IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEケミカル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-MnZn系フェライト 図1
  • 特許-MnZn系フェライト 図2
  • 特許-MnZn系フェライト 図3
  • 特許-MnZn系フェライト 図4
  • 特許-MnZn系フェライト 図5
  • 特許-MnZn系フェライト 図6
  • 特許-MnZn系フェライト 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】MnZn系フェライト
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/38 20060101AFI20240816BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20240816BHJP
   H01F 1/34 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C04B35/38
C01G49/00 B
H01F1/34 140
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024541741
(86)(22)【出願日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2024015487
【審査請求日】2024-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2023072693
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591067794
【氏名又は名称】JFEケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】菊地 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】杉本 美秋
(72)【発明者】
【氏名】友原 達矢
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-156991(JP,A)
【文献】特開2004-196632(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103086705(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/38
C01G 49/00
H01F 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本成分、副成分、及び不可避的不純物からなるMnZn系フェライトであって、
前記基本成分が、鉄、亜鉛、及びマンガンの合計をFe、ZnO、及びMnO換算で100mol%として、
鉄:Fe換算で52.5~53.5mol%、
亜鉛:ZnO換算で16.4~18.4mol%、及び
マンガン:MnO換算で残部
であり、
前記副成分が、前記基本成分に対して、
Si:SiO換算で30~100mass ppm、
Ca:CaO換算で50~160mass ppm、
Co:Co換算で1500~3500mass ppm、
Nb:Nb換算で100~600mass ppm、及び
V:V換算で100~600mass ppm
であり、
前記Nb及び前記Vの含有量の合計が、Nb及びV換算で200~900mass ppm
であるMnZn系フェライト。
【請求項2】
-40~85℃の温度範囲における25A/mの直流磁界印加時の増分透磁率が2800以上であって、
当該増分透磁率の極大値を示す温度が10~50℃の範囲にある、請求項1に記載のMnZn系フェライト。
【請求項3】
0~60℃の温度範囲における25A/mの直流磁界印加時の増分透磁率が3700以上であり、
さらに、23~40℃の温度範囲における25A/mの直流磁界印加時の増分透磁率が4100以上である、請求項2に記載のMnZn系フェライト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルストランス等の電子部品に好適な、-40~85℃の温度域において、25A/mの直流磁界印加時にも、高い増分透磁率が得られるMnZn系フェライトに関する。
【背景技術】
【0002】
イーサネット(登録商標)機器のトランスには、入出力端子でのインピーダンスの整合を図る、もしくは電気的絶縁を保つ等の目的から、磁心に軟磁性材料を用いたパルストランスが用いられている。このパルストランスには、-40~85℃という広い温度域において、直流磁界印加時に高いインダクタンス、すなわち高い増分透磁率を有することが求められている。かかる増分透磁率とは、磁場が印加された状態における磁心の透磁率(磁化のしやすさ)を示す値である。なお、文献によっては増分透磁率の代わりに実効透磁率という言葉が使用されているものもあるが、両者は同義であるから、以降は増分透磁率に統一する。
