(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ロバストな適応ノイズキャンセリングシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20240816BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G10K11/178 120
H04R3/00 310
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023081527
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2021141557の分割
【原出願日】2019-12-19
【審査請求日】2023-06-13
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミラニ,アリー・アブドラザデー
(72)【発明者】
【氏名】カンナン,ゴービンド
(72)【発明者】
【氏名】ソームンドソン,トラウスティ
(72)【発明者】
【氏名】ハリハラン,ハリ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,マーク
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-142469(JP,A)
【文献】特開2018-072770(JP,A)
【文献】特開平10-294989(JP,A)
【文献】国際公開第2008/029336(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
適応ノイズキャンセルシステムであって、
環境ノイズを感知し、対応する基準信号を生成するように動作可能な基準センサと、
ノイズキャンセルゾーンにおいてノイズを感知し、対応する誤差信号を生成するように動作可能な誤差センサと、
前記基準信号を受信し、アンチノイズ信号を生成して、前記ノイズキャンセルゾーンにおいて前記環境ノイズを打ち消すように動作可能なノイズキャンセルフィルタと、
前記基準信号および前記誤差信号を受信し、前記誤差センサと鼓膜基準点との間の一次経路のモデルと、前記誤差センサと前記鼓膜基準点との間の二次経路のモデルとに少なくとも基づいて、前記アンチノイズ信号を適応的に調整するように動作可能な適応モジュールとを備える、適応ノイズキャンセルシステム。
【請求項2】
前記一次経路は前記環境ノイズと前記鼓膜基準点との間の経路の一部であり、前記二次経路は前記ノイズキャンセルフィルタと前記鼓膜基準点との間の経路の一部である、請求項1に記載の適応ノイズキャンセルシステム。
【請求項3】
前記基準信号を受信し、過渡ノイズ事象を検出し、検出された前記過渡ノイズ事象の間、前記適応モジュールを選択的に無効化するように動作可能な過渡活動検出モジュールをさらに含む、請求項1または2に記載の適応ノイズキャンセルシステム。
【請求項4】
前記過渡ノイズ事象は、前記適応ノイズキャンセルシステムのオペレータが話すこと含む、請求項3に記載の適応ノイズキャンセルシステム。
【請求項5】
前記過渡活動検出モジュールは、前記過渡ノイズ事象を検出し、前記適応モジュールに状態コマンドを送信するように動作可能な状態機械を含み、
前記適応モジュールは、前記状態コマンドを受信し、前記状態コマンドに従って適応を有効化および/または無効化するように動作可能である、請求項3または4に記載の適応ノイズキャンセルシステム。
【請求項6】
前記適応モジュールは、前記アンチノイズ信号の非ヒス領域におけるキャンセルを達成しながら、前記アンチノイズ信号の少なくとも1つのヒス領域においてノイズ増幅を適応的に制御するように動作可能なノイズ増幅制御モジュールを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の適応ノイズキャンセルシステム。
【請求項7】
前記アンチノイズ信号の前記ヒス領域は、前記環境ノイズと前記アンチノイズ信号との間の強めあう干渉が検出される周波数帯域幅を含む、請求項6に記載の適応ノイズキャンセルシステム。
【請求項8】
前記ノイズ増幅制御モジュールは、ノイズ整形フィルタを組み込み、前記ノイズキャンセルフィルタのための新たな重み更新規則を導出する複合誤差信号を規定するように動作可能である、請求項6または7に記載の適応ノイズキャンセルシステム。
【請求項9】
可変利得成分をさらに備え、前記適応モジュールは、前記ノイズキャンセルフィルタおよび/または前記可変利得成分の重みを適応的に調整するように動作可能であり、前記適応モジュールは、前記可変利得成分を更新するように動作可能な適応利得制御ブロックを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の適応ノイズキャンセルシステム。
【請求項10】
アクティブノイズキャンセルのための方法であって、
外部ノイズを表す基準信号を第1のセンサから受信することと、
ノイズキャンセルフィルタを介して前記基準信号を処理してアンチノイズ信号を生成することと、
前記アンチノイズ信号をスピーカに出力することと、
第2のセンサから、ノイズキャンセルゾーンにおけるノイズを表す誤差信号を受信することと、
前記第2のセンサと鼓膜基準点との間の一次経路のモデルと、前記第2のセンサと前記鼓膜基準点との間の二次経路のモデルとに少なくとも基づいて、前記基準信号と前記誤差信号とノイズ増幅制御プロセスとに応じて前記ノイズキャンセルフィルタを適応的に調整することとを含む、アクティブノイズキャンセルのための方法。
【請求項11】
前記一次経路は環境ノイズと前記鼓膜基準点との間の経路の一部であり、前記二次経路は前記ノイズキャンセルフィルタと前記鼓膜基準点との間の経路の一部である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
過渡ノイズ事象を検出し、過渡ノイズ検出状態を選択的に設定して、前記ノイズキャンセルを適応的に調整することを、それぞれ、有効化および無効化することをさらに含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記過渡ノイズ事象は、ユーザが話すことを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記過渡ノイズ検出状態を選択的に設定することは、状態コマンドを送信することを含み、
