前記時計ムーブメントが前記カム(76)に印加した前記第1の角度的回転(θ1)影響によって、回転角度(φ)だけ枢動し、
前記フィーラースピンドル(80)の前記枢動は、前記第1の駆動用筒状部(46)又は前記第2の駆動用筒状部(50)のうちの一方に印加され、
前記フィーラースピンドル(80)の前記枢動が印加された前記第1の駆動用筒状部(46)又は前記第2の駆動用筒状部(50)は、前記枢動を、他方の前記駆動用筒状部へと反対方向に印加し、これにより、前記可撓性針(44)の半径方向の変形が引き起こされる、作動機構(60)。
【請求項6】
前記作動機構(60)は、支持体上に固定された第1のチューブ(64)及び第2のチューブ(66)を備え、前記第1のチューブ(64)及び前記第2のチューブ(66)の上には
それぞれ第1の駆動用筒かな(68)及び
第2の駆動用筒かな(70)が自由に回転するように設置され、
前記可撓性針(44)の前記第1の駆動用筒状部(46)は、前記第1の駆動用筒かな(68)に、所定のプレストレス角度ではめ込まれ、同じ前記可撓性針(44)の前記第2の駆動用筒状部(50)は、前記第2の駆動用筒かな(70)に、前記第1の駆動用筒状部(46)と同一であるが反対方向のプレストレス角度ではめ込まれ、
前記第1の駆動用筒かな(68)及び前記第2の駆動用筒かな(70)のうちの一方は、回転する前記カム(76)に支承された前記フィーラースピンドル(80)を支持する
ことを特徴とする、請求項5に記載の作動機構。
【請求項7】
それぞれ第1の可撓性アーム(48)及び第2の可撓性アーム(52)によって
可撓性針(44)の先端(54)に接続された第1の駆動用筒状部(46)及び第2の駆動用筒状部(50)を備える、
前記可撓性針(44)であって、
前記第1の駆動用筒状部(46)は第1の歯部(56)を備え、前記第2の駆動用筒状部(50)は第2の歯部(58)を備え、
前記第1の駆動用筒状部(46)及び前記第2の駆動用筒状部(50)は、前記可撓性針(44)が自由な非応力下の状態にあるときには互いから離間しており、
前記可撓性針(44)が所定の形状及び長さを有する動作位置は、前記第1の駆動用筒状部(46)が第1の所定のプレストレス角度で設置され、かつ前記第2の駆動用筒状部(50)が前記第1の駆動用筒状部(46)とは反対方向の第2の所定のプレストレス角度で設置される、応力印加位置であり、
前記第1の駆動用筒状部(46)及び前記第2の駆動用筒状部(50)は、前記可撓性針(44)の前記応力印加位置において、前記第1の駆動用筒状部(46)の前記第1の歯部(56)が前記第2の駆動用筒状部(50)の前記第2の歯部(58)と係合するように配設され、
前記可撓性針(44)は、前記第2の駆動用筒状部(50)の角度位置が、前記第1の駆動用筒状部(46)に対して枢動によって変化したときに、形状及び長さを所望の様式で変化させるように配設される、可撓性針(44)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、時計ムーブメントによって駆動され、情報をアナログ表示するために配設される、可撓性表示針の作動機構である。本発明の主題は特に、可撓性表示針の簡素化された作動機構である。
【背景技術】
【0002】
可撓性針は既に公知であり、上記可撓性針は、例えば現在時刻である情報をアナログ表示するために、その長さ及び形状を所望の様式で変化させることによって、その先端が、円形ではなく例えば楕円形状を有する文字盤の外周の可能な限り近くをたどる。
【0003】
本出願人による特許文献1に一実施形態が開示されている上述のような可撓性針が、本特許出願に添付された