【0003】
前記軟磁性材料からなる磁心には、トロイダル形状のMnZn系フェライトが一般に用いられている。MnZn系フェライトは、多くの軟磁性材料の中でも、特に、高透磁率、高インダクタンスが容易に得られる。また、MnZn系フェライトは、アモルファス金属等の金属磁性材料と比較して安価である等の特長を有している。
【0004】
ここで、MnZn系フェライトは、酸化物磁性材料であることから、温度の変動によって磁気特性が大きく変化するという特性を有するため、金属磁性材料と比較して、幅広い温度域において安定した磁気特性を得るのが難しいという、欠点を有している。
【0005】
また、パルストランスは、回線終端装置等に使用した際に、屋外に設置される場合がある。そのため、パルストランスに用いられるMnZn系フェライトは、低温から高温までの広い温度範囲、特に-40~85℃の温度範囲において、高い初透磁率を有することが必要になる。
【0006】
さらに、デジタル通信機器では、搬送されるパルス電圧の正負バランスの変動によってパルストランスが磁化された状態で、直流磁界印加で稼働するような場合がある。このような直流磁界印加下でも信号変換に高い増分透磁率が必要となる。なお、このような使途では、必要なインダクタンス規格や使い方などによって印加する直流磁界の大きさは異なるが、室温において増分透磁率が高いことが求められる。また、汎用的なサイズのMnZn系フェライトコアは、最大25A/mの直流磁界が印加された状態で使われることが多い。
【0007】
ここで、かような分野に用いられるMnZn系フェライトは、Fe、ZnO、MnOを主成分として構成され、磁気異方性定数及び磁歪定数が0となるような主成分において、高い透磁率を発現する。このため、かかるMnZn系フェライトは、トランスやノイズフィルタ等の小型あるいは薄型の磁心として用いられている。すなわち、幅広い温度域において安定した磁気特性を得るのが難しい問題はあるものの、-40~85℃(或いは-40~100℃)の温度域において、直流磁界印加の下で高い増分透磁率を実現する方法が提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1では、-40~85℃の温度域において通常よりも高い33A/mの直流磁界印加時の増分透磁率が2000以上であるMnZn系フェライトが提案されている。他にも、特許文献2では、-40~100℃の温度域で推定約25A/mでの直流磁界印加時の増分透磁率が2000以上であるMnZn系フェライトが提案されている。
【0009】
加えて、特許文献1では、高い初透磁率が得られるMnZn系フェライトの組成(Fe:52.0~53.0mol%、ZnO:22.0~23.0mol%、MnO:残部)において、SiOとCaOを同時に添加すると共に、酸化鉄の原料に起因して不可避に混入してくる不純物としてのCrの含有量を極微量に低減することで、MnZn系フェライトの平均結晶粒径を適正範囲に制御し、初透磁率が10000以上(23℃)、増分透磁率が2000以上(-40~85℃、33A/mの直流磁界印加時)のMnZn系フェライトを得る方法が提案されている。
【0010】
特許文献2では、MnZn系フェライトの主成分組成(Fe:51.0~52.0mol%、ZnO:18.5~22.0mol%、MnO:残部)において、副成分としてTiOを0.5~1.5重量%とSiO、CaO、V、Nbのうち任意の数種類とを微量含有し、残留磁束密度が50mT以下、常温での磁気バイアスが135mTの条件(25A/mの直流磁界印加と推定)で、-40~100℃の範囲で比透磁率2100以上、直流重畳特性の劣化が少ないMnZn系フェライトを得る方法が提案されている。
【0011】
特許文献3では、MnCoZn系フェライトの基本組成(Fe:51.0~53.0mol%、ZnO:13.0~18.0mol%、CoO:0.04~0.60mol%、MnO:残部)において、適正量のSiOとCaOを同時に添加すると共に、TiOを必須とし、酸化鉄の原料に起因して不可避に混入してくる不純物としてのP及びBの含有量を極微量に低減することで、-40~85℃の全温度域において33A/mの直流磁界印加時の増分透磁率が2300以上の値を示すMnCoZn系フェライトを得る方法が提案されている。なお、特許文献3では、増分透磁率の温度特性を平坦化する効果を示すCoを含有するため、広い組成域において140~210℃の比較的高いキュリー温度が得られている。そのため、低温(-40℃)や高温(85℃)でも、比較的高い増分透磁率が得られる。
【0012】
また、特許文献4や、特許文献5には、TiやBiを含有する組成を有するMnZn系フェライトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2013-166663号公報
【文献】特開2004-319811号公報
【文献】特開2008-143745号公報
【文献】特開2022-156991号公報
