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特許7539582分散型インテリジェントSNAPインフォマティクス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】分散型インテリジェントSNAPインフォマティクス
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20240816BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G01H9/00 E
G08G1/00 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023535943
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 US2021064754
(87)【国際公開番号】W WO2022140486
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】63/128,973
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/141,223
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/556,928
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ユハン
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ミン-ファンン
(72)【発明者】
【氏名】リ、 ティンフェン
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0078760(US,A1)
【文献】国際公開第2020/116030(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0137305(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 9/00
G01H 17/00
G01D 5/353
G08G 1/00 - 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散インテリジェント音響警報パターン(SNAP)インフォマティクスを使用した分散型光ファイバセンシング(DFOS)システムの運用方法であって、
前記DFOSシステムを
インタロゲータによって、質問光を生成し、道路に近接して配置された、ある長さの光センシングファイバに該質問光を送り、
前記光センシングファイバに送られた前記質問光から生じる後方散乱光を検出し、
検出された後方散乱光を示す信号を生成し出力し、
検出された後方散乱光を示す前記出力された信号を分析し、前記光センシングファイバの前記長さに沿った位置に関連し、前記位置における前記光センシングファイバの振動および音響環境を示す歪み信号を決定することによって動作させること、
前記光センシングファイバの正常な条件下で前記道路を走行する道路交通からのベースライン振動レベルを含む正常なベースライン特性を決定すること、
前記道路を走行する車両が前記道路のSNAP領域を通過するかを判断すること、を含み、
前記DFOSシステムの分析は、深層表現学習を提供する埋め込みネットワークとサポートベクターマシン分類器とを備える2段階モデルによって実行され、
前記埋め込みネットワークは、表現空間における異なるSNAPパッチ間の距離を短くしながら、前記SNAPパッチと他の無関係なパッチとの間の距離を拡大するために、三重項損失を用いて訓練され、学習した表現に基づいて、前記サポートベクターマシン分類器を訓練して、SNAPイベントを他のイベントと区別する方法。
【請求項2】
前記光センシングファイバの一部は草の下に位置し、前記光センシングファイバの別の部分は前記道路の一部の下に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記埋め込みネットワークは、畳み込みニューラルネットワークを含み、前記決定された歪み信号および位置から生成された2次元のウォーターフォール画像からパターンを検出する、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記畳み込みニューラルネットワークは、正常な交通パターンを示す正常なウォーターフォール画像と、前記道路のSNAP領域に遭遇する交通を示すSNAPウォーターフォール画像との両方を含む訓練画像のセットで訓練される