(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】放電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20240819BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240819BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240819BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J7/00 302A
H02J7/00 S
H02H7/18
H02J7/00 X
(21)【出願番号】P 2020049665
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】阿隅 一将
(72)【発明者】
【氏名】大神 剛章
(72)【発明者】
【氏名】三浦 啓一
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-029163(JP,A)
【文献】特開2015-191777(JP,A)
【文献】特開2010-130755(JP,A)
【文献】特開2001-143766(JP,A)
【文献】特開2008-176967(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0162761(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/00
H02H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルバッテリー用の放電装置であって、
対象製品の放電用端子の間に流れる最大電流値を検出する最大電流検出回路と、
前記放電用端子の間を短絡し、前記放電用端子の間の電流値を前記検出された最大電流値より小さくなるように制限する電流制限回路と、を備えることを特徴とする放電装置。
【請求項2】
前記短絡により行われる前記対象製品の放電が完了したときに、放電完了の表示を行う完了表示部を備えることを特徴とする請求項1記載の放電装置。
【請求項3】
前記放電用端子に接続可能な複数対の接続端子と、
前記複数対の接続端子が複数の前記対象製品の前記放電用端子に接続され、前記短絡により複数の前記対象製品の一つの放電が完了したことを検知したときには、前記短絡の対象を放電が未完了な前記対象製品の前記放電用端子に変更する切り替え機構と、をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイルバッテリー用の放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンの高性能化により、その電池の消費量が増加している。これに伴い、スマートフォンに内蔵されたバッテリーが大容量化されているものの、使用中に電池残量が低下し、使えなくなることも多い。そこで補助電源として、例えばリチウムイオン電池を応用したモバイルバッテリーが市販されている。このようなリチウムイオン電池には、過充電、過放電、過電流から回路を保護するために、保護回路が開発されている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】エイブリック株式会社、1セル用バッテリー保護IC「S821HBシリーズ」、2019年7月掲載、[2020年3月12日検索]、インターネット、<https://www.ablic.com/jp/doc/datasheet/battery_protection/S82H1B_J.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモバイルバッテリーは、使用頻度によるが1~3年で電池の容量が低下し使用できなくなる。使用できなくなったモバイルバッテリーは廃棄されるが、使用済みのモバイルバッテリーの放電が不十分であると、端子がショートして過大な電流が流れ火災が発生することがある。
【0005】
実際に、モバイルバッテリーが一般ごみと一緒に廃棄され、ごみ収集車の中で破壊され出火する事故が起きている。このような事故は、モバイルバッテリーの放電が完全になされていれば、生じ難くなると考えられる。また、モバイルバッテリーを集めて破棄する専門業者には、破棄の際の放電の確認が要請されている。
【0006】