図1に示されている。この可撓性針1は、第1の可撓性アーム4の第1の端部に接続された第1の駆動用筒状部2、及び第2の可撓性アーム8の第1の端部に接続された第2の駆動用筒状部6を備える。第1の可撓性アーム4と第2の可撓性アーム8とは、その第2の端部において、先端10で互いに接続される。可撓性針1の非応力下の自由な状態では、第1の駆動用筒状部2及び第2の駆動用筒状部6は、互いから離間している。反対に、可撓性針1が所定の形状及び長さを有する動作位置は、第1の駆動用筒状部2及び第2の駆動用筒状部6が共通の出力軸
Dの周りに同軸に配設された応力印加位置である。この応力印加位置では、第1の駆動用筒状部2は、所定の第1のプレストレス角度で設置され、第2の駆動用筒状部6は、第1の駆動用筒状部2の方向とは反対方向の所定の第2のプレストレス角度で設置される。可撓性針1は、出力軸
Dの周りでの枢動によって、第2の駆動用筒状部6の角度位置が第1の駆動用筒状部2の角度位置に対して変動した場合に、形状及び長さが所望の様式で変化するように、配設される。この目的のために、可撓性針1の第1の可撓性アーム4及び第2の可撓性アーム8はそれぞれ、情報の表示のために時計ムーブメントによって可撓性針1に印加される角度的回転θ1を実行し、時計ムーブメントによって可撓性針1に印加される上記角度的回転θ1は、作動機構12によって、回転角度φだけ変調され、この回転角度φは、可撓性針1の第1の可撓性アーム4及び第2の可撓性アーム8に対して反対方向に印加されて、可撓性針1の形状及び長さの変化を決定する。
【0004】
上述のタイプの可撓性針の作動機構の一実施形態が、本出願人による特許文献2に開示されている。
【0005】
この例は単なる例として与えられており、本特許出願に添付された
図1に関して何ら制限を課すものではない。全体を通して一般参照番号12で示される作動機構は、出力軸
Dの周りでの、第1の駆動用筒状部2の第1の駆動手段14、及び同じ出力軸
Dの周りでの、第2の駆動用筒状部6の第2の駆動手段16を含む。第1の駆動手段14及び第2の駆動手段16は、出力軸
Dの周りで第2の駆動用筒状部6の角度位置を第1の駆動用筒状部2の角度位置に対して変動させることによって、第1の可撓性アーム4及び第2の可撓性アーム8を変形させ、またこの出力軸
Dに対する先端10の半径方向位置を変動させるために、配設される。
【0006】
より具体的には、作動機構12は遊星歯車保持フレーム18を備え、これは、上に遊星歯車22が自由に回転できるように設置された、第1のほぞ20を備える。この遊星歯車22は、カム28のプロファイル26に沿って動くように配設されたカム従動子フィンガ24を備え、カム従動子フィンガ24は、可撓性針1の弾性によって、カム28に当接した状態で保持される。カム28は、作動機構12の唯一の固定された要素である。遊星歯車保持フレーム18はチューブ30も備え、その上には、第1の駆動用筒かな32及び第2の駆動用筒かな34が自由に回転できるように同心に設置されている。可撓性針1の第1の駆動用筒状部2は、所定のプレストレス角度で、第2の駆動用筒かな34上にはめ込まれ、続いて同じ可撓性針1の第2の駆動用筒状部6は、同一ではあるが第1の駆動用筒状部2との方向の反対方向のプレストレス角度で、第1の駆動用筒かな32上にはめ込まれる。最後に作動機構12は、第1の駆動用筒かな32によって支承された歯部によって形成される第1の太陽歯車36と、第2の駆動用筒かな34によって支承された歯部によって形成される第2の太陽歯車38とによって完成される。遊星歯車保持フレーム18が時計ムーブメントによって例えば時計回りに回転させられると、遊星歯車保持フレーム18は遊星歯車22を駆動し、これは、そのカム従動子フィンガ24によってカム28のプロファイル26をたどることによって、それ自体で回転する。これにより、この遊星歯車22と直接噛合している第1の駆動用筒かな32は、遊星歯車保持フレーム18に対してそれ自体で回転する。第2の駆動用筒かな34は、遊星歯車22の回転が、第2のほぞ42上に自由に回転できるように設置された遊び車40によって、第2の駆動用筒かな34に伝達されるため、遊星歯車保持フレーム18に対して、第1の駆動用筒かな32と同じ速度で、ただし反対方向に、回転する。