【文献】中国特許出願公開第1686927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の方法で得られるMnZn系フェライトは、Coのような増分透磁率の温度特性を平坦化する副成分が含まれていない。そのため、25A/mというマイルドな直流磁界印加条件であっても、低温(-40℃)や高温(85℃)における増分透磁率が室温付近の値に比べて低くなる問題がある。また、かかる特許文献1に記載の組成域では、キュリー温度が120~130℃程度と低いため、必然的に85℃以上の高温域における増分透磁率が低くなる問題がある。
【0015】
また、特許文献2に記載の方法で得られるMnZn系フェライトも、Coのような増分透磁率の温度特性を平坦化する副成分を含まないため、低温(-40℃)や高温(85℃)における増分透磁率が室温付近の値に比べて低くなる問題がある。また、かかる特許文献2に記載の組成域でも、キュリー温度は110~150℃以下と低いため、85℃以上の高温域における増分透磁率が低くなる問題がある。
【0016】
さらに、特許文献3に記載の発明では、SiOやCaO、ZrO、Ta、HfO、Nbなどの副成分を多く含むため、25A/mの直流磁界印加であっても、-40~85℃の範囲における増分透磁率は、全体的に下がったものとなると考えられる。
【0017】
ここで、これらの文献に示されるMnZn系フェライトの-40~85℃の範囲で保証される増分透磁率は多くは2300程度であり、一般的なパルストランスに使用するには、特性的に問題ないレベルにはあるものの、多数のフェライトコアを製造した場合において、特性のばらつきを考慮するとコアの合格率が低いという問題があった。コアの合格率を上げたり、銅線の巻線数を減らしたり、コアをさらに小型化する等の要求に対応するためには、より高い増分透磁率の保証が求められ、このような問題に対応するには能力不足であった。
【0018】
特許文献4や、特許文献5に記載の発明のように、Tiを含有すると、直流磁界を印加した場合の増分透磁率μdcの温度特性が低温側にずれ、高温における増分透磁率が低下する。また、Biを含有すると、直流磁界を印加しない場合の初透磁率が上がるものの、直流磁界を印加した場合の実効透磁率μが低下する。
【0019】
本発明は、上記事情に鑑み開発されたもので、パルストランス等の電子部品に好適な、-40~85℃の温度域において、25A/mの直流磁界印加時に、より高い増分透磁率が得られるMnZn系フェライトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、-40~85℃の温度域において、25A/mでの直流磁界印加時の増分透磁率が2800以上のMnZn系フェライトを提案するものである。かかる増分透磁率は、広い温度範囲内で高くする必要があり、特に-40℃近傍と85℃近傍において増分透磁率が低下しやすい。そこで本発明では、-40℃近傍と85℃近傍において増分透磁率を2800以上とする。さらに、当該増分透磁率の極大値をとる温度は10~50℃の範囲とすることが好ましい。また、MnZn系フェライトは、0~60℃程度の温度範囲において3700以上、23~40℃の温度範囲において4100以上の増分透磁率を有することが好ましい。なお、本発明において、初透磁率や増分透磁率の値は、すべて真空の透磁率μoとの比(比透磁率)で表すこととする。
【0021】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
[1]基本成分、副成分、及び不可避的不純物からなるMnZn系フェライトであって、前記基本成分が、鉄、亜鉛、及びマンガンの合計をFe、ZnO、及びMnO換算で100mol%として、鉄:Fe換算で52.5~53.5mol%、亜鉛:ZnO換算で16.4~18.4mol%、及びマンガン:MnO換算で残部であり、前記副成分が、前記基本成分に対して、Si:SiO換算で30~100mass ppm、Ca:CaO換算で50~160mass ppm、Co:Co換算で1500~3500mass ppm、Nb:Nb換算で100~600mass ppm、及びV:V換算で100~600mass ppmであり、前記Nb及び前記Vの含有量の合計が、Nb及びV換算で200~900mass ppmであるMnZn系フェライト。
【0022】
[2]-40~85℃の温度範囲における25A/mの直流磁界印加時の増分透磁率が2800以上であって、当該増分透磁率の極大値を示す温度が10~50℃の範囲にある、上記[1]に記載のMnZn系フェライト。
【0023】
[3]0~60℃の温度範囲における25A/mの直流磁界印加時の増分透磁率が3700以上であり、さらに、23~40℃の温度範囲における25A/mの直流磁界印加時の増分透磁率が4100以上である、上記[2]に記載のMnZn系フェライト。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、25A/mの直流磁界印加時に、-40~85℃の温度域において、-40℃近傍と85℃近傍において増分透磁率が2800以上と高いMnZn系フェライトが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】各測定温度における増分透磁率(μdc)へのFe含有量の影響を表すグラフである。