廃棄前にモバイルバッテリーに蓄積された電気エネルギーを完全に消費できれば、上記のような問題の解消には有効である。しかしながら、モバイルバッテリーに残留した電気エネルギーを消費しようとすると、保護回路により電流が制限されてしまう。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、保護回路を働かせずに速やかにモバイルバッテリーに蓄積されたエネルギーを放電でき、廃棄されたモバイルバッテリーからの出火を抑止できる放電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の放電装置は、モバイルバッテリー用の放電装置であって、対象製品の放電用端子の間に流れる最大電流値を検出する最大電流検出回路と、前記放電用端子の間を短絡し、前記放電用端子の間の電流値を前記検出された最大電流値より小さくなるように制限する電流制限回路と、を備えることを特徴としている。これにより、保護回路を働かせずに速やかにモバイルバッテリーに蓄積されたエネルギーを放電でき、廃棄されたモバイルバッテリーからの出火等の事故を防止できる。
【0009】
(2)また、本発明の放電装置は、前記短絡により行われる前記対象製品の放電が完了したときに、放電完了の表示を行う完了表示部を備えることを特徴としている。このように放電完了の表示を設けることによって、バッテリーの放電作業を簡略化できる。
【0010】
(3)また、本発明の放電装置は、前記放電用端子に接続可能な複数対の接続端子と、前記複数対の接続端子が複数の前記対象製品の前記放電用端子に接続され、前記短絡により複数の前記対象製品の一つの放電が完了したことを検知したときには、前記短絡の対象を放電が未完了な前記対象製品の前記放電用端子に変更する切り替え機構と、をさらに備えることを特徴としている。
【0011】
このように複数のモバイルバッテリーに接続できるようにし、放電完了を検知して自動で放電対象となるモバイルバッテリーを切り替られるため、複数のモバイルバッテリーを速やかに放電することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、保護回路を働かせずに速やかにモバイルバッテリーに蓄積されたエネルギーを放電でき、廃棄されたモバイルバッテリーからの出火を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】モバイルバッテリーの構成を示す概略図である。
【
図2】第1実施形態の放電装置の構成を示す概略図である。
【
図3】第2実施形態の放電装置の構成を示す概略図である。
【
図4】第3実施形態の放電装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
[第1実施形態]
(モバイルバッテリーの構成)
図1は、モバイルバッテリーB10の構成を示す概略図である。モバイルバッテリーB10は、持ち運びができ、コンセントがない屋外でもスマートフォン、携帯電話、タブレット型端末等の携帯機器を充電できる装置である。
図1の例に示すように、モバイルバッテリーB10は、電池B11、保護回路B12、ケースB13、放電用端子B14、B15を備えている。
図1に示す例では、簡略化のため、充電用端子は省略している。
【0016】
電池B11は、充電式の電池であり、リチウムイオン電池、ニカド電池、ニッケル水素電池または小型制御弁式鉛蓄電池が用いられる。モバイルバッテリーB10が充電されると、電池B11に蓄電される。
【0017】
モバイルバッテリーB10は、放電に用いられる際には、USBケーブルC10が放電用端子B14、B15に接続される。VCCおよびGNDは、電源電圧、接地電圧を示している。D+、D-は、データ信号電圧のプラス側とマイナス側を示している。USBケーブルC10が接続されることで、端子T1、T2からの放電が可能になっている。
【0018】
保護回路B12は、放電時に所定値以上の電流が流れるのを防止する機能を有している。例えば、電池B11の電圧が放電中に過放電検出電圧を下回り、その状態が検出遅延時間以上維持された場合には、保護回路B12により放電が停止される構成を採ることができる。このような保護回路B12の機能が、効率的な廃棄前の放電を妨げる。
【0019】
(放電装置の構成)
図2は、放電装置100の構成を示す概略図である。放電装置100は、モバイルバッテリーB10に接続し、廃棄前の放電を行う装置である。放電装置100は、接続端子110、115、120、125、最大電流検出回路130、電流制限回路140、電源コード150およびハウジング160を備えている。放電装置100は、危険度を考慮しリチウムイオン電池に特化したものであってもよい。
【0020】
接続端子110、120は、モバイルバッテリーB10からの放電用の端子T1、T2に接続され、端子間を短絡する。接続端子115、125は、USBケーブルC10のデータ信号端子に接続され、端子間を短絡する。接続端子110、120を結ぶ短絡回路には、最大電流検出回路130および電流制限回路140が接続されている。
【0021】