【0007】
可撓性針1を第1の位置から第2の位置に移動させるためには、作動機構12は、回転θ1に加えて、可撓性針1の第1の駆動用筒状部2及び第2の駆動用筒状部6それぞれに対して、角度φの同一の回転を反対方向に加える。この目的のために、作動機構12を、遊星歯車保持フレーム18の入力に角度θ1の回転を加える時計ムーブメントによって駆動する。本特許出願に添付された
図2に示されているように、この角度θ1の回転は、作動機構12によって、可撓性針1の第1の駆動用筒状部2の角度α(θ1)の回転へ、そして第2の駆動用筒状部6の角度β(θ1)の回転へと変換される。従って、作動機構の出力角度α(θ1)、β(θ1)は、以下の関係を有する:
α(θ1)=θ1+φ(θ1) (1)
β(θ1)=θ1-φ(θ1) (2)
【0008】
可撓性針1が対称であると仮定すると、可撓性針1の先端10の角度位置θ2は、第1の可撓性アーム4及び第2の可撓性アーム8の二等分線、即ち以下の関係式による角度α(θ1)及びβ(θ1)の平均として定義される:
【0009】
【0010】
以上から、可撓性針1の形状及び長さを所望の様式で変化させることができるように、時計ムーブメントは、作動機構12を介して、可撓性針1の第1の駆動用筒状部2及び第2の駆動用筒状部6のそれぞれに対して、角度φに等しいものの反対方向の回転によって変調された角度的回転θ1を印加することが理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州公開特許第2863274号
【文献】欧州公開特許第3764170号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、比較的簡素な設計を有する、可撓性針のための新規の作動機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の主題は、時計ムーブメントによって駆動される可撓性針の簡素化された作動機構である。
【0014】
この目的のために、本発明は、時計ムーブメントが第1の角度的回転を印加する可撓性針のための、作動機構に関し、上記可撓性針は、それぞれ第1の可撓性アーム及び第2の可撓性アームによって上記可撓性針の先端に接合された第1の駆動用筒状部及び第2の駆動用筒状部を備え、上記第1の駆動用筒状部は第1の歯部を備え、上記第2の駆動用筒状部は第2の歯部を備え、上記第1及び第2の駆動用筒状部は、上記可撓性針が非応力下の自由な状態にあるときには互いから離間しており、上記可撓性針が所定の形状及び長さを有する動作位置は、上記第1の駆動用筒状部が所定の第1のプレストレス角度で設置され、かつ上記第2の駆動用筒状部が上記第1の駆動用筒状部の方向とは反対方向の所定の第2のプレストレス角度で設置される、応力印加位置であり、上記第1の駆動用筒状部及び上記第2の駆動用筒状部は、上記可撓性針の上記応力印加位置において、上記第1の駆動用筒状部の上記第1の歯部が上記第2の駆動用筒状部の上記第2の歯部と係合するように配設され、上記可撓性針は、上記第2の駆動用筒状部の角度位置が、上記第1の駆動用筒状部に対して枢動によって変化したときに、形状及び長さを所望の様式で変化させるように配設され、上記時計ムーブメントによって上記作動機構に印加される上記角度的回転は、上記作動機構によって回転角度だけ変調され、上記第1の駆動用筒状部の上記第1の歯部が上記第2の駆動用筒状部の上記第2の歯部と噛合することによって、上記可撓性針の上記第1及び第2の可撓性アームに反対方向に印加される、この回転角度は、上記可撓性針の形状及び長さの上記変化を決定する。
【0015】