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記訓練画像は、他の領域と比較して高い振動強度を示す領域を抽出するために前処理される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記畳み込みニューラルネットワークの前記訓練は、様々な気象条件、車両の種類、および上にある地面の種類のウォーターフォール画像を訓練することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記DFOSシステムは、検出されたSNAPイベントが所定の振動閾値を超えると警報を発生する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記DFOSシステムは、前記警報が所定の信頼スコアを示した場合に、通知イベントをトリガする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記光センシングファイバは、電気通信トラフィックを同時に伝送する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、高速道路/道路の分散型光ファイバセンシング(DFOS)に関する。より詳細には、本開示は、車両/音響警報パターン(SNAP)相互作用から生じる振動イベントから、リアルタイムの高速道路の状態および活動を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には理解されるように、高速道路/道路の安全性を向上させた高速道路開発の1つは、ショルダーランブルストリップ(当技術分野では音響警報パターン(SNAP)としても知られている)であり、これは、車両がパターン上を移動するときに、機械振動とそれに伴う警告音を生成して(SNAPイベント)、眠気のあるまたは注意散漫な運転者に通知する。このような活動を運転者(または同乗者)に通知することの有用性にもかかわらず、高速道路計画者や救急隊員は、SNAPイベントの通知、特にそのようなイベントが発生したときにリアルタイムで通知することによっても恩恵を受けることができる。
【発明の概要】
【0003】
当技術分野における進歩は、リアルタイムの応答が得るように、音響警報パターン(SNAP)イベントをリアルタイムで検出して報告するシステム、方法、および構造を対象とする本開示の態様に従ってなされる。
【0004】
従来技術とは大きく異なり、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、音響警報パターン(SNAP)の振動パターンのインジケータによる車両の路外逸脱事故の自動検出のための光ファイバセンシング技術を採用する。機械学習法を採用し、制御された実験を用いて様々な異種要因に対して訓練および評価した。本システムの動作から生じる抽出されたイベントは、インテリジェント交通およびスマートシティアプリケーションのための既存の管理システムに有利に組み込むことができ、交通渋滞のリアルタイム緩和を促進し、および/または迅速な対応の救助および撤去作業を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示のより完全な理解は、添付図面を参照することによって実現され得る。
【0006】
図1】当技術分野で一般に知られている例示的な分散型光ファイバセンシングシステム(DFOS)の概略図である。
【0007】
図2(A)】本開示の態様による、展開された光センシングファイバに重ねられたセンシング層の例示的なシステムレイアウトを示す図である。
図2(B)】本開示の態様による、晴れの日と雨の日の両方について概略的なウォーターフォール画像として表示された収集SNAP信号を示す図である。
【0008】
図3(A)】本開示の態様によるモデル訓練および推論の手順を示すフロー図である。
図3(B)】本開示の態様によるモデル訓練および推論の手順を示すフロー図である。
【0009】
図4】本開示の態様によるモデルの例示的なアーキテクチャを示す模式図である。
【0010】
図5】本開示の態様によるSNAPイベントが示された模式的なウォーターフォールのプロットである。
【0011】
図6】本開示の態様による全体的な手順のフロー図である。
【0012】
例示的な実施形態は、図面および詳細な説明によってより完全に説明される。しかしながら、本開示による実施形態は様々な形態で実施することができ、図面および詳細な説明に記載された特定のまたは例示的な実施形態に限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者は本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。