図2】各測定温度における増分透磁率(μdc)へのZnO含有量の影響を表すグラフである。
図3】各測定温度における増分透磁率(μdc)へのSiO含有量の影響を表すグラフである。
図4】各測定温度における増分透磁率(μdc)へのCaO含有量の影響を表すグラフである。
図5】各測定温度における増分透磁率(μdc)へのCo含有量の影響を表すグラフである。
図6】各測定温度における増分透磁率(μdc)へのNb含有量及びV含有量の影響を表すグラフである。
図7】比較例13、比較例14、及び比較例15の、各測定温度における増分透磁率(μdc)の値を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。
【0027】
(MnZn系フェライト)
MnZn系フェライトは、基本成分、副成分、及び不可避的不純物からなる。かかる基本成分は鉄、亜鉛、及びマンガンからなり、これらは酸化物として存在している。なお、以下のmol%は基本成分の組成比である。
【0028】
[増分透磁率]
まずは、増分透磁率の観点から、各成分について説明する。
【0029】
本発明では、鉄を、Fe換算で52.5~53.5mol%の範囲で含有する。かかる鉄の含有量は、Fe換算で、好ましくは52.6mol%以上、より好ましくは52.7mol%以上である。一方、鉄の含有量は、Fe換算で、好ましくは53.3mol%以下、より好ましくは53.1mol%以下である。本発明において、鉄の含有量をFe換算で52.5~53.5mol%とするのは以下の理由による。すなわち、鉄の含有量がFe換算で53.0mol%付近である場合に、磁歪定数λ=0となり、25A/mの直流磁界印加時の増分透磁率が最も高くなるためである。一方、鉄の含有量が、Fe換算で、52.5mol%未満の場合、または53.5mol%を超える場合は、増分透磁率が大きく低下する。また、鉄の含有量がFe換算で53.0mol%から外れるほど、印加磁場によりコアが伸び縮みして変形することでコア自体に応力がかかり、磁壁移動が阻害され、増分透磁率が大きく低下する。
【0030】
MnZn系フェライトは、鉄と亜鉛の比率によって、キュリー温度やセカンダリーピークが変化することが知られている。本発明において、亜鉛は、ZnO換算で16.4~18.4mol%含有する。また、亜鉛の含有量は、ZnO換算で、好ましくは16.5mol%以上であって、より好ましくは16.6mol%以上である。一方、亜鉛の含有量は、ZnO換算で、好ましくは18.3mol%以下であって、より好ましくは18.2mol%以下である。かように亜鉛の含有量をZnO換算で16.4~18.4mol%の範囲とするのは、この範囲でのキュリー温度がおよそ160~190℃となり、高温(85℃)においても良好な増分透磁率が得られるためである。加えて、亜鉛の含有量がZnO換算で16.4mol%を下回ると、キュリー温度は高くなるものの、初透磁率自体が低下するため直流磁界印加時の増分透磁率も低下するためである。一方、亜鉛の含有量がZnO換算で18.4mol%を上回ると、キュリー温度が低下するため、高温(85℃)における増分透磁率が低下するからである。
【0031】
マンガンは、基本成分の残部である。マンガンは、MnO換算で28.0~31.0mol%の範囲で含有するのが好ましい。また、マンガンの含有量は、MnO換算で、28.5mol%以上がより好ましく、30.7mol%以下がより好ましい。
【0032】
すなわち、MnZn系フェライトの基本成分は、鉄、亜鉛、及びマンガンの合計をFe、ZnO、及びMnO換算で100mol%とする。
【0033】
次に、副成分について説明する。本発明のMnZn系フェライトは、上記の基本成分の他にも、副成分としてSi、Ca、Co、Nb、及びVを含有し、これらからなることが好ましい。これらはそれぞれSiO、CaO、Co、Nb、及びV等の酸化物として存在する。なお、副成分の含有量は基本成分に対するmass ppmで示す。
【0034】
Si及びCaは、共に結晶粒界の生成を促して結晶粒成長を抑制し、比抵抗を高める働きがある元素である。適量のSi及びCaを含有することにより、-40~85℃の広い温度域全体に亘って初透磁率の低下を抑えると共に、直流磁界印加時に、低温域と高温域における増分透磁率を高めることで、-40~85℃の広い温度域に亘って高い増分透磁率を得ることができる。
【0035】