最大電流検出回路130は、廃棄前に完全に放電しようとする対象製品としてモバイルバッテリーB10の放電用の端子T1、T2の間に流れる最大電流値を検出する。検出された最大電流値は、電流制限回路140に伝達される。
【0022】
電流制限回路140は、放電用の端子T1、T2の間を短絡する回路において、放電用の端子T1、T2の間の電流値を検出された最大電流値より小さくなるように制限する。これにより、保護回路B12を働かせずに、速やかにモバイルバッテリーB10に蓄積されたエネルギーを放電でき、廃棄されたモバイルバッテリーB10における出火等の事故を防止できる。
【0023】
電源コード150は、放電装置100を動作させるための電源を供給するためのコードである。電源コード150は、外部電源E1に接続される。ハウジング160は、放電装置100の短絡回路を外部から絶縁している。
【0024】
(放電装置の動作)
上記のように構成された放電装置100を用いる際には、ユーザは、USBケーブルC10を介して、廃棄しようとするモバイルバッテリーB10の放電用端子B14、B15に接続端子110、120を接続する。そして、フル充電されたモバイルバッテリーB10が完全に放電する時間以上そのままで放置する。それによって、モバイルバッテリーB10の蓄電が完全に解消され、放電が完了したとみなすことができる。
【0025】
[第2実施形態]
上記の実施形態では、ユーザは放電装置100をモバイルバッテリーB10に接続して十分な時間をおくことで放電完了とみなすことになるが、放電完了を検出しユーザに分かるように表示してもよい。
図3は、放電完了の表示が可能な放電装置200の構成を示す概略図である。
【0026】
図3に示すように、放電装置200は、基本的に放電装置100と同様の回路構成を備えており、さらに完了表示部270をさらに備えている。完了表示部270は、例えば、LEDランプで構成でき、短絡により行われる対象製品の放電が完了したときに、ランプの点灯消滅等により放電完了の表示を行う。その他、完了表示部270は、液晶画面であってもよく、その場合には放電完了を文字や図形で表示できる。このように放電完了の表示が可能になることによって、バッテリーの放電作業を簡略化できる。
【0027】
[第3実施形態]
上記の実施形態では、一つのモバイルバッテリーに対して放電を行うが、複数のモバイルバッテリーに対して放電を行ってもよい。
図4は、複数のモバイルバッテリーB10a~B10eを対象とする放電装置300の構成を示す概略図である。
図4に示すように、放電装置300は、基本的に放電装置100と同様の回路構成を備えており、さらに複数対の接続端子381a~381e、切り替え機構380および接続回路390を備えている。
【0028】
接続端子381a~381eは、複数のモバイルバッテリーB10a~B10eの放電用端子に接続されたUSBケーブルC10a~C10eに接続可能な複数対の端子である。なお、
図4には、好適な一例として最大で5つの対象製品に接続が可能な構成が示されているが、接続の最大数は5つに限定されない。
【0029】
切り替え機構380は、複数対の接続端子381a~381eのうち一対の接続端子のみを接続回路390に接続する。接続回路390は、複数対の接続端子381a~381eのうちの一対の接続端子を接続端子110、120に接続する。
【0030】
切り替え機構380は、短絡により複数のモバイルバッテリーB10a~B10eの一つの放電が完了したことを検知したときには、短絡の対象を放電が未完了なモバイルバッテリーの放電用端子に変更する。このように複数のモバイルバッテリーB10a~B10eに接続できるようにし、放電完了を検知して自動で放電対象となるモバイルバッテリーを切り替られるため、複数のモバイルバッテリーB10a~B10eを速やかに放電することができる。
【0031】
上記のような放電装置100~300は、個人のユーザが用いてもよいし、事業者が用いてもよい。事業者としては、例えばモバイルバッテリーの廃棄業者やモバイルリサイクルネットワークに参加する携帯電話会社のショップ、家電量販店、ホームセンター等のJBRCリサイクル協力店、モバイルバッテリーの製造、販売会社が挙げられる。特に、複数のモバイルバッテリーに接続可能な放電装置300は、事業者による利用に好適である。
【符号の説明】
【0032】
100 放電装置
110、115、120、125 接続端子
130 最大電流検出回路
140 電流制限回路
150 電源コード
160 ハウジング
200 放電装置
270 完了表示部
300 放電装置
380 切り替え機構
381a~381e 接続端子
390 接続回路
B10、B10a~B10e モバイルバッテリー
B11 電池
B12 保護回路
B13 ケース
B14、B15 放電用端子
C10 USBケーブル
C10a~C10e USBケーブル
E1 外部電源
T1、T2 端子