本発明のある特別な実施形態によると、上記作動機構は、上記時計ムーブメントが上記第1の角度的回転を印加する遊星歯車保持フレームを備え、この遊星歯車保持フレームは、固定された第1及び第2のチューブを備え、上記第1及び第2のチューブ上ではそれぞれ第1及び第2の駆動用筒かなが枢動し、上記作動機構は、カムのプロファイルに沿って動くように配設されたカム従動子フィンガも備え、このカム従動子フィンガは、上記可撓性針の弾性によって、上記カムに当接した状態で保持され、このカムは、上記作動機構の固定された要素であり、上記カム従動子フィンガは、上記カムの上記プロファイルに沿って動くように配設され、これにより、上記時計ムーブメントによって上記遊星歯車保持フレームに印加される上記第1の角度的回転が、上記第1の歯部が上記第2の歯部と噛合することにより、上記第1の可撓性アームによって上記第2の可撓性アームの反対方向に印加される回転角度だけ、更に変調され、この角度の変調は、上記可撓性針の形状及び長さの上記変化を決定する。
【0016】
本発明の更なる一実施形態によると、上記駆動用筒かなのうちの一方が上記カム従動子フィンガを備える。
【0017】
本発明の更に別の一実施形態によると、上記第1又は第2のアームのうちの一方が上記カム従動子フィンガを備える。
【0018】
本発明はまた、時計ムーブメントが第1の角度的回転を印加する可撓性針の、作動機構に関し、上記可撓性針は、それぞれ第1の可撓性アーム及び第2の可撓性アームによって上記可撓性針の先端に接続された第1の駆動用筒状部及び第2の駆動用筒状部を備え、上記第1の駆動用筒状部は第1の歯部を備え、上記第2の駆動用筒状部は第2の歯部を備え、上記第1及び第2の駆動用筒状部は、上記可撓性針が非応力下の自由な状態にあるときには互いから離間しており、上記可撓性針が所定の形状及び長さを有する動作位置は、上記第1の駆動用筒状部が所定の第1のプレストレス角度で設置され、かつ上記第2の駆動用筒状部が上記第1の駆動用筒状部の方向とは反対の所定の第2のプレストレス角度で設置される、応力印加位置であり、上記第1の駆動用筒状部及び上記第2の駆動用筒状部は、上記可撓性針の上記応力印加位置において、上記第1の駆動用筒状部の上記第1の歯部が上記第2の駆動用筒状部の上記第2の歯部と係合するように配設され、上記可撓性針は、上記第2の駆動用筒状部の角度位置が、上記第1の駆動用筒状部に対して枢動によって変化したときに、形状及び長さを所望の様式で変化させるように配設され、上記時計ムーブメントは上記第1の角度的回転を、フィーラースピンドルが支承されているカムに対して印加し、上記フィーラースピンドルは、上記時計ムーブメントが上記カムに印加した上記第1の角度的回転の関数である角度だけ、上記カムの回転の影響下で枢動し、上記フィーラースピンドルの上記枢動は、上記第1又は第2の駆動用筒状部のうちの一方に印加され、上記フィーラースピンドルの上記枢動が印加された上記第1又は第2の駆動用筒状部は、この枢動を、他方の駆動用筒状部へと反対方向に印加し、これにより、上記可撓性針の長さの変形が引き起こされる。
【0019】
本発明の更なる実施形態によると、上記作動機構は、支持体上に固定されたチューブを備え、上記チューブの上には上記第1及び第2の駆動用筒かなが自由に回転するように設置され、上記可撓性針の上記第1の駆動用筒状部は、上記第1の駆動用筒かなに、所定のプレストレス角度ではめ込まれ、同じ上記可撓性針の上記第2の駆動用筒状部は、上記第2の駆動用筒かなに、上記第1の駆動用筒状部と同一であるが反対方向のプレストレス角度ではめ込まれ、上記第1及び第2の駆動用筒かなのうちの一方は、上記回転カムに支承された上記フィーラースピンドルを支持する。
【0020】