Siは、SiO換算で30~100mass ppmの範囲で含有することが肝要であり、好ましくは40mass ppm以上含有し、好ましくは95mass ppm以下含有する。また、Caは、CaO換算で50~160mass ppmの範囲で含有することが肝要であり、好ましくは90mass ppm以上含有し、好ましくは150mass ppm以下含有する。SiがSiO換算で30mass ppm未満である場合や、CaがCaO換算で50mass ppmよりも少ない場合は、低温域と高温域における増分透磁率が低下し、-40~85℃の広い温度域で2800以上の増分透磁率を得ることができない。一方、SiがSiO換算で100mass ppmよりも多い場合や、CaがCaO換算で160mass ppmよりも多い場合は、初透磁率が大きく低下するため、それに伴い増分透磁率も大幅に低下し、-40~85℃の広い温度域で2800以上の増分透磁率を得ることができない。
【0036】
Coは、MnZn系フェライトの磁気特性の温度依存性を改善するのに有効な成分である。適量のCoを含有させることにより、直流磁界印加時の増分透磁率の温度に対する変化が小さくなり、低温域と高温域の増分透磁率が向上する。ところが、Coには、透磁率の温度依存性を低温側にずらす働きもある。そのため、Co含有量が少なすぎたり多すぎたりすると、低温域と高温域との透磁率のバランスが崩れ、低温域あるいは高温域における増分透磁率が低下し、-40~85℃の広い温度域で高い増分透磁率を得ることができなくなる。
【0037】
Coは、Co換算で1500~3500mass ppmの範囲で含有することが肝要である。また、Coは、Co換算で、好ましくは1800mass ppm以上含有し、より好ましくは2000mass ppm以上含有する。一方、Coは、Co換算で、好ましくは3000mass ppm以下含有し、より好ましくは2900mass ppm以下含有する。CoがCo換算で1500mass ppmより少ない場合は、増分透磁率の温度特性の極大点が高温側にずれ、高温での増分透磁率はよくなるものの、低温での特性が悪くなり、-40~85℃の広い温度域に亘って2800以上の増分透磁率を得ることができなくなる。一方、CoがCo換算で3500mass ppmより多い場合は、増分透磁率の温度特性の極大点が低温側にずれ、増分透磁率の低温特性はよくなるものの、高温特性が悪くなり、-40~85℃の広い温度域に亘って2800以上の増分透磁率を得ることができなくなる。
【0038】
Nb及びVは、共存することにより粗大な結晶粒の生成を抑制し、微細で均一な結晶粒を得て、比抵抗を高める効果がある元素である。適量のNb及びVを含有することで、直流磁界印加時の増分透磁率を高めることができる。
【0039】
Nbは、Nb換算で100~600mass ppmの範囲で含有することが肝要であり、好ましくは200mass ppm以上含有し、好ましくは575mass ppm以下含有する。また、Vは、V換算で100~600mass ppmの範囲で含有することが肝要であり、好ましくは200mass ppm以上含有し、好ましくは400mass ppm以下含有する。
【0040】
さらに、MnZn系フェライト中のNb及びVの含有量の合計は、Nb及びV換算で200~900mass ppmの範囲とすることが肝要である。Nb及びVの含有量の合計は、Nb及びV換算で、好ましくは250mass ppm以上であり、好ましくは750mass ppm以下である。
【0041】
NbがNb換算で100mass ppmよりも少ない場合、VがV換算で100mass ppmよりも少ない場合、又はNb及びVの含有量の合計が200mass ppmよりも少ない場合は、いずれの場合も粗大な結晶粒の生成抑制が十分ではなく、比抵抗も低いため、直流磁界印加時の増分透磁率も低下する。一方、NbがNb換算で600mass ppmよりも多い場合、VがV換算で600mass ppmよりも多い場合、又はNb及びVの含有量の合計が900mass ppmよりも多い場合は、いずれの場合も結晶粒が微細化して比抵抗も高くなるため、磁壁が動きにくくなり、初透磁率が低下する。それに伴い、直流磁界印加時の増分透磁率も低下する。
【0042】
[異常粒成長による不良率]
次に、異常粒成長による不良率の観点から、各成分について説明する。一般的に、MnZn系フェライトに添加されるSi又はCaなどの副成分は、特性だけではなく、結晶粒の形成にも大きく影響する。副成分を適量含有する場合には、副成分が粒界に偏析することで、結晶粒の粗大化を抑制して結晶組織を均一化し、比抵抗を高める働きがある。しかし、副成分には焼結を促進させる効果もあるので、副成分を過剰に含有する場合には、異常粒成長が起こりやすくなり、結晶粒の粗大化を招く。粗大な異常粒が生成すると、比抵抗が低下し、特に低温域及び高温域における増分透磁率も低下するという問題がある。このように、一定サイズ以上の異常粒が生成したフェライトコアは、外観や特性に問題があるため、不良品として扱われる。なお、焼結コアの表面に存在する異常粒は、健全なフェライト焼結コアの色とは異なるため、目視により判別することが可能である。
【0043】
一方、MnZn系フェライトのSi及びCaの含有量が少ない場合には、異常粒の発生が抑えられるため、異常粒成長による不良率は低くなる傾向がある。また、Si又はCaほど影響は大きくはないが、MnZn系フェライトがNb、V、Ti、又はBiなどを過剰に含有する場合にも、異常粒成長は起こりやすくなる。したがって、フェライト焼結コア表面の異常粒成長による不良率を低下させるには、異常粒の生成に寄与が大きい副成分の含有量を少なくすることが重要である。