【0014】
さらに、本明細書に記載されているすべての実施例および条件付き用語は、本開示の原理および技術を促進するために発明者によって寄与された概念を読者が理解するのを助けるための教育目的のためだけのものであることを意図しており、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0015】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態を記載する本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物と、将来開発される等価物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する開発された要素との両方を含むことが意図されている。
【0016】
したがって、たとえば、本明細書の任意のブロック図が、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことは、当業者には理解されるであろう。
【0017】
本明細書で特に明記しない限り、図面を構成する図は、縮尺通りに描かれていない。
【0018】
いくつかの追加の背景として、近年、分散型振動センシング(DVS)や分散型音響センシング(DAS)を含む分散型光ファイバセンシング(DFOS)システムが、インフラストラクチャ監視、侵入検出、および地震検出を含むがこれらに限定されない多くの用途で広く受け入れられていることに改めて留意する。DASおよびDVSでは、後方レイリー散乱効果を用いてファイバの歪みの変化を検出し、ファイバ自体が後続の分析のために光センシング信号をインタロゲータに戻す伝送媒体として機能する。
【0019】
いくつかの追加の背景として、また当技術分野で一般に知られている例示的な分散型光ファイバセンシングシステムの概略図である図1を参照して、まず、分散型光ファイバセンシング(DFOS)は、インタロゲータに順に接続される光ファイバケーブルに沿った任意の場所で環境条件(温度、振動、伸縮レベルなど)を検出するために重要かつ広く使用される技術であることに留意する。知られているように、現代のインタロゲータは、ファイバへの入力信号を生成し、反射/散乱され、その後に受信された信号を検出/分析するシステムである。信号が分析され、ファイバの長さに沿って遭遇する環境条件を示す出力が生成される。このように受信された信号は、ラマン後方散乱、レイリー後方散乱、およびブリリオン後方散乱などのファイバ内の反射から生じ得る。また、複数のモードの速度差を利用した順方向の信号とすることもできる。一般性を失うことなく、以下の説明では、反射信号を想定しているが、同じアプローチを転送信号にも適用することができる。
【0020】
理解されるように、現代のDFOSシステムは、光パルス(または任意の符号化信号)を周期的に生成し、それらを光ファイバに送るインタロゲータを含む。送られた光パルス信号は、光ファイバに沿って伝送される。
【0021】
ファイバの長さに沿った位置では、信号のごく一部が反射してインタロゲータに戻される。反射信号は、例えば、機械的振動を示す電力レベルの変化など、インタロゲータが検出するために使用する情報を搬送する。
【0022】
反射信号は電気領域に変換され、インタロゲータ内で処理される。パルス注入時間と信号が検出された時間とに基づいて、インタロゲータは信号がファイバに沿ったどの位置から来ているかを判断し、ファイバに沿った各位置の活動を感知することができる。
【0023】
本開示の態様によるシステム、方法、および構造の1つの指針となる原理は、高速道路/道路の事故イベントを検出するために、(関連する分散型インテリジェントSNAPインフォマティクス(DISI)システムと共に)既存のファイバインフラストラクチャをセンシング媒体として使用し、道路事故イベントが分散型光センシング(DFOS)およびAI技術によって検出/決定およびその後防止できるようにすることに留意されたい。当業者であれば、理解し、認識するように、SNAPは、高速道路/道路の車線間に設置されることが多いため、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、SNAPを横断し、高速道路の肩に停車する高速道路事故車両の発見および通報を可能にする。
【0024】
有利には、本開示の態様による例示的なシステム、方法、および構造は、光ファイバケーブルの現場インフラストラクチャを有利に利用して、貴重な高速道路輸送関連データを検出/決定する。DISIシステムをDFOSと組み合わせると、分散型音響センシング(DAS)と分散型振動センシング(DVS)の両方を機械学習技術と組み合わせて組み込むことができるため、1つの統合システムで数十キロメートルの道路/高速道路に事故やその他のイベントをカバーすることができるという利点がある。
