(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】可変容量型斜板式圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 27/12 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
F04B27/12 Q
(21)【出願番号】P 2023521412
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 KR2021013340
(87)【国際公開番号】W WO2022080714
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134456
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516011246
【氏名又は名称】ハンオン システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン, セ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, クァン ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム, オク ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ドン ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ホン, キ サン
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2007-0064954(KR,A)
【文献】特開2017-145827(JP,A)
【文献】特開2008-082256(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2002-0092674(KR,A)
【文献】米国特許第06523455(US,B1)
【文献】特開平10-227281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方ハウジング及び後方ハウジング、前記前方ハウジングと後方ハウジングとの間に結合されるシリンダーブロック、前記前方ハウジングと前記シリンダーブロックに回転可能に設置される駆動軸、前記駆動軸に結合されて駆動軸と共に回転するローター、前記ローターにスライディング可能に結合されて傾斜角が変わることができるように前記駆動軸上に設置される斜板、前記駆動軸と前記前方ハウジングとの間に設置されて、その間を密封するシーリング部材、前記前方ハウジングの内側壁面に形成されてオイルが流動する複数個の流動溝、前記前方ハウジングの内側壁面に形成されて前記複数個の流動溝を連結する連結溝、前記連結溝と前記シーリング部材が設置されるシール(seal)領域を連結して前記シール領域にオイルを供給するための少なくとも1つ以上のオイル供給ホール、及び前記前方ハウジングの内側壁面上に位置して、前記連結溝を覆って前記オイル供給ホールと連通するオイルチャンバー(oil chamber)を形成するレース(race)を含
み、
前記レースは前記オイル供給ホールの少なくとも一部を覆うことを特徴とする可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項2】
前記レースは前記流動溝の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項3】
前記少なくとも1つ以上のオイル供給ホールは前記連結溝内に形成されることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項4】
前記複数個の流動溝は前記前方ハウジングの内側壁面に放射状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項5】
前記複数個の流動溝は前記前方ハウジングの上側部に形成されることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項6】
前記連結溝は前記前方ハウジングの内側壁面に前記駆動軸が挿入される挿入孔を中心に円周方向に形成されることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項7】
前方ハウジング及び後方ハウジング、前記前方ハウジングと後方ハウジングとの間に結合されるシリンダーブロック、前記前方ハウジングと前記シリンダーブロックに回転可能に設置される駆動軸、前記駆動軸に結合されて駆動軸と共に回転するローター、前記ローターにスライディング可能に結合されて傾斜角が変わることができるように前記駆動軸上に設置される斜板、前記駆動軸と前記前方ハウジングとの間に設置されて、その間を密封するシーリング部材、前記前方ハウジングの内側壁面に形成されてオイルが流動する複数個の流動溝、前記前方ハウジングの内側壁面に形成されて前記複数個の流動溝を連結する連結溝、前記連結溝と前記シーリング部材が設置されるシール(seal)領域を連結して前記シール領域にオイルを供給するための少なくとも1つ以上のオイル供給ホール、及び前記前方ハウジングの内側壁面上に位置して、前記連結溝を覆って前記オイル供給ホールと連通するオイルチャンバー(oil chamber)を形成するレース(race)を含み、前記連結溝