本発明はまた、可撓性針にも関し、上記可撓性針は、それぞれ第1の可撓性アーム及び第2の可撓性アームによって上記可撓性針の先端に接続された第1の駆動用筒状部及び第2の駆動用筒状部を備え、上記第1の駆動用筒状部は第1の歯部を備え、上記第2の駆動用筒状部は第2の歯部を備え、上記第1及び第2の駆動用筒状部は、上記可撓性針が非応力下の自由な状態にあるときには互いから離間しており、上記可撓性針が所定の形状及び長さを有する動作位置は、上記第1の駆動用筒状部が所定の第1のプレストレス角度で設置され、かつ上記第2の駆動用筒状部が上記第1の駆動用筒状部の方向とは反対方向の所定の第2のプレストレス角度で設置される、応力印加位置であり、上記第1の駆動用筒状部及び上記第2の駆動用筒状部は、上記可撓性針の上記応力印加位置において、上記第1の駆動用筒状部の上記第1の歯部が上記第2の駆動用筒状部の上記第2の歯部と係合するように配設され、上記可撓性針は、上記第2の駆動用筒状部の角度位置が、上記第1の駆動用筒状部に対して枢動によって変化したときに、形状及び長さを所望の様式で変化させるように配設される。
【0021】
これらの特徴により、本発明は、簡素化された構造を有する、可撓性針のための作動機構を提供する。実際には、上記駆動用筒状部のうちの一方に位相変位を適用することにより、他方の上記駆動用筒状部は上記歯部によって反対方向に作動させられ、これにより、後者を回転させることなく上記針の長さを変化させることができる。本発明の他の実施形態は、簡素化された機構によって、上記針自体を回転させることにより、上記針の長さを変化させることができる。
【0022】
本発明の更なる特徴及び利点は、本発明による可撓性針の一実施形態に関する以下の「発明を実施するための形態」から明らかになり、この例は、添付の図面を参照して、何ら限定することなく、説明のみを目的として与えられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、既に言及されているが、従来技術の可撓性針の作動機構の一実施形態の分解立体斜視図であり、この作動機構は、遊星歯車保持フレームによって支持された差動タイプのデバイスを含み、可撓性針の第1及び第2の駆動用筒状部は、第1及び第2の駆動用筒かなと同軸である。
【
図2】
図2は、既に言及されているが、可撓性針の先端が、作動機構の入力において時計ムーブメントによって印加される回転に対応する角度θ1をカバーするような、筒状部及び可撓性針の回転の角度を示す。
【
図3】
図3は、本発明による可撓性針の作動機構の一実施形態の分解立体斜視図である。
【
図4】
図4は、カム従動子フィンガが可撓性針のアームのうちの一方に取り付けられた、
図3の作動機構の特別な実施形態の分解立体斜視図である。
【
図5】
図5は、時計ムーブメントが角度的回転θ1をカムに印加する、可撓性針の特別な実施形態の分解立体斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、非応力下の自由な状態における本発明による可撓性針の平面図であり、この図には、第1及び第2の駆動用筒状部の領域の拡大図が付されている。
【
図6B】
図6B~6Dは、第1及び第2の駆動用筒状部が設置されるプレストレス角度を条件とする所定の形状及び長さを可撓性針が有する動作位置における、それぞれに拡大図が付された
図6Aの可撓性針の平面図であり、第1及び第2の筒状部はそれぞれ歯部を備え、上記歯部によって第1及び第2の筒状部は互いに噛合し、これにより、枢動によって第2の駆動用筒状部の角度位置が第1の駆動用筒状部に対して変動したときに、可撓性針の形状及び長さが所望の様式で徐々に変化する。
【
図6C】
図6B~6Dは、第1及び第2の駆動用筒状部が設置されるプレストレス角度を条件とする所定の形状及び長さを可撓性針が有する動作位置における、それぞれに拡大図が付された
図6Aの可撓性針の平面図であり、第1及び第2の筒状部はそれぞれ歯部を備え、上記歯部によって第1及び第2の筒状部は互いに噛合し、これにより、枢動によって第2の駆動用筒状部の角度位置が第1の駆動用筒状部に対して変動したときに、可撓性針の形状及び長さが所望の様式で徐々に変化する。
【
図6D】
