(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】家具キャビネット用の壁および壁を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
A47B 55/00 20060101AFI20240816BHJP
B27F 1/00 20060101ALI20240816BHJP
B27F 1/04 20060101ALI20240816BHJP
E05D 15/40 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A47B55/00
B27F1/00 B
B27F1/04
E05D15/40
(21)【出願番号】P 2023516532
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 AT2021060305
(87)【国際公開番号】W WO2022051787
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-04-13
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 6973 Hoechst, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホースト ツィマーマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ナーゲル
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-514670(JP,A)
【文献】国際公開第2019/134938(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/124109(WO,A1)
【文献】特表2020-514589(JP,A)
【文献】特表2015-520816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 55/00
B27F 1/00
B27F 1/04
E05D 15/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具キャビネット用の壁(1)であって、切欠き(7)を有し、前記切欠き(7)は、前記壁(1)の端面(1a)から前記壁(1)内に延在しており、前記切欠き(7)内に、可動の家具部分(17)を案内する金具(14)が挿入されている、壁(1)において、
前記切欠き(7)は、前記壁(1)の前記端面(1a)から前記壁(1)内に切削加工されており、前記金具(14)は、同じく前記壁(1)の前記端面(1a)から、切削加工された前記切欠き(7)内に挿入されており、
前記切欠き(7)は、盲孔状に形成されていて、前記壁(1)の前記端面(1a)における開口を除いて、全ての側で閉鎖されて
おり、
前記切欠き(7)は、互いに平行な上側の平らな頂壁(7c)および下側の平らな底壁(7d)を有しており、
前記頂壁(7c)および前記底壁(7d)は、前記壁(1)の前記端面(1a)に対して垂直に延びており、
前記切欠き(7)の背壁は、前記壁(1)の前記端面(1a)に対して平行にまたは幾分斜めに延びる平らな区分(7e)を有しており、
前記切欠き(7)の前記背壁は、前記切欠き(7)の前記平らな区分(7e)と前記頂壁(7c)および/または前記底壁(7d)との間の円弧状の区分(7f)でこれらの壁に移行している、ことを特徴とする、壁(1)。
【請求項2】
家具キャビネット用の壁(1)であって、切欠き(7)を有し、前記切欠き(7)は、前記壁(1)の端面(1a)から前記壁(1)内に延在しており、前記切欠き(7)内に、可動の家具部分(17)を案内する金具(14)が挿入されている、壁(1)において、
前記切欠き(7)は、前記壁(1)の前記端面(1a)から前記壁(1)内に切削加工されており、前記金具(14)は、同じく前記壁(1)の前記端面(1a)から、切削加工された前記切欠き(7)内に挿入されており、
前記切欠き(7)は、盲孔状に形成されていて、前記壁(1)の前記端面(1a)における開口を除いて、全ての側で閉鎖されており、
前記切欠き(7)は、前記壁(1)の前記端面(1a)に対して垂直な図で見て、方形に成形されており、
方形の横断面は、前記切欠き(7)の奥行きの大部分を成す少なくとも80%にわたって続いていることが特定されている、
ことを特徴とする、壁(1)。
【請求項3】