は、両端が境界部によりオイル流動がふさがるように形成されることを特徴とす
る可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項8】
前記連結溝の幅は前記オイル供給ホールの直径より大きいか同じに形成されることを特徴とする
請求項3に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項9】
前記オイル供給ホールの個数は前記流動溝の個数より少なく形成されることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項10】
前記少なくとも1つ以上のオイル供給ホールは前記連結溝の両端と前記シール領域を連結することを特徴とする
請求項7に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項11】
前記少なくとも1つ以上のオイル供給ホールは、前記前方ハウジングの内側壁面から
前記駆動軸の一部を囲むように前記駆動軸の軸方向に突出したボス部より半径方向外側に形成されることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項12】
前記前方ハウジングの内側壁面に形成されてオイルを循環させるための循環溝をさらに含み、前記循環溝は前記境界部を基準に前記連結溝の反対側に配置されることを特徴とする
請求項7に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項13】
前記循環溝は前記前方ハウジングの内側壁面に前記駆動軸が挿入される挿入孔を中心に円周方向に形成されることを特徴とする
請求項12に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項14】
前記循環溝から放射状に延びる延長溝をさらに含むことを特徴とする
請求項13に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項15】
前記シール領域には前記駆動軸を回転可能に支持するラジアルベアリングがさらに設置されることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項16】
前記流動溝の半径方向外側で前記流動溝に連結されて、前記流動溝に向かって狭くなる幅を有するオイル捕集部をさらに含むことを特徴とする
請求項4に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変容量型斜板式圧縮機に係り、より詳しくは、クランク室内の冷媒に含まれるオイルを前方ハウジングの駆動軸シール(seal)領域に円滑に供給することによって、駆動軸とシーリング部材との間の摩擦熱の温度を下げることができ、冷媒及び圧力の漏洩を防止して耐久性を向上させることができる可変容量型斜板式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置を構成する圧縮機は動力源からの動力を電子クラッチの断続作用によって選択的に伝達を受けて蒸発器から冷媒ガスを内部に吸入してピストンの直線往復運動によって圧縮した後、凝縮機側に吐出する装置である。このような圧縮機は圧縮方式及び構造によって多様な種類に分かれ、これら圧縮機の中には圧縮容積を変化できる可変容量型圧縮機も多く使われている。
【0003】
以下、
図1及び
図2を参照して従来一般的な可変容量型斜板式圧縮機を例に挙げて説明する。
【0004】
可変容量型斜板式圧縮機は、内部に同心円に沿って軸方向に多数のシリンダーボア(11)が形成されるシリンダーブロック(10)と、前記シリンダーブロック(10)の前方側に装着されて内部にクランク室(21)を形成する前方ハウジング(20)と、前記シリンダーブロック(10)の後方側に装着されて内部に吸入室(31)及び吐出室(32)を有する後方ハウジング(30)と、前記シリンダーブロック(10)の各シリンダーボア(11)に往復運動可能に挿入されて後段部にブリッジ(41)が形成される多数のピストン(40)と、一端部が前記前方ハウジング(20)を回転可能に貫通して後段部は前記シリンダーブロック(10)の中央に挿入されて回転可能に設置される駆動軸(50)と、前記クランク室(21)の内部で前記駆動軸(50)に結合されて駆動軸(50)と共に回転するローター(60)と、前記駆動軸(50)の周りにスリーブ(65)をスライディング可能に結合して設置されて端が前記ピストン(40)ブリッジ(41)の挿入空間にシュー(45)を介在して回転可能に結合されると共に前記ローター(60)のヒンジアーム(61)に流動可能に連結されてローター(60)と共に回転しながら駆動軸(50)に対して傾斜調節可能に設置される斜板(70)と、前記シリンダーブロック(10)と後方ハウジング(30)の間に設置されて吸入行程時に吸入室(31)からシリンダーボア(11)内に冷媒を吸入して圧縮行程時にシリンダーボア(11)から吐出室(32)に圧縮冷媒を排出するためのバルブユニット(80)を含んでなる。