図6B~6Dは、第1及び第2の駆動用筒状部が設置されるプレストレス角度を条件とする所定の形状及び長さを可撓性針が有する動作位置における、それぞれに拡大図が付された
図6Aの可撓性針の平面図であり、第1及び第2の筒状部はそれぞれ歯部を備え、上記歯部によって第1及び第2の筒状部は互いに噛合し、これにより、枢動によって第2の駆動用筒状部の角度位置が第1の駆動用筒状部に対して変動したときに、可撓性針の形状及び長さが所望の様式で徐々に変化する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、時計ムーブメントによって印加された角度的回転を可撓性針に伝達するための簡素化された設計の作動機構を提供するという、一般発明概念から出発している。この目的のために、本発明は、可撓性針の第1及び第2の駆動用筒状部の両方に歯部を設けることを教示しており、これにより、時計ムーブメントによって第1の駆動用筒状部に印加される環状回転が、第1の駆動用筒状部の歯部と第2の駆動用筒状部の歯部との噛合により、第2の駆動用筒状部に伝達される。従って、時計ムーブメントによって提供される角度的回転を、作動機構を介して第1及び第2の駆動用筒状部に個別に印加する必要を回避することにより、作動機構が簡素化される。
【0025】
図3は、本発明による可撓性針の作動機構の一実施形態の分解立体斜視図である。全体を通して一般参照番号44で表されるこの可撓性針は、第1の可撓性アーム48の第1の端部に接続された第1の駆動用筒状部46と、第2の可撓性アーム52の第1の端部に接続された第2の駆動用筒状部50とを備える。第1の可撓性アーム48及び第2の可撓性アーム52は、その第2の端部において、先端54で一体に接合される。最後に、可撓性針44は、第1の駆動用筒状部46及び第2の駆動用筒状部50それぞれに、それぞれ第1の歯部56及び第2の歯部58を付け加えることによって完成される。
図6Aに示されているように、可撓性針44の非応力下の自由な状態において、第1の駆動用筒状部46及び第2の駆動用筒状部50は互いから離間しており、第1の歯部56及び第2の歯部58は互いに係合しない。反対に、可撓性針44が
図6Bに示されているような動作位置にあるとき、これは、第1の駆動用筒状部46が所定の第1のプレストレス角度で設置され、第2の駆動用筒状部50が、第1の駆動用筒状部46と反対方向の第2の所定のプレストレス角度で設置された、所定の形状及び長さを有し、第1の駆動用筒状部46及び第2の駆動用筒状部50は、第1の駆動用筒状部46の第1の歯部56が、第2の駆動用筒状部50の第2の歯部58と係合するように配設される。
【0026】
作動機構に関して、全体を通して一般参照番号60で表されるこの作動機構は、時計ムーブメントが第1の角度的回転θ1を印加する遊星歯車保持フレーム62を備える。
【0027】
遊星歯車保持フレーム62はまた、第1のチューブ64及び第2のチューブ66を備え、これらの上には第1の駆動用筒かな68及び第2の駆動用筒かな70がそれぞれ枢動可能に設置される。可撓性針44の第1の駆動用筒状部46は、第1の駆動用筒かな68上に所定のプレストレス角度ではめ込まれ、同じ可撓性針44の第2の駆動用筒かな50は、第2の駆動用筒かな70に、第1の駆動用筒状部46と同一であるが反対方向のプレストレス角度ではめ込まれる。駆動用筒かな68、70のうちの一方、例えば第1の駆動用筒かなは、カム76のプロファイル74に沿って動くように配設されたカム従動子フィンガ72を備え、このカム従動子フィンガ72は可撓性針44の弾性によって、カム76に当接した状態で保持される。このカム76は、作動機構60の固定された要素である。第1の駆動用筒状部46及び第2の駆動用筒状部50は、第1の歯部56及び第2の歯部58が互いに係合するように配設される。回転時、第1の駆動用筒かな68は第1の駆動用筒かな46を回転駆動し、続いてこの第1の駆動用筒状部46は、第1の歯部56及び第2の歯部58を互いに噛合させることによって、第2の駆動用筒状部50を回転駆動する。
