(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240816BHJP
C22C 38/38 20060101ALI20240816BHJP
C21D 8/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C22C38/00 301A
C22C38/38
C21D8/02 B
(21)【出願番号】P 2023519297
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 CN2021120417
(87)【国際公開番号】W WO2022063244
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】202011041281.7
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518456328
【氏名又は名称】首鋼集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHOUGANG GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.69 Yangzhuang Street, Shijingshan District Beijing 100041 (CN)
(73)【特許権者】
【識別番号】522304109
【氏名又は名称】北京首鋼股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING SHOUGANG CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 99, Shijingshan Road, Shijingshan District Beijing 100040, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】恵 亜軍
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲くん▼
(72)【発明者】
【氏名】朱 国森
(72)【発明者】
【氏名】呉 科敏
(72)【発明者】
【氏名】李 秋寒
(72)【発明者】
【氏名】韓 ▲ゆん▼
(72)【発明者】
【氏名】牛 涛
(72)【発明者】
【氏名】田 志紅
(72)【発明者】
【氏名】陳 斌
(72)【発明者】
【氏名】肖 宝亮
(72)【発明者】
【氏名】李 飛
(72)【発明者】
【氏名】王 松涛
(72)【発明者】
【氏名】周 娜
(72)【発明者】
【氏名】王 全礼
(72)【発明者】
【氏名】李 暁林
(72)【発明者】
【氏名】黄 天華
(72)【発明者】
【氏名】潘 輝
(72)【発明者】
【氏名】張 大偉
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-024116(JP,A)
【文献】特開2009-280870(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110106444(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103938092(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104962812(CN,A)
【文献】特開2004-218066(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179387(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0024683(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00
C22C 38/38
C21D 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼であって、
化学組成が質量分率で、C:0.17%~0.2
6%、Si:0.30%~0.50%、Mn:1.2%~1.
6%、P:≦0.02%、S:≦0.009%、Ti:≦0.1%、Cr:≦0.2%、残部Fe及び不可避的不純物であり、前記Si及びMnの質量分率が、0.23≦Si/Mn≦0.27を満たす700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼。
【請求項2】
700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼であって、
前記700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の化学成分が、質量分率で、C:0.17%~0.27%、Si:0.30%~0.50%、Mn:1.2%~1.8%、P:≦0.02%、S:≦0.009%、Ti:≦0.1%、Cr:≦0.2%、
を満たしNb≦0.05%、Mo≦0.20%、B≦0.002%の
何れか1種類以上を更に含有し、残部Feおよび不可避的不純物であり、
前記SiおよびMnの質量分率が0.23≦Si/Mn≦0.27を満たす700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼。
【請求項3】