【0044】
本発明においては、初透磁率μiが高くなるように、基本成分並びにSi及びCaなどの副成分の含有量を適切に選定しているため、基本的に異常粒の発生が少なく、フェライトコアの異常粒成長による不良率も低いという特長がある。すなわち、SiをSiO換算で30~100mass ppmの範囲、及びCaをCaO換算で50~160mass ppmの範囲で含有する場合は、異常粒の発生が抑えられ、フェライトコアの不良率は低くなる。逆に、SiがSiO換算で100mass ppmを超える場合、又はCaがCaO換算で160mass ppmを超える場合は、異常粒の生成が増え、フェライトコアの異常粒成長による不良率が高くなる傾向がある。
【0045】
同様に、Nb又はVの含有量が、Nb換算値とV換算値の合計で900mass ppmを超える場合、フェライトコアの異常粒成長による不良率が高くなる。したがって、Nb又はVの含有量は、Nb換算値とV換算値の合計で900mass ppm以下とすることが好ましい。一方、Nb又はVの含有量は、Nb換算値とV換算値の合計で200mass ppm以上とすることが好ましい。
【0046】
[工程能力指数Cpk]
次に、工程能力指数Cpkの観点から、各成分について説明する。本発明の一実施形態に係るMnZn系フェライトは、Si又はCaなどの副成分の含有量が少ないため、-40~85℃の温度域においては、-40℃又は85℃のいずれかの温度で増分透磁率が最も低い値となる。本MnZn系フェライトは、当該温度において、Si又はCaなどの含有量が多いフェライトよりも、増分透磁率のばらつきが小さくなるという特長がある。そのため、本MnZn系フェライトは、ばらつきを考慮した増分透磁率の下限規格に対する余裕も良好となる。したがって、増分透磁率の下限規格を下回る不良の発生率の観点からも、Si又はCaなどの副成分の含有量が少ないことが好ましい。すなわち、Si又はCaなどの副成分の含有量が少ないMnZn系フェライトは、高い工程能力指数Cpkが得られる。なお、一般にCpkは1.33以上であることが好ましい。
【0047】
したがって、高い工程能力指数Cpkを得る観点から、MnZn系フェライトのSi及びCaの含有量の合計は、SiO及びCaO換算で、260mass ppm以下とすることが好ましい。一方、MnZn系フェライトのSi及びCaの含有量の合計は、SiO及びCaO換算で、80mass ppm以上とすることができる。
【0048】
本発明のMnZn系フェライトには、P、B、S、Cl等の不可避的不純物が含まれていてもよい。かかる不可避的不純物の含有量は合計で500mass ppm以下に抑制する。
【0049】
(MnZn系フェライトの製造方法)
次に、本発明に係るMnZn系フェライトの製造方法について説明する。
本発明のMnZn系フェライトの製造方法については、公知の一般的な製造方法を用いることができる。一般的な製造方法とは、次の通りである。
【0050】
まず、基本成分であるFe、ZnO、及びMn(組成比はMnではなくMnOに換算して扱う)の粉末原料を本発明で規定した量を満足するように秤量し、アトライターやボールミルで混合して混合粉を得る。混合方法は、乾式法または湿式法のいずれでも構わない。
【0051】
次いで、混合粉を800~1000℃の範囲に加熱して仮焼し、仮焼粉を得る。次いで、かかる仮焼粉を、アトライターやボールミルを用いて、湿式粉砕を行い、粉砕粒径が0.8~1.6μm程度になるまで粉砕する。その際、本発明で規定した量を満足する量の副成分を加えて粉砕する。この粉砕作業においては、副成分の濃度に偏りがないように、均質化する必要がある。
【0052】
上記湿式粉砕にて得られたスラリーに、ポリビニルアルコール等の有機物バインダーを添加し、スプレードライヤーなどを用いて造粒することで造粒粉を得る。さらに、かかる造粒粉を、所定の形状の金型に充填して、成形を行い、成形体を得る。かくして得られた成形体を焼成することで、本発明に従うMnZn系フェライトのコアが得られる。
【0053】
本発明によって得られるMnZn系フェライトは、-40~85℃の温度範囲における25A/mの直流磁界印加時の増分透磁率が2800以上である。さらに、当該増分透磁率の極大値をとる温度が10~50℃の範囲にあることが好ましい。さらに、0~60℃の温度範囲における25A/mの直流磁界印加時の増分透磁率が3700以上であり、かつ23~40℃の温度範囲における25A/mの直流磁界印加時の増分透磁率が4100以上の高い特性を有することが好ましい。また、MnZn系フェライトは増分透磁率が2800以上と高いので、量産する際においては、今まで特性未達で不合格となっていた製品が減り、歩留まりアップとなる効果が得られる。
【0054】