前記ノイズキャンセルフィルタを適応的に調整することは、前記状態コマンドを受信し、前記状態コマンドに従って、適応を、それぞれ、有効化および無効化することをさらに含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記ノイズ増幅制御プロセスは、前記アンチノイズ信号の非ヒス領域におけるキャンセルを達成しながら、前記アンチノイズ信号の少なくとも1つのヒス領域においてノイズ増幅を適応的に制御することを含む、請求項10~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記アンチノイズ信号の前記ヒス領域は、環境ノイズと前記アンチノイズ信号との間の強めあう干渉が検出される周波数帯域幅を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ノイズ増幅制御プロセスは、ノイズ整形フィルタを組み込む複合誤差信号を規定することと、前記ノイズキャンセルフィルタのために新たな重み更新規則を導出することとをさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記基準信号を処理するステップは、可変利得成分を介して前記基準信号を処理することをさらに含み、前記ノイズキャンセルフィルタを適応的に調整するステップは、前記ノイズキャンセルフィルタおよび/または前記可変利得成分の重みを適応的に調整することを含む、請求項10~17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月19日に出願された「ロバストな適応ノイズキャンセリングシステムおよび方法(ROBUST ADAPTIVE NOISE CANCELLING SYSTEMS AND METHODS)」と題された米国仮出願第62/782,299号、2018年12月19日に出願された「適応ノイズキャンセリングシステムにおけるノイズ増幅制御(NOISE AMPLIFICATION CONTROL IN ADAPTIVE NOISE CANCELLING SYSTEMS)」と題された米国仮出願第62/782,305号、および2018年12月19日に出願された「拡張帯域幅適応ノイズキャンセリングシステムおよび方法(EXTENDED BANDWIDTH ADAPTIVE NOISE CANCELLING SYSTEM AND METHODS)」と題された米国仮出願第62/782,312号の優先権および利益を主
張し、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、一般に、ノイズキャンセリングシステムおよび方法に関し、より具体的には、例えば、ヘッドフォン(例えば、オーバーイヤー型、オンイヤー型およびインイヤー型)、イヤホン、補聴器、および他のパーソナルリスニングデバイスにおいて用いるための適応ノイズキャンセリングシステムならびに方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
適応ノイズキャンセル(ANC)システムは、一般に、基準マイクロフォンを介してノイズを感知し、感知されたノイズと大きさがほぼ等しいが位相が逆である対応するアンチノイズ信号を生成することによって、動作する。ノイズとアンチノイズ信号とは音響的に打ち消し合い、ユーザは所望の音声信号のみを聞くことができる。この効果を達成するために、基準マイクロフォンからアンチノイズ信号を出力するスピーカまでの、低レイテンシで、プログラム可能なフィルタ経路が実現され得る。動作中、従来のアンチノイズフィルタリングシステムは、すべてのノイズを完全には打ち消さず、残留ノイズを残し、および/またはユーザの気を散らし得る可聴アーチファクトを発生させる。したがって、ヘッドフォン、イアバッド、および他のパーソナルリスニングデバイスのための改善された適応ノイズキャンセルシステムならびに方法が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
オーディオリスニングデバイスにおいて適応ノイズキャンセルを提供するためのシステムおよび方法が開示される。さまざまな実施形態において、適応ノイズキャンセルシステムおよび方法は、改善された過渡アクティブノイズ検出を含む。
【0005】
1つまたは複数の実施形態では、適応ノイズキャンセルシステムは、環境ノイズを感知し、対応する基準信号を生成するように動作可能な基準センサと、ノイズキャンセルゾーンにおいてノイズを感知し、対応する誤差信号を生成するように動作可能な誤差センサと、基準信号を受信し、アンチノイズ信号を生成して、キャンセルゾーン内において環境ノイズを打ち消すように動作可能なノイズキャンセルフィルタと、基準信号および誤差信号を受信し、アンチノイズ信号を適応的に調整するように動作可能な適応モジュールと、基準信号を受信し、過渡ノイズ事象を検出し、検出された過渡ノイズ事象の間、適応モジュールを選択的に無効化するように動作可能な過渡活動検出モジュールとを備える。
【0006】
いくつかの実施形態では、上記適応モジュールは、可変利得成分を更新するように動作可能な適応利得制御ブロックを含む。上記適応利得制御ブロックへの入力は、上記環境ノイズにおける低周波数の過渡変化(low frequency transients)および/または高周波数のディストラクタ(high frequency distractors)に対して保護するように動作可能なプログラム可能なフィルタを用いて調節されてもよい。上記プログラム可能なフィルタは、上記キャンセルゾーンと鼓膜基準点との間に強め合う干渉を生じさせる範囲にあると判定された高周波をフィルタリングして除去するローパスフィルタと、上記ノイズキャンセルシステムのユーザによって聞こえない範囲にあると判定された低周波数をフィルタリングして除去するハイパスフィルタとを含んでもよい。上記適応モジュールは、上記ノイズキャンセルゾーンにおいて感知された上記誤差信号を用いて、上記鼓膜基準点においてノイズを打ち消すように整調されてもよい。
【0007】