【0005】
ローター(60)のヒンジアーム(61)にはスロット(62)が形成されて、ローター(60)のヒンジアーム(61)と向き合う斜板(70)のハブ(71)にはヒンジアーム(61)の両側に突出してヒンジアーム(61)のスロット(62)に流動可能に結合されるようにヒンジピン(74)を有する連結ヒンジアーム(73)が形成される。それと共に、ローター(60)は前方ハウジング(20)の内側壁面に設置されるスラストベアリング(22)によって回転可能に支持される。
【0006】
この時、駆動軸(50)に対する斜板(70)の傾斜角は後方ハウジング(30)に設置されるコントロールバルブ(90)によるクランク室(21)内の圧力変化によって調節される。
【0007】
前述のように、可変容量型斜板式圧縮機は、斜板(70)の回転によってシリンダーブロック(10)の同心円に沿って配置される多数のピストン(40)が順次前後往復運動をするようになり、それにより冷媒の吸入、圧縮及び吐出が行われるようになる。それと共に、前記クランク室(21)内の圧力とシリンダーボア(11)内の吸入圧との差圧に対応して前記斜板(70)の傾斜角が調節されることで圧縮機の吐出容量が可変される。
【0008】
一方、前方ハウジング(20)には前方ハウジング(20)と駆動軸(50)の間を密封して冷媒及び圧力の漏洩を防止できるように駆動軸シール(seal)領域(25)が備えられるが、駆動軸シール領域(25)には前方ハウジング(20)と駆動軸(50)の間を密封するシーリング部材(26)が設置されると共にその一側には駆動軸(50)を回転可能に支持するラジアルベアリング(27)が設置される。
【0009】
この時、駆動軸(50)の回転時駆動軸(50)とシーリング部材(26)の摩擦による摩擦熱の温度上昇によって長時間使用時にシーリング部材(26)の摩耗が発生して冷媒及び圧力の漏洩が発生するようになる。
【0010】
従って、従来はクランク室(21)内の冷媒に含まれるオイルを駆動軸シール領域(25)に供給して摩擦熱の温度を下げて、油膜を形成して漏洩を防止した。すなわち、
図2のように前方ハウジング(20)にオイル供給路(28)が形成されて、このオイル供給路(28)を通じて駆動部(ローター、斜板、駆動軸)の回転時に前方ハウジング(20)の内側壁面にぶつかったオイルを駆動軸シール領域(25)まで供給している。
【0011】
しかし、オイル供給路(28)はハウジング(20)の内側壁面とローター(60)の間に介在されるスラストベアリング(22)によってほぼ閉鎖されるため、オイル供給が円滑に行われず駆動軸(50)とシーリング部材(26)の摩擦力に対する潤滑作用をするのに多くの問題がある。
【0012】
このように、オイル供給が円滑に行われず、前述のように摩擦熱の温度が上昇してシーリング部材(26)の摩耗が発生し、それにより冷媒及び圧力の漏洩が発生して圧縮機が機能しなくなるなど耐久性にも多くの問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、クランク室内の冷媒に含まれるオイルを前方ハウジングの駆動軸シール(seal)領域に円滑に供給することによって、駆動軸とシーリング部材との間の摩擦熱の温度を下げることができ、冷媒及び圧力の漏洩を防止して耐久性を向上させることができる可変容量型斜板式圧縮機を提供することにその目的がある。
【0014】
本発明が実現しようとする技術的課題は前述した技術的課題に制限されず、記載しないその他の技術的課題は下記から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため本発明の可変容量型斜板式圧縮機は、前方ハウジング及び後方ハウジング、と、前記前方ハウジングと後方ハウジングとの間に結合されるシリンダーブロック、と、前記前方ハウジングと前記シリンダーブロックに回転可能に設置される駆動軸と、前記駆動軸に結合されて駆動軸と共に回転するローターと、前記ローターにスライディング可能に結合されて傾斜角が変わることができるように前記駆動軸上に設置される斜板と、前記駆動軸と前記前方ハウジングとの間に設置されてその間を密封するシーリング部材と、前記前方ハウジングの内側壁面に形成されてオイルが流動される複数個の流動溝と、前記前方ハウジングの内側壁面に形成されて前記複数個の流動溝を連結する連結溝と、前記連結溝と前記シーリング部材が設置されるシール(seal)領域を連結して前記シール領域にオイルを供給するための少なくとも1つ以上のオイル供給ホール及び前記前方ハウジングの内側壁面上に位置して、前記連結溝を覆って前記オイル供給ホールと連通されるオイルチャンバー(oil chamber)を形成するレース(race)を含むことを特徴とする。