前記Nb及び/又はMo
、及びB元素が含まれることを特徴とする請求項2に記載の700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼。
【請求項4】
前記700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の金属組織は、60%~70体積%且つ粒径5μm~10μmのフェライトと、30%~40体積%且つ粒径8μm~15μmのパーライトラメラであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の調製方法であって、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の化学成分を用いて溶製、連続鋳造して、スラブを得るステップと、
加熱温度1180℃~1220℃および加熱時間150min~200minで前記スラブを加熱し、粗圧延および仕上げ圧延して熱延板を得るステップと、
前記熱延板を冷却および巻取して、熱延コイルを得るステップと、
前記熱延コイルを加工処理して700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼を調製するステップと、を含んでいることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の調製方法。
【請求項6】
前記粗圧延の際、粗圧延終了温度を1000℃~1040℃とし、前記仕上げ圧延の際、仕上げ圧延終了温度を840℃~870℃とすることを特徴とする請求項
5に記載の700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の調製方法。
【請求項7】
前記粗圧延及び仕上げ圧延の際、圧延速度は、いずれも4m/s~6m/sであり、前記熱延板の厚さが7mm~18mmであることを特徴とする請求項
5に記載の700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の調製方法。
【請求項8】
巻取温度が560℃~620℃であることを特徴とする請求項
5に記載の700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の調製方法。
【請求項9】
前記加工処理は、巻き解き、平滑化及び剪断を含み、前記加工処理の際、700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の長さが10mである場合、対角線方向の不整度が5mm以下であることを特徴とする請求項
5に記載の700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願に対する相互参照>
本発明は、2020年9月28日に出願された中国特許出願202011041281.7、発明名称「700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼及びその調製方法」に基づき優先権を主張し、その内容全体をここに援用する。
【0002】
本発明は、鋼材調製技術の分野に関し、特に700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アクスルハウジングは、主に自動車の荷重を支持する構造として、その軽量化に関する検討が、中荷重、重荷重車両の全車軽量化に重要な意味を持つ。現在、わが国の自動車産業では、製造工程が複雑で、生産効率が低く、コストが高い鋳造アクスルハウジングを替えて、熱延アクスルハウジングブ鋼板を用いて熱間プレスと溶接を行うことにより、アクスルハウジングを調製するのは、広く採用されている。
【0004】
従来、自動車のアクスルハウジングは、板材を熱間プレスした代用品(610L、Q460)を用いて量産していたが、板材の熱間プレス成形後の強度が著しく低下し、板材の熱間プレス成形後の結晶粒が著しく粗大化し、板材の結晶粒微細化による強化がなくなり、自動車のアクスルハウジング完成品としての使用条件を満足できなくなるという問題があった。従って、市場の要求に向けて設計開発された専用の熱成形型アクスルハウジング鋼は、析出強化を主とするが(V(C、N))、アクスルハウジングの現地生産過程において、アクスルハウジング鋼板材の加熱工程(例えば、加熱温度と加熱保温時間)及び熱間型打ち後の冷却条件(例えば、空冷冷却速度)が大きく変動し、V(C、N)析出相の析出量、析出位置と析出サイズに大きなバラツキが生じ、熱間型打ち後のアクスルハウジング鋼の力学的特性を安定に制御できず、また、Vを含有するアクスルハウジング鋼スラブは、表面横割れが極めて発生し易く、板材辺部の組織異常をもたらす。
【0005】