1つまたは複数の実施形態では、ある方法は、外部ノイズを表す基準信号を第1のセンサから受信することと、ノイズキャンセルフィルタおよび可変利得成分を含むノイズキャンセル経路を通じて上記基準信号を処理して、アンチノイズ信号を生成することと、第2のセンサから、ノイズキャンセルゾーンにおけるノイズを表す誤差信号を受信することと、上記基準信号と上記誤差信号と適応利得制御プロセスとに応じて上記ノイズキャンセルフィルタを適応的に調整して、上記外部ノイズを鼓膜基準点において打ち消すこととを含む。
【0008】
本方法は、さらに、プログラム可能なフィルタを用いて上記適応利得制御プロセスへの入力を調節して、上記外部ノイズにおける低周波数の過渡変化および/または高周波数のディストラクタから保護することを含んでもよい。上記調節することはさらに、(i)キャンセルゾーンと鼓膜基準点との間に強め合う干渉を作り出す範囲でありかつ(ii)キャンセルゾーンと鼓膜基準点との間のノイズキャンセル性能において異なる範囲であると判定された高周波を低域通過フィルタリングにより除去すること、および/または、ユーザによって聞こえない範囲であると判定された低周波を高域通過フィルタリングにより除去することを含んでもよい。本方法は、さらに、上記ノイズキャンセルゾーンにおいて感知された上記誤差信号を用いて、上記鼓膜基準点においてノイズを打ち消すように上記ノイズキャンセル経路を整調することを含んでもよい。
【0009】
本発明の範囲は、参照により本セクションに組み込まれる特許請求の範囲によって規定される。当業者は、1つまたは複数の実施形態についての以下の詳細な説明を考慮することによって、本発明の実施形態をより充分に理解するとともに、そのさらなる利点を認識するであろう。最初に簡単に説明される添付の図面を参照する。
【0010】
図面の簡単な説明
本開示の局面およびそれらの利点は、以下の図面および以下の詳細な説明を参照することによって、よりよく理解することができる。当然のことながら、図面のうちの1つまたは複数に示される同様の要素を識別するために同様の参照番号が用いられ、その中の表示は、本開示の実施形態を例示する目的のためのものであり、本開示を限定するためのものではないことが理解されるべきである。図面中の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本開示の原理を明確に示すことに重点が置かれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の1つまたは複数の実施形態による適応ノイズキャンセルヘッドセットを示す。
【
図2】本開示の1つまたは複数の実施形態による適応ノイズキャンセルシステムを示す。
【
図3】本開示の1つまたは複数の実施形態による、ノイズ増幅制御サブシステムを含む適応ノイズキャンセルシステムを示す。
【
図4A】本開示の1つまたは複数の実施形態による、適応利得制御サブシステムを含む適応ノイズキャンセルシステムを示す。
【
図4B】本開示の1つまたは複数の実施形態による、適応利得制御サブシステムを含む適応ノイズキャンセルシステムを示す。
【
図5】本開示の1つまたは複数の実施形態による適応ノイズキャンセルシステムの過渡活動検出器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
さまざまな実施形態によれば、改善された適応ノイズキャンセル(ANC)システムおよび方法が開示される。ヘッドセットまたは他のパーソナルリスニングデバイスのためのANCシステムは、環境ノイズを感知するためのノイズ感知基準マイクロフォンと、ANCデバイスによって生成されるノイズとアンチノイズとの音響混合を感知するための誤差マイクロフォンと、環境ノイズを打ち消すためにアンチノイズを生成する信号処理サブシステムとを含むことができる。信号処理サブシステムは、ユーザ、環境ノイズ条件、およびデバイスユニットにわたって一貫したキャンセル性能を達成するためにアンチノイズ信号を継続的に調整するように構成され得る。さまざまな実施形態において、本明細書に開示される適応システムおよび方法は、環境ノイズの打消しを改善し、知覚可能な適応アーチファクトを低減する。
【0013】
本開示は、(例えば、環境ノイズとアンチノイズ信号との間の強めあう干渉に起因する)望ましくないノイズ増幅、過渡ノイズ事象中のノイズキャンセル性能、および適応中に生成される可聴アーチファクトの低減を含む、汎用適応ノイズキャンセルシステムに関連付けられる多くの課題に対処する。本明細書に開示されるシステムおよび方法は、さまざまなリスニングデバイスおよび波形率に充分一般化される、ロバストで実用的なANC方策を提供する。
【0014】
さまざまな実施形態において、ある周波数範囲においてノイズとアンチノイズとの間に強めあう干渉があるときに生ずるノイズ増幅を低減するシステムおよび方法が開示される。ノイズ整形フィルタを組み込む複合誤差信号を規定することと、適応を制御するための新たな重み更新規則を導出することとを含む適応方法が開示される。本明細書で開示される解決策は、適応的であり、計算が安価に行われ、従来の適応フレームワークに対する改善として実現され得る。
【0015】
さまざまな実施形態では、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、聴き手によって知覚され得る適応アーチファクトを低減する。例えば、低音圧レベル(SPL)アーチファクトは、聴き手の鼓膜に対するアンチノイズ源の近接度に起因して存在し得る。さらに、いくつかのアーチファクトは、アンチノイズ経路の大きさおよび位相応答における広帯域変動によって引き起こされることが認識される。本明細書で開示される改善された適応システムおよび方法は、ロバストな誤り訂正信号を生成するために、アンチノイズ信号経路内に適応利得素子を含む。
【0016】
さまざまな実施形態において、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、過渡ノイズ事象に対する改善されたロバスト性を提供する。多くの断続的かつ予期しないノイズ事象(例えば、ノイズに対してマイクロフォンを移動させる頭/顎の動き、ドアを閉じる動作、空の旅での乱気流など)は、適応ループを潜在的に乱し、望ましくない残留ノイズを残すかまたはノイズアーチファクトを生じさせる可能性がある低周波の過渡変化を生じさせる。さまざまな実施形態において、過渡活動検出器(TAD)は、過渡的挙動を追跡し、過渡活動中において適応を制御する。
【0017】
本開示の適応ノイズキャンセリングシステムの例示的な実施形態が、図面を参照して説明される。