【0028】
時計ムーブメントが角度的回転θ1を遊星歯車保持フレーム62に印加すると、この遊星歯車保持フレーム62はそれと共に、第1の駆動用筒かな68及び第2の駆動用筒かな70を駆動し、第1の駆動用筒かな68は、そのカム従動子フィンガ72によってカム76のプロファイル74に沿って移動することにより、遊星歯車保持フレーム62と共に回転し、従って、時計ムーブメントによって遊星歯車保持フレーム62及び可撓性針44に印加された角度的回転θ1は、カム従動子フィンガ72の作用によって、回転角度φだけ更に変調されることが理解される。第1の歯部56と第2の歯部58との係合によって、第1の可撓性アーム48が第2の可撓性アーム52の反対方向に印加する、この回転角度φは、可撓性針44の形状及び長さの変化を決定する。回転に加えて、この可撓性針44は、2つの駆動用筒状部46、50の間、及び可撓性針44の先端先端54を通過する半径Rに従って、半径方向に変形する。
【0029】
図4に示されている特別な実施形態によると、カム従動子フィンガ72は、第1の筒かな68又は第2の筒かな70にではなく、可撓性針44の第1の可撓性アーム48又は第2の可撓性アーム52に、例えば第1の可撓性アーム48に、固定される。それ以外は、作動機構60は変更されないままである。
【0030】
当然のことながら、本考案は上述の実施形態に限定されず、当業者は、添付の実用新案登録請求の範囲によって定義されている考案の範囲から逸脱することなく、様々な修正形態及び単純な変形形態を想定できる。特に、
図5に示されている本発明の特別な実施形態によると、作動機構60は、時計ムーブメントが角度的回転θ1を印加するカム76を備える。チューブ64、66は、プレート又は受け等の支持体78に固定され、これらのチューブ64、66の上には、第1の駆動用筒かな68及び第2の駆動用筒かな70が、自由に回転できるように設置される。可撓性針44の第1の駆動用筒状部46は、第1の駆動用筒かな68に所定のプレストレス角度ではめ込まれ、同じ可撓性針44の第2の駆動用筒状部50は、第2の駆動用筒かな70に、第1の駆動用筒状部46と同一であるが反対方向のプレストレス角度ではめ込まれる。第1の駆動用筒かな68及び第2の駆動用筒かな70のうちの一方、例えば第1の駆動用筒かな68は、回転するカム76に支承されたフィーラースピンドル80を備える。カム76の回転の結果、第1の駆動用筒かな68は回転角度φだけ枢動し、これにより、可撓性針44自体が回転することなく、可撓性針44の、半径
Rに沿った半径方向の変形が引き起こされる。これは
図6B~6Dに示されており、これらの図では、可撓性針44の形状及び長さが変化するものの、可撓性針44自体は回転していないことが示されている。
【符号の説明】
【0031】
1 可撓性針
2 第1の駆動用筒状部
4 第1の可撓性アーム
6 第2の駆動用筒状部
8 第2の可撓性アーム
10 先端
D 出力軸
θ1 角度的回転
12 作動機構
14 第1の駆動手段
16 第2の駆動手段
18 遊星歯車保持フレーム
20 第1のほぞ
22 遊星歯車
24 カム従動子フィンガ
26 プロファイル
28 カム
30 チューブ
32 第1の駆動用筒かな
34 第2の駆動用筒かな
36 第1の太陽歯車
38 第2の太陽歯車
40 遊び車
42 第2のほぞ
44 可撓性針
46 第1の駆動用筒状部
48 第1の可撓性アーム
50 第2の駆動用筒状部
52 第2の可撓性アーム
54 先端
56 第1の歯部
58 第2の歯部
60 作動機構
62 遊星歯車保持フレーム
64 第1のチューブ
66 第2のチューブ
68 第1の駆動用筒かな
70 第2の駆動用筒かな
72 カム従動子フィンガ
74 プロファイル
76 カム
78 プレート
80 フィーラースピンドル
R 半径