従って、熱間プレス成形後のアクスルハウジング鋼の力学的特性を保証し、且つ熱処理後の材料に顕著なマイクロストリップテクスチャがなく、優れた衝撃靭性を備える700MPa級の熱間成形アクスルハウジング鋼を開発する方法は、至急に解決すべき技術的課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の目的は、化学組成を最適化するとともに、本願のプロセスを使用した700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼及びその調製方法を提供するものであり、700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼板材は、熱処理の前後でも、降伏強度≧600MPa、引張強度≧700MPa、破断伸びA50≧17%、0℃縦衝撃エネルギーAkv≧47を全て満たし、熱処理後の700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼板材は、顕著なマイクロストリップテクスチャを有さず、優れた衝撃靱性を備える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の態様は、化学組成が質量分率で、C:0.17%~0.27%、Si:0.30%~0.50%、Mn:1.2%~1.8%、P:≦0.02%、S:≦0.009%、Ti:≦0.1%、Cr:≦0.2%、残部Fe及び不可避的不純物であり、前記Si及びMnの質量分率が、0.23≦Si/Mn≦0.27を満たす、700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の化学組成は、質量分率で、C:0.17%~0.27%、Si:0.30%~0.50%、Mn:1.2%~1.8%、P:≦0.02%、S:≦0.009%、Ti:≦0.1%、Cr:≦0.2%、またはNb≦0.05%、Mo≦0.20%、B≦0.002%の少なくとも一方、残部Feおよび不可避的不純物であり、前記SiおよびMnの質量分率が0.23≦Si/Mn≦0.27を満たす。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の化学組成は、質量分率で、C:0.17%~0.26%、Si:0.30%~0.50%、Mn:1.2%~1.6%、P:≦0.02%、S:≦0.009%、Ti:≦0.1%、Cr:≦0.2%、残部Fe及び不可避的不純物であり、前記Si及びMnの質量分率は、0.23≦Si/Mn≦0.27を満たす。
【0010】
いくつかの実施形態において、700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の化学組成は、質量分率で、C:0.17%~0.26%、Si:0.30%~0.50%、Mn:1.2%~1.6%、P:≦0.02%、S:≦0.009%、Ti:≦0.1%、Cr:≦0.2%、またはNb≦0.03%、Mo≦0.20%、B≦0.0015%の少なくとも一方、残部Feおよび不可避的不純物であり、前記SiおよびMnの質量分率が0.23≦Si/Mn≦0.27を満たす。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記Nb及び/又はMoの含有量の少なくとも一部がB元素で置換される。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の金属組織は、60%~70体積%且つ粒径5μm~10μmのフェライトと、30%~40体積%且つ粒径8μm~15μmのパーライトラメラである。
【0013】
いくつかの実施形態において、熱成形プロセスの温度で、前記700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼に対して熱処理を行い、熱処理後のミクロ金属組織が、65~75体積%且つ粒径7~12μmのフェライトと、25~35体積%且つ粒径3~10μmの粒状セメンタイトとを含む粒状パーライトである。
【0014】
本願の第2の態様は、前記700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の調製方法を提供しており
前記700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の化学成分を用いて溶製、連続鋳造して、スラブを得るステップと、
加熱温度1180℃~1220℃および加熱時間150min~200minで前記スラブを加熱し、粗圧延および仕上げ圧延して熱延板を得るステップと、
前記熱延板を冷却および巻取りして、熱延コイルを得るステップと、
前記熱延コイルを加工処理して700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼を調製するステップと、を含んでいる。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記粗圧延の際、粗圧延終了温度を1000℃~1040℃とし、前記仕上げ圧延の際、仕上げ圧延終了温度を840℃~870℃とする。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記粗圧延及び仕上げ圧延の際、圧延速度は、いずれも4m/s~6m/sであり、前記熱延板の厚さが7mm~18mmである。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記巻取温度は560℃~620℃である。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記加工処理は、巻き解き、平滑化及び剪断を含み、前記加工処理の際、700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の長さが10mである場合、対角線方向の不整度が5mm以下である。
【発明の効果】
【0019】