図1を参照すると、適応ノイズキャンセリングシステム100は、ヘッドフォン110などのオーディオデバイスと、デジタル信号プロセッサ(DSP)120、デジタルアナログ変換器(DAC)130、増幅器132、基準マイクロフォン140、スピーカ150、誤差マイクロフォン162、および他の構成要素などのオーディオ処理回路とを含む。
【0018】
動作中、聴き手は、ヘッドフォン110のハウジングおよび構成要素を介して外部ノイズd(n)を聞き得る。ノイズd(n)を打ち消すために、基準マイクロフォン140は、外部ノイズを感知し、基準信号x(n)を生成し、この基準信号x(n)は、アナログデジタル変換器(ADC)142を介してDSP120に供給される。DSP120は、アンチノイズ信号y(n)を生成し、それは、DAC130および増幅器132を介してスピーカ150に供給され、ノイズキャンセルゾーン160においてアンチノイズを生成する。アンチノイズがノイズキャンセリングゾーン160においてノイズd(n)と大きさが等しく位相が反対である場合、ノイズd(n)はノイズキャンセリングゾーン160において打ち消される。ノイズとアンチノイズとの結果的な混合は、誤差マイクロフォン162によって捕捉され、それは、ノイズキャンセルの有効性を測定するために誤差信号e(n)を生成する。誤差信号e(n)は、ADC164を介してDSP120に供給され、DSP120は、アンチノイズ信号y(n)の大きさおよび位相を調整して、キャンセルゾーン162内の誤差信号e(n)を最小化する(例えば、誤差信号e(n)をゼロに駆動する)。いくつかの実施形態では、スピーカ150は、所望の音声(例えば、音楽)も生成し得、それは、誤差マイクロフォン162によって受信され処理中に誤差信号e(n)から除去される。
図1の実施形態は適応ノイズキャンセルシステムの一例であり、本明細書で開示されるシステムおよび方法は、基準マイクロフォンと誤差マイクロフォンとを含む他の適応ノイズキャンセリング実現例を用いて実現され得ることが理解されるであろう。
【0019】
図2は、実質的に音声アーチファクトのない、改善されたノイズキャンセル性能を達成する、ロバストで設定可能な適応ノイズキャンセリングシステム200を示す。システム200は、外部マイクロフォン(例えば、
図1のマイクロフォン140)で環境ノイズを感知し、外部マイクロフォンは、外部ノイズ信号x(n)を生成する。環境ノイズは、リスニングデバイスのハウジングおよび構成要素を含むノイズ経路P(z)も通り、誤差マイクロフォン(例えば、誤差マイクロフォン162)においてd(n)として受け取られる。適応フィルタ202は、外部ノイズ信号x(n)を受け取り、ノイズ経路P(z)を推定して、ノイズ信号d(n)を打ち消すためのアンチノイズ信号y(n)を生成する。アンチノイズ信号y(n)は、適応利得制御204によって利得調整され、さらに、適応フィルタ202と誤差マイクロフォンとの間の二次経路S(z)を考慮するためにシステム206によって修正される。
【0020】
システム200は、ノイズ増幅制御(NAC)ブロック222および適応利得制御ブロック(ADG)224を含む適応ブロック220をさらに含む。さまざまな実施形態において、NAC222は、周波数に依存する強めあう干渉を最小化するように動作可能であり、ADG224は、アンチノイズ経路において広帯域変動を最小化するように動作可能である。システム200は、さらに、突然のノイズ変動および衝撃性環境事象に応答してシステム200を制御するように動作可能な過渡活動検出器(TAD)226を含む。フィルタ208、210、212、228、230、232は、
図3~
図5を参照して本明細書でさらに説明されるように、追加のフィルタリングを提供する。
【0021】
図3を参照して、ノイズ増幅制御(NAC)サブシステム300の実施形態を説明する
。多くの適応ノイズキャンセルシステムの目的は、聴き手の鼓膜におけるノイズを推定することである。これは、しばしば、鼓膜から短い距離に位置する基準マイクロフォンおよび誤差マイクロフォンからのノイズ測定値を用いることによって達成される。次いで、推定されたノイズは、実際のノイズと弱め合うように干渉し、ノイズの打ち消しをもたらすアンチノイズ信号に反転される。アンチノイズ信号は、アンチノイズをノイズと整列させるために各周波数について振幅および位相シフトを推定するように適合するフィルタを用いて生成される。レイテンシおよび問題の物理的伝達関数に依存して、弱め合う干渉は、特定の帯域幅において維持され得る一方で、強めあう干渉は、これらの帯域幅を超えて経験され得る。この強めあう干渉は、聴き手によって、周囲ノイズの狭帯域増幅(例えば、「ヒス」音)として知覚され得る。打消しの深さおよび帯域幅を犠牲にすることなく「ヒス」音を低減または除去することは、多くのANC製品設計において課題である。従来の低電力組込みシステム(例えば、消費者ヘッドフォン)では、ヒスの低減は、計算上禁止的であり、制御および整調が困難である。
【0022】
図3のNACサブシステム300は、ヒスおよび関連するサウンドアーチファクトを制御するための手法を提供し、この手法は、ヒス領域内のノイズ増幅を適応的に制御しながら、非ヒス領域におけるキャンセルを効率的に達成する。NACブロック320は、ノイズ整形フィルタC(z)(例えば、ノイズ整形ブロック308およびノイズ整形ブロック310)を組み込む複合誤差信号を規定し、適応フィルタ302のための新たな重み更新規則を導出するように構成される。いくつかの実施形態では、新たな重み更新規則を導出するために用いられるノイズ整形フィルタを組み込む複合誤差信号を含む最小平均二乗(LMS)フレームワークが用いられ得る。
【0023】
動作中、NACブロック320は、誤差信号e(n)および基準信号x(n)のフィルタリングされたものに基づいて適応フィルタ302W(z)を更新する。図示の実施形態では、NACブロック320は、フィルタ312
【0024】
【0025】
から信号x1(n)を受信し、フィルタ308C(z)から信号x2(n)を受信する。コスト関数は、平均二乗誤差を最小化する:
【0026】
【0027】