家具キャビネット用の壁(1)であって、切欠き(7)を有し、前記切欠き(7)は、前記壁(1)の端面(1a)から前記壁(1)内に延在しており、前記切欠き(7)内に、可動の家具部分(17)を案内する金具(14)が挿入されている、壁(1)において、
前記切欠き(7)は、前記壁(1)の前記端面(1a)から前記壁(1)内に切削加工されており、前記金具(14)は、同じく前記壁(1)の前記端面(1a)から、切削加工された前記切欠き(7)内に挿入されており、
前記切欠き(7)は、盲孔状に形成されていて、前記壁(1)の前記端面(1a)における開口を除いて、全ての側で閉鎖されており、
前記壁(1)は、木材または木質材料から成っており、
前記壁(1)は、コーティングされたチップボードまたはMDFボードである、
ことを特徴とする、壁(1)。
【請求項4】
前記切欠き(7)が、前記壁(1)の平らな端面(1a)から前記壁(1)内に延在している、請求項
1から3までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項5】
前記可動の家具部分(17)が、家具フラップまたは家具ドアである、請求項
1から4までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項6】
前記壁(1)は、家具キャビネットの、取付け位置で鉛直な側壁または中間壁であり、前記金具(14)は、家具フラップ(17)を取り付けることができるフラップ金具であることを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項7】
前記フラップ金具は、調整アーム駆動装置を有し、前記調整アーム駆動装置は、少なくとも1つの可動の調整アーム(18)を駆動し、前記調整アーム(18)は、前記家具フラップ(17)に取付け可能であり、前記調整アーム(18)は、閉鎖位置において、前記切欠きの内部に位置していることを特徴とする、請求項
6記載の壁(1)。
【請求項8】
前記調整アーム駆動装置は、ばね蓄力器(16)を備えている、請求項
7記載の壁(1)。
【請求項9】
前記調整アーム(18)は、旋回可能である、請求項
7または8記載の壁(1)。
【請求項10】
前記調整アーム(18)は、閉鎖位置において、大部分で前記切欠きの内部に位置している、請求項
7から9までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項11】
前記調整アーム駆動装置は、平らな少なくとも1つの支持プレート(19)を有し、前記支持プレート(19)は、前記切欠き(7)の平らな内壁(7a,7b)に面接触していることを特徴とする、請求項
7から10までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項12】
前記金具(14)は、切削加工された前記切欠き(7)内に接着されているか、または保持手段を介して力接続的にかつ/または形状接続的に取り付けられていることを特徴とする、請求項1から
11までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項13】
前記保持手段は解離可能である、請求項
12記載の壁(1)。
【請求項14】
前記切欠き(7)は、互いに平行な側方の平らな2つの内壁(7a,7b)を有していることを特徴とする、請求項1から
13までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項15】
前記2つの内壁(7a,7b)は、前記壁(1)の外側の側面(1b)に対して平行に位置していて、前記壁(1)の前記端面(1a)に対して垂直に延びている、請求項
14記載の壁(1)。
【請求項16】
前記切欠き(7)の最大の奥行き(T)が、少なくとも150mmであることを特徴とする、請求項1から
15までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項17】
前記切欠き(7)の最大の奥行き(T)が200mmであることを特徴とする、請求項
16記載の壁(1)。
【請求項18】
前記切欠き(7)の最大の奥行き(T)が、少なくとも250mmであることを特徴とする、請求項
17記載の壁(1)。
【請求項19】
前記切欠き(7)の幅(B)が、10mm~16mmであることを特徴とする、請求項1から
18までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項20】
前記切欠き(7)の幅(B)が、12mmであることを特徴とする、請求項