本願の1つ又は複数の実施形態に係る700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼及びその調製方法によれば、(1)化学組成について、従来技術のV、Nの合金元素を替えて、Cr、Tiの合金元素を主成分とすることで、熱成形後の板材は、固溶強化を主として、Si及びMnの質量分率が0.23≦Si/Mn≦0.27に制御され、A3温度点に対するSi及びMnのデンドライト間隙での偏析の影響を互いに相殺することができ、デンドライトの幹と突起間の両領域のA3温度差が小さく、顕著なマイクロストリップテクスチャの形成を回避することができる。(2)調製方法について、スラブの加熱温度を1180℃~1220℃、加熱時間を150min~200minに設定することで、C元素の均質化を保証し、スラブ表層の脱炭を防止し、700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼板材は、熱処理前後の力学的特性がいずれも降伏強度≧600MPa、引張強度≧700MPa、破断伸びA50≧17%、0℃縦衝撃エネルギーAkv≧47を満足し、且つ熱処理後、顕著なマイクロストリップテクスチャを有さず、優れた衝撃靭性と疲労特性を備える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の実施例における技術的解決策をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明するが、以下の説明における図面は本発明の実施例の一部であり、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を獲得することができることは明らかである。
【
図1】本願の実施例4に提供される700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼板材の厚さの4分の1箇所の微細構造図である。
【
図2】本願の実施例4に提供される700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼板材の熱処理後の微細構造図であり、そのうち、(A)が辺縁部の組織であり、(B)が4分の1箇所の組織であり、(C)が中心部の組織である。
【
図3】本願の比較例2の板の厚さの4分の1箇所の微細構造の概略図である。
【
図4】本願の比較例2の熱処理後の微細構造図である。
【
図5】本願の比較例5の熱間プレスアクスルハウジング鋼の微細構造図である。
【
図6】本願の比較例6の熱間プレスアクスルハウジング鋼の熱処理後の微細構造図である。
【
図7】本願の1つまたは複数の実施形態に係る700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の調製方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態及び実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例及び実施例に限定されるものではない。これらの特定の実施形態および実施例は、本願を例示するためのものであり、本願を限定するものではないことを当業者は理解するであろう。
【0022】
本明細書全体を通して、特に明記しない限り、本明細書で使用される用語は、当該技術分野で通常使用される意味として理解されるべきである。したがって、特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本願が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾がある場合には、本明細書を優先する。
【0023】
本願で使用される各種原料、試薬、器具、装置等は、特記がない限り、市販品を入手してもよいし、既存の方法で入手してもよい。
【0024】
本願の1つまたは複数の実施形態の技術的形態は、以下の通りに、700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼を提供するものである。
【0025】
前記700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の化学成分は、質量分率で、C:0.17%~0.26%、Si:0.30%~0.50%、Mn:1.2%~1.6%、P:≦0.02%、S:≦0.009%、Ti:≦0.1%、Cr:≦0.2%、残部Fe及び不可避的不純物であり、前記Si及びMnの質量分率は、0.23≦Si/Mn≦0.27を満たす。
【0026】
本願は、構成元素を最適化することによって、前記化学組成の700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼を取得する原理は、以下のとおりである。
【0027】
C:0.17%~0.26%とする原因について、Cは炭素鋼の室温組織と機械的性質を決定する主要な元素であり、亜共析域では、C含有量が高くなることにつれて、引張強さが上昇するため、適度にC含有量を高めることで、パーライト組織の取得に役立つ。アクスルハウジング鋼の中周波誘導加熱の過程では、高いC含有量がオーステナイト組織の形成を加速させ、プレス成形後の空冷過程で、セメンタイトが未溶炭化物質点および固溶C元素の濃化域に析出し、靭性に優れた粒状パーライト組織が形成される。
【0028】
Si:0.30%~0.50%とする原因について、Si含有量の増加は、フェライト基地の強度を高め、フェライト組織の形成を促進する。
【0029】