また、本発明のMnZn系フェライトのコアの、-40~85℃の温度範囲における、25A/mの直流磁界印加時の増分透磁率は、極大値を示す上に凸の曲線となる。ここで、増分透磁率が極大値を示す温度は、初透磁率のセカンダリーピークを示す温度とは異なる。Coなどの副成分を適正量添加し、極大値を示す温度が適切であれば、低温(-40℃近傍)と高温(85℃近傍)の増分透磁率のバランスがとれ、前述した高い増分透磁率を安定して得られる。すなわち、本発明では、適切な基本成分と副成分の含有によって、増分透磁率の極大値を示す温度を適正範囲(10~50℃の範囲)にするのが肝要である。増分透磁率の極大値を示す温度は、好ましくは15℃以上、好ましくは45℃以下である。
【実施例
【0055】
[増分透磁率]
まず、基本成分及び副成分が増分透磁率に与える影響を調査した。MnZn系フェライトの基本成分であるFe、ZnO、及びMn(配合比はMnOに換算して扱う)を表1から表3に示す組成比となるように各原料粉末を秤量した。いずれも高純度の原料粉を用いた。
【0056】
ここで、比較例13は特許文献4の実施例11、比較例14は特許文献5の実施例1、比較例15は特許文献5の実施例2にそれぞれ相当する成分とした。すなわち、Fe及びZnOは各特許文献に記載の組成比とし、残部であるMnOは基本成分の合計が100mol%となるように適宜調整した。
【0057】
これらの原料粉を、ボールミルで16時間の混合・粉砕を行い、その後、大気中で925℃×3時間の条件の仮焼を行い、仮焼粉を得た。次いで、この仮焼粉にSiO、CaCO、Co、Nb、V、TiO、及びBiを表1から表3に示す組成比となるようにそれぞれ添加し、ボールミルで12時間の粉砕を行い、粉砕粉を得た。次いで、かかる粉砕粉にポリビニルアルコールを加えて造粒し、118MPaの圧力を加えてトロイダルコアを成形し成形体とした。その後、この成形体を焼成炉に装入して、最高温度:1350℃で焼成し、外径:30.5mm×内径:19mm×高さ:6.5mmの焼結体試料を得た。なお、P、B、S、Cl、及びその他の不可避的不純物の含有量は、JIS K0102(ICP質量分析法)に従って定量し、500mass ppm以下であることを確認した。このようにして得た各試料に、20ターンの巻線を施し、プレシジョンLCRメータE4980A(キーサイトテクノロジー製)を用いて、初透磁率及び増分透磁率を求めた。初透磁率は、23℃、100kHzで、直流磁界を重畳せずに測定した。また、増分透磁率の温度特性は、25A/mの直流磁界を重畳した状態で、周波数:100kHzで、-40℃、0℃、23℃、40℃、60℃、及び85℃の各温度でそれぞれ測定した。結果を表1~3及び図1~7に示す。なお、図中の実線は増分透磁率(μdc)が2800である場合を示す線である。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
<基本成分>
表1及び図1、2に示した通り、発明例1~8、比較例1~4の結果から、基本成分であるFeが52.5~53.5mol%の範囲、かつZnOが16.4~18.4mol%の範囲であれば、25A/mの直流磁界を印加した際に、-40~85℃の温度範囲で増加透磁率:2800以上が得られ、増分透磁率の極大値を示す温度が10~50℃の範囲にあることがわかる。また、発明例1~8においては、0~60℃の温度範囲における25A/mの直流磁界印加時の増分透磁率が3700以上であって、かつ23~40℃の温度範囲における25A/mの直流磁界印加時の増分透磁率が4100以上であることも併せてわかる。
【0062】
<副成分SiO
表2及び図3に示した通り、発明例9~11、比較例5~6の結果から、副成分であるSiOが30~100mass ppmの範囲であれば、25A/mの直流磁界を印加した際に、-40~85℃の温度範囲で増加透磁率:2800以上が得られ、増分透磁率の極大値を示す温度が10~50℃の範囲にあることがわかる。
【0063】
<副成分CaO>
表2及び図4に示した通り、発明例12~15、比較例7~8の結果から、副成分であるCaOが50~160mass ppmの範囲であれば、25A/mの直流磁界を印加した際に、-40~85℃の温度範囲で増加透磁率:2800以上が得られ、増分透磁率の極大値を示す温度が10~50℃の範囲にあることがわかる。
【0064】
<副成分Co
表2及び図5に示した通り、発明例16~20、比較例9~10の結果から、副成分であるCoが1500~3500mass ppmの範囲の範囲であれば、25A/mの直流磁界を印加した際に、-40~85℃の温度範囲で増加透磁率:2800以上が得られ、特に発明例17~20は増分透磁率の極大値を示す温度が10~50℃の範囲にあることがわかる。
【0065】
<副成分Nb及びV
表2及び図6に示した通り、発明例21~24、比較例11~12の結果から、副成分であるNb及びVがいずれも100~600mass ppmの範囲にあり、かつNbとVの合計が200~900mass ppmの範囲であれば、25A/mの直流磁界を印加した際に、-40~85℃の温度範囲で増加透磁率:2800以上が得られ、増分透磁率の極大値を示す温度が10~50℃の範囲にあることがわかる。