19記載の壁(1)。
【請求項21】
前記切欠き(7)の高さ(H)が、80mm~160mmであることを特徴とする、請求項1から
20までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項22】
前記切欠き(7)の高さ(H)が、120mmであることを特徴とする、請求項
21記載の壁(1)。
【請求項23】
前記切欠き(7)の最大の奥行き(T)が、前記切欠き(7)の幅(B)よりも少なくとも15倍大きいことを特徴とする、請求項1から
22までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項24】
前記切欠き(7)の最大の奥行き(T)が、前記切欠き(7)の幅(B)よりも少なくとも20倍大きいことを特徴とする、請求項
23記載の壁(1)。
【請求項25】
前記切欠き(7)の最大の奥行き(T)が、前記切欠き(7)の高さ(H)よりも少なくとも1.5倍大きいことを特徴とする、請求項1から
24までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項26】
前記切欠き(7)の最大の奥行き(T)が、前記切欠き(7)の高さ(H)よりも少なくとも2倍大きいことを特徴とする、請求項
25記載の壁(1)。
【請求項27】
前記壁(1)の通常の壁厚さ(D)が、15mm~20mmであることを特徴とする、請求項1から
26までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項28】
前記壁(1)の通常の壁厚さ(D)が、16mmまたは19mmであることを特徴とする、請求項
27記載の壁(1)。
【請求項29】
前記切欠き(7)の両側における残存壁(1c)の壁厚さ(WS)が、それぞれ1.5mm~3mmであることを特徴とする、請求項1から
28までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項30】
前記切欠き(7)の両側における残存壁(1c)の壁厚さ(WS)が、それぞれ2mmであることを特徴とする、請求項
29記載の壁(1)。
【請求項31】
前記壁(1)は、ワンピースから成っていることを特徴とする、請求項1から
30までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項32】
請求項1から
31までのいずれか1項記載の壁(1)を製造するための方法において、
- チェーン穿孔盤(2)を前記壁(1)の端面(1a)から前記壁(1)内に運動させることによって、前記壁に切欠き(7)を形成するステップと、
- 家具部分を案内するために形成された金具(14)を、前記チェーン穿孔盤(2)によって形成された前記切欠き(7)内に挿入するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項33】
突出している切刃を備えたモータ駆動式のカッタチェーン(5)が巻き掛けられて案内されている単一のバー(4)を有するチェーン穿孔盤(2)を使用することを特徴とする、請求項
32記載の方法。
【請求項34】
少なくとも2つのバー(4,4’)を備えたチェーン穿孔盤(2)を使用することを特徴とする、請求項
32記載の方法。
【請求項35】
前記切欠き(7)の幅(B)に相当する切削幅を有するチェーン穿孔盤(2)を使用し、前記チェーン穿孔盤を、前記壁内への挿入時に、前記チェーン穿孔盤が前記壁に対して相対的なその側方位置を変化させないように線形に案内することを特徴とする、請求項
32から34までのいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
前記切欠き(7)の高さ(H)に相当する切削高さを有するチェーン穿孔盤(2)を使用し、前記チェーン穿孔盤(2)を、前記壁(1)内への挿入時に、前記チェーン穿孔盤(2)が前記壁に対して相対的なその高さ位置を変化させないように線形に案内することを特徴とする、請求項
32から35までのいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
前記チェーン穿孔盤(2)を、前記壁(1)内への挿入時にまたは挿入後に高さ方向で上下動させることを特徴とする、請求項
32から35までのいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
少なくとも1つの案内に沿って手動でかつ/またはモータによって可動であるチェーン穿孔盤を使用することを特徴とする、請求項