【0016】
このように、前記連結溝をレースで覆ってオイル供給ホールと連通されるオイルチャンバー(oil chamber)を形成することによって、溝を通じて流動したオイルが他の所に流れずオイル供給ホールに円滑に供給されることができる。
【0017】
前記レースは前記流動溝の少なくとも一部を追加的に覆うことができる。
【0018】
前記レースは前記オイル供給ホールの少なくとも一部を追加的に覆うことができる。
【0019】
前記少なくとも1つ以上のオイル供給ホールは前記連結溝内に形成されることができる。
【0020】
前記複数個の流動溝は前記前方ハウジングの内側壁面に放射状に形成されることができる。
【0021】
前記複数個の流動溝は前記前方ハウジングの上側部に形成されることができる。
【0022】
前記連結溝は前記前方ハウジングの内側壁面に前記駆動軸が挿入される挿入孔を中心に円周方向に形成されることができる。
【0023】
前記連結溝は前記前方ハウジングの上側部に形成されるが、両端が境界部によりオイル流動がふさがるように形成されることができる。
【0024】
前記連結溝の幅は前記オイル供給ホールの直径より大きいか同じに形成されることができる。
【0025】
前記オイル供給ホールの個数は前記流動溝の個数より少なく形成されることができる。
【0026】
前記少なくとも1つ以上のオイル供給ホールは前記連結溝の両端と前記シール領域を連結できる。
【0027】
このように、境界部によりオイル流動がふさがっている連結溝の両端にオイル供給ホールが連結されることによって、溝を通じて流動したオイルがオイルチャンバーに満たされた後にオイル供給ホールに供給されることではなく、直ぐ供給されることができる。
【0028】
前記少なくとも1つ以上のオイル供給ホールは前記前方ハウジングの内側壁面から突出したボス部より半径方向外側に形成されることができる。
【0029】
前記前方ハウジングの内側壁面に形成されてオイルを循環させるための循環溝;をさらに含み、前記循環溝は前記境界部を基準に前記連結溝の反対側に配置されることができる。
【0030】
前記循環溝は前記前方ハウジングの内側壁面に前記駆動軸が挿入される挿入孔を中心に円周方向に形成されることができる。
【0031】
前記循環溝から放射状に延びる延長溝をさらに含むことができる。
【0032】
このように、循環溝と延長溝が形成されることによってレースにオイルを供給すると同時にオイルをまたクランク室に排出させて循環を可能にする。
【0033】
前記シール領域には前記駆動軸を回転可能に支持するラジアルベアリングがさらに設置されることができる。
【0034】
前記流動溝の半径方向外側で前記流動溝に連結されて、前記流動溝に向かって狭くなる幅を有するオイル捕集部をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、流動溝、連結溝及びオイル供給ホールをレースで覆ってオイルチャンバー(oil chamber)を形成することによって、溝を通じて流動したオイルが他の所に流れず供給ホールに円滑に供給されることができる。
【0036】
また、境界部によりオイル流動がふさがった連結溝の両端にオイル供給ホールが連結されるによって、溝を通じて流動したオイルがオイルチャンバーに満たされた後にオイル供給ホールに供給されることではなく、直ぐ供給されることができる。
【0037】
結果的に、多い量のオイルが前方ハウジングの駆動軸シール(seal)領域に円滑に供給されることができるので、駆動軸とシーリング部材との間の摩擦熱の温度を下げることができ、冷媒及び圧力の漏洩を防止して耐久性を向上させることができる。
【0038】
また、オイルを循環させるための循環溝と延長溝が形成されることによって、レースにオイルを供給すると同時にオイルをまたクランク室に排出させて循環が可能である。
【0039】
また、オイル供給ホールの個数が流動溝の個数より少なく形成されるによって、別途のドリルリング加工が必要なオイル供給ホールをより少なく形成して加工時間と費用を削減できるという効果を奏する。
【0040】
本発明の効果は前述した効果に限定されず、本発明の詳細な説明または特許請求範囲上に記載される発明の構成から推論可能な全ての効果を含むと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】従来の可変容量型斜板式圧縮機を図示する断面図である。
【
図2】
図1において前方ハウジングを斜線方向に切開した状態を図示する斜視図である。
【
図3】本発明の一実施例による可変容量型斜板式圧縮機で前方ハウジングを垂直に切開した状態を図示する斜視図である。
【
図4】
図3において前方ハウジング及びその内部に配置される部品を分離して図示する斜視図である。
【
図5】
図4の結合状態で前方ハウジング及びレースを一定角度で切開した状態を図示する斜視図である。
【