を最小化する。さまざまな実施形態において、アンチノイズ信号は、ヒス領域において信号を強化するように構成され得るノイズ整形フィルタC(z)(ノイズ整形フィルタ308およびノイズ整形フィルタ310など)を用いてフィルタリングされる。いくつかの実施形態では、特定のヘッドセットに対するヒス領域が検出されてもよく、ノイズ整形フィルタC(z)は、試験環境内で分配に先だって整調されてもよい。いくつかの実施形態では、動作中にヒスレベルを検出し、動作中にノイズ整形フィルタC(z)を適応的に整調してもよい。ヒスレベルは、例えば、誤差信号e(n)をノイズ信号と比較して、強め合う干渉の領域を判定することにより、判定され得る。
【0028】
コスト関数は、
【0029】
【0030】
を最小化するように適合され、式中、E{.}は、期待演算子であり、γは、積極性(aggressiveness)を制御する定数であり、e1(n)は、ノイズ整形されたアンチノイズ信
号y’(n)である。いくつかの実施形態では、重み更新規則は、NAC320によって勾配法に基づいて導出される。本方法の実施形態は、フィルタリングされた最小平均二乗手法、適応フィードバック、適応ハイブリッド手法、および他のノイズキャンセル手法に適用することができる。さまざまな実施形態において、適応は、コスト関数最適化を規定し、それを達成することができる適応アルゴリズムを導出することによって、ノイズ増幅を最小化する方法で、制御される。
【0031】
図4Aおよび
図4Bを参照して、適応利得(ADG)サブシステム400の実施形態が開示される。さまざまな実施形態において、適応利得制御ブロック420は、利得素子404を継続的に更新して、さまざまな結合経路における変動に対して調整を行う。ADGへの入力は、環境における低周波数の過渡変化および高周波数のディストラクタから保護するように設計されるプログラム可能なフィルタB
G(z)(例えば、プログラム可能なフィルタ408およびプログラム可能なフィルタ410)を用いて調節する。いくつかの実施形態では、フィルタB
G(z)は、非常に低い周波数(例えば、スピーカから聞こえない<20Hz)をさらにフィルタリング除去するローパスフィルタおよび/またはバンドパスフィルタを含んでもよい。
【0032】
ヘッドフォンの物理的幾何学的形状および個人間適合変化は、ノイズキャンセル性能に影響を及ぼし得ることが理解されるであろう。例えば、外耳の形状および外耳道の長さは、ANC用途において当該の音響伝達関数を変化させ得る。いくつかの実施形態では、ヘッドフォンまたは他のパーソナルリスニングデバイス内のANCシステム(例えば
図1のシステム)は、ノイズ感知基準マイクロフォン、誤差マイクロフォン、および誤差マイクロフォンによって測定されたノイズ場を打ち消すために適切なアンチノイズを生成するDSPサブシステムを用いる。これは、打ち消しの度合いが誤差マイクロフォン位置において最大化され、波長に反比例して劣化するキャンセルゾーンをもたらす。結果として、(誤差マイクロフォンから約25mm離れている)鼓膜におけるキャンセル性能は、より高い周波数(より低い波長)に対して著しく低下し、ノイズキャンセリングシステムのユーザによって知覚されるキャンセル帯域幅の損失につながる。
図4A~
図4Bの実施形態は、整調段階の間に鼓膜におけるキャンセル帯域幅を最大にし、動作中にユーザ固有の特性に適合するよう誤差マイクロフォンを用いる適応的手法を定式化することによって、これらおよび他の問題に対処する。
【0033】
本開示の目的のために、誤差マイクロフォン位置をERP(誤差基準点)と呼び、鼓膜位置をDRP(鼓膜基準点)と呼ぶ。DRPにおいて整調されるANCシステムの場合、誤差マイクロフォンは、DRPにおける低周波数キャンセルの良好な指標であり、したがって、ロバストな誤り訂正信号が、誤差マイクロフォン信号の低域通過信号から導出され得る。次いで、この訂正信号を用いて、アンチノイズ信号経路において利得を適応させることができる。
【0034】
打消しを最大にするため、誤差マイクロフォンの理想的な配置は、鼓膜であろうが、その位置は、多くの消費者デバイスにとって実用的ではない。したがって、ERPを用いて、DRPにおけるキャンセル性能を大まかに示す実用的な信号を提供する。適応アルゴリズムは、(i)DRPにおける高周波数信号での打消しの低減および(ii)DRPにおける高周波数の強めあう干渉によるヒス音アーチファクトのより高い可能性をもたらすE
RP信号を最小化することを試みる。従来の手法では、ERPからDRPへの伝達関数を用いる適応アルゴリズムが用いられる。これらの手法は、伝達関数推定が高周波数では不正確であり、低い推定精度が広帯域キャンセル性能に影響を及ぼし、一時的なヒスレベル、高い計算コスト、およびすべての使用条件について整調および較正の困難を引き起こし得、多くのデバイスにとって展開を非実用的にすることを含む、多くの欠点を有する。
図4A~
図4Bの実施形態は、従来のシステムの欠点の多くを克服し、例えばシステム設計中に特定の伝達関数を測定することによって整調が容易であり、自己較正する、計算が安価な手法を提供する。
【0035】
図4Aは、適応利得サブシステムのための較正および整調構成を示す。この構成では、ANCフィルタ402は、初期整調段階の間にDRPにおいてノイズを打ち消すように最適化される。一実施形態では、デバイスは、DRPに第2の誤差マイクロフォンを有する頭胴シミュレータ上に配置される。P
E2D(z),S
E2D(z)は、示された音響経路においてERPからDRPへの伝達関数をモデル化する。次いで、誤差信号e’(n)に基づいて最適W
DRP(z)を導出するようANC整調を実行するために最小平均二乗ブロック422を用いてシステムを最適化することができる。このように整調することは、拡張されたキャンセル帯域幅およびより良好な性能を高周波数帯域において達成するのに役立つ。第2に、
図4Bに示されるように、適応アルゴリズムは、さまざまな結合経路における変動に対して調整するために提案される手法に能力を与える利得素子404、Gを継続的に更新するようにセットアップされる。いくつかの実施形態では、信号は低域通過フィルタリングされ、良好な低周波数キャンセルのために利得が調整される。第3に、適応アルゴリズムへの入力は、ERP信号がDRPにおけるキャンセル性能を模倣することができるようにプログラムされるプログラム可能なフィルタB
G(z)を用いて調節される。さらに、B
G(z)は、環境における低周波数の過渡変化および高周波数のディストラクタ中の性能を最適化するようにプログラムすることができる。
【0036】
図4A~