32から37までのいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
前記案内が、線形の案内である、請求項
38記載の方法。
【請求項40】
前記壁を、ストッパおよび/またはホルダによって正確に固定することができる支持体を備えるチェーン穿孔盤を使用することを特徴とする、請求項
32から39までのいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
前記ストッパおよび/またはホルダが調整可能である、請求項
40記載の方法。
【請求項42】
前記切欠き(7)内に挿入された前記金具(14)または前記金具(14)の突出部分に、家具部分を取り付けることを特徴とする、請求項
32から41までのいずれか1項記載の方法。
【請求項43】
前記金具(14)または前記金具(14)の突出部分が、フラップ金具の調整アーム(18)である、請求項
42記載の方法。
【請求項44】
前記家具部分は、家具フラップまたは家具ドアである、請求項
32から43までのいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
請求項1から
31までのいずれか1項記載の少なくとも1つの壁(1)を有する、家具または家具キャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具キャビネット用の壁であって、切欠きを有し、切欠きは、壁の、好ましくは平らな端面から壁内にまで延在しており、切欠き内に、可動の家具部分、特に家具フラップまたは家具ドアを案内する金具が挿入されている、壁に関する。
【0002】
さらに、本発明は、家具キャビネット用のこのような壁を製造するための方法に関する。
【0003】
家具キャビネットを閉鎖するフラップを運動させるために、既にフラップ金具(調整アーム駆動装置)の形態の家具金具が公知であり、このような家具金具は、家具キャビネットの内部において家具キャビネットの側壁の内側に取り付けられている。この調整アーム駆動装置は、一般的に、ばね荷重が加えられた蓄力器と、調整アームを操作する伝達機構とを有しており、調整アームの自由端部は家具フラップに結合されていて、家具フラップを、開放時に重力に抗して上方に向かって押圧し、これによって、使用者のための開放動作を容易にする。
【0004】
このような調整アーム駆動装置は、比較的大きな部材であり、ゆえに、家具キャビネットの内部の自由に使用することができる空間を制限してしまう。また、視覚的な印象も最適とはいえない。
【0005】
同様に、鉛直な軸を中心として旋回する家具金具、つまり、家具ドア用のヒンジも存在する。このようなヒンジは、一般的にヒンジアームとヒンジポットとを有しており、ヒンジポットは、家具ドアの切欠き内に挿入されている。この家具ヒンジもまた、たとえ比較的僅かではあっても、家具キャビネットの内部においてスペースを占める。
【0006】
したがって、フラップ用の調整アーム駆動装置やドア用のヒンジを家具キャビネットの壁の内部に組み込むという構成への移行がなされている。このような組み込まれたフラップ金具のための一例が、例えば独国特許出願公開第102017104169号明細書または独国特許出願公開第102017104170号明細書に見られる。ヒンジの分野では、国際公開第2016/174071号または国際公開第2020/006587号に記載された組み込まれたヒンジを挙げることができる。
【0007】
例えば既存のヒンジのヒンジポットのために、家具ドアに小さな丸い切削加工部を設けることが既に公知である。より小さなヒンジ部分用の他の切削加工部も既に公知である。しかしながら、特に家具フラップ用のフラップ金具(調整アーム駆動装置)の挿入のためには、内部に家具金具を収容することができる切欠きを形成するための切削加工は機能しないというのが、これまでの見解であった。したがって、独国特許出願公開第102017104169号明細書および独国特許出願公開第102017104170号明細書に記載された従来技術の解決手段も、他の解決手段、つまり、家具壁を複数部分から形成し、これらの複数部分から成るフレーム内に金具を組み込むという解決手段を提供している。しかしながら、このような解決手段は、例えばコーティングされたチップボードまたはMDFボードのような標準的な側壁を使用することができないので、高コストである。