Mn:1.2%~1.6%とする原因について、Mnを1.2%以上添加すると、基地強度が向上し、パーライトラメラの間隔が微細化するが、Mn含有量が多すぎると、溶接性に影響し、Mn元素が連続鋳造中に偏析して、熱延板材に顕著なマイクロストリップテクスチャが発生し、板材の衝撃特性が低下する。
【0030】
P:≦0.02%、S:≦0.009%とする原因について、PとSは連続鋳造時に極めて偏析し、材料の性質に悪影響を及ぼすため、鋼のPとSの含有量をできるだけ厳密に制御すべきである。
【0031】
Ti:≦0.1%とする原因について、適量のTi元素を添加することにより、オーステナイト粒がスラブ加熱炉で過度に成長するのを抑制し、Ti、S、CからなるTi4C2S2は、圧延方向に分布する棒状のMnSによる板材の横と縦方向の力学的特性の差を低減する。
【0032】
Cr:≦0.2%とする原因について、適量のCr元素の添加により固溶強化作用を発揮し、パーライト組織の形成を促進することができるため、Cr元素の含有量を≦0.2%に制御する。
【0033】
本願のいくつかの実施形態において、Si及びMnの質量分率が0.23≦Si/Mn≦0.27を満たす。Si、Mn、P及びS元素は全て偏析しやすい元素であるため、精錬中にP及びSを除去することができ、スラブの連続鋳造中に、柱状晶の間にSi及びMn元素が偏析するとともに、スラブが加熱炉に長時間保温されても、熱延製品である板材の元素の分布を均一化させることが極めて困難である。いくつかの実施形態において、Siはクローズドオーステナイト領域元素であり、オーステナイトがフェライトに転移するA3温度点を上昇することができ、Mn及びSiのA3温度点への寄与は正反対であり、デンドライトの樹状突起の間の領域での元素の偏析は、熱延後の板材の変態組織分布に影響を及ぼすことで、マイクロストリップテクスチャが生成する。このマイクロストリップテクスチャをできるだけなくすために、SiとMnの元素の偏析係数と原子量を総合的に考慮する必要があるため、本願は、SiとMnの元素の質量含有率が0.23≦Si%/Mn%≦0.27であるように設計される。スラブ凝固時の合金元素の偏析によって、避けられない初期のストリップテクスチャ(デンドライトの幹と突起の間隔がバンド状に分布したもの)が形成され、マイクロストリップテクスチャの生成がこの初期のストリップテクスチャに基づくものであり、マイクロストリップテクスチャの生成か否かが、固相変態の具体的な条件で決められる。0.23≦Si%/Mn%≦0.27の場合、SiとMnのデンドライト間隙での偏析によるA3温度点への影響が相殺され、デンドライトの幹と突起間の両領域のA3温度差が小さく、顕著なマイクロストリップテクスチャの形成を回避することができる。Si%/Mn%が0.23未満でも、0.27を越えても、マイクロストリップテクスチャを形成することは可能である。
【0034】
代替の実施形態として、前記700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の化学成分は、質量分率で、C:0.17%~0.26%、Si:0.30%~0.50%、Mn:1.2%~1.6%、P:≦0.02%、S:≦0.009%、Ti:≦0.1%、Cr:≦0.2%、またはNb≦0.03%、Mo≦0.20%、B≦0.0015%の少なくとも一方、残部Feおよび不可避的不純物であり、前記SiおよびMnの質量分率が0.23≦Si/Mn≦0.27を満たす。
【0035】
本願のいくつかの実施形態において、少量のNb元素を添加して、圧延、結晶粒微細化による強化を制御する役割を果たせるが、好ましいNb元素の含有量を0.03%以内とする。
【0036】
本願のいくつかの実施形態において、適量のMo元素を添加して、固溶強化作用を発揮することができ、且つMn、PおよびSの偏析の軽減に寄与する。
【0037】
本願のいくつかの実施形態において、適量のB元素を添加して、オーステナイト粒界に偏析した微量のB元素が過冷オーステナイト組織の安定性を著しく向上させ、かつMn、P、S元素の偏析を抑制することができる。厚いアクスルハウジング鋼では、製品ごとに空冷速度に差があり、板厚各箇所での冷速が異なっても、板厚方向に均一な組織が得られ、好ましいB元素の含有量が0.0015%以内に制御される。
【0038】
代替の実施形態として、前記Nb及び/又はMoの含有量の少なくとも一部がB元素で置換される。
【0039】
代替の実施形態として、前記700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の金属組織は、60%~70体積%フェライトおよび30%~40体積%パーライトラメラである。フェライトは、5μm~10μmの粒径を有し、パーライトラメラは、8μm~15μmのセメンタイト粒径を有する。結晶粒径を微細化することで、得られた熱延板材の強度レベルを700MPa級まで確保することが可能である。
【0040】
熱成形プロセスの温度スケジュールを参照して、700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼板材に対して熱処理を行い、熱処理後の微細金属組織は、65%~75体積%且つ粒径7~12μmのフェライトと、25%~35体積%且つ粒径3~10μmの粒状セメンタイトとを含む粒状パーライトである。熱処理後、フェライト組織に微細な粒状セメンタイトの粒子が分布され、700MPaのアクスルハウジング鋼の引張強度を保証した上で、製品の衝撃靭性も向上させる。これにより、700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の板材は、熱処理前後の機械的性質がいずれも、降伏強度≧600MPa、引張強度≧700MPa、破断伸びA50≧17%、0℃縦衝撃エネルギーAkv≧47を満足し、且つ熱処理後、顕著なマイクロストリップテクスチャがなく、優れた衝撃靭性を有する。