図4Bの実施形態は、例示的な実現例であり、フィードバック、フィードフォワード、およびハイブリッドANC解決策の適応バージョンに対して、本明細書で開示される手法を変更することができることを理解されたい。いくつかの実施形態では、利得素子を適合させる代わりに、意図的に制約されたフィルタ素子を適合させることができる。計算された利得は、ロバスト性をさらに増大させるよう、追加の非線形処理を有することができる。
【0037】
図5を参照すると、過渡活動検出器(TAD)500の実施形態が示される。動作中、TAD500は、音環境における変化を検出し、突然の/断続的なノイズ活動が検出されると、更新プロセスを一時的に停止させる。結果として、アンチノイズ信号における望ましくない適応アーチファクト(例えば、迅速な適応から生じ得るアーチファクト)が最小化される。過渡事象の例は、ヘッドセット着用者が話すこと、自動車の警笛をならすこと、頭部の動き、および他の同様の音声事象を含み得る。別のTAD計算のセットが、ANCシステム内の各マイクロフォン(例えば、左誤差マイクロフォン、左外側マイクロフォン、右誤差マイクロフォン、右外側マイクロフォンを含むヘッドセット内の合計4つのマイクロフォン)からの入力に対して実行され得る。4つのマイクロフォンの各々は、独立して有効化または無効化され得る。
【0038】
マイクロフォンの過渡活動検出処理の一実施形態を
図5に示す。検出状態機械514が、「検出」出力をアサートおよびデアサートするために用いられる。さまざまな実施形態において、検出出力は、平滑化された瞬間的な大きさ(LPF506からの出力A)がスケーリングされた平均的なノイズの大きさ(本開示ではC)よりも大きい場合に、アサートされることになる。平滑化された瞬間的な大きさAがスケーリングされた平均的なノイズの大きさC未満に下がった後、開放遅延カウンタが、検出出力を、デアサートされる前
に、プログラム可能な期間の間持続させる。
【0039】
図示した実施形態では、マイクロフォン(たとえば、基準マイクロフォンまたは誤差マイクロフォン)からの音声サンプル502が受信され、絶対値ブロック504を介して供給され、それにローパスフィルタ506が続いて、平滑化された瞬間的な大きさAを生成する。一実施形態では、出力Aは、ある期間にわたる音声サンプル502の平均的な大きさを含み、瞬間ノイズ値を表す。値Aは、検出状態機械514に、およびローパスフィルタ508に、第2の期間にわたるA値の平均を表す出力B(すなわち、平均的なノイズの大きさ)を有する飽和とともに供給される。プログラム可能なスケールファクタは、過渡変化を検出するための閾値(例えば、平均的なノイズの大きさの5倍である)を規定し、構成要素516において平均的なノイズの大きさで乗算されて、検出状態機械514への第2の入力Cを生成する。
【0040】
一実施形態では、平滑化された瞬間的なノイズの大きさAがスケーリングされた平均的なノイズの大きさCよりも大きい場合、検出状態機械514は、適応処理(例えば、
図2の適応ブロック220)に停止するように指示するよう動作可能である。さまざまな実施形態において、適応は、瞬間的なノイズの大きさAがスケーリングされた平均的なノイズの大きさCを下回るまで凍結することになる。
図2を参照すると、適応が停止されると、フィルタ202および適応利得制御204は、最新の重みおよび利得値を用いてノイズ入力x(n)を修正し続ける。いくつかの実施形態では、プログラム可能な開放遅延カウンタは、検出出力を、デアサートされる前に、プログラム可能な期間の間維持するように動作可能である。さらに、攻撃および開放構成要素512は、ローパスフィルタ508が瞬間的なノイズの大きさAに応じて、どのように迅速に上下するかを制御するよう動作可能である。プログラム可能な攻撃時定数は、瞬時ノイズが平均的なノイズの大きさBより大きいときに、平均的なノイズの大きさが上昇するのにかかる時間を規定する。プログラム可能な開放時定数は、瞬間的なノイズの大きさAが平均的なノイズの大きさBよりも小さい場合に、平均的なノイズの大きさBが低下するのにかかる時間を規定する。
【0041】
例示的な実施形態
以下、本開示のさまざまな実施形態について説明する。1つまたは複数の実施形態では、ロバストな適応ノイズキャンセルシステムは、環境ノイズを感知し、対応する基準信号を生成するように動作可能な基準センサと、ノイズキャンセルゾーンにおいてノイズを感知し、対応する誤差信号を生成するように動作可能な誤差センサと、基準信号を受信し、アンチノイズ信号を生成して、キャンセルゾーン内において環境ノイズを打ち消すように動作可能なノイズキャンセルフィルタと、基準信号および誤差信号を受信し、アンチノイズ信号を適応的に調整するように動作可能な適応モジュールと、基準信号を受信し、過渡ノイズ事象を検出し、検出された過渡ノイズ事象の間、適応モジュールを選択的に無効化するように動作可能な過渡活動検出モジュールとを備える。
【0042】
ロバストな適応ノイズキャンセルシステムでは、過渡ノイズ事象は、適応ノイズキャンセルシステムのオペレータが話すことを含むことができ、過渡活動検出モジュールは、過渡ノイズ事象を検出し、適応モジュールに状態コマンドを送信するように動作可能な状態機械を含むことができる。適応モジュールは、状態コマンドを受信し、それに従って適応を有効化および/または無効化するように動作可能である。
【0043】
ロバストな適応ノイズキャンセルシステムのいくつかの実施形態では、過渡ノイズ事象は、受信信号の平滑化された瞬間的な大きさが受信信号のスケーリングされた平均的なノイズの大きさよりも大きい場合に検出され、過渡ノイズ事象の終了が検出された後、適応を有効化する前に、遅延が適用される。過渡ノイズ事象の終了は、平滑化された瞬間的な大きさがスケーリングされた平均的なノイズの大きさを下回るときに検出され得る。スケ
ーリングされた平均的なノイズの大きさは、プログラム可能なスケールファクタを平均的なノイズの大きさに適用することによって導出され得る。
【0044】
ロバストな適応ノイズキャンセルシステムのいくつかの実施形態では、上記ノイズキャンセルフィルタは、さらに、記憶されたフィルタ係数に従って上記アンチノイズ信号を生成するように動作可能であり、上記適応モジュールは、さらに、上記記憶されたフィルタ係数を修正するように動作可能である。適応ノイズキャンセルシステムは、さらに、上記アンチノイズ信号を受信し、アンチノイズを生成して、キャンセルゾーン内のノイズを打ち消すように動作可能なスピーカを含む。適応モジュールは、さらに、ノイズ増幅制御サブシステムおよび/または適応利得制御サブシステムを含む。