【0008】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を回避して、より大きな金具、特にフラップ金具も、より大きな取付け深さを有するドアヒンジも収容することができ、しかも、壁用の標準的な材料を使用することもできる壁および壁を製造するための方法を提供することである。さらに、壁が、その外側でも内側でも視覚的に見栄えの良い均一な表面特性の点で優れていることが求められている。
【0009】
この課題は、各々の独立請求項の特徴を有する壁、壁を製造するための方法、ならびに家具キャビネットおよび家具によって解決される。
【0010】
有利な構成および改良形態は、従属請求項の対象である。
【0011】
本発明に係る壁は、端面から切削加工された切欠きが設けられており、その後、次いで、この切欠き内に金具が挿入される点で優れている。この切欠きを形成するためには、特にチェーン穿孔盤が提案され、このチェーン穿孔盤は、比較的深くて狭幅の切欠きを壁に形成することを可能にし、この切欠きの幅は、壁の厚さ(壁厚さ)にほぼ達するほどである。
【0012】
このようなチェーン穿孔盤(チェーン鑿盤とも呼ばれる)は自体公知である。このようなチェーン穿孔盤は、材料を切削加工(切削による加工)するための工作機械であり、チェーン穿孔盤は、少なくとも1つの縦長の平らなバーを有していて、このバーの周りで、循環するカッタチェーンが運動させられる。カッタチェーンは、原動機、一般的に電動モータによって駆動される。カッタチェーン自体は、切削加工を行う本来の工具要素、つまり、突出した歯または切刃を個々のチェーンリンクに有している。これらの工具要素は再研磨することもできる。
【0013】
チェーン穿孔盤は、従来では主に木製梁のほぞ継ぎ用の広幅のほぞ穴または錠前ケース(いわゆる差込み錠)の比較的深くないポケットを切削加工するために使用されていた。本発明によれば、このようなチェーン穿孔盤は、正確な切欠きを端面から家具キャビネット用の壁に切削加工するためにも適しており、比較的深くて狭幅の切欠きを形成することができ、このような切欠きは特に、家具フラップを駆動するためのフラップ金具を収容することもできるということが認識された。しかしながら、ドア用のより大きな金具を、このようなより大きな切欠き内に挿入することも可能である。
【0014】
以下に記載の図面の説明によって、発明のさらなる利点および詳細について詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】切欠きを側壁にチェーン穿孔盤を用いて形成する、本発明に係る方法の1つの実施例の1つのステップを概略的に示す図である。
【
図1b】
図1aに示した実施例の別のステップを概略的に示す図である。
【
図1c】
図1aに示した実施例のさらに別のステップを概略的に示す図である。
【
図2a】フラップ金具を収容する前の側壁を示す斜視図である。
【
図2b】切欠きの形状を見ることができる側壁内部の様子と共に、
図2aに示した側壁を示す斜視図である。
【
図3】端面から壁内に切欠きを形成するための代替的な製造方法を概略的に示す図である。
【
図4】特に壁を保持するためおよびチェーン穿孔盤を案内するための、機械による自動式の実施例を示す図である。
【
図5a】互いに上下に位置している2つのバーを備えた特別なチェーン穿孔盤の1つの実施例を示す図である。
【
図5b】
図5aに示したチェーン穿孔盤の、端面から壁内への進入時の様子を示す図である。
【
図6a】本発明に係る壁の2つの実施例および各々の壁内への挿入前の2つのフラップ金具のうちの一方のフラップ金具と共に家具キャビネットを示す図である。
【
図6b】両壁のうちの一方の壁内にフラップ金具を挿入する工程を示す図である。
【
図6c】挿入された両フラップ金具を備えた家具キャビネットを示す図である。
【
図6d】両フラップ金具とフラップ金具の調整アームに取り付けられた家具フラップとを備えた家具キャビネットを示す図である。
【0016】
図1a~
図1cには、家具キャビネット用の壁を製造するための1つの実施例の主要なステップが示してある。
【0017】
図1aで見える実質的に直方体の壁は、例えば木材または木質材料から成っていて、好ましくは、家具構造で典型的に使用されるコーティングされたチップボードまたはMDFボードである。
【0018】
壁1は、好ましくはワンピースから成っている。この一体性は、以下に記載の、チェーン穿孔盤を用いた切欠きの形成中にも維持される。したがって、従来技術とは異なり、本明細書では、壁を複数の部分から、例えば芯材と2つの側方のカバー面とから構成する必要がない。しかしながら、壁がワンピースから成っているという概念は、本発明による加工前の壁が、例えば、1つのプレート工場から供給される多層プレートであることを排除するものではない。重要なことは、切欠き7を形成するためにマルチピースが必要ないということである。むしろ、端面1a用のチェーン穿孔盤2の使用によって、一連の図である