【0041】
本願の第2の態様において、
図5に示すように、700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼を調製する方法が提供され、
前記700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の化学成分を用いて溶製、連続鋳造して、スラブを得るステップS1と;
加熱温度1180℃~1220℃、加熱時間150min~200minで前記スラブを加熱し、粗圧延および仕上げ圧延して熱延板を得るステップS2と;
前記熱延板を冷却及び巻取して、熱延コイルを得るステップS3と;
前記熱圧コイルを加工処理して、700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼を得るステップS4と、を含んでいる。
【0042】
本願の1つまたは複数の実施形態に係る700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の調製方法は、以下の原理に基づく。
【0043】
C元素の均質化を保証するとともに、スラブ表層の脱炭を防止するように、スラブの加熱温度を1180℃~1220℃、加熱時間を150min~200minに設定する。加熱温度が1180℃未満、加熱時間が150min未満であれば、スラブ内部でのC元素の均一化が保証できず、析出相が再溶解できない一方、加熱温度が1220℃を超え、加熱時間が200min以上であれば、スラブの脱炭が著しくなり、オーステナイト組織が粗大化して熱延板材の特性に悪影響を及ぼす。
【0044】
前記のとおりに成分の配合を行い、且つSiとMnの質量分率を0.23≦Si/Mn≦0.27とし、前記した工程を施し、ミクロ金属組織がフェライトである熱延板材が得られる。熱成形工程の温度(加熱温度1180℃~1220℃、加熱時間150min~200m)で熱処理された700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼板材は、熱処理後のミクロ金属組織がフェライトと粒状パーライトであり、且つ熱処理前後の力学的特性がいずれも、降伏強度≧600MPa、引張強度≧700MPa、破断伸びA50≧17%、0℃縦衝撃エネルギーAkv≧47を満足する。700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼板材は、熱処理後に顕著なマイクロストリップテクスチャを有さず、優れた衝撃靭性を備える。
【0045】
他の実施形態として、前記粗圧延の際、粗圧延終了温度を1000℃~1040℃とし、前記仕上げ圧延の際、仕上げ圧延終了温度を840℃~870℃とする。
【0046】
粗圧延終了温度を1000℃~1040℃とし、仕上げ圧延終了温度を840℃~870℃とするのは、オーステナイト未再結晶域の温度域で低温仕上げ圧延を行い、且つオーステナイト-フェライト2相域での圧延を回避することで、オーステナイトに歪量を十分に蓄積させて、フェライトの核成長速度を高めるためである。
【0047】
他の実施形態として、粗圧延および仕上げ圧延の際に、圧延速度を4m/s~6m/sとし、前記熱延板の厚さが7mm~18mmである。定速仕上げ圧延の際、前記熱延板の厚み仕様の変化範囲が7mm~18mmに収まるように、厚み仕様に応じて圧延速度を4m/s~6m/sに調整する。
【0048】
代替の実施形態として、前記巻取温度を560℃~620℃とする。これにより、パーライトの温度転換区間でパーライト組織を取得することに寄与する。
【0049】
以上を踏まえ、本願に関わるC-Si-Mn-Cr-Ti成分系のアクスルハウジング鋼(市場にまだ見られない成分系)は、Cを主合金元素として、0.23≦Si%/Mn%≦0.27となるように制御される。本願のプロセスにより、微細金属組織がフェライト(60~71体積%、粒径5~10μm)とパーライトラメラ(29~40体積%、粒径8~15μm)である熱延板材が得られる。熱成形プロセスの温度範囲を参照して熱処理が行われた700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼板材の微細金属組織は、65%~75体積%且つ粒径4~12μmのフェライトと25%~35体積%且つ粒径3~10μmのセメンタイトからなる粒状パーライトである。700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼板材は、熱処理前後の力学的特性がいずれも、降伏強度≧600MPa、引張強度≧700MPa、破断伸びA50≧17%、0℃縦衝撃エネルギーAkv≧47を全て満たし、且つ熱処理後に顕著なマイクロストリップテクスチャを有さず、優れた衝撃靱性及び疲労寿命を備える。
【0050】
以下、実施例、比較例及び実験データを参照して、本発明の700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼及びその調製方法を詳細に説明する。
【0051】
S1