【0045】
1つまたは複数の実施形態では、ロバストなアクティブノイズキャンセル方法は、第1のセンサから外部ノイズを表す基準信号を受信することと、基準信号をノイズキャンセルフィルタを介して処理してアンチノイズ信号を生成することと、アンチノイズ信号をスピーカに出力することと、第2のセンサからノイズキャンセルゾーンにおけるノイズを表す誤差信号を受信することと、基準信号、誤差信号、および過渡ノイズ検出状態に応答してノイズキャンセルフィルタを適応的に調整することと、過渡ノイズ事象を検出し、過渡ノイズ検出状態を選択的に設定して、ノイズキャンセリングを適応的に調整することを、それぞれ有効化および無効化にすることとを含む。
【0046】
アクティブノイズキャンセル方法のいくつかの実施形態では、上記過渡ノイズ検出状態を設定することは、状態コマンドを送信することを含み、上記ノイズキャンセルフィルタを適応的に調整することは、上記状態コマンドを受信し、上記状態コマンドに従って、適応を、それぞれ有効化および無効化することをさらに含む。上記過渡ノイズ事象を検出することは、受信信号の平滑化された瞬間的な大きさを上記受信信号のスケーリングされた平均的なノイズの大きさと比較することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、過渡ノイズ事象の終了が検出された後、適応を有効化する前に、遅延が適用される。
【0047】
いくつかの実施形態では、過渡ノイズ事象は、平滑化された瞬間的な大きさがスケーリングされた平均的なノイズの大きさを下回るときに検出される。スケーリングされた平均的なノイズの大きさは、プログラム可能なスケールファクタを平均的なノイズの大きさに適用することによって導出され得る。ノイズキャンセルフィルタを適応的に調整することは、ノイズ増幅制御プロセスおよび/または適応利得制御プロセスを含む。
【0048】
1つまたは複数の実施形態では、ノイズ増幅制御を伴う適応ノイズキャンセリングシステムは、環境ノイズを感知し、対応する基準信号を生成するように動作可能な基準センサと、ノイズキャンセルゾーンにおいてノイズを感知し、対応する誤差信号を生成するように動作可能な誤差センサと、基準信号を受信し、アンチノイズ信号を生成して、キャンセルゾーン内において環境ノイズを打ち消すように動作可能なノイズキャンセルフィルタと、基準信号および誤差信号を受信し、アンチノイズ信号を適応的に調整するように動作可能な適応モジュールとを備える。上記適応モジュールは、上記アンチノイズ信号の非ヒス領域における打消しを達成しながら、上記アンチノイズ信号の少なくとも1つのヒス領域においてノイズ増幅を適応的に制御するように動作可能なノイズ増幅制御モジュールを含む。
【0049】
ノイズ増幅制御を伴う適応ノイズキャンセルシステムのいくつかの実施形態では、上記アンチノイズ信号の上記ヒス領域は、上記環境ノイズと上記アンチノイズ信号との間の強めあう干渉が検出される周波数帯域幅を含む。ノイズ増幅制御モジュールは、ノイズ整形フィルタを組み込み、ノイズキャンセルフィルタのための新たな重み更新規則を導出する、および/または最小平均二乗アルゴリズムを用いて新たな重み更新規則を導出する複合
誤差信号を規定するように動作可能である。ノイズ整形フィルタは、動作中に適応的に時限式であってもよく、および/または重み更新規則は、勾配を用いて導出される。
【0050】
ノイズ増幅制御を伴う適応ノイズキャンセルシステムのいくつかの実施形態では、上記ノイズ増幅制御は、
【0051】
【0052】
を最小化するようコスト関数を適応させ、式中、E{.}は、期待演算子であり、γは、
積極性を制御する定数であり、e1(n)は、ノイズ整形されたアンチノイズ信号y’(n)である。過渡活動検出モジュールは、上記基準信号を受信し、過渡ノイズ事象を検出し、検出された上記過渡ノイズ事象の間、上記適応モジュールを選択的に無効化するよう設けられてもよい。上記ノイズキャンセルフィルタは、さらに、記憶されたフィルタ係数に従って上記アンチノイズ信号を生成するように動作可能であってもよく、上記適応モジュールは、さらに、上記記憶されたフィルタ係数を修正するように動作可能である。システムは、さらに、上記アンチノイズ信号を受信し、アンチノイズを生成して、キャンセルゾーン内のノイズを打ち消すように動作可能なスピーカを含んでもよい。
【0053】
1つまたは複数の実施形態において、ノイズ増幅制御を伴う適応ノイズキャンセリングのための方法は、第1のセンサから外部ノイズを表す基準信号を受信することと、基準信号をノイズキャンセルフィルタを介して処理してアンチノイズ信号を生成することと、アンチノイズ信号をスピーカに出力することと、誤差センサからノイズキャンセルゾーンにおけるノイズを表す誤差信号を受信することと、基準信号、誤差信号、およびノイズ増幅制御プロセスに応答してノイズキャンセルフィルタを適応的に調整することとを含む。上記ノイズ増幅制御プロセスは、上記アンチノイズ信号の非ヒス領域における打消しを達成しながら、上記アンチノイズ信号の少なくとも1つのヒス領域においてノイズ増幅を適応的に制御することを含む。
【0054】
ノイズ増幅制御を用いた適応ノイズキャンセリングのための方法のいくつかの実施形態では、上記アンチノイズ信号の上記ヒス領域は、上記環境ノイズと上記アンチノイズ信号との間の強めあう干渉が検出される周波数帯域幅を含む。ノイズ増幅制御プロセスは、さらに、ノイズ整形フィルタを組み込む複合誤差信号を規定し、上記ノイズキャンセルフィルタのために新たな重み更新規則を導出することと、最小平均二乗アルゴリズムを用いて新たな重み更新規則を導出することと、動作中に上記ノイズ整形フィルタを適応的に整調することと、
【0055】
【0056】
を最小化するようコスト関数を適応させることとを含んでもよく、式中、E{.}は、期
待演算子であり、γは、積極性を制御する定数であり、e1(n)は、ノイズ整形されたアンチノイズ信号y’(n)である。重み更新規則は、勾配を用いて導出されてもよい。
【0057】
ノイズ増幅制御を用いた適応ノイズキャンセリングのための方法のいくつかの実施形態では、本方法は、過渡ノイズ事象を検出し、過渡ノイズ検出状態を選択的に設定して、上記ノイズキャンセルフィルタを適応的に調整することを、それぞれ有効化および無効化すること、および/または記憶されたフィルタ係数に従って上記アンチノイズ信号を生成す