図8】本発明の他の実施例による可変容量型斜板式圧縮機から前方ハウジングを分離して図示する背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の可変容量型斜板式圧縮機について添付図面を参照して説明する。
【0043】
また、後述される用語は本発明での機能を考慮して定義された用語として、これは使用者、運用者の意図または慣例によって変わることができ、下の実施例は本発明の権利範囲を限定せず、本発明の請求範囲に提示される構成要素の例示的な事項にすぎない。
【0044】
本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通じて同一または類似の構成要素に対しては同じ参照符合を付けている。明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは特別に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外することではなく、他の構成要素をさらに備えることができるという意味である。
【0045】
まず、
図3及び4を参照して本発明の可変容量型斜板式圧縮機について説明する。それと共に、従来と同じ部分に対しては同じ図面符合を付けて説明する。
【0046】
本発明の可変容量型斜板式圧縮機は、同心円上に軸方向に多数のシリンダーボア(11)が形成されるシリンダーブロック(10)が備えられ、前記シリンダーブロック(10)の前方側には内部にクランク室(21)を形成する前方ハウジング(20)が装着されて、前記シリンダーブロック(10)の後方側には内部に吸入室(31)及び吐出室(32)を形成する後方ハウジング(30)が装着される。
【0047】
前記シリンダーブロック(10)の各シリンダーボア(11)には後段部にブリッジ(41)が形成される多数のピストン(40)が往復運動可能に挿入設置される。
【0048】
そして、一端部が前方ハウジング(20)を回転可能に貫通して後段部が前記シリンダーブロック(10)の中央に挿入されて回転可能に支持される駆動軸(50)が設置される。ここで、駆動軸(50)はラジアルベアリング(27)により回転可能に支持される。
【0049】
また、クランク室(21)の内部で駆動軸(50)に結合されて駆動軸(50)と共に回転するローター(60)が設置される。ここで、ローター(60)はハウジング(20)の内側壁面に設置されるスラストベアリング部材(100)により回転可能に支持される。
図4に図示したように、スラストベアリング部材(100)は一対のレース(120a、120b)とその間に配置されるスラストベアリング(140)からなる。スラストベアリング(140)は多数個のローラが放射形に配置されるニードルローラーベアリングかるなることができる。
【0050】
そして、クランク室(21)の内部で駆動軸(50)上にスライディング可能に結合されたスリーブ(65)に回動可能に設置されると共に、端はピストン(40)ブリッジ(41)の挿入空間にシュー(45)を介在して回転可能に結合されて、ローター(60)のヒンジアーム(61)に流動可能に連結されてローター(60)と共に回転しながら駆動軸(50)に対して傾斜角が調節される斜板(70)が装着される。
【0051】
ローター(60)のヒンジアーム(61)にはスロット(62)が形成されて、ローター(60)のヒンジアーム(61)と向き合う斜板(70)のハブ(71)にはヒンジアーム(61)の両側に突出して、ヒンジアーム(61)のスロット(62)に流動可能に結合されるようにヒンジピン(74)を有する連結ヒンジアーム(73)が形成される。それにより、斜板(70)の傾斜角変位時、ヒンジピン(74)がスロット(62)に沿ってスライディングしながら斜板(70)の傾斜運動を支持するようになる。
【0052】
一方、シリンダーブロック(10)と後方ハウジング(30)との間にはピストン(40)の吸入行程時に吸入室に(31)からシリンダーボア(11)内に冷媒を吸入して圧縮行程時にシリンダーボア(11)から吐出室(32)に圧縮冷媒を排出するためのバルブユニット(80)が設置される。
【0053】
また、後方ハウジング(30)にはコントロールバルブ(90)が設置されて吐出室(32)とクランク室(21)を作動的に連通させることによって、シリンダーボア(11)内の冷媒吸入圧とクランク室(21)内のガス圧との差圧を可変させて斜板(70)の傾斜角が調節されるように作用する。
【0054】
また、前方ハウジング(20)には前方ハウジング(20)と駆動軸(50)との間を密封して冷媒及び圧力の漏洩を防止できるように駆動軸シール(seal)領域(25)が備えられるが、シール領域(25)には前方ハウジング(20)と駆動軸(50)との間に設置されて、その間を密封するシーリング部材(26)が備えられる。シーリング部材(26)の一側にはラジアルベアリング(27)が設置されている。
【0055】
以下、
図5ないし7を参照してクランク室(21)内の冷媒に含まれるオイルをシール領域(25)に供給するための構成を詳細に説明する。
【0056】