実施例1~8及び比較例1~3は、それぞれ表1に示す化学成分を用い、表1に示す合金成分配合比で、1630℃の温度で溶製、鍛造し、ビレットを取得する。
【0052】
S2
1180℃~1220℃の加熱温度で、実施例に係るスラブを加熱して、粗圧延および仕上げ圧延を経て、厚み仕様の変化範囲が7mm~10mmに制御される熱延板が得られる。5パスの粗圧延を経て、前記粗圧延終了温度が1000℃~1040℃に制御され、さらに7パスの仕上げ圧延を経て、前記仕上げ圧延終了温度が840℃~870℃に制御される。
【0053】
S3
前記熱延板を層流冷却した後、560℃~620℃の巻取温度で巻取して、熱延コイルが得られる。
【0054】
S4
前記熱延コイルを巻き解き、平押し、せん断して、700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼板材の完成品が得られる。700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼板材の完成品の長さが10mである場合、対角線方向に測定された不整度が5mm以下である。
【0055】
各実施例および比較例の具体的なプロセスパラメータが表2に示す。
【0056】
各グループの製品のサンプルに対して力学的特性試験を行った結果を表3に示す。ミクロ組織の各相のサイズおよび体積分率のデータは、板材の厚さの4分の1箇所で観察して測定される。
【0057】
熱成形プロセスの温度スケジュールを参考にし、実施例と比較例の板材に対して熱処理実験を行う。板材を810~830℃に誘導加熱し、180~240s保温して、コールドモールドに移して15s保持し、その後空冷して、3回の力学的特性の検測結果を表3に示す。ミクロ組織の各相のサイズおよび体積分率のデータは、板材の厚さの4分の1箇所で観察して測定される。
【0058】
表3のデータからわかるように、
比較例1において、Si/Mn>0.27%、熱処理後に顕著なマイクロストリップテクスチャを有する。
【0059】
比較例2において、Si/Mn<0.23%、熱処理後に顕著なマイクロストリップテクスチャを有する。
【0060】
比較例3において、加熱温度が1180℃未満であり、スラブ内部でのC元素の均一化が保証できず、析出相が再溶解しないため、強度レベルが700MPa未満となり、板材にマイクロストリップテクスチャが現れるという欠点がある。
【0061】
比較例4において、加熱温度が1220℃を超え、スラブの脱炭が著しくなり、オーステナイト組織が粗大化し、熱延板の特性に悪影響を及ぼすため、熱延組織の粒が粗大で、総合的な力学的特性が低いという欠点がある。
【0062】
比較例5において、中炭素-中マンガン-高Siの成分設計を採用し、Si/Mn比を0.44とし、段階冷却による低温巻取りにより、組織が5~10%フェライトと緻密な下部ベイナイトである800MPa級の熱間型打ちアクスルハウジング鋼を取得し、実際の降伏強度が856MPaに、引張強度が981MPaに達する。アクスルハウジングは、熱間型打ちの前に、せん断して仕込む必要があり、また、アクスルハウジングの厚さが通常10mm以上、さらに14mm、16mm、18mm等の厚さの規格もあり、その強度でせん断を行うことが困難である。一方、低温巻取を採用するため、平坦性が悪く、アクスルハウジングの寸法の精度に不利であり、また、Si/Mn比が0.44と高いため、顕著なマイクロストリップテクスチャが存在し、疲労特性に不利である。さらに、熱間プレスアクスルハウジングの溶接すべき部位が多く、溶接後の熱影響部で下部ベイナイトの軟化が著しくなり、アクスルハウジングの部位によっては硬度の差が大きく現れ、溶接の疲労特性に影響を与える。本願に係わるアクスルハウジングの熱間型打ち後の降伏強度が500MPaに過ぎない。
【0063】
比較例6において、C-Mn-Nb-V-Ti-Moという微量合金化の複合成分系を用いて、析出強化によりアクスルハウジングの熱間型打ち前後の力学的特性を向上させ、ホットプレス後で600MPaに達せるが、以下の欠点が存在する。合金添加量が多いため、コストが高騰し、そして、V元素の添加により、析出温度が連続鋳造の曲げ矯正域にあたり、連続鋳造スラブの表面割れが生じやすくなり、後続の熱延または熱間型打ちの際に、アクスルハウジングに表面荒れの欠陥が発生し、疲労特性に影響を与える。また、加熱温度が高いため、表面脱炭が発生しやすくなり、表層組織が粗大で、材料の疲労特性に影響を与え、さらには、Si/Mn比が0.055に過ぎず、厳重なマイクロストリップテクスチャが存在し、疲労特性に影響を与える。
【0064】
比較例7において、C-Mn-Vの微量合金化の成分系を用いて、低温出炉、低温圧延、低温巻取のプロセスにより、総合性能に優れた熱間型打ちアクスルハウジング鋼が得られ、本願と比べて、熱間型打ち後の降伏強度が600MPa未満であり、組織に顕著なストリップテクスチャが存在し、そして、炭素の添加量が高いため、溶接性に不利であるという欠点がある。
【0065】
本願の実施例1~8によって最終的に調製された700MPa級の熱成形アクスルハウジングス鋼は、熱処理前後の力学的特性がいずれも、降伏強度≧600MPa、引張強度≧700MPa、破断伸びA50%≧17%、0℃縦衝撃エネルギーAkv≧47を満足し、且つ熱処理後に顕著なマイクロストリップテクスチャを有さず、優れた衝撃靭性及び疲労寿命を有する。
【0066】