【0025】
さらに説明するように、DISIは、リアルタイムおよび/またはほぼリアルタイムでドリフトオフロード交通事故および緊急停止イベントを報告するAIベースの交通分析および管理ユニットである。収集されたデータは、高速道路/道路インフラストラクチャのサービス/管理/保守運用、およびその他の意思決定の目的で、地理情報システム(GIS)に組み込むことができる。この分散型光ファイバセンシングベースのアプローチには、非破壊的でありながら、比較的低い導入コスト、高い空間分解能、および低遅延特性を示すという利点がある。
【0026】
当業者であれば理解および認識するように、本明細書に開示されるシステム、構造、および方法に関する重要な技術的課題は、DFOS(DAS)システムからの時空間データストリームによって伝達される、ランブルストリップを横切る車両から生じるイベントに関連する別個のデータパターンを識別することである。
【0027】
一般的な展開/運用では、SNAP交差信号は、正常な交通および環境ノイズによって生じるバックグラウンドノイズによって埋もれたり、不明瞭になったりする。ランブルストリップは、可聴周波数でゴロゴロとした可聴音を発生させるが、その周波数の範囲は溝の間隔や車両の走行速度によって変化する。さらに、車両の種類、気象条件、センシング距離、および土壌の種類などにより、受信したセンサデータのパターンが異なる場合がある。加えて、ランブルストリップを横切る前後の速度の変化にも、SNAPイベント検出に役立つ情報が含まれている。
【0028】
さらに示して説明するように、これらの課題に対処するために、DASデータに対して深層学習ベースのアプローチを採用する。深層学習システムおよび方法ソフトウェアは、正常な交通信号とSNAPイベントによる信号とを比較することによって、そのような特徴的なパターンを構成するものを学習する。このような学習を容易にするために、ローカル時空間ウィンドウを作成し、SNAPイベントを他の高強度イベントと異なって見えるようにする特徴に重点を置く。従来の周波数ベースのアプローチと比較して、ローカル時空間ウィンドウは、SNAP振動の前後のコンテキスト情報を利用することもできる。
【0029】
より具体的には、本発明のモデルは、表現学習のための埋め込みネットワークと分類のためのサポートベクターマシン(SVM)の少なくとも2つの主要コンポーネントを含む。現在実装されているように、埋め込みネットワークは、3つの畳み込み層および3つの全結合層を有する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)である。また、各完結合層の後に、ドロップアウトおよび整流化線形ユニット(ReLU)を追加して、非線形性と過剰適合を軽減する。埋め込みネットワークは、表現空間における異なるSNAPパッチ間の距離を短くしながら、SNAPパッチと他の無関係なパッチとの間の距離を拡大するために、三重項損失を用いて訓練される。学習した表現に基づいて、より正確なSVM分類器を訓練して、SNAPイベントを他のイベントと区別することができる。
【0030】
図2(A)および図2(B)は、本開示の態様による、展開された光センシングファイバに重ねられたセンシング層の例示的なシステムレイアウトと、晴れの日と雨の日の両方について概略的なウォーターフォール画像として表示された収集SNAP信号とを示す。
【0031】
これらの図を同時に参照すると、図2(A)は、展開されたファイバ上に重ねられたセンシング層を有する例示的な構成を示す。光センシングシステム(DFOS)および分散型インテリジェントSNAPインフォマティク(DISI)検出器は、光ファイバセンサケーブルの経路全体を遠隔監視するための制御局/中央局に配置されている。DFOSシステムは、検出機能を提供するためにフィールド光ファイバに接続されている。
【0032】
図に例示するように、埋設されたファイバは、草の下とアスファルト舗装の下の2つのセクションがある。ファイバ検出長の変動性を高めるために、10kmおよび5kmのシングルモードファイバ(SMF)が経路に追加挿入されている。
【0033】
舗装上に設置されたランブルストリップは、車両のタイヤの進行方向に沿って1フィート(30.5cm)ごとに1つの刻み間隔になっている。各ストリップの高さは、実質的に0.5インチ(1.27cm)である。このようなストリップは、車両のタイヤがその上を走行するときに振動信号を生成するのに十分である。
【0034】
図2(B)は、晴れた日と雨の日のウォーターフォールトレースで収集されたSNAP信号を示す。SNAPの信号強度とパターンは、天候と地面の状態(例えば、晴れの日/雨の日)、センシング距離(例えば、数百メートルまたは数千メートル)、車両の種類(例えば、セダン/トラック)、および土壌の種類(例えば、草/舗装)によって異なる。