ることをさらに含む。
【0058】
1つまたは複数の実施形態では、拡張帯域幅適応ノイズキャンセリングシステムは、環境ノイズを感知し、対応する基準信号を生成するように動作可能な基準センサと、ノイズキャンセルゾーン内のノイズを感知し、対応する誤差信号を生成するように動作可能な誤差センサと、ノイズキャンセルフィルタおよび可変利得成分を含むノイズキャンセル経路とを備え、ノイズキャンセル経路は、基準信号を受信し、アンチノイズ信号を生成して、鼓膜基準点において環境ノイズを打ち消すように動作可能であり、拡張帯域幅適応ノイズキャンセリングシステムはさらに、基準信号および誤差信号を受信し、ノイズキャンセルフィルタおよび/または可変利得成分の重みを適応的に調整するように動作可能な適応モジュールを備える。適応モジュールは、可変利得成分を更新するように動作可能な適応利得制御ブロックを含み得る。
【0059】
拡張帯域幅適応ノイズキャンセリングシステムのいくつかの実施形態では、上記適応利得制御ブロックへの入力は、上記環境ノイズにおける低周波数の過渡変化および/もしくは高周波数のディストラクタから保護するように動作可能なプログラム可能なフィルタを用いて調節され、ならびに/または上記プログラム可能なフィルタは、上記キャンセルゾーンと上記鼓膜基準点との間に強め合う干渉を生じさせる範囲にあると判定された高周波数をフィルタリングして除去するローパスフィルタを含む。上記プログラム可能なフィルタは、上記ノイズキャンセルシステムのユーザによって聞こえない範囲にあると判定された低周波数をフィルタリングして除去するハイパスフィルタを含んでもよい。
【0060】
拡張帯域幅適応ノイズキャンセリングシステムのいくつかの実施形態では、適合モジュールは、上記ノイズキャンセルゾーンにおいて感知された上記誤差信号を用いて、上記鼓膜基準点においてノイズを打ち消すように整調される。上記適応モジュールは、さらに、上記アンチノイズ信号の非ヒス領域における打消しを達成しながら、上記アンチノイズ信号の少なくとも1つのヒス領域においてノイズ増幅を適応的に制御するように動作可能なノイズ増幅制御モジュールを含んでもよい。上記アンチノイズ信号の上記ヒス領域は、上記環境ノイズと上記アンチノイズ信号との間の強めあう干渉が検出される周波数帯域幅を含んでもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、拡張帯域幅適応ノイズキャンセリングシステムは、上記基準信号を受信し、過渡ノイズ事象を検出し、検出された上記過渡ノイズ事象の間、上記適応モジュールを選択的に無効化するように動作可能な過渡活動検出モジュールをさらに備える。上記ノイズキャンセルフィルタは、さらに、記憶されたフィルタ係数に従って上記アンチノイズ信号を生成するように動作可能であってもよく、上記適応モジュールは、さらに、上記記憶されたフィルタ係数を修正するように動作可能である。拡張帯域幅適応ノイズキャンセリングシステムは、さらに、上記アンチノイズ信号を受信し、アンチノイズを生成して、キャンセルゾーン内のノイズを打ち消すように動作可能なスピーカを含んでもよい。
【0062】
1つまたは複数の実施形態では、拡張帯域幅適応ノイズキャンセリングシステムを動作させる方法は、外部ノイズを表す基準信号を第1のセンサから受信することと、ノイズキャンセルフィルタおよび可変利得成分を含むノイズキャンセル経路を通じて上記基準信号を処理して、アンチノイズ信号を生成することと、第2のセンサから、ノイズキャンセルゾーンにおけるノイズを表す誤差信号を受信することと、上記基準信号と上記誤差信号と適応利得制御プロセスとに応じて上記ノイズキャンセルフィルタを適応的に調整して、上記外部ノイズを鼓膜基準点において打ち消すこととを含む。
【0063】
幾つかの実施形態では、拡張帯域幅適応ノイズキャンセリングシステムを動作させる方
法は、プログラム可能なフィルタを用いて上記適応利得制御プロセスへの入力を調節して、上記外部ノイズにおける低周波数の過渡変化および/または高周波数のディストラクタから保護することをさらに含み、調節することは、キャンセルゾーンと鼓膜基準点との間に強め合う干渉を生じさせる範囲にあると判定された高周波数を低域通過フィルタリングにより除去することをさらに含み、および/または調節することは、ユーザが聞こえない範囲にあると判定された低周波数を高域通過フィルタリングにより除去することをさらに含む。
【0064】
1つまたは複数の実施形態では、拡張帯域幅適応ノイズキャンセリングシステムを動作させる方法は、さらに、上記ノイズキャンセルゾーンにおいて感知された上記誤差信号を用いて、上記鼓膜基準点においてノイズを打ち消すように上記ノイズキャンセル経路を整調すること、および/またはノイズ増幅制御プロセスを介して、上記アンチノイズ信号の非ヒス領域におけるキャンセルを達成しながら、上記アンチノイズ信号の少なくとも1つのヒス領域においてノイズ増幅を適応的に制御することを含む。アンチノイズ信号のヒス領域は、外部ノイズとアンチノイズ信号との間の強めあう干渉が検出される周波数帯域幅を含むことができる。
【0065】
1つまたは複数の実施形態では、拡張帯域幅適応ノイズキャンセリングシステムを動作させる方法は、過渡活動検出プロセスを通して、基準信号を受信することと、過渡ノイズ事象を検出することと、検出された過渡ノイズ事象の間、ノイズキャンセルフィルタを適応的に調整することを選択的に無効化することとをさらに含む。本方法は、さらに、記憶されたフィルタ係数に従って上記アンチノイズ信号を生成すること、上記記憶されたフィルタ係数を動作中に適応的に修正すること、および/または上記アンチノイズ信号をスピーカに出力してアンチノイズを発生させて、キャンセルゾーン内のノイズを打ち消すことを含んでもよい。
【0066】
前述の開示は、本開示を、開示された形態そのものまたは特定の使用分野に限定することを意図していない。したがって、本明細書で明示的に記載されるかまたは暗示されるかに関わらず、本開示に対するさまざまな代替実施形態および/または修正が本開示に照らして可能であることが企図される。このように本開示の実施形態を説明したが、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、形態および詳細において変更を行うことができることを認識するであろう。したがって、本開示は、特許請求の範囲によってのみ限定される。