図1a~
図1cが示すように、チェーン穿孔盤2を矢印方向6で端面1aを介してプレートに押し込むことによって、切欠き7がプレート内に切削加工される。
【0019】
チェーン穿孔盤2は、電動モータを備えた駆動装置ハウジングと、突出しているバー4とを有していて、バー4の周りには、循環するカッタチェーン5が巻き掛けられて案内されている。このカッタチェーンは、公知のように個々のリンクを有していて、これらのリンクは、有利には超硬合金から成る複数の切刃(ここでは図示せず)を有している。これらの切刃は、自体公知であり、本来の切削工具を形成している。
【0020】
プレート1からチェーン穿孔盤を一回引き戻した後では、
図1cが示すように、循環するカッタチェーン5を含めたバー4の形状に実質的に相当する切欠きが残っている。
【0021】
つまり、
図1a~
図1cに示した実施例では、チェーン穿孔盤はただ1つの方向(一軸)で線形に壁1内に運動させられ、そこから外に運動させられ、つまり、上側の側縁または下側の側縁に対して平行にかつ平らな両方の側面1bに対しても平行に運動させられる。
【0022】
図2aおよび
図2bには、
図1a~
図1cに比べて幾分大きな切欠きを有するプレートの幾分異なる実施例が示してあり、このような切欠きは、特にフラップ金具を収容するために適している。
【0023】
図2bには、本発明に係る壁の好適な実施形態の幾何学的な関係が示してある(なお挿入される金具は示されていない)。
【0024】
切欠き7は、互いに平行な側方の2つの平らな内壁7a,7bを有しており、これら2つの内壁7a,7bは、好ましくは壁の外側の側面1bに対して平行に位置していて、好ましくは壁の端面1aに対して垂直に延びている。これによって、切欠きの左右には、もはや極めて肉薄の残存壁1cしか残されていないが、しかしながら、この残存壁1cは、壁1の内側および外側の外観が、あたかも切欠き7が設けられていないかのように見せるのには十分である(
図2a参照)。逆に、この肉薄の残存壁は、切欠き7の比較的広幅の内室を可能にするので、より大きなフラップ金具も収容することができる。
【0025】
切欠き7は、好ましくは互いに平行な上側の平らな頂壁7cおよび下側の平らな底壁7dを有しており、頂壁7cおよび底壁7dは、同様に好ましくは壁1の端面1aに対して垂直に延びている。これによって、全体として、実質的に直方体の切欠き7が生じており、この切欠き7は、典型的にその外寸が同様に直方体の金具、特にフラップ金具を収容するために、良好に適している。
【0026】
切欠き7は、
図2aおよび
図2bに示した実施例では、つまり、壁1の端面1aに対して垂直な方向から見て、方形に成形されており、好ましくは、この方形の横断面が、切欠き7の奥行きの大部分を成す少なくとも80%にわたって続いていることが特定されている。
【0027】
背壁7eはまた、好ましくは、
図2dにおいてさらに見ることができるように、壁1の端面1aに対して平行にまたは幾分斜めに延びる平らな区分7eを有している。
【0028】
背壁の平らな区分7eと切欠き7の頂壁7cおよび/または底壁7dとの間にのみ、平らではなく、円弧状の区分7fが設けられており、この円弧状の区分7fは、壁面7c,7d,7eを互いに結合しているか、もしくはこれらの壁面は互いに移行し合っている。
【0029】
この丸み付け部は、典型的なチェーン穿孔盤の丸み付けられた前側領域によって形成され、可能な限り小さく保たれており、これによって、挿入される金具、特にフラップ金具用のスペース制限を可能な限り小さく保つことができる。
【0030】
つまり、全体的に、好ましくは、切欠き7は、盲孔状に形成されていて、例えば
図2aが示すように、壁1の端面1aにおける開口を除いて、両側で閉鎖されていることが特定されている。これによって、壁1の外観形態が、以下でさらに詳しく記載する金具の技術的なコンポーネントによって損なわれることがなくなる。壁は、実質的に、家具キャビネットもしくは家具の通常の壁のように見える。
【0031】
図2cおよび
図2dには、例として壁1の寸法設定と切欠き7の好適な寸法設定とが記載されており、これらの寸法設定は、後で切欠き7内にフラップ金具の形態の金具を挿入するために好適である。
【0032】