【0066】
<特許文献4に相当する場合:比較例13>
表3及び図7に示した通り、比較例13(特許文献4の実施例11に相当)では、温度特性曲線が低温側にずれ、高温域での増分透磁率が2800未満であり、-40~85℃の温度範囲において2800以上が得られないことがわかる。
【0067】
<特許文献5に相当する場合:比較例14、比較例15>
表3及び図7に示した通り、比較例14(特許文献5の実施例1に相当)及び比較例15(特許文献5の実施例2に相当)では、温度特性曲線が高温側にずれ、低温域での増分透磁率が2800未満であり、-40~85℃の温度範囲において増分透磁率2800以上が得られないことがわかる。さらに、Coが添加されていないため、増分透磁率の変化率が大きいことがわかる。
【0068】
[異常粒成長による不良率]
次に、異常粒成長による不良率について調査した。表4に示す発明例3、11、15、比較例6、8、及び13~18について、上述した方法と同様にしてフェライト粉砕粉を作製し、かかる粉砕粉にポリビニルアルコールを加えて造粒し、118MPaの圧力を加えてトロイダルコアを成形し成形体とした。その後、成形体を匣鉢に入れて焼成炉に装入して、最高温度1350℃で焼成し、外径:6.0mm×内径:3.0mm×高さ:4.0mmの焼結体試料(コア)を得た。得られた焼結体試料について、上述した方法で初透磁率及び増分透磁率を求めた。さらに、焼結体試料を100個作製し、試料表面に0.5mm以上の異常粒がある焼結体試料の数を目視で調べ、不良率を求めた。結果を表4に示す。
【0069】
ここで、比較例16は特許文献1の実施例7と同等の成分、比較例17は特許文献2の適合例1と同等の成分、比較例18は特許文献3の試料番号1-5(発明例)と同等の成分とした。
【0070】
【表4】
【0071】
表4に示した通り、発明例3、11、及び15では、本発明の基本成分と副成分からなる条件のフェライト粉を用いてコアを作製しており、-40~85℃の温度範囲において増分透磁率2800以上が得られた。さらに、異常粒があるコアは発生せず、異常粒成長による不良率が低いことがわかる。
【0072】
表4に示した通り、比較例6、8、及び13~17では、-40~85℃の温度範囲において増分透磁率2800以上を得ることができず、また、本発明例よりも異常粒成長による不良率が高かった。また、比較例18では、-40~85℃の温度範囲において増分透磁率2800以上を得ることができたが、異常粒成長が起こったため不良となるコアが存在し、本発明例よりも異常粒成長による不良率が高かった。
【0073】
[工程能力指数Cpk]
次に、本発明の工程能力指数Cpkについて調査した。-40℃における増分透磁率がほぼ同等である、発明例15及び比較例18において、上述した方法で焼結体試料(コア)を100個作製した。各コアの増分透磁率を測定し、増分透磁率が最も低い値を示す-40℃における増分透磁率の標準偏差σを求めた。そして、-40℃における増分透磁率の下限規格を2700(片側規格)として、偏りを考慮した工程能力指数Cpkを、以下の式(1)から算出した。結果を表5に示す。
Cpk=(平均値-下限規格)/3σ ・・・(1)
【0074】
【表5】
【0075】
表5に示すように、Si又はCaなどの含有量が少ない発明例15は、Cpkが1.35と高いのに対し、Caの含有量が多い比較例18は、Cpkが0.82と小さかった。この結果から、発明例15の方が、比較例18に比べてCpkが大きく、増分透磁率の規格下限に対して余裕があることがわかる。このことから、Si又はCaなどの含有量が少ない本発明の方が、特許文献3の発明例の条件よりも、増分透磁率の不良率が低くなり、より好ましいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明により、-40~85℃の温度域において、パルストランス等の電子部品に好適な、25A/mの直流磁界印加時にも、高い増分透磁率を示すMnZn系フェライトを得ることができる。これにより、フェライトコアの小型化や銅線の巻線数を減らすことが可能になる。
【要約】
パルストランス等の電子部品に好適な、-40~85℃の温度域において、25A/mの直流磁界印加時に、より高い増分透磁率が得られるMnZn系フェライトを提供する。本発明のMnZn系フェライトは、基本成分、副成分、及び不可避的不純物からなり、基本成分として、鉄:Fe換算で52.5~53.5mol%、亜鉛:ZnO換算で16.4~18.4mol%及びマンガン:MnO換算で残部であり、副成分が、前記基本成分に対して、Si:SiO換算で30~100mass ppm、Ca:CaO換算で50~160mass ppm、Co:Co換算で1500~3500mass ppm、Nb:Nb換算で100~600mass ppm、V:V換算で100~600mass ppmであり、前記Nb及び前記Vの含有量の合計が、Nb及びV換算で200~900mass ppmである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7