【0035】
図3(A)および図3(B)は、本開示の態様によるモデル訓練および推論の手順を示すフロー図である。図に示すように、訓練段階では、前処理ステップで高い振動強度を示すウォーターフォール画像の領域を抽出し、SNAPまたはバックグラウンドとしてラベル付けされた多くのウォーターフォールパッチから拡張されたデータを使用してモデルを訓練する。推論段階では、入力ウォーターフォール画像は、オーバーラップを有するスライディングウィンドウを適用することによって、個々の矩形パッチに変換される。次いで、SNAPイベントを含む識別されたウィンドウは、ボックス融合ステップによって1つの単一のボックスにマージされる。タイムスタンプ、ケーブルの位置、イベントの種類、および信頼スコアが出力として提供される。
【0036】
図にさらに示されるように、本発明の2段階モデルは、深層表現学習(RL)とサポートベクターマシン(SVM)を組み合わせたものであることがわかる。埋め込みネットワークは、パッチのペアの振動パターンが同じイベント(正常な交通またはSNAPのいずれか)によって引き起こされたかどうかを判断する検証タスクを実行する。SVM分類器は、各パッチにクラスラベルを割り当てる識別タスクを実行する。畳み込みニューラルネットワークアーキテクチャは、画像として表示された2次元のウォーターフォールデータからパターンを検出するのに適している。
【0037】
図4は、本開示の態様によるモデルの例示的なアーキテクチャを示す模式図である。
【0038】
このモデルは、晴れ/雨、0/10/15km、草/舗装、トラック/セダン/ミニバン、1台または2台の車両などの様々な異種要因に対して一貫して、>91.8%の平均分類精度を達成するように学習することができる。実験結果は表1~4にまとめられており、各項目は、10回の独立した実行の平均+/-標準偏差を報告する。
【0039】
SNAPイベントの位置特定を実行するために、スライディングウィンドウベースのアプローチを採用し、訓練した分類器を各画像パッチに適用する。SNAP振動は、複数のボックスが重なって表示される場合がある。
【0040】
図5は、本開示の態様によるSNAPイベントが示された模式的なウォーターフォールのプロットである。図5に示すように、単一の融合境界ボックスは、複数の個別の境界ボックスを結合することによって導出される。各融合境界ボックス内のSNAPイベントのタイムスタンプおよび位置は、ピーク検出アルゴリズムによって推定される。
【0041】
図6は、本開示の態様による全体的な手順のフロー図である。この図を参照すると、本発明の方法は、第1に、分散型光ファイバセンサ(DFOS)システムとして構成された配備したファイバリンクの光ファイバセンサケーブルを使用して、道路または他の交通またはイベントおよびイベント特性からの正常なベースライン振動レベルを測定および/または決定することを含むことが分かる。
【0042】
第2に、DFOSシステムの光ファイバセンサケーブルの位置は、地理的な地図に関連する。
【0043】
第3に、DFOSシステムを動作させ、SNAPを通過して検出可能な振動イベントを発生させる車両のデータをDFOSによって収集し、当該データ収集は、様々な気象地上条件で様々なクラスの車両を含み、分散型インテリジェントSNAPインフォマティクス(DISI)システムを含むAIモデルを生成する。
【0044】
第4に、事故が検出されると、異常スコアを使用し、地図上の異常位置の地図表示を出力するDISIシステムによって警報がトリガされる。
【0045】
第5に、警報がトリガされ、事前に決定された信頼スコアを示すと、事故イベントは、さらなる措置のために、制御室または監督システムに報告される。
【0046】
第6に、事故が発生した場所に、道路整備員または救急隊を派遣することができる。
【0047】
本発明のシステム、方法、および構造を評価するために、図2(A)に示したものと実質的に同じセットアップを使用して、フィールド試験を行った。図示され、配備されているように、ファイバセンシングシステム(リアルタイム推論のためのAIエンジンを搭載)は、約15~20インチの深さで地下に埋設された光ファイバセンサケーブルに光学的に接続されている。この試験で採用された光ファイバセンシングシステムは、ファイバ内の干渉位相ビートを介してレイリー散乱の変化を測定する分散型音響センシング(DAS)方式を採用する。採用したDASシステムは、短い光パルスとオンチップの高速処理を使用して、2000Hzのサンプリングレートで1m相当の空間分解能を実現する。ランブルストリップスは、試験車両の進行方向に沿って1フィート(30.5cm)ごとに実質7インチ(17.8cm)の間隔で舗装上に設置され、高さは0.5インチ(1.27cm)であった。このような構成は、タイヤがストリップを乗り越えるとき、検出可能な振動信号を生成するのに十分なタイヤの落下に対して十分な高さ/深さを作り出す。