壁1は、まず(コーティングされた)チップボードまたはMDFボードであるか、または今日の家具構造で典型的な16mmのプレート厚(厚さ)Dを有する他の木質材料から成るプレートである。さらに、例えば19mmの厚さを有するプレートのような他の壁厚さのプレートも使用することができる。しかしながら、また、本発明は、極めて薄いプレート、つまり、16mmのプレート厚さDを有するプレートでも実現することができる。
【0033】
そのために上に記載しかつ以下にさらに記載するチェーン穿孔盤2を用いて、切欠き7が切削加工され、この切欠き7はもはや、1.5mm~3mm、好ましくは2mmである壁厚さWSを有する極めて僅かな残存壁1cだけしか残さない。このような残存壁厚さによって、1つには、切欠き7の大きな内幅を得ることができ、さらに、例えば残存壁1cおよび僅かな厚さの湾曲のような不都合な影響を回避することができる。
【0034】
以下にさらに詳しく記載するように、特に、家具フラップを上昇させるためのフラップ金具の形態の金具を切欠き7内に挿入するためには、
図2cおよび
図2dに示した下記の寸法設定が好適である。
【0035】
有利には、切欠き7の最大の奥行きTは、少なくとも150mm、好ましくは少なくとも200mm、特に好ましくは少なくとも250mmであることが特定されている。
【0036】
好ましくは、さらに、切欠き7の幅Bは、10mm~16mm、好ましくは約12mmであることが特定されている。
【0037】
さらに好ましくは、切欠き7の高さHは、80mm~160mm、好ましくは約120mmであることが特定されている。
【0038】
本発明の好適な実施形態によれば、切欠きは可能な限り狭幅であると共に深いことが特定されている。相対的な数字で表現すると、これは、切欠き7の最大の奥行きTが、切欠き7の幅Bよりも少なくとも15倍、好ましくは少なくとも20倍大きいということを意味している。
【0039】
好ましくは、さらに、切欠き7の最大の奥行きTは、切欠き7の高さHよりも少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍大きいことが特定されている。
【0040】
円弧状の区分7fの半径は、例えば26.5mmである。この半径は、既に述べたように、主としてチェーン穿孔盤2のバー4の前側形状によって決定されている。
【0041】
図3には、チェーン穿孔盤2を用いて壁1内に切欠き7を形成する方法ステップの別の変化形態が示してある。上に述べた実施例とは異なり、
図3に示したこの実施例では、カッタチェーン5を含めたバー4の高さは、最終的に得られる切欠き7の高さよりも小さい。このことは、チェーン穿孔盤2を単に線形に(一軸で)プレート1内に端面1aから進入・進出運動させるだけではなく、矢印方向8が示すように、プレート内部で鉛直方向にも運動させることによって達成される。
【0042】
ここで述べておくと、鉛直、高さ等の記載は、鉛直方向における壁1の方向付けに関連しており、壁は、フラップ金具を家具キャビネットまたは家具の側壁として使用する場合にも使用される。自明なことであるが、製造時にプレートは、製造技術的な理由から当然ながら他の位置もとることができ、したがって、鉛直、高さ等の位置記載は、相応に変化する。
【0043】
切欠きと、挿入された金具とを有する完成した壁の取付け位置も、図示の実施例に対して変化させることができる。例えば、鉛直な軸を中心として旋回可能なドアを案内する金具のための、壁の水平な取付け位置が可能である。
【0044】
図3に示したようなチェーン穿孔盤2の二次元的な運動以外に、
図5aおよび
図5bに示したように、2つのバー4,4’を備えたチェーン穿孔盤を使用することも可能である。このような場合でも、一回の線形の作業ステップで、大きな高さHを有する切欠き7を製作することができる。
【0045】
製造時には、(たとえこのような運動が原理的に可能であってとしても)チェーン穿孔盤2をバー4の方向に対して横方向に運動させないことが特に好ましい。切削幅(これはカッタチェーン5の幅もしくはカッタチェーン5に配置された切刃の幅)が切欠き7の幅Bに相当しているチェーン穿孔盤2を使用することが好適である。
【0046】
高さに関しては、有利には、切欠き7の高さHに相当する切削高さを有するチェーン穿孔盤2が使用され、このことは、例えば
図1a~
図1cに示した実施例ならびに
図5aおよび
図5bに示した実施例が該当する。つまり、このような実施例では、チェーン穿孔盤2を壁1内への挿入時に高さ方向で運動させる必要がない。しかしながら、原理的には、
図3に示したような運動も可能である。
【0047】