本願の実施例8は、C-Si-MnにCr、Mo、Nb、Ti、Bなどの元素を複合添加して、Si/Mn比、熱延工程のパラメータ、ミクロ組織含有量およびサイズを厳しく制御することによって、より優れた機械的特性および疲労特性が得られる最適な実施例であり、以下の利点がある。(1)Nb-Ti-Moなどの元素を複合添加するため、低い出炉温度を採用し、且つ仕上げ圧延領域の温度降下を低減し圧延速度を向上させることで、Ti元素析出物の高温ピニング作用により、均一且つ微細なオーステナイト組織が得られる。圧延速度の向上およびCr、Mo、Bなどの焼入れ性向上の元素の添加により、オーステナイトのフェライトへの変態速度を向上させ、フェライトの均一且つ微細化をさらに促進し、パーライトの球状体のサイズを低減することができ、また、巻取温度を高く制御することにより、低温変態組織の生成を回避することができる。これにより、優れた熱延鋼帯の取得に寄与し、板材の良好な平坦度を確保でき、後続のアクスルハウジング調製時の切断素材およびその品質保証に有利である。(2)アクスルハウジングの熱間型打ち工程において、アクスルハウジングの熱延鋼帯をオーステナイト域に加熱して保持する必要があり、また、Nb、Tiの微量合金化元素の共存により、TiNbCNの複合析出物が、加熱工程におけるオーステナイト粒の再結晶及び粗大化を阻害することができ、最終的な均一且つ微細なフェライト組織を得る前提条件となる。熱間型打ちの過程で、歪みの発生により、TiNbCN、TiNbCなどの第二相の析出が促進され、圧潰オーステナイトの復原が阻止され、最終的に均一且つ微細なフェライトの取得をさらに保証することができる。そして、アクスルハウジングがプレス終了後で室温まで空冷されるのは一般的であり、冷却速度が遅いため、粗大なフェライトとパーライト組織が形成され、また、顕著なパーライトのストリップテクスチャが形成され、アクスルハウジングの衝撃靭性と疲労特性を損害する。本発明では、Cr、Mo、Bなどの元素を添加して、供試鋼の焼入れ性を向上させることにより、空冷のような遅い冷却速度で、均一且つ微細なフェライトとパーライトが得られ、その上でSi/Mn比を厳しく制御することにより、ストリップテクスチャの発生を回避し、アクスルハウジングの熱間型打ち後の高い強度と塑性整合を保障するとともに、優れた低温衝撃靭性と疲労寿命を有し、アクスルハウジングの使用寿命の向上に重要な意義を有する。
【0067】
図1~6の説明
図1は、本発明の実施例4の板厚の4分の1箇所のミクロ組織であり、板材のミクロ組織が、フェライト(63体積%、結晶粒の平均サイズ7μm)およびパーライトラメラ(37体積%、結晶粒のサイズ12μm)である。
【0068】
図2は、実施例4の熱処理後のミクロ組織であり、板厚方向における辺部、4分の1箇所及び中心部の組織がいずれも粒状パーライトである。フェライトの体積分率が68%~73%で、粒径が7μm~10μmであり、粒状セメンタイトの体積分率が27%~32%で、粒径が3μm~8μmである。
【0069】
図3は本願の比較例2の板厚方向における4分の1箇所のミクロ組織の概略図である。板材のミクロ組織は、フェライト(70体積%、結晶粒の平均サイズ11μm)およびパーライトラメラ組織(30体積%、結晶粒の平均サイズ6μm)である。
【0070】
図4は、比較例2の熱処理後のミクロ組織を示す図であり、板厚方向における辺部、4分の1箇所および中央部の組織がフェライト(70~85体積%、粒径7~13μm)およびパーライトラメラ(15~30体積%、粒径6~12μm)であり、顕著なマイクロストリップテクスチャが現れている。
【0071】
図5は本発明の比較例5の熱間型打ちアクスルハウジング鋼のミクロ組織であり、組織が少量のフェライトおよび下部ベイナイトであり、ストリップテクスチャが顕著である。
【0072】
図6は、本発明の比較例6のアクスルハウジング鋼の熱間型打ち後のミクロ組織を示す図であり、組織が粒径約6.3μmのフェライトおよびパーライトであり、顕著なストリップテクスチャが存在する。
【0073】
図1~
図6から、本願の1つ又は複数の実施形態に係る700MPa級の熱成形アクスルハウジング鋼の熱処理後の板厚方向全体にわたる組織が、より均一であり、顕著なマイクロストリップテクスチャがなく、より優れた衝撃靭性及び疲労特性を備えることが分かる。
【0074】
最後に、用語「備える」、「含む」、またはそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含をカバーするように意図され、したがって、一連の要素を含むプロセス、方法、品目、または装置は、それらの要素だけでなく、明示的に列挙されていない他の要素も含み、またはそのようなプロセス、方法、品目、もしくは装置に固有の要素も含むことがさらに理解されるべきである。
【0075】
本願の好ましい実施形態を説明してきたが、当業者は、基本的な創造的概念を知った時点で、さらなる変更および修正をこれらの実施形態に加えることができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、好ましい実施形態、ならびに本願の範囲内に入るすべての変更および修正を含むものとして解釈されることが意図される。
【0076】
本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更及び変形を当業者が行うことができることは明らかである。したがって、本発明のこのような変形及び変更は、本発明の請求項及びその均等技術の範囲内であれば、本発明に含まれるものと解釈されるべきである。