そのために本発明は、前方ハウジング(20)の内側壁面に形成されてオイルが流動する複数個の流動溝(220)と、前方ハウジング(20)の内側壁面に形成されて複数個の流動溝(220)を連結する連結溝(240)、及び連結溝(240)とシーリング部材(26)が設置されるシール領域(25)を連結してシール領域(25)にオイルを供給するための少なくとも1つ以上のオイル供給ホール(260)を含む。ここで、前方ハウジング(20)の内側壁面は前方ハウジング(20)でローター(60)を向き合うように配置される壁面である。
【0057】
複数個の流動溝(220)は前方ハウジング(20)の内側壁面に放射状に形成されている。また、これに限定されるのではないが、複数個の流動溝(220)は前方ハウジング(20)の上側部に形成されることが好ましい。
それにより、ローター(60)が回転しながら前方ハウジング(20)の内側壁面にぶつかるオイルが複数個の流動溝(220)に沿って自重により円滑に連結溝(240)に流動できる。
【0058】
具体的に、圧縮機作動前は多くのオイルが液体状態で存在し、自重によりクランク室(21)底面に集まっている。圧縮機が作動すればローター(60)、斜板(70)などが回転することによって回転体にオイルがつくようになり、オイルが遠心力を受けて四方に落ち、駆動軸(50)を中心に中心部分よりは放射部分に多くのオイルが存在するようになる。この時、前述のように複数個の流動溝(220)が前方ハウジング(20)の上側部に放射状に形成されることによって、前方ハウジング(20)の内側壁面についた液体状態のオイルが上側から自重により流れて流動溝(220)を通じて円滑に供給されることができる。
【0059】
この時、それぞれの流動溝(220)の半径方向外側に形成されて流動溝(220)と連結されて、流動溝(220)に向かって狭くなる幅を有するオイル捕集部(210)がさらに備えられることができる。オイル捕集部(210)は流動溝(220)より大幅を有するが、流動溝(220)に向かって幅が狭くなるように形成されることによって、ローター(60)の回転により前方ハウジング(20)の半径方向に落ちたオイルが前方ハウジング(20)の内側壁面に沿って流れる時にオイルを捕集して流動溝(220)に円滑に供給する役割を果たす。
【0060】
また、複数個の流動溝(220)はローター(60)の回転方向と同じ方向に傾斜するように形成されることができ、これによってローター(60)の回転によってより多量のオイルが流動溝(220)内に流入することができる。
【0061】
本実施例では3個の流動溝(220)が前方ハウジング(20)の上側部に放射状に形成されている。
【0062】
連結溝(240)は前方ハウジング(20)の内側壁面に駆動軸(50)が挿入される挿入孔(23)を中心に円周方向に形成されている。連結溝(240)は前方ハウジング(20)の上側部に形成されるが、両端が境界部(29)によりオイル流動がふさがるように形成されることができる。すなわち、連結溝(240)でオイルが自重により流動する両端が境界部(29)によりふさがっている。境界部(29)は溝のない前方ハウジング(20)の内側壁面に該当することができる。
【0063】
そのために、連結溝(240)は円周方向に沿って連通された円形の形状になるのではなく、前方ハウジング(20)の上側部に半円形状に形成されている。しかし、これに限定されず、連結溝(240)が半円より狭く形成されることができることは言うまでもない。
【0064】
この時、1つ以上のオイル供給ホール(260)は連結溝(240)内に形成されるが、連結溝(240)の両端とシール領域(25)を連結している。具体的に、本実施例では2個のオイル供給ホール(260)が形成されて、それぞれ連結溝(240)で境界部(29)によりふさがっている両端とシール領域(25)を連結する。
【0065】
オイル供給ホール(260)は別途のドリルリング加工をしなければならない一方、流動溝(220)はダイカスト(die casting)を通じて一度に形成されることができる。それにより、オイル供給ホール(260)の個数が流動溝(220)の個数より少なく形成されることができ、加工時間及び費用が削減できる。
【0066】
また、連結溝(240)の幅はオイル供給ホール(260)の直径より大きいか同じに形成されることが好ましい。もし連結溝の幅がオイル供給ホールの直径より小さく形成される場合、オイルを供給する機能を円滑にできないためである。
【0067】
本発明において、流動溝(220)と連結溝(240)、そしてオイル供給ホール(260)はスラストベアリング部材のレース(120a)により遮蔽される。すなわち、リング形状になるレースは、具体的に一対のレース(120a、120b)の中の前方ハウジング(20)の内側壁面に近く位置するレース(120a)は、前方ハウジング(20)の内側壁面上に位置するが、流動溝(220)と連結溝(240)、そしてオイル供給ホール(260)を覆ってその間に閉鎖されたオイルチャンバー(oil chamber)を形成する。
【0068】