【0048】
SNAP検出の実際的な課題を十分に再現するために、現地試験の実験計画では、多くの異種要因が考慮される。これらには、(1)草(「G」)の下に埋設されたファイバ、またはアスファルト舗装(「P」)内に埋め込まれたファイバ、(2)気象条件:晴れた日(乾いた地面)および雨の日(濡れた地面)、(3)車両の種類:セダン、ミニバン、およびトラック、ならびに(4)センシング距離:300m、10.4km、および15.8kmが含まれる。
【0049】
この試験構成では、さらに10kmと5kmのシングルモードファイバ(SMF)がファイバ経路に挿入されている。その結果、各SNAPイベントは、1回の走行試験でファイバの6つの異なるセグメントによって同時に感知される。図3(A)に示されるものと同様に、2種類の地面(「G」および「P」)の下で3つの異なるセンシング距離で、晴れた日のセダンと雨の日のトラックから収集された、時空間領域のSNAP信号を例示する。記録されたセンシングデータは、明確な信号特性とノイズ特性を示しており、信号処理技術を用いた特徴付けの難しさを物語っている。
【0050】
前述したように、センシング信号の時空間的局所性を考慮し、SNAPイベント検出のためのスライディングウィンドウパラダイムを採用し、画像パッチをSNAPまたはその他としてラベル付けされているものとして独立して分類する。この分類は、埋め込み空間で実行される。
【0051】
特に、データ表現は、同じラベルを持つパッチ埋め込みが、異なるラベルを持つパッチ埋め込みよりも互いに近いように、三重項損失によって最適化される。前述のように、埋め込み関数は、パッチのペアの振動パターンが同じ種類のイベントによって引き起こされるかどうかを判断する検証タスクで、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用して訓練される。学習された表現に基づいて、サポートベクターマシン(SVM)分類器は、識別タスクを実行し、クラスラベルをパッチ埋め込みに割り当てる。
【0052】
全体的な訓練と推論のアーキテクチャは、先に示したものと同様である。訓練性能を向上させるために、振動の大きい領域の周囲のパッチをランダムにサンプリングしてデータ拡張を行い、学習プロセスでSNAP振動と正常運転などの他の強い振動との間のコントラストを促進する。推論段階では、入力されたウォーターフォール画像がスライディングウインドウによってオーバーラップを持つローカルパッチに変換される。SNAPイベントが検出された隣接するウィンドウは、1つの境界ボックスにマージされる。AIエンジンは、入力データの連続ストリームを受け取り、GPU上でリアルタイムに推論を実行し、タイムスタンプ、ケーブルの位置、イベントの種類、および信頼スコアを出力として提供する。
【0053】
実地試験の実験を実施するにあたり、2つの気象条件、3つの車両の種類、および2つのイベントの種類(SNAPの横断または通過)をカバーする12の制御実験のそれぞれにおいて、複数の独立したラウンド(晴れ/雨の日は20または25)からデータを収集した。各ラウンドでは、2つの地面の種類の下で3つのセンシング距離で直接データを取得した。様々な実用的なシナリオ下で動作するSNAPイベント検出器を訓練するために、36の条件すべてで収集されたすべての訓練データを集計した。試験は、個々の要因の影響を分離できるように、それぞれ独自の条件下で実施した。訓練セットと試験セットとの間にオーバーラップがないことを確実にするために、8:2の分割比をラウンドに適用した。性能は、1)精度、2)ROC曲線下面積(AUC)、および3)精度再現率曲線下面積(AUPRC)の3つの分類指標で測定した。有利なことに、このモデルは、様々な異種要因に対して一貫して高い平均分類精度を達成した。しかしながら、予想通り、センシング距離が長くなり、草の下で減衰係数が高くなり、車両重量が軽くなると、モデルの性能をわずかに低下させるが、気象条件には明らかな影響がないことがわかった。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0054】
この時点で、いくつかの具体例を使用して本開示を提示したが、当業者は本教示がそのように限定されないことを認識するのであろう。したがって、本開示は、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2(A)】
図2(B)】
図3(A)】
図3(B)】
図4
図5
図6