確かに、原理的には、チェーン穿孔盤2をプレートに対して相対的に手動で案内して切欠き7を形成することが考えられる。しかしながら、所望の側方の残存壁1cが僅かであり、奥行きTが大きいことに基づいて、
図4に示した実施例を用いて純粋に概略的に示したように、機械式の案内が好適である。このような機械式の案内では、1つには、支持体13が設けられていて、この支持体13に、概略的に示したストッパおよび/またはホルダ9が設けられており、これによって、プレート1を支持体13に対して相対的に位置固定に保持することができる。さらに、同じ支持体13には、チェーン穿孔盤2用のリニアガイド12も取り付けられている。このリニアガイド12は、双方向矢印10が示すように高さ調整することができる。チェーン穿孔盤2は、リニアガイド12に沿って双方向矢印11の方向で(一軸で)送ることができ、これによって、チェーン穿孔盤2は、端面1aを経てプレート1内に進入し、そこで切欠き7を切削加工する。もちろん、実際には、ストッパおよび/またはホルダ9ならびに調整・運動機構は、他の構成を有していてよく、特に電気的にコンピュータ制御されて駆動されていてもよい。
【0048】
本発明に係る方法は、単にチェーン穿孔盤2を用いた端面1aからの切欠き7の形成だけを含むのではなく、次いで行われる、この切欠き7内への金具14の挿入をも含む。
【0049】
この方法ステップは、
図6aおよび
図6bに示してある。両図に示した金具14は、家具部分(ここではつまり家具フラップ)を案内するために形成されたフラップ金具である。
図6aは、挿入前のフラップ金具を示し、
図6bは部分的に挿入されたフラップ金具を示している。
図6cは、次いで完全に挿入されたフラップ金具を示している。手前側の方形の枠15は、切欠き7の前面に面一に接触していて、方形に延びる周縁部を覆っている。さらに付言すると、
図6cには、図示の実施形態では1つの側壁だけが存在しているのではなく、実質的に同位置に形成された2つの側壁を有している家具全体もしくは家具キャビネットが存在している。第2の側壁6cには、鏡像的に逆に構成されたフラップ金具6が取り付けられてよい。
【0050】
フラップ金具14自体は、自体公知の形式でばねセット16を有していて、このばねセット16は蓄力器を形成しており、この蓄力器は、レバー機構、歯車または滑子案内制御カムを介して、少なくとも1つの調整アーム18を駆動し、この調整アーム18には、
図6dに示したようにフラップ17が取付け可能である。調整アーム駆動装置は、フラップ17の重力を実質的に相殺し、運動経路全体にわたってフラップのスムーズな開放が可能であるように設計されている。好ましくは、ばね力および伝達比は、フラップが如何なる位置でも停止するように設計されている。しかしながら、ばねセットがフラップを規定の旋回経路にわたってアクティブに駆動する、例えば完全に開放するまたは完全に閉鎖する区分も可能である。
【0051】
しかしながら、本実施例では、ほぼ調整アーム駆動装置全体が、そこで必然的に突出している調整アーム18自体を除いて、それ以外はまったく通常の外観を有する側壁1の内部に収容されている、つまり、予めチェーン穿孔盤によって相応に切削加工された切欠き7内に収容されている。調整アーム駆動装置またはフラップ金具14は壁内に組み込まれていて、これによって、キャビネットの内部にスペースを占めないので、外観以外に収容スペースに関する利点もある。
【0052】
本発明の対象は、壁を製造するための方法および壁自体だけではなく、
図6dを用いて純粋に例として示した、少なくとも1つのこのような壁を備えて形成された家具キャビネットまたは家具でもある。もちろん、他の家具を形成することも可能である。
【0053】
また、フラップ金具の代わりに、ドア金具を上に記載した形式で使用することも可能である。このような場合には、壁1は水平に位置していて、ドアは、実質的に鉛直な軸を中心にして旋回する。
【符号の説明】
【0054】
1 壁
1a 端面
1b 平らな側面
1c 残存壁
2 チェーン穿孔盤
3 駆動装置ハウジング
4 バー
4’ バー
5 カッタチェーン
6 矢印方向
7 切欠き
7a,7b 平らな内壁
7c,7d 平らな頂壁および底壁
7e 背壁の平らな区分
7f 円弧状の区分
8 鉛直方向
9 ストッパ/ホルダ
10 双方向矢印 高さ調整
11 双方向矢印 送り
12 リニアガイド
13 支持体
14 金具
15 枠
16 蓄力器
17 家具部分、フラップ
18 調整アーム
19 支持プレート
A プレート長さ
B プレート高さ
D プレート厚さ
R 半径
H 切欠きの高さ
T 切欠きの奥行き
WS 残存壁の壁厚さ