このように、閉鎖されたオイルチャンバー(oil chamber)が形成されることによって、流動溝(220)と連結溝(240)を通じて流動されたオイルが他の所に流れずオイルチャンバー内に貯蔵されることができ、オイル供給ホール(260)に円滑に供給されることができる。もし閉鎖されたオイルチャンバーが形成されていなければ、溝を通じて流動したオイルの一部だけがオイル供給ホールに供給されて、残りのオイルは開放されているローター(60)側に流れるようになり、シール領域にオイルが充分に供給されない。
【0069】
さらに、本発明において、連結溝(240)の両端が境界部(29)によりオイル流動がふさがっており、オイル供給ホール(260)が連結溝(240)の両端とシール領域(25)を連結することによって、流動溝(220)と連結溝(240)を通じて流動されオイルがオイルチャンバー内からオイル供給ホール(260)の位置まで満たされた後に供給されるのではなく、直ぐ供給されることができる。
【0070】
この時、レース(120a)が流動溝(220)と連結溝(240)、そしてオイル供給ホール(260)を覆ってオイルチャンバーを構成する場合、シーリング区間を確保することができるように、オイル供給ホール(260)は前方ハウジング(20)の内側壁面から突出したボス部(20a)より半径方向外側に形成されることが好ましい。
【0071】
本実施例ではレース(120a)が流動溝(220)と連結溝(240)、そしてオイル供給ホール(260)の何れもを覆ってオイルチャンバーを構成しているが、これに限定されるのではない。すなわち、レースは連結溝だけを覆うこともでき、連結溝に追加的に流動溝の少なくとも一部またはオイル供給ホールの少なくとも一部を覆ってオイルチャンバーを形成することができる。
【0072】
また、本発明は、前方ハウジング(20)の内側壁面に形成されてオイルを循環させるための循環溝(320)及び延長溝(340)をさらに含むことができる。
【0073】
循環溝(320)は境界部(29)を基準に連結溝(240)の反対側に配置されている。循環溝(320)は連結溝(240)と同様に前方ハウジング(20)の内側壁面に前記駆動軸(50)が挿入される挿入孔(23)を中心に円周方向に形成されることができる。
【0074】
具体的に、循環溝(320)は前方ハウジング(20)の下側部に略半円の形状に形成されて連結溝(240)と略対称になることができ、前方ハウジング(20)の内側壁面とレース(120a)の間に一部漏洩するオイルが貯蔵されることができる。
【0075】
延長溝(340)は循環溝(320)から放射状に延びる。それにより、循環溝(320)内のオイルは自重により下側に放射状に連結された延長溝(340)に流動されることができ、またクランク室(21)に排出されることができる。
【0076】
このように、循環溝(320)及び延長溝(340)が形成されることによってレース(120a)にオイルを供給すると同時にオイルをまたクランク室(21)に排出させてオイル循環を可能にする。
【0077】
図8には循環溝(320)及び延長溝(340)が省略されて前方ハウジング(20)の内側壁面上に流動溝(220)、連結溝(240)及びオイル供給ホール(260)だけが形成される実施例を図示する。
【0078】
本発明によれば、多量のオイルが前方ハウジングの駆動軸シール(seal)領域に円滑に供給されることができるので、駆動軸とシーリング部材との間の摩擦熱の温度を下げることができ、冷媒及び圧力の漏洩を防止して耐久性を向上させることができる。
【0079】
本発明は前述した特定の実施例及び説明に限定されず、請求範囲で請求する本発明の要旨を逸することなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば誰でも多様な変形実施が可能であり、そのような変形は本発明の保護範囲内にある。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は可変容量型斜板式圧縮機に係り、より詳しくはクランク室内の冷媒に含まれるオイルを前方ハウジングの駆動軸シール(seal)領域に円滑に供給することによって、駆動軸とシーリング部材との間の摩擦熱の温度を下げることができ、冷媒及び圧力の漏洩を防止して耐久性を向上させることができる可変容量型斜板式圧縮機に関する。
【符号の説明】
【0081】
11 シリンダーボア
10 シリンダーブロック
20 前方ハウジング
21 クランク室
23 挿入孔
25 シール領域
26 シーリング部材
27 ラジアルベアリング
29 境界部
30 後方ハウジング
31 吸入室
32 吐出室
40 ピストン
41 ブリッジ
45 シュー
50 駆動軸
60 ローター
61 ヒンジアーム
62 スロット
65 スリーブ
70 斜板
71 ハブ
73 連結ヒンジアーム
74 ヒンジピン
80 バルブユニット
90 コントロールバルブ
100 スラストベアリング部材
120a、120b レース
140 スラストベアリング
220 流動溝
240 連結溝
260 オイル供給ホール
320 循環溝
340 延長溝